延線工事用の電線引き留めアンカー
【課題】組立作業が容易で、延線工事完了後には分解して再利用可能な電線引き留めアンカーの提供。
【解決手段】送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、厚鋼板からなる底板に間隔をおいて形鋼からなる複数の下部梁が間隔をおいて固定され、各下部梁の両端に形鋼からなる支柱が立設され、立設された支柱を取り囲んで支柱に側板が矩形状に固定されて直方体の箱枠18が形成され、箱枠18の空間に所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板が積載され、箱枠18の上部が厚鉄板からなる天板19で覆われ、天板19に、下部梁に対応して形鋼からなる上部梁20が固定され、各上部梁の両端に、電線を掛けて引き留めるアンカー金具21が固定され、底板、側板、天板、下部梁、上部梁、柱及びアンカー金具がボルトナットにより分解可能に接合され、上部梁、下部梁及び支柱がH形鋼からなる。
【解決手段】送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、厚鋼板からなる底板に間隔をおいて形鋼からなる複数の下部梁が間隔をおいて固定され、各下部梁の両端に形鋼からなる支柱が立設され、立設された支柱を取り囲んで支柱に側板が矩形状に固定されて直方体の箱枠18が形成され、箱枠18の空間に所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板が積載され、箱枠18の上部が厚鉄板からなる天板19で覆われ、天板19に、下部梁に対応して形鋼からなる上部梁20が固定され、各上部梁の両端に、電線を掛けて引き留めるアンカー金具21が固定され、底板、側板、天板、下部梁、上部梁、柱及びアンカー金具がボルトナットにより分解可能に接合され、上部梁、下部梁及び支柱がH形鋼からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電鉄塔間の電線延線工事において、ドラム場に設置され、延線後に延線車から移される電線を引き留める電線引き留めアンカーに関し、特に、組立作業が容易であるとともに、延線工事完了後には分解して再利用可能な電線引き留めアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔の間に電線を延線するためには、延線する電線に接続するために延線ロープ、次いで延線ワイヤを張設することが必要となる。そのため、図7に示すように、延線区間の一方をエンジン場とし、反対側をドラム場として、エンジン場には架線ウインチ30とリールワインダ31を設置し、ドラム場には、電線ドラム32、延線車33を配置する。各鉄塔34の腕金またはアーム部には、延線ロープ、延線ワイヤあるいは送電線を案内するための金車35を吊り下げる。
【0003】
延線工事は、まず、図8に示すように、ヘリコプター36により樹脂製の軽い延線ロープ37をドラム場から各鉄塔34を経由してエンジン場まで延線し、延線された延線ロープ37を鉄塔34の金車35に掛けながら掛け渡す。通常、2本の延線ロープがドラム場からエンジン場までつながるように延線を行う。なお、図8において、38は電線引き留めアンカーである。
【0004】
延線ロープは電線が引けるまでの強度がないので、延線ロープに、この延線ロープより強度のある鋼製の延線ワイヤをドラム場で接続し、ドラムから繰り出してゆきエンジン場で架線ウインチを経てリールワインダに巻き取っていく。この作業を繰り返して電線が引けるまでの所定の強度を有する延線ワイヤに引き替えていく。
【0005】
こうして、図9に示すように、電線が引ける所定の強度を有する複数本の延線ワイヤ39の張設が完了した後、張設した延線ワイヤ39の終端に送電線ドラムから繰り出して延線車33を通した送電線40を接続する。その後、延線車33によりバックテンションをかけながらエンジン場の架線ウインチ30で延線ワイヤ39を巻き取ることによって、ドラム場からエンジン場まで各鉄塔間に送電線40の延線を行う(特許文献1参照)。
【0006】
図10に示すように、延線した送電線40は、エンジン場側の鉄塔34でがいし留めを行い、ドラム場の延線車33で弛んでいる電線40をやや緊張させるための仮上げを行う。仮上げ後、電線40を延線車33からコンクリートブロック製の電線引き留めアンカー38に移線を行なって引き留め、次の延線に備えて延線車33を空けていく。
【0007】
図11に示す電線の引き留めに使用するコンクリートブロック製の電線引き留めアンカー38は、コンクリートの現場打ちにより形成されていた。従来のコンクリートブロックからなる電線引留アンカー38は、例えば、約70トン程度の大きい容積のものであった。
【0008】
電線引き留めアンカー38は、まず、ドラム場側の地上にコンクリートブロックを埋め込むための穴を形成する。この穴内に鉄骨を組み立てる。鉄骨には電線を引っかけて固定するためのアンカー金具41が固定される。鉄骨の組立が完了すると、鉄骨をコンクリート型枠で取り囲み、型枠内にコンクリートを流し込み、固化後に型枠を除去し、一定期間養生した後に使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−236952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のコンクリートブロックからなる電線引留アンカーは、鉄骨組立作業、型枠作業、コンクリート打ち込み作業等施工に長い時間と多くの労力を必要としていた。
【0011】
また、コンクリートブロック製の電線引き留めアンカーは重量があるために持ち運びが不可能であるので、繰り返し使用できるものではない。そこで、使用後はコンクリートブロックを解体して撤去する必要があった。したがって、従来のコンクリートブロック製の電線引き留めアンカーは、コストが高くつくだけでなく、撤去時には産業廃棄物(コンクリート殻)も発生し、その処理にも手間がかかるという問題もあった。
【0012】
また、コンクリートブロック設置時に、場所によっては、工事用地交渉に問題が生じることもあった。
【0013】
そこで、本発明は、送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、組立作業が容易で、延線工事完了後には分解して再利用可能な電線引き留めアンカーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、厚鋼板からなる底板に間隔をおいて形鋼からなる複数の下部梁が間隔をおいて固定され、各下部梁の両端に形鋼からなる支柱が立設され、立設された支柱を取り囲んで支柱に側板が矩形状に固定されて直方体の箱枠が形成され、箱枠の空間に所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板が積載され、箱枠の上部が厚鉄板からなる天板で覆われ、天板に、下部梁に対応して形鋼からなる上部梁が固定され、各上部梁の両端に、電線を掛けて引き留めるアンカー金具が固定され、底板、側板、天板、下部梁、上部梁、柱及びアンカー金具がボルトナットにより分解可能に接合されていることを特徴とする。
【0015】
前記構成において、上部梁、下部梁及び支柱がH形鋼からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーにより、次の作用効果を奏する。
本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板とH形鋼等の形鋼をボルトナットで組立、分解できるので、従来の現場打ちコンクリートブロック製の電線引き留めアンカーと施工日数の比較を行った結果、コンクリート破砕作業日数分の工事期間の短縮が可能であった。
【0017】
(2)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、従来の現場打ちコンクリートブロック製の電線引き留めアンカーと施工費の比較を行った結果、初回製作費を除けば、従来のアンカーに係る費用の約半分の施工費であった。
【0018】
(3)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板とH形鋼等の形鋼をボルトナットで接合する構造となっているので、産業廃棄物を発生させることなく分解して撤去することが可能である。
【0019】
(4)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、ボルトナットによる組立式なので、延線工事完了後は、分解して繰り返し使用が可能となる。
【0020】
(5)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板とH形鋼等の形鋼をボルトナットで組立、分解するものであるから、コンクリートブロックに起因する環境面(解体の際の騒音、化学物質汚染などの環境面での問題も生じないため、田畑でも使用可能で用地的問題も解消できる。
【0021】
(6)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、ブロックの引揚耐力・水平耐力及び各部材強度は、最大引張り荷重及び引留め仰角によって、箱枠内に積層する鋼板枚数を変えて容易に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電線引留アンカーの底板と下部梁の配置を示し、(a)は上面側の斜視図、(b)は下面側の斜視図である。
【図2】本発明の電線引留アンカーの下部梁と四隅の支柱の配置を示す上面斜視図である。
【図3】本発明の電線引留アンカーの下部梁と支柱の配置を示す上面斜視図である。
【図4】本発明の電線引留アンカーの支柱の接合プレートに形成するボルトの配置を示す上面斜視図及び拡大図である。
【図5】本発明の電線引留アンカーの支柱を取り囲んで側板が固定された状態を示す斜視図である。
【図6】箱枠の上部に上部梁を固定した天板で覆い、アンカー金具を取り付けた本発明の電線引留アンカーの全体を示す斜視図である。
【図7】鉄塔に送電線を延線する延線工事の説明図である。
【図8】ヘリコプターによる延線ロープの延線の説明図である。
【図9】電線の延線工程の説明図である。
【図10】アンカーへの電線のアンカーへの引き留めの説明図である。
【図11】従来のコンクリートブロック製の電線引留アンカーの概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図8を参照しながら、本発明の延線工事用の電線引き留めアンカーの実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板からなる底板、天板、側板及び重錘用板と、H形鋼等の形鋼からなる下部梁、上部梁及び支柱をボルトナットで接合して容易に組み立てることができる。本発明による電線引き留めアンカーは、例えば、横約3.6m、幅約3m、高さ約2.3mの直方体のブロックで、重量が重錘用板を含めて約50tに組み立てられる。
【0025】
図1において、厚鋼板からなる底板1の表面に一定の間隔をおいて平行かつ水平にH形鋼からなる下部梁2が配置される。底板1と下部梁2は、底板1に形成されたボルト孔3と下部梁2のフランジ4に形成されたボルト孔5にボルトを通してナットで締め付けて固定する(ボルトナットは図示せず。)。ボルトは、底板をスペーサ(図示せず)で地上から浮かせた状態にして下側からボルトを通してナットで締め付ける。なお、図1においては、底板1は、2枚の厚鋼板を突き合わせ、突き合わせ部分に継手板6を当て、ボルトナットにより接続している。
【0026】
なお、電線引き留めアンカーは上面を除いて地中に埋められるので、下部梁2が固定された底板1は、ドラム場に予め掘られている作業穴にクレーンにより降ろされ、以後の作業は作業穴で行われる。
【0027】
図2において、底板1の両側に配置されたH形鋼からなる各下部梁2の両端、すなわち四隅には、H形鋼からなる支柱7が立設される。支柱7の上下の端部には、ウエブ8とフランジ9に直交する接合プレート10がそれぞれ固定される。接合プレート10は支柱7の一方のフランジ側には下部梁2に支持される梁支持部11が形成されている。また、支柱7には後述する側板17(図5)に固定する側板固定部材12が設けられている。支柱7の下部に固定した接合プレート10と下部梁2のフランジ4とは、下部梁2のボルト穴13(図1)と接合プレート10のボルト穴14にボルトを通してナットで締め付けて固定される。
【0028】
図3に示すように、図2に示す底板1の両側に配置された下部梁2以外の他の各下部梁2についても、その両端にH形鋼からなる支柱7が立設される。支柱7の下部に固定した接合プレート10と下部梁2のフランジ4とは、それぞれに設けられたボルト穴にボルトを通してナットで締め付けて固定される。
【0029】
図4において、支柱7の上部に固定された接合プレート10のボルト孔14(図2、図3)にボルト15を通してナット16で固定して後述する上部梁20(図6)を止めるボルトを設ける。これは、上部梁20を後述する天板19(図6)の上に載せて固定するために予めボルト15を設けておく必要があるからである。
【0030】
図5において、立設された両側の支柱7を取り囲んで矩形状に厚鋼板からなる側板17が支柱7に固定される。側板17と支柱7は、側板17及び、支柱7のフランジ9及び側板固定部材12のそれぞれに設けられたボルト穴にボルトを通してナットで締め付けて固定される。なお、大きい側板17の場合は、2枚の厚鋼板を突き合わせ、突き合わせ部分に継手板6を当て、ボルトナットにより接続している。
【0031】
こうして、底板1、下部梁2、支柱7、側板17で形成された直方体の箱枠18の両側に立設された支柱7の間の空間に重錘として所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板(図示せず)を重ねて積載する。
【0032】
図6において、図5に示す箱枠18の上部を覆う厚鋼板からなる天板19に上部梁20を固定して準備する。天板19と上部梁20は、天板19に形成されたボルト孔と上部梁20のフランジに形成されたボルト孔に、下側からボルトを通してナットで締め付けて固定される。こうして組み立てた上部梁20を固定した天板19を箱枠18の上に載せて覆い、支柱7の上部に固定した接合プレート10のボルト15を通してナットで固定する。
【0033】
次いで、上部梁20の両端には、電線を架けて固定する孔を有するアンカー金具21が固定される。各上部梁20のフランジとアンカー金具にそれぞれ形成されたボルト穴にボルトを通してナットで締め付けて固定されている。
【0034】
こうして組立が完了すると、作業穴を埋め戻すことにより電線引き留めアンカーが完成する。
【0035】
延線工事完了後は、前記組立手順と逆の手順によりナットをボルトから外し、アンカー金具、底板、天板、側板及び重錘用板、下部梁、上部梁、支柱を分解して解体することにより撤去することができる。
【符号の説明】
【0036】
1:底板 2:下部梁
3:ボルト孔 4:フランジ
5:ボルト孔 6:継手板
7:支柱 8:ウエブ
9:フランジ 10:接合プレート
11:梁支持部 12:側板固定部材
13:ボルト穴 14:ボルト穴
15:ボルト 16:ナット
17:側板 18:箱枠
19:天板 20:上部梁
21:アンカー金具
30:架線ウインチ 31:リールワインダ
32:電線ドラム 33:延線車
34:鉄塔 35:金車
36:ヘリコプター 37:延線ロープ
38:アンカー 39:延線ワイヤ
40:電線 41:アンカー金具
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電鉄塔間の電線延線工事において、ドラム場に設置され、延線後に延線車から移される電線を引き留める電線引き留めアンカーに関し、特に、組立作業が容易であるとともに、延線工事完了後には分解して再利用可能な電線引き留めアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔の間に電線を延線するためには、延線する電線に接続するために延線ロープ、次いで延線ワイヤを張設することが必要となる。そのため、図7に示すように、延線区間の一方をエンジン場とし、反対側をドラム場として、エンジン場には架線ウインチ30とリールワインダ31を設置し、ドラム場には、電線ドラム32、延線車33を配置する。各鉄塔34の腕金またはアーム部には、延線ロープ、延線ワイヤあるいは送電線を案内するための金車35を吊り下げる。
【0003】
延線工事は、まず、図8に示すように、ヘリコプター36により樹脂製の軽い延線ロープ37をドラム場から各鉄塔34を経由してエンジン場まで延線し、延線された延線ロープ37を鉄塔34の金車35に掛けながら掛け渡す。通常、2本の延線ロープがドラム場からエンジン場までつながるように延線を行う。なお、図8において、38は電線引き留めアンカーである。
【0004】
延線ロープは電線が引けるまでの強度がないので、延線ロープに、この延線ロープより強度のある鋼製の延線ワイヤをドラム場で接続し、ドラムから繰り出してゆきエンジン場で架線ウインチを経てリールワインダに巻き取っていく。この作業を繰り返して電線が引けるまでの所定の強度を有する延線ワイヤに引き替えていく。
【0005】
こうして、図9に示すように、電線が引ける所定の強度を有する複数本の延線ワイヤ39の張設が完了した後、張設した延線ワイヤ39の終端に送電線ドラムから繰り出して延線車33を通した送電線40を接続する。その後、延線車33によりバックテンションをかけながらエンジン場の架線ウインチ30で延線ワイヤ39を巻き取ることによって、ドラム場からエンジン場まで各鉄塔間に送電線40の延線を行う(特許文献1参照)。
【0006】
図10に示すように、延線した送電線40は、エンジン場側の鉄塔34でがいし留めを行い、ドラム場の延線車33で弛んでいる電線40をやや緊張させるための仮上げを行う。仮上げ後、電線40を延線車33からコンクリートブロック製の電線引き留めアンカー38に移線を行なって引き留め、次の延線に備えて延線車33を空けていく。
【0007】
図11に示す電線の引き留めに使用するコンクリートブロック製の電線引き留めアンカー38は、コンクリートの現場打ちにより形成されていた。従来のコンクリートブロックからなる電線引留アンカー38は、例えば、約70トン程度の大きい容積のものであった。
【0008】
電線引き留めアンカー38は、まず、ドラム場側の地上にコンクリートブロックを埋め込むための穴を形成する。この穴内に鉄骨を組み立てる。鉄骨には電線を引っかけて固定するためのアンカー金具41が固定される。鉄骨の組立が完了すると、鉄骨をコンクリート型枠で取り囲み、型枠内にコンクリートを流し込み、固化後に型枠を除去し、一定期間養生した後に使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−236952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のコンクリートブロックからなる電線引留アンカーは、鉄骨組立作業、型枠作業、コンクリート打ち込み作業等施工に長い時間と多くの労力を必要としていた。
【0011】
また、コンクリートブロック製の電線引き留めアンカーは重量があるために持ち運びが不可能であるので、繰り返し使用できるものではない。そこで、使用後はコンクリートブロックを解体して撤去する必要があった。したがって、従来のコンクリートブロック製の電線引き留めアンカーは、コストが高くつくだけでなく、撤去時には産業廃棄物(コンクリート殻)も発生し、その処理にも手間がかかるという問題もあった。
【0012】
また、コンクリートブロック設置時に、場所によっては、工事用地交渉に問題が生じることもあった。
【0013】
そこで、本発明は、送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、組立作業が容易で、延線工事完了後には分解して再利用可能な電線引き留めアンカーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、厚鋼板からなる底板に間隔をおいて形鋼からなる複数の下部梁が間隔をおいて固定され、各下部梁の両端に形鋼からなる支柱が立設され、立設された支柱を取り囲んで支柱に側板が矩形状に固定されて直方体の箱枠が形成され、箱枠の空間に所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板が積載され、箱枠の上部が厚鉄板からなる天板で覆われ、天板に、下部梁に対応して形鋼からなる上部梁が固定され、各上部梁の両端に、電線を掛けて引き留めるアンカー金具が固定され、底板、側板、天板、下部梁、上部梁、柱及びアンカー金具がボルトナットにより分解可能に接合されていることを特徴とする。
【0015】
前記構成において、上部梁、下部梁及び支柱がH形鋼からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーにより、次の作用効果を奏する。
本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板とH形鋼等の形鋼をボルトナットで組立、分解できるので、従来の現場打ちコンクリートブロック製の電線引き留めアンカーと施工日数の比較を行った結果、コンクリート破砕作業日数分の工事期間の短縮が可能であった。
【0017】
(2)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、従来の現場打ちコンクリートブロック製の電線引き留めアンカーと施工費の比較を行った結果、初回製作費を除けば、従来のアンカーに係る費用の約半分の施工費であった。
【0018】
(3)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板とH形鋼等の形鋼をボルトナットで接合する構造となっているので、産業廃棄物を発生させることなく分解して撤去することが可能である。
【0019】
(4)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、ボルトナットによる組立式なので、延線工事完了後は、分解して繰り返し使用が可能となる。
【0020】
(5)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板とH形鋼等の形鋼をボルトナットで組立、分解するものであるから、コンクリートブロックに起因する環境面(解体の際の騒音、化学物質汚染などの環境面での問題も生じないため、田畑でも使用可能で用地的問題も解消できる。
【0021】
(6)本発明による延線工事用の電線引き留めアンカーは、ブロックの引揚耐力・水平耐力及び各部材強度は、最大引張り荷重及び引留め仰角によって、箱枠内に積層する鋼板枚数を変えて容易に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電線引留アンカーの底板と下部梁の配置を示し、(a)は上面側の斜視図、(b)は下面側の斜視図である。
【図2】本発明の電線引留アンカーの下部梁と四隅の支柱の配置を示す上面斜視図である。
【図3】本発明の電線引留アンカーの下部梁と支柱の配置を示す上面斜視図である。
【図4】本発明の電線引留アンカーの支柱の接合プレートに形成するボルトの配置を示す上面斜視図及び拡大図である。
【図5】本発明の電線引留アンカーの支柱を取り囲んで側板が固定された状態を示す斜視図である。
【図6】箱枠の上部に上部梁を固定した天板で覆い、アンカー金具を取り付けた本発明の電線引留アンカーの全体を示す斜視図である。
【図7】鉄塔に送電線を延線する延線工事の説明図である。
【図8】ヘリコプターによる延線ロープの延線の説明図である。
【図9】電線の延線工程の説明図である。
【図10】アンカーへの電線のアンカーへの引き留めの説明図である。
【図11】従来のコンクリートブロック製の電線引留アンカーの概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図8を参照しながら、本発明の延線工事用の電線引き留めアンカーの実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の延線工事用の電線引き留めアンカーは、厚鋼板からなる底板、天板、側板及び重錘用板と、H形鋼等の形鋼からなる下部梁、上部梁及び支柱をボルトナットで接合して容易に組み立てることができる。本発明による電線引き留めアンカーは、例えば、横約3.6m、幅約3m、高さ約2.3mの直方体のブロックで、重量が重錘用板を含めて約50tに組み立てられる。
【0025】
図1において、厚鋼板からなる底板1の表面に一定の間隔をおいて平行かつ水平にH形鋼からなる下部梁2が配置される。底板1と下部梁2は、底板1に形成されたボルト孔3と下部梁2のフランジ4に形成されたボルト孔5にボルトを通してナットで締め付けて固定する(ボルトナットは図示せず。)。ボルトは、底板をスペーサ(図示せず)で地上から浮かせた状態にして下側からボルトを通してナットで締め付ける。なお、図1においては、底板1は、2枚の厚鋼板を突き合わせ、突き合わせ部分に継手板6を当て、ボルトナットにより接続している。
【0026】
なお、電線引き留めアンカーは上面を除いて地中に埋められるので、下部梁2が固定された底板1は、ドラム場に予め掘られている作業穴にクレーンにより降ろされ、以後の作業は作業穴で行われる。
【0027】
図2において、底板1の両側に配置されたH形鋼からなる各下部梁2の両端、すなわち四隅には、H形鋼からなる支柱7が立設される。支柱7の上下の端部には、ウエブ8とフランジ9に直交する接合プレート10がそれぞれ固定される。接合プレート10は支柱7の一方のフランジ側には下部梁2に支持される梁支持部11が形成されている。また、支柱7には後述する側板17(図5)に固定する側板固定部材12が設けられている。支柱7の下部に固定した接合プレート10と下部梁2のフランジ4とは、下部梁2のボルト穴13(図1)と接合プレート10のボルト穴14にボルトを通してナットで締め付けて固定される。
【0028】
図3に示すように、図2に示す底板1の両側に配置された下部梁2以外の他の各下部梁2についても、その両端にH形鋼からなる支柱7が立設される。支柱7の下部に固定した接合プレート10と下部梁2のフランジ4とは、それぞれに設けられたボルト穴にボルトを通してナットで締め付けて固定される。
【0029】
図4において、支柱7の上部に固定された接合プレート10のボルト孔14(図2、図3)にボルト15を通してナット16で固定して後述する上部梁20(図6)を止めるボルトを設ける。これは、上部梁20を後述する天板19(図6)の上に載せて固定するために予めボルト15を設けておく必要があるからである。
【0030】
図5において、立設された両側の支柱7を取り囲んで矩形状に厚鋼板からなる側板17が支柱7に固定される。側板17と支柱7は、側板17及び、支柱7のフランジ9及び側板固定部材12のそれぞれに設けられたボルト穴にボルトを通してナットで締め付けて固定される。なお、大きい側板17の場合は、2枚の厚鋼板を突き合わせ、突き合わせ部分に継手板6を当て、ボルトナットにより接続している。
【0031】
こうして、底板1、下部梁2、支柱7、側板17で形成された直方体の箱枠18の両側に立設された支柱7の間の空間に重錘として所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板(図示せず)を重ねて積載する。
【0032】
図6において、図5に示す箱枠18の上部を覆う厚鋼板からなる天板19に上部梁20を固定して準備する。天板19と上部梁20は、天板19に形成されたボルト孔と上部梁20のフランジに形成されたボルト孔に、下側からボルトを通してナットで締め付けて固定される。こうして組み立てた上部梁20を固定した天板19を箱枠18の上に載せて覆い、支柱7の上部に固定した接合プレート10のボルト15を通してナットで固定する。
【0033】
次いで、上部梁20の両端には、電線を架けて固定する孔を有するアンカー金具21が固定される。各上部梁20のフランジとアンカー金具にそれぞれ形成されたボルト穴にボルトを通してナットで締め付けて固定されている。
【0034】
こうして組立が完了すると、作業穴を埋め戻すことにより電線引き留めアンカーが完成する。
【0035】
延線工事完了後は、前記組立手順と逆の手順によりナットをボルトから外し、アンカー金具、底板、天板、側板及び重錘用板、下部梁、上部梁、支柱を分解して解体することにより撤去することができる。
【符号の説明】
【0036】
1:底板 2:下部梁
3:ボルト孔 4:フランジ
5:ボルト孔 6:継手板
7:支柱 8:ウエブ
9:フランジ 10:接合プレート
11:梁支持部 12:側板固定部材
13:ボルト穴 14:ボルト穴
15:ボルト 16:ナット
17:側板 18:箱枠
19:天板 20:上部梁
21:アンカー金具
30:架線ウインチ 31:リールワインダ
32:電線ドラム 33:延線車
34:鉄塔 35:金車
36:ヘリコプター 37:延線ロープ
38:アンカー 39:延線ワイヤ
40:電線 41:アンカー金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、
厚鋼板からなる底板に間隔をおいて形鋼からなる複数の下部梁が間隔をおいて固定され、
各下部梁の両端に形鋼からなる支柱が立設され、
立設された支柱を取り囲んで支柱に側板が矩形状に固定されて直方体の箱枠が形成され、
箱枠の空間に所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板が積載され、
箱枠の上部が厚鉄板からなる天板で覆われ、
天板に、下部梁に対応して形鋼からなる上部梁が固定され、
各上部梁の両端に、電線を掛けて引き留めるアンカー金具が固定され、
底板、側板、天板、下部梁、上部梁、柱及びアンカー金具がボルトナットにより分解可能に接合されていることを特徴とする架線工事用の電線引き留めアンカー。
【請求項2】
上部梁、下部梁及び支柱がH形鋼からなることを特徴とする請求項1に記載の架線工事用の電線引き留めアンカー。
【請求項1】
送電線の延線工事の際にドラム場に設置される電線引き留めアンカーにおいて、
厚鋼板からなる底板に間隔をおいて形鋼からなる複数の下部梁が間隔をおいて固定され、
各下部梁の両端に形鋼からなる支柱が立設され、
立設された支柱を取り囲んで支柱に側板が矩形状に固定されて直方体の箱枠が形成され、
箱枠の空間に所定量の複数枚の厚鋼板からなる重錘用板が積載され、
箱枠の上部が厚鉄板からなる天板で覆われ、
天板に、下部梁に対応して形鋼からなる上部梁が固定され、
各上部梁の両端に、電線を掛けて引き留めるアンカー金具が固定され、
底板、側板、天板、下部梁、上部梁、柱及びアンカー金具がボルトナットにより分解可能に接合されていることを特徴とする架線工事用の電線引き留めアンカー。
【請求項2】
上部梁、下部梁及び支柱がH形鋼からなることを特徴とする請求項1に記載の架線工事用の電線引き留めアンカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−213318(P2012−213318A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107748(P2012−107748)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3167297号
【原出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(505268677)株式会社九建 (11)
【出願人】(306031814)株式会社 南王 (1)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3167297号
【原出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(505268677)株式会社九建 (11)
【出願人】(306031814)株式会社 南王 (1)
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