説明

座ぐり調整頭

【課題】硬質木材のような表層材であっても、ねじの頭部が表層材へスムーズに沈み込むことを可能とし、ねじ込みの過多によるねじ頭部の沈み込み過ぎを作業者が意識することなく、座ぐり調整頭によって制御することができるねじの頭部を提供する。
【解決手段】座ぐり調整頭は、頂面となるフランジ部7と、底面集塵溝13及び底面峰14からなる底面9と、側面集塵溝15及び側面峰16からなる側面11から構成されることによって、表層材を緊密に留め付けることができ、かつ、前記底面及び前記側面の傾斜角を調整することによって、硬質木材の硬さに合わせた留め付けを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型商業施設等に設置される硬質木材製デッキフロアーやプールサイドのデッキフロアーの施工に利用される硬質な木材で出来た表層材であっても、緊密に留め付けることを可能とするねじの座ぐり調整頭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質な木材でできた表層材は、大型商業施設等に設置される硬質木材製デッキフロアーやプールサイドのデッキフロアーの施工に利用され、施工の際、表層材A1を下地材A2に留め付ける手段としてねじが用いられている。
【0003】
従来、このような表層材A1を下地材A2に留め付けるねじとして、図13(A)に示す非特許文献に記載の皿木ねじ(100)が一般的に知られている。
【0004】
皿木ねじ(100)を使用し、表層材A1を下地材A2に留め付ける場合、締結後に前記皿木ねじの頭部(101)を表層材A1と面一にするため、図13(B)の(イ)に示すように、まず座ぐり専用工具(102)を用いて、前記頭部(101)が表層材A1に収まるように座ぐりし、図13(B)の(ロ)に示すように、図13(B)の(イ)で座ぐりした穴(103)に前記皿木ねじ(100)を留め付けるという二工程で作業が行われていたため、非常に手間がかかり、作業効率が著しく低下していた。
【0005】
そこで、作業効率の低下を解消するねじとして、図14(A)に示す頭部(201)の座面(202)に切削刃(203)を設けたフレキ頭と呼ばれる頭部を有するねじ(200)がある。
【0006】
前記フレキ頭と呼ばれる頭部を有するねじ(200)は、図14(A)に示すように、前記座面(202)にフレキと呼ばれる前記切削刃(203)を設けており、図14(B)の(イ)に示すように、表層材A1へのねじ込み時、前記切削刃(203)は、表層材A1を削り取り、前記頭部(201)自体で座ぐりしながら表層材A1へと進入していくため、締結完了時、前記頭部(201)は表層材A1と面一の状態となる。
【0007】
しかしながら、図14(B)の(ロ)に示すように、前記切削刃(203)によって座ぐりした際に発生する切り屑D及び排出された切り屑Eは、前記頭部(201)の表層材A1への進入に巻き込まれ、締結完了時、表層材A1と前記頭部(201)の隙間に挟まった状態となり、表層材A1と前記頭部(201)の隙間に挟まった座ぐりした際に発生する切り屑Dが表層材A1の表面にトゲの様に残ってしまっていた。
【0008】
また、表層材A1は硬質な木材であるため、前記切削刃(203)による座ぐりの際の硬質木材の毛羽立ちも発生していた。
【0009】
このような前記フレキ頭と呼ばれる頭部を有するねじ(200)を使用し、プールサイドのデッキフロアーを施工した場合、表層材Aと前記頭部(201)の隙間に挟まった座ぐりした際に発生する切り屑Dによるトゲや硬質木材の毛羽立ちにより足を怪我するといった問題があった。
【0010】
そこで、図15(A)に示す特許文献1のねじの頭部構造が提案されている。
【0011】
特許文献1の頭部構造を持つねじ(300)は、図15(A)に示すように、頭部(301)の外周に排出部(302)を設け、前記頭部(301)の最大外径寄りの位置に座ぐり用の外側切り刃(303)を設け、前記排出部(302)と対応した軸部(304)のテーパ部(305)の位置に内側切り刃(306)を設けた構成であり、図15(B)の(イ)に示すように、前記テーパ部(305)の進入中、内側切り刃(306)と外側切り刃(303)の切削軌跡が一致することで、削り残しの発生がなく、前記排出部(302)によって、前記頭部(301)の外周に切り屑Dを完全に排出させることができるというものである。
【0012】
しかしながら、特許文献1の前記頭部構造を持つねじ(300)は、前記内側切り刃(306)と前記外側切り刃(303)の座ぐりした際に発生する切り屑Dが、図15(B)の(イ)に示すように完全に排出されるため、表層材A1と前記頭部(301)の間の摩擦抵抗が増加せず、表層材A1の表面と前記頭部(301)上面が面一になった後も、前記外側切り刃(303)及び前記内側切り刃(306)は座ぐりを続けながら表層材A1へ進入し続け、図15(B)の(ロ)に示すように、ねじ込みの過多により表層材A1に凹み溝を形成してしまうという問題があった。
【0013】
このような前記頭部構造を持つねじ(300)を大型商業施設等に設置される硬質木材性デッキフロアーやプールサイドのデッキフロアーの施工に使用した場合、ねじ込みの過多により表層材A1に前記頭部(301)が沈み込むことでできた凹み溝は、外観を損なうだけでなく、雨水等の水が溜まることで常時湿潤状態となり、ねじを錆びさせたり、表層材A1の腐食を促進させてしまう原因になっていた。
【0014】
そのため、作業者は、ねじの頭部と表層材A1の表面を面一にするため、ねじの締め付け力を調整しながらねじ締めを行わなければならず、非常に手間がかかり、面倒なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許4283082号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】JIS B1112 付表2 皿木ねじ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明の課題は、硬質木材のような表層材であっても、ねじの頭部が表層材へスムーズに沈み込むことを可能とし、ねじ込みの過多によるねじ頭部の沈み込み過ぎを作業者が意識することなく、座ぐり調整頭によって制御することができるねじの頭部を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、ねじ山を有する軸部の一端に尖鋭部を設け、他端に工具係合部を有する頭部を設けたねじにおいて、前記頭部は、前記頭部の頂面となるフランジ部と、前記フランジ部と前記ねじ山の間に位置し前記軸部の軸心とほぼ直交する、前記軸部よりも大径であって前記フランジ部よりも小径である多角形状の底面と、前記底面の外周縁から前記フランジ部側に向かってほぼ垂直に立設されて、前記フランジ部よりも小径である側面からなり、前記底面は、前記外周縁の隣合う各頂点と前記軸心を結んだ各領域を前記フランジ部側に陥没させることによって形成される底面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記軸心を結んでなる底面峰からなり、前記側面は、前記外周縁の前記各頂点間の各辺が前記軸心側に凹まされて弧状となることによって形成される側面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記側面の上端を結んでなる側面峰からなることを特徴とする座ぐり調整頭を設けた構成としたものである。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記底面峰の頂部と前記側面峰の頂部を平坦に形成することで切削刃としたことを特徴とする請求項1に記載の座ぐり調整頭を設けた構成としたものである。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記フランジ部と前記側面との接合部に前記側面の前記上端よりもやや大径で前記側面を取り囲むようにして前記フランジ部裏面から前記尖鋭部側に僅かに突出した段差部を設けた請求項1または2に記載の座ぐり調整頭を設けた構成としたものである。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の前記座ぐり調整頭は、前記底面と、前記側面と、前記フランジ部を有し、前記底面は、前記底面峰と、前記底面集塵溝を設け、前記側面は、前記側面峰と前記側面集塵溝を設けたことを特徴とする座ぐり調整頭の構成とすることによって、従来のようにねじの頭部と表層材の表面を面一にするために座ぐりを行うことなく、かつ、ねじの締め付け力を調整しながらねじ締めを行う必要がなく、硬質木材のような表層材であっても、ねじの頭部が表層材へ沈み込むことを可能とし、ねじ込みの過多によるねじの頭部の沈み込み過ぎを作業者が意識することなく、座ぐり調整頭によって制御することができる。
【0022】
また、前記底面峰に前記底面切削刃と、前記側面峰に前記側面切削刃を設けることにより、表層材をスムーズに座ぐりすることができ、硬質木材独特の毛羽立ちをより防ぐことが出来る。
【0023】
そして、前記フランジ部と前記側面との接合部に段差部を設けることによって、前記底面から前記側面に流れ込む切り屑C及び前記側面によって座ぐりした際に発生する切り屑Dは前記段差部にぶつかることで前記フランジ部側への流出が抑制され、前記底面集塵溝及び前記側面集塵溝は、確実に底面に留まる切り屑B´及び側面に留まる切り屑D´によって埋め尽くされ、前記底面峰と前記側面峰は、底面に留まる切り屑B´によって埋められた前記底面集塵溝と側面に留まる切り屑D´によって埋められた前記側面集塵溝と同じ高さとなるため、前記底面峰と前記側面峰の突出による座ぐり効果は失われ、座ぐりすることを止めるので、従来のようにねじの頭部と表層材の表面を面一にするため、ねじの締め付け力を調整しながらねじ締めを行わなくてもよく、硬質木材のような表層材であっても、ねじの頭部が表層材へ沈み込むことを可能としつつ、ねじ込みの過多によるねじの頭部の沈み込み過ぎを作業者の調整で行わずとも、制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は、本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじの正面図を示し、(B)は、本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじの底面図を示すものである。
【図2】(イ)は、本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじのねじ山の進入時を示し、(ロ)は、本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじの底面の進入時を示し、(ハ)は、本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじの側面の進入時を示し、(ニ)は、本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじの締結完了時を示すものである。
【図3】図2の(ハ)の座ぐり調整頭の拡大斜視図を示すものである。
【図4】図2の(ニ)の座ぐり調整頭の拡大斜視図を示すものである。
【図5】本願発明の実施例1の他の実施例である座ぐり調整頭を有したねじの拡大底面図を示すものである。
【図6】(A)は、本願発明の実施例2の座ぐり調整頭を有したねじの正面図を示し、(B)は、本願発明の実施例2の座ぐり調整頭を有したねじの底面図を示すものである。
【図7】本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじ及び実施例2の座ぐり調整頭を有したねじの頭部拡大斜視図を示すものである。
【図8】(a)は、本願発明の実施例3の座ぐり調整頭を有したねじの拡大底面図を示し、(b)は、本願発明の実施例4の座ぐり調整頭を有したねじの拡大底面図を示すものである。
【図9】本願発明の実施例3の前記座ぐり調整頭を有したねじにおける、側面進入時における座ぐり調整頭の拡大斜視図を示すものである。
【図10】本願発明の実施例3の前記座ぐり調整頭を有したねじのより好ましい形状の、側面進入時における座ぐり調整頭の拡大斜視図を示すものである。
【図11】(A)は、本願発明の実施例5の前記座ぐり調整頭を有したねじの正面図を示し、(B)は、本願発明の実施例5の座ぐり調整頭を有したねじの底面図を示すものである。
【図12】(A)は、本願発明の実施例6の前記座ぐり調整頭を有したねじの正面図を示し、(B)は、本願発明の実施例6の座ぐり調整頭を有したねじの底面図を示すものである。
【図13】(A)は、非特許文献に記載の皿木ねじの正面図であり、(B)の(イ)は、座ぐり用専用工具で座ぐりを行う工程を示し、(B)の(ロ)は、座ぐりした穴に皿木ねじを留め付ける工程を示すものである。
【図14】(A)は、フレキ頭と呼ばれる頭部を有するねじの正面図であり、(B)の(イ)は、頭部座面の切削刃の進入時を示し、(B)の(ロ)は、フレキ頭と呼ばれる頭部を有するねじの締結完了時を示すものである。
【図15】(A)は、特許文献1の頭部構造を持つねじの正面図であり、(B)の(イ)は、テーパ部の内側切り刃の進入時を示し、(B)の(ロ)は、特許文献1の頭部構造を持つねじの締結完了時を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願の請求項1に記載の発明は、ねじ山を有する軸部の一端に尖鋭部を設け、他端に工具係合部を有する頭部を設けたねじにおいて、前記頭部は、前記頭部の頂面となるフランジ部と、前記フランジ部と前記ねじ山の間に位置し前記軸部の軸心とほぼ直交する、前記軸部よりも大径であって前記フランジ部よりも小径である多角形状の底面と、前記底面の外周縁から前記フランジ部側に向かってほぼ垂直に立設されて、前記フランジ部よりも小径である側面からなり、前記底面は、前記外周縁の隣合う各頂点と前記軸心を結んだ各領域を前記フランジ部側に陥没させることによって形成される底面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記軸心を結んでなる底面峰からなり、前記側面は、前記外周縁の前記各頂点間の各辺が前記軸心側に凹まされて弧状となることによって形成される側面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記側面の上端を結んでなる側面峰からなることを特徴とする座ぐり調整頭を設けた構成としたものである。
【0026】
請求項2に記載の発明は、前記底面峰の頂部と前記側面峰の頂部を平坦に形成することで切削刃としたことを特徴とする請求項1に記載の座ぐり調整頭を設けた構成としたものである。
【0027】
請求項3に記載の発明は、前記フランジ部と前記側面との接合部に前記側面の前記上端よりもやや大径で前記側面を取り囲むようにして前記フランジ部裏面から前記尖鋭部側に僅かに突出した段差部を設けた請求項1または2に記載の座ぐり調整頭を設けた構成としたものである。
【実施例1】
【0028】
以下、この発明の実施例を図示に基づいて説明する。
【0029】
図1乃至図4は、本願発明の第1の実施例である座ぐり調整頭を有したねじ(1)を示したものである。
【0030】
図1は、本願発明の第1の実施例である前記座ぐり調整頭を有したねじ(1)の正面図及び底面図であり、ねじ山(2)を有する軸部(3)の一端に尖鋭部(4)を設け、他端に工具係合部(5)を有する頭部(6)を設けている。
【0031】
このとき、前記ねじ山(2)、前記尖鋭部(4)、及び前記工具係合部(5)は一般的な木ねじの形状であれば良く、何ら限定されるものではない。
【0032】
前記頭部(6)は、前記頭部(6)の頂面となるフランジ部(7)と、前記フランジ部(7)と前記ねじ山(2)の間に位置し前記軸部(3)の軸心(8)とほぼ直交する、前記軸部(3)よりも大径であって前記フランジ部(7)よりも小径である多角形状の底面(9)と、前記底面(9)の外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かってほぼ垂直に立設されて、前記フランジ部(7)よりも小径である側面(11)からなる。
【0033】
前記底面(9)は、前記軸心(8)と直交または前記尖鋭部(4)の方向に0度から45度の範囲αで傾斜させることにより、前記底面(9)に留まる切り屑B´の量を調整することができる。
【0034】
すなわち、前記底面(9)は、前記尖鋭部(4)の方向に傾斜する範囲が大きいほど、図2の(ロ)で示す様に、前記底面(9)の進入の際、前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bのうち、前記底面(9)に留まる切り屑B´は多くなり、前記底面部(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは少なくなる。
【0035】
よって、表層材A1の硬さに合わせて、前記底面(9)に留まる切り屑B´を調整することができるので、表層材A1が座ぐりをほとんど必要としない比較的柔らかめの木材に対しては前記底面(9)を前記軸心(8)と直交させることで、前記底面(9)に留まる切り屑B´が少なくなり、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは多くなるので、座ぐり可能時間を短くすることができ、反対に、表層材A1が十分に座ぐりを行わなければねじ頭部を面一にすることが困難な比較的硬めの木材に対しては、前記底面(9)を前記尖鋭部(4)の方向に0度から度45の範囲αで傾斜させることで、前記底面(9)に留まる切り屑B´が多くなり、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは少なくなるので、座ぐり可能時間を長くすることができる。
【0036】
前記側面(11)は、前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かって垂直または0度から15度の範囲βで拡径するように立設することで、前記側面(11)に留まる切り屑D´の量を調整することができる。
【0037】
例えば、前記側面(11)を、前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かって垂直に立設すれば、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは、垂直方向に排出され、一様に前記フランジ部(7)裏面まで上昇した後、前記フランジ部(7)に打ち当たって、前記軸部(3)の面外方向へ押し出され、略半数の前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは、鉛直方向へと跳ね返される。
【0038】
そして、前記側面(11)を、前記フランジ部(7)側に向かって0度から15度の範囲βで拡径するように立設すれば、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dは、前記フランジ部(7)に打ち当たらず、前記側面(11)に打ち当たり、飛散し、前記側面(11)に留まる切り屑D´や表層材A1から排出される切り屑Eとなる。
【0039】
ちなみに、前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かって拡径する範囲が大きいほど、図2の(ハ)で示す、前記側面(11)の進入の際、前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dのうち、前記側面(11)に留まる切り屑D´は少なく、表層材A1から排出された切り屑Eが多くなることとなる。
【0040】
よって、表層材A1の硬さに合わせて、前記側面(11)に留まる切り屑D´を調整することができるので、表層材A1が座ぐりをほとんど必要としない比較的柔らかめの木材に対しては、前記側面(11)を前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かって垂直に立設させることで、前記側面(11)に留まる切り屑D´を多くし、座ぐり可能時間を短くすることができ、反対に、表層材A1が十分に座ぐりを行わなければねじ頭部を面一にすることが困難な比較的硬めの木材に対しては、前記側面(11)を前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かって拡径する範囲βを0度から15度に設定し、拡径範囲を大きくすることで前記側面(11)に留まる切り屑D´を少なくし、座ぐり可能時間を長くすることができる。
【0041】
なお、好ましくは、前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かって3度から10度の範囲で拡径するときであり、より確実に、前記側面(11)に留まる切り屑D´の量を調整することができる。
【0042】
次に、前記底面(9)は、前記外周縁(10)の隣合う各頂点(a)と前記軸心(8)を結んだ各領域(12)を前記フランジ部(7)側に陥没させることによって形成される底面集塵溝(13)と、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)と前記軸心(8)を結んでなる底面峰(14)からなることで、各前記底面峰(14)が前記各領域(12)よりも前記尖鋭部(4)側に突出し、表層材A1を座ぐりすることができ、さらには、前記底面集塵溝(13)は、前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bを収容するスペースとなる。
【0043】
そして、前記各領域(12)を前記フランジ部(7)側へ陥没させ、その浅深を調節することによって、前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bを収容するスペースを調整することができる。
【0044】
よって、前記底面集塵溝(13)を調節することで表層材A1の硬さに合わせて、前記底面集塵溝(13)への前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bの収容量を調整することができるので、表層材A1が座ぐりをほとんど必要としない比較的柔らかめの木材に対しては、前記各領域(12)を前記フランジ部(7)側へ浅く陥没させて、前記底面集塵溝(13)を浅くし、前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bの収容スペースを狭くすることにより、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは多くなるので、座ぐり可能時間を短くすることができ、反対に、表層材A1が十分に座ぐりを行わなければねじ頭部を面一にすることが困難な比較的硬めの木材に対しては、前記各領域(12)を前記フランジ部(7)側へ深く陥没させて、前記底面集塵溝(13)を深くし、前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bの収容スペースを広くすることにより、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは少なくなるので座ぐり可能時間を長くすることができる。
【0045】
なお、前記底面峰(14)は、前記各頂点(a)から前記軸心(8)に向かって形成されているため、前記各領域(12)の前記フランジ部(7)側への陥没具合の浅深に伴って、各前記底面峰(14)の突出量も変化し、前記各領域(12)の前記フランジ部(7)側への陥没深さが浅いほど、各前記底面峰(14)の突出量は少なくなり、前記各領域(12)の前記フランジ部(7)側への陥没深さが深いほど、各前記底面峰(14)の突出量は多くなる。
【0046】
つまり、前記各領域(12)を前記フランジ部(7)側へ浅く陥没させて、前記底面集塵溝(13)を浅くすることで、前記底面(9)で座ぐりした際に発生する切り屑Bの収容スペースを狭くするだけでなく、各前記底面峰(14)の突出量を少なくすることができ、反対に、前記各領域(12)を前記フランジ部(7)側へ深く陥没させて、前記底面集塵溝(13)を深くすることで、前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bの収容スペースを広くするだけでなく、各前記底面峰(14)の突出量を多くすることができ、切削能力の向上を図ることができる。
【0047】
このように、各前記底面峰(14)が前記各領域(12)よりも前記尖鋭部(4)側に突出した形状となるので、各前記底面峰(14)が先行して表層材A1を切削し、座ぐりすることができる。
【0048】
次に、前記側面(11)は、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)間の各辺が前記軸心(8)側に凹まされて弧状となることによって形成される側面集塵溝(15)と、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)と前記側面(11)の上端(b)を結んでなる側面峰(16)からなる。
【0049】
なお、前記側面集塵溝(15)は、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dを収容するスペースであり、前記底面集塵溝(13)と同様、図5に示すように、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)間の各辺を前記軸心(8)側に凹ませた弧状の半径を変更することによって、前記側面集塵溝(15)の深さを調節することができ、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dを収容するスペースを調整することができる。
【0050】
そして、前記側面峰(16)は、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)と前記側面(11)の前記上端(b)を結ぶものであり、前記側面(11)が前記フランジ部(7)側に向かって0度から15度の範囲βで拡径するように立設されるとき、前記底面峰(14)が表層材A1を切削し、座ぐりするだけでなく、座ぐり調整頭を有したねじ(1)の表層材A1への進入に伴い、各前記底面峰(14)によって座ぐりされた穴を各前記側面峰(16)で徐々に広げながら切削し、座ぐりすることができる。
【0051】
なお、各前記側面峰(16)によって座ぐりした際に発生した切り屑Dも、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと同様に、前記側面集塵溝(15)に収納される。
【0052】
すなわち、前記側面集塵溝(15)を調節することで表層材A1の硬さに合わせて、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと前記側面(11)に留まる切り屑D´の収容量を調整することができるので、表層材A1が座ぐりをほとんど必要としない比較的柔らかめの木材に対しては、前記各頂点(a)間の各辺を前記軸心(8)側に凹ませた弧状の半径を大きくして、前記側面集塵溝(15)を浅くし、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと前記側面(11)に留まる切り屑D´の収容スペースを狭くすることで座ぐり可能時間を短くすることができ、表層材A1が十分に座ぐりを行わなければねじ頭部を面一にすることが困難な比較的硬めの木材に対して用いる場合、図5に示すように、前記各頂点(a)間の各辺を前記軸心(8)側に凹ませた弧状の半径を小さくして、前記側面集塵溝(15)を深くし、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと前記側面(11)に留まる切り屑D´の収容スペースを広くすることで座ぐり可能時間を長くすることができる。
【0053】
そして、前記フランジ部(7)は、前記側面(11)の前記上端(b)の径よりも大径であれば良く、前記底面(9)及び前記側面(11)の形状にあわせ適宜変更することが可能であるが、前記フランジ部(7)を円盤状に設けることで、製造がより容易となる。
【0054】
図2は、本願発明の第1の実施例である前記座ぐり調整頭を有したねじ(1)で表層材A1を締結する際の締結開始時から締結完了時を示すものであり、(イ)は、前記ねじ山(2)の進入時を示し、(ロ)は、前記底面(9)の進入時を示す。
【0055】
このとき、前記底面(9)は、前記底面集塵溝(13)と前記底面峰(14)を設け、前記側面(11)は、前記側面集塵溝(15)と前記側面峰(16)を設けているので、各前記底面峰(14)が前記各領域(12)よりも前記尖鋭部(4)側に突出した形状となるので、各前記底面峰(14)が先行して、各前記底面峰(14)で表層材A1を切削し、座ぐりすることができる。
【0056】
また、前記底面(9)によって座ぐりした際に発生する切り屑Bは、前記底面集塵溝(13)に収納されて前記底面(9)に留まる切り屑B´となったり、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cとなって前記側面集塵溝(15)に流れ込んでいく。
【0057】
図2の(ハ)は、図2の(ロ)よりも前記座ぐり調整頭を有したねじ(1)がさらに進入し、前記側面(11)の進入時を示し、図3に図2の(ロ)の前記頭部(6)の拡大斜視図を示す。
【0058】
図2の(ハ)に示されるように、前記側面(11)が前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かって垂直または0度から15度の範囲βで拡径するように立設するとき、前記側面(11)の進入時、各前記側面峰(16)が各前記底面峰(14)によって座ぐりされた穴を徐々に広げながら切削し、座ぐりを行い、前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dは、前記側面集塵溝(15)に収納されたり、切り屑Eとなって排出される。
【0059】
そして、図3に示すように、前記側面集塵溝(15)は、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと、前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dを前記側面(11)に留まる切り屑D´として収納し、前記フランジ部(7)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´が一方的に流れ出ることを防ぐ。
【0060】
その結果、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´が前記側面集塵溝(15)を埋め尽くすと、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cは、前記底面(9)から前記側面集塵溝(15)へ流れ込むことができなくなり、前記底面(9)に留まる切り屑B´として、前記底面集塵溝(13)に収納される。
【0061】
このとき、図4に示すように、前記底面集塵溝(13)及び前記側面集塵溝(15)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´と前記側面(11)に留まる切り屑D´によって埋め尽くされ、各前記底面峰(14)と各前記側面峰(16)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´と前記側面(11)に留まる切り屑D´と同じ高さになるため、各前記底面峰(14)と各前記側面峰(16)の座ぐり効果は失われ、座ぐりすることを止める。
【0062】
このようにして、座ぐり調整頭を有したねじで硬質木材を締結すれば、従来のようにねじの頭部と表層材A1の表面を面一にするため、ねじの締め付け力を調整しながらねじ締めを行わなくても、ねじの頭部が表層材へ沈み込むことを可能としつつ、ねじ込みの過多によるねじの頭部の沈み込み過ぎを作業者が意識することなく制御することができる。
【0063】
なぜならば、表層材の硬さに合わせて、前記底面(9)を、前記尖鋭部(4)の方向に0度から度45の範囲αで傾斜させることさせることで、前記底面(9)に留まる切り屑B´を調整したり、前記各領域(12)を前記フランジ部(7)側へ陥没させ、その浅深を調節することで、前記底面(9)に留まる切り屑B´の収容量を調整することができ、座ぐり可能時間を調整することができるからである。
【0064】
また、前記側面(11)を、前記フランジ部(7)側に向かって0度から15度の範囲βで拡径するように立設させることで、前記側面(11)に留まる切り屑D´を調整したり、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)間の各辺を前記軸心(8)側に凹ませた弧状の半径を変更することによって、前記側面集塵溝(15)の深さを調節することができ、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dを前記側面(11)に留まる切り屑D´として収容するスペースを調整することができ、座ぐり可能時間を調整することができる。
【実施例2】
【0065】
次に、図6に示す本願発明の第2の実施例は、本願発明の第1の実施例に、前記底面峰(14)の頂部と前記側面峰(16)の頂部を平坦に形成することで切削刃(17、18)としたことを特徴とする座ぐり調整頭を有したねじ(1A)である。
【0066】
本願発明の第2の実施例は、前記ねじ山(2)を有する前記軸部(3)の一端に前記尖鋭部(4)を設け、他端に前記工具係合部(5)を有する前記頭部(6)を設けたねじにおいて、前記頭部(6)は、前記頭部(6)の頂面となる前記フランジ部(7)と、前記フランジ部(7)と前記ねじ山(2)の間に位置し前記軸部(3)の前記軸心(8)とほぼ直交する、前記軸部(3)よりも大径であって前記フランジ部(7)よりも小径である多角形状の前記底面(9)と、前記底面(9)の前記外周縁(10)から前記フランジ部(7)側に向かってほぼ垂直に立設されて、前記フランジ部(7)よりも小径である前記側面(11)からなり、前記底面(9)は、前記外周縁(10)の隣合う前記各頂点(a)と前記軸心(8)を結んだ前記各領域(12)を前記フランジ部(7)側に陥没させることによって形成される前記底面集塵溝(13)と、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)と前記軸心(8)を結んでなる前記底面峰(14)からなり、前記側面(11)は、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)間の各辺が前記軸心(8)側に凹まされて弧状となることによって形成される前記側面集塵溝(15)と、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)と前記側面(11)の前記上端(b)を結んでなる前記側面峰(16)からなることを特徴とし、さらに、前記底面峰(14)の頂部と前記側面峰(16)の頂部を平坦に形成することで切削刃(17、18)としたことを特徴とする。
【0067】
なお、底面切削刃(17)及び側面切削刃(18)は、各前記底面峰(14)及び各前記側面峰(16)の頂部を平坦に形成するにあたり、前記底面峰(14)及び前記側面峰(16)の各峰(19)の前記頂部を前記各峰(19)と平行に切り落として形成したり、製造に用いるヘッダーダイスの前記各峰(19)の形状を前記頂部が平坦となるように設定することによって形成される。
【0068】
図7に示すように、前記底面切削刃(17)及び前記側面切削刃(18)は、前記頂部が平坦となるように設定することで、前記各峰(19)の表層材A1に接する点がそれぞれにつき1箇所ずつであったのに対し、前記底面切削刃(17)及び前記側面切削刃(18)の各峰(19A)の表層材A1に接する点がそれぞれにつき2箇所ずつとなることで、本願発明の第1の実施例の前記底面峰(14)及び前記側面峰(16)の前記各峰(19)が表層材A1を座ぐりするときよりも、本願発明の第2の実施例である前記底面切削刃(17)及び前記側面切削刃(18)の前記各峰(19A)の方が表層材A1をよりスムーズに座ぐりすることができ、作業者はより少ない労力で施工を完了することができる。
【0069】
さらに、前記底面峰(14)の頂部と前記側面峰(16)の頂部を平坦に形成することで、本願発明の第1の実施例の前記底面峰(14)及び前記側面峰(16)の前記各峰(19)よりも本実施例の各峰(19A)の強度が増加し、各峰(19A)の破損を防止することができる。
【実施例3】
【0070】
次に、図8(a)に示す本願発明の第3の実施例は、本願発明の第1の実施例に、前記フランジ部(7)と前記側面(11)との接合部(20)に前記側面(11)の前記上端(b)よりもやや大径で前記側面(11)を取り囲むようにして前記フランジ部(7)裏面から前記尖鋭部(4)側に僅かに突出した段差部(21)を設けたことを特徴とする座ぐり調整頭を有したねじ(1B)であり、本願発明の第1の実施例に前記段差部(21)を設けたことを特徴とする座ぐり調整頭を有したねじ(1B)である。
【0071】
前記段差部(21)は、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dが一方的に排出されてしまうことをより防ぐために設けられている。
【0072】
本願発明の第3の実施例も、本願発明の第1の実施例である前記座ぐり調整頭を有したねじ(1)と同様に、図2に示した状態で進入していく。
【0073】
図9は、本願発明の実施例3の前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)の、前記側面(11)進入時における前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)の拡大斜視図を示すものであり、本願発明の実施例1の前記座ぐり調整頭を有したねじ(1)と同様に、前記底面(9)で座ぐりした際に発生する切り屑Bは、その一部が前記底面集塵溝(13)に収納され、前記底面集塵溝(13)から溢れ出た前記底面(9)で座ぐりした際に発生する切り屑Bは、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cとなり、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと、前記側面(11)で座ぐりした際に発生する切り屑Dを前記側面(11)に留まる切り屑D´として前記側面集塵溝(15)に収納する。
【0074】
そして、前記段差部(21)がない場合は、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dは一様に前記フランジ部(7)裏面まで上昇した後、前記軸部(3)の面外方向へ押し出されるが、本願発明の実施例3に記載のねじ(1B)は、前記段差部(21)を設けているので、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dの前記軸部(3)の面外方向へ押し出される位置が一様でなくなり、流れの異なる前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑D同士が干渉し合い、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dを溝内に留めることができる。
【0075】
そのため、本願発明の実施例1の前記座ぐり調整頭を有したねじ(1)よりも、本願発明の実施例3の前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)は、前記段差部(21)を設けているので、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´が流れ出ることをより抑制することができる。
【0076】
なお、好ましくは、図10に示すように、前記段差部(21)の外縁(22)が、前記側面峰(16)の隣合う前記各頂点(a)を直線状に繋いだときであり、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dの排出は前記段差部(21)によって阻害され、前記底面集塵溝(13)及び前記側面集塵溝(15)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´により確実に埋め尽くされ、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´と同じ高さとなり、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)の突出による座ぐり効果は失われ、座ぐりを止める。
【0077】
ちなみに、前記段差部(21)は、前記フランジ部(7)の厚みに対して、2分の1未満の厚みで設けることが好ましい。
【0078】
前記段差部(21)を前記フランジ部(7)の厚みに対して、2分の1以上の厚みで設けると、前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)の締結完了前に、前記段差部(21)による抵抗が発生してしまい、前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)を締結完了までの時間が長くなることで、前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)の前記底面集塵溝(13)及び前記側面集塵溝(15)が前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´によって埋め尽くされ、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´と同じ高さになり、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)の突出による座ぐり効果は失われ、座ぐりすることを止めているにも関わらず、前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)の前記頭部(6)は、回転し続け、その結果、前記頭部(6)の沈み込むスピードがねじの螺進するスピードより遅くなってしまい、前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)が表層材A1または下地材A2の中で捩じ切れてしまうという問題が発生するためである。
【実施例4】
【0079】
また、図8(b)に示す本願発明の第4の実施例は、本願発明の第2の実施例に記載の構成に対して、前記フランジ部(7)と前記側面(11)との接合部(20)に前記側面(11)の前記上端(b)よりもやや大径で前記側面(11)を取り囲むようにして前記フランジ部(7)裏面から前記尖鋭部(4)側に僅かに突出した段差部(21C)を設けたことを特徴とする座ぐり調整頭を有したねじ(1C)である。
【0080】
本実施例4に示す座ぐり調整頭を有したねじ(1C)も、実施例3に示す前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)と同様に、前記段差部(21C)を設けることによって、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dの流出を抑制することができる。
【0081】
なお、好ましくは、実施例3に示す前記座ぐり調整頭を有したねじ(1B)と同様に、前記段差部(21C)の外縁(22C)が、前記側面切削刃(18)の隣合う前記各頂点(a)を直線状に繋いだときであり、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dの排出は前記段差部(21C)によって阻害され、前記底面集塵溝(13)及び前記側面集塵溝(15)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´によってより確実に埋め尽くされ、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´と同じ高さとなり、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)の突出による座ぐり効果は失われ、座ぐりを止める。
【0082】
また、前記段差部(21C)は、前記段差部(21)と同様に、前記フランジ部(7)の厚みに対して、2分の1未満の厚みで設けることが好ましい。
【0083】
このように、前記フランジ部(7)と前記側面(11)との接合部(20)に前記側面(11)の前記上端(b)よりもやや大径で前記側面(11)を取り囲むようにして前記フランジ部(7)裏面から前記尖鋭部(4)側に僅かに突出した段差部(21)を設けることによって、前記段差部(21)が、前記側面集塵溝(15)から前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑C及び前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dが一方的に排出されてしまうのをより防ぎ、前記底面集塵溝(13)及び前記側面集塵溝(15)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´によってより確実に埋め尽くされ、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´と同じ高さとなり、前記底面峰(14)と前記側面峰(16)の突出による座ぐり効果は失われ、座ぐりを止めるので、従来のようにねじの頭部(6)と表層材A1の表面を面一にするため、ねじの締め付け力を調整しながらねじ締めを行わなくてもよく、硬質木材のような表層材A1であっても、ねじの頭部(6)が表層材A1へ沈み込むことを可能としつつ、ねじ込みの過多によるねじの頭部(6)の沈み込み過ぎを作業者の調整で行わずとも、制御することができる。
【実施例5】
【0084】
このようにして構成された本願発明の実施例1乃至3の頭部(6)形状は、図1乃至図10に示す六角形に限定されるものではなく、多角形であれば良く、例えば、図11や図12に示すように、四角形、八角形でも良く、表層材の硬さに合わせて、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)間の各辺を前記軸心(8)側に凹ませた弧状の半径を変更することによって、前記側面(11)に留まる切り屑D´の収容するスペースを調整することができることから、図11に示すように、前記頭部(6)形状が四角形である座ぐり調整頭を有したねじ(1D)であれば、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)間の各辺を前記軸心(8)側に凹ませた弧状の半径をより大きくすることができるため、前記側面集塵溝(15)を図1(b)に示す頭部(6)形状が六角形であるものよりも、前記側面(11)に留まる切り屑D´の収容スペースを広くすることで座ぐり可能時間を長くすることができる。
【実施例6】
【0085】
また、図12に示すように、頭部(6)形状が八角形である座ぐり調整頭を有したねじ(1E)であれば、前記外周縁(10)の前記各頂点(a)間の各辺を前記軸心(8)側に凹ませた弧状の半径をより小さくすることができるため、前記側面集塵溝(15)を図1(b)に示す頭部(6)形状が六角形であるものよりも、前記側面(11)に留まる切り屑D´の収容スペースを狭くすることで座ぐり可能時間を短くすることができる。
【0086】
すなわち、表層材A1が十分に座ぐりを行わなければねじ頭部を面一にすることが困難な比較的硬めの木材に対しては、図1(b)に示す頭部(6)形状が六角形である座ぐり調整頭を有したねじ(1)よりも、図11に示すように、実施例5の頭部(6)形状が四角形である座ぐり調整頭を有したねじ(1D)の方が好ましく、表層材A1が座ぐりをほとんど必要としない比較的柔らかめの木材に対しては、図1(b)に示す頭部(6)形状が六角形である座ぐり調整頭を有したねじ(1)よりも、図12に示すように、実施例6の頭部(6)形状が八角形である座ぐり調整頭を有したねじ(1E)の方が好ましく、表層材Aの硬さに合わせて、頭部(6)形状を形成すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
ねじ山を有する軸部の一端に尖鋭部を設け、他端に工具係合部を有する頭部を設けたねじにおいて、前記頭部は、前記頭部の頂面となるフランジ部と、前記フランジ部と前記ねじ山の間に位置し前記軸部の軸心とほぼ直交する、前記軸部よりも大径であって前記フランジ部よりも小径である多角形状の底面と、前記底面の外周縁から前記フランジ部側に向かってほぼ垂直に立設されて、前記フランジ部よりも小径である側面からなり、前記底面は、前記外周縁の隣合う各頂点と前記軸心を結んだ各領域を前記フランジ部側に陥没させることによって形成される底面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記軸心を結んでなる底面峰からなり、前記側面は、前記外周縁の前記各頂点間の各辺が前記軸心側に凹まされて弧状となることによって形成される側面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記側面の上端を結んでなる側面峰からなることを特徴とする座ぐり調整頭の構成とすることによって、従来のようにねじの頭部と表層材A1の表面を面一にするため、ねじの締め付け力を調整しながらねじ締めを行わなくてもよく、硬質木材のような表層材であっても、ねじの頭部が表層材へ沈み込むことを可能とし、ねじ込みの過多によるねじの頭部の沈み込み過ぎを作業者は意識することなく座ぐり調整頭によって制御することができるため、従来より課題であった、大型商業施設等に設置される硬質木材性デッキフロアーやプールサイドのデッキフロアーの施工に使用した場合のねじ込みの過多により表層材に頭部が沈み込むことでできた凹み溝により、外観を損なったり、雨水等の水が溜まることで常時湿潤状態となり、ねじを錆びさせたり、表層材の腐食を促進させてしまう原因になるといった課題を解決することができる。
【0088】
さらに、前記底面峰の頂部と前記側面峰の頂部を平坦に形成することで切削刃としたことによって、表層材Aをスムーズに座ぐりすることができ、従来よりの課題であった、プールサイドのデッキフロアーを施工した場合、硬質木材の毛羽立ちにより足を怪我するといった課題を解決することができる。
【0089】
そして、前記フランジ部と前記側面との接合部に前記側面の前記上端よりもやや大径で前記側面を取り囲むようにして前記フランジ部裏面から前記尖鋭部側に僅かに突出した段差部を設けたことによって、前記底面(9)から前記側面(11)に流れ込む切り屑Cと前記側面(11)によって座ぐりした際に発生する切り屑Dが前記段差部にぶつかることで前記フランジ部側への流出が抑制され、前記底面集塵溝及び前記側面集塵溝は、確実に前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´によって埋め尽くされ、前記底面峰と前記側面峰は、前記底面(9)に留まる切り屑B´及び前記側面(11)に留まる切り屑D´と同じ高さとなるため、前記底面峰と前記側面峰の突出による座ぐり効果は失われ、座ぐりすることを止めるので、従来のようにねじの頭部と表層材A1の表面を面一にするため、ねじの締め付け力を調整しながらねじ締めを行わなくてもよく、硬質木材のような表層材であっても、ねじの頭部が表層材へ沈み込むことを可能とし、ねじ込みの過多によるねじの頭部の沈み込み過ぎを作業者が意識することなく、座ぐり調整頭によって制御することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 本願発明の実施例1の座ぐり調整頭を有したねじ
1A 本願発明の実施例2の座ぐり調整頭を有したねじ
1B 本願発明の実施例3の座ぐり調整頭を有したねじ
1C 本願発明の実施例4の座ぐり調整頭を有したねじ
1D 本願発明の実施例5の座ぐり調整頭を有したねじ
2 ねじ山
3 軸部
4 尖鋭部
5 工具係合部
6 頭部
7 フランジ部
8 軸心
9 底面
10 外周縁
11 側面
12 各領域
13 底面集塵溝
14 底面峰
15 側面集塵溝
16 側面峰
17 底面切削刃
18 側面切削刃
19 各峰
19A 各峰
20 接合部
21 段差部
21C 段差部
22 外縁
22C 外縁
a 各頂点
b 上端
A1 表層材
A2 下地材
B 底面によって座ぐりした際に発生する切り屑
B´ 底面に留まる切り屑
C 底面から側面に流れ込む切り屑
D 側面によって座ぐりした際に発生する切り屑
D´ 側面に留まる切り屑
E 排出された切り屑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山を有する軸部の一端に尖鋭部を設け、他端に工具係合部を有する頭部を設けたねじにおいて、前記頭部は、前記頭部の頂面となるフランジ部と、前記フランジ部と前記ねじ山の間に位置し前記軸部の軸心とほぼ直交する、前記軸部よりも大径であって前記フランジ部よりも小径である多角形状の底面と、前記底面の外周縁から前記フランジ部側に向かってほぼ垂直に立設されて、前記フランジ部よりも小径である側面からなり、前記底面は、前記外周縁の隣合う各頂点と前記軸心を結んだ各領域を前記フランジ部側に陥没させることによって形成される底面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記軸心を結んでなる底面峰からなり、前記側面は、前記外周縁の前記各頂点間の各辺が前記軸心側に凹まされて弧状となることによって形成される側面集塵溝と、前記外周縁の前記各頂点と前記側面の上端を結んでなる側面峰からなることを特徴とする座ぐり調整頭を設けたねじ。
【請求項2】
前記底面峰の頂部と前記側面峰の頂部を平坦に形成することで切削刃としたことを特徴とする請求項1に記載の座ぐり調整頭を設けたねじ。
【請求項3】
前記フランジ部と前記側面との接合部に前記側面の前記上端よりもやや大径で前記側面を取り囲むようにして前記フランジ部裏面から前記尖鋭部側に僅かに突出した段差部を設けた請求項1または2に記載の座ぐり調整頭を設けたねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−197833(P2012−197833A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61302(P2011−61302)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(510177382)株式会社オノダネイル (5)