説明

廃液回収装置

【課題】タンク交換に伴う機器損傷の回避と交換作業の簡便化との両立を図る。
【解決手段】廃液回収装置100は、タンク底面側において円周上等ピッチに配した複数のコイルスプリング184により、空のタンク152については、これをコイルスプリング184の弾発力にて持ち上げて下支えする。これにより、空のタンク152を保持プレート182に載置するような場合には、保持プレート182の底面とロードセル188のセル上面との間に間隙Kを形成する。その上で、廃液収容が進んでタンク152が弾発力に抗して降下すると、タンク各コーナーのストッパー186で、タンク降下位置を保ったままタンク152を下支えする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒として作用する金属を含有した廃液を回収する廃液回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃液は、通常、タンクに収容され、廃液収容量が規定量、例えば満水容量となると、タンクの交換がなされる。廃液収容量の検知は、タンク内に設置したフロートセンサー等による検知手法と、タンク底面に接触してタンク重量を計るロードセル等による検知手法に大別される。触媒として作用する金属(以下、触媒金属)を含有した廃液では、その含有する触媒金属の浸食作用によるタンク内センサーの破損や作動不良を招きやすい。例えば、図7に示すように、タンク内に設置されて水位を直接検知するセンサーでは、当該センサーの浸食が起きたり、フロートスイッチを上下摺動可能とし当該フロートの上下動で水位検知する場合には、上下動案内シャフト表面が腐食されたり当該表面に廃液内の固形分が付着してフロート上下動が不安定となり得る。こうした点を回避するため、ロードセル等にて重量計測して廃液収容量検知を図る手法が採用されている(例えば、特許文献1)。なお、こうした重量計測手法は、廃液に限らず他の溶液回収にも多用されている(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−169625号公報
【特許文献2】特開2009−138102号公報
【特許文献3】特開2007−1915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触媒金属含有の溶液は、例えば、燃料電池における電解質膜の両膜面にカソードおよびアノードの両電極層を形成する製造工程などにおいて用いられ、当該工程で余剰となった触媒金属含有の溶液が廃液として、回収される。こうした製造工程では、その廃液の量も多くなることから、特許文献1にあるように単純にロードセルをタンク底面に接触するように設置しただけでは、不都合が起き得る。例えば、製造工程での廃液を回収する場合、タンク容量が小さいとタンク交換頻度が高まるので、比較的大容量のタンクが用いられる。こうした大容量タンクは、廃液未収容とはいえ、タンク自体の重量も増すため、廃液収容済みタンクと廃液未収容の空のタンクとの交換に際して、タンク底面に接触するロードセルに不用意な負荷を掛けないよう、慎重な作業が求められ煩雑であった。また、廃液収容過程にあるタンクの安定した保持や下支えも求められるが、こうした点への対処が十分とは言えなかった。
【0005】
本発明は、上記した課題を踏まえ、タンク交換に伴う機器損傷の回避と交換作業の簡便化との両立を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0007】
[適用1:廃液回収装置]
触媒として作用する金属を含有した廃液を回収する廃液回収装置であって、
前記廃液を収容するタンクを有する少なくとも二つのタンクユニットと、
該タンクユニットの前記タンクに前記廃液を分配供給する供給系と、
前記タンクを保持するタンク保持ユニットとを備え、
該保持ユニットは、
前記タンクの底面周縁に位置してタンク底面側に延びるよう配設され、前タンクにタンクを持ち上げる側の弾発力を及ぼして、廃液未収容の前記タンクに対しては、これを前記弾発力により持ち上げて前記タンクを下支えする複数の弾発体と、
該弾発体よりも前記底面周縁の側に位置してタンク底面側に延びるよう配設され、前記タンクへの廃液収容が進むことで前記弾発力に抗して降下する前記タンクを前記底面周縁の側で下支えしてタンク降下位置を保つ複数の固形ストッパーと、
前記タンクの底面側に配設され、廃液未収容の前記タンクに対しては非接触であって、廃液収容に伴って前記廃液収容量が前記規定収容量に近づくと、前記弾発力に抗して降下する前記タンクに接触してタンク重量を計測する計測部とを備え、
前記供給系は、
前記廃液収容量が前記規定収容量に到達した際の規定タンク重量を前記計測部が計測すると、前記廃液の分配先を廃液未収容のタンクに変更する
ことを要旨とする。
【0008】
上記構成の廃液回収装置は、少なくとも二つのタンクユニットを備え、各タンクユニットが有するタンクに、供給系を経て廃液を分配供給する。このようにして廃液の供給を受けるタンクは、保持ユニットにて保持され、タンクの底面周縁に位置してタンク底面側に延びる複数の弾発体からの弾発力を、タンクを持ち上げる側に受ける。廃液未収容のタンクであれば、当該タンクは、それぞれの弾発体の弾発力により持ち上げられて下支えされるが、その下支え箇所は、タンクの底面周縁の複数箇所となる。このため、廃液未収容のタンクは、タンクの底面周縁の複数箇所での持ち上げと下支えとにより、比較的安定した姿勢となる。複数の弾発体を、タンク底面中央から等円周上において等ピッチでタンク底面周縁に配設すれば、タンク姿勢をより安定化できる。
【0009】
この他、上記構成の廃液回収装置は、そのタンク保持ユニットに、複数の弾発体とは別に複数の固形ストッパーを備え、当該ストッパーを、弾発体よりも底面周縁の側に位置してタンク底面側に延びるよう配設している。このため、廃液未収容のタンクを複数の弾発体にて下支えするよう配設もしくは交換する場合、仮に、タンクが傾斜しても、傾斜した側では、タンクは固形ストッパーにより下支えされることになる。その上で、タンクは、傾斜した側の弾発体の弾発力を受けて傾斜した側が持ち上がるようになるので、タンク傾斜の復帰が可能となる。
【0010】
タンクへの廃液収容が進むと、タンクと廃液を含む総重量が増すので、タンクは、弾発体の弾発力に抗して降下する。この降下の過程でタンク傾斜が仮に起きても、固形ストッパーと弾発体とにより既述したようにタンク傾斜の復帰は可能である。そして、タンクにおける廃液収容が更に進むと、当該タンクは、弾発体よりも底面周縁の側に位置する複数の固形ストッパーにより、タンク降下位置を保ったまま当該ストッパーにより下支えされる。
【0011】
上記構成の廃液回収装置は、タンク重量を計測する計測部を、タンクの底面側に配設して備えるものの、廃液未収容のタンクに対しては非接触とする。このことは、タンクの底面周縁の複数の弾発体による廃液未収容のタンクの持ち上げと下支えとにより、容易に担保できる。そして、計測部は廃液未収容のタンクに対して非接触であることから、廃液未収容のタンクを複数の弾発体にて下支えするよう配設もしくは交換する場合において、当該タンクの底面に計測部を接触させてしまうような事態を抑制できる。この結果、廃液未収容のタンクの配設・交換に際して、計測部の損傷を回避できると共に、タンクの配設・交換に伴う作業において、接触回避を図る作業意図を軽減できるので、作業の簡便化をも図ることができる。この場合、既述したようにこの際にタンク傾斜が仮に起きても、非接触である故に、計測部にタンク底面を接触させないようにできることからも、接触回避を図る作業意図を軽減できるので、作業の簡便化の実効性が高まる。
【0012】
この計測部は、廃液収容に伴って廃液収容量が規定収容量に近づくと、弾発力に抗して降下するタンクに接触してタンク重量を計測するので、タンク重量計測に支障を来さない。しかも、廃液収容量が規定収容量となると、タンクは複数の固形ストッパーで保持されて、タンク降下位置は保たれるため、静止状態にて計測部によりダンク重量を計測できる。そして、廃液収容量が規定収容量に到達した際の規定タンク重量を計測部が計測すると、供給系により廃液の分配先を廃液未収容のタンクに変更するので、廃液収容量が規定収容量を超えるような廃液収容を回避できる。この場合、廃液収容量が規定収容量に到達したタンク(以下、満量タンク)を廃液未収容のタンクと交換するには、クレーン、リフト等の荷役機器により満量タンクを計測部から離れるように持ち上げればよいので、この際にあっても、接触回避を図る作業意図を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例としての廃液回収装置100の概略構成を示す説明図である。
【図2】タンクを俯瞰してタンクと他の機器との位置関係を示す説明図である。
【図3】タンクユニット150Aのタンク152への廃液分配を開始した当初の様子を示す説明図である。
【図4】廃液収容が満量となった様子を示す説明図である。
【図5】廃液分配先が切り替わった様子を示す説明図である。
【図6】ストッパー186で下支えしたタンク152のロードセル188による重量計測の様子を模式的に示す説明図である。
【図7】従来技術の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施例としての廃液回収装置100の概略構成を示す説明図、図2はタンクを俯瞰してタンクと他の機器との位置関係を示す説明図である。図1は、廃液未収容の状態を示している。
【0015】
廃液回収装置100は、図示しない燃料電池製造装置における触媒電極の形成プロセス部と接続され、当該プロセス部の廃液を回収する。触媒電極の形成プロセスでは、例えば、水素と酸素の電気化学反応を起こす上での触媒として作用する白金等の金属を微細粒子状に分散させた触媒分散液を、電解質膜の膜面にスプレー塗布等することから、余剰の塗布液が廃液として生じる。廃液回収装置100は、この廃液を後述するようにタンクに収容する。
【0016】
図1に示すように、廃液回収装置100は、廃液供給部120と、二つのタンクユニット150A、150Bと、タンクユニットごとのタンク保持ユニット180とを有する。上記の両タンクユニットとそれぞれのタンク保持ユニット180は、オイルパン200の内部に配設されている。オイルパン200は、耐食性に富むステンレス等の鋼板から形成された開口容器であり、廃液収容中に漏洩した廃液を収容する。オイルパン200には、フロートセンサー202が装着されており、当該センサーは、オイルパン200における漏洩廃液の水位を検知して、その検知信号を後述の制御装置210に送信する。この検知信号を受けた制御装置210による制御については後述する。
【0017】
タンクユニット150Aとタンクユニット150Bは、同一構成を備え、個別に廃液を収容する。以下、タンクユニット150Aを例に上げ、その構成について説明し、タンクユニット150Bについては同一の符号を付すこととする。タンクユニット150Aは、タンク152を主要部材とし、これに種々の部材を装着させている。タンク152は、底面側に補強用の底面プレート154をその上部部分の中空の廃液収容箇所と一体に備え、天井側にフック160とキャップ170とを備える。タンク152は、底面プレート154を含め、耐食性に富むステンレス等の鋼板から形成されている。底面プレート154は、軽量化のために中空とされ、図1における紙面手前から奥側に貫通する貫通孔156を備える。この貫通孔156は、図2に示すように、タンク交換等の際のリフトフォークFcの挿入孔となる。フック160は、タンク交換等の際のリフトにより玉懸けに使用される。キャップ170は、タンク152と着脱自在に構成されたいわゆるワンタッチ装着式のキャップであり、フレキシブルホース172と接続され、廃液をタンク152の内部に導き入れる。
【0018】
タンクユニットごとのタンク保持ユニット180は、タンク152が載置される保持プレート182と、タンク152の底面側に延びる複数のコイルスプリング184およびストッパー186と、ロードセル188と、タンクごとの近接センサー190とを備える。コイルスプリング184は、図2に示すように、タンク152のタンク底面中央から円周上において等ピッチでタンク底面周縁に配設され、一端がオイルパン200に他端が保持プレート182に固定されている。そして、このコイルスプリング184は、それぞれがタンク152に当該タンクを持ち上げる側の弾発力を保持プレート182を介して及ぼし、廃液未収容のタンク152に対してはこれを弾発力により持ち上げて、タンク152を下支えする。廃液未収容のタンク152への廃液収容が進むと、タンク152と廃液を含む総重量が増すので、タンク152はコイルスプリング184の弾発力に抗して降下するが、この降下の過程においても、上記の等ピッチ配置のコイルスプリング184は、その弾発力をタンク持ち上げ側に及ぼして、タンク152を保持プレート182を介して下支えする。
【0019】
ストッパー186は、金属製のブロック等で形成され、図2に示すようにコイルスプリング184よりもタンク152の底面周縁の側、具体的には、タンク各コーナー箇所に位置する。ストッパー186は、タンク152が満水水位まで廃液を収容した場合でも、タンク152を下支えできる充分な強度を有する。そして、このストッパー186は、タンク152への廃液収容に伴う上記したタンク降下が或る段階まで進むと、タンク152の底面、詳しくは保持プレート182の底面に当接して、タンク152を各コーナーで下支えしてタンク降下位置を保つ。本実施例では、タンク152における内容積(廃液収容容積)の1/3〜1/2で廃液が収容されると、ストッパー186に保持プレート182の底面が当接して、ストッパー186は、その際のタンク降下位置にてタンク152は下支えする。
【0020】
ロードセル188は、タンク152の底面中央に位置し、その上面に荷重を受けると、その荷重に応じた検知信号を生成し、これを後述の制御装置210に送信する。この検知信号を受けた制御装置210による制御については後述する。このロードセル188は、図1に示すように、廃液未収容のタンク152に対しては、タンク152の底面、詳しくは保持プレート182の底面との間に間隙Kが残るよう非接触とされており、次のような状況において、タンク152の底面と接触してその荷重を受ける。廃液未収容のタンク152への廃液収容が進むと、既述したようにタンク152はストッパー186によりタンク降下位置が保たれたまま下支えされ、その位置に静止する。ロードセル188は、少なくともこのタンク静止状態において上記の間隙Kがゼロとなり、それ以降において、タンク152から荷重をセル上面に受け、その検知信号を生成・送信する。つまり、ロードセル188を、そのセル上面の高さがストッパー186の高さより低くならないように設置することで、上記したようにタンク152の荷重を検知する。
【0021】
近接センサー190は、図示しないブラケットにより保持され、保持プレート182へのタンク152の載置の有無を検知し、その検知信号を制御装置210に送信する。なお、近接センサー190に代えて、保持プレート182の底面とストッパー186の上面との間の隔たりを検知するセンサーにて、保持プレート182へのタンク152の載置の有無を検知することもできる。
【0022】
廃液供給部120は、メイン管路122と、当該管路から分岐した分岐管路124と、当該管路に組み込まれた開閉バルブ126A、126Bとを備える。メイン管路122は、図示しない燃料電池製造装置における触媒電極の形成プロセス部と接続され、当該プロセス部で生じる触媒金属含有の廃液を導く。開閉バルブ126Aと開閉バルブ126Bの下流側は、既述した各タンクユニットのフレキシブルホース172の上端に到る鋼管管路或いは耐腐食性の樹脂管路とされ、フレキシブルホース172に到る管路屈曲箇所手前の直線管路部には、鉛直上向きに立ち上がって一端が開放した臭気管174が設けられている。この臭気管174は、フレキシブルホース172を介してタンク152と連通しているので、タンク内の臭気を大気放出する臭気抜きを図る。分岐管路124における開閉バルブ126A、126Bは、制御装置210からの制御信号に基づき駆動することから、廃液供給部120は、制御装置210と協働して、白金等の触媒金属含有の廃液を上記各タンクユニットのタンク152に分配供給する。なお、タンク152の上方に位置する分岐管路124や開閉バルブ126A、126B等は、タンク天井から充分に距離を取って配設されているので、リフトやクレーンを用いたタンク152の交換に支障はない。
【0023】
制御装置210は、論理演算を実行するCPUやROM、RAM等を備えたいわゆるマイクロコンピュータで構成され、既述したロードセル188やフロートセンサー202、近接センサー190等のセンサー信号を入力し、廃液回収装置100の全体の制御を司る。例えば、フロートセンサー202の検知水位がオイルパン200における漏洩廃液の除去を要する水位となれば、オイルパン200の図示しない廃液吸引機器を駆動して漏洩廃液を除去すると共に、廃液漏洩の旨をランプやブザー音にて報知する。併せて、制御装置210は、分岐管路124の開閉バルブ126Aおよび開閉バルブ126Bの両バルブを管路閉制御する。また、近接センサー190からのタンク検知信号がない場合には、タンク未設置であるとして、検知信号のない側の開閉バルブ126A或いは開閉バルブ126Bを管路閉制御して廃液分配を停止する。この逆に、近接センサー190にてタンク検知した側の開閉バルブ126A或いは開閉バルブ126Bを管路開制御して、タンク152への廃液分配を開始する。この廃液分配の開始に伴い、ロードセル188の入力に基づいたタンク荷重監視を実行する。
【0024】
次に、各タンクユニットのタンク152への廃液分配の様子を説明する。図3はタンクユニット150Aのタンク152への廃液分配を開始した当初の様子を示す説明図、図4は廃液収容が満量となった様子を示す説明図、図5は廃液分配先が切り替わった様子を示す説明図である。
【0025】
図1では、タンクユニット150Aとタンクユニット150Bの両タンクユニットのタンク152は、共に近接センサー190にて検知されていることから、いずれのタンクユニットへの廃液分配が可能である。制御装置210は、タンクユニット150Aへの分配をイニシャルとしているので、開閉バルブ126Aを管路開制御する。これにより、図3に示すように、タンクユニット150Aのタンク152に廃液が分配供給される。なお、制御装置210にタンクユニット選択スイッチを設け、当該スイッチの操作により、当初の分配先を決定するようにすることもできる。
【0026】
タンクユニット150Aのタンク152への廃液収容が進むと、既述したようにタンク152は、コイルスプリング184の弾発力に抗して降下する。廃液収容を始める前は勿論、このタンク降下の際、タンク152は、図2に示すように等ピッチで配設されたコイルスプリング184の弾発力を、保持プレート182を介してタンク持ち上げ側に受け、コイルスプリング184により下支えされる。こうしたタンク下支え箇所は、タンク中央から円周上等ピッチの複数箇所なため、タンク152は、廃液未収容の状態は元より、廃液収容に伴うタンク降下の間においても、比較的安定した姿勢を取る。
【0027】
図3に示す以上に廃液収容が進み、その収容量が既述したタンク152における内容積(廃液収容容積)の1/3〜1/2に達すると、図4に示すように、ストッパー186の上面に保持プレート182の底面が当接して、タンク152は、タンク各コーナー(図2参照)の186にて下支えされる。これと並行して、ロードセル188のセル上面と保持プレート182の底面との間隙Kがゼロとなり、それ以降において、ロードセル188にてタンク152の荷重、詳しくは、タンク152の重量と収容廃液重量と保持プレート182の重量がロードセル188にて検知され、その検知信号が制御装置210に送られる。そして、収容廃液の水位が規定の満水水位に達すると、制御装置210は、ロードセル188から満水水位に相当する検知信号を入力し、それまで管路開制御であった開閉バルブ126Aを管路閉制御とし、開閉バルブ126Bを管路開制御とする。これにより、廃液の分配先は、図5に示すようにタンクユニット150Aのタンク152からタンクユニット150Bの廃液未収容のタンク152に変更されるので、廃液収容量が規定収容量を超えるような廃液分配とその収容を確実に回避できる。なお、ロードセル188からの信号には、空のタンク152の重量と保持プレート182の重量も含まれるが、これら重量は、予め制御装置210に記憶されているので、制御装置210は、ロードセル188からの検知信号により、廃液の満水収容を検知できる。
【0028】
制御装置210は、廃液収容量が規定収容量となったタンクユニット150Aのタンク152(満水タンク)の交換を図るべく、図示しないランプ、ブザー等を駆動制御してその旨報知する。これを受けた作業者は、タンク天井のキャップ170をタンク152から取り外した後、図2に示すように、リフトフォークFcを底面プレート154の貫通孔156に挿入し、或いは、フック160に玉懸け用のワイヤーフックを係合し、満水タンクを持ち上げて保持プレート182から取り除く。次いで、次回の廃液収容に備え、廃液未収容の空のタンク152をリフトフォークFc或いは玉懸けにより、保持プレート182にその上方から載置し、キャップ170を載置済みのタンク152に接続する。こうして空のタンク152の載置が済むと、近接センサー190にてタンク検知がなされるので、制御装置210は、この検知信号を受けて、空のタンク152を有するタンクユニット150Aを次回以降の廃液の分配先とする。
【0029】
以上説明した本実施例の廃液回収装置100は、円周上等ピッチに配したコイルスプリング184によるタンク152の下支えと、廃液収容が進んだ場合のタンク各コーナーのストッパー186での下支えとを行う。このため、空のタンク152を保持プレート182に載置する際に、仮に、タンク152が傾斜しても、傾斜した側では、タンク152をストッパー186により下支えできる上、傾斜した側のコイルスプリング184の弾発力を受けて、タンク152は傾斜した側が持ち上がるので、タンク傾斜の復帰が可能となる。この場合、タンク152への廃液収容に伴ってタンク152が降下する際にあっても、コイルスプリング184とストッパー186とによる上記のタンク下支えがなされることから、タンク降下の過程でタンク傾斜が仮に起きても、既述したようにタンク傾斜の復帰は可能である。そして、廃液収容が更に進むと、タンク152は、コイルスプリング184よりもタンク底面周縁の側に位置する複数のストッパー186により、タンク降下位置を保ったまま下支えされる。
【0030】
ロードセル188は、ストッパー186でタンク152を下支えしたタンク静止状態においてそのセル上面を保持プレート182の底面に接触させ、それ以前においては、保持プレート182の底面との間に間隙Kを形成している。このため、廃液収容量が規定収容量となったタンク152を持ち上げて保持プレート182から取り除いた後に、廃液未収容の空のタンク152を保持プレート182に載置して交換する場合、保持プレート182にタンク152を載置したことで保持プレート182の底面にロードセル188のセル上面を接触させてしまうような事態を抑制できる。この結果、廃液未収容のタンク152の配設・交換に際して、ロードセル188の損傷を回避できると共に、タンク152の配設・交換に伴う作業において、接触回避を図る作業意図を軽減できるので、作業の簡便化をも図ることができる。この場合、タンク載置に伴って既述したようなタンク傾斜が仮に起きても、間隙Kが形成されている故に、ロードセル188のセル上面に保持プレート182の底面を接触させないようにできることから、接触回避を図る作業意図を軽減でき、作業の簡便化の実効性が高まる。
【0031】
なお、廃液収容量が規定収容量となった満量のタンク152を保持プレート182から取り除く際には、クレーン、リフト等の荷役機器により満量のタンク152をロードセル188から離れるように持ち上げればよい。よって、タンク取り除きの際にあっても、接触回避を図る作業意図を軽減できる。
【0032】
また、本実施例の廃液回収装置100では、タンク天井においてタンク152に装着するキャップ170に到るまでをフレキシブルホース172とし、当該ホースの上流側の管路を鋼管管路或いは耐腐食性の樹脂管路とした。その上で、この管路屈曲箇所手前の直線管路部には、臭気管174を鉛直上向きに立ち上げてフレキシブルホース172を介してタンク152と連通させることで、この臭気管174によりタンク内の臭気抜きを図る。このため、タンク自体に臭気抜けの機器構成が不要となる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態を実施例にて説明したが、本発明は上記した実施例や変形例の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、上記の実施例では、コイルスプリング184をその一端側で保持プレート182に固定するようにしたが、保持プレート182を省略して、タンク152の底面、詳しくは底面プレート154の底面にコイルスプリング184の一端を当接させて、直に、コイルスプリング184にてタンク152を下支えするようにすることもできる。
【0034】
また、タンクユニットの数については、廃液回収の規模や頻度等に応じて、三つ以上とすることもできるほか、タンク152の形状についても、円筒状等、種々のものとできる。この他、ロードセル188に代わる他の荷重計測センサーを用いることもできる。
【0035】
図6はストッパー186で下支えしたタンク152のロードセル188による重量計測の様子を模式的に示す説明図である。この図6では、タンク152の底面各コーナーに位置するストッパー186(図2参照)のうち、図2における左方の2個のストッパー186と右方の2個のストッパー186との高さを異なるものとし、右方の2個のストッパー186を低くした。この高低の差は、タンク152の傾きを招くものの、タンクスペック(縦横寸法)に対してはごく小さいので、図では顕著にタンク152を顕著に傾斜して示しているが、実際のタンク姿勢の傾斜程度は小さく、見かけ上、タンク傾斜はそれほど認知されない。その上で、ロードセル188については、セル上面の高さを高さの高いストッパー186高さと同じかそれよりやや低くし、図2におけるタンク中央よりも右方のストッパー186の側に位置させた。なお、右方の2個のストッパー186を左方より高くしたり、図2における上方側の2個のストッパー186を下方側より高くしたり、その逆とすることもできる。
【0036】
このようにすると、次の利点がある。タンク152への廃液収容が進んでタンク152がコイルスプリング184に抗して降下すると、このタンク152は、まず高さの高い二つのストッパー186で下支えされる。この状態では、高さの低いストッパー186の側ではコイルスプリング184の弾発力がタンク152に作用し、タンク152は高さの高い二つのストッパー186と高さの低い側でのコイルスプリング184で下支えされる。更に廃液回収が進むと、タンク152は、高さの低いストッパー186の側においてコイルスプリング184に抗して降下する。これとほぼ同時に、ロードセル188にもタンク152が当接することから、このロードセル188にてタンク重量が検知(計測)され、タンク152は、高さの高いストッパー186による下支え箇所を支点に傾斜して、その重量をロードセル188に掛ける。この場合、タンク152は、高さの高い二つのストッパー186とロードセル188に必ず当接してこの3点で支えられるので、ストッパー186の上記した高低差とロードセル188のセル高さ調整だけで、確実にタンク重量を計測できる。この場合、ロードセル188を高さの低い図における右方のストッパー186の側に位置させたので、高さの高い二つのストッパー186とロードセル188の3点の当接箇所は広がることになり、タンク支えを安定化させることができる。
【符号の説明】
【0037】
100…廃液回収装置
120…廃液供給部
122…メイン管路
124…分岐管路
126A…開閉バルブ
126B…開閉バルブ
150A…タンクユニット
150B…タンクユニット
152…タンク
154…底面プレート
156…貫通孔
160…フック
170…キャップ
172…フレキシブルホース
174…臭気管
180…タンク保持ユニット
182…保持プレート
184…コイルスプリング
186…ストッパー
188…ロードセル
190…近接センサー
200…オイルパン
202…フロートセンサー
210…制御装置
K…間隙
Fc…リフトフォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒として作用する金属を含有した廃液を回収する廃液回収装置であって、
前記廃液を収容するタンクを有する少なくとも二つのタンクユニットと、
該タンクユニットの前記タンクに前記廃液を分配供給する供給系と、
前記タンクを保持するタンク保持ユニットとを備え、
該保持ユニットは、
前記タンクの底面周縁に位置してタンク底面側に延びるよう配設され、前タンクにタンクを持ち上げる側の弾発力を及ぼして、廃液未収容の前記タンクに対しては、これを前記弾発力により持ち上げて前記タンクを下支えする複数の弾発体と、
該弾発体よりも前記底面周縁の側に位置してタンク底面側に延びるよう配設され、前記タンクへの廃液収容が進むことで前記弾発力に抗して降下する前記タンクを前記底面周縁の側で下支えしてタンク降下位置を保つ複数の固形ストッパーと、
前記タンクの底面側に配設され、廃液未収容の前記タンクに対しては非接触であって、廃液収容に伴って前記廃液収容量が規定収容量に近づくと、前記弾発力に抗して降下する前記タンクに接触してタンク重量を計測する計測部とを備え、
前記供給系は、
前記廃液収容量が前記規定収容量に到達した際の規定タンク重量を前記計測部が計測すると、前記廃液の分配先を廃液未収容のタンクに変更する
廃液回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−217946(P2012−217946A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87262(P2011−87262)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000207816)大豊精機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】