説明

床暖房パネル

【課題】パネル端部に凹設されたコネクター部等の電気接続や、メンテナンスの際は容易に開放され、通常は上記コネクター部等を保護し、施蓋するカバー体を有し、かつ、意匠性に優れた床暖房パネルを提供する。
【解決手段】電源線に接続されるコネクター部5と該コネクター部5を収める収納筐体8および該コネクター部5に結線された発熱体4とを含む発熱ユニットを断熱性の基材7に埋設してなる発熱パネルであって、該発熱パネルを覆う表面材3の一端縁には下方の収納筐体8に臨む平面視コ字形の切欠部3aを設けるとともに、該切欠部3aを構成する一側縁31と該切欠部3aを覆うフタ体1とが回動自在に蝶着されてなる床暖房パネルA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は床暖房パネルに関し、さらに詳しくは、マンションや戸建住宅等、一般住宅の床下地材に直貼り施工できる床暖房パネルの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、快適な居住性への志向が高まる中で、一般住宅のリビングルームやトイレルーム等を暖房する方法として、床面に面状ヒーター等の発熱体を埋め込んで床全体を発熱させる床暖房が普及しつつある。このような床暖房については、種々の技術が開発されているが、電熱ヒーターをパネルユニットに組み込んで加熱する電熱方式のものが主流となっており、近年では、例えば、コンパネ等、フラットな床下地材へ直貼りできる床暖房パネルが知られている。
【0003】
上記床暖房パネルの施工は、隣接するパネルユニットどうしを電気的に接続して行われるが、隣接するパネルの配線接続部は、通常、パネルユニットの端部に凹部を設けて収納され、相互に接続される。この接続作業は、簡便、かつ、容易であることが必要とされ、また、メンテナンス時においても、コネクター部等、電気的な接続部分の清掃、点検等の作業が容易に行われることが求められる。ここで、パネルユニットの端部に設けられた収納凹部には、通常、配線接続部を覆って保護するために取り外し可能なフタが装着されている。
【0004】
本願図4は公知の床暖房パネルBの一例を示す部分破断平面図である。また、本願図5は本願図4におけるX−X線に沿う断面図である。本願図5に示されているように、面状ヒーター、コード状ヒーター等、電気的に発熱する発熱体4は、図外電源線から給電され、コネクター部5から結線41を経由して流れる電流によって発熱する。ここでコネクター部5は、パネルユニットの端部に配設された収納筐体8に収納されている。
【0005】
本願図4、図5に示されるように、発熱体4、コネクター部5を収納した収納筐体8、結線41等はロックウール、発泡ウレタン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、グラスウール等の断熱材が充填された基材7に埋設されるとともに、基材7を含むパネル全体は枠部材9によって囲繞される。また、枠部材9を含む表面全体は、化粧材で化粧された表面材3で覆うことによって、例えば、木目模様に化粧された床暖房パネルBを形成する。上記基材7の裏面はアルミシート、アルミ−紙複合シート等の裏面材71でバッキングされる。
【0006】
ここで、図4に示すように、上記表面材3の端縁には平面視コ字形に切り欠かれた切欠部3aが設けられ、この切欠部3aの下方には上記収納筐体8が配設されている。また、この切欠部3aは通常、取り外し自在とされたフタ体6で覆われ、下方に位置する収納筐体8の内部に収められたコネクター部5等が、チリ、埃や水分等の作用によって短絡、漏電する等の不都合が生じないように保護されている。
【0007】
図4において、フタ体6は上記切欠部3aを覆って収納筐体8に装着された状態を示し、フタ体6aはメンテナンスや、隣接するパネルユニットを電気的に接続する作業等のために取り外した状態を示す。このようにフタ体6を取り外した状態で、コネクター部5等の点検作業が行われる。
【0008】
一方、上記床暖房パネルの配線の接続に関しては、例えば、特開平7−12363号公報に開示の技術をあげることができる。上記特開平7−12363号公報には、隣接する床暖房パネルの相互の配線接続構造であって、接続部位のパネル裏面にはヒンジ機構によりカバー体を開閉自在とした切欠き部が設けられ、この切欠部には端子台が備えられ、かつ端子台に接続する伸縮自在な接続ケーブルが蛇行状態で収納されていることを特徴とする床暖房パネルの配線接続構造が開示されている。
【0009】
そして、その効果として、従来技術の欠点を解消し、施工およびメンテナンスが簡便、かつ容易で、しかもメンテナンス時に配線および接続部にストレスを余計にかけることもない改善された床暖房パネルの配線接続構造が提供できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−12363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願図4、図5に示す従来技術においては、フタ体6が切欠部3aに着脱自在とされているため、メンテナンス等の際には簡単に取り外すことが可能であり、収納筐体8が開放されてコネクター部5等の全体が容易に目視でき、点検等を作業性よく行えるという利点があるが、取り外したフタ体6が作業中に取り紛れて紛失するという問題がある。また、複数の収納筐体8の内部を一斉に点検する際、あるフタ体6がどの切欠部3aに装着されていたものかが分からなくなり、それぞれ、元の切欠部3aにきっちりと納めることが困難となるという問題もある。
【0012】
一方、上記特許文献1には、床暖房パネルの裏面にヒンジ機構でカバー体が開閉自在に設けられた技術が記載されているが、カバー体は閉じる方向に戻る力を具え、端子台に接続する伸縮自在な接続ケーブルはこの戻り勝手のカバー体によって制約され、そのため、切欠部内へ戻りやすくなり、施工時やメンテナンス時に、床面とパネルとの間に挟み込まれることがないという効果が述べられている。
【0013】
このとき、メンテナンス時等にカバー体を開けるためには、戻る力に対抗するより大きな力が必要となる。また、開放した状態を保つには、何らかの保持手段が必要となるため、上記コネクター部回り等の点検等、メンテナンス作業を容易にすることができないという問題がある。
【0014】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、一般住宅に用いられる床暖房パネルの端部に凹設された配線接続部を、通常はカバー体で覆って内部に埋設された配線接続部を保護するとともに、メンテナンスや該配線接続部を電気的に接続する作業等のために開放するときは容易に開放可能とされたカバー体を有し、かつ、意匠性に優れた床暖房パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る床暖房パネルは、電源線に接続されるコネクター部と該コネクター部を収める収納筐体および該コネクター部に結線された発熱体とを含む発熱ユニットを断熱性の基材に埋設してなる発熱パネルであって、該発熱パネルを覆う表面材の一端縁には下方の収納筐体に臨む平面視コ字形の切欠部を設けるとともに、該切欠部を構成する一側縁と該切欠部を覆うフタ体とが回動自在に蝶着されてなることを特徴としている。
【0016】
上記表面材としては、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、またはWPB(ウッドプラスチックボード)等、種々の基材をあげることができる。これらは、例えば、表面に天然木の表皮を薄くスライスして得られた突き板を貼着し、あるいは、木目の意匠や色彩が印刷された合成樹脂シートや強力紙を貼着し、表面化粧して用いることが多い。
【0017】
また、本願請求項2に記載の発明においては、上記請求項1に記載の床暖房パネルにおいて、上記切欠部を構成する一側縁が表面材の幅方向にあり、上記フタ体が該幅方向一側縁に回動自在に蝶着されてなることを特徴としている。
【0018】
上記フタ体は、通常、表面材の端縁に設けられた切欠部に施蓋されて表面材と一体的に用いられるため、上述の表面材と同じデザイン、材質のものが好ましく用いられる。また、上記フタ体を回動自在に蝶着する方法としては、特に限定されるものではなく、通常の金属蝶番、プラスチック蝶番、プラスチック製の可撓性薄肉シート蝶番等が用いられる。
【0019】
また、本願請求項3に記載の発明においては、上記請求項1に記載の床暖房パネルにおいて、上記フタ体と上記切欠部を構成する一側縁との対向面のそれぞれに面取り加工が施されたことを特徴としている。この面取り角度としては、それぞれ、30度〜45度とされる。
【0020】
また、本願請求項4に記載の発明においては、上記請求項1に記載の床暖房パネルにおいて、フタ体と上記切欠部を構成する一側縁とが離間して蝶着されてなることを特徴としている。上記離間距離としては、通常、0.1mm〜1mmが適当とされる。
【発明の効果】
【0021】
本願請求項1記載の発明に係る床暖房パネルにおいては、発熱ユニットを断熱性の基材に埋設してなる発熱パネルを覆う表面材の一端縁には、下方にコネクター等を収めた収納筐体を臨む平面視コ字形の切欠部が設けられ、該切欠部を構成する一側縁と該切欠部を覆うフタ体とが回動自在に蝶着されてなるため、通常、上記カバー体は切欠部を覆って施蓋し、収納筐体内に収められたコネクター等の配線接続部を保護し、短絡、漏電等の不測の事態を防止することができる。
【0022】
また、メンテナンス作業等のために開放が必要なときは、フタ体は切欠部を構成する一側縁を軸として回動可能であるため、簡単に回動して内部を目視でき、また、作業性よくメンテナンス作業を行うことができる。さらに、フタ体は上記一側縁に蝶着しているため、紛失することがなく、また、点検等の作業が完了した後、蝶着したフタ体を回動して切欠部に施蓋すれば、簡単に元の状態に戻すことができる。
【0023】
また、本願請求項2記載の発明の床暖房パネルにおいては、特に、上記切欠部を構成する一側縁が表面材の幅方向にあり、上記フタ体がこの幅方向一側縁に回動自在に蝶着されてなるため、上記フタ体の自由端を持ち上げて長手方向に回動することにより、上記切欠部の下方に配設された収納筐体が開放され、収納筐体内に収められたコネクター等の配線接続部を容易に点検することができる。
【0024】
また、本願請求項3記載の発明の床暖房パネルにおいては、特に、上記フタ体と該フタ体に対向する上記切欠部の一側縁とのそれぞれに30度〜45度程度の面取り加工が施されているため、フタ体の自由端を持ち上げて回動したとき、対向面どうしが突き合うことなく回動して角度が90度以上である開き角度を得ることができる。そして、収納筐体内に収められたコネクター等の配線接続部の点検を容易に行うことができる。
【0025】
また、本願請求項4記載の発明の床暖房パネルにおいては、特に、上記フタ体と上記切欠部を構成する一側縁とが離間して蝶着されているため、フタ体の自由端を持ち上げて回動したとき、相互に突き合うことなく回動することができる。そして、収納筐体内に収められたたコネクター部等の点検を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明に係る床暖房パネルを示す断面図。
【図2】本願発明に係る床暖房パネルの改良例を示す部分拡大断面図。
【図3】上記改良例においてフタ体を開いて収納筐体の内部を点検する状態を示す部分拡大断面図。
【図4】公知の床暖房パネルの一例を示す部分破断平面図。
【図5】本願図4におけるX−X線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明に係る床暖房パネルの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本願発明に係る床暖房パネルAを示す断面図である。図1に示すように、図外電源線に接続されるコネクター部5、コネクター部5を収める収納筐体8、このコネクター部5から発熱体4に通電し発熱させるための結線41等を含む発熱ユニットは、断熱性を有する基材7に埋設されて発熱パネルを構成している。また、基材7は既述した裏面材71によってバッキングされている。9は床暖房パネルAを構成する枠部材である。
【0028】
上記発熱パネルは表面材3で覆われるとともに、該表面材3の一端縁には既述したように、平面視コ字形の切欠部3a(図3、4参照)が設けられ、この切欠部3aの奥端部に位置する表面材3の幅方向一側縁31と該切欠部3aを覆うフタ体1の奥端縁部とはヒンジ手段2としての薄肉シート蝶番で回動自在に蝶着されている。
【0029】
上記のようにして、フタ体1はヒンジ手段2によって回動自在とされ、通常は、フタ体1を閉として切欠部3aの下方の収納筐体8に収められたコネクター部5等を保護する。一方、メンテナンス時等には、フタ体1を白抜き矢印で示すように、その自由端を持ち上げて表面材3の長手方向に回動することにより、容易に収納筐体8は開放され、コネクター部5と結線41等の接続状態を点検することができる。
【0030】
図2は、上記床暖房パネルAに係る実施形態の改良例を示す部分拡大断面図である。本改良例においては、表面材3の幅方向一側縁31とフタ体1との対向面の表面側それぞれに、角度αとして、α=45度〜60度で面取り加工が施されている。このようにすることにより、フタ体1を回動して収納筐体8の内部を点検する際、図3に示すように、フタ体1は90度〜120度の所定の開き角度βで開くことができる。そして、電源線とコネクター部5の接続状態等、コネクター回りを容易に点検することができる。
【0031】
また、このとき、上記図2に示すように、フタ体1と表面材3との間を0.1mm〜1mmの離間距離dで離間させ、ヒンジ手段2としての薄肉シート蝶番に固着することが好ましい。このようにすることにより、さらに容易に、フタ体1がヒンジ手段2の有する可撓性によって屈曲し、90度以上の開き角度βで開くことができる。
【0032】
上記実施形態においては、ヒンジ手段2として可撓性の薄肉シート蝶番を用いた例について述べたが、プラスチック蝶番を用いてもよい。あるいは、金属製の蝶番を用いてもよい。また、フタ体が上記切欠部を構成する表面材の幅方向一側縁に回動自在に蝶着された場合について述べたが、これに限られず、上記切欠部を構成する表面材の長さ方向一側縁に回動自在に蝶着されてもよい。このように本願発明に係る床暖房パネルは設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0033】
A 本願発明に係る床暖房パネル
B 公知の床暖房パネル
α 面取り角度
β 開き角度
d 離間距離
1 フタ体
2 ヒンジ手段
3 表面材
3a 切欠部
31 幅方向一側縁
4 発熱体
41 結線
5 コネクター部
6 公知技術におけるフタ体
6a 公知技術における取り外したフタ体
7 基材
71 裏面材
8 収納筐体
9 枠部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源線に接続されるコネクター部と該コネクター部を収める収納筐体および該コネクター部に結線された発熱体とを含む発熱ユニットを断熱性の基材に埋設してなる発熱パネルであって、該発熱パネルを覆う表面材の一端縁には下方の収納筐体に臨む平面視コ字形の切欠部を設けるとともに、該切欠部を構成する一側縁と該切欠部を覆うフタ体とが回動自在に蝶着されてなる床暖房パネル。
【請求項2】
上記切欠部を構成する一側縁が表面材の幅方向にあり、上記フタ体が該幅方向一側縁に回動自在に蝶着されてなる請求項1に記載の床暖房パネル。
【請求項3】
上記フタ体と上記切欠部を構成する一側縁との対向面のそれぞれに面取り加工が施されたものである請求項1に記載の床暖房パネル。
【請求項4】
上記フタ体と上記切欠部を構成する一側縁とが離間して蝶着されてなる請求項1に記載の床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−210135(P2010−210135A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56007(P2009−56007)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】