説明

建物の基礎構造体

【課題】従来技術の基礎構造体の改良地盤は、地震の際に建物に加わる水平力に対して強度の高い部分(フーチングの下方、フーチングの周囲及びこの周囲の下方に形成された改良地盤の部分)と強度の低い部分(厚さの薄いフーチング間の改良地盤の部分)とが混在した構成であるので、地震の際に建物に水平力が加わった場合に、強度の低い部分に応力が集中して当該強度の低い部分が破壊(圧壊)されてしまう。
【解決手段】本発明の建物の基礎構造体1は、複数のフーチング4と改良地盤2とで形成され、改良地盤2が、フーチング4の下面から所定距離Hだけ下方の位置までの厚さを有した厚さの均等な下層部16と、下層部の上面より複数のフーチングの間の部分に突出する突出部17とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の際に建物に水平力が加わった場合に、建物構造物の負担を軽減可能な建物の基礎構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎構造体として、フーチングの下方、フーチングの周囲及びこの周囲の下方、複数のフーチングとフーチングとの間に、改良地盤を設けた構造が知られている。
【特許文献1】特開2003−41602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術では、図5に示されたフーチング間の改良地盤の厚さは、フーチングの周囲及びこの周囲の下方に形成された改良地盤の厚さより薄い。つまり、従来技術の基礎構造体の改良地盤は、地震の際に建物に加わる水平力に対して強度の高い部分(フーチングの下方、フーチングの周囲及びこの周囲の下方に形成された改良地盤の部分)と強度の低い部分(厚さの薄いフーチング間の改良地盤の部分)とが混在した構成であるので、地震の際に建物に水平力が加わった場合に、強度の低い部分に応力が集中して当該強度の低い部分が破壊(圧壊)されてしまう。このため、地震の際に建物に水平力が加わった場合の負担を改良地盤に分担させることができなくなるので、杭やフーチングなどの建物構造物に加わる負担が大きくなるという課題があった。従って、従来技術の構成では、上記水平力を考慮して杭やフーチングなどの建物構造物の耐力を大きめに見積もって設計する必要がある。例えば、杭の本数を多くしたり杭径の大きい杭を用いることによって建物に耐震性能を持たせる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による建物の基礎構造体は、複数のフーチングと改良地盤とで形成され、改良地盤が、フーチングの下面から所定距離だけ下方の位置までの厚さを有した厚さの均等な下層部と、下層部の上面より複数のフーチングの間の部分に突出する突出部とを備えたことを特徴とする。
フーチングで囲まれた内側を塞ぐようにフーチングの上部に連結された床スラブを備えたことも特徴とする。
互いに隣り合うフーチングの側面とフーチングの側面とを繋ぐ基礎梁を備え、改良地盤の突出部がフーチングと基礎梁とで囲まれた内側の部分に設けられてフーチングと基礎梁とに係合されたことも特徴とする。
フーチングが杭の杭頭に設けられたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明による建物の基礎構造体によれば、フーチングの下面から所定距離だけ下方の位置までの厚さを有した厚さの均等な下層部と、下層部の上面より複数のフーチングの間の部分に突出する突出部とを有した改良地盤を備えるので、下層部が破壊されにくくなり、地震の際に建物に水平力が加わった場合の負担を改良地盤に分担させることができるので、地震の際に建物に水平力が加わった場合に、フーチングなどの建物構造物の負担を軽減できる。
床スラブを備えたので、床スラブに加わる建物荷重によって、突出部が、床スラブを押圧するとともに、突出部が、床スラブから反力を受けることによって拘束されるので、突出部の耐力が増し、地震の際に水平力が加わった場合の突出部の耐せん断力が高まる。
互いに隣り合うフーチングの側面とフーチングの側面とを繋ぐ基礎梁を備え、改良地盤の突出部がフーチングと基礎梁とで囲まれた内側の部分に設けられてフーチングと基礎梁とに係合された構造としたことで、基礎梁により改良地盤の突出部と基礎梁及びフーチングとの一体性を向上できる。また、改良地盤の突出部が基礎梁及びフーチングから反力を受けて拘束されることによって突出部が耐力を増し、地震の際に水平力が加わった場合の突出部の耐せん断力が高まる。
杭を備えたことで、杭により軟弱地盤での建物支持力を担うことができ、また、地震の際に建物に加わる水平力を改良地盤に分担させることができるので、改良地盤を備えない場合に比べて杭の本数を少なくしたり杭径の小さい杭を用いて建物に耐震性能を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図3は最良の形態を示す。図1は図2のA−A断面に相当する基礎構造体の断面を示し、図2は基礎構造体を示し、図3は基礎構造体の改良地盤の一部分を示す。
【0007】
図1を参照し、建物の基礎構造体を説明する。
基礎構造体1は、改良地盤2、杭3、フーチング4、基礎梁5、床スラブ6を備える。
改良地盤2は、建物敷地の地面から杭頭11の位置より所定距離Hだけ下方の位置までの地盤が改良されて形成される。即ち、当該地盤の土砂にセメントを混入し、これらを攪拌することによって、地中の地下水と土砂とセメントとが混合された改良地盤2が形成される。
杭3は、建物敷地の上方から見た場合に、例えば、碁盤目の位置に並ぶように複数設けられる。
フーチング4は、各々の杭3の杭頭11にそれぞれ個別に形成される。
基礎梁5は、碁盤目の縦横に隣り合う各々のフーチング4の側面同士を互いに繋ぐように形成される(図2参照)。
床スラブ6は、各々の基礎梁5の上面を被って基礎梁5同士を互いに繋ぐとともに上面8がフーチング4の上面と同一平面となるように形成されたり、あるいは、すべての基礎梁5の上面及びフーチング4の上面を覆うように形成される(図2参照)。即ち、基礎梁5及びフーチング4で囲まれた内側を塞ぐように基礎梁5及びフーチング4に連結された床スラブ6を備える。尚、7は柱である。
【0008】
改良地盤2は、フーチング4と基礎梁5とによって矩形環状に囲まれた内側の部分12(図2参照)の地盤及びフーチング4の下面13(杭頭11と同レベル位置)や基礎梁5の下面14よりも下方部分の地盤が改良されて形成される。
言い換えれば、改良地盤2は、建物敷地の上方から見た場合の縦横の大きさが建物の縦横の大きさに対応した大きさに形成されて杭頭11から所定距離Hだけ下方の位置までの厚さを有した下層部16と、下層部16の上面18(図1において二点鎖線で示す)よりフーチング4と基礎梁5とによって矩形環状に囲まれた内側の部分12に突出するよう設けられてフーチング4と基礎梁5とに係合された複数の突出部17とを備えた形状である。
【0009】
改良地盤2の下層部16は、厚さ(=所定距離H)が均等である。
改良地盤2の断面形状は、下層部16の上に凸状の複数の突出部17が連続して設けられた形状である。
尚、改良地盤2の1つの突出部17とこの突出部17の下に設けられた下層部16の一部とを図示すると、おおよそ、図3に示すような形状となる。
【0010】
最良の形態によれば、改良地盤2の下層部16の厚さ(=H)が均等なので、下層部16はどの部分でも強度が同じである。即ち、最良の形態による改良地盤2の下層部16は、従来技術の改良地盤のように地震の際に建物に加わる水平力に対して強度の高い部分と強度の低い部分とが混在した構成ではなく、応力集中しやすくて破壊(圧壊)しやすい部位を排除した構成としたので、改良地盤2の下層部16が破壊されにくい。
このため、地震の際に建物に水平力が加わった場合の負担を改良地盤2に分担させることができ、地震の際に建物に水平力が加わった場合の、杭3、フーチング4、基礎梁5、床スラブ6の負担、即ち、建物構造物の負担を軽減できる。よって、杭3、フーチング4、基礎梁5、床スラブ6として同じものを用いた場合において、改良地盤2を備える場合と改良地盤2を備えない場合と比較すると、耐震力の大きい基礎構造体1を得ることができる。つまり、地震の際に建物に水平力が加わった場合に、改良地盤2が、改良地盤2自体の耐水平力、及び、改良地盤2の下層部16の下面19と下層地盤20の上面21との摩擦力によって水平力に対抗できる。よって、水平力に対する負担を、杭3、フーチング4、基礎梁5、床スラブ6である建物構造物と改良地盤2とで分担できるので、杭3、フーチング4、基礎梁5、床スラブ6の負担が軽減する。
【0011】
尚、改良地盤2はバックホーのような建設機械で地盤を攪拌しながら形成するので、実際には、下層部16の下面19は多少の凹凸が生じるが、この凹凸差を小さくして厚さの均等な下層部16を形成する。
【0012】
最良の形態によれば、改良地盤2が、フーチング4と基礎梁5とによって囲まれてフーチング4と基礎梁5とに係合する複数の突出部17を備えるとともに、床スラブ6が、基礎梁5及びフーチング4で囲まれた内側を塞ぐように基礎梁5及びフーチング4の上部に連結されたので、改良地盤2の突出部17の耐せん断力を高めることができる。
即ち、床スラブ6に加わる建物荷重によって突出部17が、床スラブ6、基礎梁5及びフーチング4を押圧し、突出部17が、床スラブ6、基礎梁5及びフーチング4から反力を受けることによって拘束されるので、突出部17の耐力が増し、地震の際に水平力が加わった場合の突出部17の耐せん断力が高まる。
【0013】
最良の形態によれば、基礎梁5を備え、基礎梁5により改良地盤2の突出部17と基礎梁5及びフーチング4との一体性を向上できる。よって、突出部17が、基礎梁5及びフーチング4から反力を受けて拘束されることで、突出部17の耐力が増し、地震の際に水平力が加わった場合の突出部17の耐せん断力が高まる。
【0014】
最良の形態によれば、杭3を備えるので、杭3により軟弱地盤での建物支持力を担うことができる。また、杭3を備えた構成において、地震の際に建物に加わる水平力を改良地盤2に分担させることができるので、改良地盤2を備えない場合に比べて杭3の本数を少なくしたり杭径の小さい杭3を用いて建物に耐震性能を持たせることができる。
【0015】
また、改良地盤2の下層部16の厚さ(=所定距離H)を大きくした場合、杭3の曲がり防止効果が向上し、これによって、地震の際に建物に加わる水平力に対する耐せん断力も大きくなり、耐震性能に優れた基礎構造体1を提供できる。
つまり、改良地盤2を地中の深い位置まで形成すればするほど耐震性能を良くできる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
複数のフーチング4と改良地盤2とで形成された基礎構造体1としてもよい。つまり、フーチング4の下面13から所定距離Hだけ下方の位置までの厚さを有した厚さ(=H)の均等な下層部16と、下層部16の上面18より複数のフーチング4の間の部分に突出する突出部17とを備えた形状の改良地盤2を備えた基礎構造体1としてもよい。
この基礎構造体1でも、厚さ(=H)が均等な下層部16を備えるので、地震の際に建物に水平力が加わった場合でも下層部16が破壊されにくく、水平力が加わった場合の負担を改良地盤2に分担させることができ、地震の際に建物に水平力が加わった場合の複数のフーチング4の負担を軽減できる。
【0017】
3つ以上のフーチング4と改良地盤2とで形成された基礎構造体1としてもよい。この場合でも、水平力に対する負担を、改良地盤2とフーチング4とで分担できるので、フーチング4の負担を軽減できる。例えば、3つのフーチング4のそれぞれを、上から見て三角形の頂点に位置させるようにすればよい。
【0018】
本発明の改良地盤2の下層部16は、多少、蛇行していたり、湾曲している板状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】建物の基礎構造体を示す断面図(最良の形態)。
【図2】建物の基礎構造体を示す斜視図(最良の形態)。
【図3】改良地盤の一部分を示す斜視図(最良の形態)。
【符号の説明】
【0020】
1 基礎構造体、2 改良地盤、3 杭、4 フーチング、5 基礎梁、
6 床スラブ、11 杭頭、16 下層部、17 突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフーチングと改良地盤とで形成され、改良地盤が、フーチングの下面から所定距離だけ下方の位置までの厚さを有した厚さの均等な下層部と、下層部の上面より複数のフーチングの間の部分に突出する突出部とを備えたことを特徴とする建物の基礎構造体。
【請求項2】
フーチングで囲まれた内側を塞ぐようにフーチングの上部に連結された床スラブを備えたことを特徴とする請求項1に記載の建物の基礎構造体。
【請求項3】
互いに隣り合うフーチングの側面とフーチングの側面とを繋ぐ基礎梁を備え、改良地盤の突出部がフーチングと基礎梁とで囲まれた内側の部分に設けられてフーチングと基礎梁とに係合されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の基礎構造体。
【請求項4】
フーチングが杭の杭頭に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建物の基礎構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−50813(P2008−50813A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227006(P2006−227006)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】