説明

床材

【課題】 合成樹脂を基材とする床材に、長さ及び太さが異なる繊維が方向性及び規則性をもたずに多方向に延び、且つ繊維同士が絡み合って大きさが様々な粗と密の空間を形成することにより、いわゆる和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような模様を簡単に表出すること
【解決手段】 従来、床材の模様の表出に直接寄与しない裏打ち材として使用していた不織布を模様を表出させる材料として使用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材に関する。より詳細には、通常の床シート構成の表層に不織布をはりあわせ、不織布がもつ和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような方向性のない特有の模様・柄を表出した床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の合成樹脂を主原料とした床材が提供されている。最も一般的な床材は、ポリ塩化ビニル系床材である。最近は合成樹脂系の床材としてポリオレフィン系の製品も開発されてきてはいるが、加工性が良い、強度があり傷つきにくい、意匠性・デザイン性に優れ鮮やかな彩色が可能、燃えにくい、価格が安い、さらには環境に良い水系の接着剤にも適合するといった特性も有し、また、農ビのリサイクルなどに大きく貢献している点から塩ビ系床材が重用されている。
【0003】
従来の代表的な塩ビ床材を構成材料から分類すると、天然繊維、合成繊維などの織布を裏打ち材とし、充填材を多く含んだ塩化ビニル中間層と、比較的純度の高い塩化ビニル表層を積層した発泡層のない長尺塩ビシート。
【0004】
紙、フェルト、ガラス繊維などの不織布またはビニル層を裏打ち材とし、着色した塩化ビニルチップを塩化ビニルで積層したインレイドシート。
【0005】
織布、不織布、塩化ビニルなどの裏打ち材または塩化ビニルの中間層の上に着色した塩化ビニルチップを積層し、さらに透明な塩化ビニル表層を設けたソフトインレイドシート。
【0006】
裏打ち材の上に発泡塩化ビニル層または着色したビニルチップを積層して表層を設けた発泡層のある複合塩ビシート。
【0007】
或いは裏打ち材の上にパターンを印刷した発泡塩化ビニル層を中間層として設け、透明な塩化ビニル表層を設けた発泡層のあるクッションフロアシート等に大別される。
【0008】
いずれにしても、従来の床材では、不織布は裏打材として使用するのが主流であった。
【0009】
また、床材への模様を付与する方法としては、インレイドタイプ(チップ・ペレットの利用、印刷法の利用、焼結法の利用、連続発泡体法)、エンボス法(ケミカルエンボス法、メカニカルエンボス法)印刷法等が主流であって、不織布自体に模様を表出させる床材は無い。
【0010】
特許文献1は、「大理石模様を有するシート及びそれを製造する方法」を開示している。特許文献1に記載された方法は、着色下地層裏と接する面にエンボス加工が施され、表面及び厚さ方向全体に亘って大理石模様が形成され所定の硬度に成形した透明塩化ビニル樹脂シートと、予め成形した塩化ビニル樹脂着色下地層、及び寒冷紗を含めた基材層をカレンダーロールを通過させて圧着し一体化することにより大理石模様を形成するものである。
【0011】
特許文献2は、「大理石模様を有するシートの製造方法」を開示している。特許文献2に記載された方法は、大理石模様の地色となる色に着色されたコンパウンド用押出機、及び地色に付与したい模様の色に着色したコンパウンド用押出機を別体に設置し、各々の押出機からコンパウンドを連続的或いは断続的に所定の方向に押出して合流させ、合流部分に予め設置された非回転式スクリューを備えたミキサー内に導入し、コンパウンドのミキサー内での推進を、押出機の推進力のみで行うものである。
【0012】
特許文献3は、模様付けシートを合成樹脂材料と共にミキシングロールに投入して混練りし、ミキシングロールより出た合成樹脂シートをカレンダーロールで圧延することを特徴とする合成樹脂シートの模様付け方法を開示している。
【0013】
特許文献4は、流動開始温度が基材樹脂のロール成形温度以下であって、かつ基材樹脂とは異色の材料を、圧延ロールの軸長方向に沿って投入位置を移動させながら、上記基材樹脂に添加しつつロール圧延成形することを特徴とする合成樹脂シートの模様付け方法を開示している。
【0014】
特許文献5は、2色のコンパウンドをスクリュー押出機に供給し、それらが不完全に混合された状態で押出し、次いで圧延することにより、ロット間の差が僅少な大理石模様シートを製造する方法を開示している。
【0015】
特許文献1〜5に記載された発明で付与される模様は、いずれも、本発明の模様に比較的近い模様である。然しながら、模様が合成樹脂の流れ方向にしか形成できない、或いはスクリューの溝の深さにより、配合が限定され、模様の付与が樹脂の溶融時の粘度に拘束される、温度、押出速度等成形条件のバラツキにより安定した模様が得られないと言う欠点がある。
特許文献1:特開2002−234116号公報
特許文献2:特開平7−205338号公報
特許文献3:特公昭53−9627号公報
特許文献4:特公昭61−20401号公報
特許文献5:特開昭56−40524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発明が解決しようとする課題は、合成樹脂を基材とする床材に、長さ及び太さが異なる繊維が方向性及び規則性をもたずに多方向に延び、且つ繊維同士が絡み合って大きさが様々な粗と密の空間を形成することにより、いわゆる和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような模様を簡単に表出することである。
【0017】
発明が解決しようとする別の課題は、合成樹脂を基材とする床材に、成形装置の諸元、成形条件、合成樹脂の配合、合成樹脂の溶融時の粘度等物性等に無関係に、長さ及び太さが異なる繊維が方向性及び規則性をもたずに多方向に延び、且つ繊維同士が絡み合って大きさが様々な粗と密の空間を形成することにより、いわゆる和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような模様を、反復継続して簡単に表出することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の特徴は、従来技術が、不織布を床材の模様の表出に直接寄与しない裏打ち材として使用していたが、発想を転換して、模様を表出させる材料として使用した点にある。
【0019】
従って、上記課題は次に記載する手段によって解決される。
1.床材の基本構成層である合成樹脂層及び前記合成樹脂層の表面に接合一体化された不織布を含む層から構成された床材。
【0020】
2.前記1項において、不織布を含む層が、不織布の表面にクリア層を接合一体化する。
【0021】
3.前記2項において、クリア層を着色する。
【0022】
4.前記2または3項において、クリア層に繊維等各種材料の粉砕物を添加する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載した発明により、合成樹脂を基本材料とする床材に、成形装置の諸元、成形条件、合成樹脂の配合、合成樹脂の溶融時の粘度等物性等に無関係に、長さ及び太さが異なる繊維が方向性及び規則性をもたずに多方向に延び、且つ繊維同士が絡み合って大きさが様々な粗と密の空間を形成することにより、いわゆる和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような模様を、反復継続して簡単に表出することができる。
【0024】
請求項2に記載した発明により、不織布の表面にクリア層を接合一体化したので、床材の表面強度が向上する。
【0025】
請求項3に記載した発明により、床材の表面強度が向上することに加えて、クリア層を着色することにより、不織布の繊維の色、模様、合成樹脂層の色との組合せ合わせにより、本発明の床材の模様に、色調面で複雑な多様性を付与することができる。
【0026】
請求項4に記載した発明により、床材の表面強度が向上することに加えて、クリア層に繊維等各種材料のチップ状或いはフレーク状の粉砕物を添加することにより、不織布の繊維の色、模様、合成樹脂層の色との組合せ合わせ、及びチップ或いはフレークの存在により、本発明の床材の模様に、色調面及び立体的視覚・光学効果の点で、複雑な多様性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0028】
前述したように、本発明は、床材の表面に不織布を積層一体化することにより、和紙のような柔らかい色調の表面意匠を表現し、主に和風のインテリアデザインにおいて落ち着いた居住空間を演出することを目的とするものである。そこで、本発明で好ましい不織布に関して説明する。
【0029】
不織布は、糸の長さ及び太さが異なる繊維が方向性及び規則性をもたずに多方向に延び、且つ繊維同士が絡み合って大きさが様々な粗と密の空間を形成することにより、いわゆる和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような模様を、反復継続して簡単に表出することができる。
【0030】
不織布の糸の配列には規則性がなく繊維の密集の度合いに粗密があるため、投影すると濃淡の不均一な雲状の模様を形成している。本発明は、この模様を活用し、糸の色及び下地層、更に表層のクリア層との配色の組み合わせにより、和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような方向性のない模様を表現するものである。
【0031】
本発明において、良好な模様を形成するためには、合成樹脂層と不織布層の繊維の配色のコントラストにより繊維の模様を引き立たせることが好ましい。然しながら、不織布の目付け(「開孔度」、以下括弧書きを省略する)が大きいと、合成樹脂層が繊維で完全に覆われてしまうので、不織布の模様が分かりにくくなり、良好な模様が表出されない。このため、不織布の目付けは少なく、繊維間の隙間から合成樹脂層の地色が見える様にする必要がある。実験の結果、不織布の目付けは15〜50g/mの範囲が好ましいことが分かった。
【0032】
しかし、ただ単に目付けが小さくても、繊維が薄く均一に密集している場合は、所期の目的とする雲状、和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような模様が形成されない。目的とするような模様を形成するためには繊維の粗密の比率の大きい不織布を選択する必要がある。このためには、目付けが同じ場合、太い番手の繊維で形成された不織布の方が、より繊維間の空間が広くなる(粗密の差が大きくなる)ため、合成樹脂層の露出面が大きくなり、良好な模様を得るのには有効である。
【0033】
本発明で使用可能な不織布は、上述した条件を満たすものならば、特段に限定されない。たとえば、本発明で使用に適した不織布の一例として、フロイデンベルグ・ファーイースタン・スパンウェッブ(FFS)が製造し、日本ルトラビル社が販売しているポリエステルスパンボンド:LD7220を挙げることができる。この不織布の繊維番手は、8〜12デニール、及び標準目付けは22g/m)である。
【0034】
また、不織布構成する繊維同士が絡み合って形成する空間の総面積が広ければ、広いほど、下地の合成樹脂層と貼り合わせを行う際、その部分で上下の樹脂が溶融し、接着強度が向上するという副次的効果も期待できる。
【0035】
本発明では不織布層の表面にクリア層を形成することが好ましい。
クリア層は、床材の表面強度を向上するほかに、クリア層を着色することにより、不織布の繊維の色、模様、合成樹脂層の色との組合せ合わせにより、本発明の床材の模様に、色調面で複雑な多様性を付与することができる。
【0036】
クリア層の厚さは、0.3〜0.4mmの範囲が好ましい。クリア層の厚さが0.3mm以下の場合、十分な耐汚染性、耐候性、耐傷性等を保持されない。クリア層の厚さが0.4mm以上の場合、徒にコストを上げることになるので好ましくない。
【0037】
本発明におけるクリア層の配合は特段に限定されないが、一例として、ポリ塩化ビニル(重合度1100)が80質量部、艶消しポリ塩化ビニルが20質量部、可塑剤(DINP)が35質量部、安定剤(Ba−Zn系、液体)が3質量部、及び着色剤が5質量部から成る配合物から製造した厚さ0.4mmのポリ塩化ビニルフィルムを例示することができる。
【0038】
本発明におけるクリア層には、繊維等各種材料の粉砕物を添加することが好ましい。粉砕物の形状としては、チップ、フレーク、短繊維、マイクロファイバー、ビーズ等々従来から使用しているものから所要の目的に応じて選択することができる。
【0039】
本発明に従って、クリア層を着色し、且つ、チップ、フレーク、短繊維、マイクロファイバー、ビーズ等々の形状をした各種材料の粉砕物を配合することにより、床材の表面強度が向上することに加えて、不織布の繊維の色、模様、合成樹脂層の色との組合せ合わせ、及びチップ、フレーク、短繊維、マイクロファイバー、ビーズ等の存在により、本発明の床材の模様に、色調面及び立体的視覚・光学効果の点で、複雑な多様性を付与することができる。
【0040】
本発明におけるクリア層の配合は特段に限定されないが、一例として、ポリ塩化ビニル(重合度1100)が80質量部、艶消しポリ塩化ビニルが20質量部、可塑剤(DINP)が35質量部、安定剤(Ba−Zn系、液体)が3質量部、及び着色剤が5質量部から成る配合物から製造した厚さ0.4mmのポリ塩化ビニルフィルムを例示することができる。
【0041】
本発明の床材の合成樹脂層は、本発明の床材の主要構成要素であり、たとえば、ポリ塩化ビニルのソリッド層である。この厚さは、1.5〜2.0mmの範囲が好ましい。この層は、未使用(バージン)塩ビだけではなく、農ビ100%、または農ビと未使用(バージン)塩ビの混合物を使用して製造される。農ビを使用すれば、農ビ、即ち、使用済み塩ビのリサイクルに大きく貢献することができる。
【0042】
本発明の床材の合成樹脂層を支持する基布としては、天然或いは合成繊維などの織布及び不織布、紙、フェルト、ガラス繊維などの等従来から使用していたものから任意に選択できる。しかしながら、寸法安定性等各種物性の点から、ポリエステル繊維の平織り、即ち寒冷紗が最も好ましい。
【0043】
ポリエステル繊維の平織り、即ち寒冷紗としては、例えば、下記の諸言のものが好ましい。
タテ ヨコ
使用原糸 20綿番手 20綿番手
密度(本/in) 17 17
厚み(mm) 0.15
重さ(g/m) 42
【実施例】
【0044】
クリア層として、下記の配合で厚さ0.4mmのポリ塩化ビニルフィルムを使用した。

【0045】
不織布として、フロイデンベルグ・ファーイースタン・スパンウェッブ(FFS)が製造し、日本ルトラビル社が販売しているポリエステルスパンボンド:LD7220を使用した。この不織布の繊維番手は、8〜12デニール、及び標準目付けは22g/m)である。
【0046】
合成樹脂層として、下記の配合で厚さ2.0mmのポリ塩化ビニルシートを使用した。


【0047】
合成樹脂層の下地層となる基布として下記のポリエステル平織りを使用した。
タテ ヨコ
使用原糸 20綿番手 20綿番手
密度(本/in) 17 17
厚み(mm) 0.15
重さ(g/m) 42
【0048】
上述したクリア層、不織布層、合成樹脂層、及び基布を、張り合わせて一体化した。
【0049】
本発明は、基本的には、床材の基本構成層である合成樹脂層及び前記合成樹脂層の表面に接合一体化された不織布を含む層から構成された床材である。従って、本発明の権利は、床材の基本構成層である合成樹脂層と、合成樹脂層の表面に接合一体化された不織布を含む床材の総てを包含する。故に、合成樹脂層を複数の積層構造にすること、或いは該積層構造の少なくとも1層を発泡層とすること、クリア層の表面に多種多様な意匠を付与すること、しぼを形成すること、防滑性と各種の性能を付加すること、長尺シート或いはタイル状に成形すること等も当然本発明の権利範囲い包含される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
従来、本発明の模様に比較的近い模様である大理石模様が、合成樹脂の流れ方向にしか形成できない、或いはスクリューの溝の深さにより、配合が限定され、模様の付与が樹脂の溶融時の粘度に拘束される、温度、押出速度等成形条件のバラツキにより安定した模様が得られないと言う欠点があった。
然しながら、本発明により、床材の主要構成層である合成樹脂層に、長さ及び太さが異なる繊維が方向性及び規則性をもたずに多方向に延び、且つ繊維同士が絡み合って大きさが様々な粗と密の空間を形成する不織布を張り合わせて一体化することにより、成形装置の諸元、成形条件、合成樹脂の配合、合成樹脂の溶融時の粘度等物性等に無関係に、いわゆる和紙調、大理石調あるいは、墨流し模様のような複雑な模様を、反復継続して簡単に表出することができるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材の基本構成層である合成樹脂層及び前記合成樹脂層の表面に接合一体化された不織布を含む層から構成された床材。
【請求項2】
前記不織布を含む層が、不織布の表面にクリア層を接合一体化したものであることを特徴とする請求項1に記載した床材。
【請求項3】
前記クリア層を着色したことを特徴とする請求項2に記載した床材。
【請求項4】
前記クリア層に繊維等各種材料の粉砕物を添加したことを特徴とする請求項2〜3のいずれか1項に記載した床材。

【公開番号】特開2010−19059(P2010−19059A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203597(P2008−203597)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】