説明

床面養生フィルム

【課題】 住宅等の施工時の床面の汚れ防止用に使用される床面養生フィルムに関し、展張する際に床面とフィルムの間に空気層が発生することなく容易に展張が行え、フィルム表面が雨水などで濡れても足下が滑りにくい床面養生フィルムを提供すること。
【解決手段】 表面に凹凸が形成されていて、裏面に粘着剤が塗布されている合成樹脂フィルムからなる床面養生フィルムにおいて、粘着剤が、長手方向に連続した粘着剤の非塗布部3が両側部2を除いて適宜間隔で形成されるように、塗布されていることを特徴とする床面養生フィルム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の施工時に、床面の汚れ防止に使用される床面養生フィルムに関し、詳しくは床面への展張が容易に行え、床面と密着性が良く床面への雨水や異物などの進入を防止できて、さらにフィルム表面が濡れていても足下が滑り難い床面養生フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の施工時には、作業者の靴に付着した土や雨水、部材の破片などの異物によって床面が汚れたり傷付いたりしないようにするための養生材が使用されている。特許文献1には、パルプ紙、合成樹脂シート、あるいは布などのシート本体の片面に、接着剤が点在する塗布部を形成した養生シートが提案されているが、接着剤が点在するように塗布されているので、接着剤が塗布されていない部分から雨水や土などの異物が床面に侵入することを防止することは不可能であった。
【0003】
また、特許文献2には、合成樹脂シートの表面に多数の凹凸が形成され、床面と接する合成樹脂シートの裏面全面に粘着剤が塗布された滑り止め養生シートが提案されている。この場合、合成樹脂フィルムの表面に多数の凹凸が形成されているので、シート表面が雨水で濡れていても足下が滑り難く、作業者が安全に施工作業を行うことができる。また、床面と接する合成樹脂シートの裏面全面に粘着剤が塗布されているのでシートと床面の間に雨水や土などの異物が侵入することがない。
ところが、床面と接する全面に粘着剤が塗布された養生シートを床面に展張する場合、床面と養生シートの間に空気が残り易く、空気が残った箇所は養生シートが床面に密着しないので作業者がこの部分を歩くと養生シートが捩られて破れ易く、破れた部分から雨水や土など異物の侵入の原因となっていた。しかも、一度床面との間に空気が残ってしまうと、養生シートを展張した後で空気を完全に排出することは非常に困難であった。また、床面と養生シートの間に空気が残らないように展張するには、数人がかりで空気を排出しながら少しずつ床面に密着させる必要があり、作業効率が非常に悪いという問題があった。さらにまた、養生シートにシワが入りやすく、真っ直ぐに展張し難いという問題もあった。
【0004】
【特許文献1】実願昭55−189816号(実開昭57−111944号のマイクロフィルム)
【特許文献2】実用新案登録第2599811号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を鑑みなされたもので、床面とフィルムの間に空気層が発生することなく容易に展張が行え、床面との密着性が良く床面とフィルムの間に土や雨水などの異物が侵入することがない、さらに、フィルムの表面が雨水などで濡れていても足下が滑りにくい床面養生フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、粘着剤を長手方向にストライブ状に塗布して、非塗布部を設けることで上記課題が解決された床面養生フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明によれば、
表面に凹凸が形成されていて、裏面に粘着剤が塗布されている合成樹脂フィルムからなる床面養生フィルムにおいて、粘着剤が、長手方向に連続した粘着剤の非塗布部3が両側部2を除いて適宜間隔で形成されるように、塗布されていることを特徴とする床面養生フィルム1が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の床面養生フィルム1は表面に凹凸が形成されているので、表面が雨水などで濡れていても足下が滑りにくい。また、裏面の両側部には粘着剤が塗布されているので雨水や土などの異物が床面とフィルムの間に侵入することがないばかりか、長手方向に連続した粘着剤の非塗布部3が適宜間隔で形成されているので、展張時に粘着剤の非塗布部3からフィルムと床面の間の空気が排出できるので施工性が向上するばかりか、空気が溜まらないので捩れて養生フィルムが破れるという問題がないという効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の床面養生フィルム1を具体的に説明する。
本発明の床面養生フィルム1に使用される合成樹脂フィルムとしては特に限定されるものではないが、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどの従来公知の合成樹脂フィルムが使用できる。また、床面養生フィルム1を透明あるいは半透明とした場合に、フィルム越しに床面の墨うちなどの表示の位置を確認することができるので好ましい。
【0009】
また、本発明の床面養生用フィルム1の表面には凹凸が形成されている。この凹凸は作業者の足下の滑り止めの役割を果たすものである関係上、フィルムの全面に渡ってある程度以上の密度で存在することが必要であり、例えば、1平方センチメートル当たり10個以上設けるのが望ましい。
また、凹凸の形状は、滑りを防止できるものであれば特に限定されないが、凹凸の凸部が高ければ高いほど有効である。好ましい凸部の高さとしてはフィルムの表面からの高さがフィルム厚みの1/3以上程度あるのが好ましい。
このような、凹凸を形成する方法としては、特に制限はないが、通常のエンボスフィルムを製造する方法を適用するのが好ましい。
【0010】
本発明の床面養生フィルム1の裏面には、土や雨水などの異物が床面に入るのを防止することと、歩行の度に養生フィルムが移動して隙間が生じるのを防止するために粘着剤が塗布されている。
本発明においては、この粘着剤が、長手方向に連続した粘着剤の非塗布部3が両側部2を除いて適宜間隔で形成されるように、塗布されている点に最大の特徴を有するものである。該粘着剤の非塗布部3は、床面養生フィルム1を展張する際に床面とフィルムの間から空気を排出する経路として機能するため、長手方向に連続していること、空気が排出可能な幅で形成されていることが必要である。また、粘着剤の非塗布部3の形状としては特に制限はなく、例えば、図1(A)、(B)、(C)に示したように、直線状や波状、山形状になるように形成すれば良い。尚、図1において白抜き部が非塗布部3に、網掛け部が塗布部4を示している。
【0011】
この、粘着剤の非塗布部3の幅は、展張時に空気が通る程度であれば特に制限はないが1mm以上、5cm以下とするのが好ましい。幅が1mm未満では空気が通りにくく、5cmを超えると非塗布部3の面積が大きくなるので捩れて破れやすくなるので好ましくない。また、非塗布部3を設ける間隔については、両側部2に非塗布部3を設けないこと以外、特に制限はなく、また養生フィルム1の幅によっても異なるが通常等間隔で10本/m以上、好ましくは50本/m以上設けられる。なお、非塗布部3と塗布部4の面積比を適宜選択することによって床面への密着性、使用後の剥離性(引き剥がし易さ)をコントロールできるという効果も有している。
【0012】
更に、前記のように本発明の床面養生用フィルム1にの両側部2には粘着剤が塗布されている必要がある。特に、両側部2は広幅で、具体的には3〜20cm程度の幅で粘着剤が帯状に塗布されていることが好ましい。両側部2に粘着剤が塗布されているので、非塗布部3が存在しても特許文献1とは異なり、フィルムの側端から異物が浸入することが防止できると共に、展張する場所に対してフィルム幅が狭い場合にはフィルムの側端部を重ね合わせながら展張する必要があるが、その際に粘着剤が広幅に塗布されているフィルム1が上側に位置するようにして重ね合わせることにより、フィルム同士の密着性がより強固になり、重ね合わせ部分から雨水や土などの異物が侵入することも防止できるのである。
なお、重ね合わせた際のフィルム同士の密着性をより向上させるために、側部2には他の部分より粘着剤の塗布量を多くしても良いし、より粘着力の強い粘着剤を塗布しても良い。
【0013】
粘着剤は従来公知のものを使用することが可能であるが、床面に確実に密着することが可能な粘着力を持ち、施工後にフィルムを除去する際には粘着剤が床面に残留しない粘着剤を使用しなければならない。このような粘着剤としては、アクリル系粘着剤を例示することができる。また、粘着剤を塗布する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いれば良い。
【実施例】
【0014】
厚み80μm、幅1mの低密度ポリエチレン製の透明フィルムにエンボスロールで全面に幅方向に2mm間隔、長手方向に1mmピッチで、直径0.2mm、高さ100μmの円錐状の形状をした凸部有する凹凸を形成した。次いで、裏面に両側部2の塗布幅が40mm、その他の箇所は非塗布部3の幅が3mm、塗布部4の幅が2mmとなるように、長手方向に連続してアクリル系粘着剤を塗布して図2に示す床面養生フィルム1を得た。
こうして得られた床面養生フィルム1を、粘着剤の塗布面が内側になるようにしてロール状に巻き取ったところ、粘着剤の塗布面に剥離紙などを使用しなくても軽い力で巻き戻すことが可能であった。
【0015】
床面養生フィルム1を床面に展張する際に、フィルムの長手方向に沿って押し出すようにしながら床面に密着させることにより、一人で展張作業を行ってもシワが入ることなく、床面とフィルムの間の空気を容易に排出することができた。また、床面養生フィルム1は剥離することすることなく、床面とフィルムの密着性が良好で、土や雨水などの異物が侵入することがなかった。また、継ぎ合わせて展張するために側部同士を重ね合わせたが、両側部2の粘着剤の塗布幅が広いため継ぎ目からも土や雨水などの異物が侵入することがなかった。
さらに、床面養生フィルム1の張り直しが容易に行え、使用後は粘着剤が床面に残ることなく除去することが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の床面養生フィルム1の粘着剤塗布面の概略平面図(A)、(B)、(C)である。
【図2】図2は本発明の床面養生フィルム1の一実施例を示す、粘着剤塗布面の平面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 床面養生フィルム
2 フィルム側部
3 粘着剤の非塗布部
4 粘着剤の塗布部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸が形成されていて、裏面に粘着剤が塗布されている合成樹脂フィルムからなる床面養生フィルムにおいて、粘着剤が、長手方向に連続した粘着剤の非塗布部3が両側部2を除いて適宜間隔で形成されるように、塗布されていることを特徴とする床面養生フィルム1。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−9250(P2006−9250A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183364(P2004−183364)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)