説明

広い領域にわたってステレオサウンド感を提供する点サウンド生成手段及び空間サウンド生成手段を有する装置

第1と第2のサウンド生成手段(2、4)と、左右(L、R)のサウンド信号(S)を有するステレオ信号用入力とを有する装置を開示する。該装置は、それぞれ第1と第2のサウンド発生手段(2、4)を有する相互接続された第1部分(1)と第2部分(3)を有する。第1部分(1)は、面(6)上に置かれたとき、その面(6)に第1のサウンド発生手段(2)で発生した音波を結合するように形成される。前記装置は、第1部分(1)の第1のサウンド発生手段(2)に左右(L、R)のサウンド信号を有する第1の信号(S1)を送り、第2部分(3)の第2のサウンド発生手段(4)に左右(L、R)のサウンド信号の異なる組成である第2の信号(S2)を送る手段(5)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1と第2のサウンド生成手段と、左右のサウンド信号を含むステレオ信号用入力とを有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのサウンド生成手段を有する装置は知られており、広く使用されている。
【0003】
サウンドの空間的定位は、オーディオ再生装置において最重要問題であると常に考えられている。現在のサウンド再生装置は、少なくともステレオ再生能力を有している必要があり、その能力を実現するために従来から2つ以上のラウドスピーカを備えている。この結果、外部のラウドスピーカを十分な距離だけ互いに離さなければならず、フットプリントや配線が問題となる。しかし、これにもラウドスピーカ間に十分な距離を取らなければならず、そのための空間が必ずしもなかったり、配線が必要となったりする。多くの環境において、装置はよりコンパクトであることが好ましい。しかし、このようなコンパクトな装置が開発され販売されてはいるが、これらの装置(例えば「ゲットーブラスター」等)は真のステレオ再生であるようには聞こえない。ラウドスピーカが互いに非常に近いところに置いてあるからである。フィリップス社の「インクレディブルサラウンド」等のステレオワイドニング技術は、こうした問題をある程度克服するものとして知られている。しかし、このような技術は一般的には「スイートスポット」(すなわち、十分よいステレオサウンドが再生される領域)を小さくしてしまう。消費者は必ずしもサウンド装置の正面に座らないので、スイートスポットは現実的ではないくらい小さくなってしまう。さらに、このような方法は通常複雑である。一般的に、ステレオサウンドを再生するコンパクトな装置は、スイートスポット内またはその近くでのみステレオサウンドになるが、これが達成される位置が装置の真正面の比較的小さな領域に限定されているという欠点を持っている。真のステレオサウンド感と言うためには、リスナーが歩き回ってもステレオサウンド感が維持されたり、または2人以上の人がサウンドを聴く場合、全てのリスナーがほぼ同じサウンド品質を享受できることが非常に好ましい。ステレオ信号は左右のサウンド信号を有する。「左」や「右」という表記は、ステレオ信号(ここで、「ステレオ信号」はいかなる多チャンネル信号であってもよい)の通常の副信号の一方のみを表すと理解されている。特に断らない限り、これらの表記は、一般的な用語を用いるステレオ信号の単純な分割以外の何者でもなく、不当な制約を課すべきではない。しかし、単純な一実施形態において、「左」と「右」は、通常のステレオチャンネルの「左」と「右」をそれぞれ表す。
【0004】
それゆえ、好ましくは非常にコンパクトなサウンド再生装置であって、比較的広い領域にわたってリスナーにステレオサウンド感を与えることができる装置が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、比較的広い領域にステレオサウンド感を与えることができるコンパクトサウンド再生装置を提供することである。
【0006】
このため、本発明の第1の態様による装置は、それぞれ第1と第2のサウンド発生手段を有する相互接続された第1部分と第2部分を有し、第1部分は、面上に置かれたとき、その面に第1のサウンド発生手段で発生した音波を結合するように形成され、前記装置は、第1部分の第1のサウンド発生手段に左右のサウンド信号を有する第1の信号を送り、第2部分の第2のサウンド発生手段に左右のサウンド信号の異なる組成である第2の信号を送る手段を有することを特徴とする。
【0007】
本発明は以下の認識に基づく。
【0008】
ステレオ音楽は一般的には左右のチャンネル(L、R)を有する。第1部分が置かれている表面例えばテーブルに音波を効果的に結合するような方法で第1部分を形成することにより、第1部分を置いたものが励起され、第1部分が発生したサウンドで振動するであろうことに発明者は気がついた。振動体のサイズは大きいので、左右のサウンド信号のコンポジット信号である第1の信号を「ボリュームサウンド」として知覚する。左右サウンド信号の別のコンポジット信号である他の信号を第2部分(基本的には点音源として機能する)に送る。しかし、リスナーがテーブルその他のものの回りのどこにすわっていても、両方のサウンド源からのサウンドは同じである。その結果、サウンド感は装置の回りの人全てに対して同じである。スイートスポットは1箇所だけではない。発明者は、驚くほどよいステレオ感が得られることを発見した。第1部分と第2部分に送られる信号は異なる。その理由は、一定のサウンドが他のサウンドよりもボリュームサウンド効果に適しているからである。
【0009】
より具体的に、好ましい実施形態において、第1部分に送られる第1の信号と第2部分に送られる第2の信号は、動作中、実質的に直交する信号である。すなわち、第1の信号がS1=aL+bRと表され、第2の信号がS2=cL+dRと表される場合、ここでLとRはそれぞれ左右のサウンド信号であるが、ac+bdは平均てきにほぼ0であり、少なくとも0.1より小さく、好ましくは0.05より小さい。最も好ましくは、aとcの絶対値はほぼ(20%ないし10%の範囲で)等しい。bとdの絶対値も同様である。
【0010】
好ましい実施形態において、第1の信号は左右ステレオサウンド信号の差(L−R)であり、第2部分(点音源)に送られる第2の信号は左右ステレオサウンドの和信号(L+R)を有する。別の好ましい実施形態において、主要信号(aL+bR)を見つけるために信号を分析して、本装置は、主要信号と残余信号を送る手段を有する。ほとんどの音楽は、例えばシンガーやソロアーティストである、両方のステレオ信号にある信号を有する。ソロアーティストが発するサウンドは、通常は主要信号であり、通常は、ソロアーティストが真ん中に立ち、すなわち、ソロアーティストが発するサウンドの強さは、左右のサウンド信号で同じである。ステレオ信号を足して、第2のサウンド発生手段(4)に和信号(L+R)を送ることにより、ソロアーティストが第2部分の位置(すなわち、シンガーまたはソロアーティストの定位音源)にいるように聞こえる。この定位音源で発生したサウンドは、音源の回りでほぼ同じく聞こえる。音楽にステレオの印象を与えるサウンドは、一般的に、左信号または右信号のいずれかにある。または一方のチャンネルに他方のチャンネルよりも多くある。第1のサウンド発生手段に差信号(L−R)または残余信号を送るだけでは、十分なステレオ感をあたえることは必ずしもできない。その理由は、第1部分(L+R音源)と第2部分(L−R音源)の両方が単一の点でサウンドを発生するからである。コンパクトな装置の場合、これらの点は互いに近いことが普通である。これにより、既存の装置と同じ上記の問題が生じる。本発明による装置は、動作中、第1部分を介してこのサウンドをその第1部分が置かれた表面(例えば、テーブル)に効果的に結合し、第1部分が置かれる対象を励起して、第1部分が発生したサウンドで振動させることができる。その結果、テーブルその他の対象は、第2部分とともに共振し、差信号(L−R)を発生する空間的拡張音源を形成する。しかし、リスナーがテーブルその他のものの回りのどこにすわっていても、両方のサウンド源からのサウンドは同じである。1つのコンポジット信号、好ましくは主要信号の定位音源と、和信号(第2部分L+R)と、他のコンポジット信号、好ましくは異なる信号の残余信号(L−R)(振動し、励起された表面と組み合わせた第1部分)の空間的音源と、は全ての方向でステレオサウンド感を生じる。本発明の電子回路は非常に単純であり、装置自体もそれゆえ非常にコンパクトである。しかし、リスナーが特定の場所にいなくてもステレオサウンド感を達成することができる。和信号と差信号の使用は好ましい一実施形態である。
【0011】
本発明は、非常に小さな主要音源により、例えば、テーブルの天板などの大きな固い対象を振動させ、もし十分な音響結合が確保されれば、その主要音源から発するサウンドより大きなサウンドを生じるようにすることができる。励起する対象の特性により、より大きな対象のサウンドの強さは主要音源(第1のサウンド発生手段)だけのサウンドの強さよりも大きく豊かになる。おそらく、主要音源と比較して表面積が非常に大きいからであろう。このアプリケーションでは、この現象も共振及び/または共励起と呼ぶ。
【0012】
本発明のコンセプトにおいては、第1部分がテーブルその他の共振対象上に置かれている場合、テーブルが振動するように装置が作られている。このような効果は、ある程度常に起こっている。しかし、通常、ラウドスピーカボックスではこのような効果をできるだけ小さくするように作られている。換言すると、共振はできるだけ防止され、最小化される。従来の設計では、ラウドスピーカはテーブルとコンタクトしないか、ほぼしない。ラウドスピーカは、非常によい振動ダンパーやそのような機能を有するものを有する容器の中に通常はぶら下がっている。対照的に、共振の効果は本発明の不可欠の一部である。本発明による装置をその範囲外の装置と区別する手段を後で説明する。
【0013】
本装置の第1部分と第1のサウンド発生手段は、このアプリケーションで定義したように第1部分をテーブル上面に置いた時、その第1部分から1mのところにおける第1部分により発生されるサウンドボリュームが少なくとも6dBだけ、同じものを空中で使用した場合と比較して高い。それゆえ、単純に第1部分を持ち上げるだけで、本発明の範囲に入るのか入らないのかを区別することができる。本装置は、およそ標準的な事務机である厚さが18mmで大きさが90*180cmの木製(合板)テーブル上面上に置く。そして、テーブル上にフラットに寝かせて100グラムのおもりに対応する力を装置にかける。そして、サウンド強度の増加を、空中、すなわち毛織り上に載せた同じ装置に対して1mの距離で測定する。100グラムには、装置そのものにより係る力も含む。多くの状況において、これは第1部分自体の重みとほぼ等しい。
【0014】
サウンド強度が増加の測定方法は、このアプリケーションに記載した。
【0015】
第1部分は好ましくは結合手段を有する。結合手段、すなわち機械的カップリングを強化する手段を使用することにより、15dBより大きく、場合によっては20dBよりも大きいサウンド強度の大幅な増加が可能となる。このような手段は、例えば吸着手段や磁石である。吸着手段は、装置がテーブルに張り付く力を有効に強くする(その見かけ上の重さを重くする)、一方、磁石はスチール表面上に載せた時に見かけの重みを大きくする。両方備えていてもよい。
【0016】
機械的カップラーは、第1手段がテーブルまたはフラットな表面に置かれている場合、第1手段が機械的カップラー上にあるように、機械的カップラーが第1手段よりも少し長く延在するように構成することが好ましい。機械的カップラー自体は、ハンドヘルドの場合、装置のサウンド強度に大きな影響は与えない。
【0017】
第1部分を置いた対象の励起のため、豊かでよりよい可聴サウンドが得られる。
【0018】
増加を測定できる標準テストは、図面の説明において説明する。基本的に、サウンドボリュームの増加を1mの距離で測定する。装置は厚さが18mmで大きさが90*180cmの木製テーブル上に置く。装置の全重量と追加的圧力を加えると100グラムを越える。
【0019】
好ましい実施形態において、本装置はサウンド記録要素を備え、本装置は、登録サウンドと放射サウンド信号間の比較をする手段と、装置が他の対象と共励起状態にあることを示し第1手段のサウンド強度を一定かする手段とを有する。あらかじめ、第1手段をどんな面上に置くかは分からない。それゆえ、第1手段を置くテーブルに応じて、有効サウンド強度は変化する。マイクロホンと、実際のサウンド強度のフィードバックとを備えることにより、第1手段により発生されるサウンド強度を安定化する手段が可能である。
【0020】
好ましい実施形態において、第2のサウンド発生手段は、スイーベル上、すなわち、第2のサウンド発生手段により発生されたサウンドの方向を変更する手段上に配置される。このようなスイーベル(本発明の範囲において、物理的接続は維持しつつ、第1のサウンド発生手段に対して第2のサウンド発生手段の一と方向を変化させるいかなる手段も含む)はサウンドを1つの一般的方向に向けるのに有利に使用される。
【0021】
本発明の他の関係する態様において、それぞれ第1と第2のサウンド発生手段を有する相互接続された第1部分と第2部分を有し、第1部分は、その外側容器に第1のサウンド発生手段で発生した音波を結合するように構成され、前記装置は、第1部分の第1のサウンド発生手段に左右のサウンド信号を有する第1の信号を送り、第2部分の第2のサウンド発生手段に左右のサウンド信号の異なる組成である第2の信号を送る手段を有する。
【0022】
本発明のさらに別の関係する態様において、それぞれ第1と第2のサウンド発生手段を有する相互接続された第1部分と第2部分を有し、第1部分は、それに結合した引き延ばし要素(elongated element)に第1のサウンド発生手段で発生した音波を結合するように構成され、前記装置は、第1部分の第1のサウンド発生手段に左右のサウンド信号を有する第1の信号を送り、第2部分の第2のサウンド発生手段に左右のサウンド信号の異なる組成である第2の信号を送る手段を有する。
本発者は、第1部分の外側容器を共振対象として使用するか、または引き延ばし要素(elongated element)(すなわち、第1部分自体よりも大きな寸法を有する対象)を使用することにより、同様の利点が得られることに気がついた。
【0023】
本発明の上記その他の目的は、以下に説明する実施形態を参照して説明し、明らかとなるであろう。
【0024】
図面はスケール通りには描かれていない。一般的に、図面中の同一の構成要素は同じ参照数字で示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明によるコンパクトステレオ装置を示す概略図である。
【0026】
ステレオ装置は、左(L)信号と右(R)信号を有する入来ステレオ信号S用の入力と、それぞれ第1のサウンド発生手段(2)と第2のサウンド発生手段(4)を有する相互接続された第1部分(1)と第2部分(3)とを有する。第1部分1は、面状に置かれたとき、その面に第1のサウンド発生手段で発生した音波を結合するように形成されている。基本的に、この例では、ハウジングと、そのハウジングを介して例えばテーブル上面と、またはテーブル上面に直接的に、効果的に結合されている。通常、サウンド発生手段はラウドスピーカ内に置かれ、ハウジングや外界とはできるだけデカップリングされている。第1部分では、反対の効果を求め、外側容器、引き延ばし要素、または第1部分が置かれている表面と大きなカップリングが存在する。本装置は、第2部分(2)の第2のサウンド発生手段(4)に、第1(L)のステレオ信号と第2(R)のステレオ信号の和信号を有するコンポジット信号S2(L+R)を送り、かつ、第1部分(1)の第1のサウンド発生手段(2)に入来する第1(L)のステレオ信号と第2(R)のステレオ信号の差信号を有する別の異なるコンポジット信号S1(L−R)を送る手段を有する。コンポジット信号は好ましくは直交信号、すなわち、第1の信号がS1=aL+bRであり、第2の信号がS2=cL+dRとすると、ac+bd≒0であることが好ましい。和信号と差信号の使用は簡単な実施形態である。本装置は、主信号を生成(establish)する手段を有し、それを第2部分(「点音源」)に送り、残余信号(主信号と直交する信号)を第1の手段(「空間音源」)に送ってもよい。簡単な設計では、コンポジット信号S1、S2は、周波数範囲を問わず同じでよい。より複雑な実施形態において、値a、b、c、dは周波数範囲によって変えてもよい。一実施形態において、例えば、第1部分と第2部分は、例えば、300または500Hzまでのカットオフ周波数までの低周波数では同じ信号を受け取り、そのカットオフ周波数より高い周波数では直交信号を受け取る。
【0027】
第1部分(1)の第1のサウンド発生手段(2)は、好ましい実施形態では、ピエゾ素子である。ピエゾ素子は、本装置が面上に置かれている場合、この面上に来るように位置決めされる。こうすると、振動が効果的にその面に伝わる。ピエゾ素子は第1部分として好ましい素子である。その理由は、ピエゾ素子が面に音波を伝えるのに好適な形と機能を有しているからである。第2部分(2)のサウンド発生手段(4)はスクイータ(squeeter)であってもよい。手段5は、第1部分及び第2部分に取り付けられ一体となってもよい。そのような実施形態においては、その一体のユニットが信号Sを受信し、そのユニット内で差信号と和信号が作られる。別の実施形態において、手段5は第1部分及び第2部分とは切り離されていてもよい。例えば、中央処理ユニット(CDプレーヤ等)と幾つかのサウンドユニットがあり、手段5は信号を生成するため中央処理ユニットに備えられ、その信号はサウンドユニットに無線で送られる。
【0028】
図2は、第1の態様による本発明の基本的コンセプトを示す図である。本発明は、非常に小さな主要音源(第1のサウンド発生手段2)により、例えば、テーブルの天板6などの大きな固い対象を振動させ、もし十分な音響結合が確保されれば、その主要音源から発するサウンドより大きなサウンドを生じるようにすることができるとの認識に基づく。励起する対象の特性により、より大きな対象のサウンドの強さは主要音源(第1のサウンド発生手段)だけのサウンドの強さよりも大きく豊かになる。おそらく、主要音源と比較して表面積が非常に大きいからであろう。このように、主要音源自体の励起振幅(数ミクロンから数十ミクロン)よりもテーブルの励起振幅の方が非常に小さい(数ナノメートル)であっても、低周波数のサウンドでも発生することができる。これを実現するためには、サウンド発生手段と大きな対象との間に十分に大きい正の音響的結合がなければならない。このアプリケーションでは、この現象も共振及び/または共励起という用語により示される。図2は、第2のサウンド発生手段がほぼ単一の点から発するサウンドを生じ、垂直の矢印で示したように、テーブル上面の共振により、要素6から出る矢印により示した、拡張サウンド音源ができることを示す概略図である。
【0029】
第2のサウンド発生手段(4)に和信号(L+R)を送ることにより、または他の好ましい実施形態では主信号を送ることにより、ソロアーティストが第2部分の位置(すなわち、シンガーまたはソロアーティストの定位音源)にいるように聞こえる。この定位音源で発生したサウンドは、音源の回りでほぼ同じく聞こえる。音楽にステレオの印象を与えるサウンドは、一般的に、左信号または右信号のいずれかにある。または一方のチャンネルに他方のチャンネル、または残余信号、または反対位相信号、または非相関信号よりも多くある。第1のサウンド発生手段(2)に差信号(L−R)または残余信号を送るだけでは、十分なステレオ感をあたえることは必ずしもできない。その理由は、第1部分(L+R音源)と第2部分(L−R音源)の両方が単一の点でサウンドを発生するからである。コンパクトな装置の場合、これらの点は互いに近いことが普通である。本発明による装置では、音波は、表面上に位置づけられた時、第1部分が置かれている表面に有効に結合される。第1部分が置かれているものは第1部分により発生したサウンドとともに振動する。その結果として、テーブルその他のもの自体が、空間的に拡張された音源を形成し、図2に示したように、差信号(L−R)を再生する。一般的に、リスナーがテーブルその他のものの回りのどこにすわっていても、両方のサウンド源からのサウンドは同じである。和信号の定位音源(第2部分)と差信号の空間的音源(振動表面と組み合わされた第1部分)がステレオサウンド感を生じる。このステレオサウンド感は、共振対象の回りでもほぼ同じである。電子回路は非常に簡単であり、同様に装置も簡単であり、非常にコンパクトにすることができる。リスナーが特定の場所にいなくてもステレオサウンド感を達成することができる。「和」信号や「差」信号と言った場合、送られる信号がおもに和信号及び/または差信号を含んでいる意味であることに留意すべきである。
【0030】
図3AとBは、本発明による装置のさらに別の実施形態を示す概略図である。本装置は、その第1部分を表面に結合する結合手段7、8を有する。カップラーは、例えば吸着装置7である。吸着力により装置と表面の間の結合が強くなる。結合手段は磁石8であってもよい。このような磁石を設けることにより、スチール表面上における結合が強くなる。結合手段は、例えば磁石を有する吸着装置を使用した場合、両方の機能を組み合わせるものであってもよい。
【0031】
図4はさらに別の実施形態を示す図である。この実施形態では、第1部分と第2部分は、第1部分が第2部分に対して動かして方向を変えることができるように相互接続されている。第2のサウンド音源の方向性を分けることができる。
【0032】
図5は、本発明の他の態様を示す図であり、装置自体が共振要素51を有する。前の図に示した実施形態では、第1と第2のサウンド発生手段のユニットは、ステレオサウンドを発生するテーブル上に置いた。図5に示す実施形態では、装置自体が振動手段を有する。このような手段の例としては、第1部分と第2部分が組み込まれたテーブル51がある。これは第1部分と第2部分とを有するユニットと、拡張要素とである。拡張要素とユニットは係止手段(fastening means)を有し機械的に係止(fasten)される。好ましい一実施形態において、係止手段は着脱可能であり、ユニットを拡張要素と切り離すこともできる。こうすることにより、ユニットを取り外してテーブル等の他の要素に設置することもできる。図5に示した例と同様の装置のさらに別の例は、拡張要素が天井の一部(またはそれと平行)であるオーバヘッドセットである。サウンドは頭上から来る。共振要素が組み込まれた(第1部分の外側容器であっても第1部分が結合した引き延ばし要素であっても)装置の利点は、カップリングが確かだということである。
【0033】
図6は、サウンドの増強の測定方法を示す概略図である。装置1は適当な方向でテーブル51に配置されており、装置1が結合手段7、8を有する場合、テーブル上の結合手段で係止されており、装置が吸着カップを有する場合は、吸着作用で係止されている。
【0034】
周波数1kHz及び2kHzで1m離れてサウンドレベルを測定する。その間、第1部分にはダイナミックレンジの中央範囲の信号を与える。装置をテーブルから取り外し、毛織布上に置くかまたは空中につるす。サウンドレベルを再度測定するが、もちろん同じ信号を用い、サウンド記録手段及び装置の距離と方向を同じにして測定する。その周波数のサウンドレベルの増強が6dBより大きい場合、その装置は請求項の範囲に入る。そうでない場合、請求項の範囲には入らない。増強は好ましくは少なくとも15dBであり、より好ましくは少なくとも20dBである。テーブルは、厚さが18mmの90*180cmの大きさの毛織りのテーブル表面を有する。これはオフィスにある標準的なテーブル上面とほぼ同じである。
【0035】
標準的なテストでは、90*180cmの大きさで18mmの厚さの合板テーブル上面を有するテーブルを使用する。しかし、これはベンチマークの確立だけを目的としたものである。実験によると、この場合、例えば、厚さが14mmでサイズが160*80cmの合板のテーブル上面を有するテーブルでも、サイズが100*200mmのスチール製のテーブル上面を有するテーブルでも、ほぼ同様の結果が得られた。
【0036】
ここに挙げた寸法を有する合板テーブルを標準として参照フレームとする。その他のタイプのテーブル上面でも値はおよそ同じようなものである。
【0037】
留意すべきことは、本発明のコンセプトにおいては、第1部分がテーブルその他の共振対象上に置かれている場合、テーブルが振動するように装置が作られていることである。このような効果は、ある程度常に起こっている。しかし、ラウドスピーカではこのような効果をできるだけ小さくするように作られている。換言すると、共振はできるだけ防止され、最小化される。従来の設計では、ラウドスピーカはテーブルとコンタクトしないか、ほぼしない。ラウドスピーカは、非常によい振動ダンパーやそのような機能を有するものを有する容器の中に通常はぶら下がっている。対照的に、共振の効果は本発明の不可欠の一部である。上記の測定は、当業者であればだれでも容易に実行可能であり、本発明による装置を範囲外の装置とを容易に区別する。引き延ばし要素(図5に示した)が組み込まれた装置の場合、振動要素のサウンドへの貢献は、容易に測定することができる:すなわち、信号を第1部分に送った時に装置により発生されるサウンドを測定し、その要素を(振動できないように、例えば重いおもりをのせて)締め付けている間に再度測定し、サウンド強度の測定値を割る。その結果が6dBより大きい場合、好ましくは15dBより大きい場合、その装置は本発明による装置である。第1部分の外側容器が共振要素を形成する場合、同様のテストを実行する。信号を第1部分に通常の動作及び中央範囲で送り、サウンド強度を測定する。そして、外側容器を振動できないように締め付け、サウンド強度を再度測定する。測定結果のサウンド強度を割り算する。
【0038】
図7は、本発明の好ましい実施形態を示す図である。一部の周波数はその他の周波数より大きく増幅されるので、共振表面はサウンドの周波数分布を変化させる。図7は、発生されたサウンドを記録するサウンド記録手段71を有する装置を示す図である。コンパレータCにおいて、このサウンドは元のサウンド(時間差を考慮して少し遅らせる)と比較される測定した強度差と、例えば強度の周波数分布は、記録サウンドが測定精度内で、元の信号と一致するように、サウンド発生手段への信号を変化させるためにアンプAにフィードバックされる。留意すべきことは、その場合、第1のサウンド発生手段に入力される信号はL−Rと等価であるが、厳密に等しくはなく、第1の(第2の)サウンド発生手段に送られる信号の和または差が、信号の一般的なコンテントを示す。しかし、和信号または差信号であるからといって、そのように限定的に解釈するべきではないことである。
【0039】
図示した実施形態では、第1部分と第2部分は相互接続されている。好ましい一実施形態において、これは第1及び第2部分が物理的に相互接続され、2つの部分が一体となっていることを意味する。しかし、これは、そのユニットに第1部分と第2部分を切断する手段を有さないということではない。実施形態において、これは有利である。例えば、第2部分をテーブルの上方に備え、第1手段をテーブル上に備えることが可能となる。しかし、2つの部分は、相互接続して一体になり、信号が伝わるという意味において、1つのユニットを形成する。
【0040】
図8は、本発明の他の態様を示す実施形態である。第1部分は、その外側容器(ハウジング)81に結合した第1のサウンド発生手段を有する。外側容器は空間的音源として機能する。
【0041】
明らかに、本発明のフレームワーク内で、多くの変形が可能である。当業者には言うまでもなく、本発明は、上で図示して説明したものに限定されない。本発明は、全ての新規な特徴のそれぞれ、及びその組み合わせにある。請求項中の参照数字は保護範囲を限定するものではない。「有する」という動詞を用いたが、請求項に記載された要素以外の要素の存在を排除するものではない。要素に付された「1つの」、「一」という用語を使用したが、その要素が複数あることを排除するものではない。
【0042】
請求項について留意すべきことは、請求項で規定されたいろいろな特徴は、組み合わせることもできるということである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による装置の概略図である。
【図2】本発明の基本的コンセプトを示す図である。
【図3】図3AとBは、本発明による装置のさらに別の実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明による装置のさらに別の実施形態を示す概略図である。
【図5】サウンド共振要素を含む、本発明による装置を示す図である。
【図6】音響カップリングによるサウンドエンハンスメントを測る実験的設定を示す図である。
【図7】本発明による装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2のサウンド生成手段と、左右のサウンド信号を有するステレオ信号用入力とを有する装置であって、
それぞれ第1と第2のサウンド発生手段を有する相互接続された第1部分と第2部分を有し、
第1部分は、面状に置かれたとき、その面に第1のサウンド発生手段で発生した音波を結合するように形成され、
前記装置は、第1部分の第1のサウンド発生手段に左右のサウンド信号を有する第1の信号を送り、第2部分の第2のサウンド発生手段に左右のサウンド信号の異なる組成である第2の信号を送る手段を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
第1と第2のサウンド生成手段と、左右のサウンド信号を有するステレオ信号用入力とを有する装置であって、
それぞれ第1と第2のサウンド発生手段を有する相互接続された第1部分と第2部分を有し、
第1部分は、その外側容器に第1のサウンド発生手段で発生した音波を結合するように構成され、
前記装置は、第1部分の第1のサウンド発生手段に左右のサウンド信号を有する第1の信号を送り、第2部分の第2のサウンド発生手段に左右のサウンド信号の異なる組成である第2の信号を送る手段を有することを特徴とする装置。
【請求項3】
第1と第2のサウンド生成手段と、左右のサウンド信号を有するステレオ信号用入力とを有する装置であって、
それぞれ第1と第2のサウンド発生手段を有する相互接続された第1部分と第2部分を有し、
第1部分は、それに結合した引き延ばし要素に第1のサウンド発生手段で発生した音波を結合するように形成され、
前記装置は、第1部分の第1のサウンド発生手段に左右のサウンド信号を有する第1の信号を送り、第2部分の第2のサウンド発生手段に左右のサウンド信号の異なる組成である第2の信号を送る手段を有することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一項に記載の装置であって、送る手段は第1の信号と第2の信号が実質的に直交信号であるように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
送る手段は、第1の信号が左ステレオ信号と右ステレオ信号の差信号を有し、第2の信号が左ステレオ信号と右ステレオ信号の和信号を有するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
第1部分は結合手段を有することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
結合手段は吸引要素を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項6に記載の装置であって、
結合手段は磁石を有することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項3に記載の装置であって、
第1部分と引き延ばし要素は可逆結合手段により結合されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1ないし3いずれか一項に記載の装置であって、
第1のサウンド発生手段はピエゾ素子を有することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−520122(P2007−520122A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548481(P2006−548481)
【出願日】平成17年1月3日(2005.1.3)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050006
【国際公開番号】WO2005/072011
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)