説明

建物の沈下修正用基礎構造

【課題】建物をリフトアップするリフトアップ部材をべた基礎の内側領域にも容易に設置可能として、安定した状態でべた基礎をリフトアップすることのできる沈下修正用基礎構造を提供する。
【解決手段】建物10に生じた沈下を修正するために、住宅建築物10のべた基礎11に設けられた沈下修正用基礎構造であって、建物11の構築時に、べた基礎11の外周立上り部11aによって周囲を囲まれる内側領域22に予め形成された貫通開口穴11dによるリフトアップ部材設置ピット12と、貫通開口穴11dの下面開口の外側部分において基礎地盤13上に敷設された下方支圧板14と、下方支圧板14とべた基礎11の下面との間に挟み込まれ、これらの間にリフトアップ部材16の挿入スペース18を形成するスペーサ部材19とによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の沈下修正用基礎構造及び建物の沈下修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば後背湿地、臨海埋立地、三角州低地、おぼれ谷、海岸砂州等を構成する地盤は、泥炭質の地盤や圧密の進行の遅い地盤等によって形成されていることから、軟弱地盤となっている場合が多い。このような軟弱地盤は、地盤支持力が小さく、また引き続き圧密が進行することから、軟弱地盤の上方に建物を構築する場合には、構築された建物に不同沈下(不等沈下)等の沈下が生じやすい。
【0003】
建物に沈下が生じた際に、これを修正する手段としては、例えば建物の沈下した部分を基礎と共にジャッキ装置を用いてリフトアップし、リフトアップすることによって生じた基礎と基礎地盤との間の隙間に、モルタルやグラウト等の固化材を充填固化する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−8398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジャッキ装置を用いて建物の基礎をリフトアップする従来の方法では、特に建物の基礎が、下方の基礎地盤の表層部分の全面を覆って形成されるべた基礎である場合には、基礎の外周縁部にジャッキ装置を設置してリフトアップすることはできても、基礎の外周立上り部によって周囲を囲まれる内側領域にはジャッキを設置することはできないため、バランス良く安定した状態でべた基礎をリフトアップして効率良く建物の沈下修正を行うことは困難である。
【0005】
本発明は、建物の基礎をリフトアップするためのリフトアップ部材をべた基礎の内側領域にも容易に設置することを可能にして、バランス良く安定した状態でべた基礎をリフトアップすることのできる沈下修正用基礎構造及び該沈下修正用基礎構造を用いた建物の沈下修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物に沈下が生じた際に該沈下を修正するために、建物のべた基礎に設けられた沈下修正用基礎構造であって、前記建物の構築時に、前記べた基礎の外周立上り部によって周囲を囲まれる内側領域に予め形成された貫通開口穴によるリフトアップ部材設置ピットと、前記貫通開口穴の下面開口の周縁よりも外側部分において、前記べた基礎の下方の基礎地盤上に敷設された下方支圧板と、該下方支圧板と前記べた基礎の下面との間に挟み込まれて設置され、これらの間にリフトアップ部材の挿入スペースを形成するスペーサ部材とからなる建物の沈下修正用基礎構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
本発明の建物の沈下修正用基礎構造によれば、前記スペーサ部材と前記べた基礎の下面との間に介在して上方支圧板が取り付けられていることが好ましい。
【0008】
本発明の建物の沈下修正用基礎構造によれば、前記下方支圧板は、前記リフトアップ部材設置ピットの底部の基礎地盤を覆って敷設された敷板部材の周縁延設部分として設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明の建物の沈下修正用基礎構造によれば、前記リフトアップ部材設置ピットは、前記べた基礎の内側領域に設けられた内側立上り部に近接して形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の建物の沈下修正用基礎構造によれば、前記べた基礎の下方の基礎地盤が、地盤改良層による基礎地盤であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記建物の沈下修正用基礎構造を用いた建物の沈下修正方法であって、沈下が生じた前記建物に対して、前記貫通開口穴の下面開口の周縁よりも外側部分に形成された前記挿入スペースに前記リフトアップ部材設置ピットから前記リフトアップ部材を挿入配置すると共に、前記べた基礎の前記外周立上り部が設けられた外周縁部の下面とこれの下方の基礎地盤との間にもリフトアップ部材を挿入するための外周部挿入スペースを形成して、前記基礎地盤上に敷設した外周部下方支圧板と前記べた基礎の下面との間にリフトアップ部材を挿入配置し、前記リフトアップ部材設置ピットの前記挿入スペースに挿入配置したリフトアップ部材による前記べた基礎のリフトアップ量と、前記外周部挿入スペースに挿入配置したリフトアップ部材による前記べた基礎のリフトアップ量とを調整しつつ沈下修正を行う工程を含む建物の沈下修正方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
本発明の建物の沈下修正方法によれば、前記リフトアップ部材が、爪付きジャッキ装置のジャッキ爪であることが好ましい。
【0013】
本発明の建物の沈下修正方法によれば、前記べた基礎をリフトアップすることにより形成された前記べた基礎と前記基礎地盤との間の隙間に、モルタル、グラウト、発泡ウレタン等の固化材を充填する工程を含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建物の沈下修正用基礎構造又は建物の沈下修正方法によれば、建物の基礎をリフトアップするためのリフトアップ部材をべた基礎の内側領域にも容易に設置することを可能にして、バランス良く安定した状態でべた基礎をリフトアップすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2に示す本発明の好ましい一実施形態に係る建物の沈下修正用基礎構造は、例えば軟弱地盤の上方に盛土を施工して形成された埋立造成地に構築される建物として、例えば住宅建築物10が、構築後に例えば数ヶ月〜数十年経過して不同沈下を生じた際に、住宅建築物10の沈下した部分を押し上げて、住宅建築物10の傾き等を修正できるようにするための基礎構造として、住宅建築物10の構築時に予め設けられたものである。すなわち、本実施形態の沈下修正用基礎構造は、住宅建築物10のベた基礎11の外周立上り部11aによって周囲を囲まれる内側領域22にリフトアップ部材16を設置することを可能にして、例えば当該内側領域22に設置したリフトアップ部材16と、ベた基礎11の外周縁部に設置したリフトアップ部材16’とを使用して(図4参照)、住宅建築物10の沈下が生じた部分のべた基礎11を、バランス良く安定した状態でリフトアップすることを可能にするものである。
【0016】
そして、本実施形態の建物の沈下修正用基礎構造は、住宅建築物10に沈下が生じた際にこの沈下を修正するために、住宅建築物10のべた基礎11に設けられた基礎構造であって、住宅建築物11の構築時に、べた基礎11の外周立上り部11aによって周囲を囲まれる内側領域22に予め形成された貫通開口穴11dによるリフトアップ部材設置ピット12と、貫通開口穴11dの下面開口の周縁よりも外側部分において、べた基礎11の下方の基礎地盤13上に敷設された下方支圧板14と、この下方支圧板14とべた基礎11の下面との間に挟み込まれて設置され、これらの間にリフトアップ部材16として例えば爪付きジャッキ装置17のジャッキ爪16の挿入スペース18を形成するスペーサ部材19とによって構成されている。
【0017】
また、本実施形態では、スペーサ部材19とべた基礎11の下面との間に介在して上方支圧板20が取り付けられている。さらに、下方支圧板14は、リフトアップ部材設置ピット12の底部の基礎地盤13を覆って敷設された敷鉄板(敷板部材)21の周縁延設部分として設けられている。
【0018】
なお、図1、図2、及び図4において、住宅建築物10は、その躯体部分を省略して、本発明の要部である主としてべた基礎11の部分が示されている。
【0019】
本実施形態では、住宅建築物10の基礎はべた基礎11となっている。べた基礎11には、住宅建築物10の躯体の外壁が配置される外周縁部に沿って外周立上り部11aが立設して設けられており、またべた基礎11の外周立上り部11aによって周囲を囲まれる内側領域22には、これの略全域に亘って、150〜250mm程度の厚さの基礎スラブ11bが形成されている。基礎地盤13を覆って内側領域22の略全域に基礎スラブ11bが形成されていることにより、住宅建築物10からの荷重を基礎スラブ11bの全体に分散しつつ、安定した状態で下方の基礎地盤13に支持させることができるようになっている。さらに、べた基礎11の内側領域22には、住宅建築物10の躯体の1階部分の間取りに応じて、例えば間仕切壁が配置される適宜の位置に、内側立上り部11cが基礎スラブ11bから立設して設けられている。
【0020】
また、本実施形態では、基礎地盤13は、好ましくはその表層部分が、表層改良工法によって形成された地盤改良層としての面状固結体となっている。表層改良工法は、例えば基礎地盤13の表層部分の土砂に、石灰、セメント等のセメント系固化材を混合し、例えば30〜50cm程度の層厚毎に攪拌と転圧を繰り返すことによって、所望の厚さの面状固結体を、地盤改良層として形成する公知の工法である。本実施形態では、表層改良工法による面状固結体は、例えば住宅建築物10のべた基礎11よりも一回り大きな平面形状を備えると共に、例えば0.8〜1.0m程度の厚さを有する、圧縮強度が例えば20〜500kN/m2程度の地盤改良層として形成される。
【0021】
そして、本実施形態では、べた基礎11の内側領域11bに設けられた内側立上り部11cに各々近接して、沈下修正用基礎構造を構成するリフトアップ部材設置ピット12が、内側領域22の略中央部分に分散して4箇所に設けられている(図2参照)。
【0022】
リフトアップ部材設置ピット12は、べた基礎11の内側領域22の基礎スラブ11bを上下に貫通して形成された、例えば縦横300〜400mm程度の矩形平面形状を有する貫通開口穴11dによって構成される。リフトアップ部材設置ピット12は、後述するように、例えばコンクリートを打設して基礎スラブ11bを形成する際に、箱抜き用の保護枠23(図3参照)を設置することにより、当該保護枠23よって周囲のコンクリートから区画された状態で設けられることになる。
【0023】
本実施形態では、貫通開口穴11dの下面開口の周縁よりも外側部分において、べた基礎11の下方の基礎地盤13上に敷設される下方支圧板14は、上述のように、リフトアップ部材設置ピット12の底部の基礎地盤13を覆って敷設された敷鉄板21の周縁延設部分として設けられている。敷鉄板21は、厚さ9mm程度の平板状の鉄板からなり、例えばリフトアップ部材設置ピット12の平面形状よりも一回り大きな矩形平面形状を有している(図3参照)。敷鉄板21は、後述するように、例えば基礎スラブ11bのコンクリートを打設するのに先立って、リフトアップ部材設置ピット12が設けられる部分の基礎地盤13上に敷設されることにより、コンクリートの打設後は、その全周に亘って周縁部分を貫通開口穴11dの下面開口の周縁よりも外側に食い込ませた状態で、リフトアップ部材設置ピット12の底部に設置されることになる。また、敷鉄板21は、リフトアップ部材設置ピット12の内側立上り部11cと近接する辺部においては、その周縁部分が、他の周縁部分よりも貫通開口穴11dの下面開口の周縁から外側に深く延設して配設されており、この内側立上り部11cと近接する辺部の周縁延設部分が、べた基礎11の下方の基礎地盤13上に敷設される下方支圧板14を構成することになる。
【0024】
本実施形態では、下方支圧板14とべた基礎11の下面との間に挟み込まれて設置されるスペーサ部材19は、例えば厚さ25mm程度の塩化ビニール製の平板部材からなり、内側部分を切り抜くことによって、矩形の枠板形状に形成される(図3参照)。スペーサ部材19は、敷鉄板21の外周形状と略同様の矩形の外周形状を有しており、その外側の周縁を敷鉄板21の周縁に沿わせるようにして敷鉄板21の上方に重ねて配設される。またスペーサ部材19は、基礎スラブ11bのコンクリートを打設した後は、敷鉄板21の周縁部と、貫通開口穴11dの下面開口の周縁よりも外側部分のべた基礎11の下面との間に挟みこまれた状態で設置されることになる。さらに、リフトアップ部材設置ピット12の内側立上り部12dと近接する辺部においては、このスペーサ部材19によって、敷鉄板21による下方支圧板14とべた基礎11の下面との間に、リフトアップ部材設置ピット12からリフトアップ部材16を挿入可能な挿入スペース18が保持されることになる。
【0025】
また、本実施形態では、上述のように、スペーサ部材19とべた基礎11の下面との間に介在して上方支圧板20が取り付けられている。上方支圧板20は、例えば厚さ9mm程度の鉄板からなり、内側部分を切り抜くことによって、矩形の枠板形状に形成される(図3参照)。上方支圧板20は、敷鉄板21の外周形状と略同様の矩形の外周形状を有すると共に、保護枠23の内周形状と略同様の矩形の内周形状を有している。また上方支圧板20は、その外側の周縁を敷鉄板21及びスペーサ部材19の外側の周縁に沿わせるようにしてスペーサ部材19の上方に重ねて配設され、基礎スラブ11bのコンクリートを打設した後は、スペーサ部材19と、貫通開口穴11dの下面開口の周縁よりも外側部分のべた基礎11の下面との間に挟みこまれた状態で設置されることになる。さらに、リフトアップ部材設置ピット12の内側立上り部12dと近接する辺部においては、上方支圧板20は、その幅が、スペーサ部材19の幅よりも広く形成されていて、スペーサ部材19から内側にはみ出した部分の上方支圧板20と、敷鉄板21の周縁延設部分による下方支圧板14との間に、リフトアップ部材設置ピット12からリフトアップ部材16を挿入可能な挿入スペース18が保持されることになる。
【0026】
そして、上述の構成を有する本実施形態の建物の沈下修正用基礎構造は、住宅建築物10のべた基礎11を形成する際に、例えば以下のようにして容易に設置されることになる。すなわち、図1に示すように、表層部分が地盤改良層となった基礎地盤13の地盤面を敷均すと共に、必要に応じて基礎砕石等を適宜敷設した後、べた基礎11の内側領域22における4箇所のリフトアップ部材設置ピット12を設けるべき所定の位置に、敷鉄板21を各々敷設する。また、敷設した敷鉄板21の上面に、スペーサ部材19及び上方支圧板20を重ねて設置する。さらに、上方支圧板20の切り抜き開口の周縁部の上面に、保護枠23の周壁部23aの下端面を当接接合することにより、保護枠23を上方支圧板20に支持させた状態で設置する。
【0027】
しかる後に、重ねて設置した敷鉄板21、スペーサ部材19、及び上方支圧板20の外側部分に敷砕石、敷き砂、捨てコンクリート等による組立作業床15を形成すると共に、組立作業床15の上面に鉄筋や型枠を組み付け、コンクリートを打設することによって、べた基礎11の基礎スラブ11bを形成する。これにより、べた基礎11の内側領域22の基礎スラブ11bには、当該基礎スラブ11bを上下に貫通すると共に、底部に敷鉄板21、スペーサ部材19、及び上方支圧板20が取り付けられてリフトアップ部材16を挿入可能な挿入スペース18が設けられたリフトアップ部材設置ピット12が、4箇所に形成されるとになる。
【0028】
なお、基礎スラブ11bが形成された後に、さらに外周立上り部11a及び内側立上り部11cの鉄筋や型枠を組み付けて、コンクリートを打設することにより、外周立上り部11a、内側立上り部11c、及び基礎スラブ12bが一体となったべた基礎11が形成されることになる。また、べた基礎11の外周立上り部11a及び内側立上り部11cの上方には、建物の躯体部分が形成されて、住宅建築物10が構築されることになる。
【0029】
そして、本実施形態によれば、上述のようにして軟弱地盤の上方に構築された住宅建築物10が、例えば数十年経過した後に不同沈下を生じた場合に、例えば以下のような方法によって沈下修正を容易に行うことができる。すなわち、沈下が生じた住宅建築物10に対して、沈下した部分に位置する1箇所又は2箇所以上のリフトアップ部材設置ピット12を選択して、図4に示すように、リフトアップ部材として例えばジャッキ装置17のジャッキ爪16を、貫通開口穴11dの下面開口の周縁よりも外側部分に予め形成された挿入スペース18に、リフトアップ部材設置ピット12から挿入配置する。また、べた基礎11の外周立上り部11aが設けられた外周縁部における、リフトアップ部材16’を設置するのに適した複数の設置予定箇所25(図2参照)から、沈下した部分に位置する1箇所又は2箇所以上の設置予定箇所25を選択し、ベタ基礎11の外周縁部の下面とこれの下方の基礎地盤13との間にもリフトアップ部材16’を挿入するための外周部挿入スペース18’を形成して、基礎地盤13上に敷設した外周部下方支圧板14’とべた基礎11の下面との間にリフトアップ部材16’として例えばジャッキ装置17’のジャッキ爪16’を挿入配置する。
【0030】
ここで、リフトアップ部材16’の設置予定箇所25に外周部挿入スペース18’を形成するには、例えばべた基礎11の外周縁部において、基礎地盤13との間に充填されている組立作業床15の構成材料を掘り出して、外周部下方支圧板14’等の設置スペースを形成する。また、設置予定箇所25の外側に敷設される敷鉄板21’の周縁部分をこの設置スペースに食い込ませた状態で設置することにより、外周部下方支圧板14’とする。さらに、設置した外周部下方支圧板14’の上面にスペーサ部材19’及び上方支圧板20’を重ねるように挿入配置して、外周部挿入スペース18’を形成する。
【0031】
また、本実施形態では、リフトアップ部材16,16’を備えるジャッキ装置17,17’として、公知の各種のジャッキ装置を用いることができる。例えば、図5に示すような、ハンドル部を操作することにより、リフトアップ部材としてのジャッキ爪16,16’を装置本体に対して上下にスライド昇降可能とした、爪付き油圧ジャッキ等を好ましく用いることができる。
【0032】
そして、本実施形態では、リフトアップ部材設置ピット12の挿入スペース18に挿入配置したジャッキ装置17のジャッキ爪16によるべた基礎11のリフトアップ量と、べた基礎11の外周立上り部11aが設けられた外周縁部における外周部挿入スペース18’に挿入配置したジャッキ装置17’のジャッキ爪16’によるべた基礎11のリフトアップ量とを調整しつつ、べた基礎11及び住宅建築物10の沈下修正をバランス良く安定した状態で容易に行なうことが可能になる。
【0033】
すなわち、本実施形態によれば、住宅建築物10のべた基礎11をリフトアップするためのリフトアップ部材16をべた基礎11の内側領域22にも容易に設置することを可能にして、バランス良く安定した状態でべた基礎11をリフトアップすることが可能になる。
【0034】
また、本実施形態では、べた基礎11をリフトアップすることにより形成されたべた基礎11と基礎地盤13との間の隙間には、適宜スペーサーを挿入配置した後に、モルタル、グラウト、発泡ウレタン等の固化材を充填して固化させることにより、リフトアップした状態を保持させて、住宅建築物10の沈下を修正する作業を終了する。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、スペーサ部材とべた基礎の下面との間に介在して上方支圧板を取り付ける必要は必ずしもなく、リフトアップ部材設置ピットは、べた基礎の内側領域に設けられた内側立上り部に近接して形成する必要は必ずしもない。また下方支圧板とべた基礎の下面との間に挟み込まれてこれらの間にリフトアップ部材の挿入スペースを形成するスペーサ部材は、建物の構築当初から挿入スペースを保持するものである必要は必ずしも無く、例えば削取り可能な部材からなり、沈下を修正する際に削取ってリフトアップ部材を挿入可能な挿入スペースを形成するものであっても良い。さらに、リフトアップ部材は、爪付きジャッキ装置のジャッキ爪である必要は必ずしもなく、その他の公知の種々のリフトアップ部材であっても良い。例えば、内部に加圧液体が圧入されて平坦な状態から膨張することにより、例えば建物やその他の重量物を持ち上げる際に使用する膨張袋体をリフトアップ部材として用いることもできる。べた基礎11に形成した貫通開口穴11dによるリフトアップ部材設置ピット12は、建物の沈下を修正する作業に使用しない平常時においては、例えば1階の床部から開閉可能な床扉26(図1参照)を介して出入れ可能な床下収納等として有効活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る沈下修正用基礎構造の構成を説明する要部断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る沈下修正用基礎構造が設けられたべた基礎の略示上面図でる。
【図3】重ねて設置される敷鉄板(下方支圧板)、スペーサ部材、上方支圧板、及び保護枠の分解略示斜視図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係る沈下修正用基礎構造を用いて建物の沈下修正を行う状況を説明する要部断面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係る沈下修正用基礎構造を用いて建物の沈下修正を行う際に用いる爪付きジャッキ装置の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10 住宅建築物(建物)
11 ベた基礎
11a ベた基礎の外周立上り部
11b ベた基礎の基礎スラブ
11c ベた基礎の内側立上り部
11d ベた基礎に形成された貫通開口穴
12 リフトアップ部材設置ピット
13 基礎地盤
14 下方支圧板
14’ 外周部下方支圧板
15 組立作業床
16,16’ ジャッキ爪(リフトアップ部材)
17,17’ 爪付きジャッキ装置
18 挿入スペース
18’ 外周部挿入スペース
19,19’ スペーサ部材
20,20’ 上方支圧板
21,21’ 敷鉄板(敷板部材)
22 べた基礎の内側領域
23 保護枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に沈下が生じた際に該沈下を修正するために、建物のべた基礎に設けられた沈下修正用基礎構造であって、
前記建物の構築時に、前記べた基礎の外周立上り部によって周囲を囲まれる内側領域に予め形成された貫通開口穴によるリフトアップ部材設置ピットと、
前記貫通開口穴の下面開口の周縁よりも外側部分において、前記べた基礎の下方の基礎地盤上に敷設された下方支圧板と、
該下方支圧板と前記べた基礎の下面との間に挟み込まれて設置され、これらの間にリフトアップ部材の挿入スペースを形成するスペーサ部材とからなる建物の沈下修正用基礎構造。
【請求項2】
前記スペーサ部材と前記べた基礎の下面との間に介在して上方支圧板が取り付けられている請求項1に記載の建物の沈下修正用基礎構造。
【請求項3】
前記下方支圧板は、前記リフトアップ部材設置ピットの底部の基礎地盤を覆って敷設された敷板部材の周縁延設部分として設けられている請求項1又は2に記載の建物の沈下修正用基礎構造。
【請求項4】
前記リフトアップ部材設置ピットは、前記べた基礎の内側領域に設けられた内側立上り部に近接して形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の建物の沈下修正用基礎構造。
【請求項5】
前記べた基礎の下方の基礎地盤が、地盤改良層による基礎地盤である請求項1〜4のいずれかに記載の建物の沈下修正用基礎構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の建物の沈下修正用基礎構造を用いた建物の沈下修正方法であって、
沈下が生じた前記建物に対して、前記貫通開口穴の下面開口の周縁よりも外側部分に形成された前記挿入スペースに前記リフトアップ部材設置ピットから前記リフトアップ部材を挿入配置すると共に、前記べた基礎の前記外周立上り部が設けられた外周縁部の下面とこれの下方の基礎地盤との間にもリフトアップ部材を挿入するための外周部挿入スペースを形成して、前記基礎地盤上に敷設した外周部下方支圧板と前記べた基礎の下面との間にリフトアップ部材を挿入配置し、
前記リフトアップ部材設置ピットの前記挿入スペースに挿入配置したリフトアップ部材による前記べた基礎のリフトアップ量と、前記外周部挿入スペースに挿入配置したリフトアップ部材による前記べた基礎のリフトアップ量とを調整しつつ沈下修正を行う工程を含む建物の沈下修正方法。
【請求項7】
前記リフトアップ部材が、爪付きジャッキ装置のジャッキ爪である請求項6に記載の建物の沈下修正方法。
【請求項8】
前記べた基礎をリフトアップすることにより形成された前記べた基礎と前記基礎地盤との間の隙間に、モルタル、グラウト、発泡ウレタン等の固化材を充填する工程を含む請求項6又は7に記載の建物の沈下修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−263907(P2009−263907A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112054(P2008−112054)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】