説明

建物の床構造

【課題】逆梁工法に工夫を施して床(屋根を含む)の骨組構造自体を根本的に改変することにより、床(屋根を含む)の施工と同時に、屋根の雨水や生活排水を横引き可能な排水溝を設けることができる、建物の床(屋根を含む)構造を提供する。
【解決手段】柱1に大梁2を架設してなる建物の床(屋根を含む)構造であり、柱は、その柱接合部近傍の側面に梁受用片持ちブラケット3が設けられている。大梁は、その両端部2a、2aの上辺に切欠状の段差や勾配が設けられて該両端部の梁成が中間部2bの梁成より小さい変断面の逆梁とされ、柱の梁受用片持ちブラケットの上面に架設されている。梁受用片持ちブラケットと大梁の両端部とはピン接合されている。大梁の両端部の上面を覆うレベルに床(屋根を含む)10が設けられ、大梁の少なくとも一方の端部における床(屋根を含む)10の上面には、大梁の軸線方向と直交する方向に排水溝4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柱に大梁を架設してなる建物の床構造(屋根構造を含む。以下同じ。)の技術分野に属し、更に云えば、床(屋根を含む)を逆梁工法で実施するに際し、簡易に排水溝を設けることが可能な建物の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根構造について言及すると、大スパン構造等を採用することにより、建物屋根部の梁成が大きくなる場合には、階高が高くなるという問題がある。
階高を低く抑えるには、建物の屋根構造を逆梁とし、梁を屋根スラブ上に突出させることで対処できる。
しかし、梁が屋根スラブ上に突出すると、梁スパン毎に雨水が溜り、プール状態になる新たな問題が生じる。
この問題を解決する案として、例えば特許文献1には、逆梁工法を用いて構築したコンクリート建屋の屋上部に雨水排水装置を設ける技術が開示されている。
【0003】
この特許文献1に係る雨水排水装置は、同文献1の図1等に示したように、コンクリート建屋の屋上部1に逆梁工法による梁3が突出し、その梁3の一方側から他方側への雨水の流通を可能にする雨水排水装置が開示されている。
具体的には、前記梁3の下部にその梁を貫通するように設けられる排水パイプ5と、この排水パイプ5の両端部に設けられるルーフドレイン6とを備え、前記各ルーフドレイン6は、前記屋上部1の床面2に沿って配置されるベース部10と、前記梁3の起立側面に沿って配置される直立部11とを有する断面ほぼL形状の受皿体9を備え、前記直立部11に前記排水パイプ5の端部が結合されて排水パイプ5が受皿体9の内側に通じ、前記屋上部1の床面2及び前記梁3の起立側面にそれぞれ防水層23、24が貼り付けられ、これら防水層23、24の縁が前記ベース部10の所定の領域の防水層受け部17及び直立部11の所定の領域の防水層受け部20にそれぞれ重ね合わされ、この状態で前記受皿体9の上に防水層押え26が締結固定され、その締結力で前記各防水層23、24が防水層押え26を介して前記各防水層受け部17、20に圧着されることを特徴とする雨水排水装置が開示されている(請求項1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−169671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に係る技術は、建物の屋根構造を、既往の逆梁工法で実施した後に対処する言わば事後的解決案として、一応の技術的価値は認められる。
しかし、梁スパン毎に雨水の処理、即ちドレインや縦樋を設けるとともに、水抜き孔を貫通させる作業を行う必要があり、屋上での水仕舞作業が煩雑かつ面倒で、施工性が悪いという問題があった。にも拘わらず、防水性の確保という精緻な作業が要求されるため、品質確保が難しいという問題もあった。
【0006】
ところで、逆梁工法に排水溝を導入する技術は、建物の屋根構造に限らず、近年、厨房、病院、クリーンルーム、フリーアクセスフロア等、生活排水を排水する建物の中間階の床に実施される場合もある。
【0007】
本発明の目的は、逆梁工法に工夫を施して床(屋根を含む)の骨組構造自体を根本的に改変することにより、床(屋根を含む)の施工と同時に、屋根の雨水や生活排水を横引き可能な排水溝を設けることができる、施工性、経済性に優れた建物の床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る建物の床構造は、柱に大梁を架設してなる建物の床(屋根を含む)構造において、
前記柱は、その柱接合近傍の側面に梁受用片持ちブラケットが設けられていること、
前記大梁は、その両端部の上辺に切欠状の段差や勾配が設けられて該両端部の梁成が中間部の梁成より小さい変断面の逆梁とされ、前記柱の梁受用片持ちブラケットの上面に架設されていること、
前記柱の梁受用片持ちブラケットと前記大梁の両端部とはピン接合されていること、
前記大梁の切欠かれた両端部の上面を覆うレベルに床(屋根を含む)が設けられ、当該大梁の少なくとも一方の端部における床(屋根を含む)の上面には、当該大梁の軸線方向と直交する方向に排水溝が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した建物の床構造において、
前記床(屋根を含む)は、前記大梁の中央部から両端部に向かって下方に所定の勾配で傾斜して形成され、当該大梁の両端部における床(屋根を含む)の上面には、当該大梁の軸線方向と直交する方向に排水溝が設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した建物の床構造において、
前記大梁は、床(屋根を含む)の上面から突出した部分にコンクリートが巻かれ、該コンクリートの上面が前記床(屋根を含む)の水勾配に従うことなく、地平に水平な立ち上がり上面を形成して、機械基礎を兼用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建物の床構造によれば、以下の効果を奏する。
逆梁工法に工夫を施して床(屋根を含む)の骨組構造自体を根本的に改変(改善)することにより、順梁工法で実施する場合と同様に、床(屋根を含む)の施工と同時に、当該床(屋根を含む)の端部に屋根の雨水や生活排水を横引き可能な排水溝を設けることができる。
よって、本発明を建物の屋根構造に適用する場合は、上記特許文献1と比して、梁スパン毎にドレインや縦樋を設けるとともに、水抜き孔を貫通させる作業が無用となり、屋上での水仕舞作業の大半を省略でき、もって、施工性、経済性に優れた至極合理的な建物の屋根構造を容易に実現することができる。
また、請求項3に係る発明によれば、床(屋根を含む)の上面から突出する逆梁(大梁の中間部)を、床(屋根を含む)に設置する機械の基礎の一部として利用すると、機械基礎の固定荷重を抑制できるとともに、施工軽減および工期短縮に寄与することができる。これは、通常、逆梁のデメリットとして、床位置が低くなるため、梁上部の圧縮応力によって発生する横座屈力に抵抗する構造が必要になる場合があるが、このように逆梁を機械基礎の一部に利用することにより、梁上部を拘束する架構によって逆梁の横座屈に対する補強を兼用できるので、至極合理的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る建物の床構造(図示例では屋根構造)を概略的に示した立面図である。
【図2】図1の枢要部を拡大して示した立面図である。
【図3】Aは、図2の左側端部を拡大して示した立面図であり、Bは、AのB−B線矢視断面図である。
【図4】大梁の左側端部の構成を示した斜視図である。
【図5】図2のX−X線矢視断面図である。
【図6】Aは、図2のY−Y線矢視断面図であり、Bは、Aの平面図である。
【図7】A、Bはそれぞれ、床(図示例では屋根)を構築する手法の一例を示した説明図である。
【図8】請求項3に係る建物の床構造を概略的に示した立面図である。
【図9】本発明に係る建物の床構造(図示例では屋根構造)のバリエーションを概略的に示した立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る建物の床構造の実施例を図面に基づいて説明する。なお、本実施例では、建物の屋根構造に本発明を適用した場合を中心に説明する。
この建物の屋根構造は、図1と図2に示したように、柱1に大梁2を架設してなり、前記柱1は、その柱接合部(図示例では柱頭部)近傍の一側面に梁受用片持ちブラケット3が設けられている。
前記大梁2は、その両端部2a、2aの上辺に切欠状の段差又は勾配(勾配については図9参照)が設けられて該両端部2a、2aの梁成が中間部2bの梁成より小さい変断面の逆梁とされ、前記柱1の梁受用片持ちブラケット3の上面に架設されている。
前記柱1の梁受用片持ちブラケット3と前記大梁2の両端部2a、2aとはピン接合されている。
前記大梁2の切欠かれた両端部2a、2aの上面を覆うレベルに屋根スラブ10(図2の斜線参照)が設けられ、当該大梁2の少なくとも一方の端部2a(本実施例では図2の左側端部)における屋根スラブ10の上面には、当該大梁2の軸線方向と直交する方向に屋根の雨水を横引きする排水溝4が設けられている。
【0013】
なお、前記大梁2は、建物の桁行方向に所要の間隔をあけて複数本、図1に示す同様の構成で架設されている。また、本実施例に係る大梁2は鉄骨造で実施しているがこれに限定されず、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造でも実施できる。さらには、プレキャストコンクリートやハーフプレキャストコンクリートでも実施できる。
また、本実施例に係る大梁2は、梁受用片持ちブラケット3、3に水平に架設して実施しているが、これに限定されず、梁受用片持ちブラケット3、3の設置高さを変える等して、例えば、右側端部から左側端部に向かって下方に所定の勾配(2%程度)で傾斜させて架設することもできる。
【0014】
要するに、本発明は、屋根の骨組構造を前記変断面の大梁2を用いて構築し、当該大梁2の梁成の範囲内(本実施例では中間部2bの梁成の中央付近のレベル)に屋根スラブ10を設けることにより、前記大梁2の変断面部(即ち、両端部2a、2a)に、既往の逆梁工法では存することのない段差(又は勾配)を形成できることを主たる特徴としている。この段差(又は勾配)を利用して、当該大梁2と直交する方向に屋根の雨水を横引き可能な排水溝4を設けることを実現可能としているのである。
以下、本発明に係る建物の屋根構造の構成要素を具体的に説明する。
【0015】
図1に係る大梁2は、上述したように、その両端部2a、2aの上辺に切欠状の段差が設けられて該両端部2a、2aの梁成が中間部2bの梁成より小さい変断面の逆梁で実施されている。
具体的には、均等断面のH形鋼を、必要に応じてスプライスプレート11等で継ぎ足して所要の長さに製造し、これを中間部の梁2bとする。両端部の梁2aには、前記中間部の梁2bより梁成が小さいH形鋼を用い、前記中間部の梁2bの両端部に、下フランジを揃えて溶接接合し、もって両端部2a、2aの梁成を小さくした変断面の大梁2を製造する(図3、図4も参照)。
【0016】
ちなみに本実施例では、中間部2bに用いる梁を、1,200×400×12×25(mm)の寸法のH形鋼(ビルドH形鋼)で実施し、両端部2a、2aに用いる梁を、それぞれ400×400×19×25(mm)の寸法のH形鋼で実施している。すなわち両端部2a、2aに用いる梁は、中間部2bの梁と比し、梁成が1/3程度小さく、ウエブ厚は7mm程厚く、幅およびフランジ厚は同一の寸法で実施している。
また、前記中間部2bの梁の軸線方向の長さは、1520cm程度、前記両端部2a、2aの梁の軸線方向の長さはそれぞれ、55cm程度で実施している。
なお、上述した寸法はもちろん一例に過ぎず、建物の構造設計に応じて適宜設計変更可能である。スチフナー12の個数、設置部位も建物の構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
【0017】
次に、本実施例に係る梁受用片持ちブラケット3は、図1と図2に示したように、左右に隣接する柱1、1の頂部近傍位置の一側面、即ち当該頂部から大梁2の両端部2a、2aとピン接合するのに適正な高さを確保した分だけ低い部位の相対向する一側面に一体的に突設されている。
ちなみに本実施例に係る梁受用片持ちブラケット3は、柱1とほぼ同等の幅寸及び高さ(本実施例ではともに700mm程度)で、且つ柱1の幅寸の約1/2程度の長さ(本実施例では350〜400mm程度)突き出た直方体形状に形成して実施している。
なお、前記梁受用片持ちブラケット3の形態はこれに限定されず、当該ブラケット3とピン接合する変断面の大梁2の形態、ひいては建物の構造設計に応じて適宜設計変更可能である。
また、本発明に係る柱1および梁受用片持ちブラケット3は、鉄筋コンクリート造で実施しているが構造形式はこれに限定されず、鉄骨鉄筋コンクリート造でももちろん実施できる。
【0018】
かくして、前記柱1、1に一体的に設けた相対向する前記梁受用片持ちブラケット3、3の上面に、前記大梁2の両端部2a、2aをほぼ水平に架設し、両者の当接部をピン接合することにより、屋根の主たる骨組構造を構築するのである。
具体的に、前記大梁2の両端部2a、2aは、図3に示したように、前記梁受用片持ちブラケット3、3の上面に直に設けた無収縮モルタル5上に水平レベルを調節して位置決めしたベースプレート6の上面に載置され、当該ブラケット3の内部から立ち上げた2本のアンカーボルト7によりピン接合されている。
【0019】
前記ベースプレート6および前記大梁2の両端部2a、2aの梁の下フランジには予め、所定の2箇所に、前記アンカーボルト7を通す孔が穿設されている(図示省略)。ちなみに、図中の符号8は、アンカーボルト7の下端部を前記ブラケット3に固定するための定着板を示し、符号9は、アンカーボルト7の頭部に締結してピン接合するためのナットを示し、符号13はパラペットを示し、符号14は外周梁を示している。
なお、前記梁受用片持ちブラケット3と前記大梁2の端部2aをピン接合する実施形態はこれに限定されず、構造設計に応じて既往のピン接合に係る技術を適宜採用できる。
【0020】
このように、本発明では、大梁2を変断面構造として当該大梁2の両端部2a、2aを単純梁の小梁(扱い)とすることで、地震時等の応力に対して構造設計条件が厳しくなる大梁と比し、両端部2a、2aの曲げ応力負担が減り、せん断力のみを伝達できればよいなど、構造設計条件を緩和できるので、当該当接部位をピン構造で実施することができるのである。また、当該小梁扱いのピン構造で実施できることに伴い、その上部に形成した段差部を利用して屋根の雨水を横引き可能な排水溝4を設けることができるのである。
なお、前記無収縮モルタル5は、大梁2にたわみが生じても欠けることのないように、正面視ほぼ台形状に補強する等の工夫は適宜行われる。
【0021】
次に、本実施例に係る屋根スラブ10は、その全体の構成を図2の斜線で示したように、大梁2の中間部2bの梁成の中央付近のレベルに、右側端部から左側端部に向かって下方に所定の勾配(本実施例では2%程度)で傾斜した構成で実施されている。
前記屋根スラブ10を、前記大梁2の中間部2bの梁成の範囲内(階高を抑えることを考慮すると、図示例のように、前記大梁2の両端部2a、2aを覆う程度のレベルが好適)に設ける手法は種々あるが、本実施例では、一例として、前記大梁の中間部2bを形成する梁のウエブ部の左右側面に沿って、前記勾配に倣い断続的に設けたアングル材15(フラットバーでも可)と、当該大梁2と直角方向に設けた小梁16とを支持材に利用して波型形状のデッキプレート17(又はフラット状のデッキプレート17’)を張設し、必要に応じて配筋した上でコンクリート22を打設して合成スラブを構築している(図2、図4〜図7を参照)。
【0022】
ちなみに図5は、図2のX−X線矢視断面図であり、図6は、図2のY−Y線矢視断面図である。図中の符号18は、合成スラブの最大耐力を向上させるために小梁16の上フランジに設けた頭付きスタッドを示し、符号19は、ガゼットプレートを示し、符号20は高力ボルトを示し、符号21は、リブプレートを示している。
なお、前記屋根スラブ10の実施形態は、デッキプレートの波型形状等も含め、もちろん図示例に限定されず、前記アングル材15と小梁16を支持材に利用することを条件に種々のバリエーションで実施可能である。
また、前記屋根スラブ10の端部に設ける排水溝4の大きさ、形状、設置部位等はもちろん図示例に限定されず、適宜設計変更可能である。
さらに、屋根スラブ10の勾配も図示例に限定されず、前記大梁2の中央部から両端部に向かってそれぞれ下方に所定の勾配で傾斜して形成することもできる。この場合には、当該大梁2の両端部における屋根スラブ10の上面に、当該大梁2の軸線方向と直交する方向に排水溝4、4を設けて実施する。
【0023】
したがって、本発明に係る建物の屋根構造によれば、逆梁工法に工夫を施して屋根の骨組構造自体を根本的に改変(改善)することができるので、順梁工法で実施する場合と同様に、屋根スラブ10の施工と同時に、当該屋根スラブ10の端部に屋根の雨水を横引き可能な排水溝4を設けることができる。
よって、上記特許文献1と比して、梁スパン毎にドレインや縦樋を設けるとともに、水抜き孔を貫通させる作業が無用となり、屋上での水仕舞作業の大半を省略でき、もって、施工性、経済性に優れた至極合理的な建物の屋根構造を容易に実現することができる。
【0024】
加えて、屋根スラブ10の上面から突出する大梁2(2b)は、図8に示したように、当該突出した部分にコンクリート23が巻かれ、該コンクリート23の上面が、屋根スラブ10の勾配に従うことなく、地平に水平な立ち上がり上面を形成することにより、その上に設備架台(図示例ではH形鋼)24を設置できる等、当該大梁2を機械基礎に兼用させて実施することもできる。なお、前記大梁2を、所定の勾配(例えば2%程度)で傾斜させて架設している場合は、レベルモルタル(いわゆる饅頭)を用いる等して該コンクリート23の上面の水平レベルを保つ工夫は適宜行われる。
要するに、屋上の屋根スラブ10上から突出する逆梁を、屋上に設置する機械の基礎の一部として利用するのである。そうすると、機械基礎の固定荷重を抑制できるとともに、施工軽減および工期短縮に寄与することができる。
これは、通常、逆梁のデメリットとして、床位置が低くなるため、梁上部の圧縮応力によって発生する横座屈力に抵抗する構造が必要になる場合があるが、このように逆梁を機械基礎の一部に利用することにより、梁(2b)上部を拘束する架構(24)によって逆梁の横座屈に対する補強を兼用できるので、至極合理的である。
【0025】
以上に実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、図面では、本発明を適用して、建物の屋根構造に簡易に排水溝を設ける実施例を説明したが、これに限らず、本発明によれば、厨房、病院、クリーンルーム、フリーアクセスフロア等、生活排水を排水する建物の床構造に簡易に排水溝を設けることもできる。この場合、前記柱1の中間階の柱接合部の近傍の一側面に梁受用片持ちブラケット3を設け、前記変断面の大梁2を、前記柱1の梁受用片持ちブラケット3の上面に架設し、該大梁2の切欠かれた両端部2a、2aの上面を覆うレベルに床スラブを設け、当該大梁2の軸線方向と直交する方向に生活排水を横引きする排水溝4を設けて実施する(図1〜図9を援用して参照)。
したがって、本発明を建物の床構造に適用した場合も、上述した建物の屋根構造に適用した場合と同様の作用効果を奏する(上記段落番号[0023]、[0024]参照)。
【符号の説明】
【0026】
1 柱
2 大梁
2a 大梁の端部
2b 大梁の中間部
3 梁受用片持ちブラケット
4 排水溝
5 無収縮モルタル
6 ベースプレート
7 アンカーボルト
8 定着板
9 ナット
10 屋根スラブ
11 スプライスプレート
12 スチフナー
13 パラペット
14 外周梁
15 アングル材
16 小梁
17 デッキプレート
17’ デッキプレート
18 頭付きスタッド
19 ガゼットプレート
20 高力ボルト
21 リブプレート
22 コンクリート
23 コンクリート
24 設備架台(H形鋼)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱に大梁を架設してなる建物の床(屋根を含む)構造において、
前記柱は、その柱接合近傍の側面に梁受用片持ちブラケットが設けられていること、
前記大梁は、その両端部の上辺に切欠状の段差や勾配が設けられて該両端部の梁成が中間部の梁成より小さい変断面の逆梁とされ、前記柱の梁受用片持ちブラケットの上面に架設されていること、
前記柱の梁受用片持ちブラケットと前記大梁の両端部とはピン接合されていること、
前記大梁の切欠かれた両端部の上面を覆うレベルに床(屋根を含む)が設けられ、当該大梁の少なくとも一方の端部における床(屋根を含む)の上面には、当該大梁の軸線方向と直交する方向に排水溝が設けられていることを特徴とする、建物の床構造。
【請求項2】
前記床(屋根を含む)は、前記大梁の中央部から両端部に向かって下方に所定の勾配で傾斜して形成され、当該大梁の両端部における床(屋根を含む)の上面には、当該大梁の軸線方向と直交する方向に排水溝が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した建物の床構造。
【請求項3】
前記大梁は、床(屋根を含む)の上面から突出した部分にコンクリートが巻かれ、該コンクリートの上面が前記床(屋根を含む)の水勾配に従うことなく、地平に水平な立ち上がり上面を形成して、機械基礎を兼用することを特徴とする、請求項1又は2に記載した建物の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72226(P2013−72226A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212546(P2011−212546)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)