説明

平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれからなる平面スピーカー用積層部材

【課題】耐熱寸法安定性及び剛性の両特性に優れることで、コイルの発熱による基板フィルムの歪みが小さく、音質再現性に優れた平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】200℃で10分間処理した際の熱収縮率が長手方向、幅方向それぞれ0%以上0.5%以下、ヤング率が長手方向、幅方向それぞれ6GPa以上8GPa以下であり、かつ下記式(1)で表されるフィルム厚みのばらつきが0%以上10%以下であることを特徴とする平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
フィルム厚みのばらつき(%)={(フィルム厚みの最大値−フィルム厚みの最小値)/フィルム厚みの平均値}×100 ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄型の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは平面スピーカーの振動膜回路基板上にコイルが積層される構造を有する平面スピーカーの基板用として、コイルの発熱による基板フィルムの歪みが小さく、音質再現性に優れた、平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックからなるスピーカー用振動板として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの二軸配向フィルムが検討されている(特許文献1、2、3など)。
近年、スピーカーの省スペース化が求められており、従来よりも厚みの薄い平面スピーカーの開発が進められつつある。このような平面スピーカーは厚さを薄くできることから壁掛けテレビやノートパソコンの付属スピーカー等に好適である。また自動車のピラーやサンバイザー等への組み込みも可能となる。
【0003】
平面スピーカーとして様々な構成が提案されているが、一例として長方形状の振動膜の四辺に引っ張り張力を与え、この振動膜の背面側から加振器により駆動する平面スピーカが提案されており、こうした全周引っ張り型の平面スピーカは、振動膜の背面中央部を点振動駆動する構成であるため、振動膜のストロークが短辺の長さによって規制されてしまい、長辺の長さが低域再生に活かされないために低音再生能力が難しい。そこで特許文献4において振動膜の周囲に指示枠を設け、また一部方向に引張り張力を付与することなどが提案されており、振動膜の材料としてポリエチレンナフタレートが開示されている。
【0004】
平面スピーカーの場合、振動板の主要部は扁平形状を有しているため、振動板の中心近傍は構造的に強度が弱くなることがある。この点について、例えば特許文献5では強度を向上させると共に音質を向上させるために主要部を縁部よりも厚く形成することが提案されており、また振動板を構成する材料としてポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどが提案されている。
【0005】
一方、特許文献6で提案されている平面スピーカーは、鉄板(磁性金属板)からなる平板状のヨーク、ヨークの片面に磁軸を垂直にして取り付けられた複数の永久磁石からなり、永久磁石はヨークの平面方向に所定の間隔をおいて隣同士で極性が反対になるように取り付けられている。そして、平面上に配置された面状磁石の極の近くに、渦巻き状のコイル(以下、導電回路と称することがある)が積層された振動板が平行に配置されている。
【0006】
しかしながら特許文献6で示されているタイプの平面スピーカーは、振動膜の大部分の領域を渦巻状のコイルが占めており、各コイルがジュール熱で発熱するため、振動膜の基板であるベースフィルムへの熱の影響を無視できない。また、このようなタイプの平面スピーカーは、振動膜が大きく振動したときに永久磁石と接触し、雑音を発生することがある。この問題は前述した発熱により振動膜のゆがみが発生するとさらに顕著になる。
【0007】
【特許文献1】特開平7−284193号公報
【特許文献2】特開平1−256298号公報
【特許文献3】特開平2−152400号公報
【特許文献4】特開2001−275187号公報
【特許文献5】特開2004−328531号公報
【特許文献6】国際公開WO99/03304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解消し、耐熱寸法安定性及び剛性の両特性に優れるフィルムを平面スピーカーの振動膜の基板フィルムとして用いることで、コイルの発熱による基板フィルムの歪みが小さく、音質再現性に優れた平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、200℃での寸法変化が小さく、かつ一定の剛性を有し、しかもフィルム厚みのばらつきが少ない二軸配向ポリエステルフィルムを平面スピーカーの基板用フィルムとして用いることにより、コイルが該基板用フィルムに積層された構造を有する平面スピーカーにおいて、コイルの発熱による基板フィルムの歪みが小さいため雑音の発生が少なくなり、しかもこれらのフィルム特性を有する場合に音質再現性自体も向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、200℃で10分間処理した際の熱収縮率が長手方向、幅方向それぞれ0%以上0.5%以下、ヤング率が長手方向、幅方向それぞれ6GPa以上8GPa以下であり、かつ下記式(1)
フィルム厚みのばらつき(%)={(フィルム厚みの最大値−フィルム厚みの最小値)/フィルム厚みの平均値}×100 ・・・(1)
で表されるフィルム厚みのばらつきが0%以上10%以下である平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成される。
【0011】
また本発明の平面スピーカー用基板フィルムは、その好ましい態様として、ポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであること、全光線透過率が50%以上であること、フィルム表面粗さWRaが1nm以上100nm以下であること、フィルムの密度が1.3g/cm以上1.4g/cm以下であること、フィルム厚みが5μm以上125μm以下であること、の少なくともいずれか一つを具備するものも好ましい態様として包含する。
【0012】
また本発明の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムは、平面スピーカーの振動膜または振動膜回路基板として好適に用いられる。
さらに本発明は、本発明の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に金属箔またはコイルが配置されてなる平面スピーカー用積層部材に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に優れ、かつ一定の剛性を有し、しかもフィルム厚みのばらつきが少ないため、コイルが基板用フィルムに積層された構造を有する平面スピーカーの基板用フィルムとして用いた場合に、コイルの発熱による基板フィルムの歪みが小さいため雑音の発生が少なくなり、しかもこれらのフィルム特性を有する場合に音質再現性自体も向上するという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
<ポリエステル>
本発明のポリエステルフィルムは、ジカルボン酸とグリコールとの縮重合によって得られるポリエステルによって形成される。ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が例示され、グリコール成分としてエチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが例示される。
【0015】
これらの成分によって得られるポリエステルの中でも特に、主たる成分がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく、高温での寸法安定性及び剛性のバランスの点でポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが最も好ましい。かかるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸、グリコール成分としてエチレングリコールとからなる。ここで「主たる」とは、ポリマー成分のうち、全繰り返し構造単位の80モル%以上であることを意味する。本発明のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、全繰返し単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、エチレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレート、エチレン−1,5−ナフタレンジカルボキシレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。更に好ましくは全繰返し単位の90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであり、特にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの実質的な単独重合体であることが好ましい。
【0016】
本発明のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、共重合成分が20モル%以下のポリエチレンナフタレンジカルボキシレート共重合体であってもよい。ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが共重合体の場合、共重合成分として分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができる。このような化合物として例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸;p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸;或いはジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール等の如き2価アルコール類等を用いることができる。これらの共重合成分は1種であっても、2種以上を併用してもよい。かかる共重合成分の中で、酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p―オキシ安息香酸を、グリコール成分としてはジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物を好ましい例として挙げることができる。
【0017】
また、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってもよく、或いは例えば極少量のグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムにおけるポリマーの構成成分は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの単独重合体または共重合体を主成分とするが、他のポリエステルやポリエステル以外の有機高分子との混合体であってもよい。
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに混合できるポリエステル或いはポリエステル以外の有機高分子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン4,4’−テトラメチレンジフェニルジカルボキシレート、ポリエチレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリネオペンチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステルを挙げることができ、これらの中でポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。これらのポリエステルまたはポリエステル以外の有機高分子は、1種であっても2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸とグリコールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得、或いはジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応で低重合度ポリエステルを得、この低重合度ポリエステルを重合触媒の存在下で更に重合させてポリエステルを得る方法で製造することができる。
二軸配向フィルムに製膜した後のポリエステルフィルムの固有粘度は、ο−クロロフェノール中、35℃において、0.4dl/g以上であることが好ましい。
【0020】
<添加剤>
本発明の二軸配向ポリステルフィルムは、フィルムの取り扱い性を向上させるため、発明の効果を損なわない範囲で不活性粒子などが添加されていても良い。不活性粒子として、例えば、周期律表第IIA、第IIB、第IVA、第IVBの元素を含有する無機粒子(例えば、カオリン、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素など)、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂粒子等のごとき耐熱性の高いポリマーよりなる微粒子などを含有させることができる。不活性粒子を含有させる場合、不活性粒子の平均粒径は、0.001〜5μmの範囲が好ましく、フィルム全重量に対して0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%の範囲で含有されることが好ましい。また本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、必要に応じて少量の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、熱安定剤を含んでいてもよい。
【0021】
<熱収縮率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、コイルの発熱に対する耐熱寸法安定性を高める目的で、200℃、10分間熱処理された後の長手方向(以下、縦方向、連続製膜方向、MD方向と称することがある)および幅方向(以下、横方向、TD方向と称することがある)の熱収縮率がそれぞれ0%以上0.5%以下であることが必要であり、好ましくは0.1%以上0.4%以下である。熱収縮率が上限を超えると、コイルが基板用フィルムに積層された構造を有する平面スピーカーの基板用フィルムとして用いた場合にコイルの発熱によってフィルムが変形し、歪みが発生して雑音が生じるためスピーカーの音質再現性が低下する。200℃における熱収縮率は、0.5%以下の範囲であればより小さい方が好ましい。一方、熱収縮率が0%を下回る場合は逆にフィルム膨張に伴う変形が生じる。
熱収縮率をかかる範囲内にするための具体的手段は、フィルム長手方向および幅方向の延伸をそれぞれ2.8〜3.8倍の倍率範囲で行い、さらに200〜250℃の温度範囲で熱固定処理を行い、その後150℃〜230℃の温度範囲で長手方向および/または幅方向に0.5〜5%の弛緩率で熱弛緩処理を行うことによって達成することができる。
【0022】
<ヤング率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向および幅方向のヤング率がそれぞれ6GPa以上8GPa以下であることが好ましく、より好ましくは6.1GPa以上7.0GPa以下、特に好ましくは6.1GPa以上6.8GPa以下である。ヤング率が下限に満たない場合、フィルムの腰がないため、振動膜としての性能が低く、音響特性に悪影響を及ぼす。一方ヤング率が上限を超える場合、200℃における熱収縮率が0.5%を超えてしまい、コイルが発熱した場合にフィルム変形が生じる。
フィルムの長手方向および幅方向のヤング率は、延伸時の倍率で調整することができ、フィルム長手方向および幅方向の延伸をそれぞれ2.8〜3.8倍の倍率範囲で行うことによって達成される。
【0023】
<フィルム厚みのばらつき>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、下記式(1)で表されるフィルム厚みのばらつきが0%以上10%以下である必要がある。フィルム厚みのばらつきはさらに好ましくは0%以上5%以下である。
フィルム厚みのばらつき(%)={(フィルム厚みの最大値−フィルム厚みの最小値)/フィルム厚みの平均値}×100 ・・・(1)
ここで上式(1)の各項目は、打点式フィルム厚み計を用いて以下の測定方法によって求められる。すなわち、フィルム幅方向の任意の50箇所、およびフィルム幅の中心付近の位置で、長手方向に沿って任意の50箇所について厚みを測定し、全100箇所の数平均値をフィルム厚みの平均値とする。また全100箇所の測定値のうち測定値の大きい方から5点の平均値をフィルム厚みの最大値とし、また全100箇所の測定値のうち測定値の小さい方から5点の平均値をフィルム厚みの最小値とする。
フィルム厚みのばらつきが上限を超える場合、振動にばらつきが生じて振動膜としての性能が低下し、音響特性の低下につながる。フィルム厚みのばらつきは、上述の範囲内であればより小さい方が好ましい。
【0024】
本発明のフィルム厚みのばらつきは、延伸倍率と熱固定温度を調整することによって達成することができ、熱収縮率と同様、フィルム長手方向および幅方向の延伸をそれぞれ2.8〜3.8倍の倍率範囲で行い、さらに200〜250℃の温度範囲で熱固定処理を行うことによって達成される。またかかる範囲内で、延伸倍率が高くなるに従い、ばらつきが小さくなる。さらにフィルム厚みのばらつきは、かかる範囲内において熱固定処理時の温度が低い方がよりばらつきを小さくすることができる。
【0025】
<全光線透過率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、全光線透過率が50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。全光線透過率が下限に満たない場合、平面スピーカー用基板フィルムとして用いた場合に透明性が低下するためコイルを加工する場合の位置合わせの精度が低下することがある。ここでフィルムの全光線透過率はJIS規格のK7105に準拠して求められる。全光線透過率を達成するためには、フィルムに配合する添加剤含有量が0.05〜5重量%の範囲であることが好ましい。
【0026】
<フィルム表面粗さWRa>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム表面粗さWRa(中心面平均粗さ)が1nm以上100nm以下であることが好ましい。フィルム表面粗さWRaは、5nm以上80nm以下であることがより好ましい。フィルム表面粗さWRaが下限に満たない場合、フィルム加工時の滑り性が低下して生産性が低下することがある。一方、フィルム表面粗さWRaが上限を超える場合、基板用フィルム上に配置されるコイルとの接着性が低下したり、金属箔を加工してコイルを作成する際にコイルの加工精度が低下することがある。
【0027】
<密度>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、密度が1.3g/cm以上1.4g/cm以下であることが好ましい。フィルムの密度の下限は、好ましくは1.33g/cm以上、より好ましくは1.35g/cm以上である。またフィルム密度の上限は、好ましくは1.38g/cm以下、より好ましくは1.36g/cm以下である。密度が下限に満たない場合、音質変化が大きく、音響特性が悪化することがある。一方密度が上限を超える場合、フィルムの結晶性が高いためフィルムが脆くなることがある。フィルムの密度をかかる範囲にするためには、フィルム長手方向および幅方向の延伸をそれぞれ2.8〜3.8倍の倍率範囲で行い、さらに200〜250℃の温度範囲で熱固定処理を行うことによって達成することができる。
【0028】
<厚み>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定はされないが5μm以上125μm以下であることが好ましく、より好ましくは7μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下、特に好ましくは10μm以上30μm以下である。フィルム厚みが下限に満たない場合、平面スピーカー用基板フィルムとして音質再現性が不充分であることがある。一方フィルム厚みが上限を超える場合、ハンドリング性が低下することがある。
【0029】
<損失弾性率ピーク>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、損失弾性率ピーク(E”と称することがある)が80〜180℃であることが好ましく、より好ましくは90〜170℃、さらに好ましくは100〜160℃、特に好ましくは130〜156℃である。損失弾性率ピークが下限に満たない場合、フィルムの分子配向が十分でないため振動膜としての性能が低下し、音響特性に悪影響を及ぼすことがある。一方、損失弾性率ピークが上限を超える場合、200℃における熱収縮率が0.5%を超えてしまい、コイルが発熱した場合にフィルム変形が生じることがある。なお、本発明におけるフィルムの損失弾性率ピークは、動的粘弾性を測定する装置、例えばオリエンテック社製DDV−01FPのバイブロン装置を用い、荷重10g、周波数10Hzで、室温から200℃まで5℃/minの昇温速度で昇温する測定方法によって得られる。損失弾性率ピークをかかる範囲内にするためには、フィルム長手方向および幅方向の延伸をそれぞれ2.8〜3.8倍の倍率範囲で行うことによって達成される。
【0030】
<塗膜層>
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗膜層を設けることができる。塗膜層の一例としてコーティングによって形成された塗膜層が挙げられる。塗膜層を形成するバインダー樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の各樹脂を用いることができ、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンやこれらの共重合体やブレンド物が挙げられる。
【0031】
<フィルム製膜方法>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、テンター法、インフレーション法等の従来知られている製膜方法を用いて製造することができる。
予め乾燥したポリエステル樹脂を280℃に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に成形する。Tダイより押し出されたフィルムを表面温度10〜60℃の冷却ドラムで冷却固化し、この未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度、更にはTgより20〜40℃高い温度とするのが好ましい。
【0032】
縦延伸フィルムは、続いて横延伸、熱固定、熱弛緩処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より20℃高い温度から始め、ポリエステルの融点(Tm)より(120〜30)℃低い温度まで昇温しながら行う。横延伸の開始温度は(Tg+40)℃以下であることが好ましい。また横延伸の最高温度はTmより(100〜40)℃低い温度であることが好ましい。
【0033】
横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよい。通常は逐次的に昇温する。例えばステンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、各ゾーンごとに所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸開始温度が低すぎるとフィルム破れが生じることがある。また横延伸最高温度が(Tm−120)℃より低いとフィルムの熱収縮率が大きくなることがある。一方、横延伸最高温度が(Tm−30)℃より高いとフィルムが柔らかくなりすぎて外乱などによってフィルム破れが生じることがある。
【0034】
延伸倍率は縦方向、横方向ともに2.8倍以上3.8倍以下とするのが好ましい。延伸倍率の下限は、より好ましくは3.0倍以上である。また、延伸倍率の上限は、より好ましくは3.6倍以下であり、さらに好ましくは3.4倍以下であり、特に好ましくは3.3倍以下である。延伸倍率が下限に満たないと十分なヤング率が得られないことがある。また延伸倍率が上限を超えると熱収縮率が上限を超えることがある。
【0035】
二軸延伸されたフィルムは、その後熱固定処理が施される。熱固定を施すことにより、フィルムの熱寸法安定性が向上する。また熱固定処理を行うことによりポリマーの結晶化が進み、フィルムの密度が高くなる。熱固定は(Tm−100)℃以上の温度で行うことが好ましい。熱固定温度は、200〜250℃で行うことが好ましく、220〜245℃で行うことがさらに好ましい。また、熱寸法安定性を更に高めるために、熱固定後にさらに150〜230℃の温度範囲で長手方向および/または幅方向に0.5〜5%の弛緩率で1〜60秒間熱弛緩処理を行い、さらに50〜80℃で徐冷するアニール処理を行ってもよい。
このようにして得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、片面または両面にさらに塗膜層や金属薄膜、ハードコート層などの機能層を積層することができる。
【0036】
<平面スピーカー基板>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは平面スピーカー基板用途に用いることができ、好ましくは振動膜、または基板フィルムの両面に渦巻状コイルが配置される振動膜回路基板として使用され、特に振動膜回路基板として好ましく用いることができる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に優れ、一定の剛性を有し、しかもフィルム厚みのばらつきが少ないため、コイルが基板フィルムに積層された構造を有する平面スピーカーの基板用フィルムとして用いた場合、コイルの発熱による基板フィルムの歪みが小さく、雑音の発生が少なくなり、しかもこれらのフィルム特性によって音質再現性に優れる。
【0037】
ポリエステルフィルム上に形成される渦巻状コイルは、サブトラクティブ法と呼ばれる銅張り積層フィルムをパターンエッチングして配線パターンを形成する方法、アディティブ法と呼ばれる基板フィルムに無電解メッキ、または無電解メッキと電解メッキの併用により配線パターンを形成する方法、のいずれの方法によっても形成することができる。また、導電ペーストを用いて回路形成する方法も挙げられる。
【0038】
一般的にサブトラクティブ法ではサイドエッチングの影響で配線パターンの寸法安定性が低く、コイルのインピーダンスのばらつきを小さくすることが困難であるが、アディティブ法であれば配線パターンの寸法安定性が高いので、コイルのインピーダンスのばらつきをより小さく抑えることができる。
【0039】
コイルに加工される前段階として、基板フィルム上に金属箔を積層することができる。金属箔は、銅箔やアルミニウム箔が例示される。これら金属箔は、圧延されて作成されたもの、電解によって作成されたものなど一般的な方法で得られるものを用いることができる。これら金属箔の積層方法として、接着剤を介する方法やフィルム表層を溶融させて直接シールする方法などが挙げられる。接着剤は市販のものを用いることができるが、耐熱性の観点から硬化性樹脂が好ましい。硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリエスエル樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、脂環式オレフィン重合体などが挙げられる。また接着剤を使用しない方法として、メッキやスパッタリング、クラッドなどによって直接基板フィルムに金属箔を形成させる方法であってもよい。
【0040】
基板フィルムにコイルを形成する方法は上記方法のいずれを用いてもよいが、本発明の平面スピーカーの場合、接着剤の影響で音響特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、接着剤を用いないで基板フィルム上に形成する方法がより好ましい。
また、基板フィルム上に渦巻状コイルを形成し、さらにカバーレイを積層してもよい。カバーレイの種類として、例えばフィルムやソルダーレジストが挙げられる。フィルムタイプを用いる場合、貼り合わせた後にカールが発生する可能性があるため、基板フィルムと同一の素材を用いることが好ましい。カバーレイフィルムには、所望に応じてその他の成分を配合することができる。配合剤としては、紫外線吸収剤、軟質重合体、フィラー、熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、充填剤、硬化剤、難燃剤などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0042】
(1)固有粘度
o−クロロフェノールを溶媒として用い、35℃で測定した(単位:dl/g)。フィルムの固有粘度は二軸配向フィルムをサンプリングして行った。
【0043】
(2)熱収縮率
二軸配向フィルムの長手方向および幅方向がマーキングされ、あらかじめ正確な長さを測定した長さ30cm四方のフィルムを温度200℃に設定されたオーブン中に無荷重で入れ、10分間静置した後取出し、室温に戻してからその寸法変化を読み取る。熱処理前の長さ(L0 )と熱処理による寸法変化量(ΔL)より、次式(2)に従って長手方向および幅方向の熱収縮率をそれぞれ求めた。各方向の熱収縮率はそれぞれサンプル数n=5で評価を行い、その平均値を用いた。
熱収縮率(%)=ΔL/L0×100 ・・・(2)
【0044】
(3)ヤング率
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、二軸配向フィルムを試料幅10mm、長さ15cmに切り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分で引張り、得られる荷重―伸び曲線の立ち上り部の接線よりヤング率を計算する。なお、長手方向のヤング率とはフィルムの長手方向を測定方向としたものであり、幅方向のヤング率とはフィルムの幅方向を測定方向としたものである。各ヤング率は10回測定し、その平均値を用いた。
【0045】
(4)密度
JIS規格 C2151に準じて測定した。
【0046】
(5)全光線透過率
JIS規格 K7105に従い、全光線透過率Tt(%)を測定した。
【0047】
(6)フィルム表面粗さWRa
WYKO社製非接触式三次元粗さ計(NT-2000)を用いて測定倍率25倍、測定面積246.6μm×187.5μm(0.0462mm)の条件にて、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより、中心面平均粗さ(WRa)を次式(3)にて求める。なお、測定は、10回繰り返し、それらの平均値を用いた。
【0048】
【化1】

ここで、Zjkは測定方向(246.6μm)、それと直行する方向(187.5μm)をそれぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における3次元粗さチャート上の高さである。
【0049】
(7)フィルム厚み及びフィルム厚みのばらつき
打点式フィルム厚み計を用いて、フィルム幅方向の任意の50箇所、及びフィルム幅の中心付近の位置で、長手方向に沿って任意の50箇所について厚みを測定し、全100箇所の数平均値をフィルム厚みとした。
また、フィルム厚みのばらつき(%)は下記式(1)に従って求めた。
フィルム厚みのばらつき(%)={(フィルム厚みの最大値−フィルム厚みの最小値)/フィルム厚みの平均値}×100 ・・・(1)
ここで上式(1)の各項目は、打点式フィルム厚み計を用いて以下の測定方法によって求められる。すなわち、上記のフィルム厚みの測定方法に従って計100箇所の厚みを測定し、全100箇所の数平均値をフィルム厚みの平均値とする。また全100箇所の測定値のうち測定値の大きい方から5点の平均値をフィルム厚みの最大値とし、また全100箇所の測定値のうち測定値の小さい方から5点の平均値をフィルム厚みの最小値とする。
【0050】
(8)動的損失弾性率ピーク温度
二軸配向フィルムを幅4mm、長さ50mmに切り取り、オリエンテック社製DDV−01FPのバイブロン装置を用い、荷重10g、周波数10Hzで、室温から200℃まで5℃/minの昇温速度で昇温して測定する。得られたチャートより動的損失弾性率のピーク温度を求める。
【0051】
(9)音響特性
二軸配向フィルムを振動膜回路基板として両面に渦巻状コイルを形成し、面状磁石が配置された面に対して平行に配置して平面スピーカーに組み込み、該平面スピーカーについて、JIS規格 C5532に準拠して周波数特性を測定して、下記の加速試験を行っていないフィルムと、加速試験を行ったフィルムとの周波数特性を比較し、加速試験前後で周波数特性に変化が生じたか、下記の基準にしたがって評価した。また、加速試験を行ったフィルムについて、ビビリと呼ばれる雑音の発生有無を下記基準に従って評価した。
コイル発熱によるフィルム変形が音響特性に与える影響を測定するための加速試験として、コイル形成後のフィルムを温度200℃に設定されたオーブン中に無荷重で入れ、10分間静置した後取出し、室温に戻してから平面スピーカーに組み込んだ。
◎: 加速試験前後で周波数特性に変化なく、また加速試験後のフィルム評価でビビリなどの雑音発生がない
○: 加速試験前後で周波数特性にわずかな変化があるが、加速試験後のフィルム評価でビビリなどの雑音発生がない
×: 加速試験前後で周波数特性に大きな変化があり、また加速試験後のフィルム評価でビビリなど雑音の発生がある
【0052】
[実施例1]
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂に平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子を0.1%添加し、290℃に加熱された押出機に供給して290℃のダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度60℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを140℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.1倍に延伸し、60℃のロール群で冷却した。続いて縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、150℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(幅方向)に3.3倍に延伸した。その後テンター内で235℃の温度条件で熱固定処理を行い、200℃で2%幅方向に熱弛緩した後、均一に徐冷して室温まで冷やして25μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に優れており、音響特性評価でも雑音の発生がなく、音質再現性に優れていた。
【0053】
[実施例2]
長手方向の延伸倍率を3.0倍、幅方向の延伸倍率を3.2倍とし、熱弛緩の温度条件を230℃とした以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に優れており、音響特性評価でも雑音の発生がなく、音質再現性に優れていた。
【0054】
[実施例3]
熱固定処理温度を250℃とし、また熱弛緩の温度条件を230℃とし、長手方向、幅方向の両方向に2%熱弛緩した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に優れており、音響特性評価でも雑音の発生がなかった。
【0055】
[実施例4]
熱固定処理温度を210℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。本実施例のフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に優れており、音響特性評価でも雑音の発生がなかった。
【0056】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂に平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子を0.1%添加し、280℃に加熱された押出機に供給して280℃のダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを110℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に3.1倍に延伸し、20℃のロール群で冷却した。続いて縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、120℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(幅方向)に3.3倍に延伸した。その後テンター内で230℃の温度条件で熱固定処理を行い、200℃で2%幅方向に熱弛緩した後、均一に徐冷して室温まで冷やして25μm厚みの二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。本比較例のフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に乏しく、音響特性評価でも雑音が発生し、音質再現性に乏しかった。
【0057】
[比較例2]
長手方向の延伸倍率を2.5倍、幅方向の延伸倍率を2.6倍とし、熱固定温度を180℃とし、熱弛緩の条件を240℃、3%に変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。本比較例のフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に乏しく、音響特性評価でも雑音が発生し、またヤング率が低いために音質再現性に乏しかった。
【0058】
[比較例3]
長手方向の延伸倍率を3.5倍、幅方向の延伸倍率を3.6倍とし、熱固定温度を245℃とし、熱弛緩を行わなかった以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表1に示す。本比較例のフィルムは200℃での耐熱寸法安定性に乏しく、音響特性評価でも雑音が発生し、音質再現性に乏しかった。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、コイルが基板用フィルムに積層された構造を有する平面スピーカーの基板用フィルムとして用いた場合に、耐熱での寸法変化が小さく、コイルの発熱による基板フィルムの歪みが小さいため雑音の発生が少なくなり、しかも耐熱寸法安定性と剛性とを兼ね備え、フィルム厚みのばらつきが小さいために音質再現性に優れるという効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃で10分間処理した際の熱収縮率が長手方向、幅方向それぞれ0%以上0.5%以下、ヤング率が長手方向、幅方向それぞれ6GPa以上8GPa以下であり、かつ下記式(1)で表されるフィルム厚みのばらつきが0%以上10%以下であることを特徴とする平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
フィルム厚みのばらつき(%)={(フィルム厚みの最大値−フィルム厚みの最小値)/フィルム厚みの平均値}×100 ・・・(1)
【請求項2】
ポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである請求項1記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
全光線透過率が50%以上である請求項1または2に記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
フィルム表面粗さWRaが1nm以上100nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
フィルムの密度が1.3g/cm以上1.4g/cm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
フィルム厚みが5μm以上125μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
平面スピーカーの振動膜に用いられる請求項1〜6のいずれかに記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項8】
平面スピーカーの振動膜回路基板に用いられる請求項1〜6のいずれかに記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に金属箔が配置されてなる平面スピーカー用積層部材。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の平面スピーカー基板用二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面にコイルが配置されてなる平面スピーカー用積層部材。

【公開番号】特開2008−219739(P2008−219739A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57175(P2007−57175)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】