説明

建築用面板を利用したスピーカー

【課題】建築用面板を振動子によって効果的に振動させることができ、また、修理やメンテナンス等において将来的に行われることがある振動子の交換作業を容易にすることができる構造の、建築用面板を利用したスピーカーを提供する。
【解決手段】振動子3の背面側に、弾力性を有する振動吸収材4を介して、振動子固定材5が設けられ、該固定材5が建築用面板2に固定されることにより、振動吸収材4が固定材5と振動子3との間に挟まれて圧縮され、その復元力で振動子3が建築用面板2の背面部に対して、無接着状態で、弾力的に押し付けられた密着状態となって、取り付いている。振動吸収材4の弾力性を利用し、固定材4を建築用面板2の背面側に固定状態に残したまま、振動子3を脱着することができるようになされているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用面板を利用したスピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
室内にスピーカーを設置して音楽や音声を屋内に流すことは、従来より行われているが、屋内にスピーカーを設置すると、屋内空間を狭くしてしまったり、スピーカーの存在によって屋内の意匠性を損なわせてしまったりするなどの問題があることから、本発明者は、先の出願(特願2009−180153号)において、建築用面板、例えば内装ボードの背面部に振動子を設け、該振動子の振動を前記内装ボードに受けさせて内装ボードを振動させ、それにより、内装ボードの正面側から発音がなされるように構成された、建築用面板を利用したスピーカーを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−149173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構造のスピーカーにおいて、内装ボード等の建築用面板を振動子によって効果的に振動させるためには、振動子を建築用面板に密着状態にする必要があるところ、振動子を接着剤で建築用面板の背面部に直接接着してしまうと、接着剤が振動子の振動に悪影響を及ぼしてしまいやすく、また、固定金物を用いて振動子を建築用面板に密着状態に取り付けると、振動子の振動が固定金物にも直接伝わってしまい、いずれの方法も、建築用面板を振動子によって効果的に振動させるうえで万全の方策とはいえないものであった。
【0005】
また、振動子は、修理やメンテナンス等において将来的に交換しなければならないことがあるが、接着剤では振動子の取り外しが容易ではないし、固定金物では、振動子の取り外しにおいて固定金物も取り外す必要があり、振動子の交換作業が容易でないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、建築用面板を振動子によって効果的に振動させることができ、また、修理やメンテナンス等において将来的に行われることがある振動子の交換作業を容易にすることができる構造の、建築用面板を利用したスピーカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、建築用面板が、その背面部に設けられた振動子の振動を受けて振動することにより、正面側から発音するようになされた、建築用面板を利用したスピーカーであって、
前記振動子の背面側に、弾力性を有する振動吸収材を介して、振動子固定材が設けられ、該固定材が建築用面板に固定されることにより、振動吸収材が固定材と振動子との間に挟まれて圧縮され、その復元力で振動子が建築用面板の背面部に対して、無接着状態で、弾力的に押し付けられた密着状態となって、取り付いていることを特徴とする、建築用面板を利用したスピーカーによって解決される(第1発明)。
【0008】
このスピーカーでは、振動子が、建築用面板の背面部に対して、振動吸収材の弾性復元力によって弾力的に押し付けられた密着状態となっており、その密着状態は接着剤無しで形成されており、また、振動子の振動は、振動吸収材に吸収されて振動子固定材に直接伝わるのが抑制ないしは阻止されるようになされていているので、振動子による建築用面板の振動を効果的なものにすることができる。
【0009】
第1発明において、前記振動吸収材の弾力性を利用し、固定材を建築用面板の背面側に固定状態に残したまま、振動子を脱着することができるようになされている場合は(第2発明)、修理やメンテナンス等において将来的に行われることがある振動子の交換作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の、建築用面板を利用したスピーカーは、以上のとおりのものであるから、振動子による建築用面板の振動を効果的なものにすることができる。また、修理やメンテナンス等において将来的に行われることがある振動子の交換作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態のスペーサー構造を示すもので、図(イ)は振動子取付け前の状態を示す一部断面斜視図、図(ロ)は振動子取付け後の状態を示す一部断面斜視図である。
【図2】図(イ)は振動子の取付け部分を示す正面図、図(ロ)は同断面平面図、図(ハ)は同断面側面図、図(ニ)は図(イ)のI−I線断面矢視図である。
【図3】同スピーカーの一部断面分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図3に示す実施形態のスピーカー1において、2は建築用面板、3は振動子、4は弾力性を有する振動吸収材、5は振動子固定材である。
【0014】
建築用面板2は、建物の屋内の壁や、天井、床等に用いられる面板で、例えば、合板や石こうボードなどからなっており、振動吸収材4はゴム状物などからなっている。
【0015】
振動子固定材5は、スペーサー6,7,8と押さえ材9とで構成されている。スペーサー6,7,8は、振動子3と同じ厚さ寸法を備え、振動子3を配置するスペース10を下方、右方、左方の三方から囲み、上方において開放するよう、「コ」の字状に配置される3つの部材で構成され、押さえ材9は、振動子3の配置スペース10とこれら3つのスペーサー6,7,8の背後とを覆いうる平面サイズを備えたものからなっている。
【0016】
スペーサー6,7,8は、建築用面板2の背面部に、上方開放の振動子配置スペース10を区画するように配置されると共に、それらの背後に振動吸収材4を介して押さえ材9が配置され、該押さえ材9は、振動吸収材4と各スペーサー6,7,8を貫いて建築用面板2に打ち込まれたビス11…によって、振動吸収材4が押さえ材9と各スペーサー6,7,8とに挟み込まれて圧縮変形状態となるように取り付けられている。
【0017】
そして、振動子3は、図1(イ)(ロ)に示すように、振動子配置スペース10の上方開放部10aを通じて、振動子配置スペース10内に挿入配置され、上記のように、各スペーサー6,7,8が振動子3と同じ厚さ寸法で、かつ、押さえ材9は振動吸収材4を各スペーサー6,7,8との間で圧縮変形状態となるようにビス11…で取り付けられていることにより、振動吸収材4の復元力により、建築用面板2の背面部に対して、無接着状態で、弾力的に押し付けられた密着状態となって取り付いた状態となる。
【0018】
また、振動子3は、上記の弾力的押し付け密着状態を利用して、振動子配置スペース10内において、固定材5を構成するスペーサー6,7,8のすべてから離間した状態に配置されており、振動子3の振動がスペーサー6,7,8に直接伝わるのが抑制ないしは阻止されるようになされている。
【0019】
上記のスピーカー1では、振動子3が、建築用面板2の背面部に対して、振動吸収材4の弾性復元力によって弾力的に押し付けられた密着状態となっており、その密着状態は接着剤無しで形成されており、また、振動子3の振動は、振動吸収材4に吸収されて固定材5を構成する押さえ材9に直接伝わるのが抑制ないしは阻止され、更に、固定材5を構成するスペーサー6,7,8と振動子3も離間していて振動子3の振動がスペーサー6,7,8に直接伝わるのが抑制ないしは阻止されていて、それらによって、振動子3による建築用面板2の振動を効果的なものにすることができる。
【0020】
また、振動子3の交換は、振動吸収材4の弾力性を利用して、即ち、振動子配置スペース10内に面する振動吸収材4の部分を工具などを使用して圧縮変形させた状態にし、あるいは、振動子配置スペース10内に面する振動吸収材4の復元力に抗するようにして、振動子3を、振動子配置スペース10の上方開放部10aを通じて引き上げていけば、取り出すことができ、新たな振動子の取付けは、上に延べたようにして行えばよく、修理やメンテナンス等において将来的に行われることがある振動子3の交換作業を容易にすることができる。
【0021】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、振動吸収材や振動子固定材として、特定の構成形態を備えたものを採用しているが、振動吸収材や振動子固定材の具体的形態に制限はなく、種々の形態をしていてよい。また、振動子の交換や設置に用いられる設置スペースの開放部は、上方に限らず、どの位置に備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…スピーカー
2…建築用面板
3…振動子
4…振動吸収材
5…振動子固定材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用面板が、その背面部に設けられた振動子の振動を受けて振動することにより、正面側から発音するようになされた、建築用面板を利用したスピーカーであって、
前記振動子の背面側に、弾力性を有する振動吸収材を介して、振動子固定材が設けられ、該固定材が建築用面板に固定されることにより、振動吸収材が固定材と振動子との間に挟まれて圧縮され、その復元力で振動子が建築用面板の背面部に対して、無接着状態で、弾力的に押し付けられた密着状態となって、取り付いていることを特徴とする、建築用面板を利用したスピーカー。
【請求項2】
前記振動吸収材の弾力性を利用し、固定材を建築用面板の背面側に固定状態に残したまま、振動子を脱着することができるようになされている請求項1に記載の建築用面板を利用したスピーカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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