説明

建物損傷度判定装置および建物損傷度判定方法

【課題】 簡易かつ低コストで建物の損傷度を迅速に判定することができる建物損傷度判定装置および建物損傷度判定方法を提供すること。
【解決手段】 弾性周期決定処理手段42により、振動センサ(例えば加速度センサ21)で計測した地震前のデータを用いてスペクトル解析を行い、振幅がピーク値をとる卓越周期を求めて弾性周期Teを決定し、地震終了付近固有周期決定処理手段43により、地震後のデータを用いて同様にしてスペクトル解析を行って地震終了付近の固有周期Tを決定し、変形角算出処理手段44により、地震前後の周期の伸びの指標値T/Teに対応する変形角Rを推定算出し、建物損傷度判定処理手段45により変形角Rの大小に応じて建物の損傷度を判定し、この判定結果を外部出力装置30に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に被害を受けた建物の損傷度を判定する建物損傷度判定装置および建物損傷度判定方法に係り、例えば、大地震で被害を受ける可能性の高い老朽化した木造家屋等の被害レベルを判定する場合などに利用できる。
【背景技術】
【0002】
一般に、大地震で建物が被害を受けたとき、その建物の損傷度を正確かつ迅速に把握することは、余震による建物倒壊から生じる2次被害を軽減させるのに不可欠である。すなわち、被害を受けた建物をそのまま使用してよいのか、あるいは避難した方がよいのかを迅速に判定する必要性がある。
【0003】
このような要請に対し、現在行われている応急危険度判定は、人の目視によるものであり、例えば地元の応急危険度判定士によって人海戦術で行われるため、数日余という時間がかかり、本震直後に発生する大きな余震に対応することができない。
【0004】
一方、建物の上部と下部に加速度センサを設置し、これらの2個の加速度センサにより計測された加速度データを2回積分して計測点での変位を算出することにより、建物の損傷度を判定する装置が開発されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、建物の上部と下部に加速度センサを設置し、これらの2個の加速度センサにより計測された加速度データの差から建物にかかる応力を算出することにより、建物の損傷度を判定する装置も開発されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、本願出願人により、1個の加速度センサにより計測した地震時の加速度データを用いてランニングスペクトルを算出し、このランニングスペクトル中の各時間区切りの加速度応答スペクトルのそれぞれについて振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、求めた各時間区切りの卓越周期のうち周期が最長となる最長周期を求め、この最長周期を用いて建物の変形角を推定算出し、推定算出した変形角の大小に応じて建物の損傷度を判定する装置も開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−344213号公報(要約、請求項1)
【特許文献2】特開2003−294574号公報(要約、請求項1)
【特許文献3】特開2009−20056号公報(要約、請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した特許文献1,2に記載された2個の加速度センサを用いる装置では、装置の規模が大きく、コストもかかるため、被害が最も生じる老朽化した木造家屋等の既存不適格建物に用いることは、現実的に困難である。従って、1個の加速度センサを用いてその建物の損傷度を推定することができれば、判定装置を簡易化、低コスト化することが可能となり、普及に繋がると考えられる。
【0009】
本発明の目的は、簡易かつ低コストで建物の損傷度を迅速に判定することができる建物損傷度判定装置および建物損傷度判定方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の建物損傷度判定装置は、建物に設置した振動センサと、この振動センサにより計測した振動データを用いて計算機による演算処理を実行する演算処理手段と、この演算処理手段による処理結果を出力する外部出力装置とを備え、演算処理手段は、振動センサにより計測した地震前の建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物の弾性周期として決定する処理を実行する弾性周期決定処理手段と、振動センサにより計測した地震後の建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物の地震終了付近の固有周期として決定する処理を実行する地震終了付近固有周期決定処理手段と、この地震終了付近固有周期決定処理手段により決定した地震終了付近の固有周期を弾性周期決定処理手段により決定した弾性周期で除することにより、地震前後の周期の伸びの指標値を算出し、周期の伸びの指標値と建物の変形角との対応関係を予め定めた変形角推定算出用の演算式またはテーブルを用いて、算出した周期の伸びの指標値に対応する変形角を推定算出する処理を実行する変形角算出処理手段と、この変形角算出処理手段により推定算出した変形角の大小に応じて建物の損傷度を判定する処理を実行する建物損傷度判定処理手段とを含んで構成され、外部出力装置は、建物損傷度判定処理手段による判定結果を出力する構成とされていることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、「スペクトル」には、応答スペクトル(加速度スペクトル、速度スペクトル、変位スペクトル)の他、フーリエスペクトル、ゼロクロススペクトル等の各種のスペクトル特性を表現するものが含まれる。
【0012】
このような本発明の建物損傷度判定装置においては、地震波による建物の振動データのスペクトルを利用して建物の地震前後の周期の伸びを捉え、周期の伸びから建物の変形角を推定することにより、建物の損傷度(被害レベル、余震による倒壊危険性)を判定する。
【0013】
このため、建物に設置した単一の振動センサを用いて建物の被害レベルを自動判定することができるので、前述した特許文献1,2のような2個の加速度センサを用いた大がかりな装置の場合に比べ、装置の大幅な簡易化や大幅な低コスト化を図ることが可能となる。従って、被害が最も生じる老朽化した木造家屋等の既存不適格建物に用いることも可能となり、装置を普及させることができるようになる。
【0014】
また、建物の損傷度の判定処理は、演算処理手段により自動的に行われ、その判定結果は、外部出力装置により出力されるので、各建物に本発明の建物損傷度判定装置を設置しておくことで、従来のように人の目視により人海戦術で判定を行い、その判定結果を示す「危険」、「要注意」「調査済」等の紙を各建物に順次貼っていく場合に比べ、各建物において迅速に判定処理を行い、その判定結果を各建物の住人に伝達することが可能となる。このため、本震直後に発生する大きな余震にも対応することができるようになり、これらにより前記目的が達成される。
【0015】
なお、前述した特許文献3に記載された本願出願人による装置は、1個の加速度センサを用いるという点で、本発明と同様に、装置の簡易化や低コスト化を図ることができるものであるが、地震前後の微小な振動を捉えるのではなく、振動の大きい地震時のランニングスペクトルを利用している点で、本発明とは異なるものである。
【0016】
また、前述したように、各種のスペクトルを利用して建物の損傷度を判定することが可能であるが、より具体的には、多くの実験を繰り返すことにより、弾性周期を決定する際の開始時トリガー値や、地震終了付近の固有周期を決定する際の終了時トリガー値となる適切な加速度データの値が見出されているという点で、次のように、加速度応答スペクトルを利用する構成とすることが望ましい。
【0017】
すなわち、前述した建物損傷度判定装置において、振動センサは、加速度センサであり、振動データは、加速度データであり、弾性周期決定処理手段は、加速度センサにより計測した加速度データの値が、予め定められた開始時トリガー値に達した時点から遡って所定時間長の加速度データを用いて、加速度応答スペクトルの解析を行い、加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物の弾性周期として決定する処理を実行する構成とされ、地震終了付近固有周期決定処理手段は、加速度センサにより計測した加速度データの値が、時間軸を逆方向に辿って予め定められた終了時トリガー値に達した時点から所定時間長の加速度データを用いて、加速度応答スペクトルの解析を行い、加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物の弾性周期として決定する処理を実行する構成とされていることが望ましい。
【0018】
このように加速度応答スペクトルを利用して建物の地震前後の周期の伸びを捉え、周期の伸びから建物の変形角を推定する構成とした場合には、前述した特許文献1のように、加速度センサにより計測した加速度を2回積分して変位を求めるといった処理を行う必要はないので、2回積分のときのような測定ノイズの影響を受けることはなく、単一の加速度センサでも、精度の良い判定を行うことが可能となる。
【0019】
さらに、前述した建物損傷度判定装置において、弾性周期決定処理手段および/または地震終了付近固有周期決定処理手段は、予め定められた周期よりも短い周期のスペクトルの振幅を除いて、振幅がピーク値をとる卓越周期を求める構成としてもよい。
【0020】
このように卓越周期を求める際に、短い周期のスペクトルの振幅を除くようにした場合には、振動データにノイズが乗ったとき等に、振動センサの性能や種別等に応じてフィルタをかける範囲の調整を行うことが可能となる。
【0021】
そして、本発明の建物損傷度判定方法は、建物に振動センサを設置し、この振動センサにより地震前後を含む地震時の振動データを計測し、計測した地震前の建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物の弾性周期として決定するとともに、計測した地震後の建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物の地震終了付近の固有周期として決定した後、地震終了付近の固有周期を弾性周期で除することにより、地震前後の周期の伸びの指標値を算出し、周期の伸びの指標値と建物の変形角との対応関係を予め定めた変形角推定算出用の演算式またはテーブルを用いて、算出した周期の伸びの指標値に対応する変形角を推定算出し、推定算出した変形角の大小に応じて建物の損傷度を判定することを特徴とするものである。
【0022】
このような本発明の建物損傷度判定方法においては、前述した本発明の建物損傷度判定装置で得られる作用・効果と同様な作用・効果が得られ、これにより前記目的が達成される。
【発明の効果】
【0023】
以上に述べたように本発明によれば、地震波による建物の振動データのスペクトルを利用して建物の地震前後の周期の伸びを捉え、周期の伸びから建物の変形角を推定することにより、建物の損傷度を判定するので、単一の振動センサでの判定が可能となり、設備の大幅な簡易化、大幅な低コスト化、装置の普及を図ることができるうえ、従来のような人海戦術での目視による判定の場合に比べ、自動判定により迅速に判定結果を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の建物損傷度判定装置を設置した建物を示す図。
【図2】前記実施形態の建物損傷度判定装置の全体構成図。
【図3】前記実施形態の建物損傷度判定装置による建物損傷度判定処理の全体の流れを示すフローチャートの図。
【図4】前記実施形態の建物損傷度判定処理中の地震応答取得処理の流れを示すフローチャートの図。
【図5】前記実施形態の建物損傷度判定処理で用いられる各種データの関係を示す説明図。
【図6】前記実施形態の弾性周期の推定の妥当性を示すグラフの図。
【図7】前記実施形態の損傷前後の周期の伸びの指標値(T/Te)と最大層間変形角Rとの対応関係を示すグラフの図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本実施形態の建物損傷度判定装置10を設置した建物1が示されている。図2には、建物損傷度判定装置10の全体構成が示されている。また、図3には、建物損傷度判定装置10による建物損傷度判定処理の全体の流れがフローチャートで示され、図4には、建物損傷度判定処理中の地震応答取得処理の流れがフローチャートで示されている。図5は、建物損傷度判定処理で用いられる各種データの関係を示す説明図である。さらに、図6には、弾性周期の推定の妥当性を示すグラフが示され、図7には、損傷前後の周期の伸びの指標値(T/Te)と最大層間変形角Rとの対応関係を示すグラフが示されている。
【0026】
図1において、建物損傷度判定装置10は、建物1の上部(例えば天井の梁等)に設置された本体20と、建物1内の台所や居間等の居室空間に設置された外部出力装置30とを備え、これらの本体20と外部出力装置30とが、ケーブル2または無線により接続されて構成されている。
【0027】
図2において、本体20は、例えばワンチップの回路で構成され、ハードウェア構成としては、建物の加速度応答を計測する加速度センサ21と、この加速度センサ21の出力をA/D変換するA/D変換器22と、建物損傷度判定に関する各種の演算処理をプログラムに従って実行する中央演算処理装置(CPU)23と、外部出力装置30との信号の入出力用のI/Oインターフェース24と、主メモリ等の作業領域を構成するランダム・アクセス・メモリ(RAM)25と、建物損傷度判定用プログラム等を記憶する読出し専用メモリ(ROM)26と、各部に電力を供給する電源27とを備えている。電源27は、バッテリでも、コンセントへの差込み方式のものでもよい。
【0028】
外部出力装置30は、建物の損傷度が大きいという判定結果(例えば、従来の応急危険度判定の「危険」に相当する判定結果)のときに点灯する赤ランプ31と、建物の損傷度が中程度という判定結果(例えば、従来の応急危険度判定の「要注意」に相当する判定結果)のときに点灯する黄ランプ32と、建物の損傷度が小さいという判定結果(例えば、従来の応急危険度判定の「調査済」に相当する判定結果)のときに点灯する緑ランプ33とを備え、これらのランプを点灯させることにより、建物1の住人に対し、建物1の損傷度を伝達するようになっている。なお、本実施形態では、損傷度の判定結果、つまり被害レベルを、3段階で出力するようになっているが、3段階に限定されるものではなく、2段階でも、4段階以上でもよい。
【0029】
また、CPU23およびこのCPU23の動作手順を規定する1つまたは複数の建物損傷度判定用プログラム(ROM26に記憶されているプログラム)により、建物損傷度判定に関する各種の演算処理を実行する演算処理手段40が構成され、RAM25およびROM26により、演算処理手段40による演算処理に必要な各種のデータを記憶する加速度応答蓄積記憶手段50および判定結果記憶手段51が構成されている。
【0030】
演算処理手段40は、地震応答取得処理手段41と、弾性周期決定処理手段42と、地震終了付近固有周期決定処理手段43と、変形角算出処理手段44と、建物損傷度判定処理手段45とを含んで構成されている。
【0031】
地震応答取得処理手段41は、地震の開始判定、加速度応答の入力および保存、地震の終了判定の各処理を実行するものである。具体的には、地震応答取得処理手段41は、加速度センサ21により計測した加速度データAが、予め定められた閾値α(cm/s)以上であるか否かを判断し、閾値α以上になったときに地震開始と判断し、加速度データAの保存を開始して加速度応答蓄積記憶手段50に順次記憶させていき、加速度センサ21により計測した加速度データAが閾値α未満である状態が、Δt秒間(例えば1秒間等)続いたときに、地震終了と判断し、次の処理へ移行する処理を実行する。
【0032】
弾性周期決定処理手段42は、地震応答取得処理手段41により加速度応答蓄積記憶手段50に蓄積記憶された加速度データAを用いて、加速度データAが、予め定められた開始時トリガー値a(cm/s)に達した時点(a以上になった時点、またはaを超えた時点)を判定し、この開始時トリガー値aに達した時点から遡って所定時間長(例えば2秒間等であるが、2秒間に限定されるものではない。)の加速度データA(図5参照)を用いて加速度応答スペクトルの解析を行い、得られた解析結果のうち、例えば周期0.1〜2.0秒間において加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物1の弾性周期Teとして決定する処理を実行するものである。なお、上記の例で0.1秒(以下、フィルタリング周期Tf1という。)よりも短い周期の振幅を除いて卓越周期を判断しているのは、建物が対象であれば、弾性周期は、0.1秒よりも短い周期にはならないはずであるから、0.1秒よりも短い周期の振幅は、ノイズであると考えてフィルタをかけて除去するためである。
【0033】
地震終了付近固有周期決定処理手段43は、地震応答取得処理手段41により加速度応答蓄積記憶手段50に蓄積記憶された加速度データAを用いて、加速度データAが、時間軸を逆方向(図5中では、右側から左側へ向かう方向)に辿って予め定められた終了時トリガー値aeq(cm/s)に達した時点(aeq以上になった時点、またはaeqを超えた時点)を判定し、この終了時トリガー値に達した時点aeqから所定時間長(例えば2秒間等であるが、2秒間に限定されるものではない。)の加速度データA(図5参照)を用いて加速度応答スペクトルの解析を行い、得られた解析結果のうち、周期0.2〜2.0秒間において加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物1の地震終了付近の固有周期Tとして決定する処理を実行するものである。なお、上記の例で0.2秒(以下、フィルタリング周期Tf2という。)よりも短い周期の振幅を除いて卓越周期を判断しているのは、ノイズを除去するためであるが、このようなフィルタをかける範囲(上記の例では、周期が0〜0.2秒の範囲)は、加速度センサ21の性能に応じて調整すればよい。
【0034】
変形角算出処理手段44は、地震終了付近固有周期決定処理手段43により決定した地震終了付近の固有周期Tを、弾性周期決定処理手段42により決定した弾性周期Teで除することにより、地震前後の周期の伸びの指標値(T/Te)を算出し、変形角推定算出用の演算式であるR=f(T/Te)を用いて、算出した周期の伸びの指標値(T/Te)に対応する最大層間変形角Rを推定算出する処理を実行するものである。なお、変形角Rとは、図1に示すように、建物の任意の部位の水平方向の変位Xを、地上から当該部位までの高さ寸法Lで除して得られる値(R=X/L)をいう。
【0035】
ここで、変形角推定算出用の演算式であるR=f(T/Te)は、周期の伸びの指標値(T/Te)と建物1の最大層間変形角Rとの対応関係を実験に基づき予め定めたものであり、例えば、最大層間変形角Rは、指標値(T/Te)の2次関数等として表すことができる。
【0036】
なお、弾性周期決定処理手段42で用いられる開始時トリガー値a(cm/s)およびフィルタリング周期Tf1(s)、地震終了付近固有周期決定処理手段43で用いられる終了時トリガー値aeq(cm/s)およびフィルタリング周期Tf2(s)、並びに、変形角算出処理手段44で用いられる変形角推定算出用の演算式であるR=f(T/Te)の係数は、本実施形態では、予め本装置10の製造工場等でプリセットされてROM26に記憶されている。なお、これらの値は、建物損傷度判定用プログラム内に記述しておいてもよい。また、建物損傷度判定装置10に、EEPROMやフラッシュ・メモリ等を設けておき、装置10の設置者が、設置現場でマニュアル等に従って例えば建物の種類に応じてこれらの値を入力設定してメモリに記憶させるようにしてもよい。
【0037】
建物損傷度判定処理手段45は、変形角算出処理手段44により推定算出した最大層間変形角Rの大小に応じて、建物の損傷度を判定し、その判定結果を示す信号をI/Oインターフェース24を介して外部出力装置30へ送信する処理を実行するものである。具体的には、建物損傷度判定処理手段45は、推定算出した最大層間変形角Rが、例えば、3.0%以上の場合には、建物の損傷度が大きいという判定結果(従来の応急危険度判定の「危険」に相当する判定結果)を示す信号として、赤ランプ31を点灯させるための信号を外部出力装置30へ送信し、例えば、1.5%以上、3.0%未満の場合には、建物の損傷度が中程度という判定結果(例えば、従来の応急危険度判定の「要注意」に相当する判定結果)を示す信号として、黄ランプ32を点灯させるための信号を外部出力装置30へ送信し、例えば、1.5%未満の場合には、建物の損傷度が小さいという判定結果(例えば、従来の応急危険度判定の「調査済」に相当する判定結果)を示す信号として、緑ランプ33を点灯させるための信号を外部出力装置30へ送信する。なお、前述したように、判定結果は、3段階に限定されるものではない。
【0038】
加速度応答蓄積記憶手段50は、RAM25により構成され、地震応答取得処理手段41により取得した加速度データA、すなわち加速度センサ21の出力信号をA/D変換器22よりA/D変換して得られた加速度データAを、時系列に並べて蓄積記憶するものである。
【0039】
判定結果記憶手段51は、RAM25により構成され、建物損傷度判定処理手段45による判定結果を記憶するものである。
【0040】
このような本実施形態においては、以下のようにして建物損傷度判定装置10による建物の損傷度の自動判定処理が行われる。
【0041】
先ず、弾性周期Teを推定するのに適切な開始時トリガー値aを、次のようにして決定する。例えば、本実施形態では、軸組工法の木造建物による複数の試験体を用意し、これらの各試験体に地震動を入力し、加速度データAを記録する。それから、各試験体について、開始時トリガー値aを、一例として、a=20〜140cm/sの範囲で10cm/s毎に動かし、加速度データAが各開始時トリガー値aに達した時点から遡って所定時間長(一例として2秒間とする。)を加速度応答スペクトルの解析範囲(窓の大きさ)とし、その間の加速度応答スペクトルの振幅がピーク値となる卓越周期を求めることにより、弾性周期の推定値を算出する。一方、各試験体について、スイープ加振等により加振前の固有周期(弾性周期の実験値)を求める。そして、図6に示すように、これらの弾性周期の推定値と、弾性周期の実験値とを比較し、平均絶対誤差率が最も小さくなる開始時トリガー値aを選択する。本実施形態における実験では、開始時トリガー値a=100cm/sの場合に、平均絶対誤差率が5%で最小となったため、開始時トリガー値a=100cm/sを採用し、ROM26に記憶させるか、あるいは建物損傷度判定用プログラム内に記述しておく。但し、開始時トリガー値aは、a=100cm/sに限定されるものではない。また、フィルタリング周期Tf1(例えば0.1秒)も、ROM26に記憶させるか、あるいは建物損傷度判定用プログラム内に記述しておく。
【0042】
次に、地震終了付近の固有周期Tを推定するのに適切な開始時トリガー値aeqを、次のようにして決定する。図7に示すように、弾性周期Teから地震終了付近の固有周期Tへの伸びを示す指標値(T/Te)と、損傷度に対応した最大層間変形角Rとを比較する。この際、上記の通り決定した開始時トリガー値a=100cm/sの場合に求められた卓越周期を弾性周期Teとして用い、終了時トリガー値aeqは、一例として、aeq=10cm/s、aeq=30cm/s、aeq=50cm/s、aeq=70cm/sと動かし、各試験体について、時間軸を逆方向に辿って加速度データAが各終了時トリガー値aeq(cm/s)に達した時点から所定時間長(一例として2秒間とする。)を加速度応答スペクトルの解析範囲(窓の大きさ)とし、その間の加速度応答スペクトルの振幅がピーク値となる卓越周期を求めることにより、地震終了付近の固有周期Tの推定値を算出する。一方、各試験体について、実際の最大層間変形角Rを測定する。そして、周期の伸びの指標値(T/Te)と、最大層間変形角Rとの相関係数kが最も大きくなる終了時トリガー値aeqを選択する。本実施形態における実験では、終了時トリガー値aeq=50cm/sの場合に、相関係数k=0.86と最大となったため、終了時トリガー値aeq=50cm/sを採用し、ROM26に記憶させるか、あるいは建物損傷度判定用プログラム内に記述しておく。但し、終了時トリガー値aeqは、aeq=50cm/sに限定されるものではない。また、フィルタリング周期Tf2(例えば0.2秒)も、ROM26に記憶させるか、あるいは建物損傷度判定用プログラム内に記述しておく。
【0043】
さらに、終了時トリガー値aeq=50cm/sの場合の周期の伸びの指標値(T/Te)と、最大層間変形角Rとの対応関係(図7参照)に基づき、変形角推定算出用の演算式であるR=f(T/Te)の係数を決定し、ROM26に記憶させるか、あるいは建物損傷度判定用プログラム内に記述しておく。
【0044】
それから、図3において、ROM26に記憶された建物損傷度判定用プログラムを立ち上げ、建物の損傷度の自動判定処理を開始する(ステップS1)。
【0045】
続いて、地震応答取得処理手段41により、地震の開始判定、加速度応答の入力および保存、地震の終了判定の各処理を実行する(ステップS2:ステップS201〜S206)。すなわち、図4において、加速度センサ21の出力信号をA/D変換器22よりA/D変換して得られた加速度データAを入力する(ステップS201)。そして、入力した加速度データAが、予め定められた閾値α(cm/s)以上であるか否かを判断し(ステップS202)、加速度データAが閾値α以上であった場合には、地震開始と判断し、加速度データAを加速度応答蓄積記憶手段50に保存し(ステップS203)、一方、加速度データAが閾値α以上でなかった場合には、再び、ステップS201に戻り、以降、地震開始と判断されるまで、ステップS201,S202の処理を繰り返す。
【0046】
ステップS202で地震開始(A≧α)と判断し、ステップS203で加速度データAを保存した後、再び、加速度センサ21の出力信号をA/D変換器22よりA/D変換して得られた加速度データAを入力する(ステップS204)。そして、入力した加速度データAが、予め定められた閾値α(cm/s)以上であるか否かを判断し(ステップS205)、加速度データAが閾値α以上であった場合には、地震継続中と判断し、ステップS203に戻り、以降、ステップS205で地震継続中(A≧α)と判断されている限り、ステップS203〜S205の処理を繰り返す。
【0047】
一方、ステップS205で加速度データAが閾値α以上でなかった場合(A<α)には、加速度データAが閾値α未満である状態がΔt秒間(例えば1秒間等)続いているか否か、すなわち加速度データAが閾値α以上でないと判断されてからΔt秒間が経過しているか否かを判断し(ステップS206)、未だΔt秒間が経過していない場合には、ステップS203に戻り、既にΔt秒間が経過していた場合には、地震終了と判断し、次のステップS3の処理に移る。なお、Δt秒間が経過しているか否かの判断は、タイマーを用いてもよく、ステップS206を通過するループ中にカウンタを設けておき、カウンタ数が一定数以上になったときに、Δt秒間が経過したと判断してもよい。
【0048】
それから、図3において、弾性周期決定処理手段42により、地震応答取得処理手段41により加速度応答蓄積記憶手段50に蓄積記憶された加速度データAを用いて、加速度データAが開始時トリガー値a(cm/s)に達した時点を判定し、この開始時トリガー値aに達した時点から遡って所定時間長(例えば2秒間)の加速度データA(図5参照)を用いて加速度応答スペクトルの解析を行い、得られた解析結果のうち、例えば周期0.1〜2.0秒間において加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物1の弾性周期Teとして決定する(ステップS3)。
【0049】
続いて、地震終了付近固有周期決定処理手段43により、地震応答取得処理手段41により加速度応答蓄積記憶手段50に蓄積記憶された加速度データAを用いて、加速度データAが、時間軸を逆方向(図5中では、右側から左側へ向かう方向)に辿って終了時トリガー値aeq(cm/s)に達した時点を判定し、この終了時トリガー値に達した時点aeqから所定時間長(例えば2秒間)の加速度データA(図5参照)を用いて加速度応答スペクトルの解析を行い、得られた解析結果のうち、周期0.2〜2.0秒間において加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を建物1の地震終了付近の固有周期Tとして決定する(ステップS4)。
【0050】
その後、変形角算出処理手段44により、地震終了付近固有周期決定処理手段43により決定した地震終了付近の固有周期Tを、弾性周期決定処理手段42により決定した弾性周期Teで除することにより、地震前後の周期の伸びの指標値(T/Te)を算出し、変形角推定算出用の演算式であるR=f(T/Te)を用いて、算出した周期の伸びの指標値(T/Te)に対応する最大層間変形角Rを推定算出する(ステップS5)。
【0051】
それから、建物損傷度判定処理手段45により、変形角算出処理手段44により推定算出した最大層間変形角Rの大小に応じて、建物の損傷度を判定し、その判定結果を示す信号をI/Oインターフェース24およびケーブル2を介して外部出力装置30へ送信する(ステップS6)。なお、無線送信でもよい。すると、外部出力装置30の赤ランプ31、黄ランプ32、緑ランプ33のいずれかが点灯する。この際、建物損傷度判定処理手段45は、判定結果記憶手段51を参照し、判定結果記憶手段51に記憶された前回までの判定結果と、今回の判定結果とが同じときには(最大層間変形角Rが大きくなっても、判定結果が同じレベルであることはあり得る。)、外部出力装置30への判断結果を示す信号の送信処理を行わない。但し、再度、同じ判定結果を示す信号の送信処理を行ってもよい。一方、判定結果記憶手段51に記憶された前回までの判定結果よりも、今回の判定結果が悪い結果であるときには、外部出力装置30へ今回の判定結果を示す信号の送信処理を行うとともに、判定結果記憶手段51の記憶データを、今回の判定結果を示すデータで更新する。従って、判定結果記憶手段51には、その時点までの最も悪い判定結果を示すデータが記憶されることになる。
【0052】
その後、判定結果記憶手段51に記憶された判定結果が、最も悪い判定結果(例えば、従来の応急危険度判定の「危険」に相当する判定結果)であるか否かを判断し(ステップS7)、最も悪い判定結果である場合には、今後、それ以上に悪い判定結果が出ることはあり得ないので、建物損傷度判定処理を終了する(ステップS8)。一方、最も悪い判定結果でない場合には、今後、さらに悪い判定結果が出る可能性があるため、次の地震(余震)に備え、ステップS2に戻る。
【0053】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、地震波による建物1の加速度応答スペクトルを利用して建物1の地震前後の周期の伸びを捉え、周期の伸びから建物1の最大層間変形角Rを推定することにより、建物1の損傷度(被害レベル、余震による倒壊危険性)を判定するので、建物1に設置した単一の加速度センサを用いて建物1の被害レベルを自動判定することができる。このため、前述した特許文献1,2のような2個の加速度センサを用いた大がかりな装置の場合に比べ、装置の簡易化や低コスト化を図ることができる。そして、単独の加速度センサを用いるので、少なくとも本体20の部分についてはオンボードでプログラムを搭載した構成とすることができるため、安価で小さな装置を実現することができ、設置の容易化を図ることもできる。従って、被害が最も生じる老朽化した木造家屋等の既存不適格建物に用いることもでき、装置を普及させることができる。
【0054】
なお、建物1は、上から見て一般に長方形に近い形をしていて、長辺方向と短辺方向の2方向に揺れるので、本実施形態では、加速度センサ21により、2方向の波形を計測し、2方向のうち損傷(最大層間変形角R)が大きい方を採用する構成としているが、このような構成であっても、2方向や3方向を計測可能な加速度センサ21を設置することで、単一の加速度センサを実現することができる。また、2方向を計測するにあたり、1方向しか計測することができない加速度センサを2方向に設置する構成とする場合には、2個の加速度センサが必要となるが、このような構成とする場合であっても、前述した特許文献1,2で2方向を計測しようとすれば4個の加速度センサが必要になるので、これに比べれば、装置の簡易化や低コスト化を図ることができることに変わりはない。
【0055】
また、建物1の加速度応答スペクトルを利用して建物1の地震前後の周期の伸びを捉え、周期の伸びから建物1の最大層間変形角Rを推定するので、加速度センサ21により計測した加速度を2回積分して変位を求めるといった処理を行う必要はないため、2回積分のときのような測定ノイズの影響を受けることはなく、単一の加速度センサ21でも、比較的精度の良い判定を行うことができる。また、地震波形ではなく、スペクトルで解析を行うので、計測精度がやや落ちる安価な加速度センサを用いても、実用上支障のない判定精度を得ることができる。これらに、加速度を2回積分して求めた変位の情報を合わせればより高い精度で建物の変形角を推定することもできる。
【0056】
さらに、建物1の損傷度の判定処理は、演算処理手段40により自動的に行われ、その判定結果は、外部出力装置30により出力されるので、各建物に建物損傷度判定装置10を設置しておくことで、従来のように人の目視により人海戦術で判定を行い、その判定結果を示す「危険」、「要注意」「調査済」等の紙を各建物に順次貼っていく場合に比べ、各建物において迅速に判定処理を行い、その判定結果を各建物の住人に伝達することができる。このため、本震直後に発生する大きな余震にも対応することができる。
【0057】
そして、弾性周期決定処理手段42や地震終了付近固有周期決定処理手段43は、フィルタリング周期Tf1やフィルタリング周期Tf2よりも短い周期のスペクトルの振幅を除いて、振幅がピーク値をとる卓越周期を求めて弾性周期Teや地震終了付近の固有周期Tを決定する構成とされているので、加速度データAにノイズが乗ったとき等に、加速度センサ21の性能や種別等に応じてフィルタをかける範囲の調整を行うことができる。例えば、高性能の加速度センサ21を用いることにより、フィルタリング周期Tf1やフィルタリング周期Tf2をゼロにする(つまり、フィルタリング処理をしない)ことも可能となる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0059】
例えば、前記実施形態では、変形角算出処理手段44は、変形角推定算出用の演算式であるR=f(T/Te)を用いて、周期の伸びの指標値(T/Te)からこれに対応する最大層間変形角Rを求める構成とされていたが、周期の伸びの指標値(T/Te)と最大層間変形角Rとの対応関係を定めた変形角推定算出用のテーブルを用いて、周期の伸びの指標値(T/Te)からこれに対応する最大層間変形角Rを求める構成としてもよい。
【0060】
そして、前記実施形態では、1つの本体20に対し、1つの外部出力装置30が設けられていたが、1つの本体20に対し、複数の外部出力装置30を設けてもよく、外部出力装置30の設置個数は任意である。
【0061】
また、前記実施形態では、外部出力装置30は、建物1内の台所や居間等の居室空間に設置されていたが、例えば、建物1の外壁、庭、玄関の外側等、建物1の外部に設けてもよい。
【0062】
さらに、前記実施形態では、外部出力装置30は、ランプ点灯により、建物損傷度を住人に伝達する構成となっていたが、ランプ点灯と併せて音声報知を行う構成としてもよく、ランプ点灯に代えて、またはランプ点灯とともにディスプレイへの文字表示を行う構成としてもよい。
【0063】
そして、前記実施形態では、建物損傷度判定装置10は、本体20と外部出力装置30とにより構成されていたが、これらを一体化させた構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明の建物損傷度判定装置および建物損傷度判定方法は、例えば、大地震で被害を受ける可能性の高い老朽化した木造家屋等の被害レベルを判定する場合などに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0065】
1 建物
10 建物損傷度判定装置
21 加速度センサ
30 外部出力装置
40 演算処理手段
42 弾性周期決定処理手段
43 地震終了付近固有周期決定処理手段
44 変形角算出処理手段
45 建物損傷度判定処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置した振動センサと、この振動センサにより計測した振動データを用いて計算機による演算処理を実行する演算処理手段と、この演算処理手段による処理結果を出力する外部出力装置とを備え、
前記演算処理手段は、
前記振動センサにより計測した地震前の前記建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を前記建物の弾性周期として決定する処理を実行する弾性周期決定処理手段と、
前記振動センサにより計測した地震後の前記建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を前記建物の地震終了付近の固有周期として決定する処理を実行する地震終了付近固有周期決定処理手段と、
この地震終了付近固有周期決定処理手段により決定した前記地震終了付近の固有周期を前記弾性周期決定処理手段により決定した前記弾性周期で除することにより、地震前後の周期の伸びの指標値を算出し、周期の伸びの指標値と前記建物の変形角との対応関係を予め定めた変形角推定算出用の演算式またはテーブルを用いて、算出した前記周期の伸びの指標値に対応する変形角を推定算出する処理を実行する変形角算出処理手段と、
この変形角算出処理手段により推定算出した前記変形角の大小に応じて前記建物の損傷度を判定する処理を実行する建物損傷度判定処理手段とを含んで構成され、
前記外部出力装置は、前記建物損傷度判定処理手段による判定結果を出力する構成とされている
ことを特徴とする建物損傷度判定装置。
【請求項2】
前記振動センサは、加速度センサであり、
前記振動データは、加速度データであり、
前記弾性周期決定処理手段は、
前記加速度センサにより計測した加速度データの値が、予め定められた開始時トリガー値に達した時点から遡って所定時間長の加速度データを用いて、加速度応答スペクトルの解析を行い、加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を前記建物の弾性周期として決定する処理を実行する構成とされ、
前記地震終了付近固有周期決定処理手段は、
前記加速度センサにより計測した加速度データの値が、時間軸を逆方向に辿って予め定められた終了時トリガー値に達した時点から所定時間長の加速度データを用いて、加速度応答スペクトルの解析を行い、加速度応答スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を前記建物の弾性周期として決定する処理を実行する構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の建物損傷度判定装置。
【請求項3】
前記弾性周期決定処理手段および/または前記地震終了付近固有周期決定処理手段は、
予め定められた周期よりも短い周期のスペクトルの振幅を除いて、振幅がピーク値をとる卓越周期を求める構成とされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の建物損傷度判定装置。
【請求項4】
建物に振動センサを設置し、この振動センサにより地震前後を含む地震時の振動データを計測し、
計測した地震前の前記建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を前記建物の弾性周期として決定するとともに、計測した地震後の前記建物の振動データを用いてスペクトル解析を行い、スペクトルの振幅がピーク値をとる卓越周期を求め、この卓越周期を前記建物の地震終了付近の固有周期として決定した後、
前記地震終了付近の固有周期を前記弾性周期で除することにより、地震前後の周期の伸びの指標値を算出し、周期の伸びの指標値と建物の変形角との対応関係を予め定めた変形角推定算出用の演算式またはテーブルを用いて、算出した前記周期の伸びの指標値に対応する変形角を推定算出し、推定算出した前記変形角の大小に応じて前記建物の損傷度を判定する
ことを特徴とする建物損傷度判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−18069(P2012−18069A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155304(P2010−155304)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)