説明

延伸ポリプロピレンフィルム

【課題】明性、滑り性、耐ブロッキング性のバランスに優れたフィルムを提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン100重量部、平均粒径が0.1〜1.0μmである球状シリコーン樹脂(A)0.01重量部以上0.8重量部未満、および平均粒径が1.1〜5.0μmである球状シリコーン樹脂(B)0.01重量部以上0.4重量部未満を含有し、少なくとも一軸に延伸されてなる、延伸ポリプロピレンフィルム。球状シリコーン樹脂(B)の平均粒径と、球状シリコーン樹脂(A)の平均粒径との差が0.5μm以上であり、球状シリコーン樹脂(A)の含有量に対する球状シリコーン樹脂(B)の含有量の比が1/20〜20/1である、前記延伸ポリプロピレンフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、滑り性、耐ブロッキング性、および、耐傷付き性に優れる延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン100重量部に、平均粒子径10μm以下の球状シリコーン樹脂粉末を0.01〜0.5重量部添加して少なくとも一軸に延伸したフィルムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−135840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフィルムは、透明性、滑り性、耐ブロッキング性のバランスにおいて不充分であった。本発明は、透明性、滑り性、耐ブロッキング性のバランスに優れたフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリプロピレン100重量部、平均粒径が0.1〜1.0μmである球状シリコーン樹脂(A)0.01重量部以上0.8重量部未満、および平均粒径が1.1〜5.0μmである球状シリコーン樹脂(B)0.01重量部以上0.4重量部未満を含有し、少なくとも一軸に延伸されてなる、延伸ポリプロピレンフィルムに係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により透明性、滑り性、耐ブロッキング性に優れる延伸ポリプロピレンフィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン100重量部、平均粒径が0.1〜1.0μmである球状シリコーン樹脂(A)0.01重量部以上0.8重量部未満、および平均粒径が1.1〜5.0μmである球状シリコーン樹脂(B)0.01重量部以上0.4重量部未満を含有し、少なくとも一軸に延伸して得られる。
ポリプロピレンは、アイソタクチックプロピレン系重合体が好ましく用いられ、中でもプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体が特に好ましい。α−オレフィンとしては、たとえば1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−ヘキセン等が挙げられ、特に1−ブテンが好ましい。共重合は延伸性などを制御する目的で行われ、プロピレン以外のモノマーの含有量としては、エチレンの場合は5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。α−オレフィンの場合は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。エチレンが5重量%を超えるか、α−オレフィンが10重量%を超えると結晶性が低下し、製品の剛性が損なわれる場合がある。
【0008】
ポリプロピレンの融点は、好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは155℃以上である。融点が150℃より低い場合には、製品の剛性が損なわれる場合がある。
【0009】
ポリプロピレンのMFRは、0.1〜100g/10min、好ましくは1〜50g/10min、さらに好ましくは1〜20g/10minである。MFRが0.1g/10minより小さいと押出特性に劣ることがあり、100g/10minより大きいと延伸性が劣ることがある。
【0010】
ポリプロピレンの20℃キシレン可溶部量(CXS、単位:重量%)は、得られる延伸フィルムの剛性や耐ブロッキング性の観点から、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
【0011】
ポリプロピレンの製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
公知の重合触媒としては、例えば、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて用いられる電子供与性化合物等の第3成分とからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系等が挙げられる。好ましくはマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物からなる触媒系であり、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報等に記載されている触媒系である。
【0012】
公知の重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法、あるいは、前記の重合法を組み合わせ、それらを連続的に行なう方法、例えば、液相−気相重合法等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いられる球状シリコーン樹脂は、Si−O−Si結合を構造単位にもち、側鎖にメチル基等の有機基をもつ非溶融性の三次元ポリマーであり、その構造、性状及び性質からシリコーンオイルやシリコーンゴムとは区別される。
このような球状シリコーン樹脂は、ポリアルキルシロキサンが代表的で広く知られているが、具体的には、たとえば、加水分解シランを水中または水溶液中で加水分解・縮合する事によって得る事が出来る。さらに詳しくは、メチルトリクロロシラン、メチルトリアルコキシシラン等の3官能性シランまたはその部分加水分解物を、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニアまたはアミン等の水溶液下で加水分解、縮合して得られるポリメチルシルセスキオキサンが、真球状の微粒子が安定して得られ、特に望ましい。
【0014】
本発明で用いられる球状シリコーン樹脂(A)の平均粒径は、0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜1.0μmであり、球状シリコーン樹脂(B)の平均粒径は1.1〜5.0μm、好ましくは1.1〜4.0μmである。球状シリコーン樹脂(A)の平均粒径が0.1μmより小さいと耐ブロッキング性、滑り性の改良効果が不十分なことがあり、球状シリコーン樹脂(B)の平均粒径が5.0μmより大きいと得られるフィルムの透明性を損なうことがある。
【0015】
球状シリコーン樹脂(B)の平均粒径と、球状シリコーン樹脂(A)の平均粒径との差は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1.2μm以上である。
【0016】
球状シリコーン樹脂(A)と球状シリコーン樹脂(B)の平均粒径は、光学顕微鏡を用いて測定し、数平均で求めた値である。
【0017】
球状シリコーン樹脂(A)の添加量は、ポリプロピレン100重量部に対して、0.01重量部以上0.8重量部未満、好ましくは0.02重量部以上0.5重量部未満であり、球状シリコーン樹脂(B)の添加量は、ポリプロピレン100重量部に対して、0.01重量部以上0.4重量部未満、好ましくは0.02重量部以上0.3重量部未満である。球状シリコーン樹脂(A)のおよび(B)のそれぞれの添加量が、0.01重量部未満であると滑り性の改良効果が不十分であり、球状シリコーン樹脂(A)の添加量が0.8重量部以上であったり、球状シリコーン樹脂(B)の添加量が0.4重量部以上であったりすると延伸フィルムの透明性が不十分なことがある。
【0018】
球状シリコーン樹脂(A)の添加量に対する球状シリコーン樹脂(B)の添加量の比は、好ましくは1/20〜20/1、より好ましくは1/10〜10/1、特に好ましくは1/5〜5/1である。
【0019】
本発明のポリプロピレン延伸フィルムには、必要に応じて、ポリエチレン等のポリプロピレン以外の樹脂、添加剤を含有させても良い。添加剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ヒドロキシルアミン、可塑剤、難燃剤、造核剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、顔料、界面活性剤、加工助剤、発泡剤、乳化剤、光沢剤、ステアリン酸カルシウム、水酸化金属化合物、ハイドロタルサイト等の中和剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムの製膜方法、および、延伸加工方法としては、通常の方法が挙げられ、例えば、縦方向一軸延伸方式、横方向一軸延伸方式、逐次二軸延伸方式、同時二軸延伸方式、チューブラー二軸延伸方式等が挙げられる。なかでも、逐次二軸延伸方式が最もよく利用され、その際の縦延伸温度は通常120〜150℃であり、縦延伸倍率は通常4〜6倍である。横延伸温度については、通常150〜170℃であり、横延伸倍率は通常8〜10倍である。
【0021】
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムの厚みは、用途に応じて適宜選択でき、5〜100μm、好ましくは10〜70μmである。
【実施例】
【0022】
以下、本発明について、実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)球状シリコーン樹脂の平均粒径(単位:μm)
光学顕微鏡を用い、数平均で求めた。
綿棒に球状シリコーン樹脂の粒子を少量つけ、導電性両面テープを貼った試料台に軽く転写させた。計測対象粒子が300個以上入るようにSEMで写真撮影を行い、画像解析装置を使用して粒度分布を求めた。計測対象の粒子は、全形を認識できるものに限った。
SEM装置:FE−SEM S−800((株)日立製作所社製)
SEM撮影:5,000倍、8視野
画像解析装置:ルーゼックスAP((株)ニレコ社製)
画像解析測定パラメータ:円形(直径)
(2)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて、テトラリンを溶媒として用いて温度135℃で測定した。
(3)コモノマー含量(単位:重量%)
高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ページ以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定を行い、求めた。
【0023】
(4)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
(5)融点(Tm、単位:℃)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下220℃で溶融させた後、急速に150℃まで冷却した。150℃で1分間保持した後、5℃/分の降温速度で50℃まで降温した。
その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度の小数位以下を四捨五入してTm(融点)とした。ピークが複数あるものは、高温側のピークを採用した。
なお、本測定器を用いて5℃/分の降温速度ならびに昇温速度で測定したインジウム(In)のTmは156.6℃であった。
(6)キシレン可溶成分量(CXS、単位:重量%)
10gのポリプロピレンを1000mlの沸騰キシレンに溶解した後、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し攪拌しながら20℃まで冷却し、20℃で一晩放置した後、析出したポリマーを濾別し、濾液からキシレンを蒸発させ、60℃で減圧乾燥して20℃のキシレンに可溶なポリマーを回収し、回収されたポリマーの重量からCXSを算出した。
【0024】
(7)Haze(単位:%)
JIS−K7136に従って測定した。
(8)静摩擦係数(μs)
室温23℃、湿度50%のもと、MD100mm×TD75mmのフィルムサンプル2枚の測定面同士を重ね合わせ、重量200gの錘を設置面積63.5mm×63.5mmで載せ、TOYOSEKI FRICTION TESTER TR−2型で移動速度15cm/分で測定した。
(9)耐ブロッキング性(単位;kg/12cm
MD100mm×TD30mmのフィルムサンプル2枚の測定面同士を重ね合わせて、設置面積MD40mm×TD30mmで重量500gの錘をのせ、60℃のオーブン内で3時間熱処理した。その後、室温23℃、湿度50%の雰囲気下に30分以上放置した後、200mm/分の引張速度で剪断剥離力を測定した。
【0025】
実施例1
特開2008−208362号公報に記載の実施例1に従い、プロピレン、エチレン、水素の量を変化させて、第1段目でプロピレンホモポリマー成分10重量%、第2段目でエチレン含有量が0.6重量%のプロピレン/エチレン共重合体成分90重量%を重合した。得られたパウダーは、エチレン含有量=0.5重量%、融点=159℃、[η]=2.04dl/g、CXS=3.0重量%であった。
得られたポリプロピレンパウダー100重量部に、協和化学(株)社製 DHT−4Cを0.01重量部、チバスペシャルティーケミカルズ(株)社製 Irganox1010を0.15重量部、チバスペシャルティーケミカルズ(株)社製 Irganox168を0.10重量部加え、さらに、アンチブロッキング剤としてモメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製 XC99−A8808(球状シリコーン樹脂、平均粒子径=0.4μm)を0.16重量部、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製 トスパール120(球状シリコーン樹脂、平均粒子径=2.0μm)を0.04重量部加え、220℃で溶融混練し、MFRが2.5g/10minのペレットを得た。
(二軸延伸フィルムの製造)
得られたペレットを、押出機を用いて260℃で押し出し、Tダイに供給した。このTダイから押出された樹脂を30℃の冷却ロールで冷却して厚み約1mmのキャストシートを得た。
得られたキャストシートを延伸温度145℃で縦延伸機のロール周速差により5倍に延伸し、引き続いて加熱炉にて延伸温度157℃で横方向に8倍に延伸した後、濡れ張力が42dyne/cmとなるようにコロナ放電処理を施し、厚み25μmの2軸延伸フィルムを作成した。ロールの巻き取り速度は20m/min、延伸後の緩和率は6.5%に設定した。
得られたフィルムの物性を表1に示した。得られたフィルムは透明性、滑り性、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0026】
実施例2
実施例1において、アンチブロッキング剤としてXC99−A8808を0.10重量部、トスパール120を0.10重量部添加した以外は実施例1と同様に行った。得られた延伸フィルムの物性を表1に示した。得られたフィルムは透明性、滑り性、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0027】
実施例3
実施例1において、アンチブロッキング剤としてXC99−A8808を0.10重量部、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製トスパール145(球状シリコーン樹脂、平均粒子径=3.6μm)を0.10重量部添加した以外は実施例1と同様に行った。得られた延伸フィルムの物性を表1に示した。得られたフィルムは透明性、滑り性、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0028】
比較例1
実施例1において、アンチブロッキング剤としてXC99−A8808の添加量を0.20重量部とし、トスパール120を添加しなかった以外は実施例1と同様に行った。得られた延伸フィルムの物性を表1に示した。滑り性、耐ブロッキング性の劣るフィルムであった。
【0029】
比較例2
実施例1において、アンチブロッキング剤としてトスパール120の添加量を0.20重量部とし、XC99−A8808を添加しなかった以外は実施例1と同様に行った。得られた延伸フィルムの物性を表1に示した。得られたフィルムは透明性の劣るフィルムであった。
【0030】
比較例3
実施例1において、アンチブロッキング剤として、XC99-A8808の添加量を1.00重量部、トスパール120の添加量を0.10重量部とした以外は実施例1と同様に行った。得られた延伸フィルムの物性を表1に示した。得られたフィルムは透明性の劣るフィルムであった。
【0031】
比較例4
実施例1において、アンチブロッキング剤として、XC99-A8808の添加量を0.10重量部、トスパール120の添加量を0.50重量部とした以外は実施例1と同様に行った。得られた延伸フィルムの物性を表1に示した。得られたフィルムは透明性の劣るフィルムであった。
【0032】
表1

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のポリプロピレン延伸フィルムは、ラミネート用フィルム、バリア性フィルム、水性インキ印刷用フィルム、剥離シート用フィルム、表面保護フィルム、食品包装用フィルム等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン100重量部、平均粒径が0.1〜1.0μmである球状シリコーン樹脂(A)0.01重量部以上0.8重量部未満、および平均粒径が1.1〜5.0μmである球状シリコーン樹脂(B)0.01重量部以上0.4重量部未満を含有し、少なくとも一軸に延伸されてなる、延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
球状シリコーン樹脂(B)の平均粒径と、球状シリコーン樹脂(A)の平均粒径との差が0.5μm以上であり、球状シリコーン樹脂(A)の含有量に対する球状シリコーン樹脂(B)の含有量の比が1/20〜20/1である、請求項1に記載の延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
ポリプロピレンの融点が150℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
厚みが10μm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の延伸ポリプロピレンフィルム。

【公開番号】特開2010−209236(P2010−209236A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57572(P2009−57572)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】