説明

床パン補強構造

【課題】補強フレームによる床パンの高さ位置の上昇を抑えると共に、成形不良の発生を抑えて、床パンを補強フレームで補強した床パン補強構造を提供する。
【解決手段】床パン補強構造は、リブ2を裏面10aに設けた床パン1と、床パン1を裏面10a側から補強する補強フレーム7と、補強フレーム7を床パン1に取り付ける取付具8とを備えると共に、床パン1に取付具8固定用の凸部を設け、リブ2が、裏面10aから下方に突出し平行に複数並ぶ辺部20を備えると共に、上方に凹んだ切溝4を辺部20に交差して直線状に設け、補強フレーム7が、上方に立ち上がるリブ片71を有した板状体70で構成され、リブ片71を切溝4内に配置して、板状体70を取付具8で凸部に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床パンを裏面側から補強フレームで補強する床パン補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室の床面を床パンで形成したユニットバスルームがあり、この床パンは、浴室利用者の荷重等に耐えられるよう所定の強度が求められる。そこで、床パンの裏面に下方に突出して格子状にリブを設けると共に、リブの下端に補強フレームを取り付けた床パン補強構造がある。この床パン補強構造において、補強フレームは、所謂チャンネル鋼材等の、板状体の両端辺から上方にリブ片が立ち上がる断面コ字状(U字状)で構成され、リブ片の突出先端には、突出方向に直交して面を有するフランジ部が設けてある。そして、このフランジ部をリブに当接すると共に、リブ上に設けたボスにフランジ部を介在させてボルトを取り付けることで、床パンの裏面に補強フレームを固定して、床パンを補強している。また、特許文献1等に示すように、補強フレームを角パイプで形成し、角パイプにボルト貫通用のボルト通し孔を設け、角パイプを貫通させてボルトをボス部に固定する床パンと補強フレームの固定構造もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−173061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴室は脱衣室に隣接し且つ出入り口を介して連通して設けられるため、近年では、脱衣室の床面と浴室の床面との高さの差が小さい(段差の小さい)、所謂バリアフリー構造の要望が増えている。しかしながら、従来の床パン補強構造では、フランジ部や角パイプをリブの下端に当接して補強フレームを取り付けるため、床パンの高さ位置が補強フレームの分高くなり易く、脱衣室との間の段差を小さく抑え難いという問題がある。
【0005】
そこで、この事情を鑑み、補強フレームによる床パンの高さ位置の上昇を抑えて、床パンを補強フレームで補強した床パン補強構造を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の床パン補強構造は、リブを裏面に設けた床パンと、前記床パンを前記裏面側から補強する補強フレームと、前記補強フレームを前記床パンに取り付ける取付具とを備えると共に、前記床パンに前記取付具固定用の凸部を設け、前記リブが、下方に突出し平行に複数並ぶ辺部を備えると共に、上方に凹んだ切溝を前記辺部に交差して直線状に設け、前記補強フレームが、上方に立ち上がるリブ片を有した板状体で構成され、前記リブ片を前記切溝内に配置して、前記板状体を前記取付具で前記凸部に取り付けたことを特徴とする。
【0007】
この床パン補強構造として、前記切溝に沿った方向を縦方向とし、前記凸部を前記裏面上において前記縦方向にずれた位置に複数設けたことが好ましい。
【0008】
この床パン補強構造として、前記リブが、前記切溝に平行の縦辺部と前記縦辺部に直交した横辺部とを備えた格子形状であり、前記切溝に沿った方向を縦方向とし、前記凸部を、前記横辺部と前記縦辺部の交点位置、及び前記縦辺部と前記切溝の間に複数設けると共に、前記縦辺部と前記切溝の間に設けた前記凸部が、前記交点位置に設けた前記凸部から前記縦方向にずれて位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
このような構成としたことで、補強フレームによる床パンの高さ位置の上昇を抑えて、床パンを補強フレームで補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の一例の床パン補強構造の裏面側の斜視図である。
【図2】同上の床パンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて例示して説明する。
【0012】
実施形態の一例の床パン補強構造は、図1に示すように、裏面10aにリブ2を設けた床パン1と、床パン1を裏面10a側から補強する補強フレーム7と、補強フレーム7を床パン1に取り付ける取付具8とで主体が構成される。
【0013】
床パン1は、図2に示すように、上面が浴室の床面となる板状の床パン本体10と、床パン本体10の下面(裏面10a)から下方に突出して設けられたリブ2と、取付具8を取り付ける凸部5(詳細は後述する)とで主体が構成される。そして、床パン1は樹脂成型によって形成されており、床パン本体10とリブ2と凸部5とを一体成形してある。以下、床パン本体10の裏面10aに直交して視た平面視を基準に、裏面10a上(平面上)の一方向を縦方向D1とし、裏面10a上において縦方向D1に直交する方向を横方向D2とする。
【0014】
リブ2は裏面10a上に設けてあり、裏面10aから略同じ高さで下方に突出した辺部20を格子形状に並べた構成となっている。そして、辺部20は、横方向D2に沿った直線形状で縦方向D1に複数並ぶ横辺部21と、縦方向D1に沿った直線形状で横方向D2に複数並ぶ縦辺部22とに区別される。
【0015】
更に、縦方向D1に並ぶ複数の横辺部21は、縦辺部22に平行した仮想直線上の位置に切欠き40を有し、該切欠き40は仮想直線に沿った方向(縦方向D1)及び下方に開口している。そして、この縦方向D1に並ぶ切欠き40の列(切溝4)は、略平行に二列設けてあり、この二つの切溝4の横方向D2における間(切欠き40の列の間)には一つの縦辺部22が位置する。以下、切溝4の間に位置する上記縦辺部22を、縦辺部23として区別する。
【0016】
また、一方の切溝4(第1切溝41)から縦辺部23までの横方向D2における寸法が、他方の切溝4(第2切溝42)から縦辺部23までの横方向D2における寸法に比べて、大きい構成となっている。そして、床パン1は、第1切溝41と縦辺部23の間の領域、及び縦辺部23に、取付具8を捻じ込み固定する取付具固定用の凸部5が設けてある。
【0017】
凸部5は裏面10aから下方に突出すると共に、下方に向かう程小径となる円錐形状で、下端が略平らな円形状の当接面となっており、この当接面の略中心に取付具8としてφ4程度のねじ80が捻じ込まれる。そして、凸部5は突出先端(当接面)がリブ2の下端より下方に突出して位置する。更に、凸部5は、縦辺部23に設けた第1凸部51と、第1切溝41と縦辺部23の間の領域に設けた第2凸部52とに区別される。
【0018】
第1凸部51は縦辺部23の横辺部21との交点位置に設けてあり、縦方向D1に所定の間隔を空けて複数設けてある。そのため、第1凸部51は縦方向D1に並列に並んで設けてある。
【0019】
第2凸部52は、裏面10a上において、第1切溝41と縦辺部23の間の領域で、第1凸部51から横方向D2に離れると共に第1凸部51から縦方向D1にずれた位置(斜交い位置)に設けてある。そして、第2凸部52には、縦方向D1に直線状の縦リブ62と、縦辺部23に向けて横方向D2に直線状の横リブ61とが設けてある。
【0020】
縦リブ62は縦辺部22と略平行に並ぶと共に、第2凸部52から離れる程上方(床パン本体10側)に傾斜して設けてある。そして、縦リブ62は小リブ63によって横辺部21を介して他の第2凸部52の縦リブ62と縦方向D1に繋がっており、小リブ63は突出先端である下端が切欠き40の上端(底)より上方側に位置しており、縦リブ62に比べて床パン本体10からの突出量が小さい。
【0021】
横リブ61は横辺部21と平行に並ぶと共に、略同形となっており、下端が横辺部21と略同じ高さに位置し、縦辺部23と第2凸部52とを横方向D2に繋いでいる。
【0022】
補強フレーム7は、所謂チャンネル型の、縦方向D1に視て断面コ字状の部材となっており、床パンに比べて強度(剛性)の高い金属製が好ましい。そして、補強フレーム7は、図1に示すように、縦方向D1に長い長方形状の板状体70と、板状体70の両長辺から各々上方に立ち上がるリブ片71とで構成されており、板状体70とリブ片71とは一体に形成されている。
【0023】
板状体70は、短辺側の寸法が第1切溝41から縦辺部23を介した第2切溝42までの横方向D2における寸法と略同じ値となっており、長辺側の寸法が縦辺部23の縦方向D1の寸法と略同じ値となっている。そして、板状部は上面を凸部5の下端に当接して配置されると共に、板状体70の凸部5と上下に並ぶ部位には、取付具8を挿通させる取付孔が板面に貫通して設けてある。そのため、取付具8の軸部をこの取付孔を介して凸部5に捻じ込み取り付け、取付具8の頭部(ねじ頭)を板状体に当接させることで、補強フレーム7は取付具8により床パン1に固定される。
【0024】
また、リブ片71は板状体70の長辺の略全長に亘って設けてあり、一方のリブ片71が第1切溝41内に配置され、他方のリブ片71が第2切溝42内に配置される。そして、リブ片71の板状体70からの突出量(高さ寸法)は、切欠き40の下方の開口端から上端(底)までの深さ(高さ寸法)と、凸部5のリブ2からの突出量(高さ寸法)とを合わせた寸法と略同じ値となっている。
【0025】
そのため、補強フレーム7は、リブ片71の上端を切溝4の底に当接すると共に、板状体70の板面を凸部5に当接した状態で、床パン1の裏面10a側に固定され、床パン1を裏面10a側から補強する。そして、切溝4にリブ片71を配置したことで、補強フレーム7のリブ2からの突出量は、凸部5のリブ2からの突出量と板状体70の板厚(上下における厚さ寸法)を合わせた寸法分と略同じ値となる。
【0026】
更に、第1凸部51を縦辺部23上に設けたことで、成型時に、リブ2に比べて肉厚の部位(所謂、肉厚部)となる第1凸部51に樹脂を充填させ易くなる。そして、縦辺部23からずれた位置に設けた第2凸部52を横リブ61で縦辺部23に繋げると共に縦リブ62と小リブ63で縦方向D1に繋げたことで、成型時に、肉厚部となる第2凸部52に樹脂を充填させ易くなる。
【0027】
以上のように、本実施形態の床パン補強構造は、補強フレーム7による床パン1の高さ位置の上昇を抑え易くなり、脱衣室の床面と浴室の床面との段差を小さく抑え易くすることができる。そして、凸部5を並列や斜交いに複数設けたことで、ボルトナットの代わりに、取付具8としてねじ80を用いても、補強フレーム7の床パン1への取付強度を確保し易くすることができる。更に、ねじ80を板状体70を介して凸部5に取り付けたため、床パン1の下方側から上方側に向けて取付具8の取付作業を行え、取付作業時にリブ2等と取付用工具との干渉による作業性の低下を抑制し易くすることができる。
【0028】
そして、ねじ80を樹脂製の凸部5に捻じ込むことで補強フレーム7を床パン1に固定可能としたことで、ボルト固定用にナット等をボス(凸部5)に埋め込む準備工程を削減することができ、床パン1の製造性や施工性を向上させ易くなる。更に、第1凸部51を縦辺部22と横辺部21の交点位置に設け、第2凸部52を横リブ61で縦辺部22に繋ぐと共に縦リブ62と小リブ63とで横辺部21を介して縦方向D1に繋いだことで、凸部5の成形不良を生じ難くすることができる。
【0029】
なお、補強フレーム7は、リブ片71を二つ有したものに限らず、断面L字状(所謂アングル型)等のリブ片71が一つのものであってもよい。また、リブ片71を板状体70の端部に設けたものに限らず、板状体70を複数の縦辺部22に当接する断面T字状やF字状等であってもよく、このものでは断面E字状等のリブ片71を三つ以上有したものであってもよい。また、床パン1成型時に切欠き40を形成するもの(切欠き40形成用の突出部を設けた金型で樹脂成形したもの)が好ましいが、樹脂成型後に切削等で切欠き40を形成したものであってもよい。また、横辺部21に沿った切溝4を縦辺部22に設け、この切溝4にリブ片71を配置すると共に横辺部21に板状体70を当接して、補強フレーム7を床パン1に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 床パン
10a 裏面
2 リブ
20 辺部
21 横辺部
22 縦辺部
4 切溝
40 切欠き
5 凸部
51 第1凸部
52 第2凸部
7 補強フレーム
70 板状体
71 リブ片
8 取付具
80 ねじ
D1 縦方向
D2 横方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リブを裏面に設けた床パンと、前記床パンを前記裏面側から補強する補強フレームと、前記補強フレームを前記床パンに取り付ける取付具とを備えると共に、前記床パンに前記取付具固定用の凸部を設け、
前記リブが、下方に突出し平行に複数並ぶ辺部を備えると共に、上方に凹んだ切溝を前記辺部に交差して直線状に設け、
前記補強フレームが、上方に立ち上がるリブ片を有した板状体で構成され、
前記リブ片を前記切溝内に配置して、前記板状体を前記取付具で前記凸部に取り付けた
ことを特徴とする床パン補強構造。
【請求項2】
前記切溝に沿った方向を縦方向とし、
前記凸部を前記裏面上において前記縦方向にずれた位置に複数設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の床パン補強構造。
【請求項3】
前記リブが、前記切溝に平行の縦辺部と前記縦辺部に直交した横辺部とを備えた格子形状であり、前記切溝に沿った方向を縦方向とし、
前記凸部を、前記横辺部と前記縦辺部の交点位置、及び前記縦辺部と前記切溝の間に複数設けると共に、
前記縦辺部と前記切溝の間に設けた前記凸部が、前記交点位置に設けた前記凸部から前記縦方向にずれて位置する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床パン補強構造。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−67944(P2013−67944A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205008(P2011−205008)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】