説明

廃棄物最終処分場における埋立施工方法

【課題】 ガス抜き管部の立ち上げ作業、及び埋立層の埋立作業を能率よく行なうことができ、しかも、ガス抜き管部の立ち上げ作業に使用する筒状ガード枠を繰り返して使用できるようにした廃棄物最終処分場における埋立施工方法の提供。
【解決手段】 既設埋立層3aの上面に露出した既設ガス抜き管部4aの上端部を囲むように筒状ガード枠5を設置させた状態で、既設埋立層の上に新規埋立層3bを埋立てていく。次に、筒状ガード枠内において既設有孔立管40aに新規有孔立管40bを立上げ状態に接続させると共に、筒状ガード枠内に栗石41bを投入して新規ガス抜き管部4bを形成させる。そして、新規埋立層の埋立てが完了したのち、筒状ガード枠を引き上げて抜き取り、この筒状ガード枠を抜き取った状態で、新規ガス抜き管部の上端部が新規埋立層の上面に露出するように形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場における埋立施工方法、特に、廃棄物最終処分場にガス抜き管部を設置させるための施工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物最終処分場における埋立構造として、準好気性埋立構造が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
この準好気性埋立構造は、埋立地の底部に、有孔管の周囲を栗石で囲んで形成した浸出水集排水管部を設け、この浸出水集排水管部を通して浸出水をできるだけ速やかに埋立地の外部に排水させることで、堆積層に浸出水が滞水しないようにさせたものである。
これにより、埋立地基礎地盤への浸出水の浸透を防止させると共に、浸出水集排水管部を通して自然換気により堆積層の内部に空気を取り込むことができるようになる。
なお、前記浸出水集排水管部は、目詰まり防止の目的で有孔管の周囲を栗石で囲んで形成した構造になっている。
【0003】
即ち、準好気性埋立構造は、廃棄物の微生物分解に伴って発生した熱で堆積層の内部温度が上昇し、その結果、内部温度と外気温の差によって生じる熱対流により、空気(酸素)が浸出水集排水管部を通して堆積層の内部へ導入され、これにより好気性の微生物環境が形成されるようにしたものである。
【0004】
又、このような準好気性埋立構造において、堆積層内で発生するメタンガス等の排気や熱対流の促進のため、浸出水集排水管部に接続させたガス抜き管部を堆積層の内部に立ち上げ、地上に開口させた上端口から堆積層の内部に発生したガスを排出させるようにしている。
この場合のガス抜き管部は、目詰まり防止の目的で有孔立管の周囲を栗石で囲んで形成した構造になっている。
【0005】
また、廃棄物最終処分場における埋立構造として、廃棄物層の表面を覆土層で覆った埋立層が埋立地に積層状態に形成されたものが知られている(特許文献2参照)。
即ち、悪臭の発生、廃棄物の飛散、害虫の繁殖防止などを防止するために、廃棄物層の堆積量が一定量に達すると、廃棄物層の上に覆土層を形成させたもので、このような廃棄物層の表面を覆土層で覆った埋立層を埋立地に積層状態に形成させた埋立構造である。
【0006】
上記のように、埋立層を埋立地に積層状態に形成させていく埋立方法において、前記ガス抜き管部を形成させるには、埋立進捗に合わせて、即ち、各埋立層を形成させていく度にガス抜き管部を立ち上げ(嵩上げ)ていく必要がある。
【0007】
従来のガス抜き管部の立上げ施工方法を図5に示す。
この施工方法では、新規埋立層3bを埋立てる前は、既設ガス抜き管部6aの上端部が既設埋立層3aの上面に露出する状態になっている(図5−イ)。
【0008】
そして、新規埋立層3bを埋立てる前に、既設埋立層3aの上面に露出した既設ガス抜き管部6aの上端部に接続して新規ガス抜き管部6bを立ち上げる。
この場合、既設有孔立管60aに新規有孔立管60bを立上げ状態に接続させると共に、その周囲に蛇籠62b(あるいは井桁等)を設置させ、その内部に栗石61bを投入して新規ガス抜き管部6bを自立した立ち上げ状態に完成させる(図5−ロ)。
【0009】
このようにして、既設埋立層3aの上に新規ガス抜き管部6bを立ち上げたのち、既設埋立層3aの上に新規埋立層3bを埋立て、この新規埋立層3bの埋立てが完了した状態で、前記新規ガス抜き管部6bの上端部が前記新規埋立層3bの上面に露出するように形成させるようになっている(図5−ハ)。
【特許文献1】特許公開平11−216440号公報
【特許文献2】特許公開2004−351240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のような従来のガス抜き管部の立上げ施工方法では、新規埋立層3bを埋立てる前に、既設埋立層3aの上に新規ガス抜き管部6bが立ち上げ状態に既に完成され、しかもその周囲がガードされていないため、新規埋立層3bを埋立てる際に、新規ガス抜き管部6bの回りに廃棄物を埋立てて行くと、折角に完成させた新規ガス抜き管部6bが転倒したり、倒壊したりするというおそれがあった。
このため、新規ガス抜き管部6bの回りでは、埋立てを中断したり、丁寧に埋立てていくなどしたり、その埋立て作業に時間と手間がかかり、作業能率を向上できないという問題があった。
【0011】
また、従来では、新規ガス抜き管部6bは、周囲の蛇籠62b(あるいは井桁)ごと新規埋立層3bで埋立てられてしまうため、蛇籠62bがいわゆる埋め殺し状態になり、蛇籠62bを繰り返して使用できないという無駄があった。
【0012】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、新規ガス抜き管部の立ち上げ作業、及び新規埋立層の埋立作業を能率よく行なうことができ、しかも、新規ガス抜き管部の立ち上げ作業に使用する筒状ガード枠を繰り返して使用できるようにした廃棄物最終処分場における埋立施工方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の廃棄物最終処分場における埋立施工方法は、以下のように構成した。
【0014】
即ち、廃棄物層の表面を覆土層で覆った埋立層を埋立地に積層状態に形成させていく埋立工程と、
有孔立管の周囲を栗石で囲んで形成したガス抜き管部を、埋立地の底部に形成した浸出水集排水管部から立ち上げていく管部立上げ工程とを備えている。
【0015】
そして、既設埋立層の上面に露出した既設ガス抜き管部の上端部を囲むように筒状ガード枠を設置させた状態で、既設埋立層の上に新規埋立層を埋立てていく。
この場合、筒状ガード枠の設置時期は、新規埋立層の埋立て開始前でも、埋立て途中でもよい。
【0016】
次に、前記筒状ガード枠内において既設有孔立管に新規有孔立管を立上げ状態に接続させると共に、筒状ガード枠内に栗石を投入して新規ガス抜き管部を形成させる。
この新規ガス抜き管部の形成時期は、新規埋立層の埋立て開始前でも、埋立て途中でも、埋立て完了後でもよい。
【0017】
そして、前記新規埋立層の埋立てが完了したのち、前記筒状ガード枠を引き上げて抜き取り、この筒状ガード枠を抜き取った状態で、前記新規ガス抜き管部の上端部が前記新規埋立層の上面に露出するように形成させるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の施工方法は、既設埋立層の上面に露出した既設ガス抜き管部の上端部を囲むように筒状ガード枠を設置させ、その内部で新規ガス抜き管部を形成させる。
従って、新規ガス抜き管部が筒状ガード枠によってガードされるため、新規埋立層を埋立てる際に、従来と異なり、埋立てを中断したり、丁寧に埋立てたりといった特段の注意を払うことなく、新規ガス抜き管部の回りを埋立てて行くことができ、その埋立て作業に時間と手間をかけることなく、能率よく埋立て作業を行なうことができる。
【0019】
また、新規埋立層の埋立てが完了したのち、筒状ガード枠を引き上げて抜き取るため、この筒状ガード枠を繰り返して使用することができ、筒状ガード枠の製造に伴なう経費負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の埋立施工方法を適用した廃棄物最終処分場の実施例を示す断面図である。
【0021】
図において、1は埋立地で、底面10がほぼ平面に形成されると共に、周囲が法面11に形成され、底面10及び法面11を覆うように遮水シート12が全面的に敷設された遮水工が形成されている。
【0022】
前記埋立地1の底部には、浸出水集排水管部2が設けられている。
この浸出水集排水管部2は、目詰まり防止の目的で有孔管20の周囲を栗石21で囲んで形成され、その下流端が図示省略した集排水ピットに連通され、この集排水ピットに流入した浸出水を排水ポンプで水処理施設へ送水するようになっている。
【0023】
また、廃棄物最終処分場における埋立て構造は、埋立地1の最底部に保護土層13が形成され、この保護土層13の上に、廃棄物層30の表面を覆土層31で覆った埋立層3が積層状態に形成されている。
【0024】
このような埋立構造において、前記浸出水集排水管部2に接続するようにガス抜き管部4が堆積層の内部に立ち上げられ、このガス抜き管部4の上端口49を地上に開口させて、その上端口49から堆積層の内部に発生したガスを排出させるようにしている。
【0025】
前記ガス抜き管部4は、目詰まり防止の目的で有孔立管40の周囲を栗石で囲んで形成した構造になっている。
この実施例では、前記有孔立管40として、管径10cm〜35cmの蛇腹管で、多数の通気穴が15cm〜20cm間隔で形成されたものが用いられ、そして、この有孔立管40の周囲を取り囲むように粒径5cm〜25cmの栗石41が1M〜1.5Mの厚みで形成されたものになっている。
【0026】
次に、図2は本発明の埋立施工方法の施工手順を示す工程説明図である。
この埋立施工方法は、埋立層3を埋立地1に積層状態に形成させていく際の埋立て進捗に合わせてガス抜き管部4を立ち上げていくもので、具体的には、各埋立層3を形成させていく度にガス抜き管部4を立ち上げ(嵩上げ)ていく方法である。
【0027】
この施工方法では、新規埋立層3bを埋立てる前は、既設ガス抜き管部4aの上端部が既設埋立層3aの上面に露出する状態になっている(図2−イ)。
【0028】
そして、新規埋立層3bを埋立てる前に、既設埋立層3aの上面に露出した既設ガス抜き管部4aの上端部を囲むように筒状ガード枠5を設置させる(図2−ロ)。
この場合、筒状ガード枠5の設置時期は、既設ガス抜き管部4aの周囲を埋立てる前であれば、新規埋立層3bの埋立て途中でもよい。
この実施例では、筒状ガード枠5として、図3に示すように、円形胴管50が用いられ、この円形胴管50の上端がフランジ51及びリブ52でが補強されると共に、下端が帯板53で補強されている。
なお、筒状ガード枠5としては、円筒体や角筒体等の筒体を用いることができる。
また、筒状ガード枠5の上端に突出してフック掛け金具54が取り付けられており、このフック掛け金具54にワイヤロープのフックを引っ掛けて、これを重機で吊り上げることで、筒状ガード枠5を上げ下げするようになっている。
【0029】
このように、筒状ガード枠5を設置させた状態で、既設埋立層3aの上に重機を用いて新規埋立層3bを埋立てていく(図2−ハ)。
【0030】
次に、前記筒状ガード枠5内において既設有孔立管40aに新規有孔立管40bを立上げ状態に接続させると共に、筒状ガード枠5内に栗石41bを投入して新規ガス抜き管部4bを形成させていく(図2−ニ)。
このとき、栗石41bを少量投入したのち、筒状ガード枠5を若干引き上げるといった作業を繰り返して、後述するように、新規埋立層3bの埋立てが完了したのち、前記筒状ガード枠5を引き上げて最終的に抜き取るようにしている。
この新規ガス抜き管部4bの形成時期は、新規埋立層3bの埋立て開始前でも、埋立て途中後でも、埋立て完了後でもよい。
既設有孔立管40aに対する新規有孔立管40bの接続には、専用の接続部材を用いてもよいし、例えば、図4に示すように、新規有孔立管40bの下端に形成した切り裂き部48によって管径を拡げながら、新規有孔立管40bの下端部を既設有孔立管40aの上端部に被せていくようにしている。
このほか、既設有孔立管と新規有孔立管との管径を異径に形成して、新規有孔立管の下端部を既設有孔立管の上端部に嵌合させるなど、要は、新規有孔立管の下端部を既設有孔立管の上端部に接続できる構造であればよい。
【0031】
そして、前記新規埋立層3bの埋立てが完了したのち、前記筒状ガード枠5を引き上げて最終的に抜き取り(図2―ホ)、この筒状ガード枠5を抜き取った状態で、前記新規ガス抜き管部4bの上端部が前記新規埋立層3bの上面に露出するように形成させるものである(図2―ヘ)。
【0032】
以後は、上記同様の手順を繰り返しながら、各埋立層3を形成させていく度にガス抜き管部4を継ぎ足して立ち上げていくものである。
【0033】
従って、この埋立施工方法では、筒状ガード枠5によって新規ガス抜き管部4bをガードした状態で新規埋立層3bを埋立てるため、新規ガス抜き管部4bの回りを埋立てて行く際に、埋立てを中断したり、丁寧に埋立てたりといった、特段の注意を払う必要がなく、その埋立て作業に時間と手間をかけることなく、能率よく埋立作業を行なうことができる。
【0034】
また、新規埋立層3bの埋立てが完了したのち、筒状ガード枠5を引き上げて抜き取るため、この筒状ガード枠5を繰り返して使用することができ、筒状ガード枠5の製造に伴なう経費負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の埋立施工方法を適用した廃棄物最終処分場の実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の埋立施工方法の施工手順を示す工程説明図である。
【図3】筒状ガード枠の半断面図である。
【図4】既設有孔立管に対する新規有孔立管の接続構造を示す説明図である。
【図5】従来の埋立施工方法の施工手順を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 埋立地
10 底面
11 法面
12 遮水シート
13 保護土層
2 浸出水集排水管部
20 有孔管
21 栗石
3 埋立層
3a 既設埋立層
3b 新規埋立層
30 廃棄物層
31 覆土層
4 ガス抜き管部
4a 既設ガス抜き管部
4b 新規ガス抜き管部
40 有孔立管
40a 既設有孔立管
40b 新規有孔立管
41 栗石
41b 栗石
48 切り裂き部
49 上端口
5 筒状ガード枠
50 円形胴管
51 フランジ
52 リブ
53 帯板
54 フック掛け金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物層の表面を覆土層で覆った埋立層を埋立地に積層状態に形成させていく埋立工程と、
有孔立管の周囲を栗石で囲んで形成したガス抜き管部を、埋立地の底部に形成した浸出水集排水管部から立ち上げていく管部立上げ工程とを備え、
既設埋立層の上面に露出した既設ガス抜き管部の上端部を囲むように筒状ガード枠を設置させた状態で、既設埋立層の上に新規埋立層を埋立てていき、
次に、前記筒状ガード枠内において既設有孔立管に新規有孔立管を立上げ状態に接続させると共に、筒状ガード枠内に栗石を投入して新規ガス抜き管部を形成させ、
そして、前記新規埋立層の埋立てが完了したのち、前記筒状ガード枠を引き上げて抜き取り、この筒状ガード枠を抜き取った状態で、前記新規ガス抜き管部の上端部が前記新規埋立層の上面に露出するように形成させることを特徴とした廃棄物最終処分場における埋立施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−247572(P2006−247572A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69733(P2005−69733)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【特許番号】特許第3703826号(P3703826)
【特許公報発行日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(505092197)大成管理開発株式会社 (4)
【Fターム(参考)】