説明

廃棄物分別装置

【課題】本発明は、分別作業時に固形廃棄物から生じる塵や埃を舞い上がらないように排出することができる廃棄物分別装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】廃棄物分別機構3は、建屋30内に設置されたベルトコンベヤ31により固形廃棄物を連続して搬送するとともに種類別に分別された当該固形廃棄物を収容する収容場所32を備えており、ベルトコンベヤ31の搬送面31aの両側に沿って隣接配置されるとともに搬送面31a側の側面に所定間隔を置いて開口する複数の吸気口40が形成された一対の吸気ダクト33と、吸気ダクト33に接続するとともに吸気口40から吸気ダクト33を通して搬送面の上方の空気を吸引するブロア100と、搬送面の上方に空気を流通させる給気装置50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様な固形物が混在する廃棄物を手選別により分別する廃棄物分別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の解体現場や建設現場では、家屋やビル等を一挙に解体すると、可燃物と不燃物が混在する混合廃棄物が多量に発生する。混合廃棄物には、コンクリート塊、残土、廃木材、紙くず、廃プラスチック、廃ボード、金属くず、陶器くず等が含まれており、多種類の材質のものが様々な大きさ及び形状で混在している。
【0003】
混合廃棄物をそのままの状態で最終処分することは処分コストがかかることから、材質や大きさ等に応じて選別して再利用することが行われている。例えば、特許文献1では、建設廃棄物を通過廃棄物及び残留廃棄物に粗選別処理する粗選別機構、残留廃棄物をベルトコンベヤで搬送しながら人手によりプラスチックや金属片を分別する分別機構、通過廃棄物を含水率17%以下となるまで乾燥させる乾燥機構、乾燥廃棄物から金属片等を回収する磁力選別機、乾燥廃棄物を比重差により重量物(小石、砂等)及び軽量物に選別する比重選別機構、比重選別機構からの排気を処理する集塵機及びサイクロン、軽量物を通過軽量物(残土等)及び残留軽量物(木片、紙片等)に細選別処理する細選別機構を備えた廃棄物選別処理システムが記載されている。
【0004】
廃棄物の人手による分別機構では、分別過程で塵や埃が舞い上がるため、作業者が舞い上がった塵や埃を吸い込んで健康被害を受けるおそれがあり、分別機構における作業環境を悪化させないための対策が必要となる。こうした作業環境への対策としては、例えば、特許文献2では、資源ゴミを手選別するため移動又は搬送する搬送装置に沿って透明なフード板を設けてフード板の所定位置に作業用手袋を備え、作業者に資源ゴミの臭い等の影響が及ばないようにした点が記載されている。また、特許文献3では、廃棄物を建屋内に持込んで処理するようにした廃棄物処理場において、建屋の一側部に排気ファンや集じん機を備えた複数の排気フードを配置するとともに、他側部には複数の送気ファンを設けた点が記載されている。また、特許文献4では、換気用の送風口を搬送コンベアの直上方の天井に下向きに設けるとともに、その排気口を床から1.5m以下の高さ位置で、搬送コンベアの両側の作業者の後方の壁に設け、搬送コンベア上から舞い上がるダストを送風口からの下向きの気流に乗せ、この下向きの気流に乗せたダストを作業者の顔よりも低い位置で各排気口に向けて排出することにより、各作業者がダストを吸い込むことなく、良い環境で選別作業をできるようにした点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−315000号公報
【特許文献2】実開平7−37382号公報
【特許文献3】特開平11−37524号公報
【特許文献4】特開2003−126788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、人手による固形廃棄物の分別作業では人体に悪影響を与える劣悪な環境下で作業を行うため、特許文献2から4に示すような対策を講じる必要がある。しかしながら、特許文献2に示すように、透明なフード板を設けた場合でも分別作業時に舞い上がる塵や埃が室内に拡散するため、作業者に塵や埃の影響を与えないようにすることは困難である。また、特許文献3及び4では、排気ファンや送気ファンを設けて舞い上がる塵や埃を気流に乗せて排出することで分別作業を行う室内の環境を改善するようにしているが、固形廃棄物から塵や埃がいったん舞い上がってしまうと、排出されるまでの間に作業者が吸い込むおそれがあり、作業者への健康被害を十分防止することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、分別作業時に固形廃棄物から生じる塵や埃を舞い上がらないように排出することができる廃棄物分別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る廃棄物分別装置は、室内に設置されたベルトコンベヤにより固形廃棄物を連続して搬送するとともに種類別に分別された当該固形廃棄物を収容する収容場所を備えた廃棄物分別装置において、前記ベルトコンベヤの搬送面の両側に沿って隣接配置されるとともに当該搬送面側の側面に所定間隔を置いて開口する複数の吸気口が形成された一対の吸気ダクトと、前記吸気ダクトに接続するとともに前記吸気口から前記吸気ダクトを通して前記搬送面の上方の空気を吸引する吸気手段と、前記搬送ベルトの上方に空気を流通させる給気手段とを備えている。さらに、前記吸気口は、全面にメッシュ状の金網体が設けられている。さらに、前記吸気手段は、前記吸気ダクトに所定間隔を置いて接続されるとともに空気の流通を開閉する開閉弁を有する複数の接続管を備えている。さらに、前記吸気口を開閉する蓋体が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記の構成を備えることで、分別作業時に固形廃棄物から生じる塵や埃を舞い上がらないように排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施形態を備えた廃棄物選別処理システム全体の概略構成図である。
【図2】建屋の2階部分に設置されたベルトコンベヤを含む分別作業部分に関する側面図である。
【図3】建屋の2階部分に設置されたベルトコンベヤを含む分別作業部分に関する上面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図2のB−B断面図である。
【図6】図2のC−C断面図である。
【図7】吸気口に蓋体を設けた場合の外観斜視図である。
【図8】建屋内で分別作業を行う場合に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る実施形態を備えた廃棄物選別処理システム全体の概略構成図である。図1に示す廃棄物選別処理システムでは、まず、持ち込まれた廃棄物Wが搬送コンベヤ1により搬送されて粗選別機構2に投入される。粗選別機構2では、投入された廃棄物Wが所定の大きさの篩目により通過廃棄物W1及びW2が落下して粗選別処理され残留廃棄物W3が次の廃棄物分別機構3に移送される。
【0013】
廃棄物分別機構3は、2階建ての建屋30の2階部分にベルトコンベヤ31が設置されており、残留廃棄物W3はベルトコンベヤ31に移送されて建屋30内を搬送される。ベルトコンベヤ31の両側には複数の作業者Mが配置されており、搬送される残留廃棄物W3に対して作業者Mがペットボトル、空き缶、プラスチック片、金属片といったものを選別する。建屋30の1階部分はベルトコンベヤ31の搬送方向に沿って複数の仕切り壁により区切られており、区切られた区画毎に選別された廃棄物の収容場所32となっている。そして、2階部分には選別された廃棄物を投入する複数のシュートがベルトコンベヤ31の両側に設けられており、各シュートは床を貫通して1階部分の収容場所と連通している。作業者は、収容場所に対応する廃棄物を選別してシュートに投入することで、分別作業が行われるようになっている。
【0014】
分別処理された後の残留廃棄物W4が次の磁力選別処理のベルトコンベヤ4に移送される。ベルトコンベヤ4の搬送路の上方には磁力選別機5が設置されており、搬送される残留廃棄物W4から金属片等を磁力により吸着して回収する。磁力選別処理された後の残留廃棄物W5は次の風力選別機構6に移送される。風力選別機構6では、投入される残留廃棄物W5を落下させながら、上下に配置された2つのノズルから空気を吹き出して送風し、重量物である不燃物及び軽量物である可燃物に選別する。2つのノズルの吹き出し角度を調整することで、不燃物及び可燃物の選別を効率よく行うことができる。
【0015】
図2は、建屋30の2階部分に設置されたベルトコンベヤ31を含む分別作業部分に関する側面図であり、図3はその上面図である。また、図4は、図3のA−A断面図であり、図5及び図6は、それぞれ図2のB−B断面図及びC−C断面図である。ベルトコンベヤ31の搬送面31aの両側には、断面矩形状の一対の吸気ダクト33が隣接配置されている。吸気ダクト33には、搬送面31a側の側面に、後述する吸気口40が所定間隔を置いて複数開口しており、搬送面31aとは反対側の側面に所定間隔を置いて接続管34が接続されて吸気ダクト33と連通している。吸気口40は矩形状に開口しており、全面にメッシュ状の金網体が取り付けられている。接続管34は、接続箇所から下方に向かって延びるように配置されて床部Fを貫通しており、下端部が1階部分の天井に配設された分岐管36に接続されている。分岐管36は、接続管34の下端部が2つずつ接続されており、分岐管36の一方の端部は連結管35に接続され、他方の端部は閉鎖されている。
【0016】
接続管34にはそれぞれ開閉弁37が取り付けられており、作業者が作業を行う場合に開閉弁37を開いて作業者の周囲の吸気口40から吸気を行うことができるようになっている。また、この例では、吸気口40は開口した状態のままであるが、図7に示すように、吸気口40を閉鎖する蓋体41を設けて作業していない範囲の吸気口40を閉鎖して空気の流入を止めるようにしてもよい。蓋体41は、吸気口40の上下に配設された一対のガイドレール42の間に摺動可能に嵌め込まれて吸気口40を開閉可能に取り付けられる。このように、分別作業を行わない範囲では開閉弁37を閉鎖するとともに吸気口40を蓋体41で閉鎖することで、作業範囲の吸気口40からの吸引力を高めることができる。
【0017】
連結管35は、建屋30の外部に設置されたブロア100に連通しており、ブロア100を動作させて空気を吸引することで、連結管35、分岐管36及び接続管34を介して吸気ダクト33内の空気が吸引されるようになる。そのため、吸気ダクト33に開口した吸気口40から搬送面31aの上方の空気が吸引されて排出されるようになる。
【0018】
ベルトコンベヤ31の両側には、接続管34の間にシュート38が配置されており、シュート38は、上端が開口して下端部が床部Fに固定されており、床部Fを貫通して1階部分の廃棄物の収容場所32に連通している。そのため、選別された廃棄物をシュート38に投入すると、投入された廃棄物は収容場所32に落下するようになる。吸気ダクト33の搬送面31a側の下端部には、ベルトコンベヤ31との間の隙間を塞ぐように帯状のカバー体39が取り付けられている。そして、ベルトコンベヤ31の搬送ベルトは、カバー体39と摺接しながら搬送されていくようになっており、吸気ダクト33の吸気口40から空気が吸引された場合でもベルトコンベヤ31との間の隙間から空気が流入して吸気口に流れ込むことはほとんどない。
【0019】
図8は、建屋30内で分別作業を行う場合に関する説明図である。ベルトコンベヤ31の搬送面31aに載置された廃棄物が搬送されながら作業者Mにより選別されてシュート38に投入され、収容場所32に収容されて分別されていく。作業者Mが廃棄物を選別する際に、廃棄物から塵や埃が舞い上がるようになるが、吸気口40から常時搬送面31aの上方の空気が吸引されているため、廃棄物から分離した塵や埃は舞い上がる前に吸引されて外部に排出されるようになる。
【0020】
吸気口40は吸気ダクト33の搬送面31a側に開口しているため、搬送面31aに近接配置しており、ベルトコンベヤ31の両側はカバー体39で塞がれているため、搬送面31aの上方の空気を専ら吸引するようになり、効率よく塵や埃を吸引することができる。そして、吸気口40は、シュート38とは反対側の吸気ダクト33の側面に開口し、シュート38とは離れた位置に設定されているため、シュート38から空気が流入することがなく、搬送面31aの上方の空気を吸引するようになっている。
【0021】
また、建屋30内には、2階部分の上部にエアコン等の空気を吹き出す給気装置50を設置しておき、ベルトコンベヤ31の搬送面31aの上方に向かって空気を吹き出すような気流を発生させることで、搬送面31aの上方に空気を流通させる。給気装置50から吹き出した空気が搬送面31aの上方に流通して一部が下降気流となって塵や埃の舞い上がりを確実に抑止することが可能となる。そのため、作業者Mが塵や埃を吸い込むことがなくなり、分別処理に伴う健康被害を防止することができる。
【0022】
また、分別作業を行っていない範囲の吸気口40を蓋体41で閉鎖したり、接続管34の開閉弁37を閉じることで、分別作業を行っている範囲の空気を吸引する能力を向上させることができ、作業形態に合わせた設定が可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・搬送コンベヤ、2・・・粗選別機構、3・・・廃棄物分別機構、4・・・ベルトコンベヤ、5・・・磁力選別機、6・・・風力選別機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設置されたベルトコンベヤにより固形廃棄物を連続して搬送するとともに種類別に分別された当該固形廃棄物を収容する収容場所を備えた廃棄物分別装置において、前記ベルトコンベヤの搬送面の両側に沿って隣接配置されるとともに当該搬送面側の側面に所定間隔を置いて開口する複数の吸気口が形成された一対の吸気ダクトと、前記吸気ダクトに接続するとともに前記吸気口から前記吸気ダクトを通して前記搬送面の上方の空気を吸引する吸気手段と、前記搬送ベルトの上方に空気を流通させる給気手段とを備えている廃棄物分別装置。
【請求項2】
前記吸気口は、全面にメッシュ状の金網体が設けられている請求項1に記載の廃棄物分別装置。
【請求項3】
前記吸気手段は、前記吸気ダクトに所定間隔を置いて接続されるとともに空気の流通を開閉する開閉弁を有する複数の接続管を備えている請求項1又は2に記載の廃棄物分別装置。
【請求項4】
前記吸気口を開閉する蓋体が設けられている請求項1から3のいずれかに記載の廃棄物分別装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の廃棄物分別装置を備えた廃棄物選別処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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