説明

床及び/又は壁用の被覆物

【課題】少ないパイル材料で済み、低コストで製造することができ、従来とは異なる美観特性を有し得る布を提供する。
【解決手段】床、壁又は天井面用の被覆物10であって、被覆物の一側に露出した不連続な部分のある一次裏地16と、該裏地の残りの部分にわたって房状にした複数の糸18であって、ループ又はカットループを含んで被覆物の加工裏面にそって第1の不連続摩耗面部分から一次裏地の反対側にそって延びている房状の糸の複数のバックステッチと、該ステッチを一次裏地に固定している組成物とを含む被覆物において、一次裏地が房状の糸を受け入れる複数の規則正しく配置されたステッチ開口部を備え各開口部が単位長さで配置されバックステッチが、該被覆物の加工裏面にそって多重単位長さの距離で配置された開口部間に跨って形成され開口部には、加工面に房状の糸かステッチ開口部の下に形成されたバックステッチのいずれかを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広又は標準寸法のいずれかの、例えば、布又はカーペットのような、床、壁、天井等用の被覆物(カバー)に関し、特に、布の加工面にわたって露出された、一次裏地(primary backing)と房状の糸との不連続な表面部分を、備えた被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
房状の布(tufted fabrics)は、一次裏地又は基材を貫通する複数の糸(yarns)でステッチしている布であって、布表面を含んでなるループを形成し、又はそのループを切断してカットループパイル布表面を形成し得る。房状の布を形成するための機械は、通常、個々に糸を通した複数の針を有する1つ又は複数の針棒を有しており、動く基材に対してそれらの針が往復運動して、その基材に糸の付いた針を通し、ループを形成させる。糸の供給ロールから針棒に糸を供給し、そのロールは、クラッチ又はサーボモータにより通常に制御されて、異なる長さの糸を針に供給することを可能にして、布の加工面における模様付け効果が達成される。すなわち、布の加工面(technical face)における模様として異なる高さの、ループ又はカットいずれかのタフトをもたらすために、クラッチ又はサーボモータを制御して、多くの又は少しの糸を針棒に供給する。房状の模様効果を有する織面の一例は、特許文献1及び特許文献2に開示されている。これらの特許では、針棒の針への糸の供給を制御して、ステッチに隣接し縦糸方向及び横糸方向の選択された高いタフト又は低いタフトを供給する。これが、全面房状の布の色彩及び模様付けにおける種々の美観効果をもたらすうえで顕著に満足されるものであることが判っている。
【特許文献1】米国特許第5383415号明細書
【特許文献2】米国特許第5549064号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
房状のパイル布のための一次裏地が、カーペットに何らかの美観を付与するよりも、むしろパイルのための支持体として役立つことが理解されるであろう。すなわち、従来は、一次裏地が房状の布パイルによって完全に覆い隠され、カーペットの美観設計において何ら役割を果していなかった。また、房状の製品用機械及びそれから得られる房状の製品では、高いステッチ又は低いステッチをもたらすかどうかに拘わらず、各ステッチ位置において房状のステッチが典型的に必要になることも理解されるであろう。このことにより、布の加工面用に房状のパイル面を完成させる実質的な量の糸材料が必要とされる。したがって、より少ない表面パイル材料で済み、その結果布の耐用寿命の終わりにおける処分の心配が軽減されて、低減されたコストで製造することができ、且つ、従来の房状のパイル布と比較して非常に異なる美観特性を有し得る布への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の好ましい実施形態によれば、布製品であって、その加工面に露出しておりかつ加工面を構成する一次裏地と房状の糸との不連続な表面部分を有する布製品、並びに、その布を製造する方法が提供される。この一次裏地又は基材と、房状の糸とが、異なる不連続な美観特性、例えば色彩、きめ(texture)等、を有することが理解されるであろう。本発明の好ましい形態では、房状の糸と露出した一次裏地とを含む加工面の不連続な部分は、異なる表面効果をもたらすためランダムな又は模様付きの形で提供され得る。例えば、ループ糸もしくはカットパイル糸のいずれかである房状の糸は、単一のタフトとして、或いは互いに隣接する多重タフトの群として、それらの間に露出した一次裏地の部分と一緒に、布の加工面にわたるランダムな位置で提供され得る。代替として、一次裏地及び/又は房状の部分は、例えば変更する列、方形、ドット、又は多くの他の異なる幾何学的模様構成として模様付けされ得る。その成果は、互いにちりばめられた房状の糸と露出した一次裏地との部分もしくは領域で構成される加工面を有する美観的に満足される布である。このことは、種々の美観特性の提供、糸量の低減、より低いコスト、並びに布の寿命の終わりに関する対処の懸念の軽減、を含む多くの利点を有する。
【0005】
この布を製造するため、1つ又は複数の針棒から構成され、各針棒が個別に糸を通した複数の針を有する房状化用機械を操作して、基材に針を通して房状ループを形成させ、そのループは、加工面上でループの形態のままとすることができ、又はその布の房状の領域において切断してカットループパイル表面を形成することができる。また、同様な機械により、PCU(Precision Cut/Uncut 又は Velva Loop)として知られるカット及びループパイルの組合せを製造することもできる。各針への糸の供給は、実質的に微小なインクリメント的に調整可能な供給速度で糸を進めることができるサーボモータにより制御している。従来の房状化(tufting)では、例えば、所定の一定パイル高さを有するパイル表面を作り出すため、糸の供給速度は一定である。高い房状のパイル模様及び低い房状のパイル模様が望ましい従来の房状化では、より低いパイルが望ましい領域についてはサーボモータの操作により糸の供給を減少させる。例えば、上記特許文献2を参照されたい。
【0006】
本発明では、サーボモータを選択的に制御して、布における各ステッチ位置にタフトを形成するのに十分な糸を針に供給し、また選択したステッチ位置、例えば加工面にわたって一次裏地を露出させることが所望される布の領域、からタフトを取り外すのに十分な糸を針に供給する。詳細には、基材に針を通過させ、かつルーパが糸を掴んでループを形成するステップによる従来の房状化操作を実施し、また所望される場合、ナイフ刃で糸ループを切断して、カットループパイルを形成する。房状化操作は、加工面にわたって一次裏地を露出させることが所望される領域、すなわちステッチ位置、を含む。しかし、後者の領域については、サーボモータを制御して、バックステッチを形成するのに足りる糸の供給しかもたらさず、かつ一次裏地から1つ又は複数の前もって房状にした糸ループを取り外し、又は引き出す。すなわち、布の加工面上に露出した一次裏地と房状の糸との不連続な表面部分を形成するため、選択した針によって一次裏地を貫通して前もって一次裏地中に房状にした糸ループを回収するように、房状にする間、針棒の選択した針への糸の供給を制御する。針の選択によって、またしたがって針に糸を供給するサーボモータのプログラムした選択、例えばプログラムしたコンピュータ生成による選択によって、房状のカットもしくはループパイル糸と露出した一次裏地糸とにより構成される、加工面のそれぞれの不連続部分が形成されると共に、布の加工面におけるランダムもしくは模様付け効果が達成される。サーボモータを使用するもの以外の機械によって、同様な効果をもたらすことができる。例えば、クラッチ、完全繰返し模様付け機構(FRS)、Yamagucci模様付け装置、溝(slot)模様等を使用して、同様な模様付きのカーペットを達成することができる。
【0007】
本明細書の布は、多くの異なる環境で利用され得る。主な用途には、カーペット、並びに、壁及び天井被覆物である。しかし、この布が使用できる多くの他の環境、例えば、自動車、フロアマット、及び座席室内装飾材料、或いは、航海及び航空環境である。
【0008】
布の加工面上に露出しかつその加工面を構成する一次裏地と房状の糸との不連続な表面部分を有する本願明細書の布が、見る人の視点に応じて、その布の美観特性を変化させるように見える模様が提供され得ることも理解されるであろう。上記に示したように、加工面の露出した一次裏地部分と房状の糸部分とは、色彩、テクスチャ、又は幾何学的形状を含む、異なる美観特性を有し得る。例えば、人が真直ぐに、すなわち一般に布に直角の方向で見ているとき、一次裏地はその布の主要な色彩又はテクスチャを構成し得る。したがって、露出した一次裏地がカーペットの支配的部分を形成し、また房状の糸が空間模様、例えばカーペットにわたる横筋、を提供するカーペットを敷いている環境では、そのカーペット上に立っている人には、露出した一次裏地に支配された色彩及びテクスチャが見えるようになり、露出した房状の糸は非常に僅かしか見えないであろう。しかし、異なる視点から、例えば距離をおいてかつ狭い鋭角からカーペット表面を見る場合、露出した房状の糸が容易に見え、また一次裏地は、完全にではないとしても、少なくともある程度まで不明瞭になるであろう。その結果、見る人の視点が変るにつれて、その布の美観特性、例えば色彩又はテクスチャが変化し得る。
【0009】
本発明による好ましい実施形態では、房状の糸及び一次裏地の露出した表面部分を備えた加工面を有する房状のパイル布を製造する方法であって、(a)横糸方向に互いに間隔をおいて配置された複数の針を装着している少なくとも1つの針棒を提供するステップと、(b)前記針棒に装着される針に糸を供給するステップと、(c)縦糸方向に、前記針棒及び前記一次裏地を相対的に移動させるステップと、(d)前記針棒及び前記一次裏地の相対的移動の際に、前記一次裏地に糸を房状にして前記加工面に糸ループを形成するステップと、(e)選択された針により前記一次裏地に前もって房状にされた糸ループを前記一次裏地に貫通させて引抜く房状化の間に、前記選択された針への糸の供給を制御して、前記布の前記加工面に露出した前記一次裏地及び前記房状の糸の不連続な表面部分を形成するステップと、を含んでなることを特徴とする方法を提供している。
【0010】
本発明によるさらなる好ましい実施形態では、一次裏地を貫通して糸を房状にするステップと、選択された房状の糸の後部全体を前記一次裏地に貫通させて引き抜くステップと、を含んでなり、不連続で露出しかつ美観的に独特な前記一次裏地及び前記房状の糸の表面部分を前記布の前記加工面に形成することを特徴とする房状のパイル布を製造する方法を提供している。
【0011】
本発明によるさらなる好ましい実施形態では、床、壁又は天井面用の被覆物であって、当該被覆物の摩耗面(wear surface)の第1の不連続摩耗面部分を形成するために、当該被覆物の一側に露出した不連続な部分を備えた一次裏地と、前記摩耗面の第2の不連続摩耗面部分を形成する前記一次裏地の残りの部分にわたって前記一次裏地内に房状にした複数の糸と、前記摩耗面の前記第1の不連続摩耗面部分から前記一次裏地の反対側にわたって延在している、前記房状の糸の複数のバックステッチと、前記バックステッチを前記一次裏地に固定する、前記一次裏地の裏面にわたる組成物と、を含んでなることを特徴とする被覆物を提供している。
【0012】
本発明によるさらなる好ましい実施形態では、加工面に露出した一次裏地部分及び房状の糸の不連続な表面部分を備えた布であって、当該布の選択された部分において、前もって房状にしたループを引き出すのに足りる糸を取り返すように、インクリメントにより調節されたサーボモータによって糸の供給が制御されることによって形成され、ランダムな又は模様付きの房状の部分と露出した一次裏地部分表面部分とが当該布の加工面に形成されるように、前記引き出されたループの前記一次裏地部分を前記加工面に露出したままにしておくことを特徴とする布を提供している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に図面を参照し、特に、図1に符号10で略指示される布の加工面が示されている。示された実施例では、加工面は、加工面に露出している一次裏地16の不連続な表面部分12と房状の糸18の不連続な表面部分14とを含んでなる。一次裏地16は、従来のものと同様の織材料で構成されることが好ましく、また特定の色彩又は織り方等の、一定の美観特性を備えている。例えば不織、ニードルボンド、スパンボンド、静電フロック加工等の他の種類の一次裏地が使用できる。図示するように、露出した房状の糸18が房状ループパイル表面を形成するが、カットループパイル表面が形成され得ることが予想されるであろう。説明した例では房状の糸18は模様として提供され、例えば房状ループ糸の群が、その間にある一次裏地16の露出した表面部分12と共に互いに距離をおいて設けられた複数のドットを形成する。さらに、1つ又は複数の房状ループ20が、ランダム模様として提供され得、或いは隣接する模様付き房状ループ18の間の一次裏地16にわたって模様付けされ得る。房状ループ又はカットパイル表面部分は、基材16において異なる模様で又はランダムに提供することができ、模様配列は房状ループ18の群で例示され、またランダム模様は、基材16内の房状ループ20で例示されていることが理解されるであろう。したがって、房状ループ表面又はカットパイル表面である露出された表面部分と、一次裏地である露出された表面部分との不連続な組合せによって、模様付きの布が形成され得る。代替として、露出した一次裏地表面部分と組み合せて、ランダム模様として配置した房状ループ又はカットパイルから不連続な表面部分が形成され得る。
【0014】
図2は、従来型の房状化用機械を使用する、従来の房状化方法を概略的に例示している。詳細には、図2においてロール28から矢印26の方向に基材又は一次裏地24が供給され、その長さに沿って複数の針32を取り付けている1つ又は複数の針棒30によって房状にされる。両方向矢印(double ended arrow)で示すように針棒30は往復運動し、そのため針32は、基材24を貫通する。図示されない適切な供給源からそれぞれの針32に糸34を供給しており、糸34は、針32に糸34を供給するようにローラを進めるサーボモータ38により制御される供給ローラ36によってその針に供給される。サーボモータ38は、プログラマブルコンピュータ40の制御下にある。各サーボモータはインクリメント的に調節可能であって、多くの異なる要素、例えば1インチ(2.54cm)当りのステッチ数、所望されるパイルの高さ、及び糸それ自体の弾性に応じて、関連する針への所定速度における糸の供給をもたらすことが理解されるであろう。例示した従来の方法では、針に糸34が供給され、また一次裏地24を貫通して所定の貫通深さまで針32が進められる。針が引っ込むと、針により供給された糸が一次裏地24下方のフック又はルーパ42により捕えられる。ルーパ42は糸を保持して、基材内の開口部を貫通して針が引っ込むと或いは後退して離れると、ループを形成する。針が完全に引っ込み、もはや一次裏地を貫通しなくなると直ぐに、ルーパは糸ループを解放する。もちろん一次裏地24は、例えば矢印26で示す縦糸方向に、連続的に前進しており、ルーパから房状ループが外れ易くしている。この段階で、このサイクルを繰り返して、さらなる房状ループを形成させる。
【0015】
布の加工面上に露出した一次裏地と房状の糸との不連続な表面部分を有する布を形成させるために、房状化方法を変更している。図3〜図6を参照すると、布の加工面を反転させ、すなわちこれらの図面に示すように、一次裏地16の下側としている。図3では、図1の模様付き布の水平パイルループ部分18を、個別的なランダムに適用した房状ループ20と一緒に、例示している。さらに、基材16の露出した表面部分12も、基材の加工面側を例示している。その上、下記の記述から明らかになるように、房状ループは、布の加工面上の異なる高さのものとすることができ、例えば図3に示すループ50及び52は、加工面上の異なる高さのものである。やはり図3に例示しているものは、房状ループのバックステッチ54である。もちろん、バックステッチは、一次裏地内の隣接するステッチ開口部間に延びている糸を含み、それを通ってループが形成されている。バックステッチ54は、下記の記述から明らかになるであろうように、布の縦糸方向に隣接するステッチ開口部間に延びている単位長さの糸を含に得、或いは、一次裏地16の露出した表面部分12だけを含む加工面上の表面領域の下側にある、延長されたバックステッチを形成する多重単位長さ(multiple unit length)の糸56を含み得る。
【0016】
房状ループパイル部分と共にランダムもしくは模様付きの領域内に、加工面上に露出した一次裏地部分を形成するためには、房状にする方法を従来通り進行させる。しかし、基材だけを露出させようとする場合、加工面のこれらの部分、すなわちステッチ位置において、これらのステッチ位置における基材からタフト全体を回収する、すなわち取り外すため、選択されたサーボモータによって基材16を貫通する針への糸の供給を制御する。詳細には、また図3を参照すると、図面内で基材16を左から右に連続的に移動させる。しかし、基材16は間欠的に停止され得、基材がその後に進行する前に、針が進行しかつ停止した基材を貫通して引っ込み得ることが理解されるであろう。糸62の付いた針60は、基材16に房状ループ64を前もって形成しており、単位長さのバックステッチ54を形成するのに十分な糸と共に基材16を通って下方に動いている。房状ループ64が形成されているステッチ位置で加工面上に一次裏地だけを露出させた布を形成することが望ましいと想定すると、針60への糸の供給を制御するサーボモータが、本質的に糸の供給を停止させる。図4に示すように、針60が基材16を通過するにつれて、次のステッチ位置で、かつ糸の供給が不十分であるため、前もって形成されたタフト64が、形成される次の房状ループ66を形成するための糸を提供する。糸ループ66の両方のレッグは、糸ループ64の両方のレッグの長さと等しい程度もしくはそれを超える程度まで、基材16を貫通するので、糸ループ64は基材を通って完全に回収されて戻る。これにより、2つ分の単位長さ、すなわち縦糸方向に連続したステッチ開口部間の2つの単位距離、を有するバックステッチ68(図5)が形成される。これにより、そのステッチ位置に前もって房状にされたループ64が存在しない基材の加工面が残されることにもなる。したがって、房状ループを取り外したステッチ位置における基材が、加工面上に露出した一次裏地部分の一部を構成する。
【0017】
図5及び図6に示すように形成された次のループ66を、加工面上に残し、或いは取り外すことができる。加工面上にこのループを残すことが望ましい場合、コンピュータ制御下のサーボモータを進行させて、次のその後のループが、すなわち次のステッチ位置において、以前のループ、すなわちループ66、からの糸を必要としないような、十分な糸を針60に供給する。この次のステッチ位置で、加工面にわたってさらなる一次裏地の露出した部分を提供するため、一次裏地からループ66を取り外すことが望ましい場合、サーボモータを制御して、さらなる単位長さのバックステッチを形成するのに足る糸だけしかインクリメント的に進行させない。こうして糸の供給を制限することにより、ステッチ開口部を通ってループ66は引き戻され、多重単位長さの延長されたバックステッチを形成する。
【0018】
図3〜図6に示すように、破線で示すループは、従来通りに房状にしているループであるが、その後、次のループを房状にする際、前もって房状にしたループの全部を取り外すのに足るだけ糸の供給を遅くするステップによって、回収されているループである。例えば、一次裏地から0.250インチ(6.35mm)延び、かつ1インチ当り8つのステッチがある房状ループについて、それぞれ長さ0.250インチ(6.35mm)を有する2レッグの糸ループに、またその房状ループと房状にしようとする次のループとの間のバックステッチに適応させるために、サーボモータは通常、1つのステッチ当りおよそ0.625インチ(15.88mm)の糸を供給するであろう。前もって房状にしたステッチ位置で房状ループを取り外すために、サーボモータは、コンピュータ制御下で次のステッチングの間は糸の供給を本質的に停止させ、それにより以前のループを、一次裏地を通して引き戻し得る。次の針ストロークの上端付近で、バックステッチに適応させるためサーボモータは、コンピュータ制御下でおよそ0.125インチ(3.18mm)を供給するであろう。こうして、それぞれの連続したステッチが以前の房状ループを引き出すであろう。布の加工面に房状ループを残している房状化に再び戻すには、次のステッチを形成するのに必要な糸、すなわち、ループの高さを前もって形成したループと同一とする場合、0.625インチ(15.88mm)に適応させる速度で糸を供給するように、コンピュータ制御下のサーボモータをもう一度設定する。1ループ当りを基準としてループの高さを調節し得ることが、やはり理解されるであろう。これを達成するには、コンピュータによりサーボモータを調節してある程度糸を供給し、それにより、その後ループを形成する際、ある量の糸を取り返して、より低いパイルループを形成させる。
【0019】
図6を参照すれば、布地の加工面の裏側を、76で示されたラテックス又は樹脂等の従来の二次裏地組成物で被覆され得ることが理解されるであろう。
【0020】
ここで図7を参照すると、一次裏地80と房状のカットパイル糸82との不連続な表面部分、又はループパイル糸84と組み合せた不連続な表面部分を有し、かつその布の加工面を構成する布製品の形成について概略的に例示されている。カットループパイルを形成させる従来のタフティングで、矢印88で示された基材80の進行方向と反対の方向にルーパ86が延在する。カッティング刃90とキーパ91とが、ルーパ86に連結している。同様な取り返しの手順(robbing-back procedure)を用いて、広範囲の一次裏地80とカットループタイプのステッチとの露出部分を形成させる。例えば図7には、糸の供給が不十分であり、そのため、カッティング刃90で切断しカットループ82を形成し得る前に、ルーパ86の末端から外れるループ92を例示している。こうして、上記で記述したループパイル形成の場合と同様に、次のステッチを形成する針の進行により、ループ92が一次裏地80を貫通して完全に回収されるであろう。この方法で、上記で記述したように、サーボモータの選択的操作により、加工面の反対側の裏地面にわたって、延長されたバックステッチ94が提供され得る。
【0021】
糸の供給に応じて高さが異なるループについて、最も高いパイルを切断し、かつ糸を梳くステップによりカットループ構造も形成され得る。代替として、ループが完全に引き出され得る。例えば、1インチ(2.54cm)当り10ステッチを使用して、下記が提供され得る:
【0022】
【表1】

【0023】
図8を参照すると、図3〜図6に関して上記で記述している方法により形成する房状ループは、異なる高さ又は同一の高さのループを有し得る。布中に房状にした最も高いループの一部を切断除去する先端剪断(tip-shearing)操作もオフラインで実施できる。例えば、図8において、一次裏地96は、その一次裏地を加工面に露出させるバックステッチ98と、異なる高さの一連のループ100及び110とを有する。図8には先端剪断機104を概略的に示しており、先端剪断機104は、例示しているように、最も高いパイルループ102の先端の一部分を剪断除去する刃を有するリール型装置を備えている。
【0024】
布を製造する前述の方法が、見る人の視点に応じて色彩、きめ、又は他の美観特性における変化を有する布を提供するために使用できることも理解されるであろう。例えば、布をカーペットに用いる場合、露出した一次裏地部分と房状の部分とは、色彩、きめ、模様、又はそれらの組合せを含む、異なる美観特性を有してよい。主として露出した裏地表面部分及び露出したタフトの模様、例えば房状のロー(横筋)によって構成される露出した表面でカーペットを形成する場合、見る人の視点に応じて、カーペットの美観特性が変化する。すなわち、カーペット上に立って見る人には、露出した一次裏地の美観特性が第一に見えるようになり、房状の裏地の美観特性はほとんどもしくは全く見えない恐れがある。しかし、距離をおいて、かつ鋭角から同一のカーペットを見る場合、見る人には、起毛したタフトが見えるようになり、かつ起毛したタフトの色彩、きめ、模様、又はそれらの組合せがカーペットの外観を支配するであろう。したがって、見る人の視点が変化するにつれて、この布の美観特性は同様に変化し得る。
【0025】
本発明は、最も実際的かつ好ましい実施形態と現在考えられるものに関連して記述されているが、本発明は、開示している実施形態に限定されるべきではなく、これに反して、添付した特許請求範囲の趣旨及び範囲内に含まれる種々の変更及び均等的配置にわたることを、理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に基づいて構成された布の代表的実施例の加工面を示す全体図である。
【図2】布を形成する房状化工程を示す概略図である。
【図3】布の加工面上に一次裏地と房状ループ糸との不連続な表面部分を露出させる房状化工程を示す概略図である。
【図4】布の加工面上に一次裏地と房状ループ糸との不連続な表面部分を露出させる房状化工程を示す概略図である。
【図5】布の加工面上に一次裏地と房状ループ糸との不連続な表面部分を露出させるタフティング工程を示す概略図である。
【図6】布の加工面上に一次裏地と房状ループ糸との不連続な表面部分を露出させる房状化工程を示す概略図である。
【図7】布の加工面上に一次裏地とカットループ房状の糸との不連続な表面部分を形成しかつ露出させるカットループ房状化工程を示す概略図である。
【図8】布の房状ループ糸のためのオフライン先端剪断工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
10 加工面
12 不連続な表面部分、一次裏地
14 不連続な表面部分、房状の糸
16 一次裏地、基材
18 房状の糸、パイルループ
20 ランダムな房状ループ
24 一次裏地
26 矢印
28 ロール
30 針棒
32 針
34 糸
36 供給ローラ
38 サーボモータ
40 プログラマブルコンピュータ
50 異なる高さのループ
52 異なる高さのループ
54 単位長さのバックステッチ
56 多重単位長さの延長したバックステッチ
60 針
62 糸
64 以前の房状ループ
66 次の房状ループ
68 2つの単位長さのバックステッチ
76 二次裏地組成物
80 一次裏地、基材
82 房状のカットパイル糸、カットループ
84 ループパイル糸
86 ルーパ
88 矢印
90 カッティング刃
91 キーパ
92 ループ
94 延長したバックステッチ
96 一次裏地
98 バックステッチ
102 最も高いパイルループ
104 先端剪断機
110 異なる高さのループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床、壁又は天井面用の被覆物であって、
当該被覆物の加工面に、摩耗面の第1の不連続摩耗面部分を形成するために、当該被覆物の一側に、露出した不連続な部分を備えている一次裏地と、
前記一次裏地の残りの部分にわたって前記一次裏地を貫通して房状にした複数の糸であって、当該被覆物の加工面に、房状の糸のループ又はカットループを含んでなる、前記摩耗面の第2の不連続摩耗面部分を形成する複数の糸と、
当該被覆物の加工裏面にそって延び、且つ、前記摩耗面の第1の不連続摩耗面部分から前記一次裏地の反対側にそって延びている、前記房状の糸の複数のバックステッチと、
前記バックステッチを前記一次裏地に固定している、前記一次裏地の裏面にそう組成物と、を含んでなる被覆物において、
前記一次裏地が、房状の糸を受け入れる複数の規則正しく配置されたステッチ開口部を備え、各ステッチ開口部が、布の縦糸方向(進行方向)に隣接する次のステッチ開口部から単位長さで配置され、且つ、前記バックステッチが、当該被覆物の加工裏面にそって、前記縦糸方向に多重単位長さの距離で互いに配置されたステッチ開口部間に跨って形成され、
各ステッチ開口部には、前記加工面に房状の糸か、当該ステッチ開口部の下に形成された当該被覆物の前記加工裏面にそって延びるバックステッチのいずれかを、含んでなることを特徴とする被覆物。
【請求項2】
前記摩耗面の第1及び第2の不連続摩耗面部分を形成する前記一次裏地部分及び前記房状の糸が、前記摩耗面においてランダムに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の被覆物。
【請求項3】
前記摩耗面の第1及び第2の不連続摩耗面部分を形成する前記一次裏地部分及び前記房状の糸が、布の摩耗面に模様として配置されていることを特徴とする請求項1に記載の被覆物。
【請求項4】
第1及び第2の不連続摩耗面部分を形成する前記一次裏地部分及び房状の糸の最上位部分が、前記被覆物において異なる高さで存在し、一の視点から前記被覆物を見る者が前記露出した一次裏地部分及びその支配的な美観特性を主として見ることを可能にし、且つ、異なる視点からは、前記見る者が前記房状の糸及びその支配的な美観特性を主として見ることを可能にすることによって、見る視点が変化すると前記被覆物の美観特性が変化する外観を創出していることを特徴とする請求項3に記載の被覆物。
【請求項5】
前記バックステッチは、当該被覆物の加工裏面にそってのみ見えることを特徴とする請求項1に記載の被覆物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−52191(P2009−52191A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256743(P2008−256743)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【分割の表示】特願2006−532380(P2006−532380)の分割
【原出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【出願人】(504014613)モホーク・ブランズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】