説明

座席用シート材

タテ方向またはヨコ方向いずれか一方の応力が大きい方向の5%伸長時の応力(A)が40〜300N/4cm幅であり、他方の5%伸長時の応力(B)との比(A/B)が1.5〜15.0であり、かつ、2辺固定による張設圧縮時の幅入り率(H)が0〜15%であることを特徴とする座席用シート材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車両、航空機等の座席用シート材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系エラストマー繊維やポリトリメチレンテレフタレート繊維等の弾性繊維で構成された織編物をフレームに張設することにより、弾性繊維の伸長回復性を活かしてクッション性を発現させることができ、金属バネやウレタンクッション材に比べて、薄型、軽量、高通気性等の特徴を有する座席が得られる。近年、このような弾性繊維からなる織編物は布バネと称され、事務椅子や家具等の多くの座席用途に使用されつつある。
【0003】
特開2001−159052号公報には、伸長時の応力と繰り返し変形後の残留歪を適正範囲とし、エラストマー繊維を織編物の交点部分で熱融着させることにより、目ずれせずに優れた弾性と弾性回復性を示し、クッション材として好適な弾性織編物が提案されている。しかしながら、該文献に記載の織編物は、交点部分が熱融着されて補強されているものの、引裂きに対する抵抗力が十分ではなく、タバコの火によって空いた穴や刃物等により生じた傷が広がりやすく、強度的に不安の大きいものであった。
【0004】
一方、特開2001−87077号公報や特開2002−219985号公報には、表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物が、リサイクル性、通気性、振動吸収性等の機能を有するクッション材として、座席用シート材等に応用された例が記載されており、例えば、上部メッシュ層と下部メッシュ層を連結糸で結合した立体編物をシートフレームに張設した座席が開示されている。
【0005】
しかしながら、この立体編物は、人が座った場合に表裏の編地が伸長して撓み易くなるため、適度なフィット感が得られるものの、伸長する際に生じる表裏の編目の変形またはメッシュ形態の変形に起因する繊維間のずれが瞬時には戻り難いため、撓みが十分に回復しなくなり、繰り返し着座すると反発感が徐々に低下するなど、クッション性を十分満足するものではなかった。また、タテおよびヨコ方向の初期の引張り応力特性や表裏の編地の伸長バランスが考慮されていないため、例えば、立体編物を向かい合う2辺で張設固定して使用した場合、着座時に、固定されていない方向における幅入りによる形態変化が起こり、違和感(例えば、尻の割れ目に編地が盛り上がって異物上に座ったような感覚)が生じると共に、体の沈み込みが大きくなり、座り心地を損なうという問題点があった。また、刃物等による傷に対する強度が不十分なものであった。
【0006】
特開2003−003354号公報には、立体構造編物の表裏面に挿入糸を直線状に挿入することによって、ほぼ垂直方向に働く荷重で立体構造編物が撓んでも除重後の回復性が向上し、さらに繰り返し荷重が掛かっても反発感の変化の少ない座席シート用立体構造編物が開示されている。
【0007】
しかしながら、この立体編物は、反発感のあるクッション性と回復性は向上するものの、立体編物を2辺の張設固定で使用した場合に、タテおよびヨコ方向の初期の引張り応力特性や、表裏の編地の伸長バランス等が考慮されていないため、連結糸のクッション効果が不足することによる底付き感が解消できず、またフィット性が不十分なために、安定した座り心地が得られないという問題があった。さらに、挿入組織や糸使い等の編み設計が十分考慮されていないため、立体編物にヨコしわが発生し易く、見栄えの悪いものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点を解決し、高い引裂き抵抗力を有し、タバコの火等によって空いた穴または刃物等によってできた傷が広がり難い安全性の高いシート材であって、人体とのフィット性に優れ、幅入りが少なく安定感のある良好な座り心地を達成でき、かつ伸長回復性が良好な座席用シート材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シート材のタテおよびヨコ方向の引張り特性、張設圧縮時の幅入り特性、引裂き特性、シート材に用いる繊維素材および繊維形態、編成方法等を特定し、さらに立体編物の表裏を分離させた時の表側編地と裏側編地の面伸長率バランス、立体編物に用いる繊維素材および繊維形態、編成方法、置敷圧縮特性等を特定することにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0011】
1.タテ方向またはヨコ方向いずれか一方の応力が大きい方向の5%伸長時の応力(A)が40〜300N/4cm幅であり、他方の5%伸長時の応力(B)との比(A/B)が1.5〜15.0であり、かつ、2辺固定による張設圧縮時の幅入り率(H)が0〜15%であることを特徴とする座席用シート材。
【0012】
2.織物からなることを特徴とする上記1に記載の座席用シート材。
【0013】
3.編物からなることを特徴とする上記1に記載の座席用シート材。
【0014】
4.表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸とを有する立体編物であることを特徴とする上記1に記載の座席用シート材。
【0015】
5.連結糸がモノフィラメントであることを特徴とする上記4に記載の座席用シート材。
【0016】
6.編地の少なくとも一部に挿入糸が用いられていることを特徴とする上記3〜5のいずれかに記載の座席用シート材。
【0017】
7.編地を構成する地組織が鎖編と3〜8針振りのトリコット編との組み合わせ組織で構成され、かつ、挿入糸が、該地組織のトリコット編のアンダーラップ方向に対して同方向または異方向に1コース当り3針振り以下の振り幅で経糸挿入されていることを特徴とする上記3〜6のいずれかに記載の座席用シート材。
【0018】
8.挿入糸が300〜3000dtexのモノフィラメントであることを特徴とする上記6または7に記載の座席用シート材。
【0019】
9.張設圧縮貫通強度(G)が3000N以上であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の座席用シート材。
【0020】
10.表側編地の面伸長率(F)と裏側編地の面伸長率(D)との比(F/D)が1.5〜10.0の立体編物であることを特徴とする上記4〜9のいずれかに記載の座席用シート材。
【0021】
11.置敷圧縮弾性率が20〜150N/mmの立体編物であることを特徴とする上記10に記載の座席用シート材。
【0022】
12.連結糸としてポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントを用いた立体編物であることを特徴とする上記10または11に記載の座席用シート材。
【0023】
13.上記1〜12のいずれかに記載の座席用シート材からなることを特徴とする座席シート。
【0024】
14.少なくとも一部に、ウレタンフォーム、不織布クッション材、熱可塑性樹脂発泡体、表皮材から選ばれた一種または二種以上を用い、これと上記1〜12のいずれかに記載の座席用シート材との積層体であることを特徴とする座席シート。
【0025】
15.上記13または14に記載の座席シートを有する車両。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明の座席用シート材は、ほぼ4角形や、多角形など各種形状のフレームに座席用シート材を縫製、樹脂成型、ボルト止め等の各種方法で張設することにより、面状のクッション材を形成させ、シート材の伸長特性を利用して、人が座った際のクッション性を発現させるものである。
【0028】
クッション材は、本発明の座席用シート材のみを各種形状のフレームに張設して形成することができるが、必要に応じて、少なくとも一部に、ウレタンフォーム、不織布クッション材、熱可塑性樹脂発泡体、表皮材から選ばれた一種または二種以上を用い、これと本発明の座席用シート材との積層体を各種形状のフレームに張設して形成することもできる。
【0029】
本発明の座席用シート材は、タテ方向またはヨコ方向のいずれか一方の応力が大きい方向(A方向)の5%伸長時の応力(A)が40〜300N/4cm幅、好ましくは70〜270N/4cm幅、より好ましくは100〜250N/4cm幅であり、かつ他の方向(B方向)の5%伸長時の応力(B)との比(A/B)が1.5〜15.0、好ましくは1.5〜10.0、より好ましくは2.0〜8.0である。なお、A方向とは、5%伸長時のタテ方向またはヨコ方向の応力の大きい方向を言う。
【0030】
座席用シート材におけるA方向の5%伸長時の応力が300N/4cmを超えると、人が座った際の沈み込みが少なく、シート面が人体にフィットし難くなり、風合いが硬くて座り心地が悪くなる。
【0031】
A方向の5%伸長時の応力が40N/4cm幅未満では、着座時の沈み込みが大きく、着座した瞬間からの反発感が低下し、回復性が悪く、クッション性が低下する。また、2辺固定で張設される座席での幅入りが大きくなりすぎ、臀部での違和感(例えば、尻の割れ目に編地が盛り上がって異物上に座ったような感覚)が生じ、安定した座り心地が得られない。
【0032】
A方向とB方向の5%伸長時の応力比(A/B)が1.5〜15.0の範囲外では、人体とのフィット性に劣り、座り心地が低下する。
【0033】
座席用シート材を2辺固定で張設して座席シートとする場合には、A方向の両端2辺をフレームに固定することが好ましい。
【0034】
本発明の座席用シート材は、2辺固定による張設圧縮時の幅入り率(H)は、着座時におけるフィット性の向上と臀部への違和感をなくす点から、0〜15%であることが必要であり、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%であり、0%に近いほど安定した座り心地が得られる。
【0035】
本発明の座席用シート材は、タバコの火や刃物等による傷が生じた場合であっても、体重や衝撃荷重によって傷口が簡単に広がらない高い安全性が必要である。人の体重を支え、高い安全性を得るためには、予め直径1.5cmの穴を空けて張設した座席用シート材に直径100mmの半球状の金属製圧縮治具にて負荷を掛けた時に、傷口の引裂き抵抗力がどの程度かを示す張設圧縮貫通強度(G)が3000N以上であることが好ましく、より好ましくは4000N以上、さらに好ましくは5000N以上である。張設圧縮貫通強度は、製造可能な範囲であれば高いほど好ましい。
【0036】
本発明の座席用シート材は、主に織物または編物からなることを特徴とするが、シートに生じた傷の引裂きに対する高い安全性と、より安定した座り心地を得るためには、編物であることが好ましく、より好ましくは経編地であり、さらに好ましくは表裏二層の編地を持つ立体編物である。
【0037】
本発明の座席用シート材は、地組織が300〜2000dtex繊維からなる少なくとも2枚筬以上のニットループ組織で構成された編地で、かつ、該編地のコース数とウエール数の積が100〜600であることが好ましい。地組織を構成する繊維の繊度が300〜2000dtexで、コース数とウエール数の積が100〜600であると、引裂き抵抗力が優れ、編目の変形(組織変形)が小さく、伸びが適度で回復性が良好であると共に、製編性が良好である。また、地組織が2枚筬以上のニットループ組織で構成された編地であると、引裂き抵抗力が優れる。
【0038】
編地において、地組織を構成する繊維の繊度は、引裂き抵抗力を向上させる点から、好ましくは430〜1500dtex、より好ましくは450〜1300dtexであり、また、編地のコース数とウエール数の積は、好ましくは120〜500、より好ましくは150〜400である。
【0039】
本発明の座席用シート材は、少なくとも2枚筬以上のニットループ組織からなる地組織で構成された編地であることが好ましい。ここでいうニットループ組織とは、鎖編、トリコット編のように、必ずニットループを形成する編組織のことである。この場合、引裂き抵抗力をより向上させるためには、少なくとも1枚筬は多針振りのトリコット編することが好ましく、多針振りの振り幅は3針振りから8針振りが好ましい。引裂き抵抗力に加え、さらに編目の変形(組織変形)を抑えて伸長回復性の良好な編地とするために、地組織の少なくとも1枚の筬は鎖編とすることが好ましい。また、これらの少なくとも2枚筬の地組織に挿入糸が絡み合うことにより、さらに十分な引裂き抵抗力と伸長回復性が得られるものとなる。
【0040】
本発明の座席用シート材の編組織は、A方向の5%伸長時の応力(A)を40N/4cm幅以上とするために、タテ方向および/またはヨコ方向に挿入糸を挿入させて、編目変形(組織変形)が少ない編組織とすることが好ましい。
【0041】
タテ方向に挿入糸を挿入する場合は、鎖編やトリコット編等の組織で編まれる地糸のニードルループとシンカーループの間に1コース当り3針振り以下の振り幅で挿入された状態、または、編地の長さ方向に連なる地糸のシンカーループの間を上下しながら挿入された状態で、編地の全長に渡り挿入糸を直線状またはジグザグに近い形態で挿入するのが好ましい。またヨコ方向に挿入糸を挿入する場合は、鎖編やトリコット編等の組織で編まれる地糸のニードルループとシンカーループの間に、編地の全幅に渡るように挿入糸を直線に近い形態で挿入することが好ましい。
【0042】
挿入糸の挿入方法としては、タテ方向の挿入であれば編組織によって挿入することができる。この際、編目の変形(組織変形)を抑えるために、地組織の多針振りトリコット編のアンダーラップ方向に対して異方向に挿入するのが好ましく、その振り幅は、1コース当り3針振り以下とするのが好ましく、より好ましくは2針振りまたは1針振りである。またヨコ方向の挿入であれば、緯糸挿入装置を装備したシングルラッセル編機またはダブルラッセル編機を用いて緯糸挿入を行なうことができる。
【0043】
本発明の座席用シート材の地組織または挿入糸に用いられる繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエステル系エラストマー繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維、その他、任意の繊維が挙げられる。
【0044】
繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。繊維の形態も、未加工糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを採用してもよい。また、マルチフィラメント等の繊維では、通常、300〜2000dtexの太さのものを用いることができ、単糸繊度は任意に設定できる。
【0045】
座席用シート材の地組織に用いる糸については、150℃の乾熱収縮率が5〜20%であることが好ましく、仕上げ加工時に編目を締めて組織変形させずに伸びを抑えられる点から、7〜17%であることがより好ましい。また、地組織に用いる糸の少なくとも1種類に、150℃の乾熱収縮率が5〜20%である原糸(未加工糸)を用いることがより好ましい。
【0046】
挿入糸として用いる繊維は、伸長回復性を向上させ、人が長期間座った後の塑性変形を抑える点から、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、またはポリエステル系エラストマー繊維等の弾性繊維を用いることが好ましい。さらに、挿入糸は、人が座った際に生じる局部的な落ち込みを抑制し、安定した座り心地を得るための面剛性を付与する点から、300〜3000dtexのモノフィラメントであることが好ましい。また、挿入糸がモノフィラメントである場合、モノフィラメントが地組織からスリップすることによる組織変形または着座後の塑性変形を防止するために、モノフィラメントと地組織が接着されていてもよい。接着方法としては、モノフィラメント表面を低融点ポリマーで覆った鞘芯モノフィラメントを用いて立体編物を編成した後、ヒートセット等で熱融着させる方法が好ましい。
【0047】
座席用シート材をポリエステル系繊維100%で構成すると、廃棄の際に、解重合してモノマーに戻すリサイクルが可能となり、また、焼却しても有害ガスの発生が防止できるので好ましい。
【0048】
本発明の座席用シート材は、シングルラッセル編機またはダブルラッセル編機を用いて編成することが好ましく、編機のゲージは9ゲージから28ゲージまでが好ましく用いられる。
【0049】
座席シート材の目付は、使用目的に応じて任意に設定できるが、好ましくは300〜2000g/m、より好ましくは400〜1500g/mである。
【0050】
なお、本発明の座席用シート材は、張設状態で人の体重を支え、かつ、勢いよく膝をつく行為や、衝突時等の衝撃力が加わった際に十分抵抗できる強度が必要となる。このためにはタテおよびヨコ方向の破断強度は140N/cm以上が好ましく、より好ましくは150N/cm以上、さらに好ましくは170N/cm以上である。
【0051】
座席用シート材のタテおよびヨコ方向の破断強度を140N/cm以上とするためには、好ましくは4cN/dtex以上、より好ましくは5cN/dtex以上、さらに好ましくは6cN/dtex以上の強度を有する繊維を少なくとも地組織の一部に用いて編地を構成することが好ましい。
【0052】
本発明の座席用シート材は、立体編物であることがより好ましく、立体編物を用いることにより、クッション性、引裂き抵抗力および振動減衰性が向上する。
【0053】
本発明の立体編物からなる座席用シート材を張設式の座席シートに用いた場合、立体編物の連結糸による厚み方向のクッション感をより良好にするために、表側編地の面伸長率(F)と裏側編地の面伸長率(D)のと比(F/D)は1.5〜10.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜9.0、さらに好ましくは3.0〜8.0である。ここでいう立体編物の表側編地とは、最終製品で表側に使われる側を意味するが、最終製品が明瞭でない場合は、立体編物のどちら側を表とみなしてもよい。また面伸長率とは、立体編物を表側編地と裏側編地に分離し、それぞれの編地を枠に張設した状態で、編地面を直角方向に直径100mmの圧縮治具で245Nの荷重を掛けた時に、編地が面方向にどの程度伸長するかを示す値を言う。
【0054】
面伸長率比(F/D)が1.5未満では、フレームに張設した座席において、表側編地が主体で人の体重を支えるものとなり、立体編物の連結糸のクッション感が発揮され難くなり、クッション性およびフィット性が低下し易く座り心地が悪くなる傾向がある。また、面伸長率比が10を超えると、フレームに張設した座席において、表側編地が伸長し易く、連結糸が不安定な状態となるため、連結糸倒れによるクッション性の低下および臀部への違和感が生じ易く座り心地が悪くなる傾向がある。このような面伸長率の比は、例えば、表側編地と裏側編地の組織を同一にせずに異なる編組織とし、それぞれの編組織と糸使いを適宜選定することにより得ることができる。また、糸素材の乾熱収縮率の影響を受け易いため、乾熱収縮率と編組織を十分に考慮して表裏の編地の面伸長率比を適正範囲に導くことが好ましい。
【0055】
立体編物の表裏二層の編地を連結する連結糸としては、モノフィラメント糸を用いることが好ましい。ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、横編機等を用いて立体編物を編成する場合、表裏の編地を連結する連結糸は、必ずどちらかの方向に湾曲した状態で編み込まれ、その連結糸に厚み方向から力を加えると、すでに湾曲している状態がさらに湾曲し、力を取り除くと元の状態に戻る。この際に生じる連結糸の曲げと回復の挙動が、立体編物の反発感のあるクッション性に大きく影響するため、連結糸には、曲げ剛性の高いモノフィラメントを用いることが好ましい。このクッション性は、立体編物を張設式の座席シートとして使用した場合にも反映される。したがって、立体編物の連結糸は全てモノフィラメントであることが好ましいが、必要に応じて、モノフィラメント以外の繊維を編成時に交編させてもよい。交編する場合、モノフィラメント以外の繊維は、連結糸における重量混率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下である。例えば、マルチフィラメントの仮撚糸を交編すると、圧縮時にモノフィラメント同士が擦れて発生する耳障りな音の発生を低減できる。
【0056】
連結糸に用いられるモノフィラメントとしては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材を用いることができる。なかでも、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を使用すると、弾力感のあるクッション性が得られ、繰り返しまたは長時間圧縮後のクッション性の耐久性が良好となるので好ましい。
【0057】
立体編物において、表裏二層の編地に用いる糸としては、連結糸のモノフィラメントが編地表面に露出しないように被覆率を上げるために、立体編物の少なくとも片側面にマルチフィラメントの仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いることが好ましい。また、サイドバイサイド型等の複合糸を用いると、編地のストレッチ性と回復性がより一層向上するので好ましい。
【0058】
連結糸として用いるモノフィラメントの繊度は、特に限定されるものではないが、通常、20〜2000dtexである。立体編物に弾力感のあるより優れたクッション性を付与する上から、モノフィラメントの太さは250〜700dtexが好ましく、より好ましくは280〜500dtexである。
【0059】
連結糸の密度については、立体編物2.54cm平方(6.45cm)の面積中にある連結糸の本数をN(本/6.45cm)、連結糸のdtexをT(g/1×10cm)、連結糸の比重をρ(g/cm)とした時、立体編物2.54cm平方(6.45cm)の面積内にある連結糸の総断面積(N・T/1×10・ρ)が0.03〜0.35cmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25cmである。
【0060】
また、連結糸の編組織としては、表裏の編地中にループ状の編目を形成してもよく、表裏の編地に挿入組織状に引っかけた構造でもよい。また、少なくとも2本の連結糸が、表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結させることが、立体編物の形態安定性を向上させ、良好なクッション感を得る上で好ましい。
【0061】
立体編物が張設式の座席においてソフトな弾力感を有するためには、立体編物の置敷圧縮弾性率が20〜150N/mmであることが好ましく、より好ましくは25〜100N/mm、最も好ましくは25〜80N/mmである。置敷圧縮弾性率が上記の範囲であると、ソフトな弾力感が得られ、着座時に底付き感が生じない。立体編物の置敷圧縮弾性率は、立体編物を構成する連結糸の繊度、単位面積当りの連結糸の密度、連結糸の傾斜角度、立体編物の厚み、仕上げ加工時のヒートセット温度等の要因によって調整されるものであり、これらを十分考慮して設定する必要がある。
【0062】
立体編物は、相対する2列の針床を有するダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成できるが、寸法安定性のよい立体編物を得るためには、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。
【0063】
立体編物の厚みは、目的に応じて任意に設定できるが、3〜30mmが好ましく用いられる。厚みがこの範囲であると、圧縮量が十分でクッション性に優れ、立体編物の仕上げ加工も容易である。
【0064】
本発明の座席用シート材に好ましく用いられるポリトリメチレンテレフタレート繊維は、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維であり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくはは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含むものをいう。従って、第三成分として他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0065】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の強度は、好ましくは2〜5cN/dtex、より好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらに好ましくは3〜4.5cN/dtexである。また、伸度は、好ましくは30〜60%、より好ましくは35〜55%、さらに好ましくは40〜55%である。弾性率は、好ましくは30cN/dtex以下、より好ましくは10〜30cN/dtex、さらに好ましくは12〜28cN/dtex、特に好ましくは15〜25cN/dtexである。10%伸長時の弾性回復率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0066】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体と、トリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種または二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよい。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステルやナイロンと、ポリトリメチレンテレフタレートとをブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯型、サイドバイサイド型等)してもよい。
【0067】
複合紡糸に関しては、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報等に例示されるように、第一成分としてポリトリメチレンテレフタレートを用い、第二成分としてポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルやナイロンを用いて、並列的または偏芯的に配置したサイドバイサイド型または偏芯シースコア型に複合紡糸したものが挙げられる。特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。なかでも、特開2000−239927号公報に例示されるような、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、低粘度側が高粘度側を包み込むように接合面形状が湾曲しているサイドバイサイド型に複合紡糸したものが、高度のストレッチ性と嵩高性を兼備するものであり、特に好ましい。
【0068】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等またはグリセリン等)も、重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0069】
さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0070】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の紡糸については、例えば、国際公開WO99/27168号パンフレットに記載されており、1500m/分程度の巻き取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻き取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等の何れを採用してもよい。
【0071】
また、ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントは、例えば、国際公開WO01/75200号パンフレットに記載された方法により製造することができる。即ち、ポリトリメチレンテレフタレートを紡口から吐出し、冷却浴中で急冷した後、第1ロールで巻き取り、次いで、温水中または乾熱雰囲気下で延伸しながら第2ロールで巻き取った後、乾熱雰囲気下または湿熱雰囲気下において、オーバーフィードでリラックス処理し、第3ロールで巻き取る方法で製造することができる。
【0072】
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。断面は、丸型が立体編物のクッション性の耐久性を向上させる上で好ましい。
【0073】
本発明の座席用シート材に用いる繊維は、チーズ、コーン、パーンからの解舒性、糸条同士の摩擦性、糸条と編機等のガイドとの摩耗性、糸条と編機の編針との摩耗性を向上させるために、原糸油剤が付着していることが好ましいが、難燃性を付与させるためには、原糸油剤の付着量は2%omf以下の付着量であることが好ましい。また、原糸油剤中のシリコーン系化合物は燃えやすいので、使用する原糸油剤には含まれないことが好ましい。
【0074】
特に、本発明の座席用シート材に精練や染色等の熱水処理を施さない場合には、ヒートセットでの熱エネルギーのみで原糸油剤を蒸発させる必要があり、原糸油剤の付着量が多い場合やシリコーン系化合物が含まれると、難燃効果が低下する場合がある。
【0075】
また、座席用シート材に用いる繊維は、着色されたものを使用してもよい。着色方法としては、未着色の糸をかせやチーズ状で糸染めする方法(先染め)、紡糸前の原液に顔料、染料等を混ぜて着色する方法(原液着色)、シート状で染色またはプリントする方法等が用いられる。但し、立体編物を染色またはプリントする場合は、立体形状を維持することが困難となって加工性に不安が残る場合があるため、先染めまたはマスターバッチによる原着方式が好ましい。
【0076】
本発明の座席用シート材は、フレームに張設して座部および/または背部を形成する座席に好適に用いられる。シート材をフレームに張設する状態は、特に限定されるものではなく、シート材の周囲または少なくとも2辺を背部または座席のフレームに緊張状態または弛ませた状態で張り、シート材により座席の座部や背部を形成すればよい。
【0077】
フレームへの座席用シート材の固定方法は任意の方法を用いることができる。例えば、特開2002−219985号公報に記載のように、シート材の末端部に断面が略U字状で溝部を有するプレート部材を固着し、該プレート部材の溝部を適宜のフレーム材に係合する方法、シート材の末端部にさらにトリム布を連結し、このトリム布に上記のプレート部材を固着して適宜のフレーム材に係合する方法、立体編物の末端部を溶着、縫製、樹脂加工等により処理した後、端部を押さえ部材等で押さえてボルト止め等でフレームに固定する方法、シート材の端部を折り返して縫製した空洞の中に金属棒を通し、金属棒をフレームに固定する方法等、任意の方法を用いることができる。更に、シート材をコイルスプリング、トーションバー等の金属バネを介してフレームに固定する方法等を用いることで、よりストローク感のあるクッション性が付与できる。
【0078】
座席用シート材の仕上げ加工方法としては、生機を精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができるが、先染め糸や原液着色糸を使用した座席用シート材の場合は、精練や染色工程を省いて、生機を直ちにヒートセットのみで仕上げることもできる。
【0079】
また仕上げセット時には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常、繊維加工に用いられている樹脂加工、吸水加工、制電加工、抗菌加工、撥水加工、難燃加工などの仕上げ加工が適用できる。
【0080】
仕上げセットで用いる熱処理機としては、ピンテンター、クリップテンター、ショートループドライヤー、シュリンクサーファードライヤー、ドラムドライヤー、連続およびバッチ式タンブラー等が使用できる。
【0081】
仕上げ加工後の座席用シート材は、融着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理する方法や、熱成形等により所望の形状に加工する方法によって、張設タイプの座席シートやベッドパッド等の各種用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0082】
本発明の座席用シート材は、フレームに張設して座部および/または背部を形成することにより、自動車、鉄道車両、航空機用椅子、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子、家具、事務用椅子等に広範囲に用いることができる。
【0083】
また、本発明の座席用シート材を用いた座席用シートは、安全性が高く、人体とのフィット性に優れ、安定感のある良好な座り心地を有する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、2辺固定による張設用フレームの一例を概略的に示す図である。
【図2】図2は、2辺固定で張設された状態を上面から見た図であって、2辺固定による張設圧縮時の幅入り率(H)の測定を概略的に示す説明図である。(1)は圧縮前の状態であり、(2)は圧縮時の状態である。
【図3】図3は、4辺固定による張設用フレームの一例を概略的に示す図である。
【図4】図4は、圧縮弾性率(E)の測定により得られる圧縮時の荷重−変位曲線の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
シート材固定部
シート材固定部
シート押さえ材
シート押さえ材
シート押さえ枠
シート材固定枠
w 圧縮治具
幅入り前の印線の間隔
幅入り後の印線の間隔
s 行きの曲線
k 帰りの曲線
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0087】
例中で使用したポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントおよび熱融着モノフィラメントは、参考例に示す方法で製造した。
【0088】
なお、各特性の評価および測定は下記の方法で行った。
【0089】
(1)5%伸長時の応力
仕上げした立体編物をカットして20cm(長さ)×4cm(幅)の試験片を作製する。試験片は、タテ方向(ウエール列に沿った方向)に20cm(長さ)のものを5枚、ヨコ方向(コース列に沿った方向)に20cm(長さ)のものを5枚、それぞれ採取する。
【0090】
島津オートグラフAG−B型(島津製作所製)を用い、つかみ幅4cm、つかみ間隔10cm、引張り速度50mm/min、初荷重2〜3N/4cmの条件で、試験片を5%まで伸長させた時の引張り応力を求める。タテ方向に20cm(長さ)の試験片を5枚と、ヨコ方向に20cm(長さ)の試験片を5枚測定し、各5枚の平均値を、それぞれタテとヨコの5%伸長時の引張り応力とする。この時、5%伸長時の応力の高い方向をA方向とする。
【0091】
(2)2辺固定による張設圧縮時の幅入り率(H)
図1に示す様に、厚み5mm、400mm角の金属板の土台の4隅に高さ250mmの等辺山形鋼の足を溶接し、さらに足の上に、厚み5mm、長さ400mm、幅55mmの2枚の金属板を、土台の向かい合う2辺と平行に溶接して、2辺のシート材固定部a、aを持つ張設用フレームを作製する。この2辺のシート材固定部a、aの上面に40番のサンドペーパーを両面テープで貼りつけて滑り止めを付与する。一方、厚み5mm、長さ400mm、幅55mmの金属板2枚の下面に40番のサンドペーパーを両面テープで貼りつけて滑り止めを付与したシート押さえ材b、bを作製する。
【0092】
2辺のシート材固定部とシート押さえ材との間に、400mm角にカットした座席用シート材を弛まない様に挟み、計6箇所を万力で固定して張設する。この時、上記(1)の5%伸長時の応力の測定で得たA方向の両端を2辺固定させる。予め、シート材の表面に固定されていない両端から50mmの位置にそれぞれ印線を書き込んでおく(即ち、印線の幅入り前の間隔(H)は300mmである)。
【0093】
島津オートグラフAG−B型(島津製作所製)を用い、直径100mmの円盤状の圧縮治具wにより、張設した表側編地の中央部を50mm/分の速度で圧縮し、245Nの荷重で保持させる。保持させた状態で15秒間放置し、その後、図2に示す幅入り後の印線の間隔(H)を測定し、次式により幅入り率(H)を算出する。
【0094】
H(%)=〔(H−H)/300〕×100
(3)張設圧縮貫通強度(G)
40cm角にカットした座席用シート材の中央部に、予め打ち抜き用ポンチにて直径1.5cmの円形穴を空けた試料を3枚準備する。上記(2)で使用した2辺固定式の張設用フレーム(図1)のシート材固定部とシート押さえ材との間に試料を弛まない様に挟み、計6箇所(各辺3箇所づつ)を万力で固定して張設する。なお、上記(1)の5%伸長時の応力の測定で得たA方向の両端を2辺固定する。
【0095】
島津オートグラフAG−B型(島津製作所製)を用い、直径100mmの金属製の半球状圧縮治具により、張設した座席用シート材の中央部(直径1.5cmの穴)を50mm/分の速度で、圧縮治具が貫通するまで荷重を掛ける。圧縮貫通時の最大荷重を3回測定する。その平均値を張設圧縮貫通強度(G)とする(一の位以下の応力値は切り捨てる)。
【0096】
(4)表側編地の面伸長率(F)および裏側編地の面伸長率(D)
図3に示すような4辺固定による張設用フレームを次のようにして作製する。
【0097】
厚み5mm、400mm角の金属板土台の4隅に高さ250mmの等辺山形鋼の足を溶接し、さらにその足の上に、厚み5mm、410mm角の金属枠(内側が1辺300mmの四角形に刳り貫いた幅55mmの枠:c)を溶接した張設用フレームを作製する。このフレームの金属枠(c)上面に40番のサンドペーパーを両面テープで貼り付けて滑り止めを付与する。一方、編地の押さえ部材として、厚み5mm、410mm角の金属枠(内側が1辺300mmの四角形に刳り貫いた幅55mmの枠:c)の下面に40番のサンドペーパーを両面テープで貼り付けて滑り止めを付与したものを作製する。
【0098】
仕上げした立体編物(400mm角)の連結糸をほぼ中央部でカットして表側と裏側の編地にそれぞれ分離させたものを各3枚ずつ準備する。
【0099】
4辺固定式の張設用フレームのシート材固定枠(金属枠c)とシート押さえ枠(金属枠c)との間に、立体編物の表側または裏側の編地を弛まない様に連結糸側を下にして挟み、周囲を万力で固定する。
【0100】
島津オートグラフAG−B型(島津製作所製)を用い、直径100mmの円盤状圧縮治具により、張設した表側編地の中央部を50mm/分の速度で圧縮し、245Nの荷重時の変位を測定して圧縮撓み量(M)(mm)とする。
【0101】
次式により、立体編物の表側編地の面伸長率(F)および裏側編地の面伸長率(D)を求める。
【0102】
F(%)={(1502+M2)0.5−150}×100 /150
D(%)={(1502+M2)0.5−150}×100 /150
測定は3回ずつ行い、その平均値でF、Dをそれぞれ求める。
【0103】
(5)圧縮弾性率(E)
島津オートグラフAG−B型(島津製作所製)を用い、直径100mmの円盤状の圧縮治具により、剛体面に置いた40cm角の立体編物に、初荷重1Nを掛けた時を0点として、10mm/分の速度で245Nの荷重になるまで圧縮し、直ちに10mm/分の速度で開放する。その結果、例えば、図4に示すような荷重−変位曲線(行きの曲線s、帰りの曲線k)が得られる。
【0104】
得られた荷重−変位曲線のうち、行き(圧縮)の曲線sの立ち上がり部分の略直線領域に接線を引き、その接線の勾配を、{荷重P(N)/変位ε(mm)}の式により算出し、圧縮弾性率E(N/mm)とする。
【0105】
(6)地組織に使用する糸の乾熱収縮率
JIS−L−1013の乾熱収縮率試験方法(B法)に準じて測定を行う。この際の乾燥機の温度は150℃とする。
【0106】
(7)立体編物におけるシワの評価
仕上げした立体編物(40cm角)の外観観察により、下記の4段階で相対評価する。表、裏両方の面について評価する。
【0107】
◎:シワが全くない
○:薄い筋状の跡は見られるが、シワと感じない
△:凹凸感があり、凹みの浅いシワがある
×:凹みが厚みの半分以上であり、深いシワがある
(8)張設座席での座り心地(フィット性、幅入りによる違和感、安定感)および伸長回復性
座部が幅52cm、奥行き47cm、高さ32cmの口型金属パイプ材からなる座席フレーム(背もたれなし)を作製する。
【0108】
幅50cm×長さ57cmの座席用シート材(上記(1)の5%伸長時の応力の測定で得たA方向を長さ方向とする)の長さ方向の両端2辺の全幅に、ポリブチレンテレフタレート樹脂製の略U字状のプレートを縫製により取り付ける。座席用シート材の一方の樹脂製U字プレートを、座席フレーム前縁下に取り付けた金属製の略U字プレートとかみ合わせ、座席用シート材の幅全体に10kgの荷重をかけて張力を付与した状態で座席フレームの前後に座席用シート材を張り、次いで、座席フレームの後ろ縁下の金属製U字プレートと座席用シート材の樹脂製U字状のプレートとをかみ合わせて座席用シート材を張設する。なお、10kgの張力により金属製U字プレートと樹脂製U字プレートの位置がずれる場合は、金属製U字プレートと樹脂製U字プレート各々のボルト止めした位置をずらせて調節する。
【0109】
座席シート材の長さ方向と膝の向きを合せて、座席の上に体重65kgの男性が10分間座った後、退席する。
【0110】
着座時の座り心地の評価として、座席用シート材の柔軟性とフィット性を、下記の4段階で相対評価する。
【0111】
◎:適度な柔軟性でフィット性に優れる
○:柔軟性がやや高めか或いはやや硬めでフィット性に優れる
△:柔軟性がかなり高めか、或いはかなり硬めでフィット性に劣る
×:柔軟すぎて、或いは硬すぎてフィット性に劣る
また、着座時の違和感(尻の割れ目に編地が盛り上がって異物上に座ったような感覚)を官能評価によって、下記の4段階で相対評価する。
【0112】
◎:違和感が全くない
○:違和感が殆どない
△:違和感がややある
×:違和感が激しい
さらに、着座時の安定感を、下記の4段階で相対評価する。
【0113】
◎:適度な面剛性で安定感に優れる
○:面剛性がやや高めで安定感がある
△:面剛性がやや低く安定感がやや劣る
×:面剛性が低く安定感が劣る
さらにまた、退席後の布バネの回復状態を目視評価し、下記の4段階で相対評価する。
【0114】
◎:完全に元通りに回復している
○:ほぼ元通りに回復している
△:ややくぼみ(変形)が残る
×:大きくくぼみが残る
〔参考例1〕
<ポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントの製造>
実施例において使用したポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントは以下の方法により製造した。
【0115】
固有粘度[η]=0.9のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃で紡口から吐出し、40℃の冷却浴中に導いて冷却しつつ16.0m/分の速度の第1ロール群で引張り、細化して未延伸モノフィラメントを製造した。次いで、温度55℃の延伸浴中で5倍に延伸しながら80.0m/分の第2ロール群によって引張り、その後、120℃のスチーム浴中で弛緩熱処理を施しながら、72.0m/分の第3ロール群を経た後、第3ロール群と同速の巻き取り機で巻き取り、390dtexの延伸モノフィラメントを製造した。
【0116】
同様にして880dtexの延伸モノフィラメントを製造した。
【0117】
得られた延伸糸の強度、伸度、弾性率並びに10%伸長時の弾性回復率は、390dtexの延伸モノフィラメントでは、各々2.7cN/dtex、49%、27cN/dtex並びに98%であり、880dtexの延伸モノフィラメントでは、各々2.6cN/dtex、51%、27cN/dtex並びに98%であった。
【0118】
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
【0119】
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
式中、ηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸またはポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
〔参考例2〕
<熱融着性モノフィラメントの製造>
実施例において使用した熱融着性モノフィラメントは以下の方法により製造した。
【0120】
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを反応槽に仕込み、少量の触媒を加えて、常法に従いエステル交換反応を行いオリゴマーを得た。一方、アジピン酸とエチレングリコールを反応槽に仕込み、少量の触媒を加えて、常法に従いエステル化反応を行いオリゴマーを得た。
【0121】
得られた各オリゴマーと少量の酸化防止剤を混合し、引き続き重縮合反応を行い、融点が120℃、ガラス転移温度0℃、密度1.25g/cmの共重合ポリエステルを得た。得られた共重合ポリエステルを鞘成分とし、ポリトリメチレンテレフタレート(固有粘度[η]0.92、融点227℃、密度1.35g/cm)を芯成分として、以下の製造条件で鞘芯型モノフィラメントを製造した。
【0122】
鞘成分ポリマー吐出量 :2.4g/分
鞘成分ポリマー溶融温度 :200℃
芯成分ポリマー吐出量 :4.9g/分
芯成分ポリマー溶融温度 :260℃
紡糸温度 :260℃
冷却浴水温 :40℃
引き取りロール(第1ロール)周速:8.8m/分
延伸浴水温 :55℃
延伸ロール(第2ロール)周速 :44m/分
乾熱ヒーター温度 :140℃
第3ロール周速 :40m/分
巻取速度 :40m/分
前記の製造条件により、丸断面で、芯部の面積比が63%、繊度が1060dtex、破断強度が2.3cN/dtex、破断伸度が53%の鞘芯型モノフィラメント、芯部の面積比が65%、繊度が1820dtex、破断強度が2.2cN/dtex、破断伸度が50%の鞘芯型モノフィラメント、および、芯部の面積比が65%、繊度が3230dtex、破断強度が2.2cN/dtex、破断伸度が50%の鞘芯型モノフィラメントを製造した。鞘成分の融点は121℃、ガラス転移温度は0℃であった。
【0123】
なお、固有粘度[η]の測定法は、前記の通りである。
【0124】
[実施例1]
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L1、L2)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L3)から参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給し、さらに裏側の編地を形成する筬(L4、L5)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率5.7%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給した。
【0125】
以下に示す編組織で、裏側の編地にタテ方向に挿入糸(参考例1で製造した880dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント)をオールインの配列で筬(L6)にて挿入し、打ち込み12.7コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして150℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。
【0126】
得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0127】
(編組織)
L1:1211/1011/(オールイン)
L2:0111/2111/(オールイン)
L3:3410/4367/(オールイン)
L4:1110/0001/(オールイン)
L5:5510/1156/(オールイン)
L6:2222/0000/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0128】
[実施例2]
実施例1において、裏側の編地を形成する筬(L4、L5)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率13.8%のポリエチレンテレフタレート繊維の原糸に、参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを2本引き揃えた挿入糸(L6)をタテ方向に挿入した以外は、実施例1と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0129】
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0130】
[実施例3]
実施例2において、編組織を以下のように変更した以外は、実施例2と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0131】
(編組織)
L1:1211/1011/(オールイン)
L2:0111/2111/(オールイン)
L3:3410/4367/(オールイン)
L4:1110/0001/(オールイン)
L5:7710/1178/(オールイン)
L6:2222/0000/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0132】
[実施例4]
実施例2において、表側の編地を形成する筬(L1)の配列を2イン×2アウトになるように2本ずつ引き揃えて供給し、同様に、筬(L2)の配列を2アウト×2インで供給し、かつ、編組織を以下のように変更した以外は、実施例2と同様にして表面メッシュ調の立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0133】
(編組織)
L1:0111/3233/4544/3222/(2イン×2アウト)
L2:4544/3222/0111/3233/(2アウト×2イン)
L3:3410/4367/(オールイン)
L4:1110/0001/(オールイン)
L5:7710/1178/(オールイン)
L6:2222/0000/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0134】
[実施例5]
実施例4において、表裏の編地を形成する筬(L1、L2、L4、L5)から、500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率5.3%の難燃性ポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸(167dtex/48フィラメント(東洋紡績(株)の「ハイム」)の3本引き揃えインターレース加工糸)を供給したこと以外は、実施例4と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0135】
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0136】
[実施例6]
緯糸挿入装置を装備した10枚筬、14ゲージ、釜間12mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L3、L4)から500dtex/90フィラメントで乾熱収縮率1.8%のポリエチレンテレフタレート繊維の先染め仮撚加工糸(167dtex/30フィラメントの3本引き揃えインターレース加工糸:黒色)をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L5)から参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給し、さらに、裏側の編地を形成する筬(L7、L8)から500dtex/90フィラメントで乾熱収縮率1.8%のポリエチレンテレフタレート繊維の先染め仮撚加工糸(167dtex/30フィラメントの3本引き揃えインターレース加工糸:黒色)をオールインの配列で供給した。
【0137】
以下に示す編組織で、裏側の編地の毎コースに1336dtex/384フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート繊維の合燃糸(167dtex/48フィラメントの糸8本をZ撚125T/mの条件でリング撚糸させたもの)を緯糸挿入して、打ち込み12.0コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして170℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。
【0138】
得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0139】
(編組織)
L3:1211/1011/(オールイン)
L4:0111/2111/(オールイン)
L5:3410/4367/(オールイン)
L7:1110/0001/(オールイン)
L8:3310/1134/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0140】
[実施例7]
実施例6において、表側の編地を形成する筬(L3)の配列を2イン×2アウトになるように2本ずつ引き揃えて供給し、同様に、筬(L4)の配列を2アウト×2インで供給し、かつ、裏側の編地を形成する筬(L7、L8)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率13.8%のポリエチレンテレフタレート繊維の原糸を供給し、緯糸挿入糸を2016dtex/576フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート繊維の合燃糸(167dtex/48フィラメントの糸12本をZ撚125T/mの条件でリング撚糸させたもの)を挿入し、さらに、編組織を以下のように変更した以外は、実施例6と同様にして表面メッシュ調の立体編物を得た。
【0141】
得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0142】
(編組織)
L3:0111/3233/4544/3222/(2イン×2アウト)
L4:4544/3222/0111/3233/(2アウト×2イン)
L5:3410/4367/(オールイン)
L7:1110/0001/(オールイン)
L8:6610/1167/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0143】
[実施例8]
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間8mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L1、L2)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L3)から参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給し、さらに、裏側の編地を形成する筬(L4、L5)から560dtex/96フィラメント(280dtex/48フィラメントの糸を2本引き揃え)で乾熱収縮率11.7%のポリエチレンテレフタレート繊維の衣料用原糸をオールインの配列で供給した。
【0144】
以下に示す編組織で、裏側の編地にタテ方向に挿入糸(参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを2本引き揃える)をオールインの配列で筬(L6)にて挿入し、打ち込み13.2コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして160℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。
【0145】
得られた立体編物の諸物性を表1に示す。
【0146】
(編組織)
L1:1211/1011/(オールイン)
L2:0111/2111/(オールイン)
L3:3410/4367/(オールイン)
L4:1110/0001/(オールイン)
L5:5510/1156/(オールイン)
L6:2222/0000/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0147】
[実施例9]
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L1)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、筬(L2)から560dtex/96フィラメント(280dtex/48フィラメントの糸を2本引き揃え)で乾熱収縮率11.7%のポリエチレンテレフタレート繊維の衣料用原糸をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L3)から参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給し、さらに、裏側の編地を形成する筬(L4、L6)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給した。
【0148】
以下に示す編組織で、裏側の編地にタテ方向に挿入糸(参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを2本引き揃える)をオールインの配列で筬(L5)にて挿入し、打ち込み11.2コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして160℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。
【0149】
得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0150】
(編組織)
L1:5655/1011/(オールイン)
L2:0111/1000/(オールイン)
L3:3410/4367/(オールイン)
L4:1110/0001/(オールイン)
L5:0022/2200/(オールイン)
L6:5510/1156/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0151】
[実施例10]
実施例9において、筬(L1)に560dtex/96フィラメント(280dtex/48フィラメントを2本引き揃え)で乾熱収縮率11.7%のポリエチレンテレフタレート繊維の衣料用原糸をオールインの配列で供給し、編組織を、L1:6744/1033/(オールイン)に変更した以外は、実施例9と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0152】
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度が高く、適度なフィット性と柔軟性に優れており、幅入りによる臀部への違和感がなく、安定した座り心地が得られるものであった。またクッション性や着座後の回復性に優れ、くぼみやよこしわが目立たない見栄えの良いものであった。
【0153】
[比較例1]
実施例1において、裏側の編地に挿入されるタテ方向の挿入糸を取り除き、生機の仕上げ時の幅出し率を15%にした以外は、実施例1と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0154】
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度は良好であるが、幅入りによる臀部への違和感が高いため、座り心地が悪いものであった。またクッション性やフィット性に乏しく、さらに着座後のくぼみが残る回復性の悪いものであった。
【0155】
[比較例2]
実施例6において、表側の編地を形成する筬(L3、L4)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を供給し、裏側の編地を形成する筬(L7、L8)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率5.7%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を供給し、裏側の編地の毎コースに167dtex/48フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート繊維を緯糸挿入した以外は、実施例6と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0156】
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度は良好であるが、幅入りによる臀部への違和感があるため、座り心地が悪いものであった。またクッション性やフィット性に乏しく、さらに着座後のくぼみが残る回復性の悪いものであった。
【0157】
[比較例3]
実施例1において、裏側の編地に挿入されるタテ方向の挿入糸を取り除き、編組織を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0158】
(編組織)
L1:1211/1011/(オールイン)
L2:0111/2111/(オールイン)
L3:3410/4367/(オールイン)
L4:1110/0001/(オールイン)
L5:3310/1134/(オールイン)
得られた立体編物は、張設圧縮貫通強度は良好であるが、幅入りによる臀部への違和感が高いため、座り心地が悪いものであった。またクッション性やフィット性に乏しく、さらに着座後のくぼみが残る回復性の悪いものであった。
【0159】
[比較例4]
実施例6において、表側の編地を形成する筬(L3、L4)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を供給し、裏側の編地を形成する筬(L7、L8)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率13.8%のポリエチレンテレフタレート繊維の原糸を供給し、かつ、編組織を以下のようにし、緯糸挿入として裏側の編地の毎コースに2016dtex/576フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の合燃糸(167dtex/48フィラメントの糸12本をZ撚125T/mの条件でリング撚糸させたもの)を用いた以外は、実施例6と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0160】
(編組織)
L3:2322/1011/(オールイン)
L4:0111/3222/(オールイン)
L5:3410/4367/(オールイン)
L7:1110/0001/(オールイン)
L8:6610/1167/(オールイン)
得られた立体編物は、クッション性やフィット性に乏しく、着座時の幅入りは小さいものの、表面が硬くて痛みを感じるため、座り心地が悪いものであった。
【0161】
[比較例5]
比較例4において、裏側の編地を形成する筬(L7、L8)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を供給した以外は、比較例4と同様にして立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0162】
得られた立体編物は、クッション性やフィット性に乏しく、着座時の幅入りは小さいものの、表面が硬くて痛みを感じるため、座り心地が悪いものであった。
【0163】
[比較例6]
緯糸挿入装置を装備した10枚筬、14ゲージ、釜間12mmのダブルラッセル編機を用い、表裏の編地を形成する筬(L3、L4、L6、L7)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L5)から参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給した。
【0164】
以下に示す編組織で、裏側の編地にタテ方向に挿入糸(参考例1で製造した880dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント)をオールインの配列で筬(L8)にて挿入し、さらに、表側の編地の毎コースに835dtex/240フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート繊維の合燃糸(167dtex/48フィラメントの糸5本をZ撚125T/mの条件でリング撚糸させたもの)を緯糸挿入して、打ち込み12.0コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして170℃×3分で乾熱ヒートセットし、表裏の編地が平坦な立体編物を得た。
【0165】
得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0166】
(編組織)
L3:5655/1011/(オールイン)
L4:0111/1000/(オールイン)
L5:3410/4367/(オールイン)
L6:1110/0001/(オールイン)
L7:5510/1156/(オールイン)
L8:2222/0000/(オールイン)
得られた立体編物は、クッション性やフィット性に乏しく、着座時の幅入りは小さいものの、表面が硬くて痛みを若干感じるため、座り心地が悪いものであった。
【0167】
[比較例7]
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L2、L3)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率5.7%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給し、連結部を形成する筬(L4)から参考例1で製造した390dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給し、さらに、裏側の編地を形成する筬(L5、L6)から1000dtex/288フィラメント(500dtex/144フィラメントの糸を2本引き揃え)で乾熱収縮率3.3%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を2アウト×2イン(L5)、2イン×2アウト(L6)の配列で供給した。
【0168】
以下に示す編組織で、表側の編地にタテ方向に挿入糸(参考例1で製造した880dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメント)をオールインの配列で筬(L1)にて挿入し、打ち込み12.7コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を5%幅出しして150℃×3分で乾熱ヒートセットし、片面がメッシュ調の立体編物を得た。得られた立体編物の諸物性を表2に示す。
【0169】
(編組織)
L1:1111/0000/(オールイン)
L2:1011/3433/(オールイン)
L3:1000/0111/(オールイン)
L4:4367/3410/(オールイン)
L5:3345/4432/2201/1132/(2アウト×2イン)
L6:2201/1132/3345/4432/(2イン×2アウト)
得られた立体編物は、反発感のあるクッション性はあるものの、着座時の幅入りまたはよこしわによる違和感があり、フィット性に乏しく、座り心地の悪いものであった。更によこしわが残るため、見栄えも悪いものであった。
【0170】
[実施例11]
4枚筬を装備した14ゲージのラッセル編機を用い、地組織を形成する筬(L1、L2)から560dtex/96フィラメントで乾熱収縮率10.6%のポリエチレンテレフタレート繊維の原糸をオールインの配列で供給し、挿入糸用の筬(L3)から参考例1で製造した880dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの配列で供給した。
【0171】
以下に示す編組織で、機上コース14.0コース/2.54cmの密度で生機を編成した。得られた生機を有り幅にて160℃×3分で乾熱ヒートセットし、座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0172】
(編組織)
L1:10/01/(オールイン)
L2:10/56/(オールイン)
L3:22/00/(オールイン)
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通応力が高く、適度な柔軟性でフィット性に優れ、臀部の違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また着座後の回復性に優れ、くぼみが全く目立たない見栄えの良いものであった。
【0173】
[実施例12]
実施例11において、挿入糸の編組織を以下のようにした以外は、実施例11と同様にして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0174】
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通応力が高く、適度な柔軟性でフィット性に優れ、臀部の違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また着座後の回復性に優れ、くぼみがほぼ目立たない見栄えの良いものであった。
【0175】
(編組織)
L3:00/33/(オールイン)
【0176】
[実施例13]
実施例11において、地組織を形成する筬(L1、L2)から500dtex/144フィラメントで乾熱収縮率3.5%のポリエチレンテレフタレート仮撚糸を供給した以外は、実施例11と同様にして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0177】
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通応力が高く、適度な柔軟性でフィット性に優れ、臀部の違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また着座後の回復性に優れ、くぼみがほぼ目立たない見栄えの良いものであった。
【0178】
[実施例14]
実施例11において、機上コースを10.2コース/2.54cmとした以外は、実施例11と同様にして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0179】
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通応力が高く、適度な柔軟性でフィット性に優れ、臀部の違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また着座後の回復性に優れ、くぼみがほぼ目立たない見栄えの良いものであった。
【0180】
[実施例15]
緯糸挿入機を装備した14ゲージのラッセル編機を用い、地組織を形成する筬(L1、L2)から560dtex/96フィラメントで乾熱収縮率10.6%のポリエチレンテレフタレート繊維の原糸をオールインの配列で供給し、参考例2で製造した1060dtexの鞘芯モノフィラメントを毎コースに緯糸挿入し、かつ、編組織を以下のようにし、機上コース12.7コース/2.54cmの密度で生機を編成した。得られた生機を有り幅にて160℃×3分で乾熱ヒートセットし、座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0181】
(編組織)
L1:10/01/(オールイン)
L2:10/34/(オールイン)
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通応力が高く、適度な柔軟性でフィット性に優れ、臀部の違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また着座後の回復性に優れ、くぼみが全く目立たない見栄えの良いものであった。
【0182】
[比較例8]
実施例13において、地組織を形成する筬(L1、L2)から334dtex/72フィラメントで乾熱収縮率3.6%のポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をオールインの配列で供給した以外は、実施例13と同様にして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0183】
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通強度がかなり低く、面剛性が不十分で、フィット性と安定感に劣り、さらに、着座後のくぼみが残る回復性の悪いものであった。
【0184】
[比較例9]
実施例11において、機上コースを6コース/2.54cmとした以外は、実施例11と同様にして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0185】
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通強度が低く、幅入りによる臀部への違和感が高いため、座り心地が悪いものであった。またフィット性に乏しく、さらに着座後のくぼみが残る回復性の悪いものであった。
【0186】
[比較例10]
実施例11において、挿入糸を挿入しない以外は実施例11と同様にして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0187】
得られた座席用シート材は、面剛性が不十分で安定感に劣り、さらに、着座後のくぼみが残る回復性の悪いものであった。
【0188】
[比較例11]
実施例15において、地組織を形成する筬(L1)から1120dtex/192フィラメントで乾熱収縮率10.5%のポリエチレンテレフタレート繊維の原糸をオールインの配列で供給し、緯糸挿入糸として参考例2で製造した3230dtexの鞘芯型モノフィラメントを用いた以外は、実施例5と同様にして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材の諸物性を表3に示す。
【0189】
得られた座席用シート材は、A方向の5%伸長時応力が高過ぎると共に、タテヨコの伸長時の応力比が小さ過ぎるため、硬く鉄板状となり、着座時のフィット性に劣るものであった。
【0190】
[実施例16]
参考例2で製造した1820dtexの鞘芯型モノフィラメントを経糸に用い、緯糸には1670dtex/480フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の合燃糸(167dtex/48フィラメントの糸の仮撚加工糸(Z撚)10本をS撚300T/mの条件でリング撚糸させたもの)を用いて、平織組織の生機を作製した。
【0191】
作製した生機を160℃で乾熱セットした後、液流染色機で精練し、160℃でファイナルセットして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材は、経糸密度が28本/2.54cm、緯糸密度が22本/2.54cmであった。得られた座席用シート材の諸物性を表4に示す。
【0192】
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通強度が高く、適度な柔軟性を有し、フィット性に優れ、臀部の違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また着座後の回復性に優れ、くぼみが目立たない見栄えの良いものであった。
【0193】
[実施例17]
実施例16において、緯糸に参考例2で製造した1060dtexの鞘芯型モノフィラメントを用いた以外は、実施例16と同様にして製織し、仕上加工して座席用シート材を得た。得られた座席用シート材は、経糸密度は28本/2.54cm、緯糸密度は28本/2.54cmであった。得られた座席用シート材の諸物性を表4に示す。
【0194】
得られた座席用シート材は、実施例16と同様に張設圧縮貫通強度が高く、適度な柔軟性を有し、フィット性に優れ、臀部の違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また着座後の回復性に優れ、くぼみが目立たない見栄えの良いものであった。
【0195】
[実施例18]
経糸および緯糸として、綿の合撚糸(綿10番手を4本引き揃えて、S撚300T/mの条件でリング撚糸させたもの)を用いて、平織組織の生機を作製し、仕上加工して座席用シート材を得た。得られた座席用シート材は、経糸密度は34本/2.54cm、緯糸密度は24本/2.54cmであった。得られた座席用シート材の諸物性を表4に示す。
【0196】
得られた座席用シート材は、実施例16のものに対比すると、張設圧縮貫通強度がやや低く、フィット性と回復性にやや劣るが、臀部への違和感が無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。
【0197】
[比較例12]
実施例16において、経糸に用いた1820dtexの鞘芯型モノフィラメントを緯糸に用いた以外は、実施例16と同様にして製織し、仕上加工して座席用シート材を得た。得られた座席用シート材は、経糸密度は28本/2.54cm、緯糸密度は28本/2.54cmであった。得られた座席用シート材の諸物性を表4に示す。
【0198】
得られた座席用シート材は、実施例16のものに対比すると、特にフィット性に劣るものであった。
【0199】
[比較例13]
実施例16において、経糸および緯糸として、参考例2で製造した3230dtexの鞘芯型モノフィラメントを用いた以外は、実施例16と同様にして製織し、仕上加工して座席用シート材を得た。得られた座席用シート材は、経糸密度は28本/2.54cm、緯糸密度は28本/2.54cmであった。得られた座席用シート材の諸物性を表4に示す。
【0200】
得られた座席用シート材は、A方向の5%伸長時応力が高過ぎると共に、タテヨコの伸長時の応力比が小さ過ぎるため、硬く鉄板状となり、着座時のフィット性に劣るものであった。
【0201】
[比較例14]
参考例2で製造した1060dtexの鞘芯型モノフィラメントを経糸に用い、緯糸には835dtex/240フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の合燃糸(167dtex/48フィラメントの糸の仮撚加工糸(Z撚)5本をS撚300T/mの条件でリング撚糸させたもの)を用いて、平織組織の生機を作製した。
【0202】
作製した生機を160℃で乾熱セットした後、液流染色機で精練し、160℃でファイナルセットして座席用シート材を得た。得られた座席用シート材は、経糸密度が9本/2.54cm、緯糸密度が8本/2.54cmであった。得られた座席用シート材の諸物性を表4に示す。
【0203】
得られた座席用シート材は、張設圧縮貫通強度がかなり低く、面剛性が不十分で、フィット性と安定感に劣り、さらに、着座後のくぼみが残る回復性の悪いものであった。
【0204】
【表1】

【0205】
【表2】

【0206】
【表3】

【0207】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明の座席用シート材は、自動車、鉄道車両、航空機、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子等の乗り物の座席シート、および、家具、事務用椅子等の用途に好適に用いることができ、優れたクッション性能を示す。特に、立体編物からなる座席用シート材は、上記の用途以外に、肩パット、ブラジャーカップ、レガーズのクッション材、サポーターのクッション材、保温衣料等のライニング材、ヘルメットの内張り、人体保護パッド等、人体に接触するクッション材、緩衝材、保型材、保温材等にも好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タテ方向またはヨコ方向いずれか一方の応力が大きい方向の5%伸長時の応力(A)が40〜300N/4cm幅であり、他方の5%伸長時の応力(B)との比(A/B)が1.5〜15.0であり、かつ、2辺固定による張設圧縮時の幅入り率(H)が0〜15%であることを特徴とする座席用シート材。
【請求項2】
織物からなることを特徴とする請求項1に記載の座席用シート材。
【請求項3】
編物からなることを特徴とする請求項1に記載の座席用シート材。
【請求項4】
表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸とを有する立体編物であることを特徴とする請求項1に記載の座席用シート材。
【請求項5】
連結糸がモノフィラメントであることを特徴とする請求項4に記載の座席用シート材。
【請求項6】
編地の少なくとも一部に挿入糸が用いられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の座席用シート材。
【請求項7】
編地を構成する地組織が鎖編と3〜8針振りのトリコット編との組み合わせ組織で構成され、かつ、挿入糸が、該地組織のトリコット編のアンダーラップ方向に対して同方向または異方向に1コース当り3針振り以下の振り幅で経糸挿入されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の座席用シート材。
【請求項8】
挿入糸が300〜3000dtexのモノフィラメントであることを特徴とする請求項6または7に記載の座席用シート材。
【請求項9】
張設圧縮貫通強度(G)が3000N以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の座席用シート材。
【請求項10】
表側編地の面伸長率(F)と裏側編地の面伸長率(D)との比(F/D)が1.5〜10.0の立体編物であることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の座席用シート材。
【請求項11】
置敷圧縮弾性率が20〜150N/mmの立体編物であることを特徴とする請求項10に記載の座席用シート材。
【請求項12】
連結糸としてポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントを用いた立体編物であることを特徴とする請求項10または11に記載の座席用シート材。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の座席用シート材からなることを特徴とする座席シート。
【請求項14】
少なくとも一部に、ウレタンフォーム、不織布クッション材、熱可塑性樹脂発泡体、表皮材から選ばれた一種または二種以上を用い、これと請求項1〜12のいずれかに記載の座席用シート材との積層体であることを特徴とする座席シート。
【請求項15】
請求項13または14に記載の座席シートを有する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/034684
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514637(P2005−514637)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015078
【国際出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】