説明

床用吸込具及び電気掃除機

【課題】ブラシ毛への髪の毛、糸くず等の絡みを可及的に減少させることのできる回転ブラシを具えた床用吸込具を提供する。
【解決手段】下面が開口したケーシング14の内部に回転可能に支持されるブラシ軸22と、該ブラシ軸22の周面に、軸心に対して平行又は螺旋状にブラシ毛31を植設してなるブラシ列30とを有する回転ブラシ20を具えた掃除機用の床用吸込具10において、回転ブラシ20の外周の一部又は全部を、ブラシ毛31の先端が出没可能な網目を有するネット部材40により覆った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機に接続される床用吸込具に関するものであり、具体的には、ブラシ軸にブラシ毛を植設した回転ブラシに髪の毛や糸くずを絡みにくくした床用吸込具及びこれを搭載した電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機に接続される床用吸込具には、絨毯やフローリング、畳等の床面に付着している埃や髪の毛等を掻き出して吸引できるように、回転ブラシを内蔵しているものがある。
回転ブラシは、床用吸込具のケーシングに回転自在又はモータによって強制的に回転させられるブラシ軸を具え、該ブラシ軸と平行又は螺旋状に1又は複数のブラシ毛を植設したブラシ列により、ゴミの掻き出し性能を高めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭62−116918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラシ毛によって掻き出された髪の毛や糸くずがブラシ毛に絡まったり、絡まった髪の毛や糸くずが回転ブラシに巻き付いてしまうことがあった。その結果、ブラシ毛の掻き出し性能の低下、回転ブラシの回転抵抗の増大、付着した髪の毛等による雑菌、異臭の発生、床用吸込具の吸込み能力の低下を招き、床用吸込具の清掃能力を低下させてしまうことがあった。
従来、このような場合、巻き付いた髪の毛、糸くずは、使用者がピンセット等を用いて手で取り除く必要があった。
【0005】
特許文献1では、巻き付いた髪の毛等を切断する刃体を内周に向けて突設したリングを、回転ブラシに嵌め込み、リングを軸方向にスライドさせて、刃体によって髪の毛等を切断するようにしている。しかしながら、ブラシ列間に架かる髪の毛等は切断できても、ブラシ毛自体に絡まった髪の毛等は切断されず、さらに、切断後の髪の毛等は、使用者がピンセット等を用いて手で取り除かなければならない手間は解消されていない。さらに、リングの操作も使用者が電気掃除機使用前又は使用後に自ら行なう必要があった。
【0006】
本発明は、ブラシ毛への髪の毛、糸くず等の絡みを可及的に減少させることのできる回転ブラシを具えた床用吸込具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の床用吸込具は、
下面が開口したケーシングの内部に回転可能に支持されるブラシ軸と、該ブラシ軸の周面に、軸心に対して平行又は螺旋状にブラシ毛を植設してなるブラシ列とを有する回転ブラシを具えた掃除機用の床用吸込具において、
回転ブラシの外周の一部又は全部を、ブラシ毛の先端が出没可能な網目を有するネット部材により覆った。
【0008】
ネット部材に代えて、ブラシ軸に、略矩形のシート部材であって、長辺の一方がブラシ列間にブラシ列と平行にブラシ軸に取り付けられ、短辺がブラシ毛よりも長いシート部材を取り付けることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床用吸込具によれば、ネット部材又はシート部材によって、髪の毛や糸くず等が回転ブラシ及び回転ブラシのブラシ毛に絡みつくことを防ぐことができ、絡みついた場合でも、回転ブラシの回転により生ずる遠心力及び電気掃除機の吸引力によって、ネット部材又はシート部材が外側に膨らみ、回転ブラシの見かけの外径が拡大するから、髪の毛等は回転ブラシに絡みにくくなる。
回転ブラシにネット部材を装着した場合、ブラシ毛に絡まった髪の毛がネット部材により鍬取られるため、より効果的に髪の毛等の付着を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の床用吸込具(10)は、電気掃除機に連結パイプや可撓性の連結ホースを介して着脱可能に装着される。所謂縦型掃除機の場合、電気掃除機に一体に構成される場合もある。
図1及び図2に示す床用吸込具(10)は、電気掃除機に連結パイプ等を介して着脱可能に取り付けられるタイプのものであり、連結パイプや連結ホースに着脱可能な接続パイプ(12)と、該接続パイプ(12)に上下及び左右に揺動可能に取り付けられたケーシング(14)から構成される。
ケーシング(14)は、内部が中空に構成され、左右に幅広い形状である。ケーシング(14)の下面には、吸込口(16)が開設されており、該吸込口(16)は、ケーシング(14)内部を通じて、接続パイプ(12)と連通している。
【0011】
ケーシング(14)の内部には、図1及び図2に示すように、回転ブラシ(20)が装着される。
回転ブラシ(20)は、図3に示すように、両端に軸受(23)(23)が取り付けられたブラシ軸(22)を具える。ブラシ軸(22)は、断面円形の中実部材であり、周面に取付筒(24)が一体回転可能に嵌められている。
取付筒(24)の外周面には、図2及び図3に示すように、軸方向に複数の凹部(25a)(25b)(25c)が形成されており、該凹部(25a)(25b)には、ブラシ毛(31)(35)が多数植設されたブラシ列(30)(34)と、ゴム製ブレード(37)が嵌まっている。
【0012】
符号(30)で示すブラシ列は、凹部(25a)に嵌まるゴム製のブラシ基板(32)に柔らかめのブラシ毛(31)を多数植設して形成されており、図示の回転ブラシ(20)では、夫々90度毎にブラシ列(30)が設けられている。
符号(34)で示すブラシ列も、凹部(25b)に嵌まるゴム製のブラシ基板(36)にブラシ毛(35)を植設したものであり、ブラシ毛(35)は、上記ブラシ列(30)のブラシ毛(31)よりも硬めの素材から形成されている。ブラシ列(34)は、上記ブラシ列(30)から45度ずれて、夫々ブラシ軸(22)の直径方向に対向する位置に取り付けられている。
ゴム製ブレード(37)は、ゴム製のブレード用基板(38)から垂直に突設される。ゴム製ブレード(37)は、ブラシ列(30)(30)間且つブラシ列(34)から90度ずれた位置に、夫々ブラシ軸(22)の直径方向に対向する位置に取り付けられている。
なお、回転ブラシ(20)に植設されるブラシ列(30)(34)の数、形状、硬さ、種類等は、上記実施例に限定されるものではなく、また、ゴム製ブレード(37)も必要に応じて設ければよい。
【0013】
本実施例では、凹部(25a)(25b)(25c)は、ブラシ軸(22)に対して螺旋状に形成しており、図1及び図3に示すように、ブラシ列(30)(34)及びゴム製ブレード(37)は、ブラシ軸(22)に対して捻れた状態で取り付けられている。ブラシ列(30)(34)及びゴム製ブレード(37)を螺旋状に形成したのは、電気掃除機に吸引された際に、回転ブラシ(20)の回転性能を高め、絨毯や床面からのゴミ、髪の毛等の掻き出し性能を向上させるためである。勿論、凹部(25a)(25b)(25c)をブラシ軸(22)に対して平行に形成してもよい。
【0014】
回転ブラシ(20)には、図1乃至図3に示すように、外周にネット部材(40)が嵌められている。ネット部材(40)は、ナイロン等から構成することができ、網目の大きさは、一辺が約2〜10mmとなるように形成することが望ましい。網目が2mmよりも小さいと、網目からブラシ毛(31)(35)が露出しにくくなり、ブラシ列(30)(34)による掻き出し性能が低下することがある。また、網目が10mmよりも大きくなると、髪の毛や糸くず等が網目から回転ブラシ(20)の内部に侵入して、ブラシ毛(31)(35)やブラシ軸(22)に絡まることがある。
【0015】
ネット部材(40)は、図1乃至図3に示すように、筒状に形成される。ネット部材(40)の直径は、回転ブラシ(20)と同じ又はそれよりも1〜3mm程度大きく形成される。回転ブラシ(20)とネット部材(40)の直径差が小さいほど、ネット部材(40)の回転により生ずるケーシング(14)との干渉や振動音を小さくできる。逆に、ネット部材(40)の直径が回転ブラシ(20)よりも大きいほど、ネット部材(40)による髪の毛等の絡み防止効果を高めることができる。なお、ネット部材(40)が伸縮性を有する場合には、回転ブラシ(20)の直径よりも小さい直径となるようにしてもよい。
ネット部材(40)の軸方向の長さは、ブラシ軸(22)のブラシ列(30)(34)が形成された部分よりも長く形成されている。
ネット部材(30)は、回転ブラシ(20)の外周に被さるように嵌められて、両端がブラシ軸(22)に回転自由に取り付け又は固定される。
【0016】
図3は、環状のリング(41)でネット部材(40)の両端をブラシ軸(22)に装着した例を示している。環状のリング(41)は、プラスチック等から構成され、一対のリング半体を、ネット部材(40)を挟んだ状態で、上下からブラシ軸(22)に取り付け、リング半体同士を固定することによって、ネット部材(40)が回転ブラシ(20)に装着される。リング(41)の内径は、ネット部材(40)が抜け落ちてしまわないように、ブラシ軸(22)の直径及びネット部材(40)の厚さに基づいて適宜決定すればよい。
図3の実施例の場合、ネット部材(40)は、リング(41)によってブラシ軸(22)に回転不能に固定される。
【0017】
筒状のネット部材(40)を嵌めた回転ブラシ(20)は、図1及び図2に示すように、回転ブラシ(20)の外周の一部が、床用吸込具(10)の吸込口(16)から下向きに突出するように、両端の軸受(23)(23)を床用吸込具(10)のケーシング(14)に固定することにより装着される。
【0018】
上記床用吸込具(10)を電気掃除機に接続し、電気掃除機を駆動すると、電気掃除機の吸引によって生ずる気流により、回転ブラシ(20)は、図4の矢印A方向に回転する。
回転ブラシ(20)に取り付けられたネット部材(40)は、電気掃除機の吸引力と、回転に伴う遠心力によって、図4の矢印Bに示すように、直径方向に膨らみつつ、回転ブラシ(20)と一体に回転する。
【0019】
この状態で、床用吸込具(10)を床面(80)に当接させると、回転ブラシ(20)は、図5に示すように、ネット部材(40)が床面(80)に沿って変形し、床面(80)に当たっているブラシ列(30)(34)の先端がネット部材(40)から露出した状態となる。
床用吸込具(10)を床面(80)に沿って前後動させると、ネット部材(40)から露出している回転ブラシ(20)のブラシ列(30)(34)によって、床面(80)の髪の毛、糸くず等を含むゴミが掻き出される。
【0020】
図6乃至図8は、回転ブラシ(20)の外周に、長い髪の毛(82)が絡んだ状態から、髪の毛(82)がネット部材(40)によって回転ブラシ(20)から除去されるメカニズムを示す図である。説明をわかりやすくするため、図6に示すように、予め、回転ブラシ(20)が回転していない状態で、髪の毛(82)を回転ブラシ(20)の外周に絡めている。
図6に示すように、回転ブラシ(20)の外周に髪の毛(82)が絡んでいる場合、電気掃除機を駆動すると、図7に示すように、ネット部材(40)が膨らむ。回転ブラシ(20)に巻き付いた髪の毛(82)は、ブラシ列(30)(34)に絡まっていても、ネット部材(40)の膨らみによる外径の拡大により、ブラシ列(30)(34)から鍬取られる。その結果、図8に示すように、電気掃除機の吸引力及び回転ブラシ(20)の回転によって、髪の毛(82)は、回転ブラシ(20)から離れて、電気掃除機に吸引される。
また、ネット部材(40)が膨らむことによって、回転ブラシ(20)の見かけの外径が拡大するから、髪の毛等は回転ブラシ(20)に絡みにくくなる。
【0021】
なお、ネット部材(40)の膨らみを大きくするために、ネット部材(40)は、伸縮方向が、回転ブラシ(20)に直交するように構成することが望ましい。具体的には、図9(a)に示すように、回転ブラシ(20)の軸方向に網目(42)の列が交差するようにネット部材(40)を構成することにより、ネット部材(40)は、図9(b)に示すように、軸方向に対して直交するように伸び、図6乃至図8に示す如く、ネット部材(40)の直径は、電気掃除機の駆動によって、回転ブラシ(20)から離れる方向に大きく拡大して、回転ブラシ(20)に絡んだ髪の毛(82)等を効果的に除去できる。
【0022】
以下、ネット部材(40)の取付方法の異なる実施例について図を用いて説明する。
図10は、ネット部材(40)の両端をゴム製のバンド(43)でブラシ軸(22)に固定した実施例である。
また、図11は、ネット部材(40)の両端に予めゴム製のバンド(43)を嵌めて、ネット部材(40)の端部を、バンド(43)が脱落しないように縫製、接着又は溶着した実施例である。ネット部材(40)は、バンド(43)が取り付けられた状態で回転ブラシ(20)に嵌めることができるから、ネット部材(40)の取付け及び交換を容易に行なうことができる。
【0023】
図12は、ブラシ軸(22)に嵌まる一部が開放した略C字状のリング(44)の外周にネット部材(40)を接着又は溶着により取り付けた実施例である。リング(44)の内径を調整することによって、ネット部材(40)を回転ブラシ(20)に対して回転不能としたり、回転自由とすることができる。ネット部材(40)を回転ブラシ(20)に対して回転自由とすることにより、ネット部材(40)が捻れても元に戻りやすい。
図13は、ブラシ軸(22)の両端を拡径し、ブラシ軸(22)に直接ネット部材(40)を接着又は溶着させた実施例である。
【0024】
図14乃至図16は、ネット部材(40)の中央に開口(45)を設け、該開口(45)から回転ブラシ(20)を嵌めることができるようにした実施例である。
図14及び図15に示すように、ネット部材(40)の両端には、ゴム製の環状プレート(46)が取り付けられている。環状プレート(46)は、内周側にブラシ軸(22)が嵌まる取付孔(47)が開設されており、ブラシ軸(22)への装着を容易にするために、取付孔(47)から外周方向に向けて放射状に複数の切欠き(48)が形成されている。ネット部材(40)は、環状プレート(46)の外周に接着又は溶着される。
ネット部材(40)の中央には、軸方向に開口(45)が形成されており、図14に示すように、開口(45)から回転ブラシ(20)を挿入し、一方の環状プレート(46)をブラシ軸(22)に通した後、ネット部材(40)の伸縮性を利用して、ネット部材(40)の内部に回転ブラシ(20)を挿入し、他方の環状プレート(46)をブラシ軸(22)に装着することにより、ネット部材(40)が回転ブラシ(20)に取り付けられる(図16)。
なお、床用吸込具(10)において、髪の毛や糸くずが絡みやすいのは、接続パイプ(12)からの吸引力が中央に比べて弱まる両端側であるため、ネット部材(40)に形成された開口(45)は、縫製等により閉じてもよいが、開口(45)を閉じなくても、回転ブラシ(20)への髪の毛等の絡みは防止できる。
【0025】
図17及び図18は、ネット部材(40)を、2つの筒状体(50)(50)から形成した実施例である。筒状体(50)は、夫々一端に上記図15に示した環状プレート(46)が取り付けられており、図19中矢印Cで示すように、各筒状体(50)は、開放側から回転ブラシ(20)に挿入し、環状プレート(46)をブラシ軸(22)に嵌めるようにしている。
図17は、筒状体(50)(50)が回転ブラシ(20)の略中央で重なるようにした実施例である。筒状体(50)(50)の重なり部分は、接着又は溶着等により互いにズレないようにすることが望ましいが、各筒状体(50)(50)の網目がブラシ毛に引っ掛かるため、接着等を行なわなくても、ズレは生じ難い。
図18は、筒状体(50)(50)が回転ブラシ(20)の略中央で重ならないようにした実施例である。回転ブラシ(20)の中央付近は、電気掃除機による吸引力が強いから、髪の毛等が絡みにくいため、吸引力の弱まる回転ブラシ(20)の両端側に筒状体(50)(50)を配置することで、髪の毛等の絡みを効果的に防止できる。
【0026】
<実施例2>
本実施例は、図20に示すように、シート状のネット部材(52)を回転ブラシ(20)に取り付けた実施例である。
ネット部材(52)は、図20に示すように、略平行四辺形に切断されており、一方の長辺に取付用の面ファスナー(54)が形成されている。図20において、ネット部材(52)を略平行四辺形としているのは、図21に示すように、回転ブラシ(20)に螺旋状にブラシ列(30)(34)を形成しているからである。回転ブラシ(20)に軸方向に平行にブラシ列を形成した場合には、ネット部材(52)は、略長方形とすることができる。なお、本明細書では、略平行四辺形、略長方形を含めて略矩形と称する。また、ネット部材(52)の長辺の自由端側は、直線に切断されている必要はなく、波形、円形又は中央側が凹んだ形状としてもよい。
【0027】
ネット部材(52)の短辺は、回転ブラシ(20)の外周長さよりも少し長く形成し、図23に示すように、回転ブラシ(20)に取り付けられたときに、ネット部材(52)の一部が周面方向で一部重なるようにすることが望ましい。
【0028】
図20に示すネット部材(52)は、図21に示す回転ブラシ(20)に取り付けられる。回転ブラシ(20)には、ブラシ列(30)(34)間にネット部材(52)を取り付けるための面ファスナー(27)が形成されており、ネット部材(52)の面ファスナー(54)を回転ブラシ(20)の面ファスナー(27)に貼り付け、ネット部材(52)を回転ブラシ(20)に巻回することにより、図22及び図23に示すように、ネット部材(52)が回転ブラシ(20)に着脱可能に装着される。面ファスナー(27)(54)を用いることによって、シート状のネット部材(52)は着脱可能となるから、ネット部材(52)の交換が可能となる。
ネット部材(52)は、図23に示すように、回転ブラシ(20)の回転方向Aに対して、逆向きに巻回されるように取り付けることが望ましい。回転方向Aに対して逆向きに巻き付けることによって、回転ブラシ(20)の回転に沿って回転ブラシ(20)と一体に回転するからである。
【0029】
図24乃至図26は、図23に示すシート状のネット部材(52)を取り付けた回転ブラシ(20)の外周に、長い髪の毛(82)が絡んだ状態から、髪の毛(82)がシート状のネット部材(52)によって回転ブラシ(20)から除去されるメカニズムを示す図である。説明をわかりやすくするため、図24に示すように、予め、回転ブラシ(20)が回転していない状態で、髪の毛(82)を回転ブラシ(20)の外周に絡めている。
図24に示すように、回転ブラシ(20)の外周に髪の毛(82)が絡んでいる場合、電気掃除機を駆動すると、図25に示すように、吸引力と回転(図中矢印A)による遠心力によって、ネット部材(52)が膨らむ(図中矢印B)。回転ブラシ(20)に巻き付いた髪の毛(82)は、ブラシ列(30)(34)に絡まっていても、ネット部材(52)の膨らみによる外径の拡大により、ブラシ列(30)(34)から鍬取られる。その結果、図26に示すように、電気掃除機の吸引力及び回転ブラシ(20)の回転によって、髪の毛(82)は、回転ブラシ(20)から離れて、電気掃除機に吸引される。
【0030】
なお、ネット部材(52)は、実施例1と同様の理由により、図20に示すように、伸縮方向が、回転ブラシ(20)に直交するように構成することが望ましい。
【0031】
図27は、シート状のネット部材(52)の異なる取付形態を示す図である。図27に示すように、ブラシ列(30)(34)が植設された取付筒(24)に、ブラシ列(30)(34)と平行にゴム製のブレード(37)を立設し、該ブレード(37)に接着、溶着又は縫製等により、シート状のネット部材(52)を取り付けている。
【0032】
図28は、2枚のシート状ネット部材(52)(52)をブラシ軸(22)に対して直径方向に対向する位置に取り付けた例を示している。
ネット部材(52)(52)は、回転ブラシ(20)に取り付けたときに、自由端側が夫々他方のネット部材と一部重なるように短辺長さが調整されている。
【0033】
図29乃至図31は、図28に示す2枚のシート状ネット部材(52)(52)を取り付けた回転ブラシ(20)の外周に、長い髪の毛(82)が絡んだ状態から、髪の毛(82)がシート状のネット部材(52)(52)によって回転ブラシ(20)から除去されるメカニズムを示す図である。説明をわかりやすくするため、図29に示すように、予め、回転ブラシ(20)が回転していない状態で、髪の毛(82)を回転ブラシ(20)の外周に絡めている。
図29に示すように、回転ブラシ(20)の外周に髪の毛(82)が絡んでいる場合、電気掃除機を駆動すると、図30に示すように、吸引力と回転による遠心力によって、ネット部材(52)(52)が膨らむ。回転ブラシ(20)に巻き付いた髪の毛(82)は、ブラシ列(30)(34)に絡まっていても、ネット部材(52)(52)の膨らみによる外径の拡大により、ブラシ列(30)(34)から鍬取られる。その結果、図31に示すように、電気掃除機の吸引力及び回転ブラシ(20)の回転によって、髪の毛(82)は、回転ブラシ(20)から離れて、電気掃除機に吸引される。
また、ネット部材(52)(52)の膨らみによって、回転ブラシ(20)の見かけの外径が拡大するから、髪の毛等は回転ブラシ(20)に絡みにくくなる。
【0034】
シート状のネット部材(52)(52)を2枚とすることにより、図30に示すように、ネット部材(52)(52)は、周方向2箇所で吸引力及び遠心力により外側に大きく膨らむから、髪の毛(82)等の除去効果を可及的に高めることができる。同様に、ネット部材(52)(52)の膨らみによって、回転ブラシ(20)の見かけの外径が拡大するから、髪の毛等は回転ブラシ(20)に絡みにくくなる。
【0035】
図32は、シート状のネット部材(52)(52)の異なる取付形態を示す図である。図32に示すように、ブラシ列(30)(34)が植設された取付筒(24)に、ブラシ列(30)(34)と平行にゴム製のブレード(37)(37)を互いにブラシ軸(22)の直径方向に対向する位置に立設し、ブレード(37)(37)に夫々接着、溶着又は縫製等により、シート状のネット部材(52)(52)を取り付けている。
【0036】
<実施例3>
実施例2では、網目を有するネット部材(40)(52)を回転ブラシ(20)に取り付けているが、図33に示すように、布やゴム、ビニール等からなるシート部材(60)を回転ブラシ(20)に取り付けてもよい。
シート部材(60)(60)は、略矩形(略平行四辺形)に切断され、一方の長辺に面ファスナー(54)が取り付けられており、回転ブラシ(20)側に取り付けられた面ファスナー(27)に、図34及び図35に示すように装着される。
図33乃至図35では、2枚のシート部材(60)(60)を回転ブラシ(20)に取り付けているが、1枚又は3枚以上のシート部材(60)(60)を取り付ける構成としてもよい。
【0037】
図36(a)の状態から電気掃除機を駆動すると、図36(b)に示すように、吸引力と回転(矢印A)による遠心力によって、シート部材(60)の自由端側が外側に膨らむ。その結果、回転ブラシ(20)に巻き付いた髪の毛は、ブラシ列(30)(34)から引き出され、電気掃除機の吸引に吸引される。また、シート部材(60)の膨らみによって、回転ブラシ(20)の見かけの外径が拡大するから、髪の毛等は回転ブラシ(20)に絡みにくくなる。
【0038】
図37に示すように、シート部材(60)(60)は、ブラシ列(30)(34)と平行に立設されたゴム製のブレード(37)(37)に夫々接着、溶着又は縫製等により取り付けてもよい。この場合も、図37(a)の状態から、電気掃除機の駆動により、図37(b)に示すように、回転ブラシ(20)が回転し(矢印A)、シート部材(60)(60)の先端が外側に広がり、回転ブラシ(20)の見かけの外径が拡大して、上記と同様に、回転ブラシ(20)に巻き付いた髪の毛を除去できる。
図36(b)と図37(b)とを比較すると、シート部材(60)の短辺の長さが同じ場合、ブレード(37)にシート部材(60)を取り付けた方が、シート部材(60)の回転による見かけの外径は大きくなるから、効果的に巻き付いた髪の毛を除去できることがわかる。
【0039】
上記何れの実施例においても、回転ブラシ(20)を一方向のみの回転だけでなく、逆回転させることにより、髪の毛等の除去効果を可及的に高めることができる。正逆回転は、使用者が床面に対して床用吸込具(10)を前後に動かすことによって行なうことができる。
また、床用吸込具(10)に回転ブラシ(20)を正逆回転させるモータを配備した場合には、回転ブラシ(20)を強制的に正逆回転させる構成としてもよい。なお、モータにより回転ブラシ(20)を正逆回転させる場合、電気掃除機の運転時には、回転ブラシ(20)を正転させ、運転終了時に数秒程度回転ブラシ(20)を逆転させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、回転ブラシに回転ブラシに髪の毛や糸くずを絡みにくくした床用吸込具及びこれを搭載した電気掃除機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のネット部材を装着した床用吸込具の下面図である。
【図2】図1の線X−Xに沿う矢視断面図である。
【図3】筒状のネット部材を装着した回転ブラシを示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図4】回転ブラシを回転させた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図5】回転ブラシを床面に接触させた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図6】回転ブラシに髪の毛が巻き付いた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図7】髪の毛の巻き付いたネット部材が膨らんだ状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図8】ネット部材の膨らみによって、髪の毛が回転ブラシから外れた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図9】(a)はネット部材の望ましい網目の向きを示す図であり、(b)は網目が軸方向に垂直な向きに広がった状態を示す図である。
【図10】筒状のネット部材の異なる取付形態を示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図11】筒状のネット部材の異なる取付形態を示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図12】筒状のネット部材の異なる取付形態を示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図13】筒状のネット部材の異なる取付形態を示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図14】中央に開口を有する筒状のネット部材の回転ブラシへの装着方法を示す図である。
【図15】図14のネット部材の右側面図である。
【図16】中央に開口を有する筒状のネット部材を回転ブラシに装着した状態を示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図17】2つの筒状体からなるネット部材を取り付けた回転ブラシを示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図18】2つの筒状体からなるネット部材を取り付けた回転ブラシを示す図であって、ネット部材の一部を断面して示す図である。
【図19】筒状体からなるネット部材の回転ブラシへの装着方法を示す図である。
【図20】略矩形のシート状ネット部材の平面図である。
【図21】シート状ネット部材を取り付ける回転ブラシの平面図である。
【図22】シート状ネット部材を取り付けた回転ブラシの平面図である。
【図23】シート状ネット部材を取り付けた回転ブラシを有する床用吸込具の断面図である。
【図24】回転ブラシに髪の毛が巻き付いた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図25】髪の毛の巻き付いたシート状ネット部材が膨らんだ状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図26】シート状ネット部材の膨らみによって、髪の毛が回転ブラシから外れた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図27】シート状ネット部材の異なる取付形態を示す床用吸込具の断面図である。
【図28】2枚のシート状ネット部材を回転ブラシに取り付けた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図29】回転ブラシに髪の毛が巻き付いた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図30】髪の毛の巻き付いたシート状ネット部材が膨らんだ状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図31】シート状ネット部材の膨らみによって、髪の毛が回転ブラシから外れた状態を示す床用吸込具の断面図である。
【図32】2枚のシート状ネット部材の異なる取付形態を示す床用吸込具の断面図である。
【図33】回転ブラシに取り付けられるシート部材の平面図である。
【図34】シート部材を取り付けた回転ブラシの平面図である。
【図35】図34の線Y−Yに沿う矢視断面図である。
【図36】(a)は2枚のシート部材を取り付けた回転ブラシの断面図であり、(b)は回転ブラシの回転によってシート部材が広がった状態を示す断面図である。
【図37】(a)は2枚のシート部材を取り付けた回転ブラシの断面図であり、(b)は回転ブラシの回転によってシート部材が広がった状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
(10) 床用吸込具
(20) 回転ブラシ
(22) ブラシ軸
(30) ブラシ列
(34) ブラシ列
(40) ネット部材
(52) シート状のネット部材
(60) シート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面が開口したケーシングの内部に回転可能に支持されるブラシ軸と、該ブラシ軸の周面に、軸心に対して平行又は螺旋状にブラシ毛を植設してなるブラシ列とを有する回転ブラシを具えた掃除機用の床用吸込具において、
回転ブラシの外周の一部又は全部を、ブラシ毛の先端が出没可能な網目を有するネット部材により覆ったことを特徴とする床用吸込具。
【請求項2】
ネット部材は、筒状に形成され、回転ブラシに嵌められる請求項1に記載の床用吸込具。
【請求項3】
ネット部材は、ブラシ軸に対して回転可能又は固定されるように支持されている請求項2に記載の床用吸込具。
【請求項4】
ネット部材は、回転ブラシの軸方向に開口を有しており、該開口から回転ブラシを挿入して、ネット部材を回転ブラシに装着できる請求項2又は請求項3に記載の床用吸込具。
【請求項5】
ネット部材は、2つの筒状体から構成され、各筒状体は、一方の端部が、ブラシ軸に夫々回転可能又は固定されるように支持されている請求項2に記載の床用吸込具。
【請求項6】
筒状体は、回転ブラシの軸方向中央側で、他方の筒状体に重なっている請求項5に記載の床用吸込具。
【請求項7】
筒状体は、回転ブラシの軸方向中央側が、他方の筒状体に重ならないように配置される請求項5に記載の床用吸込具。
【請求項8】
ネット部材は、略矩形であり、長辺の一方がブラシ列と平行にブラシ軸に取り付けられている請求項1に記載の床用吸込具。
【請求項9】
ネット部材は、ブラシ軸に着脱可能である請求項8に記載の床用吸込具。
【請求項10】
ネット部材は、複数であり、少なくとも一対はブラシ軸の直径方向に対向した位置に配備される請求項8又は請求項9に記載の床用吸込具。
【請求項11】
ネット部材は、短辺が回転ブラシの最大外周長さよりも長い請求項8又は請求項9の何れかに記載の床用吸込具。
【請求項12】
ネット部材は、網目が回転ブラシの周方向に伸縮可能となる方向に取り付けられる請求項1乃至請求項11の何れかに記載の床用吸込具。
【請求項13】
下面が開口したケーシングの内部に回転可能に支持されるブラシ軸と、該ブラシ軸の周面に、軸心に対して平行又は螺旋状にブラシ毛を植設してなるブラシ列とを有する回転ブラシを具えた掃除機用の床用吸込具において、
ブラシ軸に、略矩形のシート部材であって、長辺の一方がブラシ列間にブラシ列と平行にブラシ軸に取り付けられ、短辺がブラシ毛よりも長いシート部材を取り付けたことを特徴とする床用吸込具。
【請求項14】
シート部材は、複数であり、少なくとも一対は、ブラシ軸の直径方向に対向した位置に配備される請求項13に記載の床用吸込具。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14の何れかに記載の床用吸込具を着脱可能又は一体に具える電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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