説明

平面用PTCヒーター

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、家屋の床材、壁材等のように、平面の一側を暖房するのに適した平面PTCヒーターの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、PTCヒーターは、安全性が高く周囲の温度に対応して出力を自己調整するため、省エネルギー効果が大きい等の優れた特性を有することが知られている。
【0003】かかるPTCヒーターには、例えば、実開昭55−136192号公報,実開昭55−136193号公報,特開昭63−146405号公報等に記載されているように、電気伝導度が高く、耐食性に優れている等の点から電極材としてステンレスやアルミニウム等が使用されて来た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】かかる、PTCヒーターを家屋の床暖房あるいは壁面等の平面材の暖房に使用した場合、そのPTC素子からの発熱が両面の電極を介して両側面に放熱する。このことは、床、壁の使用特性から見て一面のみが加熱されれば充分にその目的を達成できるのに対して、平板の両面の加熱は不合理であり、熱効率上も無駄がある。
【0005】本発明において解決すべき課題は、PTC素子を用いた従来の平板を床材、壁材として用いる際の両面加熱の不合理を解消するための手段を見出すことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の平面PTCヒーターは、放熱側の電極を熱伝導性の良好な金属によって形成し、他側の電極を前記放熱側の電極を形成する金属と比較して熱伝導度の低い材料によって形成したことを特徴とする。
【0007】PTCヒータの電極として、電気伝導度が比較的大きく、耐食性に優れ、なおかつ熱伝導性が良好である等の特性を有することが要求され、この意味から本発明に使用する電極材としては、この要求特性を満たす材料である必要があることは当然であり、この特性を満たす材料の中で熱伝導性の良好な金属と、熱伝導度の低い材料が選択される。
【0008】この条件を満たす熱伝導性の良好な金属としては、銅、アルミニウム等の通常の電極材が使用でき、また、熱伝導度の低い材料としてはステンレス、クロム合金、ニッケル合金等が使用できる。
【0009】
【作用】PTC発熱素子による発熱は熱伝導性の良好な金属によって形成された電極側の放熱量が多くなり、また、他側の熱伝導度の低い材料からなる電極側では放熱量が少なく蓄熱され、これが、熱伝導性の良好な金属によって形成された電極側で放熱され、一側の放熱量は従来の平板発熱体と比べ格段に多くなる。
【0010】
【実施例】図1は本発明に係る発熱平板の断面構造を示し、図2はPTCヒータ部の構成図である。
【0011】これらの図において、1は発熱平板のベースとなるベニヤ板、2は所定間隔で配置されるPTCヒータ部、3はPTCヒータ部2の間を埋めるベニヤ板、4はPTCヒータ2の放熱側に密着する放熱用アルミニウム板、5は空間7を設け、アルミニウム板6を支えるためのベニヤ板、6はアルミニウム板4ないしベニヤ板5の熱を放出するためのアルミニウム板である。
【0012】PTCヒータ部2は、図2に示すように、PTC素子11と下部電極12と上部電極13と絶縁板14からなる。PTC素子11と上下の電極12,13とは中心部を耐熱導電性接着剤aで接着し、その周囲を耐熱絶縁性接着剤bで接着する。これは、電極12,13とPTC素子11の密着性を良くし、短絡、銀マイグレーション等によるスパーク発生を防ぐためである。
【0013】上部電極13は、放熱側であるため熱伝導性が良好な金属として黄銅を使用した。また下部電極12は、熱伝導性が悪い金属としてステンレスを使用した。
【0014】この実施例のヒータの出力及び表面温度の時間的変化を図3に示す。なお、図3において、対照例として上下の電極とも黄銅とした場合と上下の電極ともステンレスとした場合を示している。図3から分かるように、本実施例のものが他の例に対して出力(W)に対する表面温度が高く、効率が良い。
【0015】
【発明の効果】本発明によって以下の効果を奏することができる。
【0016】(1)一面側の放熱量が増し、暖房床材、壁材のように一側のみの放熱に適した平板を得ることができる。
【0017】(2)放熱側の反対側を熱が逃げにくくしているため、PTC素子の特性上、その分電力が少なくて済み、省エネルギー効果を大きくすることができる。
【0018】(3)放熱されない分の熱量は蓄熱され、放熱側に加算されるため、昇温速度が速く、表面温度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発熱平板の実施例の断面構造を示す。
【図2】図1に示す発熱平板の構成図である。
【図3】本発明実施例の効果を示すグラフである。
【符号の説明】
1,3,5 ベニヤ板
2 PTCヒータ部
4,6 アルミニウム板
7 空間
11 PTC素子
12 下部電極
13 上部電極
14 絶縁板
a 耐熱導電性接着剤
b 耐熱絶縁性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】 放熱側の電極を熱伝導性の良好な金属によって形成し、他側の電極を前記放熱側の電極を形成する金属と比較して熱伝導度の低い材料によって形成してなる平面用PTCヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2820804号
【登録日】平成10年(1998)8月28日
【発行日】平成10年(1998)11月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−43722
【出願日】平成3年(1991)3月8日
【公開番号】特開平4−282592
【公開日】平成4年(1992)10月7日
【審査請求日】平成8年(1996)8月16日
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)