説明

床材及びその製造方法

【課題】軽量で材料費を節約でき、商品価値を損なったり強度や耐摩耗性の実質的な低下がなく、一つの加熱工程で効率良く製造でき、表面層と裏面層の耐剥離強度が大きくて簡単に剥離する心配がない床材と、その製造方法を提供する。
【解決手段】無発泡の表面層と低発泡の裏面層を積層一体化した床材で、裏面層は熱可塑性樹脂を主成分とするペレットと発泡剤との混合物からなる層を加熱によりゲル化させると同時に発泡させたものであり、表面層は熱可塑性樹脂を主成分とするペレットからなる層を上記混合物からなる層と同時に加熱してゲル化させたものであり、互いに溶着している構成の床材とする。製造方法は、裏面層形成用の上記混合物の層の上に表面層形成用のペレットの層を形成して加熱する。裏面層はセルが均一で比較的小さく強度の低下やバラツキが殆どない低発泡の層となり、無発泡の表面層と強固に溶着されるので簡単に剥離する心配はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂製の床材とその製造方法に関し、更に詳しくは、表面層と裏面層の耐剥離強度が大きく、軽量で材料費を節約できる床材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビルの通路や室内の床面には、塩化ビニル樹脂製の単層構造の床材や、表面層と裏面層を積層一体化した積層構造の床材が貼付けられている。また最近では、塩化ビニル樹脂製の床材に代えて、火災時に有害な塩素ガスや塩化水素ガスを出さないオレフィン系樹脂製の床材も開発されている。
【0003】
一方、歩行に影響のない適度なクッション性を有する床材シートとして、非発泡の樹脂シートの裏側に、発泡樹脂の緩衝層を接着剤で接着したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3043512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の熱可塑性樹脂製の床材はいずれも無発泡であるため、重量が意外に大きく材料費が高くつくという問題があった。かと言って、単層構造の床材や積層構造の床材を全体的に発泡させると、表面にボイドが形成されたり、表面のエンボスが崩れたりして、商品価値が損なわれると共に、強度や耐摩耗性が低下し、表面層と裏面層の耐剥離強度も低下するなど、新たな問題が生じることになる。
【0006】
これに対し、上記特許文献1の床材シートは、表面の樹脂シートが非発泡であため、表面にボイドが形成されて商品価値が損なわれることはないが、非発泡の樹脂シートと発泡樹脂の緩衝層を個別に造る工程と、これらを接着して積層一体化する工程が少なくとも必要であるため、製造工程が多くなり、しかも、樹脂シートと緩衝層との接着強度が不十分であると剥離しやすくなるという問題があった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、軽量で材料費を節約することができ、商品価値を損なったり強度や耐摩耗性の実質的な低下を生じることがなく、一つの加熱工程によって無発泡の表面層と低発泡の裏面層を形成すると同時に溶着一体化することができ、表面層と裏面層の耐剥離強度が大きくて簡単に剥離する心配がない熱可塑性樹脂製の床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る床材は、熱可塑性樹脂を主成分とする無発泡の表面層と、熱可塑性樹脂を主成分とする低発泡の裏面層を積層一体化した床材であって、前記裏面層は、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットと発泡剤との混合物からなる層を加熱によりゲル化させると同時に発泡させたものであり、前記表面層は熱可塑性樹脂を主成分とするペレットからなる層を前記混合物からなる層に重ねて同時に加熱することによりゲル化させたものであり、互いに溶着していることを特徴とするものである。
【0009】
そして、本発明に係る床材の製造方法は、熱可塑性樹脂を主成分とする裏面層形成用のペレットと発泡剤との混合物からなる層を形成し、その上に熱可塑性樹脂を主成分とする表面層形成用のペレットからなる層を重ねて形成し、加熱することにより、表面層形成用のペレットと裏面層形成用のペレットの樹脂をゲル化させると同時に発泡剤の分解ガスで裏面層を発泡させ、無発泡の表面層と低発泡の裏面層を溶着することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床材は、表面層が熱可塑性樹脂を主成分とする無発泡の層であるから、表面にボイドが形成されたり、表面のエンボスが崩れたりして、商品価値を損なう心配がなく、表面の強度や耐摩耗性が低下する心配もない。そして、裏面層が熱可塑性樹脂を主成分とする低発泡の層であるから、発泡による裏面層の強度低下を実質的に生じることなく、発泡している分だけ裏面層の軽量化を達成することができ、材料費を節約することができる。また、この裏面層は、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットと発泡剤との混合物からなる層を加熱によりゲル化させると同時に発泡させたものであるから、セルが均一で比較的小さく、強度の低下やバラツキが殆どない低発泡の層となっており、しかも、表面層は、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットからなる層を前記混合物からなる層に重ねて同時に加熱することによりゲル化させたものであるから、裏面層と表面層が互いの界面で強固に溶着されて、簡単に剥離する心配がない。このような本発明の床材は、前記の本発明の製造方法によって、一つの加熱工程で無発泡の表面層と低発泡の裏面層を形成すると同時に溶着一体化して効率良く量産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0012】
本発明に係る床材は、無発泡の表面層と低発泡の裏面層を積層一体化したものであって、具体的な実施形態においては、表面層と裏面層が以下のように構成される。
【0013】
即ち、裏面層は、熱可塑性樹脂を主成分とし、これに無機質充填材、着色剤、安定剤等を含有させた厚さ0.5〜2mm程度の低発泡の層であって、その発泡倍率が1.01〜1.50倍に調節される。主成分の熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などが単独で又は適宜混合して使用される。この裏面層は、主成分の熱可塑性樹脂に無機質充填材、着色剤、安定剤等を配合して造粒したペレットと発泡剤とを均一に混合し、この混合物からなる層を加熱によりゲル化させると同時に発泡させたものであり、そのためセルが均一で比較的小さく形成され、強度の低下やバラツキが実質的に生じていない低発泡の層となっている。
【0014】
一方、表面層は、上記と同様の熱可塑性樹脂を主成分とし、これに無機質充填材、着色剤、安定剤等を含有させた厚さ0.5〜2mm程度の無発泡の層であり、好ましくは、エンボス加工によって滑止め用の凹凸模様が表面に形成される。この表面層は、主成分の熱可塑性樹脂に無機質充填材、着色剤、安定剤等を配合して造粒したペレットからなる層を、裏面層形成用の前記混合物からなる層の上に重ねて同時に加熱することによりゲル化させて形成したものであり、そのため表面と裏面層はその界面で強固に溶着されている。
【0015】
裏面層の発泡倍率は、前述したように1.01〜1.50倍に調節する必要があり、発泡倍率が1.01倍より小さくなると、発泡による裏面層の軽量化や材料の節減が殆ど期待できないようになる。一方、発泡倍率が1.50倍より大きくなったり、発泡剤を含有させて造粒したペレットを用いて裏面層を形成する場合は、セルが大きくて不均一になりやすいため、裏面層の強度の低下やバラツキが生じるようになる。裏面層の好ましい発泡倍率は1.05〜1.30倍であり、更に好ましい倍率は1.05〜1.20倍である。
【0016】
前記発泡剤は、その粒径が5μm以下、好ましくは3μm程度と小さいものが使用される。この発泡剤は、発泡倍率1.01〜1.50倍程度の裏面層2が形成されるように、ペレットの熱可塑性樹脂100重量部に対し0.5〜2重量部の割合でペレットと混合することが好ましい。
【0017】
尚、床面に対する接着性を向上させるために、裏面層の下面にプライマー処理を施したり、裏面層の下面に繊維層を半埋入状態で付着させてもよい。また、表面層と裏面層の間に繊維層を設けることも可能であり、その場合は、床材の強度や寸法安定性が向上することに加えて、裏面層の発泡剤の分解ガスが繊維層の空隙を通じて排気され表面層に浸入する恐れがなくなるので、表面層にボイドが形成されたり、表面のエンボスが崩れたりするのを確実に防止できる利点がある。繊維層としては、ガラス繊維等の無機繊維やプラスチック繊維等の有機繊維からなる不織布や織布等が使用される。
【0018】
以上のような構成の床材は、以下のような本発明の製造方法によって効率良く量産することができる。
【0019】
即ち、主成分の熱可塑性樹脂に無機質充填材、着色剤、安定剤等を配合して造粒した裏面層形成用のペレットと発泡剤とを前記の混合割合で均一に混合し、この混合物を搬送ベルト上に散布して一定厚みの層を形成する。そして、この層の上に、主成分の熱可塑性樹脂に無機質充填材、着色剤、安定剤等を配合して造粒した表面層形成用のペレットを散布して一定厚みの層を形成する。そして、加熱炉内へ搬入し、表面層形成用のペレットと裏面層形成用のペレットの樹脂をゲル化させると同時に、発泡剤を熱分解して分解ガスにより裏面層を発泡させながら、無発泡の表面層と低発泡の裏面層を形成して互いに強固に溶着する。加熱炉から出てきた床材はエンボスロールに通して表面層に凹凸模様を形成し、更にトリミングを施して最終的な製品を得る。
尚、表面層と裏面層の間に繊維層を介在させる場合は、前記混合物の層の上に表面層形成用のペレットの層を形成する前に、繊維層を前記混合物の層の上に重ねればよい。
【0020】
本発明の床材は、上記の本発明の製造方法によって、一つの加熱工程で、表面層と裏面層を形成すると同時に溶着して効率良く量産されるものであり、表面層が無発泡の層であるから、表面にボイドが形成されたり、表面の凹凸模様が崩れたりして、商品価値を損なう心配がなく、表面の強度や耐摩耗性が低下する心配もない。そして、裏面層が低発泡の層であるから、発泡による裏面層の強度低下を実質的に生じることなく、発泡している分だけ裏面層の軽量化を達成することができ、材料費を節約することができる。また、この裏面層は、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットと発泡剤との混合物からなる層を加熱によりゲル化させると同時に発泡させたものであるから、セルが均一で比較的小さく、強度の低下やバラツキが殆どない低発泡の層となっており、しかも、表面層は、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットからなる層を前記混合物からなる層に重ねて同時に加熱することによりゲル化させたものであるから、裏面層と表面層が互いの界面で強固に溶着されて、簡単に剥離する心配がない。
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明の床材は、表面の強度や耐摩耗性を低下させたり商品価値を損なうことなく、軽量化と材料費の節約を達成することができ、表面層と裏面層の融着強度が大きくて簡単に剥離する心配がなく、本発明の製造方法によって一つの加熱工程で効率良く量産できるといった顕著な効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主成分とする無発泡の表面層と、熱可塑性樹脂を主成分とする低発泡の裏面層を積層一体化した床材であって、前記裏面層は、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットと発泡剤との混合物からなる層を加熱によりゲル化させると同時に発泡させたものであり、前記表面層は熱可塑性樹脂を主成分とするペレットからなる層を前記混合物からなる層に重ねて同時に加熱することによりゲル化させたものであり、互いに溶着していることを特徴とする床材。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を主成分とする裏面層形成用のペレットと発泡剤との混合物からなる層を形成し、その上に熱可塑性樹脂を主成分とする表面層形成用のペレットからなる層を重ねて形成し、加熱することにより、表面層形成用のペレットと裏面層形成用のペレットの樹脂をゲル化させると同時に発泡剤の分解ガスで裏面層を発泡させ、無発泡の表面層と低発泡の裏面層を溶着することを特徴とする床材の製造方法。

【公開番号】特開2010−1736(P2010−1736A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231570(P2009−231570)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【分割の表示】特願平11−308599の分割
【原出願日】平成11年10月29日(1999.10.29)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】