説明

平面放電ランプ装置

【課題】均一に発光を行える、平面放電ランプ装置を提供する。
【解決手段】放電空間全体に繊維集合体が存在している。そのため、放電空間で発生した不可視光線および/又は可視光線が繊維集合体により、反射、屈折することで、発生時と進行方向を異ならせて、その進行方向をランダムに変更する。そのため、平面放電ランプ装置に局所的に放電が発生する、あるいは発光に関わらない部材が存在することで、平面放電ランプ装置中に発光しない部位がある場合でも、本平面放電ランプ装置は発光がランダムに拡散し易い性質を有するために、均一に発光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平面放電ランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、紫外線殺菌ライトや映像機器のバックライトなど、紫外線などの不可視光線や可視光線を発光できる、光源を備えた電子機器の薄型化や消費電力の低減化が求められている。光源を備えた電子機器の厚さは、光源の厚さに依存するものであるとともに、光源を備えた電子機器の消費電力は、光源が発光する際の消費電力に依存するものである。そのため、薄く、消費電力が少なくて済む発光効率の良い、光源の開発が求められている。
【0003】
薄型化が容易な光源として、平板形状の平面放電ランプ装置(特許文献1)が知られている。平面放電ランプ装置とは、それぞれの対向表面側に、誘電体材料からなる誘電体層を対向した状態で、一対の電極を設け、対向している誘電体材料からなる誘電体層同士の間に、放電発光ガスを充填して封止することで、放電空間が形成されてなる。
【0004】
平面放電ランプ装置の主な発光原理は、
1.一対の電極間に電圧差が生じることで、電極の対向表面側に設けられている誘電体材料の各々が分極する、
2.分極した誘電体材料同士の間(以降、放電空間と呼ぶ)で放電が発生する、
3.放電空間に空気や希ガスなど放電発光ガスが存在することで、放電により放電空間から不可視光線および/又は可視光線が発生する、
である。
【0005】
このような発光原理により、平面放電ランプ装置は主に不可視光線および若干の可視光線を発光することのできる平面形状をした光源である。
【0006】
また、誘電体材料や電極の表面に、不可視光線と反応して可視光線を放出できる蛍光物質を含むことで、平面放電ランプ装置は主に可視光線を発光することのできる平面形状をした光源となる。
【0007】
上述の平面放電ランプ装置において、放電により発生する不可視光線および/又は可視光線は主に、放電の発生方向と平行をなす方向に発光する傾向がある。そのため、平面放電ランプ装置は発生した不可視光線および/又は可視光線を拡散し難い性質を有することから、放電空間に局所的な放電が発生している、あるいは発光を阻害する部材が存在していることで、平面放電ランプ装置に発光しない部位が生じた場合、平面放電ランプ装置は発光ムラを生じやすい。
【0008】
また、上述の平面放電ランプ装置において、放電空間で放電を発生させるために必要となる電圧差は、主に放電空間の距離に依存する。つまり、放電空間の距離が短い(誘電体材料同士の離間間隔が狭い)ほど、放電距離を短くすることができるため、電圧差が少ない状態でも放電が行える。しかし、放電空間の距離を短くした場合、平面放電ランプ装置の全体に渡って誘電体材料同士の離間を一定に保つことは困難となる。特に平面放電ランプ装置が大型化すればするほど、その離間を一定に保つことはより困難となる。
【0009】
誘電体材料同士の離間が一定でないと、該距離の狭い箇所で局所的に放電が発生する傾向がある。平面放電ランプ装置は放電の発生により発光するため、局所的な放電が生じることは発光ムラの発生を招き、平面放電ランプ装置を均一に発光することが困難である。
【0010】
均一な発光が行える平面放電ランプ装置に係る発明として、第1基板と第2基板(誘電体材料同士)の間隔を、所要の間隔毎に隔壁で区画することで、一定に保つことができる平面放電ランプ装置(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許3193749号公報(特許請求の範囲、図2)
【特許文献2】特開2009-59643号公報(特許請求の範囲、0003-0005、0045、図2)
【0012】
しかしながら、特許文献2が開示するように、隔壁を第1基板と第2基板(誘電体材料同士)の間に設けることで、放電空間の距離を一定にしようとした場合、第1基板と第2基板(誘電体材料同士)の隔壁が存在していない箇所で、放電空間の距離が不均一となる傾向がある。そのため、なお局所的な放電の発生を招き、平面放電ランプ装置を均一に発光することが困難であることが推測された。
【0013】
更に、放電空間の距離を一定に保つためには、多数の隔壁を設ける必要性があるものの、隔壁が存在している部位には放電発光ガスが存在していないことから、隔壁が発光を阻害する部材として働き、隔壁の存在している部位からは不可視光線および/又は可視光線が発生しない。そのため、発光に関わらない隔壁により発光ムラが発生することで、隔壁を有する平面放電ランプ装置を均一に発光することが困難であることが推測された。
【0014】
上述した従来技術からなる平面放電ランプ装置において、誘電体材料や電極の表面に、不可視光線と反応して可視光線を放出できる蛍光物質を含むことで、可視光線を発光することのできる平面放電ランプ装置とした場合にも、同様に、可視光線の発光ムラが生じる平面放電ランプ装置であることが推測された。
【0015】
更に、可視光線は不可視光線が蛍光物質と反応することにより発生するものであることから、平面放電ランプ装置における可視光線の発光の効率を向上するためには、不可視光線と蛍光物質との反応効率を、蛍光物質の量を増やすなどして向上する必要性があった。しかし、従来技術において蛍光物質は誘電体材料や電極の表面に付着されていることから、蛍光物質の量を増大するのには限りがあるとともに、不可視光線と蛍光物質とが反応する効率が低いものであった。
【0016】
そして、平面放電ランプ装置を自由に変形が可能な、フレキシブルな光源として使用する場合、変形により誘電体材料および電極に湾曲が生じる。上述した従来技術からなる平面放電ランプ装置を変形して使用すると、湾曲が生じた部分で放電空間の距離が一定に保たれなくなり、局所的な放電の発生を招いて、平面放電ランプ装置を均一に発光させることが困難である。
【0017】
更に、湾曲が生じた部分で誘電体材料同士が接触してショート(放電が生じない状態となること)し、平面放電ランプ装置を発光できない恐れもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述した従来技術が有する限界を超えるべくなされたもので、平面放電ランプ装置全体で均一に発光を行える、平面放電ランプ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に係る平面放電ランプ装置は、
「それぞれの対向表面側に、誘電体材料からなる誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、放電発光ガスが充填されて封止された放電空間が形成され、対向する該誘電体材料の間に電圧差が生じることで、不可視光線および/又は可視光線を発生する平面放電ランプ装置において、
該放電空間全体に繊維集合体が存在していることを特徴とする、平面放電ランプ装置。」
である。
【0020】
請求項2に係る平面放電ランプ装置は、
「対向する前記誘電体材料同士の間の距離が、前記繊維集合体により一定に保たれていることを特徴とする、請求項1に記載の平面放電ランプ装置。」
である。
【0021】
請求項3に係る平面放電ランプ装置は、
「前記繊維集合体が、蛍光物質を含んでいることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の平面放電ランプ装置。」
である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1によれば、本発明に係る平面放電ランプ装置は、放電空間全体に繊維集合体が存在している。そのため、放電空間で発生した不可視光線および/又は可視光線が繊維集合体により、反射、屈折することで、発生時と進行方向を異ならせて、その進行方向をランダムに変更する。
そのため、平面放電ランプ装置に局所的に放電が発生する、あるいは発光に関わらない部材が存在することで、平面放電ランプ装置中に発光しない部位がある場合でも、本発明の平面放電ランプ装置は発光がランダムに拡散し易い性質を有するために、均一に発光することができる、平面放電ランプ装置である。
更に、放電空間の全体に繊維集合体が存在していることによって、放電空間が繊維集合体を構成する繊維により、細かい空間に分割されているため、放電空間の全体(繊維集合体の空隙)で均一に放電が発生する。そのために、均一に発光することができる、平面放電ランプ装置である。
【0023】
本発明の請求項2によれば、本発明に係る平面放電ランプ装置は、対向する前記誘電体材料同士の間の距離が、前記繊維集合体により一定に保たれている。
そのため、
(1)対向する誘電体材料同士の間の距離が一定に保たれているために、均一に放電を発生でき、
(2)放電空間の距離が短い(誘電体材料同士の離間間隔が狭い)状態であっても、誘電体材料同士の間に繊維集合体を介在させることで、放電空間の間隔を全体において容易に一定とすることができ、
(3)平面放電ランプ装置を自由に変形が可能な、フレキシブルな光源とした場合にも、誘電体材料同士の間に繊維集合体が介在しているため、変形により誘電体材料および電極に湾曲が生じたとしても、局所的な放電ならびにショート(放電が生じない状態となること)の発生を防ぐことができるために、均一に発光することができる、平面放電ランプ装置である。
【0024】
本発明の請求項3によれば、本発明に係る平面放電ランプ装置は、請求項1および請求項2に係る作用効果を示す平面放電ランプ装置であるとともに、繊維集合体が蛍光物質を含んでいる。
放電空間の全体に存在している表面積の大きい繊維集合体に、蛍光物質が含まれていることで、放電空間全体に多量の蛍光物質が均一に存在している状態となる。そのため、放電空間の全体(繊維集合体の空隙)で発生した不可視光線は蛍光物質と効率良く反応できるため、可視光線の発光効率が向上した、平面放電ランプ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の平面放電ランプ装置に係る、放電空間と垂直をなす方向における断面図である。
【図2】(a)実施例1の平面放電ランプ装置による、可視光線の発光状態を示した写真である。(b)比較例1の平面放電ランプ装置による、可視光線の発光状態を示した写真である。
【図3】(a)実施例2の平面放電ランプ装置による、可視光線の発光状態を示した写真である。(b)比較例2の平面放電ランプ装置による、可視光線の発光状態を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の平面放電ランプ装置について、図1を用いて説明する。
【0027】
図1に示す平面放電ランプ装置は、紙面上方向から紙面下方向に向かい、パワーサプライ(101)と接続した電極(102a)、電極(102a)の表面に設けられた誘電体材料(103a)、放電発光ガスと繊維集合体(104)が全体に存在している放電空間(106)とそれを封止しているシール材(105)、誘電体材料(103b)とその表面に設けられた電極(102b)、電極(102b)と接続したアース(107)の順に構成されてなる。
【0028】
なお、本発明でいう各部材の「厚さ」とは、図1の紙面上方向から紙面下方における、各部材の長さを指す。なお、各部材の「厚さ」の測定方法は、JIS B 7502に規定する方法に準拠する、すなわち、5N荷重時の外側マイクロメーターによる測定値をいう。
【0029】
図1に示す平面放電ランプ装置の発光原理は、
(1)パワーサプライ(101)により電極(102a)へ電圧が印加されるとともに、対向して存在しているもう一方の電極(102b)がアース(107)されていることで、電極(102a)の表面に設けられた誘電体材料(103a)と、もう一方の電極(102b)の表面に設けられた誘電体材料(103b)とは、互いに引き付け合う極性に分極する、
(2)放電発光ガスおよび繊維集合体(104)が全体に存在している、放電空間(106)内で放電が発生する、
(3)放電発光ガス雰囲気下で放電が発生することで、放電空間(106)から主に不可視光線および若干の可視光線が発生する、
(4)発生した主に不可視光線および若干の可視光線が、平面放電ランプ装置を透過する、
ことで、主に不可視光線および若干の可視光線を発光できる。
【0030】
なお、本発明でいう可視光線とは、360nm〜830nmの波長を有する電磁波のことを指し、不可視光線とは上述の範囲外の波長を有する、紫外線や赤外線、放電によって電離した高いエネルギーを持つ電磁波のことを指す。
【0031】
また、繊維集合体(104)が蛍光物質を含むことで、主に可視光線を発光することのできる、図1に示す平面放電ランプ装置の発光原理は、(1)〜(2)項は同様の原理であるとともに、
(3)放電空間(106)で発生した、主に不可視光線および若干の可視光線が、繊維集合体(104)に含まれている蛍光物質と反応することで、蛍光物質から可視光線が発生する、
(4)発生した可視光線が、平面放電ランプ装置を透過する、
ことで、可視光線を発光できる。
【0032】
以降、本発明に係る平面放電ランプ装置を構成する、各部材について、図1を用いて説明する。なお、本発明でいう「放電空間全体に繊維集合体が存在している」とは、繊維集合体(104)が放電空間(106)の全体に分布して存在し、繊維集合体(104)の両主面がそれぞれ両誘電体材料(103a、103b)と当接していることを指す。例えば、繊維集合体(104)の厚さ方向に貫通孔が形成されている場合や、繊維集合体(104)が放電空間(106)中で自由に移動できる場合は、「放電空間全体に繊維集合体が存在している」ものではない。
【0033】
パワーサプライ(101)として、例えば、ネオン管点灯用のネオントランスなどの交流高電圧発生装置などを用いることができる。好適に電極(102a)に電圧を印加できるのであれば、パワーサプライ(101)の種類や電圧の印加方法は限定されるものではない。
【0034】
パワーサプライ(101)により電極(102a)へと印加される電圧の大きさは、電極間(102a、102bの間)に電圧差が生じることで、電極(102a、102b)の表面に設けられている誘電体材料の各々(103a、103b)が分極して、放電空間(106)で好適に放電が発生するのであれば、特に限定されるべきものではない。例えば、求める発光の量、放電空間(106)の距離、放電発光ガスの種類とその分圧、繊維集合体(104)の諸物性、温度などの諸条件によって、放電空間(106)で放電が発生するために必要な、パワーサプライ(101)により電極(102a)へと印加されるべき、好適な電圧の大きさが変化する。そのため、放電空間(106)で好適に放電が発生するように、印加される電圧の大きさは、適宜、調整されるべきものである。
【0035】
なお、図1ではもう一方の電極(102b)がアース(107)されている状態を示しているが、パワーサプライ(101)によりもう一方の電極(102b)を、上述した電極(102a)の極性と異なる極性に帯電しても良い。
【0036】
特に限定するものではないが、パワーサプライ(101)により両電極(102a、102b)の間に生じる電圧差が、500〜20000Vの範囲内となるようにするのが好ましい。電圧差の上限は基本的に無いが、電圧差が20000Vを超えると、装置の配線などの絶縁性が課題になる傾向があり、500V未満であると、放電を発生し難いものとなる。より好適な電圧差は1000V〜15000Vの範囲内である。
【0037】
なお、パワーサプライ(101)本体に接続されているアースならびに電源の供給元は省略し、図示していない。
【0038】
電極(102a、102b)は、パワーサプライ(101)およびアース(107)により、正極あるいは負極のいずれかに帯電できるものであれば良い。例えば、金属、導電性ポリマーなどの体積固有抵抗値が、好ましくは109Ωcm以下の導電性材料からなるのが好ましい。
【0039】
なお、電極(102a、102b)の形状として、例えば、板形状、フィルム形状、棒形状などを採用することができるとともに、例えば、メッシュや不織布などの多孔性、あるいは非多孔性の電極(102a、102b)であることができる。後述するように、電極(102a、102b)は、その一方の表面に誘電体材料(103a、103b)を配置していることから、例えば、板形状やフィルム形状などの、広い面積の主面を有する形状をした電極(102a、102b)であることが好ましい。
【0040】
なお、電極(102a、102b)が誘電体材料(103a、103b)の一方の表面に設けられている形態として、電極(102a、102b)が、例えば、融着、蒸着、焼結などにより誘電体材料(103a、103b)の一方の表面上に一体化している状態、電極(102a、102b)が誘電体材料(103a、103b)の一方の表面上に導電性を有するバインダで接着一体化している状態、あるいは、電極(102a、102b)と誘電体材料(103a、103b)とが、互いに分別できるように接触している状態などを指す。
【0041】
放電空間(106)で発生した不可視光線および/又は可視光線を、効率よく平面放電ランプ装置の外に透過できるように、厚さが薄い多孔性の電極(102a、102b)であることが好ましい。あるいは、電極(102a、102b)は、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)や酸化インジウム-スズ(ITO)などが、誘電体材料(103a、103b)の主面に蒸着や焼結して、薄いフィルム状に形成された透明電極(102a、102b)であるのが好ましい。
【0042】
放電空間(106)で発生した不可視光線および/又は可視光線を、一方の電極側(例えば、電極(102b)側)のみに向かい発光させる場合、対向する電極(例えば、電極(102a))は不可視光線および/又は可視光線を、一方の電極側(例えば、電極(102b)側)へと光を反射しやすいように、例えば、アルミなどの金属の蒸着膜からなる電極(例えば、102a)であるのが好ましい。
【0043】
自由に変形が可能な、フレキシブルな平面放電ランプ装置とする場合には、変形が容易となるように、例えば、厚さが1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下の電極(102a、102b)を使用した、平面放電ランプ装置とするのが好ましい。
【0044】
誘電体材料(103a、103b)は、分極する性質を有するものであれば良い。例えば、ソーダガラスや石英ガラスなどの無機ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアクリルアミドなどの有機ポリマーなどからなるのが好ましい。
【0045】
後述するように、誘電体材料(103a、103b)は放電空間(106)を形成するものであることから、放電空間(106)の封止性に富むように、非多孔性であるとともに、放電、不可視光線および/又は可視光線により分解あるいは劣化し難い材料からなるのが好ましい。そして、放電空間(106)における放電を均一に発生できるように、誘電体材料(103a、103b)は平滑な表面を有し、板形状やフィルム形状であるのが好ましい。
【0046】
また、放電空間(106)で発生した不可視光線および/又は可視光線を、効率よく平面放電ランプ装置の外に透過できるように、誘電体材料(103a、103b)は、例えば、ガラスなどの透明な材料からなるものであるのが、より好ましい。そして、自由に変形が可能な、フレキシブルな平面放電ランプ装置とした場合に、変形が容易となるように、誘電体材料(103a、103b)の厚さは、例えば、1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下であるのが好ましい。
【0047】
また、本発明に係る平面放電ランプ装置を、可視光線を発光できる光源として使用する場合、一般的に平面放電ランプ装置から不可視光線が発光しないことが求められている。そのため、誘電体材料(103a、103b)は、不可視光線を吸収あるいは反射する材料からなるものであるのが好ましい。このような不可視光線を吸収あるいは反射する材料として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛あるいはこれらをコーティングしたガラスやプラスチック、また、通常建築物の窓材料として用いるソーダライムガラスなどを例示できる。
【0048】
シール材(105)は、放電空間(106)の全体に存在する繊維集合体(104)、例えば空気や希ガスなどの放電発光ガス、蛍光物質などが放電空間(106)から漏洩しないように封止する役割をなす。
【0049】
誘電体材料(103a、103b)と接触して使用されることから、シール材(105)は、例えば、エポキシ樹脂などの有機ポリマー、低融点ガラスなどの無機ポリマ−など、平面放電ランプ装置をショート(放電が生じない状態となること)することのない材料からなるのが好ましい。更に、後述するように、シール材(105)は放電空間(106)を形成するものであることから、放電、不可視光線および/又は可視光線により分解あるいは劣化し難い材料からなるものが好ましい。
【0050】
なお、本発明にかかる平面放電ランプ装置においては、放電空間(106)の距離は後述する繊維集合体(104)に依存するものであるため、シール材(105)自体は放電空間(106)の距離を調整する働きを示すものではない。図1では誘電体材料(103a、103b)の間にシール材(105)が存在している形態を示しているが、その封止の形態は限定されるものではなく、図1における誘電体材料(103a、103b)および電極(102a、102b)の、紙面上側面をシール材(105)で囲むことにより、放電空間(106)を封止しても良い。
【0051】
放電空間(106)は、対向した誘電体材料(103a、103b)同士が離間することで形成される空間である。なお、本発明に係る平面放電ランプ装置における放電空間(106)の距離は、後述する繊維集合体(104)の厚さに依存するものである。
【0052】
放電空間(106)に放電発光ガスとして、例えば、希ガスなどが充填された状態で放電が行われると、不可視光線の発生する量が増加する。この発光効率の向上は、放電空間(106)における放電発光ガスの分圧に依存するものである。放電発光ガスの分圧が高いものであるほど発光の効率は向上するが、誘電体材料(103a、103b)同士の間の分極による電圧差を大きくしなければ放電が生じない。そのため放電発光ガスの分圧は、適宜、調整するのが好ましい。上述した希ガスとして、例えば、キセノンなどの希ガス、微量の水銀蒸気、など通常用いられるガスを例示できる。
【0053】
繊維集合体(104)は放電空間(106)の全体に存在していることで、放電空間(106)で発生した不可視光線および/又は可視光線をランダムに拡散し易くする働き、放電空間(106)を細かい空間に分割する働き、放電空間(106)の距離を平面放電ランプ装置の全体にわたり一定に保つ働きを示す。
【0054】
繊維集合体(104)は放電が発生する放電空間(106)の内部に存在しているために、放電、不可視光線および/又は可視光線により分解あるいは劣化し難い材料からなるものが好ましい。また、繊維集合体(104)は対向する誘電体材料(103a、103b)に接触した状態で放電空間(106)に存在することから、平面放電ランプ装置をショート(放電が生じない状態となること)することのない材料からなる繊維より構成されるのが好ましい。
【0055】
本発明に係る繊維集合体(104)を構成する、好ましい繊維として、例えば、Eガラスや石英ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウムを使用したガラス繊維、またアルミナやジルコニアなどのセラミック繊維が例示できる。更に、ポリエチレン繊維やポリエステル繊維などの熱可塑性繊維、ポリテトラフロロエチレン繊維やポリイミド繊維などの耐熱性繊維など有機ポリマーからなる繊維も使用できる。
【0056】
なお、放電、不可視光線および/又は可視光線により、分解あるいは劣化する恐れのある有機ポリマー材料を用いてなる、有機ポリマー繊維を用いて繊維集合体(104)を構成する場合、該有機ポリマー繊維の表面に、前記ガラスやセラミック材料がコーティングされることで、該有機ポリマー繊維の分解あるいは劣化が防がれるため、好ましい。
【0057】
放電の発生量が多く、放電により発生した不可視光線および/又は可視光線を、効率よく平面放電ランプ装置の外に透過できるように、繊維集合体(104)の空隙率は、40%〜99%であるのが好ましい。空隙率が40%よりも低いと、放電の発生量が低下するとともに繊維集合体(104)により不可視光線および/又は可視光線が遮断されることで、効率良く平面放電ランプ装置の外に透過することが困難となる傾向があり、空隙率が99%より高いと、不可視光線および/又は可視光線をランダムに拡散する効果が少ない傾向がある。繊維集合体(104)の空隙率は50%〜95%であるのがより好ましく、70%〜90%であるのが最も好ましい。
【0058】
なお、空隙率は以下の式より算出した値をいう。
P={1−M/(T×D)}×100
ここで、Pは空隙率(%)、Mは繊維集合体(104)の目付(g/cm)、Tは繊維集合体(104)の厚さ(cm)、Dは繊維集合体(104)を構成する繊維構成ポリマーの密度(g/cm)をそれぞれ意味する。なお、「目付」は、JIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定方法)に規定する方法に基づいて得られる坪量をいう。
【0059】
更に、放電空間(106)で発生した不可視光線および/又は可視光線をランダムに拡散し易くでき、放電空間(106)を細かい空間に分割でき、そして、効率よく平面放電ランプ装置の外に透過できるように、繊維集合体(104)を構成する繊維断面の直径は、0.1μm〜100μmであるのが好ましい。繊維断面の直径が0.1μmよりも小さいと、繊維集合体(104)により不可視光線および/又は可視光線をランダムに拡散する効果が少ない傾向があり、繊維断面の直径が100μmよりも大きいと、不可視光線および/又は可視光線が遮断されることで、効率良く平面放電ランプ装置の外に透過することが困難となる傾向がある。そのため、繊維集合体(104)を構成する繊維断面の直径は、1μm〜50μmであるのがより好ましく、5μm〜20μmであるのが最も好ましい。
【0060】
繊維集合体(104)は、一種類の繊維から構成されているものに限らず、諸物性が異なる複数種類の繊維から構成されていても良い。また、複数種類のポリマーを含む繊維から構成したものでも良い。複数種類のポリマーを含む繊維の例として、繊維が低融点ポリマーと高融点ポリマーとを備えており、低融点ポリマーが繊維表面に露出した複合型融着繊維(例えば、繊維断面における配置が芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型など)が挙げられる。
【0061】
上述の複合型融着繊維を用いると、バインダーを用いることなく、熱融着処理により繊維同士を融着して繊維集合体(104)とすることができるため、好ましい。
【0062】
なお、本発明に係る繊維集合体(104)は、どのような方法によって形成されても良い。例えば、溶媒を用いずに繊維を開繊した乾式繊維ウェブ、溶媒を用いて繊維を開繊した湿式繊維ウェブ、直接法(例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)を用いて製造した繊維ウェブを、繊維集合体(104)として使用できる。また、上述のようにして製造された繊維ウェブを、繊維ウェブを構成するポリマー成分のガラス転移温度よりも、高い温度で加熱処理して繊維の交点同士を融着して一体化する、あるいはバインダーを用いて繊維の交点同士を接着して一体化することで、繊維同士が一体化してなる不織布を、繊維集合体(104)として使用できる。
【0063】
繊維配向を有していない、繊維ウェブあるいは不織布を繊維集合体(104)として用いると、放電空間(106)で発生した不可視光線および/又は可視光線が、繊維集合体(104)によって、その進行方向をよりランダムに変更した状態で、平面放電ランプ装置の外部へと透過する傾向がある。そのため、繊維集合体(104)は繊維配向を有していないものであるのが好ましい。繊維配向を有していない繊維集合体(104)として、例えば、直接法(例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)を用いて製造された繊維ウェブや不織布、溶媒を用いて繊維を開繊した湿式繊維ウェブや該湿式繊維ウェブからなる不織布などを例示できる。
【0064】
平面放電ランプ装置を自由に変形が可能な、フレキシブルな光源として使用しようとする場合、変形が容易となるように、繊維集合体(104)の厚さは、5mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下であるのが好ましい。繊維集合体(104)の厚さの下限値は、特に限定されるものではないが、現実的に0.1μm以上の厚さであるのが好ましい。繊維集合体(104)の厚さがこれよりも薄いと、平面放電ランプ装置を変形した際に繊維集合体(104)が破断する恐れがある。
【0065】
全体における厚さが一定に調整された、繊維ウェブあるいは不織布を繊維集合体(104)として用いることで、放電空間(106)の距離を一定に保つことができる。繊維集合体(104)の全体における厚さを一定に調整するためには、繊維集合体(104)の製造時に、例えば、加熱ロール処理を行うなど公知の厚さ調整手段を用いることができる。
【0066】
本発明に係る平面放電ランプ装置は、放電空間(106)全体に、蛍光物質(図1では図示せず)を含んでいる繊維集合体(104)が存在していることで、可視光線を発光する光源とすることができる。
【0067】
なお、本発明でいう「含んでいる」とは、上述した蛍光物質が、繊維集合体(104)を構成している繊維の表面のみに分布している状態、繊維集合体(104)を構成している繊維の内部のみに分布している状態、繊維の内部および表面に分布している状態のいずれをも指す。
【0068】
放電空間(106)の全体に存在している表面積の大きい繊維集合体(104)に、蛍光物質が含まれていることで、蛍光物質は放電空間(106)の全体に存在している状態となる。そのため、本発明に係る平面放電ランプ装置は、放電空間(106)中に多量の蛍光物質を含むことができるため、放電空間(106)で発生した不可視光線が、蛍光物質と効率良く反応できる。
【0069】
繊維集合体(104)に含むことができる蛍光物質として、公知の蛍光物質を使用することができる。例えば、ユーロピウムを添加した酸化イットリウム系化合物、燐酸ランタン系化合物など、目的とする発光色にあわせた蛍光物質が例示できるとともに、その形状は、例えば、粒子状、繊維状、不定形状などの形状として使用することができる。
【0070】
繊維集合体(104)に蛍光物質を含ませる方法として、繊維をなす有機ポリマーおよび/又は無機ポリマーと蛍光物質とを混和したポリマー溶液を、直接法(例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)へと導き、繊維集合体(104)を形成する方法、有機ポリマーおよび/又は無機ポリマーと蛍光物質とを混和したポリマーを、一成分として含んでなる繊維を紡糸し、この繊維を用いて繊維集合体(104)を形成する方法、モノマーあるいはオリゴマーと蛍光物質が混和しているゾル溶液を、モノマーあるいはオリゴマーの縮重合を進行させる(ゾルゲル法)ことで繊維化した後、又は繊維化した繊維を直接集積させて繊維集合体(104)を形成する方法、或いは繊維集合体(104)に蛍光物質を付着させる方法が挙げられる。
【0071】
繊維集合体(104)に蛍光物質を付着させる方法として、蛍光物質が分散している溶液に繊維集合体(104)、あるいは繊維集合体(104)を構成できる繊維を含浸する方法、スプレーにより蛍光物質を繊維集合体(104)、あるいは繊維集合体(104)を構成する繊維に付着する方法、加熱した蛍光物質を繊維集合体(104)、あるいは繊維集合体(104)を構成する繊維に衝突させて溶融接着する方法などを例示できる。
【0072】
好適に可視光線の発光が行えるように、繊維集合体(104)に蛍光物質を含ませる方法は、適宜、選択する。
【0073】
本発明に係る繊維集合体(104)が含む蛍光物質の量は、例えば、蛍光物質の諸物性や諸特性、求める発光の量、放電空間(106)の距離、放電発光ガスの種類とその分圧、繊維集合体(104)の諸物性や諸特性、温度などの諸条件によって変化するため、好適に可視光線の発光が行えるように、繊維集合体(104)が含む蛍光物質の量は、適宜、調整されるべきものである。
【0074】
また、繊維集合体(104)が複数種類の蛍光物質(例えば、A、B、Cの3種類と仮定する)を含んでいる場合、蛍光物質を含んでいるその形態として、
(1)蛍光物質Aのみを含む繊維から形成された繊維集合体の前駆体と、蛍光物質Bのみを含む繊維から形成された繊維集合体の前駆体と、蛍光物質Cのみを含む繊維から形成された繊維集合体の前駆体とを積層して、蛍光物質A〜Cを含む繊維集合体(104)が構成されている形態、
(2)蛍光物質Aのみを含む繊維と、蛍光物質Bのみを含む繊維と、蛍光物質Cのみを含む繊維とを混繊して、蛍光物質A〜Cを含む繊維集合体(104)が構成されている形態、
(3)蛍光物質A、蛍光物質Bおよび蛍光物質Cを含む繊維から、蛍光物質A〜Cを含む繊維集合体(104)が構成されている形態、
(4)繊維集合体(104)に、蛍光物質Aおよび蛍光物質Bおよび蛍光物質Cを付着させることで、蛍光物質A〜Cを含む繊維集合体(104)が構成されている形態、
などを例示できる。好適に可視光線の発光が行えるように、繊維集合体(104)に蛍光物質が含まれている形態は、適宜、選択する。
【0075】
なお、上述のように繊維集合体(104)が蛍光物質を含んでいるとともに、蛍光物質を誘電体材料(103a、103b)および/又は電極(102a、102b)の表面に付着させても良い。このようにすると、平面放電ランプ装置により多くの発光物質を含ませることができるため、可視光線の発光効率が向上するとともに、不可視光線が平面放電ランプ装置の外部へと透過するのを防ぐことができる。
【0076】
以上の部材から構成された本発明の平面放電ランプ装置において、電極(102a、102b)の間に電圧差が生じると、誘電体材料(103a、103b)同士が分極するとともに、繊維集合体(104)と放電発光ガスが全体に存在している放電空間(106)において放電が発生する。放電空間(106)には繊維集合体(104)が全体的に存在しているため、放電は繊維集合体(104)の空隙中で生じるものとなる。
【0077】
繊維集合体(104)の空隙中には放電発光ガスが充填されていることから、発生した放電が放電発光ガスと反応することで、繊維集合体(104)の空隙中から、主に不可視光線と若干の可視光線が発生する。主に不可視光線と若干の可視光線は、空隙を構成している繊維集合体(104)を構成する繊維により反射、屈折することで、発生時と進行方向を異ならせて、その進行方向をランダムに変更した状態で、平面放電ランプ装置の外部へと透過する。
【0078】
また、放電空間(106)が繊維集合体(104)を構成する繊維により、細かい空間に分割されているため、放電空間(106)の全体で均一に放電が発生する。
そのため、本発明の平面放電ランプ装置は、均一に発光することができる。
【0079】
そして、厚さが一定に調整された、例えば、繊維ウェブや不織布などからなる繊維集合体(104)を用いることで、放電空間(106)の距離(誘電体材料(103a、103b)同士の離間間隔)を一定に保つことが容易に行える。つまり、面積の大きな平面放電ランプ装置を得ようとする場合にも、誘電体材料(103a、103b)同士が繊維集合体(104)の厚さに依存して対向していることで、放電空間(106)の距離が形成されているため、面積の大きな平面放電ランプ装置において放電空間(106)の距離が狭くとも、放電空間(106)の距離を一定に調整することが容易である。
【0080】
また、本発明に係る平面放電ランプ装置は、平面放電ランプ装置が変形することで、平面放電ランプ装置を自由に変形が可能な、フレキシブルな光源とした場合にも、誘電体材料(103a、103b)同士の間に繊維集合体(104)が存在しているため、変形により誘電体材料(103a、103b)および電極(102a、102b)に湾曲が生じたとしても、局所的な放電ならびにショート(放電が生じない状態となること)の発生を防ぐことができる。
【0081】
そのため、本発明の平面放電ランプ装置は、放電空間(106)の間隔を全体において容易に一定とすることができ、局所的な放電ならびにショート(放電が生じない状態となること)の発生を防ぐことができるため、均一に発光することができる。
【0082】
更に、本発明に係る平面放電ランプ装置が蛍光物質を含むことで、主に可視光線を発光する平面放電ランプ装置である場合、放電空間(106)の全体に存在している表面積の大きい繊維集合体(104)に、蛍光物質が含まれていることで、放電空間(106)全体に多量の蛍光物質を均一に存在させることができ、放電空間(106)で発生した不可視光線は蛍光物質と効率良く反応できる。
【0083】
そのため、本発明に係る平面放電ランプ装置は、不可視光線が蛍光物質と反応することに起因する、可視光線の発光の効率が良い。
【0084】
以上から、本発明に係る平面放電ランプ装置は、均一に発光することができ、厚さが薄くともショート(放電が生じない状態となること)し難い、自由に変形が可能な、フレキシブルな可視光線を発光する光源として使用できる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
(実施例1)
(1)「積層電極(図1の102aと103a、あるいは102bと103b)」の調製
一方の表面の中心にITO透明導電膜(縦:70mm、横:70mm、厚さ:0.01mm)が蒸着している表面の平滑なソーダガラス板(縦:100mm、横:100mm、厚さ:1.1mm)のもう一方の表面に、表面の平滑なPETフィルム(縦:100mm、横:100mm、厚さ:50μm)を積層して、「積層電極」を調製した。
【0087】
なお、ITO透明導電膜は電極(102a、102b)として機能し、PETフィルムならびにソーダガラス板は誘電体材料(103a、103b)として機能する。
【0088】
(2)繊維集合体(104)による放電空間(106)の距離の調整
芯部がポリプロピレン、鞘部がポリエチレンの芯鞘型の複合繊維(繊維径:15μm、繊維長:5mm)を湿式抄造して繊維ウェブを得た後、鞘部のポリエチレンが溶融する温度で、該繊維ウェブを加熱処理して複合繊維同士を接着することで、厚さが一定の不織布(104、縦:85mm、横:85mm、目付:72g/m2、厚さ:0.32mm、空隙率:75%)を得た。
【0089】
該不織布(104)を繊維集合体として用いるとともに、PETフィルム側が不織布(104)に面するように対向した状態として、(1)項で得られた2枚の「積層電極」で挟むことで、「積層電極」―不織布(104)−「積層電極」の順に積層した。
【0090】
不織布(104)を「積層電極」で挟む際に、放電空間(106)に放電発光ガスとして空気を常気圧下で導入し、シール材(105)として、中心部が一辺85mmの正方形にくり貫かれた一辺100mmの正方形のポリエステルシート(105、厚さ:0.32mm)を用いるとともに、該ポリエステルシート(105)と「積層電極」とをエポキシ接着剤で接着することで、放電空間(106)を封止した。
【0091】
この時、ポリエステルシート(105)による封止後の、PETフィルム同士(103a、103b)の間の距離、換言すれば放電空間(106)の距離は計測上0.32mmのままであり、不織布(104)の厚さと等しかった。そのため、放電空間(106)の距離はポリエステルシート(105)とエポキシ接着剤の厚さに依存するものではなかった。そして、繊維集合体(104)として厚さが一定の不織布(104)を用いたため、放電空間(106)の距離はPETフィルム(103a、103b)の全体に渡り、一定に保たれたものであった。
【0092】
次いで、可視光線の発光の状態を観察できるように、一方のITO透明導電膜側(図1では、102a側)に、一辺100mmの正方形の黒色のアクリル板を積層するとともに、もう一方のITO透明導電膜主面側(図1では、102b側)に、中心部が直径50mmの円盤型にくり貫かれた一辺100mmの正方形の黒色のアクリル板を積層した。
【0093】
(3)平面放電ランプ装置の調製
一方のITO透明導電膜側(図1では、102a側)にパワーサプライ(101)として、ネオン変圧器を接続するとともに、もう一方のITO透明導電膜側(図1では、102b側)にアース(107)を接続することで、本発明に係る平面放電ランプ装置を調製した。
【0094】
(4)可視光線の発光評価
パワーサプライ(101)により、一方の「積層電極」のITO透明導電膜(図1では、102a)に交流電圧を印加することで、もう一方のITO透明導電膜(図1では、102b)との間に20kVp-pの電圧差を形成した。
【0095】
電圧差が形成されたことによって、放電空間(106)の全体に渡り、均一に紫色の可視光線の発光が認められた。この時の平面放電ランプ装置において、可視光線の発光状態を撮影したものを、図2(a)に掲載する。
【0096】
図2(a)の結果は、実施例1の平面放電ランプ装置では、放電空間(106)の全体に繊維集合体(104)である不織布(104)が存在していることによって、放電空間(106)が不織布(104)を構成する繊維により、細かい空間に分割されているため、放電空間(106)の全体(不織布(104)の空隙)で均一に放電が発生するとともに、発生した可視光線は放電空間(106)の全体に存在している不織布(104)により、反射、屈折することで、可視光線がランダムに拡散して、放電空間(106)の全体に渡り均一に可視光線の発光が発生していることを示すものである。
【0097】
また、実施例1の平面放電ランプ装置では、放電空間(106)の全体に厚さが一定の不織布(104)が存在していることによって、放電空間(106)の距離が平面放電ランプ装置の全体にわたり一定に保たれていることから、放電空間(106)の全体に渡り均一に可視光線の発光が発生していると、考えられるものである。
【0098】
なお、本発明に係る実施例1の平面放電ランプ装置で観察された、図2(a)の可視光線の発光は、放電空間(106)で発生した放電が、空気中の気体分子と反応することで発生したことに由来するものである。
【0099】
実施例1の平面放電ランプ装置の全体に渡り、可視光線の均一な発光が認められたことから、実施例1の平面放電ランプ装置では、放電空間(106)の全体に渡り均一に放電が発生しているとともに、不可視光線もまた均一に発光していることを示すものである。
【0100】
(比較例1)
実施例1に記載されている不織布(104)を使用することなく、放電空間(106)の距離を0.32mmに調節したこと以外は、実施例1と同様に、可視光線の発光を観察した。
【0101】
電圧差が形成されたことによって、放電空間(106)の中央部で可視光線の発光が認められずに、放電空間(106)の周囲にのみ可視光線の発光が認められた。この時の平面放電ランプ装置において、可視光線の発光状態を撮影したものを、図2(b)に掲載する。
【0102】
図2(b)の結果は、比較例1の平面放電ランプ装置では、放電空間(106)に繊維集合体(104)である不織布(104)が存在していないために、放電空間(106)が不織布(104)を構成する繊維により、細かい空間に分割されておらず、放電空間(106)の全体で均一に放電が発生できず、更に、発生した可視光線は放電空間(106)でランダムに拡散できないために、可視光線の発光ムラが発生したことを示すものである。
【0103】
また、比較例1の平面放電ランプ装置では、厚さが一定の繊維集合体(104)を用いていないため、放電空間(106)の距離が中央部と周囲で異なり、可視光線の発光ムラが発生したことが、考えられるものである。
【0104】
なお、比較例1の平面放電ランプ装置は、可視光線の発光ムラが認められたことから、比較例1の平面放電ランプ装置では、放電空間(106)の全体に渡り放電が均一に発生せず、不可視光線もまた発光ムラを発生していることを示すものである。
【0105】
(実施例2)
実施例1に記載されている不織布(104)を、蛍光物質であるユーロピウム添加酸化イットリウム粉末のエタノール分散溶液に含浸し、引き上げた後に乾燥させ、蛍光物質量を2g/m2となるように不織布(104)を構成しているポリエチレン繊維の表面に付着させた。
【0106】
この蛍光物質を含んでいる不織布(104)を繊維集合体(104)として用いたこと以外は、実施例1と同様に、可視光線の発光を観察した。なお、蛍光物質を含んでいる不織布(104)の厚さは0.32mmであったことから、つまり、放電空間(106)の距離も0.32mmであった。
【0107】
電圧差が形成されたことによって、放電空間(106)の広い範囲に渡り、赤色に強く発色している部位が認められた。この時の平面放電ランプ装置において、可視光線の発光状態を撮影したものを、図3(a)に掲載する。
【0108】
なお、図3(a)において、赤色に発色している部位は、放電により発生した不可視光線が、蛍光物質と反応することで生じた、可視光線が発光している部位である。
【0109】
図3(a)の結果は、実施例2の平面放電ランプ装置では、放電空間(106)の全体に蛍光物質を含んでいる不織布(104)が存在していることから、放電空間(106)で発生した不可視光線が、蛍光物質と効率良く反応していることを示すものである。
【0110】
(比較例2)
比較例1に記載されている平面放電ランプ装置において、PETフィルム(103a、103b)の対向する各表面に、蛍光物質量を0.2g/m2付着したこと以外は、比較例1と同様に、可視光線の発光の程度を観察した。なお、蛍光物質を付着した後の放電空間(106)の距離は、0.32mmであった。
【0111】
電圧差が形成されたことによって、図3(a)と比較して、放電空間(106)の狭い範囲に、赤色に弱く発色している部位が認められた。この時の平面放電ランプ装置において、可視光線の発光状態を撮影したものを、図3(b)に掲載する。
【0112】
なお、図3(b)において、赤色に発色している部位は、放電により発生した不可視光線が、蛍光物質と反応することで生じた、可視光線が発光している部位である。
【0113】
図3(b)の結果は、比較例2の平面放電ランプ装置では、放電空間(106)の全体に蛍光物質を含んでいる不織布(104)が存在していないため、放電空間(106)で発生した不可視光線が、蛍光物質と効率良く反応していないことを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る平面放電ランプ装置は、放電空間全体に繊維集合体が存在しているため、均一に発光することができる、平面放電ランプ装置である。
【符号の説明】
【0115】
101・・・パワーサプライ
102a、102b・・・電極
103a、103b・・・誘電体材料
104・・・繊維集合体
105・・・シール材
106・・・放電空間
107・・・アース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの対向表面側に、誘電体材料からなる誘電体層を設けて対向して配置した一対の電極の間に、放電発光ガスが充填されて封止された放電空間が形成され、対向する該誘電体材料の間に電圧差が生じることで、不可視光線および/又は可視光線を発生する平面放電ランプ装置において、
該放電空間全体に繊維集合体が存在していることを特徴とする、平面放電ランプ装置。
【請求項2】
対向する前記誘電体材料同士の間の距離が、前記繊維集合体により一定に保たれていることを特徴とする、請求項1に記載の平面放電ランプ装置。
【請求項3】
前記繊維集合体が、蛍光物質を含んでいることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の平面放電ランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−119036(P2011−119036A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272638(P2009−272638)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】