説明

建物の水切構造

【課題】バルコニーの手摺のバルコニー内壁パネルと建物外壁パネルとで形成される入隅部の水切処理を、バルコニーの有効床面積を狭めることなく安価に達成すること。
【解決手段】外壁防水シート30が、建物外壁パネル11の下端部に沿って設けられ、内壁防水シート40が、バルコニー内壁パネルの下端部に沿って設けられ、端部バルコニー柱22Aと開口11aとの間の下部は作業用空間SPとしてバルコニー内側に開放され、作業用空間SPを塞いで、板状の水切受パネル60が設けられ、建物外壁パネル11の開口11aから引き出された引出防水シート30aと内壁防水シート40とが、相互に重なって密着されているとともに、水切受パネル60とバルコニー内壁パネルとに挟まれて両者に密着され、水切受パネル60は、着脱手段により端部バルコニー柱22Aに着脱可能に取り付けられている建物の水切構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建物外壁パネルとバルコニーユニットの手摺のバルコニー内壁パネルとで形成される入隅部の水切構造に関し、特に、ユニット建物に適用するのに好適な建物の水切構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユニット建物において、ユニット建物の居室を形成する建物ユニットの外側にバルコニーユニットを結合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなユニット建物では、外壁パネルの下端部から垂下させた防水シートを、バルコニーユニットの梁材に接着して居室側への水切(雨仕舞い)処理がなされている。
【0003】
また、このようなユニット建物において、バルコニーに面して水平方向に隣り合う建物ユニットの外壁パネルどうしの間で水切処理を行なう場合に、隣り合う建物ユニットを連結するのに用いる連結具を覆う防水カバーと、隣り合う外壁パネルの防水シートに跨って両防水シートに密着されるとともに、防水カバーに密着される接続用水切材を設け、防水を図ったものも知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、この従来技術では、接続用水切材を、外壁パネルにより形成される入隅部分に設けたものも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−319704号公報
【特許文献2】特許第2705887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなバルコニーユニットが設置された建物において、バルコニーユニットの外周縁に設けられた手摺のバルコニー内壁パネルと、建物外壁パネルとで入隅部が形成される場合がある。
このような入隅部において、上述の水切(雨仕舞い)を行なう場合、前述の従来技術では、箱状の防水カバーを設けるとともに、接続用水切材を、建物外壁パネルから垂下された防水シートと、手摺の内壁パネルから垂下された防水シートに跨って設置することになる。
【0006】
しかしながら、このような構造では、箱状の防水カバーおよび接続用水切材が必要であり、部品点数が多いとともにその形状が箱状であるため、コストアップを招き、かつ、入隅の下部に防水カバーおよび接続用水切材が箱状に突出しているため、バルコニーの有効な床面積を狭めるという問題を有していた。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決することを目的とするものであり、バルコニーの手摺のバルコニー内壁パネルと建物外壁パネルとで形成される入隅部の水切処理を、バルコニーの有効床面積を狭めることなく安価に達成可能な建物の水切構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、建物外壁パネルと、バルコニーユニットの床部から立ち上げられた手摺の壁部に設けられたバルコニー内壁パネルとで形成される入隅部における建物の水切構造であって、前記壁部は、前記バルコニー内壁を支持する骨格部材として複数のバルコニー柱を備え、前記バルコニー内壁パネルと前記床部との間に、内壁下部材が設けられ、前記建物外壁パネルの下端部と前記床部との間に外壁下部材が設けられ、前記建物外壁パネルの下部と前記外壁下部材とに密着された防水シートが、前記建物外壁パネルの下端部に沿って設けられ、前記バルコニー内壁パネルの下部と前記内壁下部材とに密着された内壁防水シートが、前記バルコニー内壁パネルの下端部に沿って設けられ、前記建物外壁パネルは、前記壁部の端部に対面する位置に開口が設けられ、前記外壁防水シートには、前記開口から前記壁部に沿って引き出すことが可能な長さの引出防水シートが連続して設けられ、前記複数のバルコニー柱のうちで最も前記ユニット建物に近い位置に配置された端部バルコニー柱と前記開口との間の下部は、前記引出防水シートを引き出すための作業用空間としてバルコニー内側に開放され、前記作業用空間を塞いで、板状の水切受パネルが設けられ、前記開口から引き出された前記引出防水シートと前記内壁防水シートとが、相互に重なって密着されているとともに、前記水切受パネルと前記バルコニー内壁パネルとに挟まれて両者に密着され、前記水切受パネルは、着脱手段により前記端部バルコニー柱に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物の水切構造において、前記着脱手段は、前記水切受パネルを前記端部バルコニー柱に接着する接着テープであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の建物の水切構造において、前記着脱手段は、前記端部バルコニー柱を挟持可能に前記水切受パネルに設けられた挟持部であり、この挟持部は、前記端部バルコニー柱を挟持したときに前記水切受パネルが前記作業用空間を塞ぐように配置されていることを特徴とする。
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の建物の水切構造において、前記水切受パネルは、前記作業用空間を塞ぐ縦面部と、この縦面部の上端から水平方向に折り曲げられた一対の水平部とにより逆L字状の縦断面形状に形成された部分を備えるとともに、両水平部により前記端部バルコニー柱を挟持可能に、両水平部の間に前記端部バルコニーを挿入する挿入部を備え、前記縦面部には、前記挿入部の幅が広がる方向に折曲するのを導く折り目が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の建物の水切構造において、前記骨格部材には、水平方向で、前記端部バルコニー柱とこれに隣り合う前記バルコニー柱との間に配置され、かつ、上下方向で、両バルコニー柱の上下を連結する胴縁上部材と胴縁下部材とに架設されて上下方向に延在されたバルコニー内壁受部材が設けられ、前記バルコニー内壁パネルは、前記作業用空間を含み前記バルコニー内壁受部材と前記建物との間を覆う部分に、他の部分と分割された内壁上パネルを備えていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の建物の水切構造の施工方法であって、工場において、建物ユニットに設けられた前記建物外壁パネルに開口が形成され、前記引出防水シートが前記開口内に収容され、かつ、前記バルコニーユニットにおいて、前記壁部の前記バルコニー内壁パネルにおいて少なくとも作業用空間を覆う部分が、前記壁部から取り外された状態とされている一方、前記水切受パネルは、前記バルコニー柱に取り付けられており、建築現場において、前記建物ユニットと前記バルコニーユニットとを結合させた後に、前記水切受パネルを前記バルコニー柱から取り外して、前記作業用空間を開放状態とする工程と、前記引出防水シートを、前記開口から前記作業用空間を介して前記バルコニーユニットの内側へ引き出す工程と、前記水切受パネルを前記バルコニー柱に再び取り付けた状態とし、さらに、前記内壁防水シートと前記引出防水シートとを重ね合わせて相互に密着させ、両シートの裏面を前記水切受パネルおよび前記内壁下パネルに密着させる工程と、前記取外状態のバルコニー内壁パネルを、前記壁部に固定して、前記内壁防水シートおよび前記引出防水シートに密着させる工程と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、入隅部では、建物外壁パネルと外壁下部材とに密着する外壁防水シートに連続する引出防水シートを、建物外壁パネルの開口からバルコニー側に引き出して、バルコニー内壁パネルと内壁下部材とに密着する内壁防水シートに重ね合わせている。したがって、入隅部においても、引出防水シートを介在させることにより、外壁防水シートと内壁防水シートとの連続性を保つことができる。
【0013】
このように入隅部の水切は、外壁防水シート、内壁防水シート、引出防水シートで行なっており、入隅部から外方に突出する部材を有しないため、バルコニーの有効床面積を狭めることなく安価に水切性能を確保できる。
【0014】
加えて、端部バルコニー柱と建物外壁パネルの開口との間の下部に形成した作業用空間は、水切受パネルで覆われており、内壁防水シートと引出防水シートとが重なる部分が、表裏面が水切受パネルとバルコニー内壁パネルとに密着されて、入隅部の水切性能を高く保持することができる。
そして、水切受パネルは、端部バルコニー柱に着脱可能としているため、施工時に、必要に応じて水切受パネルを取り外して、作業用空間を開放することができ、水切受パネルが固定されて作業用空間が塞がれたものと比較して、引出防水シートを建物外壁パネルの開口からバルコニー内側へ引き出す際の作業性に優れる。
しかも、引出防水シートの開口からの引出後は、水切受パネルを再び端部バルコニー柱に取り付けることで、作業用空間にバルコニー内壁パネルを取り付けた際の各防水シートとの密着性を確保して、高い水切性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1の建物の水切構造の施工終了状態の手摺22の下部を示す断面図であって、図4のS1−S1線の位置での断面を示している。
【図2】図2は、実施の形態1の建物の水切構造の施工終了状態の手摺22の上部を示す断面図であって、図4のS2−S2線の位置での断面を示している。
【図3】図3は、実施の形態1の建物の水切構造を適用したユニット建物UHの概略を示す平面図である。
【図4】図4は、実施の形態1の建物の水切構造を適用した入隅部Aの施工途中の状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施の形態1の建物の水切構造の施工途中状態を示す断面図であって、図4のS5−S5線の位置での断面を示している。
【図6】図6は、実施の形態1の建物の水切構造に用いたバルコニーユニットを示す斜視図であって、バルコニー内壁パネル25およびバルコニー外壁パネル26を取り付けていない状態を示している。
【図7】図7は、実施の形態1の建物の水切構造の一部の拡大斜視図である。
【図8】図8は、実施の形態1の建物の水切構造の一部の拡大斜視図である。
【図9】図9は、実施の形態1の建物の水切構造の施工を説明する斜視図である。
【図10】図10は、実施の形態1の建物の水切構造の施工を説明する断面図であって、(a)は引出防水シート20aを開口11aを引き出して建物外壁パネル11側とのシール作業を説明するためのもので、(b)は、内壁上パネル50を取り付けた状態を示している。
【図11】図11は、実施の形態1の建物の水切構造の施工を説明する斜視図である。
【図12】図12は、実施の形態2の建物の水切構造に適用したバルコニーユニットを示す斜視図であって、図6と同様にバルコニー内壁パネル25およびバルコニー外壁パネル26を取り付けていない状態を示している。
【図13】図13は、実施の形態2の建物の水切構造の要部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をユニット建物に適用した実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図3は、実施の形態1の建物の水切構造を適用したユニット建物UHの概略平面図である。
このユニット建物UHは、居室(図示省略)を形成する建物ユニットU1の外側にバルコニーユニットU2を結合して形成されている。
建物ユニットU1は、屋外側が図4に示す建物外壁パネル11で覆われている。また、建物外壁パネル11は、水平方向に複数のパネルをつなぎ合わせて形成されており、これらの建物外壁パネル11どうしの間にはガスケット13が介在されている。
【0018】
なお、建物ユニットU1には、金属フレームで形成された図1,図2に示す柱12および図示を省略した梁が枠状に組まれている。各建物外壁パネル11は、それぞれ裏面が金属フレームを四角枠状に組んだ外壁パネルフレーム12aにより支持されており、この外壁パネルフレーム12aを柱12および梁に結合させることで、建物外壁パネル11が、建物ユニットU1に固定されている。
【0019】
バルコニーユニットU2は、図5に示す床枠21aで形成された構造体の上に床面材21bを設置して形成されて平面視で長方形を成す(図3参照)床部21と、この床部21の外周縁部において平面視で長方形の2短辺および1長辺となる位置に立設された図6に示す手摺22とを備えている。
【0020】
手摺22は、骨格部材として水平方向に所定の間隔で立設された複数のバルコニー柱22a,22Aと、これらのバルコニー柱22a,22Aの下部どうしを連結する胴縁下部材22bと、バルコニー柱22a,22Aの上部どうしを連結する胴縁上部材22cとを備え、これら22a,22A,22b,22cが枠状に結合されている。なお、複数のバルコニー柱22a,22Aのうちで、1本だけ符号が異なるが、その詳細は後述し、バルコニー柱22a,22Aの全体を総称する場合は、符号22Aの付記を省略することにする。
【0021】
そして、手摺22は、バルコニー柱22aに挟まれた空間に格子部23と壁部24とが設けられている。
格子部23は、バルコニー柱22a,22aに挟まれた空間部分に図示を省略した格子部材が複数立設されている。
【0022】
壁部24は、バルコニー柱22aに挟まれた空間を、図2に示すバルコニー内壁パネル25およびバルコニー外壁パネル26で覆って形成されている。
【0023】
本実施の形態1では、手摺22において、平面視で長方形の短辺部分(以下、これを短辺部分と称する)は、図6に示すとおり、壁部24で形成されている。また、手摺22において、平面視で長方形の長辺部分(以下、これを長辺部分と称する)は、長手方向の中央部に格子部23が設けられ、その両端部に壁部24が設けられている。
なお、壁部24は、図2に示すように、内外にバルコニー内壁パネル25とバルコニー外壁パネル26とが、両者の間に手摺空間部24aを形成して設けられている。
【0024】
また、図6に戻り、手摺22において、胴縁下部材22bと床部21との間には、内壁下パネル(内壁下部材)27が設けられている。なお、この内壁下パネル27は、胴縁下部材22bにネジ止めなどの結合手段で固定されており、かつ、壁部24では、その上端部が、バルコニー内壁パネル25の下端部に覆われている。
【0025】
また、図4に示すように、建物外壁パネル11と床部21との間に、外壁下部材17が設けられている。この外壁下部材17は、例えば、建物ユニットU1の骨格を形成する梁などであり、その上端部は、水平方向に建物外壁パネル11で覆われている。
【0026】
建物外壁パネル11と外壁下部材17との間には、外壁防水シート30が設けられている。この外壁防水シート30は、屋外側を向いた面が建物外壁パネル11の内側(例えば、外壁パネルフレーム12aの水平方向に延在される部分)にシール材などを介在させて密着され、一方、屋内側を向いた面が外壁下部材17の外側面にシール材などを介在させて密着されている。
【0027】
手摺22の壁部24においても、バルコニー内壁パネル25と内壁下パネル27との間に内壁防水シート40が設けられている。この内壁防水シート40は、バルコニー内側を向いた面がバルコニー内壁パネル25の内側にシール材などを介在させて密着され、一方、バルコニー外側を向いた面が内壁下パネル27の外側面にシール材などを介在させて密着されている。
【0028】
次に、建物ユニットU1の建物外壁パネル11と手摺22の壁部24とで形成される入隅部Aの水切構造について説明する。
【0029】
この説明にあたり、まず、建物ユニットU1側の構成について説明する。
建物外壁パネル11は、図1に示すように、開口11aが設けられている。
この開口11aは、建物外壁パネル11を正面から見て、水平方向の左右端縁部の下側を、L字状に切欠して形成されており、高さ方向と水平方向とで手摺22の短辺部と重なる範囲に開口されている。
【0030】
また、この開口11aの周縁には、バルコニー手摺見切材14が設けられている。
このバルコニー手摺見切材14は、図7に示すように、縦枠14a,14bと上枠14cとにより正面から見て略逆U字の枠状に形成され、かつ、上方から見下ろしてハット断面形状に形成されている。縦枠14a,14bは、図1に示すように、開口11aの左右両側縁に沿って開口11aに挿入状態で設置され、上枠14cは、開口11aの上縁に沿って開口11aに挿入状態で設置されている。なお、縦枠14bのフランジ部分は、開口11aの下端部では、図1に示すように切除されている。
【0031】
図7に戻り、バルコニー手摺見切材14の上枠14cには、上方から視て略逆U字状のバルコニー手摺受金具15が結合されている。バルコニー手摺見切材14およびバルコニー手摺受金具15は、建築現場において取り付けられ、さらに、これらのバルコニー手摺見切材14およびバルコニー手摺受金具15に固定したバルコニー手摺固定金具16に、手摺22の胴縁上部材22cを結合する。
【0032】
前述した外壁防水シート30は、工場において設置され、その上端部の屋外側面が、図1に示すように、建物外壁パネル11の裏面下部の外壁パネルフレーム12aにシール材を介して密着されている一方、下端部の屋内側面が、外壁下部材17にシール材を介して密着されている。
【0033】
さらに、外壁防水シート30は、建物外壁パネル11の開口11aの位置で、建物外壁パネル11の端縁の位置よりも長い余剰分を備えており、この余剰分が引出防水シート30aである。この引出防水シート30aは、裏面側にあらかじめ図示を省略したシール材が塗布されているとともに、このシール材は、図示を省略した離型紙で覆われている。そして、引出防水シート30aは、工場から出荷される際は、開口11a内に収容されている。
【0034】
次に、入隅部Aの手摺22側の構成について説明する。
本実施の形態1では、手摺22の短辺部には、図6に示すように、複数のバルコニー柱22aが立設されている。これらのバルコニー柱22aのうち、建物ユニットU1に最も近いバルコニー柱22Aを以下、端部バルコニー柱と称する。
【0035】
この端部バルコニー柱22Aは、建物外壁パネル11の表面から、作業用空間SPを介在させた位置に配置されており、この作業用空間SPの室内外方向の寸法Lは、具体的には、40mm程度の寸法となっている。
また、図6に示す入隅部Aを形成する手摺22の端部バルコニー柱22Aと隣り合うバルコニー柱22aとの間には、図4に示すバルコニー内壁受部材28が、胴縁下部材22bと胴縁上部材22cとに跨って立設されている。
【0036】
この手摺22の短辺部は、壁部24で形成されているが、工場出荷時には、バルコニー内壁受部材28よりも建物ユニットU1に近い側は、バルコニー内壁パネル25が設置されず手摺空間部24aが開放されて、開放部OPが形成されている。また、この開放部OPを除いて壁部24には、バルコニー内壁パネル25とバルコニー外壁パネル26とが工場で取り付けられている。なお、この開放部OPには、建築現場において、内壁上パネル50が取り付けられる。
【0037】
次に、入隅部Aにおける水切(雨仕舞い)について説明する。
本実施の形態1では、端部バルコニー柱22Aの下部に、図8に示す水切受パネル60が着脱可能に取り付けられている。すなわち、本実施の形態1では、胴縁下部材22bは、各バルコニー柱22aを連結しているが、端部バルコニー柱22Aよりも建物ユニットU1側の作業用空間SPには設けられていない。そこで、本実施の形態1では、作業用空間SPにおいて、内壁防水シート40、引出防水シート30aおよび内壁上パネル50を面で支持する部材として、胴縁下部材22bに代わって水切受パネル60が設けられている。
【0038】
この水切受パネル60は、金属製の薄板であり、上下方向寸法が、胴縁下部材22bよりも大きく、水平方向の寸法が、図1に示すように、建物外壁パネル11と端部バルコニー柱22Aの建物ユニットU1から遠い側の端部との間隔程度の寸法の長方形形状に形成されている。また、本実施の形態1では、水切受パネル60を端部バルコニー柱22Aに着脱可能とする着脱手段として、図8に示す接着テープ61を用いている。すなわち、水切受パネル60は、接着テープ61により端部バルコニー柱22Aに接着されており、この接着テープ61を端部バルコニー柱22Aから剥がすことで、水切受パネル60端部バルコニー柱22Aから取り外すことが可能であるとともに、この接着テープ61を再度、あるいは新たな粘着テープ61により端部バルコニー柱22Aに接着させて、水切受パネル60を端部バルコニー柱22Aに取り付けることが可能となっている。また、図8では図示を省略した内壁防水シート40は、図1に示すように、水切受パネル60に重なる位置まで延在されて、水切受パネル60にシーリング材を介して密着されている。
【0039】
そして、外壁防水シート30に連続する引出防水シート30aは、開口11aから引き出され、水切受パネル60と水平方向に重なる位置で内壁防水シート40に重なってシーリング材を介して密着されている。
【0040】
また、建築現場にて後付される内壁上パネル50は、図4に示すように、2本のネジ51により胴縁上部材22cに結合されるとともに、2本のネジ51によりバルコニー内壁受部材28に結合され、かつ、水切受パネル60と水平方向に重なる位置で、シーリング材71(図9参照)を介して内壁防水シート40および引出防水シート30aに密着される。なお、このシーリング材71は、上下方向に二重に設けられている。
【0041】
次に、実施の形態1の建物の水切構造の施工手順を説明する。
(工場における施工)
工場において、建物ユニットU1およびバルコニーユニットU2を組み立てる。
この場合の、入隅部Aにおける水切構造に関する構成について、まず、建物ユニットU1について説明する。
建物ユニットU1では、建物外壁パネル11に開口11aを設け、外壁防水シート30に連続する余剰分である引出防水シート30aは、図1において二点鎖線で示すように、開口11aの内部に湾曲させ、あるいは丸めたり折り畳んだりして収容されている。これにより、運搬時に、引出防水シート30aが傷付いたり破損したりするのが防止される。なお、この場合、引出防水シート30aを、接着テープなどの固定手段により建物ユニットU1側に固定しておけば、より好ましい。
【0042】
バルコニーユニットU2は、手摺22の壁部24において、図4に示すように、短辺部の建物ユニットU1に連続する開放部OPを除いてバルコニー内壁パネル25およびバルコニー外壁パネル26を取り付けておく。なお、開放部OPの裏側のバルコニー外壁パネル26は、図1に示すように壁部24に取り付けておく。
【0043】
そして、この開放部OPにおいて端部バルコニー柱22Aには、水切受パネル60を、図8に示すように、その下端面を内壁下パネル27の上端面に当接あるいは近接させた状態で接着テープ61により接着しておく。
【0044】
また、バルコニー内壁パネル25の下端部裏側と内壁下パネル27との間に設けられた内壁防水シート40は、開放部OPでは、図4に示すように、手摺22の先端まで延在させ、水切受パネル60にシーリング材を介して密着させておく。
【0045】
(建築現場の施工)
次に、建築現場の施工について説明する。
建築現場では、建物ユニットU1を設置した後、まず、建物外壁パネル11の開口11aに、バルコニー手摺見切材14およびバルコニー手摺受金具15をネジで固定する。
その後、バルコニーユニットU2を建物ユニットU1に結合させる。このとき、バルコニーユニットU2の手摺22は、その短辺部の先端が、図4に示すように、建物外壁パネル11の開口11aに対向して配置される。
【0046】
そして、バルコニー手摺固定金具16を、図2に示すようにバルコニー手摺受金具15に差し込んでネジにより固定し、さらに、このバルコニー手摺固定金具16を、手摺22の胴縁上部材22cにネジにより固定する。
【0047】
このようにして、バルコニーユニットU2の設置を終えると、入隅部Aの水切構造部分の施工を行う。
【0048】
この施工では、まず、接着テープ61を端部バルコニー柱22Aから剥がして、水切受パネル60を端部バルコニー柱22Aから取り外し、作業用空間SPを、バルコニー内側に対して開放した状態とする。なお、この場合、内壁防水シート40において、水切受パネル60に密着された部分も、この水切受パネル60と共に作業用空間SPから離れて作業用空間SPを開放した状態となる。
【0049】
次に、図1において二点鎖線で示すように建物外壁パネル11の開口11aに収容されている外壁防水シート30の引出防水シート30aを矢印Y1で示すように開口11aから引き出す。この場合、作業用空間SPは、建物外壁パネル11と端部バルコニー柱22Aとの間隔が40mm程度の狭い空間であるが、水切受パネル60を取り外して開放状態となっているため、この引出防水シート30aの引出作業を容易に行うことができる。このとき、引出防水シート30aにおいて、内壁下パネル27と高さ方向に重なる部分は、内壁下パネル27と外壁下部材17との間に形成された微小な隙間を通して配置する。
【0050】
このようにして、引出防水シート30aの引出作業を終了したら、図10(a)に示すように、外壁パネルフレーム12aと引出防水シート30aとの間に、シーリング材72を充填してシールを行う。
【0051】
次に、再び、水切受パネル60を、接着テープ61で端部バルコニー柱22Aの元の位置に固定する。この場合、一端剥がした接着テープ61を用いて接着してもよいし、その接着力が不十分な場合は、新たな接着テープ61を用いて接着してもよい。
そして、引出防水シート30aの裏面に設けられたシーリング材(図示省略)を覆う離型紙(図示省略)を剥がし、引出防水シート30aを、水切受パネル60と重なる位置で内壁防水シート40に密着させる。
【0052】
次に、図9に示すように、各防水シート30,30a,40よりも下方位置で、外壁下部材17と内壁下パネル27で形成されている入隅部Aの微小な隙間部分に、シーリング材73を充填してシールを行う。
【0053】
次に、内壁上パネル50を、壁部24の開放部OPに取り付ける。
この場合、まず、図4に示すように、バルコニー内壁受部材28のバルコニー内側を向いた側面にシーリング材75を塗布するとともに、図10(b)に示す一点鎖線Sで示す範囲において、引出防水シート30aおよび内壁防水シート40にシーリング材を塗布する。この場合、本実施の形態1では、引出防水シート30aおよび内壁防水シート40に塗布するシーリング材71は、図9に示すように、上下に2条塗布する。
そして、内壁上パネル50の上部2カ所を、胴縁上部材22cにネジ51で固定し、さらに、下部の2カ所を、バルコニー内壁受部材28にネジ51で固定する。
【0054】
次に、図11に示すように、内壁上パネル50とバルコニー内壁パネル25との間の目地部分52、内壁上パネル50と建物外壁パネル11との間の目地部分53、手摺22の上部と建物外壁パネル11との目地部分54および図外のバルコニー外壁パネル26と建物外壁パネル11との間の目地部分にシーリング材77を充填してシールを行う。
【0055】
(実施の形態1の作用効果)
以上のようにして形成された実施の形態1の建物の水切構造では、外壁防水シート30と内壁防水シート40とは、それぞれ、上部の外側面は、建物外壁パネル11およびバルコニー内壁パネル25とに密着され、下部の内側面は、外壁下部材17および内壁下パネル27に密着され、水切性能を確保できる。
【0056】
さらに、入隅部Aでは、外壁防水シート30を延長させて連続させた引出防水シート30aを建物外壁パネル11の開口11aからバルコニー内側へ引き出して、内壁防水シート40に重ね合わせることで、外壁防水シート30と内壁防水シート40との連続性を保って水切性能を確保できる。このように、入隅部Aにおける水切性能の確保を、外壁防水シート30と内壁防水シート40との連続性を保つことで行っており、入隅部Aから外方に突出する部材を用いていないため、バルコニーの有効床面積を狭めることがないとともに、安価に実施することができる。
また、端部バルコニー柱22Aと建物外壁パネル11の開口11aとの間に形成した作業用空間SPには、水切受パネル60が取り付けられており、引出防水シート30aと内壁防水シート40とが重なる部分は、表裏面が水切受パネル60と内壁上パネル50とに挟まれた状態で密着されるため、入隅部Aの水切性能を高く保持することができる。
そして、水切受パネル60は、端部バルコニー柱22Aに着脱可能としているため、建築現場での施工時に、必要に応じて水切受パネル60を端部バルコニー柱22Aから取り外して作業用空間SPを開放することができ、水切受パネル60が固定されて作業用空間SPの下部が閉ざされているものと比較して、開口11aから引出防水シート30aを引き出す作業が容易となる。
加えて、水切受パネル60を端部バルコニー柱22Aに着脱可能とするのにあたり、接着テープ61を用いているため、この着脱にネジなどを用いるのと比較して、着脱が容易であり、この点でも作業性に優れる。また、接着テープ61をいったん端部バルコニー柱22Aから剥がした後に、再度、端部バルコニー柱22Aに接着させる際に、この剥がした接着テープ61の粘着性が不十分な場合には、その場で、新たな接着テープ61を用いて水切受パネル60を端部バルコニー柱22Aに接着させることも容易に行うことができ、この点でも作業性に優れる。
【0057】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の建物の水切構造について説明する。
なお、実施の形態2は、実施の形態1の変形例であるため、実施の形態1との相違点のみを説明し、実施の形態1と同様の構成を図示する場合には実施の形態1と同じ符号を付けて説明を省略する。また、実施の形態1と同様の作用効果についても説明を省略する。
【0058】
実施の形態2は、着脱手段が実施の形態2と異なっており、図12,図13に示す、水切受パネル260に、図13に示すように着脱手段ならびに挟持部としての一対の水平部263,263および挿入部としての切欠部261を設けたものである。
【0059】
この水切受パネル260は、作業用空間を塞ぐ縦面部262と、この縦面部262の上端から水平方向に折り曲げられた一対の水平部263,263とにより逆L字状の縦断面形状に形成された部分を備えている。
そして、両水平部263,263の間に切欠部261を形成するとともに、この切欠部261の幅を、端部バルコニー柱22Aの幅よりも僅かに広い幅に形成しており、この切欠部261の両側の一対の水平部263,263により端部バルコニー柱22Aを挟持可能に形成している。
【0060】
さらに、縦面部262には、一対の折り目264,264が、切欠部261の幅方向両端から縦方向に沿って形成されている。これにより、縦面部262がある程度の厚みを有していても、縦面部262を、図13の二点鎖線で示すように折り曲げて切欠部261の幅を広げることができる。
【0061】
次に、実施の形態2の作用を説明する。
実施の形態2では、工場においてバルコニーユニットU2を組み立てるのにあたり、水切受パネル260を、図12に示すように、端部バルコニー柱22Aに取り付ける際には、水切受パネル260の縦面部262を、図13において二点鎖線で示すように、折り目264,264の位置で折り曲げるように弾性変形させて切欠部261の幅を広げる。さらに、この状態で切欠部261に端部バルコニー柱22Aに挿入させるようにして、水切受パネル260を端部バルコニー柱22Aに装着する。そして、縦面部262を折り曲げるために入力していた力を抜くと、縦面部262が復元して平面状態となるのに伴って、切欠部261の幅が狭まり、一対の水平部263が端部バルコニー柱22Aを挟持する。
したがって、水切受パネル260は、端部バルコニー柱22Aに装着された状態に維持される。
【0062】
次に、建築現場において、バルコニーユニットU2の設置後、入隅部Aの水切構造部分の施工を行う場合、まず、水切受パネル260の縦面部262を折り目264の位置で折り曲げて切欠部261の幅を広げ、水切受パネル260を端部バルコニー柱22Aからいったん取り外し、作業用空間SPを、バルコニー内側に対して開放した状態とする。
【0063】
そして、実施の形態1と同様に、建物外壁パネル11の開口11aに収容されている外壁防水シート30の引出防水シート30aを引き出す。
【0064】
その後、再び、水切受パネル260の縦面部262を、折り目264から折り曲げ弾性変形させて切欠部261の幅を広げ、切欠部261に端部バルコニー柱22Aを挿入するようにして水切受パネル260を端部バルコニー柱22Aの元の位置に装着し、縦面部262を復元させて水切受パネル260を端部バルコニー柱22Aに固定する。
そして、引出防水シート30aの裏面に設けられたシーリング材(図示省略)を覆う離型紙(図示省略)を剥がし、引出防水シート30aを、水切受パネル260の縦面部262と重なる位置で内壁防水シート40に密着させる。このとき、水切受パネル260は、L字断面形状に形成されているため、平面形状の場合と比較して、引出防水シート30aを密着させる押圧力を加えても折れ曲がりにくく、高い密着性を得ることができる。
【0065】
以上のように、実施の形態2では、着脱手段として、水切受パネル260に切欠部261およびこれを挟む一対の水平部263,263を形成し、水平部263,263の間に端部バルコニー柱22Aを挟むようにしたため、水切受パネル260の端部バルコニー柱22Aへの着脱操作性に優れる。
しかも、水切受パネル260の縦面部262には、切欠部261の幅方向両端に一致する位置に、切欠部261の幅を広げる方向の折曲を導く一対の折り目264,264を形成したため、縦面部262の厚さを、引出防水シート30aと内壁防水シート40とを密着させるのに必要な厚さに形成しても、縦面部262のスムーズな折り曲げが可能となり、その点でも着脱操作性に優れる。
【0066】
さらに、挟持部として縦面部262に連続して折り曲げられた水平部263を用いたため、水切受パネル260が水平部263,263の部分ではL字断面形状に形成され、水平部263,263を有しない形状と比較して、縦面部262の剛性が向上し、引出防水シート30aを内壁防水シート40に密着させる際の支持剛性が向上し、両シート30a、40の密着性が向上する。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0068】
例えば、実施の形態では、建物として、ユニット建物を示したが、建物としてはこれに限定されるものではなく、本発明は、施工の全てを建築現場にて行う在来工法その他のユニット建物以外の建物にも適用することができる。
また、実施の形態では、引出防水シートとして、外壁防水シート30を延長して外壁防水シート30と一体の引出防水シート30aを示したが、引出防水シートとしてはこれに限定されず、外壁防水シートとは別体のものを、外壁防水シートに連続して設けておき、これを内壁防水シートに重ねて密着させるようにしてもよい。この場合、引出防水シートとして、外壁防水シートとは異なり、入隅部Aに用いるのに最適な材質や厚さを含む寸法のものを用いることもできる。
【0069】
また、水切受パネルとしても、実施の形態で示したものとは、形状や寸法が異なるものを用いてもよい。
【0070】
さらに、水切受パネルを端部バルコニー柱に着脱可能に取り付ける着脱手段として、実施の形態では、接着テープ61ならびに切欠部261を示したが、これらに限定されるものではない。例えば、着脱を行っても接着性を維持可能な両面テープを用いたり、ネジなどの締結手段を用いたり、突起と穴や嵌合凸部と嵌合受部などによる係合手段を用いたりすることができる。
【0071】
また、建物ユニットとバルコニーユニットの形状なども、実施の形態で示した形状に限定されるものではなく、要は、両者で形成される入隅部を備えたものであれば、本発明を適用することができる。
【0072】
また、実施の形態2では、挿入部としての水平部263,263と切欠部261とを、縦面部262の全長に亘って設けた例を示したが、これらは縦面部262の一部に設けてもよい。
さらに、挟持部としては、実施の形態2で示したように、縦面部262に連続する水平部263,263により形成する以外にも、縦面部262とは別体の部材を用いて端部バルコニー柱を挟持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
11 建物外壁パネル
11a 開口
17 外壁下部材
21 床部
22 手摺
22A 端部バルコニー柱
22a バルコニー柱
22b 胴縁下部材
22c 胴縁上部材
24 壁部
25 バルコニー内壁パネル
27 内壁下パネル(内壁下部材)
28 バルコニー内壁受部材
30 外壁防水シート
30a 引出防水シート
40 内壁防水シート
50 内壁上パネル
60 水切受パネル
61 接着テープ(着脱手段)
260 水切受パネル
261 切欠部(挿入部)
262 縦面部
263 水平部(着脱手段;挟持部)
264 折り目
A 入隅部
H ユニット建物
OP 開放部
SP 作業用空間
U1 建物ユニット
U2 バルコニーユニット
UH ユニット建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外壁パネルと、バルコニーユニットの床部から立ち上げられた手摺の壁部に設けられたバルコニー内壁パネルとで形成される入隅部における建物の水切構造であって、
前記壁部は、前記バルコニー内壁を支持する骨格部材として複数のバルコニー柱を備え、
前記バルコニー内壁パネルと前記床部との間に、内壁下部材が設けられ、
前記建物外壁パネルの下端部と前記床部との間に外壁下部材が設けられ、
前記建物外壁パネルの下部と前記外壁下部材とに密着された防水シートが、前記建物外壁パネルの下端部に沿って設けられ、
前記バルコニー内壁パネルの下部と前記内壁下部材とに密着された内壁防水シートが、前記バルコニー内壁パネルの下端部に沿って設けられ、
前記建物外壁パネルは、前記壁部の端部に対面する位置に開口が設けられ、
前記外壁防水シートには、前記開口から前記壁部に沿って引き出すことが可能な長さの引出防水シートが連続して設けられ、
前記複数のバルコニー柱のうちで最も前記ユニット建物に近い位置に配置された端部バルコニー柱と前記開口との間の下部は、前記引出防水シートを引き出すための作業用空間としてバルコニー内側に開放され、
前記作業用空間を塞いで、板状の水切受パネルが設けられ、
前記開口から引き出された前記引出防水シートと前記内壁防水シートとが、相互に重なって密着されているとともに、前記水切受パネルと前記バルコニー内壁パネルとに挟まれて両者に密着され、
前記水切受パネルは、着脱手段により前記端部バルコニー柱に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする建物の水切構造。
【請求項2】
前記着脱手段は、前記水切受パネルを前記端部バルコニー柱に接着する接着テープであることを特徴とする請求項1に記載の建物の水切構造。
【請求項3】
前記着脱手段は、前記端部バルコニー柱を挟持可能に前記水切受パネルに設けられた挟持部であり、この挟持部は、前記端部バルコニー柱を挟持したときに前記水切受パネルが前記作業用空間を塞ぐように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建物の水切構造。
【請求項4】
前記水切受パネルは、前記作業用空間を塞ぐ縦面部と、この縦面部の上端から水平方向に折り曲げられた一対の水平部とにより逆L字状の縦断面形状に形成された部分を備えるとともに、両水平部により前記端部バルコニー柱を挟持可能に、両水平部の間に前記端部バルコニーを挿入する挿入部を備え、
前記縦面部には、前記挿入部の幅が広がる方向に折曲するのを導く折り目が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の建物の水切構造。
【請求項5】
前記骨格部材には、水平方向で、前記端部バルコニー柱とこれに隣り合う前記バルコニー柱との間に配置され、かつ、上下方向で、両バルコニー柱の上下を連結する胴縁上部材と胴縁下部材とに架設されて上下方向に延在されたバルコニー内壁受部材が設けられ、
前記バルコニー内壁パネルは、前記作業用空間を含み前記バルコニー内壁受部材と前記建物との間を覆う部分に、他の部分と分割された内壁上パネルを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の建物の水切構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の建物の水切構造の施工方法であって、
工場において、建物ユニットに設けられた前記建物外壁パネルに開口が形成され、前記引出防水シートが前記開口内に収容され、かつ、前記バルコニーユニットにおいて、前記壁部の前記バルコニー内壁パネルにおいて少なくとも作業用空間を覆う部分が、前記壁部から取り外された状態とされている一方、前記水切受パネルは、前記バルコニー柱に取り付けられており、
建築現場において、前記建物ユニットと前記バルコニーユニットとを結合させた後に、
前記水切受パネルを前記バルコニー柱から取り外して、前記作業用空間を開放状態とする工程と、
前記引出防水シートを、前記開口から前記作業用空間を介して前記バルコニーユニットの内側へ引き出す工程と、
前記水切受パネルを前記バルコニー柱に再び取り付けた状態とし、さらに、前記内壁防水シートと前記引出防水シートとを重ね合わせて相互に密着させ、両シートの裏面を前記水切受パネルおよび前記内壁下パネルに密着させる工程と、
前記取外状態のバルコニー内壁パネルを、前記壁部に固定して、前記内壁防水シートおよび前記引出防水シートに密着させる工程と、
を実行することを特徴とする建物の水切構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−87607(P2012−87607A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286866(P2010−286866)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)