説明

幹細胞遺伝子標的化法

本発明は、改変ヒトRosa26遺伝子座を有するトランスジェニック真核細胞集団を製作する方法に関し、該方法は、機能性DNAを出発真核細胞のヒトRosa26遺伝子座に導入する工程を有する。この方法に有用な標的化ベクターと、更に、改変ヒトRosa26遺伝子座を含む細胞集団及びトランスジェニック非ヒト動物も提供される。最後に、本発明は、ヒトRosa26遺伝子座に対応する単離DNA配列を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、肝細胞遺伝子標的化法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、ここにその開示内容を参考文献として合体させる、2007年1月19日出願の米国特許出願第60/881,226号の優先権を主張するものである。
【0003】
政府支援
この研究の一部は国立衛生研究所によって与えられた許可番号HL80627及びP20GM075019によってサポートされた。米国政府は本発明の一部の権利を有するかもしれない。
【0004】
発明の背景
ヒト真核幹細胞(hESC)の誘導は、人間の発達に関する研究に新たな道を切り開いた。それは又、補充療法のための潜在的な細胞源を提供するものでもある。例えば、hESCを遺伝子的に変化させる能力は、ヒトの発達中において系統分化を制御するメカニズムを研究するためのユニークな機会を提供し、薬剤を同定、スクリーニングし、人間の疾患のイン・ヴィトロモデルの開発のための新しいアプローチを確立する。このアプローチの実現可能性は、標的化を通じて容易にアクセスでき、未分化ES細胞、更に、これらの細胞から作り出される広範囲の分化細胞型中の導入された遺伝子物質の発現を許容する遺伝子座のゲノム中での同定に依存している。このアプローチの概観はイェイツ(Yates)他著、Gene Therapy、第13巻、第1431〜1439頁、2006年に提供されている。
【0005】
hESC及び誘導系統中において遺伝子を発現させることを目的とした従来の研究は、これまでゲノム内にランダムに組み込まれる、レンチウイルス又は導入遺伝子を使用したものであった。これらのアプローチは、多くの理由で問題がある。例えば、ランダムに組み込まれたベクターによって、挿入突然変異生成を通じて内在性遺伝子の発現の活性化又は抑制が生じる可能性があり、それらベクターが多くの場合、複数の複製で存在し、そして、それらの発現がサイレンシングを受ける。
【0006】
ゲノムの所定部位に組み込まれた単一コピーの導入遺伝子を有するマウスを作り出すために、マウス胚幹細胞の相同的組み換えが使用されてきた (例えば、ショー‐ホワイト(Shaw-White)他著、Transgenic Res.、第1巻、第1〜13頁 、1993年:ブロンソン(Bronson)他著、Proc. Natl. Acad. Sci,、USA、第93 巻、第17号、第9067〜72頁、1996年:ハタダ(Hatada)他著、J. Biol., Chem.、第274巻、第2号、第948〜55頁、1999年:タン(Tang)他著、Genesis、第32巻、第3号、第199〜202頁、2002年を参照)。これらの研究において、遍在性Hprt座が使用されたが、その成功は限定され予測出来ないものであった。相同的組み換えによって挿入された導入遺伝子の強力かつ予測可能な発現を可能にする常染色体遺伝子座を定義することが望ましいが、これらの判断基準を満たす染色体遺伝子座を同定することは困難である。外来性導入遺伝子は転写の適切な制御のために必要十分な全ての配列には存在しないかもしれず、従って、挿入部位の近くのシス-調節因子によって影響を受けるかもしれない。
【0007】
マウスにおいて、Rosa26として知られている遺伝子座がこれらの判断基準を満たす。その理由は、それはイン・ヴィトロとイン・ヴィヴォとの両方でES細胞及び多くの誘導組織中に発現され、相同的組み換えによってそれに新しい遺伝子物質を容易に導入することが出来るからである。国際公開第99/53017号は、外来遺伝子を遍在的に発現するトランスジェニック動物を製作するための方法を記載しており、ここで、前記外来遺伝子は遍在的に発現される内在性プロモーター、例えば、マウスRosa26遺伝子座のそれ、の制御下に置かれる。アール・ダクウィン(R. Dacquin)他著、Dev. Dynamics、第224巻、第245〜251頁、2002年、及びケイ・エイ・モーゼス(K.A. Moses)他著、Genesis、第31巻、第176〜180頁、2001年は、外来遺伝子の発現のために国際公開第99/53017号に基づいて得られたトランスジェニックマウス株R26Rを利用している。国際公開第02/098217号は、Rosa26遺伝子座などの転写的に活性な座にプロモーター無し選択(promoter-less selection)カセットを標的化する方法を記載している。国際公開第03/020743号は、保護された導入遺伝子カセットを所定の遺伝子座(例えばRosa26)に標的化して、導入された組織特異的外来プロモーターが少なくとも部分的な組織特異的活性を有するようにする、導入遺伝子のイン・ヴィヴォ発現について記載している。
【0008】
米国特許出願2006/0205077号は、mRosa26遺伝子座を使用した標的化と遺伝子組み換えのための方法を記載している。米国特許第6,461,864号も、相同DNAセグメントを発現する遺伝子工学的に作られた非ヒト動物の製造におけるmRosa26遺伝子座の利用について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第99/53017号
【特許文献2】国際公開第02/098217号
【特許文献3】国際公開第03/020743号
【特許文献4】米国特許出願2006/0205077号
【特許文献5】米国特許第6,461,864号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】イェイツ(Yates)他著、Gene Therapy 、第13巻、第1431〜1439頁、2006年
【非特許文献2】ショー‐ホワイト(Shaw-White)他著、Transgenic Res.、第1巻、第1〜13頁、1993年
【非特許文献3】ブロンソン(Bronson)他著、Proc. Natl. Acad. Sci,、USA、第93 巻、第17号、第9067〜72頁、1996年
【非特許文献4】ハタダ(Hatada)他著、J. Biol., Chem.、第274巻、第2号、第948〜55頁、1999年
【非特許文献5】タン(Tang)他著、Genesis、第32巻、第3号、第199〜202頁、2002年
【非特許文献6】アール・ダクウィン(R. Dacquin)他著、Dev. Dynamics、第224巻、第245〜251頁、2002年
【非特許文献7】ケイ・エイ・モーゼス(K.A. Moses)他著、Genesis、第31巻、第176〜180頁、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
トランスジェニック動物、組織、及び細胞集団を予測可能な導入遺伝子発現パターンで効率的な製作を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、相同的組み換えによってその座に挿入された外来性プロモーターの活性を保存する能力のある、ヒトRosa26(hRosa26)の同定に基づく。従ってヒトRosa26は、トランスジェニック動物、組織、及び細胞集団を予測可能な導入遺伝子発現パターンで効率的に製作するのに有用である。
【0013】
従って、本発明は、改変ヒトRosa26遺伝子座を有するトランスジェニック真核細胞集団を製作する方法を提供し、この方法は、機能性DNA配列を出発真核細胞のヒトRosa26遺伝子座に導入する工程を含む。一実施例において、前記機能性DNA配列は、外来プロモーターに操作連結された対象遺伝子を含む遺伝子発現カセットであるか、若しくは、前記機能性DNA配列は、対象遺伝子を含む遺伝子発現カセットであり、ここで前記DNA配列は相同的組み換えによって前記遺伝子座に組み込まれ、それによって前記DNA配列を、このDNA配列が内在性Rosa26プロモーターの制御下に置かれるよう前記遺伝子座に挿入する。
【0014】
本発明の前記方法において、前記機能性DNA配列は、前記ヒトRosa26遺伝子座に相同なDNA配列によって挟まれた前記機能性DNA配列を含む標的化ベクターによる相同的組み換えによって前記真核細胞に導入される。前記真核細胞は、一次細胞と不死化細胞とから成るグループから選択され、特に、特定の実施例において、前記真核細胞はヒト胚幹細胞(ES)である。
【0015】
前記対象遺伝子は、任意のDNA配列とすることができる。本発明の方法に使用可能な遺伝子の非限定的リストは、リコンビナーゼ、レポーター遺伝子、レセプター、シグナリング分子、転写因子、薬用的活性タンパク質及びペプチド、薬剤標的候補、疾患遺伝子産物、及び毒素、それらの変異体及び組み合わせ、を含む。
【0016】
一実施例において、前記機能性DNA配列は、異種性プロモーターに操作連結された対象遺伝子を含み、ここで、前記プロモーターは、構成性偏在的プロモーター、構成性組織特異的プロモーター、誘導性偏在的プロモーター、誘導性組織特異的プロモーターから成るグループから選択される。適当なプロモーターの非限定的リストは、CAGGS、hCMV、PGK、FABP、Lck、CamKII、CD19、ケラチン、アルブミン、aP2、インスリン、MCK、MyHC、WAP、Col2A、Mx、tew及びTrexプロモーターを含む。
【0017】
前記本発明の方法に使用される前記機能性DNA配列又は遺伝子発現カセットは、更に、マーカー遺伝子、互いに同じもの又は異なったものとすることが可能なタンパク質のリコンビナーゼ認識部位、ポリAシグナル、イントロン、及びこれらの組み合わせ、から成るグループから選択される単数又は複数の追加の機能配列を含む。例えば、前記発現カセットは、ウイルススプライスアクセプター、loxP-隣接無プロモーターネオマイシン耐性遺伝子、逆位RFPバリアント、変異loxP2272部位、及びこれらの組み合わせから成るグループから選択される単数又は複数の機能配列を含む。一特定実施例において、前記発現カセットは、下記の要素のこの順序で含む、(a)ウイルススプライスアクセプター、(b)loxP-隣接無プロモーターネオマイシン耐性遺伝子、(c)逆位RFPバリアント(tdRFP)、ここで、前記逆位RFPバリアントは、変異loxP2272部位によって隣接されている。特に、前記発現カセットは、Creリコンビナーゼをコード化するDNA配列を含み、ここで、前記loxPと変異loxP2272部位は、Creリコンビナーゼの発現後、前記ネオマイシン耐性カセットが除去され、前記tdRFPが逆転され、それが内在性hROSA26プロモーターの制御下に置かれるように配置される。
【0018】
更に、本発明に使用される前記標的化ベクターは、更に、タンパク質検出のためのタグ、エンハンサー、選択マーカー、及びこれらの組み合わせ、から成るグループから選択される機能性配列を含む。
【0019】
前記トランスジェニック真核細胞は、ヒト由来であって、前記ヒトRosa26遺伝子座に相同なDNA配列はヒトRosa26遺伝子座の5’及び3’隣接椀由来である。一実施例において、前記標的化ベクターは、ヒトRosa26遺伝子座と相同なDNA配列によって挟まれた機能性DNA配列を含む。
【0020】
本発明は、更に、改変ヒトRosa26遺伝子座を含む真核細胞集団を含む。
【0021】
本発明は、更に、第3染色体上のヌクレオチド位置9’415’082と9’414’043との間に位置するヌクレオチド配列に対して実質的に相同な単離DNA配列を提供する。或いは、本発明は、配列識別番号2に対して実質的に相同な単離DNA配列を提供する。更に、本発明は、配列識別番号2の核酸配列に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズする単離DNA配列を提供する。
【0022】
更に、改変ヒトRosa26遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒト動物も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1a】ヒトRosa26遺伝子座の同定、発現、標的化を図示している。異なる成体組織と3つのhESCライン(HI, HES2, HES3)とにおけるヒトRosa26遺伝子座の発現を図示している。エクソンIIIの発現が、定量PCRを使用して検出された。データは、2〜4の個々のRT/qPCR反応からの平均発現として示されている。
【図1b】ヒトRosa26遺伝子座の同定、発現、標的化を図示している。RT-PCRを使用して評価されたExonIIとExonIIIの発現を示し、+/-RTは、逆転写酵素の存在又は不在を示している。このPCRは推定イントロンに渡って延出する260bp産物を増幅する。
【図1c】ヒトRosa26遺伝子座の同定、発現、標的化を図示している。前記標的化ベクターと新たに同定されたヒトRosa26遺伝子座のセグメントの概略図である。グレーの三角形は、野生型loxPを示し、白の三角形は変異型loxP2272部位(SA=スプライスアクセプタ)を示す。縦線の入ったボックスはマウスとヒトとの間の最高配列相同性(>85%)の領域を示している。推定エクソン1及び2を、電子同定されたEST/転写物の位置に基づいてマッピングした。
【図1d】ヒトRosa26遺伝子座の同定、発現、標的化を図示している。遺伝子標的化とtdRFPのCre媒介活性化後のヒトRosa26遺伝子座を示している。
【図1e】ヒトRosa26遺伝子座の同定、発現、標的化を図示している。(WT/KI)前でCre媒介tdRFP逆位後の親HES2と標的化hRosa26細胞ラインのサザンブロットである。WT=野生型、KI=ノックイン。
【図1f】ヒトRosa26遺伝子座の同定、発現、標的化を図示している。単一のインテグレーション事象を示す、tdRFP特異的プローブでハイブリダイズされたhRosa26ゲノムDNAを示している。
【図2a】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。光学顕微鏡観察を使用した、マウス胚フィーダー細胞上で生育された標的化されたhRosa26ES細胞の形態を示している。
【図2b】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。蛍光顕微鏡観察によって明らかにされたhRosa26ES細胞中のtdRFPの発現を示している。
【図2c】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。4継代、Matrigel上で生育されたhRosa26ES細胞中の標的化されたアルカリフォスファターゼ発現を示している。
【図2d】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。hRosa26ES細胞から誘導された5日齢EBを示している。
【図2e】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。蛍光顕微鏡観察によって明らかにされたhRosa26ES中のtdRFPの発現を示す。
【図2f】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。標的化hRosa26細胞(斜線付きでハッチング無し)と、親HES2細胞(ハッチングされ斜線付き)と、17日目hRosa26EBからの細胞(太字)のフローサイトメトリー分析を示している。
【図2g】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。hRosa26細胞由来の奇形腫が、明蛍光 (図2g)と、落射蛍光(図2h)とで示されている。インサートは、異なるhRosa26サブクローン(位相コントラスト及び蛍光顕微鏡観察、それぞれ図2gと2h)からの単一細胞を示している。
【図2h】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。hRosa26細胞由来の奇形腫が、明蛍光 (図2g)と、落射蛍光(図2h)とで示されている。インサートは、異なるhRosa26サブクローン(位相コントラスト及び蛍光顕微鏡観察、それぞれ図2gと2h)からの単一細胞を示している。
【図2i】hRosa26ES細胞の形態と分化を図示している。フローサイトメトリー分析を示し、奇形腫細胞の大半(>90%)におけるtdRFP発現を示している。生細胞を、前方及び側方散乱パラメーターに基づいてゲートした。
【図3a】イン・ヴィトロでのhRosa26標的化されたhESCの多系分化を示している。β-チュブリン III(グリーン)及びtdRFP(レッド)を発現する成長中のニューロンを示している。全集団を、核DAPI染色(ブルー)によって可視化している。インサート: tdRFP及びβ-チュブリン IIIの同時発現を示すオーバーレイ。
【図3b】イン・ヴィトロでのhRosa26標的化されたhESCの多系分化を示している。hRosa26(上パネル)と野生型(HES2)細胞(下パネル)から作り出されたAFP細胞中のtdRFP発現を示している。第1カラムは、IgG対照(グリーン)、tdRFP及びDAPIのオーバーレイを示している。第2、第3及び第4カラムは、AFP染色(グリーン)、tdRFP(レッド)及びDAPI(ブルー)それぞれのチャンネルを示している。
【図3c】イン・ヴィトロでのhRosa26標的化されたhESCの多系分化を示している。hRosa26細胞から作られた18日齢EBから生育された骨髄(M)及び赤血球(E)造血コロニーを示している。インサートは、両方のタイプのコロニーにおけるtdRFP発現を示している。自己蛍光(EGFP)を制御するためにGFPフィルターでの発現が含まれている。
【図3d】イン・ヴィトロでのhRosa26標的化されたhESCの多系分化を示している。hRosa26ESC(レッド)と野生型hESC(ブルー)から作られたEB由来細胞における第14日目と21日目とのCD45及びtdRFP発現を示すサイトメトリー分析を示している。
【図3e】イン・ヴィトロでのhRosa26標的化されたhESCの多系分化を示している。hRosa26細胞(左、中央左及び中央右)及びHES2親細胞(右)から作られたヒト絨毛性ゴナドトロピン陽性細胞におけるtdRFPの発現を示している。前記hESCは、栄養外胚葉分化を誘導するために高濃度のヒトBMP4 (100ng/ml)の無血清培地中で分化された。14日間後、細胞を、ヒト絨毛性ゴナドトロピンサブユニットBに対して特異的な抗体(hCG)又はイソ型対照(中央右、IgG)で染色した。
【図4a】マウスとヒトRosa26配列のアラインメントと、選択されたヒトESTの多重アラインメントプロットとを示している。最高度の相同性を有するマウスとヒトRosa26配列のアラインメントを示している(>85%; 図1cにおいて縦の棒つきボックス; 図4aに示されているマウス配列は配列識別番号1であり、そして図4aに図示されているヒト配列は配列識別番号2である)。上の矢印は、マウスRosa26転写物1の5’開始であり、下の矢印はEnsemblデータベース(GenBank: CR624523)に見られる大半の5’ヒト転写物の開始を示している)。図示の前記ヒト配列は、第3染色体上のヌクレオチド位置9’415’082と9’414’043との間に位置する(Ensembl Human Blast View v37)。
【図4b−1】マウスとヒトRosa26配列のアラインメントと、選択されたヒトESTの多重アラインメントプロットとを示している。推定hRosa26遺伝子座のゲノム配列に対する局所的類似性を示す選択されたヒトESTの多重アラインメントプロットを示している。有意類似性(≧60%)の領域が箱で囲まれている。各ESTは、そのGenBank受入番号と組織源で標識されている。予想エクソンは、ゲノムDNA表示上にブラックバーで示され、ローマ数字で番号を付されている。マウスにおいては、Rosa26は、Rosa26転写ユニットの下流側に逆向きに配置されているThumpD3遺伝子とオーバーラップしている。このヒト染色体領域とマウスRosa26遺伝子座との間の高度のシンテニーを際立たせるために、ヒトTHUMPD3のエクソン構造もグレー・バーで示されている。
【図4b−2】同上。
【図5a】hRosa26hESCにおける単一インテグレーションを示している。Cre媒介tdRFP活性化後のhRosa26遺伝子座の概略図である。EcoR1=EcoR1制限酵素、ProbeRFP=1.4kb tdRFT内部サザンブロットプローブ。
【図5b】hRosa26hESCにおける単一インテグレーションを示している。hRosa26ゲノムDNAがEcoRIで消化され、tdRFP特異的プローブ(図1fと同じゲル)でハイブリダイズされたことを示している。1kb=1kbプラスDNAラダー(Invitrogen)、EtBr=エチジウムブロマイド。
【図6a】第2のhRosa26クローン(hRosa26.2)の同定と特徴付けを図示している。hRosa26.2と対照ゲノムDNAとがHindIIIで消化され、900bp外部ゲノムプローブでハイブリダイズされて、6kb野生型(WT)及び3.5kbノックイン(KI)対立遺伝子を示していることを図示している。
【図6b】第2のhRosa26クローン(hRosa26.2)の同定と特徴付けを図示している。hRosa26.2とHES2親細胞が、無血清条件下で中胚葉及び造血細胞に分化されたことを示している。17日間の分化後、EB-由来細胞の、tdRFP及びCD45の発現を調べた。
【図7a】NOD/SCIDマウスの後脚筋肉に注射され、その結果貴兄腫を発生した、hRosa26由来奇形腫ES細胞が9週間後に分析されたことを図示している。これらの奇形腫からのヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色パラフィン部位は、全ての3胚20葉への寄与を示している。図7a、軟骨(*)。
【図7b】NOD/SCIDマウスの後脚筋肉に注射され、その結果貴兄腫を発生した、hRosa26由来奇形腫ES細胞が9週間後に分析されたことを図示している。これらの奇形腫からのヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色パラフィン部位は、全ての3胚20葉への寄与を示している。図7b、中央に位置する核(矢印)を有する横紋心筋。
【図7c】NOD/SCIDマウスの後脚筋肉に注射され、その結果貴兄腫を発生した、hRosa26由来奇形腫ES細胞が9週間後に分析されたことを図示している。これらの奇形腫からのヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色パラフィン部位は、全ての3胚20葉への寄与を示している。図7c、分泌杯細胞(矢印)を有する繊毛粘膜細胞。
【図7d】NOD/SCIDマウスの後脚筋肉に注射され、その結果貴兄腫を発生した、hRosa26由来奇形腫ES細胞が9週間後に分析されたことを図示している。これらの奇形腫からのヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色パラフィン部位は、全ての3胚20葉への寄与を示している。図7d、神経ロゼット細胞(矢印)。
【図8a】Rosa26ES細胞中のRMCEを図示している。標的化前のhRosa26ゲノム遺伝子座の略図である。
【図8b】Rosa26ES細胞中のRMCEを図示している。標的化とCre媒介tdRfP逆位後の前記遺伝座を示す。
【図8c】Rosa26ES細胞中のRMCEを図示している。tdRFPからpuroTKのRMCEとの交換後の前記遺伝子座を図示している。黒塗りの三角形は野生型loxP部位を示し、白抜き三角形は変異loxP2272部位を示している。SA=スプライスレセプター。
【図8d】Rosa26ES細胞中のRMCEを図示している。puro特異的プローブでハイブリダイズされたゲノムDNA(XbaIで消化)のサザンブロットであり、6.1KBの単一インテグレーションを示している。
【図8e】Rosa26ES細胞中のRMCEを図示している。RMCE前後のhRosa26クローンのサザンブロット分析である。ゲノムDNAを、HindIIIで消化し、その後、hRosa26外部プローブ(図1eと同じプローブ)でハイブリダイズした。
【図9a】前記ヒトRosa26遺伝子座から誘導性発現を図示している。RMCEを使用して、誘導性発現カセットをヒトRosa26遺伝子座に導入した。このベクターは、テトラサイクリン調節転写活性化因子と更に、テトラサイクリン応答要素とを含む。更に、導入遺伝子(トランスジーン)を導入することが可能であり、これはドキシサイクリンの除去後に発現される。前記導入遺伝子の発現は、内部リボソーム侵入部位(IRES)から発現されるVenus蛍光タンパク質の発現によってモニターすることができる。図9aに図示されているように、ドキシサイクリンの存在下(+Dox)では、フローサイトメトリーによってVenusタンパク質は検出されないが、doxを除去するとすぐに、高レベルの蛍光レポーターを検出することができる(図9b)。
【図9b】前記ヒトRosa26遺伝子座から誘導性発現を図示している。RMCEを使用して、誘導性発現カセットをヒトRosa26遺伝子座に導入した。このベクターは、テトラサイクリン調節転写活性化因子と更に、テトラサイクリン応答要素とを含む。更に、導入遺伝子(トランスジーン)を導入することが可能であり、これはドキシサイクリンの除去後に発現される。前記導入遺伝子の発現は、内部リボソーム侵入部位(IRES)から発現されるVenus蛍光タンパク質の発現によってモニターすることができる。図9aに図示されているように、ドキシサイクリンの存在下(+Dox)では、フローサイトメトリーによってVenusタンパク質は検出されないが、doxを除去するとすぐに、高レベルの蛍光レポーターを検出することができる(図9b)
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、マウスRosa26遺伝子座のヒトホモログと、ヒトRosa26遺伝子座への導入遺伝子の部位特異的組込みのための方法を提供する。従って、本発明は、第3染色体上のヌクレオチド部位9’415’082と9’414’043との間に位置するヌクレオチド配列に対して実質的に相同な単離DNA配列を提供する。本発明は、更に、配列識別番号2に対して実質的に相同な単離DNA配列を提供する。更に、配列識別番号2の核酸配列に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズする単離DNA配列も提供される。
【0025】
ここで、「実質的に相同的」、「実質的に対応する」、「実質的同一性」という文言は、核酸配列が、参照配列に対して、少なくとも90%の配列同一性、最も好ましくは、少なくとも95%の配列同一性、を有するような核酸配列の特徴を意味する。配列同一性の百分率は、前記参照配列のトータルで25%以内の小さな欠失又は付加を除外して計算される。前記参照配列は、遺伝子又は隣接配列の一部、或いは、染色体の反復部分、などのより大きな配列のサブセットとすることができる。但し、前記参照配列は、少なくとも18ヌクレオチド長、典型的には少なくとも約30ヌクレオチド長、そして好ましくは、少なくとも約50〜100ヌクレオチド長である。
【0026】
「実質的に相補的」という文言は、ここでは、参照配列に対して実質的に対応する配列配列に対して相補的な配列をいう。一般に、標的化効率は、標的DNA中に存在する参照配列(即ち、交差標的配列)に対して実質的に相補的な標的化導入遺伝子部分(即ち、相同領域)の長さと共に増加する。一般に、標的化効率は、同質遺伝子性のDNAホモロジークランプの使用によって最適化されるが、種々のリコンビナーゼの存在が、効率的な組み換えのために必要な配列同一性の程度が低減するかもしれないと認識される。
【0027】
「ストリンジェント条件」とは、特定のハイブリッドが形成される条件をいう。一般に、ストリンジェント条件は、高いホモロジー、例えば、90%、又は最大で好ましくは95%、を有する核酸分子が互いにハイブリダイズする条件を含む。或いは、ストリンジェント条件は、一般に、それによって核酸分子が、サザンハイブリダイゼーションの典型的な洗浄条件、即ち、60℃で、約1×SSC、 0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDS、に対応する塩濃度で互いにハイブリダイズする条件を含む。
【0028】
前記ヒトRosa26遺伝子座を使用した導入遺伝子の部位特異的組込みのためにいかなる公知の方法も利用可能である。hRosa26遺伝子座との関連で使用可能な種々の方法の適当な、但し非限定的な具体例は、イェイツ(Yates)他著、Gene Therapy (2006)、第13巻;第1431〜1439頁:ショー‐ホワイト(Shaw-White)他著、Transgenic Res.、第1巻;第1〜13頁 (1993年):ブロンソン(Bronson)他著、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、第93巻、第17号;第9067〜72頁 (1996年):ハタダ(Hatada)他著、J. Biol., Chem.、第274巻、第2号;第948〜55頁(1999年):タン(Tang)他著、Genesis、第32巻、第3号;第199〜202頁 (2002年):国際公開第99/53017号:アール・ダクウィン(R. Dacquin)他著、Dev. Dynamics、第224巻;第245〜251頁 (2002年):ケイ・エイ・モーゼス(K.A. Moses)他著、Genesis、第31巻;第176〜180頁 (2001年):国際公開03/020743号:米国特許出願2006/0205077号 及び米国特許第 6,461,864に記載されており、これら開示内容の全体をここに参考文献として合体させる。
【0029】
例えば、標的化ベクターを、当該分野で公知の方法によってhRosa26遺伝子座を使用した導入遺伝子の部位特異的組込み用に構成することができる。標的化ベクターは、一般に、標識遺伝子配列の一部又は領域、即ちhRosa26遺伝子座、に対して相同的な第1配列と、標的遺伝子配列の第2の部分又は領域、即ち、hRosa26遺伝子座の第2部分、に対して相同的な第2配列を含む。前記標的化ベクターは、更に、選択可能マーカー遺伝子を含む選択可能マーカーカセットを含むことができる。好ましくは、前記選択可能マーカーカセットは、前記標的遺伝子配列に対して相同的な前記第1配列と第2配列との間に位置する。前記選択可能マーカーカセットは、更に、前記選択可能マーカーの転写を開始、方向付ける又は仲介する配列を含むことができ、前記標的化ベクターは、更に、前記選択可能マーカーの発現を制御又は調節する能力を有する調節因子を含むことができる。
【0030】
本発明の一実施例において、前記hRosa26遺伝子座に導入された前記機能性DNA配列は、異種性プロモーターに操作リンクされた対象遺伝子を含む遺伝子発現カセットである。ここでの使用において、「プロモーター」という文言は、一般に、核酸配列の転写を開始、案内、仲介することが可能なDNAの調節領域を指す。プロモーターは、更に、転写速度に影響することが可能な、上流側又は下流側のプロモーター又はエンハンサー因子、などの認識配列を含むことができる。
【0031】
本発明の一実施例において、構成性又は誘導性の、偏在的又は組織特異的プロモーターであるプロモーターを、前記遺伝子発現カセット(これは前記hRosa26遺伝子座に対する異種性プロモーターである)中で使用することができる。この偏在的プロモーターは、ポリメラーゼI、II及びIII依存プロモーターから選択され、好ましくは、ポリメラーゼII又はIII依存プロモーターであり、非限定的に、CMVプロモーター、CAGGSプロモーター、SnRNAプロモーター。例えばU6、RNAse P RNA等のsnRNAプロモーター、例えば、H1、tRNAプロモーター、7SL RNAプロモーター、5 S rRNAプロモーターである。偏在的プロモーターの適当な具体例は、CAGGS、hCMV、PGKであり、組織特異的プロモーターの具体例は、FABP(サーム(Saam)およびゴードン(Gordon)著、J. Biol. Chem.、第274巻;第38071〜38082頁 (1999年))、Lck (オーバン(Orban)他著、Proc. Natl. Acad.Sci.、USA、第89巻;第6861〜5頁 (1992年))、CamKII (シェン(Tsien)他著、Cell、第87巻;第1317〜1326頁 (1996年))、CD19(リッカート(Rickert)他著、Nucleic Acids Res.、第25頁;第1317〜1318頁(1997年))、 Keratin (リ(Li)他著、Development、第128巻;第675〜88年(2001年))、Albumin (ポスティック(Postic)およびマグヌソン(Magnuson)著、Genesis、第26巻;第149〜150頁 (2000年))、aP2 (バーロウ(Barlow)他著、Nucleic Acids Res.、第25巻 (1997年))、Insulin (レイ(Ray)他著、Int. J. Pancreatol.、第25巻;第157〜63頁 (1999年))、MCK (ブルーニング(Bruning)他著、Molecular Cell、第2巻;第559〜569頁(1998年))、MyHC (アガック(Agak)他著、J. Clin. Invest.、第100巻;第169〜179頁 (1997年)、WAP (ウトモ(Utomo)他著、Nat. Biotechnol.、第17巻;第1091〜1096頁 (1999年))、Col2A (オヴチンニコフ(Ovchinnikov)他著、Genesis、第26巻;第145〜146巻 (2000年))であり、誘導性プロモータ部位の具体例は、Mx (クーン(Kuhn)他著、Science、第269巻;第1427〜1429頁 (1995年))、tet (アーリンガー(Urlinger)他著、Proc. Natl, Acad, Sci.、USA、第97巻;第7963〜8頁 (2000年))、Trex (フェン(Feng)およびエリクソン(Erikson)著、Human Gene Therapy、第10巻;第419〜27頁)である。適当な誘導性プロモータは、非限定的に、tet、Gal4、lac 等を含むオペレータ配列を含む上述のプロモーターである。
【0032】
或いは、上述したように、前記発現カセットは、前記DNA配列が相同的組み換えによって前記遺伝座に組み込まれた時に、そのDNA配列の発現が内在性hRosa26遺伝子座プロモーターの制御下に置かれるように、対象遺伝子とその他のインテグレーション因子とを含むことができる。例えば、前記発現カセットは、リコンビナーゼ認識部位、例えば、loxPに隣接される配列を含むことができ、前記カセットは、前記リコンビナーゼの発現後に、前記機能性DNAが内在性hRosa26プロモーターの制御下に置かれるように構成される。特に、前記発現カセットは、ウイルススプライスアクセプターと、それに続く、loxP-隣接無プロモーターネオマイシン耐性遺伝子と、それに続く、変異loxP2272部位に挟まれた逆位RFPバリアント(タンデムダイマーRFP又はtdRFP)、とを含むことができる。上述したように、前記loxP及びloxP2272部位は、Cre発現後に、前記ネオマイシン耐性カセットが除去され、前記tdRFPが逆位され、それによって前記カセットが前記内在性hRosa26遺伝子座プロモーターの制御下に置かれるように配置される。
【0033】
前記標的化ベクター、機能性DNA配列又は遺伝子配列カセットは、更に、非限定的に、(選択可能な)マーカー遺伝子(E.coliトランスポゾンのネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子等)、リコンビナーゼ認識部位(loxP, FRT、それらのバリアント等を含む)、ポリAシグナル(合成ポリアデニル化部位、又はヒト成長ホルモンのポリアデニル化部位等)、スプライスアクセプター配列(アデノウイルスのスプライスアクセプター等)、イントロン、タンパク質検出のためのタグ、エンハンサー、選択マーカー等を含む、単数又は複数の追加の配列を含むことができる。
【0034】
一好適実施例において、前記標的化ベクターは、hRosa26遺伝子座に対して相同的なDNA配列に隣接された機能性DNA配列を含む。各隣接領域のサイズは重要ではないが、それは、少なくは数100塩基対から、多くは100kbの範囲のものとすることができ、好ましくは、各隣接フラグメントは、約1kb長以上、より好ましくは、約1kbから約10kb、更に好ましくは、約1kbから約5kb長である。フラグメントが大きければ大きいほどES細胞中の相同組み換え事象の数を増大させることができるが、大きなフラグメントはよりクローニングが困難でもある。
【0035】
別実施例において、本発明の前記方法は、相同的組み換えを含み、前記発現カセットは、カセットの前記(異種性)プロモーターに対する転写停止シグナル5’が欠如し、および/又は、前記外来性プロモーターは遍在的(構成的又は誘導性)プロモーターである。
【0036】
前記hRosa26遺伝子座は、導入遺伝子の部位特異的組込みのために使用することができ、ここで、前記導入遺伝子は対象遺伝子を含む。ここでの使用において、導入遺伝子は、標的化ベクターにトランスファー又は導入され、最終的には別の細胞集団又は生物体に導入される遺伝子又は任意のDNA配列を含む。DNAのこの外来セグメントは、前記トランスジェニック生物体に導入された時、例えばRNA又はタンパク質を作り出すその元の生物特性及び機能を保持することができるか、若しくは、それは、そのトランスジェニック生物体の遺伝子コードの通常の機能を変化させることができるものである。
【0037】
前記対象遺伝子は、天然又は人工の任意の遺伝子又はDNAを含むことができる。本発明の方法において使用可能な遺伝子の非限定的リストは、リコンビナーゼ、レポーター遺伝子、レセプター、シグナリングヌクレオチド、転写因子、薬学的活性タンパク質及びペプチド、薬剤標的候補、疾患発生遺伝子産物、及び毒素、及びこれらの変異物と組み合わせから成るグループから選択される。「変異」という文言は、参照遺伝子のDNA配列に導入される任意の変化を意味する。
【0038】
一実施例において、前記ES細胞は、ヒトES細胞である。ES細胞は、市販で入手してもよいし、例えば、米国特許第5,843,780号、トンプソン(Thompson)他著、 (1998年)、Science、第282号;第1145〜1147頁:米国特許第6,492,575号:エヴァンス(Evans)他著、(1981年)、Nature、第292号;第154〜156頁:及びリュビノッフ(Reubinoff)他著、(2000年)、 Nature Biotech.、第18巻;第399頁等に記載されているような、当該技術分野で公知の方法によって胚盤胞から単離することも可能である。ここに記載される前記方法は、導入遺伝子を、成体、即ち、体幹細胞、に導入するために使用することも可能である。成体幹細胞は、例えば、造血幹細胞、骨髄間質幹細胞、脂肪由来成体幹細胞、嗅覚成体幹細胞、ニューロン幹細胞、皮膚幹細胞等を含む。成体幹細胞は、多くの種類の細胞タイプを作り出す、ES細胞と類似の能力を有するが、それらが成体から収集可能であるという利点を有する。
【0039】
前記未分化ES細胞は、好ましくは、未分化状態で健全なコロニーを維持することを可能にする条件下で維持される。例えば、ヒトES細胞は、血清の存在下、又は、bFGFの存在下での血清の置換、或いは、マウス胚繊維芽細胞によって調製された培地で、又は、例えば、ヒト胚繊維芽細胞、卵管上皮細胞又は陰茎包皮、由来のヒトフィーダー細胞層を使用して無血清条件下、で照射マウス胚繊維芽細胞などのフィーダー細胞層上で維持することができる。
【0040】
本発明の前記方法によって、前記ES細胞ゲノムのhRosa26遺伝子座での導入遺伝子の部位特異的組込みが行われる。組み込まれた導入遺伝子を有するES細胞は、通常の胚様体(EB)発達をして、複数の細胞タイプへ分化する能力を保持している。導入遺伝子の発現は、分化を通して維持される。更に、印手グレートされた導入遺伝子を含むES細胞は、多系統の細胞を作り出す能力を維持している。
【0041】
本発明の方法によってその内部に導入遺伝子がインテグレートされた幹細胞は、とりわけ、トランスジェニック非ヒト動物を作り出すため、内部にインテグレートされた導入遺伝子を有する分化細胞及び組織を作り出すため、幹細胞の分化を研究するため、幹細胞での安全で効果的な遺伝子標的化のための戦略を評価するため、標的化治療用遺伝子導入のために、有用である。幹細胞から分化細胞を作り出す方法は、当該分野で公知である。ES細胞のイン・ヴィトロ分化のためのモデルシステムは、全ての三つの胚葉の誘導体を提示する細胞集団を含む胚様体(ES)として知られている三次元構造の形成に基づき、例えば、ケラー(Keller)著、(1995年) Curr. Qpin. Cell Biol. 第7巻;第862〜869頁による技術に開示されている。
【0042】
例えば、一実施例において、分化の前に、ES細胞をゼラチン化した培養容器に直接サブクローニングすることによってフィーダー細胞から除去される。EB産生の開始の24〜48時間前に、ES細胞は、IMDM-ESに継代される。 この培地での1〜2日間の培養後、細胞は収集され、ペトリグレード皿中の液体培地(IMDM, 15% FBS, グルタミン、トランスフェリン、アスコルビン酸、モノチオグリセロール、及び無タンパク質ハイブリドーマ培地II)に移される。これらの条件下では、ES細胞は、前記培養皿の表面に付着することは出来ず、EBを生成する。
【0043】
分化のための培養条件は、血液(ワイルズ(Wiles)他著、(1991年)、 Development、第111号、第259〜67頁)、心臓(マルツェフ(Maltsev)他著、 (1993年)、 Mech. Dev.、第44巻、第41〜50頁)、筋肉(ローウェーデル(Rohwedel)他著、(1994年)、Dev. Biol.、第164巻、第87〜101頁)、血管(ヤマシタ(Yamashita)他著、(2000年)、Nature、第408巻、第92〜96頁)、脳(ベイン(Bain)他著、 (1995年) Dev. Biol.、第168巻、第342頁)、骨(バッテリー(Buttery)他著、 (2001年)、Tissue Eng.、第7巻、第89〜99頁)及び生殖器官(トヨオカ(Toyooka)他著、(2003年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、第100巻、第11457〜11462頁)に見られる細胞タイプに対する分化ついて知られている。
【0044】
分化細胞および/又はそれらから作られる組織は、治療目的で動物に導入することができる。従って、別実施例において、本発明は、そのhRosa26遺伝子座にインテグレートされた導入遺伝子を含む分化細胞を有する、又は、そのような細胞から作られた組織を有する、動物を提供する。一実施例において、前記分化細胞は、造血細胞、内皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、又はニューロン細胞である。これらの細胞又は組織は、当該分野で公知の方法で前記動物に移植することができる。
【0045】
本発明の範囲は、ここに記載の特定の実施例に限定されるものではない。事実、ここに記載されているものに加えた本発明の種々の実施例は、下記の説明及び添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような改変構成も添付の特許請求の範囲に含まれるものと意図される。
【0046】
ここに挙げる全ての特許、出願、公報、テスト方法、文献及びその他、資料のその全体をここに参考文献として合体させる。
【実施例】
【0047】
〈材料と方法〉
ヒトES培養
ヒト胚幹細胞ラインHES2(ES Cell International)を、照射Swiss Webster 又はDR4マウス胚フィーダー細胞(MEF、The Jackson Laboratory)上で、20% (v/v)ノックアウト血清置換、5%(v/v)MEF調製培地、bFGF(5〜20ng/ml、R&D Systems)、50U/ml ペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン(P/S)、2mM L-グルタミン(Glut)、0.1 mM 非必須アミノ酸(全てInvitrongenから)、0.1 mM β-メルカプトエタノール(β-ME)29を添加したDMEF/F12中で増殖させた。MEF細胞は、Kennedy, M. & Keller, G. M.、“Hematopoietic commitment of ES cells in culture.”、Methods Enzymol、第365巻、第39〜59頁(2003年)に記載のように生成され、そして培養された。
【0048】
hRosa26形態
hRosa26hESCを、MEF細胞又はMatrigel (Becton Dickinson)上で増殖させた。アルカリフォスファターゼ染色を、製造業者(VectorLabs)に記載のように行った。tdRFP発現をLEICA DM IRB倒立顕微鏡観察を使用して検出した。
【0049】
ヒトRosa26遺伝子座からの推定転写物の同定
ヒトRosa26遺伝子座に対する類似性を示すヒトESTを単離するために、公開されているマウスRosa26転写物をヒトROSA26ゲノム配列と比較することによって推定エクソンを同定した。次に、個々のエクソンを、BlastN(NCBI)を使用して全ヒトESTデータベースに対してブラスト(blasted)した。有意E値(E>0,0001)を示すESTを、Scientific & Educational Software (Penalties for Mismatch: 2, Gap Opening: 4, Gap Extension: 1)からのAlign Plus 5ソフトウエアを使用して、グローバルに、推定ヒトRosa26ゲノム配列に対してアラインメントした。定量PCR(qPCR)とRT-PCRによる分析のために、脳、膵臓、肺、腎臓、骨髄、及び骨格筋からの総RNAを、Clontechから購入するか、若しくは、HES細胞ラインH1 (WiCell)、HES2、HES3 (共に、ES Cell International)、及びヒトRosa26からRNeasy kit (Qiagen)を使用して単離した。cDNAを作るために逆転写を使用した(Ominiscript RT、Qiagen)。
【0050】
ヒトβ-アクチンcDNAを下記のプライマーを使用して検出した。fwd 5’TTT GAA TGA TGA GCC TTC GTC CCC’3’(配列識別番号3)及びrv5’ GGT CTC AAG TCA GTG TAC AGG TAA GC3’(配列識別番号4)。hRosa26ExonIII cDNAを、以下のプライマーセットを使用してqPCRによって検出した。fwd 5’ TTA TCC GTT GCG TAA GCA CAG AGA GG3’(配列識別番号5)及びrv5’TTA TTC TCA CGG TGT GCA GAG GCT3’(配列識別番号6)。RT-PCRによってExonIIとExonIII cDNAを、下記のプライマーセットを使用して検出したfwd 5’AGA ACT GGA AGT AAA CGA TTG AAG A 3’ (配列識別番号7)及びrv5’TTA TTC TCA CGG TGT GCA GAG GCT 3’(配列識別番号8)。qPCR分析のために、サンプルを、ABI7900HTサーモサイクラー(thermocycler)上で分析し、増幅を、SYBRグリーン法(BioRad, iQ SYBR green supermix)を使用して検出した。増幅の直線性を、ゲノムDNAサンプル上でテストした。前記β-アクチン基準物に対して正規化され、前記H1hESCラインに対する相対性を、2-ΔΔCTによって計算した。その結果得られたqPCR産物を、シークエンシングによって確認したところ、hRosa26配列を示した。
【0051】
ベクター設計
標的化ベクターを、pHL-HH、マウスRosa26標的化ベクター8の主鎖を使用して構築した。それは、相同な5’と3’アーム、loxP/loxP2272隣接ネオマイシン耐性カセット、逆位loxP/loxP2272隣接tdRFP、及びジフテリアトキシン陰性選択カセットから構成されていた。前記ホモロジーアームを、下記の制限部位を導入するPCRプライマーを使用したhESCラインHES2からのlong range genomic PCRによって増幅した。短腕 fwd 5’ATG CGT CGA CGG CTC CTC AGA GAG CCT CGG CTA GGT AGG G3’(SalI)(配列識別番号9)及びrv5’TAG GGT TAA TTA AAG ATC ACG CGA GGA GGA AAG GAG GG3’(PacI)(配列識別番号10)、長腕fwd 5’TAT GGC GCG CCC GTC ATC GCC TCC ATG TCG AGT CGC TT3’ (AscI)(配列識別番号11)及びrv5’TAG CGA TAT CAA ATC AGA GAC AGA AAA GTC TTT GTC ACC3’(EcoRV)(配列識別番号12)。次に、プラスミドpHL-HH中のマウスSA及びLAをヒト対応物に交換した。モックスクリーニング用プラスミドを、下記のオリゴヌクレオチドを使用するリンカーとして導入された延伸5’ホモロジー(homoly)アームで作成した。fwd 5’ TCG ACG AGA AGA GGC TGT GCT TCG GCG CTC CC3’’(配列識別番号13)及びrv5’ TCG AGG GAG CGC CGA AGC ACA GCC TCT TCT CG3’’(配列識別番号14)。前記RMCE交換ベクターは、loxPと変異loxP22722部位、更に、多重クローニング部位(MCS)を持つリンカーを、プラスミドpBluescript IISK+(Stratagene)のSacI/KpnI部位に連結(ligating)することによって作成された。リンカー配列は以下の通りである。fwd5’ ATA ACT TCG TAT AAT GTA TGC TAT ACG AAG TTA TGC TAG CTC ATG GAA CGC GTA TAA CTT CGT ATA AGG TAT CCT ATA CGA AGT TAT AGC T3’(配列識別番号15)及び、rv5’ATA ACT TCG TAT AGG ATA CCT TAT ACG AAG TTA TAC GCG TTC CAT GAG CTA GCA TAA CTT CGT ATA GCA TAC ATT ATA CGA AGT TAT GTA C3’(配列識別番号16)。pBSKpuroTKからのピューロマイシン-チミジン-キナーゼ(puroTK)カセットを、標準分子技術を使用して前記MCSに導入した。
【0052】
プラスミドの調製とエレクトロポレーション
標的化プラスミド40μgを、KpnI制限酵素(NEB)を使用して線形化(linearized)した。エレクトポレーションの1日前に、DR4フィーダー細胞を、Matrigelの薄膜でコーティングされた10cmの組織培養処理皿に蒔いた。DNAエレクトロポレーションのために、ヒトES細胞(16代継代)をトリプシン処理(tripsinization)によって収集し、研和によって単一細胞に分離した。50%(v/v)胎児ウシ血清(Atlas)を使用してトリプシン活性を阻害した。5×106の細胞を、BioRad遺伝子パルサー(BioRad、 前記直線化標的化プラスミドを含有する500μLのHeS培地と300μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の250V/500μFd14)を使用してエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、前記細胞を2.5×106細胞/10mlでDR4 MEF細胞上に蒔いた。24時間後、G418(Introgen)を25μg/mlで前記培養液に添加した。培養の4日目に、G418の濃度を50μg/mlにまで増加させた。培地は、1〜2日毎に交換した。得られたlコロニーを、12日目に、1.3kbフラグメントを増幅する下記のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって前記座の正しい標的化のためにスクリーニングにした。Fwd 5’ GAG AAG AGG CTG TGC TTC GG 3’(配列識別番号17)及びrv5’AAG ACC GCG AAG AGT TTG TCC 3’ (配列識別番号18)。
【0053】
一過性のCre発現と細胞選別
hRosa26遺伝子座B7を拡張して、Cre発現プラスミド(pCRE-AC, HJF未公開)でエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、細胞を、HES培地中のMatrigelコーティングプレート上に蒔いた。エレクトロポレーションの48時間後、細胞を、トリプシン-EDTAを使用して収集し、細胞選別培地(IMDM+10%FCS)中に再懸濁し、tdRFPの発現に基づいて選別した。2000のtdRFP+選別細胞を、hESC培地中の胚フィーダー細胞上に蒔いた。個々のtdRFP+クローンを同定し、ガラスピペットを使用して採取し、拡張した。
【0054】
サザンブロット分析
hRosa26標的化を、下記のプライマー対fwd 5’GCC CAA GAA GTG AGA CAA GC 3’(配列識別番号19)、rv 5’GAC AAG GTA AGG GTC CGA CA 3’(配列識別番号20)を使用してゲノムDNAから増幅された5’外部プローブを使用したサザンブロット分析によって確認し、900bpプローブを作成した。ゲノムDNAは、HindIII制限酵素を使用して消化された。予測バンドサイズは野生型対立遺伝子の場合は6kb、標的化対立遺伝子の場合は3.5kbである。内部プローブの場合、単一のインテグレート事象が発生した場合、1つの4.1kbのバンド(EcoRI消化)を検出する前記標的化ベクター由来の1.4kbのtdRFPプローブが使用された。内部プローブゲノムDNAを使用したRMCEサザンブロット分析のために、ゲノムDNAを前記制限酵素XbaIで消化し、次に、プラスミドpBSK puroTK由来の1.6kb puroTKプローブとハイブリダイズした。このプローブは、単一のコピーの構築物がインテグレートされた場合に1つの6.1kbのバンドを検出するものである。
【0055】
ES分化
全ての分化実験のために、hESCを、HES培地中で照射MEF細胞上に維持した。これらの実験の開始前に、フィーダー細胞(feeders)の数を減らすために、細胞をMatrigelコーティングプレート上で一度継代させた。全てのサイトカインはR&D Systemsから購入された。
【0056】
神経外胚葉分化
細胞をトリプシン処理によって収集し、下記の培地中の96ウェル低クラスタープレート(Corning)中に50,000細胞/100μlの濃度で蒔くことによってEBを形成するように誘導した。P/S、Glut、4.5 ×10-4Mモノチオグリセロール(MTG)、 0.5 mMアスコルビン酸(AA)、0.1%(m/v)アルブミン(すべてSigmaから)、0.5 x N2及び0.5 x B27添加剤(supplement)(共にInvitrogenから)(SF-ES)。分化の4日目に、bFGFを20ng/mlの濃度で添加した。6日目に、細胞をゼラチンコーティングプレートに移し、培地に、上皮細胞増殖因子(EGF、20ng/mL)を添加した。その後、培地を、bFGFとEGFとが添加されたSF-ES培地を使用して3〜5日毎に交換した。いくかの実験において、細胞をガラスカバーガラス上で増殖させ、ゼラチンコーティングに埋め込んだ。細胞を、21日の培養後に分析した。抗体染色を以下のようにして行った。細胞を、PBS+4%パラホルムアルデヒド(PFA, EMS)中に固定し、無血清タンパク質ブロック(DAKO)によってブロックし、その後、モノクローナルマウス抗β-ツブリンIII抗体(Tu-20、Chemicon)又は適当なイソタイプ対照、によって染色した。染色を、ロバ抗マウスIgG FITC共役二次抗体(Biosource)によって明らかにした。画像を、倒立Leica DM IRB又はLeica DM RA2顕微鏡によって得た。指示されている場合、DAPI核対比染色を、DAPI封入剤(Molecular Probes)を使用して行った。
【0057】
内胚葉分化
内胚葉分化のために、hESCコロニーを37℃で45分間、コラーゲナーゼB(Roche)での連続的な処理、及び37℃での3分間のトリプシン-EDTA(Cellgro)での処理によって、小さな凝集塊に解離させた。この酵素的解離のあと、細胞をプレートからから掬い取り、そして、2mlのピペットを5回ゆっくりと通した。5〜10細胞の凝集塊を得た。凝集塊を、P/S、Glut、0.5mM AA及び4.5×10-4 MTGを添加したStemPro34(Invitrogen)中で低接着性培養皿に蒔いた。3日後、EBを収集し、P/S、Glut、グルタミン、4.5×10-4MTG、0.5mM AA、0.5×N2補助剤、ビタミンA無しの0.5×B27補助剤及び0.1%アルブミン(SF-D)を添加した75%(v/v)IMDM、25%(v/v)Ham’s F12(Invitrogen)中で培養した。アクチビンAを100ng/mlで添加した。第8日目、EBを、ヒトVEGF 5ng/ml、bFGF 20ng/ml及びヒトBMP4 50ng/mlを添加したSF-D中でゼラチンコーティングした6ウェルプレート上に蒔いた。培養において全16日後、細胞は、AFPの発現について、免疫組織化学的検査によって分析した。AFPの検出のため、細胞をPBS+4% PFA中で固定し、無血清タンパク質タンパク質ブッロク剤によってブロッキングし、続いてウサギ抗−マウスポリクローナルAFP抗体(Neomarkers)又は適当なアイソタイプ対象で染色した。染色を、ロバ抗ウサギCy2共役二次抗体(Jackson Immuno Research)によって明らかにした。画像を、倒立Leica DM IRB顕微鏡によって得た。指示されている場合、DAPI核対比染色を行った (Molecular Probes)。
【0058】
中胚葉分化
未分化hESCの小さな塊を、上述したようにして作製した。塊を、P/S、Glut、AA及びMTG及びBMP4 10ng/mlを添加したStemPro34中で低接着性培養皿に蒔いた。1日間後、bFGFを10ng/mLで添加した。4日目、培地を、下記のサイトカインを含む新しい培地と交換した。VEGF 10ng/mL、Stem Cell Factor (SCF)100ng/mL、 エリスロポエチン(EPO)4000U/mL、IL6 10ng/mL、IL30 20 ng/mL、及びIL11 5ng/mL。3日後、前記EBを、血漿由来血清(PDS, Animal Technologies) 5% 無タンパク質ハイブリドーマ培地(PFHM-II)5%(v/v)(Invitrogen)、Glut, 0.5 mM AA、3 x 10-4 MMTG、VEGF 10ng/mL、SCF 100 ng/mL、EPO 4000 U/mL、IL6 10ng/mL, IL3 20 ng/mL及びIL11 5ng/mL、TPO 40 ng/mL及びIGF-1 25 ng/mLを添加したIMDMに移した。細胞は、5〜7日毎に培地を交換してこの実験の残りこの培地中で増殖されるか、若しくは、メチルセルロースベースの半固形倍培地に交換されてそれらのコロニー形成能力を明らかにした。
【0059】
メチルセルロースアッセイ
中胚葉分化の16〜18日目、EBを、重力沈降によって浮遊細胞から分離した。両方の集団を、それぞれ別々に収集して、EBフラクションのみをコラゲナーゼタイプIに対して60分間露出させ、その後、3〜10分間トリブシン処理を行った。激しくボルテックスした後、前記EBフラクションからの細胞を21G ニードルに5回通過させた。次に、両方のフラクションを、プールし、細胞ろ過機を通過させた。細胞を計数し、FACSによって分析するか、若しくは、50,000細胞/mlの濃度の以下の半固体培地に蒔いた。P/S、Glut、15%(v/v)PDS、5%(v/v) PFHM-II、VEGF 10ng/mL、SCF 100ng/mL、EPO 4000U/mL、GM-CSF 2 ng/mL、IL6 10ng/mL, IL3 20 ng/mL、IL11 5 ng/mL、TPO 40ng/ml、IGF-1 25 ng/mL、及びIMDM-100%を添加した、1%(m/v)メチルセルロース(Fluka)。メチルセルロース培養の10日目にコロニーを分析した。
【0060】
奇形腫形成
ES細胞を、コラゲナーゼタイプIでの45分間の処理によって小さな凝集塊に解離した。この酵素的解離後、前記細胞をプレートから掬い取り、2mlピペットにゆっくりと5回通し、15〜20細胞の凝集塊を得た。10,000細胞の同等物をIMDMとMatrigelとの1:1混合物中に再懸濁し、NOD/SCIDマウス(The Jackson laboratory)の後脚筋肉に注射した。8〜10週間後、マウスを屠殺し、奇形腫を収集した。未固定組織上に立体顕微鏡を使用して赤色蛍光写真を撮った。後脚筋肉を陰性対照として使用した。フローサイトメトリー分析のために、前記奇形腫を、手術用メスと、その後の、コラゲナーゼBでの45分間、37℃での処理とによって小片に切断した。次に、細胞を21Gニードルに数回通し、その後、トリプシン-EDTAで5分間処理した。2回の洗浄後、細胞をLSRIIフローサイトメーター上で分析した。死滅細胞を、前方及び側方分散パラメーターを使用して除去した。組織学的分析のために、組織をパラフィンブロックに埋め込み、切片をヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した。
【0061】
実施例1:hRosa26の同定
Ensemblデータベース(3)をサーチするためにテンプレートとしてマウスRosa26転写物(1)の配列を使用して、ヒト第3染色体上のいくつかの高度に有意な相同性を有する領域を見つけた。もっとも高度な配列類似性(>85%)が、前記マウスRosa26遺伝子座のhRosa26遺伝子座中の推定プロモーター領域のエクソン1plus-10kbの5’部に対応する非反復性DNAのストレッチ中に見つかった(図5a)。このゲノム領域のEnsembl遺伝子発現データベースの電子スクリーンは、多数の未特徴付け発現遺伝子配列断片(EST)と転写物を示した。これらの転写物は、広範囲の成体細胞タイプと3つの胚幹細胞ライン由来のものである。それらはRosa26−シンテニーの領域内の特定の位置、最も高い可能性としては境界(demarcating)エクソンにマッピングされる(図5b)。このように、ヒト第3染色体上に同定された前記領域は、マウスRosa26遺伝子座の同等物であり、従って、ヒトRosa26(hRosa26)と称されるべきものである。
【0062】
前記hRosa26遺伝子座の発現パターンの規定を開始するために、種々の成体組織のhRosa26メッセージを、推定ExonIII中の配列に対するオリゴヌクレオチドを使用した定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって分析した。図1aに図示されているように、hRosa26は、テストされた全てのヒト組織中と、3種類のhESCラインで発現した。成体ヒト組織における発現のレベルは、H1 hESCで検出されたレベルの〜0.2×と〜1.4×の間であった。従来のRTPCR反応におけるExonIIとExonIIIとの間の予想イントロンに渡るオリゴヌクレオチドを使用して比較発現パターンが観察された(図1b)。これらのヒト組織に観察された種々のレベルの発現は、マウスRosa26遺伝子座も成体組織において様々な発現を示すものであるため、予想外のものである。
【0063】
実施例2.hRosa26標的化ベクターの構築
広く使用されているマウスRosa26ベクター(2)に類似の標的化ベクターを構築した(図1c)。このベクターは、相同な5’短腕と3’長腕とを含み、これらはhRosa26遺伝子座の約5.1kbに渡るものである。前記ベクターは、前記推定第1エクソンとその後のイントロンのhRosa26遺伝子座の配列と重複している。前記相同的な腕は、ウイルススプライスアクセプター、それに続くloxP-隣接無プロモーターネオマイシン耐性遺伝子を含む、複数の要素からなる発現カセットによって互いに分離されている。前記ネオマイシン遺伝子の後には、変異体loxP2272部位(6)によって挟まれた、タンデム型の二量体RFP(tdRFP)と命名される逆位RFPバリアント(5)が続く。tdRFPは、遺伝子的に変性された単量体RFPの共役結合的に融合した二量体である。これは、成熟が早く(約2時間)(7)、マウスES細胞(8)において毒性を持たず、mRFP(1)やmCherry等の単量体RFPバリアントよりも遥かに明るく、従って、イン・ヴィトロ分化及び奇形腫形成中における導入遺伝子検出が容易であるために選択された。前記loxP及び変異loxP2272部位は、Creリコンビナーゼ(Cre)(9, 10)の発現後に、前記ネオマイシン耐性カセットが除去され、tdRFPが逆位されて、内在性hRosa26プロモーターの制御下におかれるように配置される(図14)。
【0064】
最近Luches他(8)によって示されたように、このプロセス中に二つの異なる中間体を製作することができる。このジーントラップ構築物は、前記遺伝子座の標的化の成功後に、Cre誘導蛍光レポーターとして作用する。loxP導入「floxed」ストッパーカセット(11)ではなくマウス逆位tdRFPカセットを使用するこによって、マウスES細胞において類似の構築物を使用した以前の研究において検出された低レベルの「遺漏性 ”leaky”」tdRFP発現の可能性が除去された(8)。更に、ヘテロタイプのloxP部位の使用は、その後、tdRFPカセットを、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)(12)を使用してhRosa26遺伝子座で実質的に全ての対象cDNAと交換することを可能にする。
【0065】
実施例3. 遺伝子標的化
遺伝子標的化のために、hESCラインHES213を、直線化標的化構築物によってエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの1日後、硫酸ネオマイシン(G418)での選択を開始した。10〜12日後に検出されたG418耐性クローンを取り出し、陽性対照としての伸長5’相同性領域を有する模擬プラスミドを使用した正しい標的化の証拠についてPCRによって分析した。分析された24のクローンのうち1つが、このPCR分析に基づいて正しく標的化されていた。このクローンを拡張し、一過性にCreを発現したプラスミドによってエレクトロポレーションした。48時間後、総集団の約5%を構成するtdRFP陽性細胞を、細胞選別によって単離し、低密度で培養した。蛍光顕微鏡検査法によって同定されたtdRFPを発現するコロニーを取り出し、拡張した。正しく標的化されたクローンを、外部ゲノムプローブを使用したサザンブロット分析によって確認した(図1e)。標的化構築物の単一コピーのインテグレーションを。TdRFPカセットに対して特異的なプローブを使用して予想サイズの単一バンドの出現によって確認した(図1f及び図5)。ネオマイシンカセットのCre/loxP媒介欠失及び標的化遺伝子座の維持を、G418耐性の消失及びサザンブロット分析によって確認した(図1e)。その後の分析には、1つのhRosa26tdRFPサブクローン(hRosa26 B7 2.12)を使用した。このクローンを、以後、hRosa26と称する。
【0066】
この第1セットの実験から、サザンブロッティングによる更に40個のクローンのスクリーニングによって、それ以外の正しく標的化されたクローンは見つからなかった(64中の1における最大標的化効率、〜1.5%)。第2の実験において、テストされた24のクローンから1つの標的化されたクローンが同定(サザンブロット)された(24中の1、〜4.2%、全体で88の中の2、〜2.3%)。このクローンをhRosa26.2と称する(図6a)。前記観察された5つの標的化頻度はマウスRosa26遺伝子座2について報告されているものよりも低いが、それらは多重標的化実験について十分許容可能な範囲内にあるように思える。その低い標的化頻度が相同性組み換え、又は、準最適なDNA送達及び選択機序などのより些細な技術的問題が考えられる遺伝子座特異的種差によるものであるのかは、系統的に更に研究する必要がある。hESCs(14)における遺伝子標的化について過去に報告が僅かに1つかないので、ヒトES細胞での相同的組み換えの最適化のための決定的なパラメーターはまだ決定されていない。前記第2のエレクトロポレーション後の8継代後の標的化クローンの染色体分析によって正常な核型(46XX)が確認された。未分化細胞は、典型的なES細胞形態(図2a)を示し、蛍光顕微鏡観察(図2b)及びフローサイトメトリー分析(図2f)とによって容易に検出可能な相当なレベルのtdRFPを発現した。これらのコロニーは、アルカリフォスファターゼに対して陽性であった(図2c)。無血清培地で分化するように誘導された時、前記hRosa26tdRFP細胞は、胚様体(EB、図2b)を形成した。tdRFP発現を、落射蛍光顕微鏡観察(4日目EB、図2e)によって、そして、分化の17日目にフローサイトメトリー分析(図2f)によって測定することができた。NOD/SCIDマウスの後脚への注射の8〜10日後、hRosa26hESCは奇形腫を作り出し(図2g)、これらは著しくtdRFPを発現した(図2h)。別のhRosa26サブクローン(B7 2.10)から製作された第2の奇形腫由来の単一細胞の免疫蛍光(インサート図2h)とフローサイトメトリー分析とは、大半の細胞(>95%)がtdRFPを発現した(図2i)を示した。
【0067】
tdRFP細胞の小集団(<4%)は、宿主の血管系を表すものであるかもしれない。ES細胞の顕著な特質の1つは、3胚葉の誘導体を表す複数の細胞タイプに分化するその能力である。図7は、軟骨と心筋(中胚葉)、繊毛粘膜組織(内胚葉)及び神経ロゼット(外胚葉)の存在を示すhRosa26hESC-由来奇形腫の組織学的分析を示している。
【0068】
実施例4.細胞分化実験
イン・ヴィトロで調製された分化子孫におけるtdRFP発現をモニターするために、前記標的化hESCを、3つの胚葉、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉、更に、栄養芽細胞系統、胚外集団の誘導体を表す細胞に分化するように誘導した。
【0069】
実施例4a. 外胚葉発現
外胚葉におけるtdRFPの発現を評価するために、野生型とhRosa26ES細胞との両方を、神経細胞系へと分化するように誘導した。この分化のために、hESCを幹細胞状態から取り出し、無血清培地でEBとして分化させた。分化の第4日目に、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を前記EB培養に添加し、6日目に、EBをゼラチンコーティング6−ウェルプレートに移し、上皮細胞増殖因子(EGF)を添加した無血清培地で更に21日間培養した。これらの条件によって、神経マーカーβ-チュブリン III15を発現する細胞の成長を支持した。これらのβ-チュブリン III+神経細胞は、tdRFP発現を保持し(図3a、インサート)、ヒトRosa26遺伝子座が、hESCの神経外胚葉への分化後に活性のまま留まるということを示した。前記HES2親細胞ラインは、赤蛍光を示さないチュブリン III+ニューロンを生成した。hRosa26と野生型細胞との両方から生成された神経細胞も、神経細胞接着分子(NCAM)を発現した。
【0070】
実施例4b. 内胚葉発現
アクチビンAは血清の不在状態でマウスES細胞から明確な内胚葉を誘導することが可能であることが示されている(16)。D’Amour他は、最近、この因子が更に、hESC培養において内胚葉を誘導するようにも作用すること(17, 18)を示した。hRosa26標的化hESCの内胚葉能力をテストするために、それらを、アクチビンAの存在下、無血清状態でEBとして分化させた。誘導の8日間後、前記EBを、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と、骨形態形成タンパク質(BMP4)とを含有する無血清培地中のゼラチンコーティング6-ウェルプレートに移した。これらの因子は、マウス胚(19)及びマウス胚幹細胞分化培養(20)における肝臓特異性 (liver specification)のために重要であることが示されている。培養の16日後、アルブミン及びアルファ-フェトプロテイン(AFP)陽性細胞のクラスターを検出することができた。図3bに図示されているように、Rosa26標的化hESCから作成された前記AFP-発現細胞は明るい赤色蛍光を示したのに対し、親細胞から作成されたものはそうではなかった。これらの知見は、hRosa26遺伝子座は、内胚葉由来細胞集団においても発現されるということを示している。
【0071】
実施例4c. 中胚葉発現
中胚葉誘導体における発現を評価するために、Rosa26標的化hESCを、無血清培地においてBMP4での誘導によって造血系統へと分化させた(21, 22)。18日目、EBを解離し、広範囲の造血サイトカインを含む(赤血球と骨髄細胞コロニーとの両方をサポートする条件)メチルセルロースへと置換した。図3cに示されているように、両方のタイプのコロニーがtdRFPを発現した。CD45、汎特異性造血マーカーが、EB分化の14日目と21日目とに造血細胞上で発現される(図3d)。これらの時点において、培養培地中に放出されたCD45-とCD45+細胞の両方がtdRFPを発現した。親の野生型hESC由来細胞は、tdRFP陰性であった。第2の標的化細胞ライン、hRosa26.2も、BMP4での誘導後、高レベルのtdRFPを発現するCD45+細胞を生成した(図6b)。
【0072】
実施例4d. 胚外集団におけるtdRFPの発現
胚外集団におけるtdRFPの発現をテストするために、野生型及びhRosa26 hESCを、高レベルのヒト組換えBMP423での処理によって、栄養芽細胞系統へと分化するように誘導した。図3eに図示されているように、親HES2(右)及び標的化hRosa26(左)hESCの両方の誘導体が、ヒト絨毛性ゴナドトロピンを分泌する細胞を生成することができた。標的化hESCラインから生成されたものだけがtdRFPを発現した。これらを総合すると、これらの知見は、hRosa26遺伝子座が、三つの胚葉の誘導体のすべて、更に、培養で生成される栄養芽細胞にも発現するということを明白に示している。
【0073】
実施例5.RMCE
loxP部位のtdRFPとの標的化インサートが、その後のRMCE、即ち、遺伝子標的化や薬剤選択の必要無くhRosa26遺伝子座に任意の目的配列を挿入することを可能にする方法、のためのホーミング部位を導入した。hESCにおけるこのアプローチの実行可能性をテストするために、5’loxP及び3’loxP2272部位に挟まれたプロモーター無しピューロマイシン耐性カセット(puro)を含む交換ベクターを調製した(図8b)。この交換ベクターを、Cre発現プラスミドとともに、1つのhRosa26クローンにエレクトロポレーションした。48時間後、tdRFP陰性細胞(前記tdRFPインサートを喪失したもの)を、細胞選別によって単離し、何ら薬剤選択無しで、MEF細胞上で培養した。14日間の培養中に、10,000tdRFP選別細胞から約20のクローンが生育された。これら20のクローンのうちの4つは、落射蛍光顕微鏡観察による測定でtdRFP陰性であり、これらのうち、2つがピューロマイシン耐性であった。なぜ、前記tdRFP細胞から生成されたクローンの大半が、一貫してtdRFP発現を取り戻したのかは不明である。1つの可能性は、Cre切除後に前記部位に再挿入されたtdRFPコード化配列が、そうする時に、前記遺伝子座の元の確認を確立したということである。前記標的化遺伝子座の物理的構造を、前記4つのtdRFP陰性クローン(hRosa26.puro#1-4)中において分析した。サザンブロット分析によって、前記2つのピューロマイシン耐性クローン(hRosa26 puro#1+4)のそれぞれが、puro特異的内部プローブでのハイブリダイゼーション後、前記ピューロマイシンカセットの単一のインテグレーションを示す予測バンドを含んでいることがわかった(図8d)。外部プローブでのハイブリダイゼーション後、野生型と標的化対立遺伝子の両方が検出された(図8e)。ピュ−ロマイシンに感受性のある2つのtdRFP-クローン(hRosa26_puro#2+3)は標的対立遺伝子を失った。これは、多分、Creが二重鎖破壊を誘導した後、姉妹染色体による修復を媒介した相同組換えによるものだろう。これらのクローンはいずれも、サザンブロット分析において検出可能はピューロマイシンに特異的なバンドを含まなかった。前記二つのピューロマイシン陽性クローンにおけるこの交換は、抗生物質での選択によるものではなく、tdRFPの喪失に依存するものであり、このことは、その他の点では非選択可能な遺伝子とtdRFPを交換する汎用的な戦略としてのこの方法の可能性を示すものであった。その後、二つの追加の交換ベクター、一方はEGFPを発現するもの、他方はLHX224を発現するものを設計した。これらのベクターでの予備分析は、それぞれ、9のtdRFPクローンのうちの1と、5のtdRFPクローンのうちの3との、交換頻度を示している。DNA送達条件を改善し、Cre発現プラスミドに対する交換プラスミドの比率を変化させることによって、更に好ましい結果に改善されるかもしれない。これらの知見を総合すると、対象のcDNAをRMCEによってRosa 26 hESCのhRosa26遺伝子座に導入するこが可能であることが明らかである。
【0074】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変ヒトRosa26遺伝子座を有するトランスジェニック真核細胞集団を作製する方法であって、前記方法は、出発真核細胞の前記ヒトRosa26遺伝子座に機能性DNA配列を導入する工程を含む改変ヒトRosa26遺伝子座を有するトランスジェニック真核細胞集団を作製する方法。
【請求項2】
前記機能性DNA配列は、異種性プロモーターに操作連結された対象遺伝子を含む遺伝子発現カセットである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能性DNA配列は、対象遺伝子を含む遺伝子発現カセットであり、前記DNA配列は、相同的組み換えによって前記遺伝子座にインテグレートされ、それによって前記DNA配列を前記遺伝子座に、前記DNA配列の発現が外来hRosa26プロモーターの制御下に置かれるように挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記機能性DNA配列は、前記ヒトRosa26遺伝子座に対して相同的なDNA配列によって挟まれた前記機能性DNA配列を含む標的化ベクターでの相同的組み換えによって前記真核細胞に導入される請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記真核細胞は、一次細胞又は不死化細胞である請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記真核細胞は、ヒト胚幹(ES)細胞である請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
対象遺伝子は、リコンビナーゼ、レポーター遺伝子、レセプター、シグナリング分子、転写因子、薬学的活性タンパク質及びペプチド、薬剤標的候補物質、疾患遺伝子産物及び毒素、及びこれらの変異体と組み合わせから成るグループから選択される請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロモーターは、構成性遍在的プロモーター、構成性組織特異的プロモーター、誘導性遍在的プロモーター、及び誘導性組織特異的プロモーターから成るグループから選択される請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記機能性DNA配列又は遺伝子発現カセットは、マーカー遺伝子、互いに同じ又は異なるものとすることが可能な1以上のリコンビナーゼ認識部位、ポリAシグナル、イントロン、及びこれらの組み合わせから成るグループから選択される1以上の追加の機能性配列を含む、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
発現カセットは、ウイルススプライスアクセプター、loxP隣接無プロモーターネオマイシン耐性遺伝子、逆位RFPバリアント、変異loxP2272部位、及びこれらの組み合わせから成るグループから選択される1以上の機能性配列を含む、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
発現カセットは、下記の要素を配列順序で含む、(a)ウイルススプライスアクセプター、(b)loxP-隣接無プロモーターネオマイシン耐性遺伝子、及び(c)逆位RFPバリアント(tdRFP)、ここで、前記逆位RFPバリアントは、変異loxP2272部位によって挟まれている、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
発現カセットは、CreリコンビナーゼをコードするDNA配列を含み、そして前記loxP及び変異loP2272部位は、Creリコンビナーゼの発現後に、ネオマイシン耐性カセットが除去され、tdRFPが逆位され、それが外来hROSA26プロモーターの制御下に置かれるように位置される、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
標的化ベクターは、更に、タンパク質検出のためのタグ、エンハンサー、選択マーカー、及びこれらの組み合わせから成るグループから選択される機能性配列を含む請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記トランスジェニック真核細胞は、前記ヒトRosa26遺伝子座の5’及び3’隣接腕由来のヒトRosa26遺伝子座に対して相同なヒト及びDNA配列由来である請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
ヒトRosa26遺伝子座と相同なDNA配列によって隣接された機能性DNA配列を含む標的化ベクター。
【請求項16】
改変ヒトRosa26遺伝子座を含む真核細胞集団。
【請求項17】
第3染色体のヌクレオチド位置9’415’082と9’414’043の間に位置するヌクレオチド配列に対して実質的に相同な単離DNA配列。
【請求項18】
配列識別番号2に対して実質的に相同な単離DNA配列。
【請求項19】
配列識別番号2の核酸配列に対してストリンジェント条件下でハイブリダイズする単離DNA配列。
【請求項20】
改変ヒトRosa26遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒト動物。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図4a】
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【図4b−1】
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【図4b−2】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2010−516250(P2010−516250A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546429(P2009−546429)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/000666
【国際公開番号】WO2008/088863
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502375437)マウント シナイ スクール オブ メディスン オブ ニューヨーク ユニバーシティー (11)
【Fターム(参考)】