説明

廃棄物処分場

【課題】埋立地内壁への設備配置をなくすことにより、内壁の遮水シートの損傷を防止し、埋立地の遮水機能を満足することができる廃棄物処分場を提供すること。
【解決手段】廃棄物の埋立地A内に柱状体1を立設し、該柱状体1と地上部Bとの間に連絡橋2を設けるとともに、該柱状体1の外周にリング状体3を昇降可能に設け、該リング状体3及び/又は柱状体1に埋立地Aの維持管理設備4を設け、前記連絡橋2に該維持管理設備4の配管や配線5を敷設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場に関し、特に、埋立地内壁への設備配置をなくすことにより、内壁の遮水シートの損傷を防止し、埋立地の遮水機能を満足することができる廃棄物処分場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、最終処分場の立地が困難な人口密集地域などでは、省敷地型である大深度の被覆型処分場が求められる。
この被覆型処分場は、大深度地下を利用するため、従来の処分場と比較して占有面積が数分の一になるメリットを有している。
【0003】
ところで、このような被覆型大深度の処分場では、散水管等の維持管理設備の配置が問題となるが、処分場は被覆型であるから、屋根部のコストを下げるために一番効率のよい処分場の形態は直壁の埋立地となる。
このため、直壁に各種設備を配置するところであるが、50mなどの大深度壁に各種設備を配置する場合、その表面には1.5mmの薄い遮水シートが敷設されており、配管等のアンカーにより遮水シートに穴をあけることは、穴の補修をするにせよ弱点を作ることになり、好ましいとはいえない。
なお、このようなアンカーを必要とする設備としては、散水管や照明器具、ガス抜き管、浸出水の集排水管、底部への作業員アプロ−チ用の梯子等がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の廃棄物処分場が有する問題点に鑑み、埋立地内壁への設備配置をなくすことにより、内壁の遮水シートの損傷を防止し、埋立地の遮水機能を満足することができる廃棄物処分場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の廃棄物処分場は、廃棄物の埋立地内に柱状体を立設し、該柱状体と地上部の間に連絡橋及び/又は連絡地下通路を設けるとともに、該柱状体に埋立地の維持管理設備を設け、前記連絡橋及び/又は連絡地下通路に該維持管理設備の配管及び/又は配線を敷設したことを特徴とする。
【0006】
この場合において、前記柱状体の外周にリング状体を昇降可能に設けるとともに、該リング状体に埋立地の維持管理設備を設けるようにすることができる。
【0007】
また、前記柱状体を廃棄物の埋立地内に複数立設するようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の廃棄物処分場によれば、廃棄物の埋立地内に柱状体を立設し、該柱状体と地上部の間に連絡橋及び/又は連絡地下通路を設けるとともに、該柱状体に埋立地の維持管理設備を設け、前記連絡橋及び/又は連絡地下通路に該維持管理設備の配管及び/又は配線を敷設することから、埋立地内壁への設備配置をなくすことができ、これにより、内壁の遮水シートの損傷を防止し、埋立地の遮水機能を満足することができる。
【0009】
また、前記柱状体の外周にリング状体を昇降可能に設けるとともに、該リング状体に埋立地の維持管理設備を設けるようにすることにより、埋立地の廃棄物の高さに応じて維持管理設備を機能させるとともに、作業員を昇降させて機械のメンテナンス等を行うことができる。
【0010】
また、前記柱状体を廃棄物の埋立地内に複数立設するようにすることにより、任意の形状や大きさの廃棄物の埋立地に容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の廃棄物処分場の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図4に、本発明の廃棄物処分場の一実施例を示す。
この廃棄物処分場は、廃棄物の埋立地A内に柱状体1を立設し、該柱状体1と地上部Bとの間に連絡橋2を設けるとともに、該柱状体1の外周にリング状体3を昇降可能に設け、該リング状体3及び/又は柱状体1に埋立地Aの維持管理設備4を設け、前記連絡橋2に該維持管理設備4の配管や配線5を敷設するようにしている。
【0013】
廃棄物処分場は、図3〜図4に示すように、屋根6を有する被覆型大深度のものからなり、底部A1が防水処理され、内壁A2が直壁となった無人の埋立地Aを備えている。
埋立地Aは、本実施例では平面略円形に形成されており、その地上部側には、クレーンやバケットを備えた廃棄物投入設備7が設置されている。
なお、埋立地Aの平面形状は、本実施例のように平面略円形に形成することが好ましいが、これに限定されず、矩形等の任意の形状に形成することができる。
【0014】
柱状体1は、図1に示すように、埋立地Aの中心に立設された円筒状の塔からなり、埋立地Aの維持管理設備4として、ガス抜き設備41、浸出水の集排水設備42、底部への作業員アプロ−チ用の階段43や梯子44等を備えている。
後述する散水設備45から散水された水は、廃棄物を通り、柱状体1の底部の集排水ピット42aに集まるため、集排水設備42のポンプPによりポンプアップして水処理設備へと送る。
柱状体1内には、このポンプPのメンテナンスのために作業員が下まで降りる階段43や、ポンプPを上まであげるクレ−ンCも装備されている。
また、集排水ピット42aには重い有毒ガスも溜まる可能性があるので、ガス抜き設備41の排気ダクトを柱状体1内に立ち上げ、作業員のための換気を行う。
なお、柱状体1の外周面には面状排水材11が貼着されている。
【0015】
ところで、本実施例においては、柱状体1を、平面略円形に形成されて埋立地Aの中心に立設するようにしたが、埋立地Aの形状や大きさに合わせて、柱状体1を廃棄物の埋立地内に複数立設するようにすることもできる。
【0016】
連絡橋2は、図3に示すように、地上部B付近まで立ち上げられた連絡橋2と地上部Bとを連絡しており、作業員が行き来できるように橋として形成されるとともに、柱状体1やリング状体3の維持管理設備4の配管や配線5が敷設されている。
なお、図5に示すように、廃棄物処分場が地上に構築される場合には、連絡橋2に代えて、連絡橋2と同様の機能を備えた連絡地下通路20を設けることもでき、また、廃棄物処分場が半地下に構築される場合等には、連絡橋2と連絡地下通路20とを併用することもできる。
また、柱状体1を廃棄物の埋立地内に複数立設するようにした場合には、柱状体1同士を連絡橋2及び/又は連絡地下通路20によって接続することによって、間接的に地上部Bと連絡するようにすることもできる。
【0017】
リング状体3は、図1〜図2に示すように、本実施例では、廃棄物の埋立高さに合わせて、昇降用ウインチ34により昇降可能に設置された八角形のリング状ステージからなり、人貨兼用のゴンドラ構造により昇降が可能で、散水設備45や照明設備46を備えている。
リング状体3は、機械への給油、メンテナンスあるいはその他の目的で埋立地A内へ立ち入るための昇降設備を兼ねており、屋根を備えた2層構造で、手摺りや荷降し用のハッチを備えている。
人が乗る場合は、柱状体1の頂部より該柱状体1内を1層下段まで階段で移動し、乗降用開口部33よりリング状体3に乗り込む。
リング状体3は、柱状体1と1対の関係で機能し、柱状体1の表面を傷つけないように、またリング状体3の安定を保つために、リング状体3の内側には昇降用のガイドローラ31が、また柱状体1側にはガイドレール32がそれぞれ設置されている。
なお、リング状体3は、必ずしも完全なリング形状をしている必要はなく、所期の目的を達成するものであれば、その形状は特に限定されず、例えば、断続的な形状のものであっても実質的にリング形状をしていれば、これを排除するものでない。
【0018】
ところで、本実施例においては、柱状体1に対してリング状体3を昇降のみ可能に設けるようにしたが、さらに、必要に応じて、リング状体3をターンテーブル等の任意の機構(図示省略)を介することによって、同一平面内で回転又は所定の角度の範囲内において揺動可能に構成したり、リング状体3に後述する散水設備45等の埋立地の維持管理設備を移動可能に設置することもでき、これにより、散水設備45からの散水を埋立地Aの全域に亘って均一に行うことができる等、埋立地の維持管理をより高精度に行うことができる。
また、リング状体3を柱状体1に複数設けるようにし、各リング状体3に散水設備45等の埋立地の維持管理設備を選択的に設け、各リング状体3を独立して昇降等の動作をするようにすることもでき、これによっても、埋立地の維持管理をより高精度に行うことができる。
【0019】
また、リング状体3には、散水設備45と照明設備46が設置されており、散水設備45は、遠くへ飛ばす散水銃45aとリング状体3の足元に散水する散水ノズル45b(スプリンクラー)の2種類がリング状体3に装備されている。
散水設備45と照明設備46の配管や配線5は、リング状体3の昇降に伴って、ホースリールやコ−ドリール47を巻き取る方式で行われる。
また、散水用の水は、柱状体1の頂部に給水タンク48を配備するか、地上部Bからリング状体3まで配管するかの2方式からの選択が可能である。
なお、散水設備45は、基本的にはリング状体3からの散水のみとしているが、柱状体1の外周部に散水設備を設置することも可能である。本実施例では、リング状体3を昇降させながらの散水が可能な設備とし、リング状体3の隅角部8箇所に散水銃45a、底部に散水ノズル45bを設けている。遠方は散水銃45a、リング状体3の直下はノズル散水する
散水設備45への給水は、柱状体1の上部に設けられた給水タンク48よりホースにて行う。柱状体1の頂部には、リング状体3の昇降に合わせて巻き取り可能なホースリール47が備えられ、給水タンク48には連絡橋2を通じた配管5により貯水する。
ちなみに、平面的大型化の廃棄物処分場と同様に散水量を3.8mm/日とすると、38m/日となり、柱状体1の上部に10mタンクを設置した条件で4回給水、2時間毎の散水で必要量をまかなうことができる。
【0020】
また、照明設備46は、リング状体3の外周に16基程度取り付けられている。
具体的には、リング状体3の屋根部に全体照明用の固定照明を設置し、埋立地A内を照らすようにしている。
また、別途スポットライトを備え、作業箇所を照らすことも可能である。
これら照明設備46の電源コードは、給水ホースと同様にコードリール47で制御する。
【0021】
このように、本実施例の廃棄物処分場は、埋立地Aの内壁A2への設備配置を極力避けるため、中央部に柱状体1とリング状体3を設置し、ここに必要な維持管理設備4を配置している。
また、柱状体1は、埋立地Aの底部A1上に設置されるため、その底部構造において遮水性能を満足するようになるので、貯留部としての遮水機能は満足できるものとなる。
最終処分場にとって遮水機能は最も重要なものであり、その性能を確保して維持するためには、その設計においてできるだけ弱点をもたせないことが重要である。
本実施例では、埋立地Aの内壁A2への設備の配置をなくし、その替わりに柱状体1に集中させることで安全・安心な処分場としている。
【0022】
かくして、本実施例の廃棄物処分場は、廃棄物の埋立地A内に柱状体1を立設し、該柱状体1と地上部Bとの間に連絡橋2(及び/又は連絡地下通路)を設けるとともに、該柱状体1の外周にリング状体3を昇降可能に設け、該リング状体3及び/又は柱状体1に埋立地Aの維持管理設備4を設け、前記連絡橋2(及び/又は連絡地下通路)に該維持管理設備4の配管及び/又は配線を敷設することから、埋立地Aの内壁A2への設備配置をなくすことができ、これにより、内壁A2の遮水シートの損傷を防止し、埋立地Aの遮水機能を満足することができる。
また、柱状体1の外周にリング状体3を昇降可能に設けることにより、埋立地Aの廃棄物の高さに応じて維持管理設備4を機能させるとともに、作業員を昇降させて機械のメンテナンス等を行うことができる。
【0023】
以上、本発明の廃棄物処分場について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の廃棄物処分場は、埋立地内壁への設備配置をなくすことにより、内壁の遮水シートの損傷を防止し、埋立地の遮水機能を満足するという特性を有していることから、例えば、被覆型大深度の廃棄物処分場の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の廃棄物処分場の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】同廃棄物処分場のリング状体を示す平面図である。
【図3】同廃棄物処分場を示す全体図である。
【図4】同廃棄物処分場を示す外観図である。
【図5】本発明の廃棄物処分場の変形実施例を示す全体図である。
【符号の説明】
【0026】
1 柱状体
11 面状排水材
2 連絡橋
20 連絡地下通路
3 リング状体
31 ガイドローラ
32 ガイドレール
33 乗降用開口部
34 昇降用ウインチ
4 維持管理設備
41 ガス抜き設備
42 浸出水の集排水設備
42a 集排水ピット
43 階段
44 梯子
45 散水設備
45a 散水銃
45b 散水ノズル
46 照明設備
47 コードリール及び/又はホースリール
48 給水タンク
5 配線や配管
6 屋根
7 廃棄物投入設備
A 埋立地
A1 底部
A2 内壁
B 地上部
C クレーン
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の埋立地内に柱状体を立設し、該柱状体と地上部の間に連絡橋及び/又は連絡地下通路を設けるとともに、該柱状体に埋立地の維持管理設備を設け、前記連絡橋及び/又は連絡地下通路に該維持管理設備の配管及び/又は配線を敷設したことを特徴とする廃棄物処分場。
【請求項2】
前記柱状体の外周にリング状体を昇降可能に設けるとともに、該リング状体に埋立地の維持管理設備を設けるようにしたことを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場。
【請求項3】
前記柱状体を廃棄物の埋立地内に複数立設するようにしたことを特徴とする請求項1記載の廃棄物処分場。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−44613(P2007−44613A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230796(P2005−230796)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000124856)
【出願人】(501494551)株式会社建設工学研究社 (4)
【出願人】(598080048)株式会社 環境技研コンサルタント (1)
【Fターム(参考)】