説明

座席を備えた育児器具および座席運搬車

【課題】高さ調節可能な座席本体を有して移動可能な座席付き育児器具において、不使用時における占有面積を小さくする。
【解決手段】座席付き育児器具は、座席本体10と、座席本体10を高さ調節可能に支持するベース部材20と、上端部がベース部材20に連結され、下端部に前輪23を有する前脚21と、上端部がベース部材20に連結され、下端部に後輪24を有する後脚22とを備える。前脚21および後脚22のうちの少なくともいずれか一方の上端部は、ベース部材20に回動可能に連結され、折畳み状態においては、前輪23と後輪24とが互いに近づいて自立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、座席を備えた育児器具および座席運搬車に関し、特に移動可能でかつ折畳み可能な座席付き育児器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような座席付き育児器具として、室内用子供座席や乳母車等がある。特開2003−225145号公報(特許文献1)は、室内用子供座席を開示している。この公報に開示された室内用子供座席は、ベッド部と、このベッド部を高さ調節可能でかつ前後方向に揺動可能に支持する脚部とを備える。脚部の下端部には車輪が取り付けられているので、室内用子供座席を任意の位置に移動させることができる。
【0003】
上記公報に開示された室内用子供座席において、脚部は、所定の間隔を隔てて左右側部で前後方向に延びる1対の下部フレームと、各下部フレームの中央部分から上方に立上って延びている1対の固定スリーブと、各固定スリーブに摺動可能に支持されたスライド支柱とを備える。
【特許文献1】特開2003−225145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2003−225145号公報に開示されたような室内用子供座席において、使用しないときには、全体の嵩張りを小さくするためにベッド部を最も低い位置にまで下げ、さらに子供座席を居住者にとって邪魔にならない位置にまで移動させる。
【0005】
しかしながら、従来の室内用子供座席においては、前後方向に長く延びる1対の下部フレームを有する脚部が大きな面積を占めるので、不使用時における子供座席の嵩張りをあまり小さくすることができず、邪魔な存在となる。
【0006】
本発明の目的は、高さ調節可能な座席本体を有して移動可能な座席付き育児器具において、不使用時における占有面積を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った座席付き育児器具は、座席本体と、座席本体を高さ調節可能に支持するベース部材と、上端部がベース部材に連結され、下端部に前輪を有する前脚と、上端部がベース部材に連結され、下端部に後輪を有する後脚とを備える。前脚および後脚のうちの少なくともいずれか一方の上端部は、ベース部材に回動可能に連結され、折畳み状態においては、前輪と後輪とが互いに近づいて自立する。
【0008】
上記構成の本発明によれば、前脚および後脚のうちの少なくともいずれか一方の上端部がベース部材に回動可能に連結され、折畳み状態においては前輪と後輪とが互いに近づいて自立するので、不使用時における育児器具の占有面積を小さくすることができる。
【0009】
一つの実施形態では、前脚および後脚の両者の上端部が、ベース部材に回動可能に連結されている。他の実施形態では、前脚および後脚のうちの一方の上端部がベース部材に回動可能に連結され、他方の上端部がベース部材に固定されている。
【0010】
一つの実施形態では、座席本体は、座部と、背もたれ部と、座部を支える座部支え部材と、座部支え部材に固定されて下方に延びる柱部材とを備える。柱部材は、ベース部材に高さ調節可能に支持される。
【0011】
一つの実施形態では、座席本体は、座部と、後傾可能な背もたれ部と、座部を前後方向に揺動可能に支える座部支え部材とを備える。座席付き育児器具の一つの例は室内用子供座席であり、他の例は乳母車である。
【0012】
この発明に従った座席運搬車は、座席の座部を支えるための座部支え部材と、座部支え部材を高さ調節可能に支持するベース部材と、上端部がベース部材に連結され、下端部に前輪を有する前脚と、上端部がベース部材に連結され、下端部に後輪を有する後脚とを備える。前脚および後脚のうちの少なくともいずれか一方の上端部は、ベース部材に回動可能に連結される。折畳み状態においては、前輪と後輪とが互いに近づいて自立する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明に従った座席付き育児器具の一実施形態である室内用子供座席を図解的に示す側面図である。図示する室内用子供座席は、座席本体10と、座席本体10を高さ調節可能に支持するベース部材20と、上端部がベース部材20に連結され、下端部に前輪23を有する前脚21と、上端部がベース部材20に連結され、下端部に後輪24を有する後脚22とを備える。
【0014】
座席本体10は、座部11と、背もたれ部12と、座部を支える座部支え部材13と、座部支え部材13に固定されて下方に延びる柱部材14とを有する。好ましくは、想像線で示すように、背もたれ部12はベッド状の形態になるまで後傾可能に設けられている。さらに好ましくは、座部支え部材13は、座部11を前後方向に揺動可能に支えている。
【0015】
上下方向に延びる柱部材14は、ベース部材20の貫通穴(図示せず)内に上下移動可能に受入れられており、適当なロック手段によって任意の高さ位置で固定されるようになっている。図1では、最も下方の位置にある座席本体10を実線で示している。また、上方の位置(誇張して図示している)にある座席本体10を想像線で示している。
【0016】
前脚21および後脚22は、それぞれ、ベース部材20の両側部に位置するように一対設けられている。前輪23および後輪24は、室内の床面FL上を転動する。前脚21および後脚22のうちの少なくともいずれか一方の上端部は、ベース部材20に回動可能に連結される。図示した実施形態では、前脚21および後脚22の両者の上端部が、軸25を介して、ベース部材20に回動可能に連結されている。
【0017】
通常の使用状態では、図1において実線で示すように、前脚21は前方に向かって長く延び、後脚22は後方に向かって長く延びている。そのため、前輪23と後輪24とは、互いに離れて位置する。必要に応じて、背もたれ部12を起こして椅子状の形態にしたり、背もたれ部12を寝かせてベッド状の形態にする。さらに、必要に応じて、座席本体10の高さを適宜調節する。
【0018】
室内用子供座席を使用しないときには、全体の高さを減ずるために、座席本体10を最も低い位置にまで下げる。さらに、室内用子供座席の占有面積を小さくするために、図1において想像線で示すように、前輪23と後輪24とが互いに近づくように前脚21および後脚22をベース部材20に対して回動させる。折畳み状態においては、前輪23と後輪24とが床面FL上に位置し、室内用子供座席の自立を可能にしている。
【0019】
図2は、他の実施形態に係る室内用子供座席を図解的に示す側面図である。図1および図2において同一の参照番号は、同一または相当の要素を示すものであるので、それらについての重複した説明を省略する。
【0020】
図2に示す室内用子供座席は、座部11の前方底面部にステップ部材15を備えている。ステップ部材15は、軸16を介して、座部11の前方底面部に回動可能に連結されている。必要に応じて、ステップ部材15の角度を適宜変更する。
【0021】
図2に示した室内用子供座席では、前輪33を有する前脚31の上端部はベース部材20に固定され、後輪34を有する後脚32の上端部は、軸35を介して、ベース部材20に回動可能に連結されている。室内用子供座席を使用しないときには、子供座席の占有面積を小さくするために、想像線で示すように、後輪34が前輪33に近づくように後脚32をベース部材20に対して回動させる。折畳み状態においては、前輪33および後輪34が近づいて床面上に位置するので、室内用子供座席の自立が可能となる。
【0022】
図1および図2は、座席付き育児器具の一実施形態として、室内用子供座席を示した。座席付き育児器具の他の実施形態は、例えば、乳母車である。例えば、図1に示した座席付き育児器具において、ベース部材20または座部支え部材13に移動操作のための押棒を取り付ければ、乳母車としての使用が可能になる。本発明の実施形態に係る乳母車では、座席本体の高さ調節が可能であり、この点が、従来の乳母車と異なっている。
【0023】
さらに他の実施形態として、座部11と背もたれ部12とからなる座席形成部材を座部支え部材13に対して着脱可能に設けてもよい。この実施形態の場合、取外した座席形成部材を自動車の座席上に設置するチャイルドシートとして使用することも可能である。
【0024】
本発明を座席運搬車に適用することも可能である。座席運搬車は、座席の座部を支えるための座部支え部材と、座部支え部材を高さ調節可能に支持するベース部材と、上端部がベース部材に連結され、下端部に前輪を有する前脚と、上端部がベース部材に連結され、下端部に後輪を有する後脚とを備える。前脚および後脚のうちの少なくともいずれか一方の上端部は、ベース部材に回動可能に連結される。折畳み状態においては、前輪と後輪とが互いに近づいて自立する。座部支え部材またはベース部材に移動操作のための押棒を取り付けるようにしてもよい。
【0025】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、折畳み状態における高さおよび占有面積を小さくすることのできる座席付き育児器具および座席運搬車として有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態に係る室内用子供座席の図解的側面図である。
【図2】この発明の他の実施形態に係る室内用子供座席の図解的側面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 座席本体、11 座部、12 背もたれ部、13 座部支え部材、14 柱部材、15 ステップ部材、16 軸、20 ベース部材、21 前脚、22 後脚、23 前輪、24 後輪、25 軸、31 前脚、32 後脚、33 前輪、34 後輪、35 軸。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席本体と、
前記座席本体を高さ調節可能に支持するベース部材と、
上端部が前記ベース部材に連結され、下端部に前輪を有する前脚と、
上端部が前記ベース部材に連結され、下端部に後輪を有する後脚とを備え、
前記前脚および後脚のうちの少なくともいずれか一方の上端部は、前記ベース部材に回動可能に連結され、
折畳み状態においては、前記前輪と後輪とが互いに近づいて自立する、座席を備えた育児器具。
【請求項2】
前記前脚および後脚の両者の上端部が、前記ベース部材に回動可能に連結されている、請求項1に記載の座席を備えた育児器具。
【請求項3】
前記前脚および後脚のうちの一方の上端部が前記ベース部材に回動可能に連結され、他方の上端部が前記ベース部材に固定されている、請求項1に記載の座席を備えた育児器具。
【請求項4】
前記座席本体は、座部と、背もたれ部と、前記座部を支える座部支え部材と、前記座部支え部材に固定されて下方に延びる柱部材とを備え、
前記柱部材が、前記ベース部材に高さ調節可能に支持されている、請求項1〜3のいずれかに記載の座席を備えた育児器具。
【請求項5】
前記座席本体は、座部と、後傾可能な背もたれ部と、前記座部を前後方向に揺動可能に支える座部支え部材とを備える、請求項1〜4のいずれかに記載の座席を備えた育児器具。
【請求項6】
前記育児器具は、室内用子供座席である、請求項1〜5のいずれかに記載の座席を備えた育児器具。
【請求項7】
前記育児器具は、乳母車である、請求項1〜5のいずれかに記載の座席を備えた育児器具。
【請求項8】
座席の座部を支えるための座部支え部材と、
前記座部支え部材を高さ調節可能に支持するベース部材と、
上端部が前記ベース部材に連結され、下端部に前輪を有する前脚と、
上端部が前記ベース部材に連結され、下端部に後輪を有する後脚とを備え、
前記前脚および後脚のうちの少なくともいずれか一方の上端部は、前記ベース部材に回動可能に連結され、
折畳み状態においては、前記前輪と後輪とが互いに近づいて自立する、座席運搬車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−97815(P2007−97815A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291131(P2005−291131)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】