説明

廃油精製装置

【課題】 構造及び取り扱いが簡単で、装置コストも安価であるにもかかわらず、精製能力のすこぶる高い廃油精製装置を提供する。
【解決手段】 精製容器である上段容器10の下に、回収容器である下段容器20を重ねる。上段容器10の底面中央部に精製油の油排出孔11を設ける。上段容器10の底部内に底面及び内側面に接して濾過フィルター30を配置し、その上に重し40を載せる。重し40は分散配置された多数個の油通過孔41を有している。濾過フィルター30が上段容器10の底面及び内側面に密着しているので、濾過フィルター30を廃油が素通りすることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用後の食用油等を再使用が可能な状態に精製処理する廃油精製装置に関し、より詳しくは、ポンプ等を使用しない自然落下式の廃油精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファミリーレストランを始めとする各種飲食店では、天ぷら、フライをつくるために大量の食用油を使用すると同時に、大量の廃油が生じる。この廃油の廃棄処理は面倒であり、コストもかかる。更には環境汚染、資源の有効利用の観点からも、この廃油の廃棄処理は問題である。このような事情に鑑み、使用後の食用油を精製処理して再使用する試みが広く行われ始めており、これと共に、様々な廃油精製装置が開発されている。そのような廃油精製装置の一つが特許文献1に記載された食用油精製装置である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−201621号公報
【0004】
特許文献1に記載された食用油精製装置は、電気分解により製造したアルカリイオン水により廃油を前処理し、その後に濾過処理する構造であるために、装置が大がかりであり装置コストも高い。このため飲食店ごとに所有することはコスト面でもスペース面でも困難である。
【0005】
飲食店向けとして開発された自然落下式の小型精製装置も開発されているが、精製能力の点で問題がある。自然落下式の小型精製装置は、基本的に濾過フィルターを内蔵した精製容器の下に、精製油を回収する回収容器を重ねた2段構造になっており、精製容器内に収容された廃油が自重で濾過フィルターを通過することにより不純物を除去され、精製されて下段の回収容器内に溜まる。精製容器の容量に相当する量の廃油を処理するごとにフィルターを交換することにより、この精製装置は繰り返し使用される。
【0006】
この装置は構造簡易で取り扱いも容易であるが、構造簡易ゆえに、精製容器内に収容された廃油の一部がフィルターを通過せずに下段の回収容器に流入する問題がある。未精製、或いは精製不足の廃油が一部でも回収タンクに混入すると、精製油の品質が低下し、再使用において色が悪いとか臭いがよくないといった問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、構造及び取り扱いが簡単で、装置コストも安価であるにもかかわらず、精製能力のすこぶる高い廃油精製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の廃油精製装置は、使用後の食用油等の廃油を濾過処理する廃油精製装置であって、精製すべき廃油を収容し、底面に濾過後の精製油を排出する1個又は複数個の油排出孔が設けられた上段容器と、上段容器の下に重ねて配置されて濾過後の精製油を回収する下段容器と、上段容器内に脱着可能に収容され、収容状態で少なくとも上段容器底面における油排出孔形成領域を覆う濾過フィルターと、濾過フィルターの上から上段容器内に収容されて、濾過フィルターを上段容器底面における油排出孔形成領域に密着させると共に、厚み方向に貫通する複数の廃油通過孔が設けられた廃油透過型の重しとを具備している。
【0009】
本発明の廃油精製装置においては、精製すべき廃油が上段容器内に収容される。その廃油は、全量が廃油透過型の重し及び重しの周囲を通り、更に重しの下の濾過フィルターを通って容器底面の油排出孔から下段容器内に流入する。すなわち、濾過フィルターを経由しないで下段容器に流入する廃油は存在しない。なぜなら、上段容器における油排出孔が1個の場合もとより複数の場合も全排出孔が濾過フィルターで覆われ、且つその濾過フィルターが廃油透過型の重しにより容器底面に押し付けられ密着しているため、廃油が濾過フィルターを経由しないで下段容器に流入する事態が回避されるからである。かくして、上段容器内の廃油の全量が濾過フィルターにより精製処理される。
【0010】
最も好ましい形態は、上段容器底面の中心部に油排出孔を設ける一方、その底面全体を覆う濾過フィルターを使用し、廃油透過型の重しを濾過フィルターと同等の大きさとして、濾過フィルターを底面全体及び容器内面に押し付ける構成である。重しにおける油排出孔は重しの全体に分散して設ける。これらにより、廃油の全量が濾過フィルターを通過するだけでなく、廃油のフィルター通過効率が上がると共にフィルター通過経路が長くなり、精製処理効率が上がる。
【0011】
上段容器及び下段容器の形状は円筒体が一般的であるが、四角形筒体、三角形筒体、多角形筒体などでもよく、その形状は特に問わない。上段容器の底面に設けられる油排出孔は、その底面の全体に複数個を分散して設けてもよいし、底面の中心部に1個又は複数個を集中的に設けてもよい。廃油の濾過フィルター通過経路を長くする点から中心部に設けるのが好ましいことは前述したとおりである。
【0012】
濾過フィルターは、油排出孔の形成領域を覆う必要があるので、その形成領域が広がれば大きいものが必要となり、形成領域が狭ければ小さいものでもよいが、油排出孔の形成領域の広い狭いに関係なく大きい方が好ましい。濾過フィルターが大きい方が、廃油のフィルター通過経路が長くなる点、処理容量が増大し交換頻度が少なくなる点などから好ましいのである。濾過フィルターの構造としては、油が透過自在で且つ変形が自在な袋体の中に粉粒状の濾過材が充填された袋詰め構造が好ましい。
【0013】
重しの役目の一つは濾過フィルターを上段容器の底面に押し付けることであり、今一つは廃油通過孔による濾過フィルターへの廃油の供給促進である。前者の観点から、重しは濾過フィルターの大きさに関係なく、油排出孔形成領域に相当する大きさは必要であり、濾過フィルターを容器底面の広い範囲に押し付けることができるように、大きいほど好ましく、また取り扱いに差し支えない範囲内で重いほど好ましい。廃油通過孔については、廃油を濾過フィルターへ均等に供給する点から、複数を分散して設けるのがよい。
【0014】
濾過フィルター及び重しの形状は上段容器の横断面形状に対応するのが基本であるが、角筒体の底面中心部に油排出孔を設け、角筒体に内接する円盤形の濾過フィルター及び重しを使用するような構成も可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の廃油精製装置は、濾過フィルター内蔵の精製容器である上段容器と精製油を回収する下段容器を重ね合わせた自然落下式であるので、構造及び取り扱いが簡単で、装置コストも安価である。また、自然落下式であるにもかかわらず、濾過フィルター及び廃油通過型の重しの組合せにより、容器底面における油排出孔形成領域に濾過フィルターを密着させるので、濾過フィルターを通過しない廃油を実質的に排除することができ、簡単な構成で高品質な再生油を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す廃油精製装置の一部破断斜視図である。
【0017】
本実施形態の廃油精製装置は、ファミリーレストランなどの飲食店で天ぷら、フライなどに使用した食用油を精製して再使用するのに使用される自然落下式の小型食用油再生装置である。
【0018】
この廃油精製装置は、使用済みの食用油(廃油)を精製する処理容器である上段容器10と、上段容器20による処理で得られた精製油を回収する下段容器20とを備えている。上段容器10及び下段容器20は、上面が開口した円筒状容器で、ほぼ同じ容量及び形状であり、下段容器20の上に上段容器10が同心状に載置される構造になっている。上段容器10の上面開口部は、図示されない脱着自在な蓋により閉止される。
【0019】
上段容器10は円筒状の側壁と円板状の底板とからなり、円形の底板の中心部には、上段容器10内での処理により得られた精製油を下方に排出する油排出孔11が設けられている。油排出孔11には、後述する濾過フィルター30の侵入・垂下を阻止するために金網からなる支持部材12が設けられている。金網からなる支持部材12は廃油の流通を阻害しない。
【0020】
上段容器10の底部内、すなわち円形の底板上には濾過フィルター30及び重し40がセットされている。
【0021】
濾過フィルター30は上段容器10の底板及び側壁に接触する円盤状であり、不織布などの油を自由に通過させることができる円形の袋の中に粉粒状の濾過材を充填した変形自在な袋詰め構造になっている。濾過材は廃油中の不純物を吸着するセラミック類等からなり、廃油が濾過フィルター30を通過することにより、脱色、脱臭を含めた品質回復を行う。
【0022】
重し40は、上段容器10内を摺動自在な金属円盤であり、この摺動のために、その外径は上段容器10の内径より若干小さく設計されている。この重し40には、当該重しを板厚方向に貫通する多数の油通過孔41が分散して設けられている。重し40の上面には、その出し入れ操作のために把手42が設けられている。
【0023】
上段容器10の開口部には粗濾し用の金網50が脱着自在にセットされている。
【0024】
下段容器20は、上段容器10の下に重ねられて、油排出孔11から排出される精製油を回収する。
【0025】
次に、本実施形態の廃油精製装置の使用方法及び機能について説明する。
【0026】
上段容器10を下段容器20の上に重ねる。上段容器10の底板上に新しい濾過フィルター30をセットし、その上に重し40を載せ、最後に上段容器10の開口部に粗濾し用の金網50をセットする。こうして使用の準備が終わると、精製すべき使用済みの食用油(廃油)を上段容器10内に注入し、上段容器10の開口部を蓋で閉じる。
【0027】
この状態で放置すると、まず上段容器10内の廃油が重し40に設けられた多数の油通過孔41を通ってその下の濾過フィルター30に到達する。当初は廃油が濾過フィルター30に染み込むだけであるので、上段容器10の油排出孔11から精製油は排出されない。この状態を放置すると、濾過フィルター30を通過した精製油が上段容器10の油排出孔11から排出され始め、下段容器20内に溜まり始める。
【0028】
濾過フィルター30を通過した精製油は、変色、異臭、変質等の原因となる不純物を取り除かれ、再使用が可能な当初の状態に戻る。
【0029】
上段容器10内の大部分の廃油は、重し40に設けられた多数の油通過孔41を通って濾過フィルター30に侵入し、ここを通過するが、一部の廃油は、重し40の周囲の上段容器10の内周面との間の微小な隙間を通って重し40の下に流下する。ここで、重し40の下の濾過フィルター30は、上の重し40により下方に押圧されているので、上段容器10の底面に密着している。この濾過フィルター30は又、変形自在な袋詰め構造であるため、重し40による上から押圧により周囲に広がり、周囲の上段容器10の内周面にも強く押し付けられている。また、上段容器10は円筒状で隅部がない上に、底面中心部に油排出孔11をもつため、周囲から油排出孔11までの距離が周方向で均一の構造となっている。
【0030】
これらのため、重し40の周囲の微小な隙間を通過した廃油についても、中心部の油排出孔11に向けて濾過フィルター30を所定長通過する。したがって、たとえ一部にしろ、廃油が濾過フィルター30を素通りして下段容器20内に混入する事態は回避される。したがって、下段容器20内に回収された精製油は、再使用に供して何ら問題のない高品質なものとなる。
【0031】
図2は本発明の別の実施形態を示す廃油精製装置の一部破断斜視図である。
【0032】
本実施形態の廃油精製装置においては、上段容器10及び下段容器20は断面形状が正方向の角筒状である。上段容器10の正方形の底板には複数個の油排出孔11が設けられている。複数個の油排出孔11は、ここでは底板表面の内接円13、すなわち4つの側壁の内面に接する円の内側に分散して設けられている。
【0033】
濾過フィルター30は上段容器10の底面の内接円13と同等の大きさの円盤状であり、上段容器10の底面上に内接円13内及び4つの側壁内面に接した状態でセットされる。重し40も内接円13と同等の大きさの金属円盤であり、より具体的には上段容器10内を上下動可能な直径とされている。重し40には板厚方向に貫通する複数個の廃油通過孔41が分散して設けられている。
【0034】
本実施形態の廃油精製装置においては、角筒状の上段容器10の底面上に円盤状の濾過フィルター30及び重し40がセットされる。この状態で上段容器10内に使用済みの食用油(廃油)が注入される。廃油の多くは重し40に設けられた廃油通過孔41を通り、濾過フィルター30で濾過されて容器底面の油排出孔11から下段容器20に流入する。一方、本実施形態の廃油精製装置においては、円盤状の濾過フィルター30及び重し40が上段容器10の内側面に内接しているだけであるので、濾過フィルター30及び重し40の周囲に大きな空間が形成され、重し40を通らずに濾過フィルター30に周囲から侵入する廃油量が増加するが、濾過フィルター30は油排出孔11の形成領域である底板表面の内接円13内に密着し、個々の油排出孔11の周囲に確実に密着しているので、重し40を通らない廃油についても濾過フィルター30を確実に通過し、濾過される。
【0035】
かくして、本実施形態の廃油精製装置においても、上段容器10内に投入された廃油の全量が確実に濾過処理され、再使用に供して何ら問題のないものとなる。
【0036】
本実施形態の廃油精製装置では、上段容器10の油排出孔11は、底面の内接円13内に複数個を分散して設けているが、図1に示した廃油精製装置の場合と同様に、上段容器10の底面の中心部に設けることもできる。濾過フィルター30及び重し40についても、図1に示した廃油精製装置の場合と同様に、上段容器10の横断面形状に対応した角板状とすることもできる。また、濾過フィルター30を円形、重し40を角板状とすることもできる。重し40は濾過フィルター30を油排出孔11の形成領域に押し付けることができればよいので、濾過フィルター30より大きいこと、或いは油排出孔11の形成領域より大きいことは差し支えない。
【0037】
一方、図1に示した廃油精製装置では、上段容器10の底面における油排出孔11は、底面の中心部にのみ設けられているが、複数個を底面の全体に分散して設けてもよい。また、上段容器10の底面中心部に油排出孔11が設けられる場合は、濾過フィルター30或いは濾過フィルター30と重し40の両方を小さくすることもできる。
【0038】
上段容器10及び下段容器20については、図1に示した廃油精製装置では円筒形状、図2に示した廃油精製装置では断面が正方形の角筒形状であるが、断面が三角形、或いは多角形の角筒形状でもよい。また、上段容器10と下段容器20は同じ断面形状である必要はなく、下段容器20は上段容器10の油排出孔11から流下する精製油を受けることができればその形状は問わない。
【0039】
図1に示した廃油精製装置を使用して、実際に使用済みの食用油(20リットル)を繰り返し精製処理した結果を説明する。
【0040】
上段容器10及び下段容器20の有効容量は共に20リットル、容器内径は330mm、上段容器10の底面中心部に設けられた油排出孔11の直径は150mmである。濾過フィルター30の外径は約340mm、厚みは10〜15mmである。円盤状の重し40の外径は、上段容器10の内径より僅かに小さい329mm、重量は2.5kg、油通過孔の直径は20mm、その個数は30〜40である。
【0041】
何らの動力も使用することなく、3〜6時間で、濾過フィルター30に吸収される分を除いた17〜18リットルの高品質な精製油が得られる。有効容量を処理するごとに濾過フィルター30を交換する。1つの濾過フィルター30で10リットルずつ2回処理してもよい。要するに、濾過フィルター30の処理能力が上段容器10及び下段容器20の有効容量である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態を示す廃油精製装置の一部破断斜視図である。
【図2】本発明の別の実施形態を示す廃油精製装置の一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
10 上段容器
11 油排出孔
12 支持部材
13 内接円
20 下段容器
30 濾過フィルター
40 重し
41 油通過孔
42 把手
50 粗濾し用の金網


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用後の食用油等の廃油を濾過処理する廃油精製装置であって、
精製すべき廃油を収容し、底面に濾過後の精製油を排出する1個又は複数個の油排出孔が設けられた上段容器と、
上段容器の下に重ねて配置されて濾過後の精製油を回収する下段容器と、
上段容器内に脱着可能に収容され、収容状態で少なくとも上段容器底面における油排出孔形成領域を覆う濾過フィルターと、
濾過フィルターの上から上段容器内に収容されて、濾過フィルターを上段容器底面における油排出孔形成領域に密着させると共に、厚み方向に貫通する複数の廃油通過孔が設けられた廃油透過型の重しと
を具備することを特徴とする廃油精製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃油精製装置において、油排出孔は上段容器の底面中央部に設けられており、濾過フィルターは上段容器の底部内に内側面に接して脱着可能に収容され、重しは濾過フィルターを上段容器の底面全体又は底面の外側縁部を除く部分に押し付ける廃油精製装置。
【請求項3】
請求項2に記載の廃油精製装置において、上段容器の底面中央部における油排出孔に、濾過フィルターの垂下を阻止する油透過型の支持部材が装備さている廃油精製装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の廃油精製装置において、濾過フィルターは油が透過自在で且つ変形が自在な袋体の中に粉粒状の濾過材が充填された袋詰め構造である廃油精製装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の廃油精製装置において、上段容器及び下段容器が円筒形状であり、上段容器内に収容される濾過フィルター及び重しが円盤状である廃油精製装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−43239(P2010−43239A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323123(P2008−323123)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(508219427)
【Fターム(参考)】