説明

平面型電磁誘導電器

【課題】コイルパターンを単純でき、設計、製造が容易な平面型電磁誘導電器を得る。
【解決手段】第1の銅張積層板10は、絶縁基板18の表裏に各コイルパターン11,21が形成され、各コイルパターンの渦巻部11a,21aは渦巻状で絶縁基板18の表側から見て重なっている。各コイルパターンはビアホール用孔15のビアホールを介して直列に接続され、直列巻線を形成している。このような渦巻部(11a,21a等)が同じ形状で、接続部(11d,21d等)の形状が異なるコイルパターンを有する銅張積層板を複数枚積層して、直列巻線をビアホール用孔13a,13b,スルーホール用孔12a〜12dにメッキによりビアホール又はスルーホールを形成して所定の接続を行い、平面型トランスの一次及び二次コイルを形成する。各銅張積層板の各コイルパターン及び外形を同じ形状にしたので、平面型トランスの設計及び製造が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルパターンが形成された絶縁基板を有する複合積層板を用いた平面型電磁誘導電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源等で使用される電子部品としての大電流用のトランスの巻線は、これまでワイヤ巻線によるものが主流であった。しかし、ワイヤ巻線を使用したトランスでは、電源回路を構成する部品の中では比較的大きく、電源回路の小型・薄型化のネックになるという問題点があった。これに対して、近年いわゆる平面型トランスあるはシートトランスといわれるものが採用され始めている。例えば、コイル部とコイル部に挿入されたフェライトコアとを備えたシート型トランスであって、コイル部は一次側コイルが形成されたシート型コイル積層体と二次側コイルが形成された多層プリント配線基板とを備えており、シート型コイル積層体と多層プリント配線基板とは分離されており、それらをフェライトコアで挟み込むものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一次側コイルを形成する一次側シート基板と二次側コイルを形成する二次側シート基板とが交互に積層配置された積層シートトランスにおいて、積層シートトランスの表面側と裏面側の両方のコイルパターンを例えば一次と二次のいずれか一方の同じ次数のコイルとした回路形成用多層基板を使用したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−91138号公報(段落番号0048、0051、0053及び図8)
【特許文献2】特開2002−15927号公報(段落番号0025、0026、図3及び図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の平面型トランスは以上のように構成され、例えば特許文献1に示されたコイル部として一次側回路が形成されたシート型コイル積層体と二次側回路が形成された多層プリント配線基板とを備えたものにおいては、一次側回路が形成されたシート型コイル積層体と、二次側回路が形成された多層プリント配線基板とは分離して形成されており、一次側回路(コイル)と二次側回路(コイル)との隙間が大きくなりやすい構造のため、漏れ磁束が大きくなり高効率化が難しいなどの問題がある。また、一次側回路が形成されたシート型コイル積層体と二次側回路が形成された多層プリント基板は材質が異なるため、製造が煩雑になるという難点もあった。
【0006】
また、例えば特許文献2に示された一次側コイルパターンを形成する一次側シート基板と二次側コイルパターンを形成する二次側シート基板とが交互に積層配置されるだけの単純なものでは、大電流化のためには基板の銅箔を厚くしたり層数を増やすなどしなければならず、設計も複雑になり、基板の板厚が厚くなるために信頼性の高い基板の製造が難しいなどの問題があった。
【0007】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、コイルパターンを単純化することが可能であり、設計及び製造が容易な平面型電磁誘導電器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る平面型電磁誘導電器においては、
複数の複合積層板が積層された多層プリント基板を有する平面型電磁誘導電器であって、
複合積層板は、絶縁基板と直列巻線とを有し、
直列巻線は、絶縁基板の一方の面及び他方の面にそれぞれ形成された第1及び第2のコイルパターンの本体部が絶縁基板に形成された第1のビアホールを介して直列に接続されたものであって、各本体部は中心部から外周部に向かって同じ形状の渦巻き状に所定巻数巻回されかつ一方の面側から見たときに本体部同士が重なるようにして導電材料で形成されたものであり、
多層プリント基板は、複合積層板が所定枚数積層されたものであって、直列巻線が第2のビアホールを介して互いに接続されて巻線部とされたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、複数の複合積層板が積層された多層プリント基板を有する平面型電磁誘導電器であって、
複合積層板は、絶縁基板と直列巻線とを有し、
直列巻線は、絶縁基板の一方の面及び他方の面にそれぞれ形成された第1及び第2のコイルパターンの本体部が絶縁基板に形成された第1のビアホールを介して直列に接続されたものであって、各本体部は中心部から外周部に向かって同じ形状の渦巻き状に所定巻数巻回されかつ一方の面側から見たときに本体部同士が重なるようにして導電材料で形成されたものであり、
多層プリント基板は、複合積層板が所定枚数積層されたものであって、直列巻線が第2のビアホールを介して互いに接続されて巻線部とされたものであるので、
複数の複合積層板におけるコイルパターンの本体部が全て同じ形状であるので、コイルパターンを単純化することが可能であり、設計及び製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1〜図13は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1(a)は第1の銅張積層板の第1のコイルパターンを示す平面図、図1(b)は第2のコイルパターンを示す平面図、図2は第1の銅張積層板の第2のコイルパターンを透視して示す透視図、図3〜図8は第2〜第4の銅張積層板における第3〜第8のコイルパターンを直視してあるいは透視して示す平面図、図9は第1〜第4の銅張積層板を積み重ねた状態を示す斜視図である。図10は第1〜第4の銅張積層板を積層して一体化して形成した多層プリント基板の斜視図、図11は図10の切断面A−Aにおける多層プリント基板の断面図、図12は多層プリント基板のコイルパターンの結線図、図13は図10の多層プリント基板を用いた平面型トランスの分解斜視図である。
【0011】
まず、多層プリント基板1の構成を説明する。多層プリント基板1は、図9に示すように、両面にコイルパターン(詳細後述)が形成された複合積層板としての第1〜第4の銅張積層板10〜40をこれらの間にプリプレグ50を挟んで積層し、プリプレグを固めて一体化して図10に示すように矩形の厚板状にしたものである。図10において、多層プリント基板1は、4隅に他の多層プリント基板との接続用のスルーホール1a〜1d及び第2のビアホールとしてのビアホール1e,1fが設けられており、中央部に円形の貫通孔1gを形成する貫通孔形成部1hを有する。多層プリント基板1は、この実施の形態においては図11の断面図に示すように、詳細は後述するが8層からなるコイルパターン(第1〜第8のコイルパターン11,21,31,41,51,61,71,81)を所定の順番に接続することにより平面型トランスの一次及び二次コイル91,92が構成されている。
【0012】
次に、第1〜第4の銅張積層板10,20,30,40の構成について説明する。第1の銅張積層板10は、図1(a)に示す絶縁基板18と絶縁基板18上に形成された一次コイルパターンである銅板製の第1のコイルパターン11と図1(b)に示す第2のコイルパターン21を有する。また、絶縁基板18にビアホール用孔12a〜12d、ビアホール用孔13a,13b、貫通孔14、ビアホール用孔15が形成されている。第1のコイルパターン11は、渦巻部11aと接続部11dとを有し、絶縁基板18の上に、その外周部にある一方の端部11bから時計回りで中心部に向かってビアホール用孔15の形成された位置まで渦巻状に形成され、一方の端部11bと絶縁基板18のスルーホール用孔12aの形成部とが接続部11dにて接続されている。
【0013】
次に、図1(b)及び図2において、一次コイルパターンである第2のコイルパターン21は、図2では分かりやすいように図1の第1のコイルパターン11と同じ方向(図9、図11で上方)から透視した透視図として示しているが、絶縁基板18の裏側に絶縁基板18を挟んで第1のコイルパターン11と第2のコイルパターン21とが図1における上下方向からみてその渦巻部11a,21a同士が重なるようにして形成されている。コイルパターン21を透視して示す図2において、第2のコイルパターン21は、渦巻部21aと接続部21dとを有し、絶縁基板18の上に、絶縁基板18のビアホール用孔15の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部21bまで渦巻状に形成され、一方の端部21bと絶縁基板18のビアホール用孔13aの形成部とが接続部21dにて接続されている。
【0014】
第2の銅張積層板20は、図3に示す絶縁基板38と絶縁基板38上に形成された二次コイルパターンである第3のコイルパターン31と図4に示す第4のコイルパターン41を有する。また、絶縁基板38にビアホール用孔32a〜32d、ビアホール用孔33a,33b、貫通孔24、ビアホール用孔35が形成されている。第3のコイルパターン31は、渦巻部31aと接続部31dとを有し、絶縁基板38の上に、その外周部にある一方の端部31bから時計回りで中心部に向かってビアホール用孔35の形成された位置まで渦巻状に形成され、一方の端部31bと絶縁基板38のスルーホール用孔32cの形成部とが接続部31dにて接続されている。
【0015】
二次コイルパターンである第4のコイルパターン41は、図4の透視図に示すように絶縁基板38の裏側に表側の第3のコイルパターン31とその渦巻部31a,41a同士が図3における上下方向からみて重なるようにして、絶縁基板38のビアホール用孔35の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部41bまで渦巻状に形成され、一方の端部41bと絶縁基板38のビアホール用孔33bの形成部とが接続部41dにて接続されている。
【0016】
第3の銅張積層板30は、図5に示す絶縁基板58と絶縁基板58上に形成された一次コイルパターンである第5のコイルパターン51と図6に示す第6のコイルパターン61を有する。また、絶縁基板58にビアホール用孔52a〜52d、ビアホール用孔53a,53b、貫通孔54、ビアホール用孔55が形成されている。第5のコイルパターン51は、渦巻部51aと接続部51dとを有し、絶縁基板58の上に、その外周部にある一方の端部51bから時計回りで中心部に向かってビアホール用孔55の形成された位置まで渦巻状に形成され、一方の端部51bと絶縁基板58のビアホール用孔53aの形成部とが接続部51dにて接続されている。
【0017】
一次コイルパターンである第6のコイルパターン61は、図6の透視図に示すように絶縁基板58の裏側に絶縁基板58を挟んで表側の第5のコイルパターン51とその渦巻部51a,61a同士が図5における上下方向からみて重なるようにして形成されている。第6のコイルパターン61は、渦巻部61aと接続部61dとを有し、絶縁基板58の上に、絶縁基板58のビアホール用孔55の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部61bまで渦巻状に形成され、一方の端部61bと絶縁基板58のスルーホール用孔52bの形成部とが接続部61dにて接続されている。
【0018】
第4の銅張積層板40は、図7に示す絶縁基板78と絶縁基板78上に形成された二次コイルパターンである第7のコイルパターン71と図8に示す第8のコイルパターン81を有する。また、絶縁基板78にビアホール用孔72a〜72d、ビアホール用孔73a,73b、貫通孔74、ビアホール用孔75が形成されている。第7のコイルパターン71は、渦巻部71aと接続部71dとを有し、絶縁基板78の上に、その外周部にある一方の端部71bから時計回りで中心部に向かってビアホール用孔75の形成された位置まで渦巻状に形成され、一方の端部71bと絶縁基板78のビアホール用孔73bの形成部とが接続部71dにて接続されている。
【0019】
二次コイルパターンである第8のコイルパターン81は、図8の透視図に示すように絶縁基板78の裏側に絶縁基板78を挟んで表側の第7のコイルパターン71とその渦巻部71a,81a同士が図7における上下方向からみて重なるようにして形成されている。第8のコイルパターン81は、渦巻部81aと接続部81dとを有し、絶縁基板78の上に、絶縁基板78のビアホール用孔75の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部81bまで渦巻状に形成され、一方の端部81bと絶縁基板78のスルーホール用孔72dの形成部とが接続部81dにて接続されている。
【0020】
上記のような第1〜第4の銅張積層板10〜40をプリプレグ50で挟んで図9に示すように積層し、プリプレグを固化一体化して図10に示す多層プリント基板1とする。
【0021】
このとき、第1〜第4の銅張積層板10〜40のビアホール用孔12a〜12d,32a〜32d,52a〜52d,72a〜72dにメッキによりスルーホール1a〜1dを形成する。ビアホール用孔13a,13b,33a,33b,53a,53b,73a,73bにメッキにより第2のビアホールとしてのビアホール1e,1fを形成する。なお、図11、図12に示すように、第1のコイルパターン11と第2のコイルパターン21はビアホール用孔15にメッキにより形成された第1のビアホールとしてのビアホール15aにより直列接続されて直列巻線を形成し、第3のコイルパターン31と第4のコイルパターン41はビアホール用孔35にメッキにより形成された第1のビアホールとしてのビアホール35aにより直列接続され直列巻線を形成している。
【0022】
第5のコイルパターン51と第6のコイルパターン26はビアホール用孔55にメッキにより形成された第1のビアホールとしてのビアホール55aにより直列接続され直列巻線を形成し、第7のコイルパターン71と第8のコイルパターン81とはビアホール用孔75にメッキにより形成された第1のビアホールとしてのビアホール75aにより直列接続され直列巻線を形成している。また、一次側のコイルパターンである第2のコイルパターン21と第5のコイルパターン51はビアホール1eにより直列接続され直列巻線を形成している。また、二次側のコイルパターンである第4のコイルパターン41と第7のコイルパターン71はビアホール1fにより直列接続され直列巻線を形成している。結果として、スルーホール用孔12a,52bは一次側端子1a,1bに、スルーホール用孔32c,72dは二次側端子1c,1dになる(図12も参照)。
【0023】
以上のようにして、図11に示すように、多層プリント基板1は厚板状のものとなり、第1、第2、第5、第6のコイルパターン11,21,51,61及び一次側端子1a,1b(スルーホール用孔12a,52b)を有する一次コイル91と、第3、第4、第7、第8のコイルパターン31,41,71,81及び二次側の端子1c,1d(スルーホール用孔32c,72d)を有する二次コイル92とを設けたコイル部90を形成することにより、中心部に円形の貫通孔1gが形成された多層プリント基板1が製造される。
【0024】
次に、このようなコイル部90を有する多層プリント基板1を用いて、平面トランスを製造する方法を説明する。図13は、本実施の形態における平面型トランスの構成を示す分解斜視図である。図13において、ベースの多層プリント基板2のコイル部3は多層プリント基板1のコイル部90(図11)と同様のコイルパターンで形成されており、コア4を装着するために中心部に円形の貫通孔2aと、この貫通孔2aの両側に貫通孔2bとが形成されている。
【0025】
本実施の形態1における平面型トランスにおいては、多層プリント基板1を2枚と、上記ベースの多層プリント基板2を1枚用意し、図13に示すようにベースの多層プリント基板2を多層プリント基板1にて上下から挟み込み、各多層プリント基板のスルーホール1aと3a,1bと3b,1cと3c,1dと3dを接続用ピン5ではんだ付け接続することによって電気的にコイル部90,3,90を三並列化し、さらにその外側からコア4で挟み込み全体を一体化して構成する。上下のコア4の中央脚部4aが多層プリント基板1の貫通孔1g及びベースの多層プリント基板2の貫通孔2aに挿入され,コア4の側方脚部4bは多層プリント基板1の両外側にあってかつベースの多層プリント基板2の貫通孔2bを貫通し、上下のコア4の中央脚部4a同士及び左右の側方脚部4b同士が当接した状態に組み立てられる。以上のようにして一次コイル91、二次コイル92(図11及び図12)を有する多層プリント基板1,2,1が並列に接続された巻数比1:1の平面型トランスができあがる。
【0026】
なお、図13ではベースの多層プリント基板2の上下に1枚ずつ多層プリント基板1を設ける例を示したが、設計仕様に応じて片側に1枚だけ設けてもよく、さらに片側または両側に2枚、3枚と増やしてもよいし、これら多層プリント基板を直列あるいは並列に接続してもよい。また、この図1〜図8では巻数比1:1の例で示したが、例えば図12において二次コイル92の代わりに第3のコイルパターン31と第4のコイルパターン41とを直列に接続したものと第7のコイルパターン71と第8のコイルパターン81とを直列に接続したものとを並列に接続して二次コイルとし、一次コイルと二次コイルの巻数比が2:1になるようにするなど、巻数比を設計条件に応じて変えてもよい。また、巻数比を変える他の方法として、例えば図12において、一次コイル91では、第1のコイルパターン11、第2のコイルパターン21、第5のコイルパターン51、第6のコイルパターン61は、それぞれの巻数を2、2、2、3とし、二次コイル92では、第3のコイルパターン31、第4のコイルパターン41、第7のコイルパターン71、第8のコイルパターン81を、それぞれ巻数を3、3、3、4として巻数比9:13のトランスにするなど、巻数比を設計条件に応じて変えることができる。
【0027】
また、上記のような多層プリント基板1をその各コイルパターンの渦巻部が第1の巻数(例えば2ターン)巻回されたものである第1の多層プリント基板とし、多層プリント基板2をその各コイルパターンの渦巻部が上記第1の巻数とは異なる第2の巻数(例えば3ターン)巻回されたものである第2の多層プリント基板とし、これら第1及び第2の多層プリント基板を所定個数組み合わせて各コイルパターンを直列あるいは並列に接続して任意の巻数比の平面型トランスを構成することができる。
【0028】
以上のように、この実施の形態によれば、第1〜第8のコイルパターン11,21,31,41,51,61,71,81を全て同じ形状の渦巻部11a,21a,31a,41a,51a,61a,71a,81aを有するものとし、これら渦巻部を有する巻線を直列あるいは並列に接続して平面型トランスを構成したので、次のような効果を奏する。
(ア)これらコイルパターンを直列あるいは並列に接続することにより、大電流や高電圧に柔軟に対応できる平面型電磁誘導電器としての平面型トランスを得ることができる。
(イ)多層プリント基板のコイルパターンの渦巻部が全て同じ形状であるので、コイルパターンを単純化することが可能であり、トランスの設計及び製造が容易である。
(ウ)主要な部品が一般的な多層プリント基板とコアのみで構成されているので、組立工数も少なく、品質のばらつきの少ないトランスの製造が可能となる。
【0029】
実施の形態2.
図14〜図24は、この発明を実施するための実施の形態2を示すものであり、図14〜図21は第11〜第14の銅張積層板における第11〜第18のコイルパターンを直視してあるいは透視して示す平面図である。図22は第11〜第14の銅張積層板を積層して一体化した多層プリント基板の斜視図、図23は図22の切断面C−Cにおける多層プリント基板の断面図、図24は多層プリント基板のコイルパターンの結線図である。この実施の形態は、平面型リアクトルを構成したものである。
【0030】
第11の銅張積層板110は、図14に示す絶縁基板118と絶縁基板118上に形成された銅板製の第11のコイルパターン111と図15に示す第12のコイルパターン121とを有する。また、絶縁基板118にビアホール用孔12a〜12d、ビアホール用孔13a、貫通孔14、ビアホール用孔15が形成されている。第11のコイルパターン111は、図1における第1のコイルパターン11と同様のものである。その他の構成についても、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0031】
図15において、第12のコイルパターン121は、渦巻部121aと接続部121dとを有し、絶縁基板118の上に、絶縁基板118のビアホール用孔15の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部121bまで渦巻状に形成され、一方の端部121bと絶縁基板118のビアホール用孔13aのうちの一番上の孔の形成部とが接続部121dにて接続されている。なお、図15では分かりやすいようにコイルパターン121を図14の第11のコイルパターン111と同じ方向から透視した透視図としている。
【0032】
第12の銅張積層板120は、図16に示す絶縁基板138と絶縁基板138上に形成された第13のコイルパターン131と図17に示す第14のコイルパターン141とを有する。また、絶縁基板138にスルーホール用孔32a〜32d、ビアホール用孔33a、貫通孔34、ビアホール用孔35が形成されている。第13のコイルパターン131は、渦巻部131aと接続部131dとを有し、絶縁基板138の上に、外周部にある渦巻部131aの一方の端部131bから時計回りで外側から内側に向かって絶縁基板138のビアホール用孔35の形成部まで渦巻状に形成され、一方の端部131bと絶縁基板138のビアホール用孔33aのうちの一番上の孔の形成部とが接続部131dにて接続されている。
【0033】
図17において、第14のコイルパターン141は、渦巻部141aと接続部141dとを有し、絶縁基板138の上に、絶縁基板138のビアホール用孔35の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部141bまで渦巻状に形成され、一方の端部141bと絶縁基板138のビアホール用孔33aのうちの中央の孔の形成部とが接続部141dにて接続されている。なお、図17では分かりやすいようにコイルパターン141を図16の第13のコイルパターン131と同じ方向から透視した透視図としている。
【0034】
第13の銅張積層板130は、図18に示す絶縁基板158と絶縁基板158上に形成された第15のコイルパターン151と図19に示す第16のコイルパターン161を有する。また、絶縁基板158にビアホール用孔52a〜52d、ビアホール用孔53a、貫通孔54、ビアホール用孔55が形成されている。第15のコイルパターン151は、渦巻部151aと接続部151dとを有し、絶縁基板158の上に、外周部にある渦巻部151aの一方の端部151bから時計回りで外側から内側に向かって絶縁基板158のビアホール用孔55の形成部まで渦巻状に形成され、一方の端部151bと絶縁基板158のビアホール用孔53aのうちの中央の孔の形成部とが接続部151dにて接続されている。
【0035】
図19において、第16のコイルパターン161は、渦巻部161aと接続部161dとを有し、絶縁基板158の上に、絶縁基板158のビアホール用孔55の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部161bまで渦巻状に形成され、一方の端部161bと絶縁基板158のビアホール用孔53aのうちの一番下の孔の形成部とが接続部161dにて接続されている。なお、図19では分かりやすいようにコイルパターン161を図18の第15のコイルパターン151と同じ方向から透視した透視図としている。
【0036】
第14の銅張積層板140は、図20に示す絶縁基板178と絶縁基板178上に形成された第17のコイルパターン171と図21に示す第18のコイルパターン181を有する。また、絶縁基板178にビアホール用孔72a〜72d、ビアホール用孔73a、貫通孔74、ビアホール用孔75が形成されている。第17のコイルパターン171は、渦巻部171aと接続部171dとを有し、絶縁基板178の上に、外周部にある渦巻部171aの一方の端部171bから時計回りで外側から内側に向かって絶縁基板178のビアホール用孔75の形成部まで渦巻状に形成され、一方の端部171bと絶縁基板178のビアホール用孔73aのうちの一番下の孔の形成部とが接続部171dにて接続されている。
【0037】
図21において、第18のコイルパターン181は、渦巻部181aと接続部181dとを有し、絶縁基板178の上に、絶縁基板178のビアホール用孔75の形成部から時計回りで内側から外側に向かって一方の端部181bまで渦巻状に形成され、一方の端部181bと絶縁基板178のビアホール用孔72bの形成部とが接続部181dにて接続されている。なお、図21では分かりやすいようにコイルパターン181を図20の第17のコイルパターン171と同じ方向から透視した透視図としている。
【0038】
上記のような第11〜第14の銅張積層板110〜140をプリプレグ50で挟んで積層し、プリプレグを固化して図10に示したものと同じように一体化して、図22及び図23に示す多層プリント基板とする。
【0039】
このとき、図24に示すように、第11の銅張積層板110のビアホール用孔13aのうちの一番上の孔(図15)と第12の銅張積層板120のビアホール用孔33aのうちの一番上の孔(図16)とをメッキにより第2のビアホールとしてのビアホール101eを形成して接続する。第12の銅張積層板120のビアホール用孔33aのうちの中央の孔(図17)と第13の銅張積層板130のビアホール用孔53aのうちの中央の孔(図18)とをメッキにより第2のビアホールとしてのビアホール101eを形成して接続する。第13の銅張積層板130のビアホール用孔53aのうちの一番下の孔(図19)と第14の銅張積層板140のビアホール用孔73aのうちの一番下の孔(図20)とをメッキにより第2のビアホールとしてのビアホール101eで接続する。また、スルーホール12a、72bはそれぞれ第11及び第18のコイルパターン111,181にメッキにより接続して、スルーホール12a、72bは、外部接続端子101a、101bとなる(図24参照)。
【0040】
以上により、図22〜図24に示すように、第11〜第18の全てのコイルパターン111〜118が直列に接続されたリアクトルのコイル部103を有する多層プリント基板101ができあがる。このような多層プリント基板101を実施の形態1の図13と同様に1枚のベースの多層プリント基板を2枚の多層プリント基板101にて挟み、コアを装着して、コアを有する平面型リアクトルとする。
【0041】
以上のように、この実施の形態によれば、第1〜第8のコイルパターン111,121,131,141,151,161,171,181を全て同じ形状の渦巻部111a,121a,131a,141a,151a,161a,171a,181aを有するものとし、これら渦巻部を直列あるいは並列に接続してリアクトルの巻線部とすることにより平面型リアクトルを構成したので、次のような効果を奏する。
(ア)これらコイルパターンを直列あるいは並列に接続することにより、大電流や高電圧に柔軟に対応できる平面型電磁誘導電器としての平面型リアクトルを得ることができる。
(イ)多層プリント基板のコイルパターンの渦巻部が全て同じ形状であるので、コイルパターンを単純化することが可能であり、リアクトルの設計・製造が容易である。
(ウ)主要な部品が一般的な多層プリント基板とコアのみで構成されているので、組立工数も少なく、品質のばらつきの少ない平面型リアクトルの製造が可能となる。
【0042】
なお、以上の実施の形態における第1〜第4の銅張積層板10,20,30,40,第11〜第14の銅張積層板110,120,130,140がこの発明における複合積層板である。また、渦巻部11a,21a,31a,41a,51a,61a,71a,81a,111a,121a,131a,141a,151a,161a,171a,181aがこの発明における各コイルパターンの本体部である。多層プリント基板1のコイル部90及びベースの多層プリント基板2のコイル部3、リアクトルのコイル部103がこの発明における巻線部である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1である第1の銅張積層板を示すもので、図1(a)は第1のコイルパターンを示す平面図、図1(b)は第2のコイルパターンを示す平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1である第1の銅張積層板の第2のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図3】この発明の実施の形態1である第2の銅張積層板における第3のコイルパターンを示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態1である第2の銅張積層板における第4のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図5】この発明の実施の形態1である第3の銅張積層板における第5のコイルパターンを示す平面図である。
【図6】この発明の実施の形態1である第3の銅張積層板における第6のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図7】この発明の実施の形態1である第4の銅張積層板における第7のコイルパターンを示す平面図である。
【図8】この発明の実施の形態1である第4の銅張積層板における第8のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図9】第1〜第4の銅張積層板を積み重ねた状態を示す斜視図である。
【図10】第1〜第4の銅張積層板を積層して一体化して形成した多層プリント基板の斜視図である。
【図11】図10の切断面A−Aにおける多層プリント基板の断面図である。
【図12】図10の多層プリント基板のコイルパターンの結線図である。
【図13】図10の多層プリント基板を用いた平面型トランスの分解斜視図である。
【図14】この発明の実施の形態2である第11の銅張積層板における第11のコイルパターンを示す平面図である。
【図15】この発明の実施の形態2である第11の銅張積層板における第12のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図16】この発明の実施の形態2である第12の銅張積層板における第13のコルパターンを示す平面図である。
【図17】この発明の実施の形態2である第12の銅張積層板における第14のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図18】この発明の実施の形態2である第13の銅張積層板における第15のコイルパターンを示す平面図である。
【図19】この発明の実施の形態2である第13の銅張積層板における第16のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図20】この発明の実施の形態2である第14の銅張積層板における第17のコイルパターンを示す平面図である。
【図21】この発明の実施の形態2である第14の銅張積層板における第18のコイルパターンを透視して示す透視図である。
【図22】第11〜第14の銅張積層板を積層して一体化して形成した多層プリント基板の斜視図である。
【図23】図22の切断面C−Cにおける多層プリント基板の断面図である。
【図24】図22の多層プリント基板のコイルパターンの結線図である。
【符号の説明】
【0044】
1 多層プリント基板、1e,1f ビアホール、2 ベースの多層プリント基板、
3 ベースの多層プリント基板のコイル部、4 コア、
10,20,30,40 第1〜第4の銅張積層板、
11,21,31,41,51,61,71,81 第1〜第8のコイルパターン、
11a,21a,31a,41a 第1〜第4のコイルパターンの渦巻部、
15a,35a,55a,75a ビアホール、
51a,61a,71a,81a 第5〜第8のコイルパターンの渦巻部、
90 コイル部、91 一次コイル、92 二次コイル、101 多層プリント基板、
101e ビアホール、
110,120,130,140 第11〜第14の銅張積層板、
111,121,131,141 第11〜第14のコイルパターン、
151,161,171,181 第15〜第18のコイルパターン、
111a,121a,131a,141a 第11〜第14のコイルパターンの渦巻部、
151a,161a,171a,181a 第15〜第18のコイルパターンの渦巻部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の複合積層板が積層された多層プリント基板を有する平面型電磁誘導電器であって、
上記複合積層板は、絶縁基板と直列巻線とを有し、
上記直列巻線は、上記絶縁基板の一方の面及び他方の面にそれぞれ形成された第1及び第2のコイルパターンの本体部が上記絶縁基板に形成された第1のビアホールを介して直列に接続されたものであって、上記各本体部は中心部から外周部に向かって同じ形状の渦巻き状に所定巻数巻回されかつ上記一方の面側から見たときに上記本体部同士が重なるようにして導電材料で形成されたものであり、
上記多層プリント基板は、上記複合積層板が所定枚数積層されたものであって、上記直列巻線が第2のビアホールを介して互いに接続されて巻線部とされたものである平面型電磁誘導電器。
【請求項2】
上記巻線部は、積層された上記複数の複合積層板の上記直列巻線が交互に接続されて第1及び第2のコイルとされるとともに上記第1及び第2のコイルの一方が平面型トランスの一次コイルとされ他方が二次コイルとされたものであることを特徴とする請求項1に記載の平面型電磁誘導電器。
【請求項3】
上記多層プリント基板が複数設けられたものであって、上記多層プリント基板の上記一次コイルが互いに接続されるとともに上記二次コイルが互いに接続され、平面型トランスとされたものであることを特徴とする請求項2に記載の平面型電磁誘導電器。
【請求項4】
上記多層プリント基板は上記本体部が第1の巻数巻回されたものである第1の多層プリント基板と上記本体部が上記第1の巻数とは異なる第2の巻数巻回されたものである第2の多層プリント基板とが設けられたものであって、上記第1及び第2の多層プリント基板の上記各一次コイルが互いに接続されるとともに上記各二次コイルが互いに接続され、平面型トランスとされたものであることを特徴とする請求項3に記載の平面型電磁誘導電器。
【請求項5】
上記巻線部は、積層された上記複数の複合積層板の上記直列巻線がさらに直列あるいは並列に接続され平面型リアクトルの巻線部とされたものであることを特徴とする請求項1に記載の平面型電磁誘導電器。
【請求項6】
上記巻線部を貫通するコアを有するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の平面型電磁誘導電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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