説明

建物の制御システム

【課題】建物の利用者を屋内から半屋外空間へ適切に誘導できる、建物の制御システムを提供すること。
【解決手段】建物11には、その屋内空間部12に隣接してバルコニー13が設けられている。屋内空間部12には、ユーザが所持する携帯機Kとの通信を通じて、その携帯機Kに登録されたユーザ固有の識別情報及びユーザ嗜好情報を取得する無線通信装置33が設けられている。また、バルコニー13には、そこでの環境情報を取得する環境情報取得装置34が設けられている。コントローラ31は、その両情報に基づいて、屋内空間部12からバルコニー13へ移動することの適否を判断する。移動不適と判断されると、コントローラ31は、バルコニー13に設けられた各装置21〜23の駆動を制御して、そのこでの環境を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の制御システムにかかり、特に、屋内からバルコニー等の半屋外空間へ移動することの適否を判断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物では、バルコニー、ベランダ及びテラス等の半屋外空間が設けられることが一般的となっている。このような半屋外空間は、建物の外壁部から張り出すように設置されたり、下階部分の上方に設置されたりする。例えば、後者の設置態様に関しては、車庫の上方スペースを利用する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような半屋外空間は、多目的なスペースとして利用される。例えば、洗濯物を干す等の作業スペースとしては勿論、バーベキュー等の食事を楽しんだり、夜に天体観測を楽しんだり、外を眺めながら休息するといった娯楽・休息スペースとしても利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−317033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半屋外空間は屋外と通じているため、その半屋外空間の環境は屋外環境に左右される。つまり、夏季における屋外の気温や湿度の高さとか、冬季における屋外の気温の低さがそのまま半屋外空間にも反映される。
【0006】
このような半屋外空間での環境について、屋外から遮断された屋内において把握することは困難である。そのため、半屋外空間を娯楽・休息スペースとして利用しようとする場合に、現状での環境状態を把握しないまま屋内からその半屋外空間に出ると、快適とはいえない環境下に不意にさらされることになってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、建物の利用者を屋内から半屋外空間へ適切に誘導できる、建物の制御システムの提供を主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、第1の発明では、半屋外空間を備えた建物に適用され、前記建物での人の移動の適否を判断する制御システムにおいて、屋内に存在していて、その屋内から前記半屋外空間へ移動しようとする人に関する個人情報を取得する個人情報取得手段と、前記半屋外空間での半屋外環境情報を取得する半屋外環境情報取得手段と、前記個人情報と前記半屋外環境情報とに基づいて、人が屋内から前記半屋外空間へ移動することの適否を判断する判断手段と、を備えた。
【0010】
この第1の発明によれば、半屋外空間への移動の適否判断において、移動に適していると判断された場合にその移動を促すようにすれば、建物の利用者を屋内から半屋外空間へ適切に誘導できる。そして、この移動適否の判断では、利用者の嗜好情報や生体情報等の個人情報が考慮されるため、利用者にとって快適となる半屋外空間へ誘導できることになる。これにより、半屋外空間を娯楽・休息等のスペースとして利用しやすくすることができる。
【0011】
第2の発明によれば、前記半屋外空間での環境を変化させる半屋外環境形成手段と、前記判断手段によって前記半屋外空間への移動が不適と判断された場合に、前記個人情報に基づいて、前記半屋外環境形成手段の駆動を制御する制御手段と、を備えた。
【0012】
この第2の発明によれば、半屋外空間への移動が不適と判断されると、前記個人情報に基づいて、半屋外環境形成手段が駆動制御されるため、半屋外空間が移動に適した環境となるように環境を変化させることができる。これにより、移動に不適であっても、その後に、適する環境へ変化させることができ、半屋外空間の利用をより一層促進することができる。
【0013】
第3の発明によれば、前記建物の利用者によって個別に所持され、その所持する利用者に付与される個別の識別情報と、利用者ごとの前記半屋外空間の環境に関する嗜好情報とが記憶された携帯型通信装置を備え、前記判断手段は、前記識別情報を取得した場合に前記移動の適否を判断するようにし、また、前記制御手段は、前記個人情報取得手段が取得した前記個人情報としての前記嗜好情報に基づいて、前記半屋外環境形成手段の駆動を制御するようにした。
【0014】
この第3の発明によれば、識別情報が取得された場合に、半屋外空間への移動適否が判断される。その識別情報とともに、前記個人情報としての嗜好情報を取得して、その嗜好情報に基づいて、半屋外環境形成手段の駆動が制御される。これにより、個々の利用者の嗜好に合わせた環境に変化させることができる。
【0015】
第4の発明では、前記建物の利用者が複数存在する場合に、その利用者間での優先順位を設定する設定手段を備え、前記個人情報取得手段が同時に複数の前記識別情報を取得した場合、前記制御手段は、前記優先順位により優先される利用者の嗜好情報に基づいて、前記半屋外環境形成手段を制御するようにした。
【0016】
この第4の発明によれば、同時に複数の識別情報を取得した場合に優先される利用者を設定し、その優先利用者の嗜好情報に合わせた環境に変化させることができる。これにより、優先基準がないために、複数の利用者の嗜好を調整する必要が生じて制御が混乱するといった不都合を抑制できる。
【0017】
第5の発明では、前記建物の利用者が前記半屋外空間への移動する時刻又は時間帯を予測する移動予測手段を備え、前記制御手段は、前記予測された時刻又は時間帯に、前記半屋外環境形成手段の駆動を制御するようにした。
【0018】
この第5の発明によれば、移動が不適と判断された後に半屋外空間の環境変化がなされるだけでなく、その判断前に予め環境が変化されることになる。これより、利用者が半屋外空間へ移動しようとする場合に、所望する環境も変化することを待つことなく、半屋外空間へ移動できて便利となる。
【0019】
なお、前記半屋外環境形成手段は、具体的には、前記半屋外空間に向けて水を噴霧する水噴霧手段を採用することができる。これにより、半屋外空間に水が噴霧されることにより、半屋外空間の気温を低下させたり、湿度を高めたりする効果が得られる。
【0020】
また、水噴霧手段に代えて、又はそれとともに、前記半屋外空間に向けて香りを発生させる香り発生手段を採用してもよい。香りを発生させることにより、リラクゼーション効果やリフレッシュ効果等が得られる。この場合、香りの種類によって得られる効果も異なるし、利用者の嗜好する香りの種類も異なるため、数種類の香り発生源を有して、その中から選択的に特定種類の香りを発生させることが好適となる。
【0021】
さらに、水噴霧手段及び香り発生手段に代えて、又はそれとともに、前記半屋外空間に風を発生させる風発生手段を採用してもよい。これにより、無風状態の中で強制的に風を発生させて、涼しさを確保することができる。この場合、快適さを感じる風量や風向きに関する嗜好は利用者によって異なるため、風量の強弱や風向き(足元、上向き、中段等)を調整可能とすることが好適となる。
【0022】
さらにまた、前記半屋外空間は屋根部を有している場合であれば、前記半屋外空間の天井部分に設けられてその下方へシャワー状に水を降らせる降水手段を採用してもよい。これにより、シャワー状の降水が水によるカーテンとなって半屋外空間が目隠しされるため、そこでのプライバシーを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】バルコニー及びそれに隣接する屋内空間部を示す建物の概略縦断面図。
【図2】バルコニー環境形成システムにおける制御の流れを示すフローチャート。
【図3】バルコニーの別例と、環境変化させる装置の別例を示す建物の概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の制御システムについて、その一実施形態を説明する。
【0025】
前提として、ここでは、半屋外空間としてバルコニーを想定し、そのバルコニーを有する住宅等の建物に、複数人(例えば、同居する家族)の利用者(ユーザ)が存在するものとする。また、この建物はバルコニー環境形成システムを有している。バルコニー環境形成システムは、バルコニーでの環境を変化させるだけでなく、屋内からバルコニーへ移動することの適否を判断する構成が付与されているものとする。
【0026】
図1は、バルコニー及びそれに隣接する屋内空間部を示す概略縦断面図である。図1には、本実施形態におけるバルコニー環境形成システムのシステム構成も、併せて図示されている。
【0027】
図1に示されているように、建物11の上階部分には屋内空間部12と、その屋内空間部12と横並びで隣接するバルコニー13とが設けられている。屋内空間部12とバルコニー13とは外壁部14によって仕切られており、その外壁部14には比較的大開口の窓部15が設けられている。この窓部15を利用して、屋内空間部12とバルコニー13との間を建物利用者が行き来できるようになっている。
【0028】
ちなみに、図1の図示では、最上階部分に屋内空間部12及びバルコニー13が設けられているが、これらが建物11の中階部分に設けられてもよい。また、屋根部16もフラット屋根とされているが、傾斜屋根であってもよい。
【0029】
バルコニー13の腰壁部13aには、バルコニー13の環境を変化させるべく、ミスト発生装置21、香り発生装置22及びファン装置23が設けられている。これら各装置21〜23は半屋外環境形成手段に相当する。
【0030】
ミスト発生装置21は、バルコニー13の空間領域に向けて、その有する噴射ノズルから水(温水又は冷水)を霧吹きのように噴霧するものである。夏季に冷水をミスト噴霧すれば、バルコニー13の気温を低下させたり、涼しさを確保したりすることが可能となる。また、冬季にミスト噴霧すれば、バルコニー13での湿度を高めることが可能となる。
【0031】
香り発生装置22は、当該香り発生装置22から発生する香りによって、人に対するリラクゼーション効果やリフレッシュ効果等の各種効果を期待できる。香りそのものが有する効果は種類によって異なるし、香りに関する嗜好もユーザごとに異なる。そのため、この香り発生装置22では数種類の香り発生源を有しており、その中から選択的に特定種類の香りを発生させることが可能となっている。
【0032】
ファン装置23は、バルコニー13に強制的に風を起こすものであり、これにより涼しさを確保することができる。快適さを感じる風量や風向きに関する嗜好がユーザごとに異なるため、風量の強弱や風向き(足元、上向き、中段等)を調整することが可能となっている。
【0033】
上記各装置21〜23は、コントローラ31と接続されている。コントローラ31は、CPU及びメモリ等を含んで構成されるマイクロコンピュータを有しており、例えば、屋内空間部12の内壁に設置された操作装置32に内蔵されている。上記各装置21〜23は、それぞれコントローラ31によりその駆動が制御される。このコントローラ31による駆動制御により、上記各装置21〜23を用いてバルコニー13の環境を様々な状態に変化させる。このため、コントローラ31は制御手段に相当する。
【0034】
このように、バルコニー13の環境を変化させる制御を行う前提として、コントローラ31は、屋内空間部12からバルコニー13への移動(案内)することの適否を判断するようになっている。その適否判断によって、バルコニー13への移動が不適であると判断した場合に、バルコニー13が所望の環境状態となるように制御する。このため、コントローラ31は判断手段でもある。
【0035】
移動適否の判断や環境変化の制御を実行するためには、バルコニー13の環境状態を把握する必要がある。このため、バルコニー13の腰壁部13aには、そのバルコニー13における気温、湿度、風の状態等の環境情報を取得する環境情報取得装置34が設けられている。この環境情報取得装置34は、半屋外環境情報取得手段に相当する。環境情報取得装置34はコントローラ31と接続されており、コントローラ31は環境情報取得装置34で取得した環境情報に基づいて、バルコニー13における環境状態を把握する。
【0036】
また、移動適否の判断及び環境変化の制御は、ユーザが個別に有する識別情報を受信したことをトリガとして実行される第1の場合と、ユーザによってボタン操作がなされたことをトリガとして実行される第2の場合とがある。
【0037】
前者(識別情報受信がトリガとなる第1の場合)のための構成として、複数のユーザによって携帯機Kがそれぞれ所持されるようになっている。携帯型通信装置としての携帯機Kは小型のもので、携帯しても邪魔になりにくく、かつ常備しやすいものとなっている。例えば、スマートキーシステムで使用される電子キー、携帯電話、通信機能を有するICカード、ICタグ等を携帯機Kとして用いるることが可能である。ユーザごとに、形式・形態の異なる携帯機Kを使用することも可能である。
【0038】
この携帯機Kは、屋内空間部12に設けられた無線通信装置33との間で無線通信が可能となっている。また、携帯機Kはメモリを有しており、そのメモリには、それぞれの所有者ごとに異なる個別の識別情報と、所有者ごとに登録されるユーザ嗜好情報が記憶されている。
【0039】
識別情報は、少なくとも本システムで認証されるユーザであって、かつ認証対象とされる複数のユーザが個別に認識可能となる情報となっている。また、ユーザ嗜好情報には、好みの香りや、快適さを感じる環境状態に関して任意に設定される環境情報が含まれる。この第1の場合においては、ユーザ嗜好情報が個人情報に相当し、それを取得する前記無線通信装置33が個人情報取得手段に相当する。
【0040】
快適さを感じる環境状態としては、例えば、気温、湿度、風向き、風量等が考えられる。そのうち、気温、湿度及び風量等の定量化が可能なものについては、季節に応じて複数の段階に分けて設定されるようになっている。例えば、夏季における気温については、「1.25℃未満」、「2.25〜28℃」「3.28℃超」というようにである。そのユーザ嗜好情報は、各ユーザの入力操作によって携帯機Kのメモリに登録され、必要に応じて更新される(書き換えられる)。具体的には、携帯機Kに設けられた設定入力部の入力操作によって登録及び更新される。なお、メモリとしては、内蔵メモリの外に、メモリカード等の出し入れ可能な記憶媒体であってもよい。
【0041】
携帯機Kとの間で無線通信が行われる前記無線通信装置33は、コントローラ31に接続されている。コントローラ31は、この無線通信装置33より定期的にリクエスト信号を送信するようになっている。このリクエスト信号の受信エリアは、屋内空間部12の中でもバルコニー13へ通ずる窓部15周辺を少なくとも含む領域となっている。携帯機Kはそのリクエスト信号の受信エリアに進入した際に、当該リクエスト信号に応答して識別情報とユーザ嗜好情報とを送信する。
【0042】
無線通信装置33において、建物11のユーザが有する識別情報を受信することにより、コントローラ31は、移動適否判断及び環境を変化させる制御を実行する。また、同様に受信したユーザ嗜好情報に基づいて、前述したミスト発生装置21、香り発生装置22及びファン装置23の各装置21〜23を制御して、バルコニー13の環境を好適な状態に変化させる。
【0043】
ちなみに、複数のユーザ間では、例えば、家族の中で父親を最優先にするといったように、優先順位が設定されている。ユーザ嗜好情報に含まれる各種情報が重複して認識された場合、コントローラ31では、複数の中での最優先ユーザの情報が優先されるようになっている。この優先順位は、操作装置32に設けられた設定入力部の入力操作により、ユーザにより適宜設定され、その設定情報がコントローラ31のメモリに記憶される。このため、コントローラ31は設定手段にも相当する。
【0044】
一方、後者(ボタン操作がトリガとなる第2の場合)のための構成として、前記操作装置32には、システムの制御(移動適否判断と環境を変化させる制御の実行)開始を要求する要求ボタン32aが設けられている。このようなボタン操作がなされるのは、主として前記携帯機Kをユーザが所持していない場合であり、そのような場合はユーザ嗜好情報を取得できない。そこで、屋内空間部12でのユーザの生体情報(体表面温度や脈拍等)が、移動適否の判断要素となる。つまり、この第2の場合では、ユーザの生体情報が個人情報となる。
【0045】
かかる生体情報を取得すべく、屋内空間部12には、その屋内空間部12に存在するユーザの生体情報を取得する生体情報取得装置35が設置されている。この生体情報取得装置35が、生体情報取得手段に相当する。生体情報取得装置35は、屋内空間部12の中でも、バルコニー13へ通ずる窓部15周辺を少なくとも含む領域が情報取得範囲となるように設置されている。そして、コントローラ31は、屋内空間部12からバルコニー13へ移動しようとするユーザの生体情報を把握する。
【0046】
次に、本実施形態のバルコニー環境形成システムにおいて、コントローラ31が実行する制御の流れを、図2のフローチャートに基づいて説明する。この制御処理は、所定の時間周期で実行されるようになっている。
【0047】
図2において、ステップS101では、建物11のユーザに固有の識別情報を取得したか否かを判定する。この場合、無線通信装置33より送信したリクエスト信号に応答して識別情報を取得すると、その認証処理を行う。建物11のユーザが所持する携帯機Kより、ユーザに固有の識別情報を取得した場合、認証OKとし、判定を肯定して次のステップS102に進む。ステップS102では、複数のユーザの識別情報を同時に取得したか否かを判定する。その識別情報の同時取得がなく、単独の識別情報を取得しただけであれば判定を否定し、次のステップS103に進む。そのステップS103では、識別情報とともにリクエスト信号に応答した携帯機Kより、ユーザ嗜好情報を取得する。その後、ステップS104に進み、環境情報取得装置34により、バルコニー13における気温、湿度、風の状態等の環境情報を取得する。
【0048】
一方、最初のステップS101にて、識別情報を取得しなかった場合、つまり、識別情報を全く取得しないとか、取得した識別情報がユーザ固有の識別情報でなかった場合には、認証NGとし、判定を否定してステップS105に進む。ステップS105では、操作装置32の要求ボタン32aが操作されたか否かを判定する。操作されていない場合は、そのまま処理を終了する。このため、ユーザ固有の識別情報を取得せず、かつ要求ボタン32aの操作もなされていない場合は処理を終了する。これに対し、要求ボタン32aが操作されている場合は、判定を肯定してステップS106に進む。ステップS106では、生体情報取得装置35より、屋内空間部12の窓部15の周辺に存在するユーザの体表面温度等の生体情報を取得する。その後、前記ステップS104に進んで、バルコニー13の環境情報を取得する。
【0049】
また、前記ステップS102にて、複数のユーザの識別情報を同時に取得した場合には、判定を肯定してステップS107に進む。ステップS107では、設定された優先順位にしたがって、同時取得した識別情報の中から、最優先とされる識別情報を判断し、その識別情報とともにユーザ嗜好情報を取得する。その後、前記ステップS104に進んで、バルコニー13の環境情報を取得する。
【0050】
バルコニー13の環境情報を取得後、ステップS108に進み、そこでは、屋内空間部12からバルコニー13への移動の適否を判断する。この移動適否の判断は、前記第1の場合、つまり識別情報及びユーザ嗜好情報を取得した場合には、ユーザ嗜好情報とバルコニー13の環境情報とに基づいて行う。バルコニー13の環境情報がユーザ嗜好情報に合致していれば、移動に適していると判断する。一方、両者の情報が合致していない場合は、移動に適していないと判断する。
【0051】
なお、この判断においては、香りに関するユーザ嗜好情報については考慮しない。嗜好情報として登録された香りそのものは自然の状態で存在していないため、これも判断要素とすれば、この移動適否の判断では必ず移動不適と判断されることになってしまうからである。
【0052】
例えば、所定のユーザにおいて、「夏季での気温:25〜28℃、風量:中、風向き:中段、香り:ラベンダー」というようなユーザ嗜好情報が、その所持する携帯機Kのメモリに登録されているとする。この場合、バルコニー13の環境情報が、「気温30℃」であったり、「風量微風」であったりすると、ユーザ嗜好情報と合致しない。この場合、移動に適していないと判断する。
【0053】
これに対し、前記第2の場合、つまりユーザ固有の識別情報取得に代えて、生体情報を取得した場合には、その生体情報とバルコニー13の環境情報とに基づいて、移動の適否判断を行う。この場合、前述したユーザ嗜好情報を取得した第1の場合とは異なり、バルコニー13の環境が、取得したユーザの生体情報にとって快適化か、という基準によって判断する。
【0054】
例えば、風呂上り等によって体が火照っているため、体表面温度が高いというユーザの生体情報を取得したとする。この場合、気温が28℃を下回り、風量が中程度にある状態を、ユーザにとって快適であると判断する。このため、バルコニー13の環境がこのような状態となっていない、つまり「気温30℃」であったり、「風量微風」であったりすると、快適ではなく、移動に適していないと判断する。
【0055】
移動に適していないと判断した場合は、続くステップS109の判定を否定してステップS110に進む。ステップS110ではバルコニー13の環境を変化させ、続くステップS111で、環境を変化させる制御が開始されたことを、操作装置32に設置されたスピーカ等を用いてユーザに対して報知する。その後、本処理を終了する。
【0056】
前記ステップS110において、環境を変化させることの内容として、前記第1の場合には、ユーザ嗜好情報に合致するように、ミスト発生装置21、香り発生装置22及びファン装置23を駆動制御する。前述の例示においては、ミスト発生装置21において冷水ミストを噴霧させ、気温低下や涼しさの演出を行う。それとともに、ラベンダーの香りを選択して発生させ、ファン装置23を駆動して風量不足を補う。一方、前記第2の場合には、生体情報にとって快適な環境となるように、同様に、各装置21〜23を駆動制御する。前述の例示においては、ミスト発生装置21において冷水ミストを噴霧させ、気温低下や涼しさの演出を行う。それとともに、ファン装置23を駆動して風量不足を補う。
【0057】
前記ステップS108での移動適否判断において、移動に適していると判断した場合には前記ステップS109の判定を肯定し、前記ステップS111に進んで本処理を終了する。バルコニー13では、すでに移動に適した環境になっている以上、前記ステップS110において、そこでの環境を変化させる必要がないからである。この場合、ステップS111では、移動に適した状態にある旨を、操作装置32に設置されたスピーカ等を用いてユーザに対して報知する。
【0058】
以上の構成により、以下に示す有利な効果が得られる。
【0059】
(1)携帯機Kより識別情報を取得した場合、又は要求ボタン32aが操作された場合に、バルコニー13への移動の適否判断が行われる。この判断は、ユーザ嗜好情報又は生体情報と、現状のバルコニー13における環境情報との比較に基づいて行われる。これにより、移動に適していると判断されれば、その旨がユーザに報知されて移動が促される。これにより、建物11のユーザを屋内空間部12から、快適となっているバルコニー13へ適切に誘導できる。
【0060】
(2)移動適否の判断において、移動が不適と判断されると、ユーザ嗜好情報と合致するように、又は生体情報との関係で快適となるように、環境を変化させる各装置21〜23を駆動制御する。このため、バルコニー13が快適な環境となるように、積極的に環境を変化させることができ、バルコニー13の利用をより一層促進できる。
【0061】
(3)その識別情報とともにユーザ嗜好情報を取得し、その嗜好情報に合致するように、環境を変化させる各装置21〜23の駆動を制御する。これにより、個々のユーザの嗜好に合わせてバルコニー13の環境を変化させることができ、バルコニー13が娯楽・休息等のスペースとして利用しやすくなる。
【0062】
(4)同時に複数の識別情報を取得した場合に優先されるユーザが設定されているため、その優先ユーザの嗜好情報に合わせた環境に変化させることができる。これにより、優先基準がないために、複数のユーザの嗜好を調整する必要が生じて制御が混乱するといった不都合を抑制できる。
【0063】
(5)環境を変化させるために、ミスト発生装置21、香り発生装置22及びファン装置23が、バルコニー13に設けられている。ミスト発生装置21により、ミスト状に水が噴霧されることで、バルコニー13の気温を低下させたり、湿度を高めたりする効果が得られる。また、香り発生装置22により、ユーザの嗜好に合わせて香りを選択的に発生させることで、リラクゼーション効果やリフレッシュ効果等が得られる。さらに、ファン装置23により、無風状態の中で強制的に風を発生させて、風量や風向きを嗜好に合わせて調整しながら、涼しさを確保できる。
【0064】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0065】
(a)上記実施の形態では、半屋外空間としてバルコニー13を想定したが、軒41(屋根部に相当)を有するバルコニー13(後述する図3参照)、ベランダ、テラス等であってもよい。軒41を有するバルコニー13であれば、その軒41を利用して、環境変化させる各装置21〜23や環境情報取得装置34を設置するようにしてもよい。
【0066】
(b)上記実施の形態では、バルコニー13の環境を変化させる装置として、ミスト発生装置21、香り発生装置22及びファン装置23が設けられているが、除湿装置、ヒータ等の暖房器具、バルコニー13の床に水を流す流水装置等が設けられてもよい。除湿装置は湿度を低下させることが可能であるし、暖房器具があれば冬季でも快適な環境に変化させることが可能となる。また、夏季において、バルコニー13の床に水を流せば、打ち水をしたのと同様の効果として、気温を低下させる効果が得られる。
【0067】
その他、図3に示されているように、バルコニー13に軒41が設けられている場合には、その軒先部分にシャワーノズル42及びバルブ装置43とを有するシャワー装置を設けて、それをバルコニー13の環境を変化させる装置としてもよい。この場合、軒天井における腰壁部13aの上端上方となる箇所において、シャワーノズル42が腰壁部13aの延びる方向に沿って多数設置されている。そして、腰壁部13aには、その上端部に水受け部44が設けられ、シャワーノズル42から下方に向けて水をシャワー状に降らせ、その落下する水をここで受けるようになっている。水受け部44に溜まった水は、腰壁部13aの内部及び下階部分の屋外部分に設けられた排水管45を通じて排水される。このようなシャワー装置が設けられることにより、シャワー状の降水が水のカーテンとなってバルコニー13、ひいては屋内空間部12が目隠しされるため、プライバシーを確保することができる。
【0068】
(c)上記実施の形態では、バルコニー環境形成システムにおいて、ただ環境を変化させるのではなく、それに先立って移動適否の判断がなされるが、移動適否の判断を行うだけのシステム構成としてもよい。つまり、バルコニー13における現状の環境が、ユーザの嗜好又は生体情報との関係で移動に適しているか否かを判断し、その判断をユーザに報知するシステムである。もっとも、ユーザの嗜好に合致する環境や、生体情報との関係で快適となる環境へ積極的に変化させることができる構成を有する方が、バルコニー13での快適さを追求する上では好ましい。
【0069】
(d)上記実施の形態では、識別情報の取得、又は要求ボタン32aの操作により、移動適否の判断がなされ、その後にバルコニー13の環境を変化させているが、ユーザの行動を事前に予測して、バルコニー13での環境変化を予め行うようにしてもよい。上記実施形態では、各装置21〜23を用いて環境を変化させている間、バルコニー13への立ち入りを一時的に躊躇する場合もあるが(例えば、ミスト噴霧中)、そのような待ち時間なくバルコニー13へ立ち入ることができる点で便利である。
【0070】
この場合、取得したユーザ嗜好情報に基づいて、環境を変化させる各装置21〜23を駆動制御するたび、コントローラ31はその有するメモリにその駆動履歴を記憶する。その駆動履歴情報を利用して、ユーザごとにバルコニー13へ立ち入る時刻や時間帯を予測することが考えられる。また、前記無線通信装置33を建物11の屋内各所に設置して、各無線通信装置33における識別情報の受信状況に基づいて、建物11内でのユーザの行動パターンを把握する。その行動パターンを利用して、ユーザごとにバルコニー13へ立ち入る時刻や時間帯を予測するようにしてもよい。そして、その予測した時刻や時間帯において、バルコニー13がユーザの嗜好に合致した環境、ユーザの生体情報との関係で快適さとなるように環境を変化させる。ここでは、コントローラ31が移動予測手段に相当する。
【0071】
(e)上記実施の形態において、所有者ごとに登録されるユーザ嗜好情報は、一日における時間帯、季節、曜日ごとにその登録内容を変更してもよい。例えば、起床時間帯に合わせて、リフレッシュ効果を有する香り、風量として微風を設定すれば、起床時にバルコニー13へ立ち入ることで、目覚ましを促す効果が得られる。
【符号の説明】
【0072】
13…バルコニー(半屋外空間)、21…ミスト発生装置(半屋外環境形成手段)、22…香り発生装置(半屋外環境形成手段)、23…ファン装置(半屋外環境形成手段)、31…コントローラ(判断手段、制御手段、設定手段)、33…無線通信装置(個人情報取得手段)、34…環境情報取得装置(半屋外環境情報取得手段)、35…生体情報取得装置(個人情報取得手段)、K…携帯機(携帯型通信装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半屋外空間を備えた建物に適用され、前記建物での人の移動の適否を判断する制御システムにおいて、
屋内に存在していて、その屋内から前記半屋外空間へ移動しようとする人に関する個人情報を取得する個人情報取得手段と、
前記半屋外空間での半屋外環境情報を取得する半屋外環境情報取得手段と、
前記個人情報と前記半屋外環境情報とに基づいて、人が屋内から前記半屋外空間へ移動することの適否を判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする建物の制御システム。
【請求項2】
前記半屋外空間での環境を変化させる半屋外環境形成手段と、
前記判断手段によって前記半屋外空間への移動が不適と判断された場合に、前記個人情報に基づいて、前記半屋外環境形成手段の駆動を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の建物の制御システム。
【請求項3】
前記建物の利用者によって個別に所持され、その所持する利用者に付与される個別の識別情報と、利用者ごとの前記半屋外空間の環境に関する嗜好情報とが記憶された携帯型通信装置を備え、
前記判断手段は、前記識別情報を取得した場合に前記移動の適否を判断するようにし、また、前記制御手段は、前記個人情報取得手段が取得した前記個人情報としての前記嗜好情報に基づいて、前記半屋外環境形成手段の駆動を制御することを特徴とする請求項2に記載の建物の制御システム。
【請求項4】
前記建物の利用者が複数存在する場合に、その利用者間での優先順位を設定する設定手段を備え、
前記個人情報取得手段が同時に複数の前記識別情報を取得した場合、前記制御手段は、前記優先順位により優先される利用者の嗜好情報に基づいて、前記半屋外環境形成手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の建物の制御システム。
【請求項5】
前記建物の利用者が前記半屋外空間への移動する時刻又は時間帯を予測する移動予測手段を備え、
前記制御手段は、前記予測された時刻又は時間帯に、前記半屋外環境形成手段の駆動を制御する請求項2乃至4のいずれか1項に記載の建物の制御システム。
【請求項6】
前記半屋外環境形成手段は、前記半屋外空間に向けて水を噴霧する水噴霧手段を含むことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の建物の制御システム。
【請求項7】
前記半屋外環境形成手段は、前記半屋外空間に向けて香りを発生させる香り発生手段を含むことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の建物の制御システム。
【請求項8】
前記半屋外環境形成手段は、前記半屋外空間に風を発生させる風発生手段を含むことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の建物の制御システム。
【請求項9】
前記半屋外空間は屋根部を有しており、前記半屋外環境形成手段は、前記半屋外空間の天井部分に設けられてその下方へシャワー状に水を降らせる降水手段を含むことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の建物の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−236690(P2011−236690A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110807(P2010−110807)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)