説明

建築設計製図に於ける屋根伏せ図作成用型板

【課題】 建築設計製図の屋根伏せ図の作成に於いて、複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図の作成は大変困難である。このことは従来、屋根伏せ図の作成において、作成時に屋根の高さを考慮に入れ、屋根を立体的な概念でとらえ作成することが多かったため、作業が大変難しく感じられた。
【解決手段】 本発明は、同一寸法の方形の硬質プラスチック製透明板で作られた第一型板(1)、第二型板(2)、第三型板(3)の3枚1組から成る屋根伏せ図作成用型板であって、作図を助けるための図案A、図案B、図案Cの図柄を構成した溝が穿たれていて、この3枚1組の型板を使用して屋根伏せ図が容易に描けるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築設計製図に於ける屋根伏せ図作成の単純化を図る型板に関する。
【背景技術】
なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
建築設計製図の屋根伏せ図の作成に於いて、複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図の作成は大変困難である。このことは従来、屋根伏せ図の作成に於いて、作成時に屋根の高さを考慮に入れ、屋根を立体的な概念でとらえ作成することが多かったため、作業が大変難しく感じられた。
【0003】
本発明は、そのような複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図を描く場合、その描く手順を明確にし、屋根伏せ図作成用の型板を用いて作業を単純化し、屋根伏せ図を描くことで屋根を立体としてではなく全て平面としてとらえ、より容易な屋根伏せ図の作成の実現を目的とするものである。
【問題を解決するための手段】
【0004】
そして、本発明は上記目的を達成するために、まず屋根伏せ図を作成するための明確な手順に従い、複雑な平面形状をなす建築物の平面を屋根伏せ図の作成が可能なように分割する第一型板(1)によって、定める規則にのっとり順序立てて分割する。但し、基本的に寄棟屋根作成の場合は四角形に、方形屋根作成の場合は、L字型に分割するものとする。
【0005】
次に、複雑な平面形状をなす建築物の平面を分割した順序に従い、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の第二型板(2)と方形屋根の屋根伏せ図作成用の第三型板(3)のそれぞれの型板を使用し、屋根を立体としてではなく全て平面としてとらえ、作図することにより、作業の単純化を図る。
【0006】
以上を上記の型板を用いて実施するが、この型板は図1に示すように同一寸法の方形の硬質プラスチック製透明板で作られた第一型板(1)、第二型板(2)、第三型板(3)の3枚1組から成る屋根伏せ図作成用型板であって、これら3枚の型板のいずれにも鉛筆の芯の太さが入る程度の溝で構成された複数個の図案が穿たれている。
【0007】
第一型板(1)の図案Aは、開口部(イ)を上に向けたコ字状であって、その底辺の長さがnセンチメートルの底辺溝(11)、右辺及び左辺の長さが(n+2)センチメートルの右辺溝(12)と左辺溝(13)、この右辺溝(12)の中心線と底辺溝(11)の中心線との交点より、右辺溝(12)の中心線上に寸法がnセンチメートル上方の箇所から底辺溝(11)に平行な横棒状で中心線の長さ(n−1)センチメートルの横棒溝(14)から成る図案であって、この図案Aには、右辺溝(12)と左辺溝(13)との間を結ぶ線が右辺溝(12)の中心線上において、底辺溝(11)の中心線から上方に1センチメートル刻みの位置に実線と破線で表された目盛(15)で描かれ、又、横棒溝(14)からもその中心線の左端から右方へ1センチメートル刻みの位置に、1センチメートルずつ長さを増す下側垂線が破線で表された目盛(16)で描かれ、第一型板(1)には、この図案Aがn値を1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されている。
【0008】
第二型板(2)の図案Bは、45°、45°、90°の内角を持つ底辺の長さがnセンチメートルの底辺溝(21)、右辺と左辺の長さが同じである右辺溝(22)と左辺溝(23)から成る二等辺三角形の右辺溝(22)の中心線と左辺溝(23)の中心線の交点である二等辺三角形(左辺溝(23)は二等辺三角形の頂点(24)に至る所で溝がつながっていない)の頂点(24)から、底辺溝(21)の中心線の長さnセンチメートルと同じ長さの垂線を立て、それに溝を穿った垂線溝(25)とし、その垂線溝(25)の中心線である垂線をn等分した各点から右下の方向に二等辺三角形の右辺溝(22)の中心線と平行かつ同じ長さの斜め線をn本引き、それに溝を穿った斜め溝(26)、二等辺三角形の左辺溝(23)側にも右辺溝(22)側の場合と同じ要領で左右対称に、垂線溝(25)の中心線である垂線をn等分した各点から左下の方向に二等辺三角形の左辺溝(23)の中心線と平行かつ同じ長さの斜め線を仮想線としてn本想定し、この想定したそれぞれの仮想線の中点に、そして底辺溝(21)の中心線の位置から上方に引いた仮想垂線上に並ぶように穿たれた、鉛筆の芯の太さが入る程度の丸穴(27)から成る図案Bであって、第二型板(2)には、この図案Bがn値を1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されてる。
【0009】
第三型板(3)の図案Cは、45°、45°、90°の内角を持つ底辺の長さがnセンチメートルの底辺溝(31)、右辺と左辺の長さが同じである右辺溝(32)と左辺溝(33)から成る二等辺三角形の右辺溝(32)の中心線と左辺溝(33)の中心線の交点である二等辺三角形(左辺溝(33)は二等辺三角形の頂点(34)に至る所で溝がつながっていない)の頂点(34)から、左辺溝(33)の中心線を右上方へ延ばした延長線上に底辺溝(31)の中心線の右端より立てた仮想垂線との交点(35)を求め、二等辺三角形の頂点(34)と、今、求めた交点(35)を結び、その結んだ線の長さをn等分した各点から右下の方向に二等辺三角形の右辺溝(32)と平行な斜め線を、底辺溝(31)の中心線の右端より立てた仮想垂線に当たる所までn本引き、それに溝を穿った斜め溝(36)と、先ほど求めた二等辺三角形の頂点(34)と交点(35)を結んだ線に溝を穿った延長線溝(37)から成る図案Cであって、第三型板(3)には、この図案Cがn値を1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されてる。
【0010】
上記、第一型板(1)、第二型板(2)、第三型板(3)にそれぞれ並べて配置された図案A、図案B、図案Cの個数が、同じか又は、一つ違いであることを特徴とする建築設計製図に於ける屋根伏せ図作成用型板である。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明の型板はどのように複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図でも、容易に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を一例に付き、図1〜図29を用いて説明する。
【0013】
この型板は、それぞれ大きさが縦20、5センチメートル、横24センチメートルの同一寸法の方形で厚さが1ミリメートルの硬質プラスチック製透明板で作られた第一型板(1)、第二型板(2)、第三型板(3)の3枚1組からなる屋根伏せ図作成用型板であって、これら3枚の型板のいずれにも鉛筆の芯の太さが入る程度の溝で構成された複数個の図案が穿たれている。
【0014】
まず、第一型板(1)を図1に示す。
【0015】
第一型板(1)の図案Aは、開口部(イ)を上に向けたコ字状であって、その底辺の長さが8センチメートルの底辺溝(11)、右辺及び左辺の長さが10センチメートルの右辺溝(12)と左辺溝(13)、この右辺溝(12)の中心線と底辺溝(11)の中心線との交点より、右辺溝(12)の中心線上に寸法が8センチメートル上方の箇所から底辺溝(11)に平行な横棒状で中心線の長さ7センチメートルの横棒溝(14)から成る図案であって、この図案Aには、右辺溝(12)と左辺溝(13)との間を結ぶ線が右辺溝(12)の中心線上において底辺溝(11)の中心線から上方に1センチメートル刻みの位置に実線と破線で表された目盛(15)で描かれ、又、横棒溝(14)からもその中心線の左端から右方へ1センチメートル刻みの位置に、1センチメートルずつ長さを増す下側垂線が破線で表された目盛(16)で描かれ、第一型板(1)には、この図案Aが底辺溝(11)の中心線の長さの値と右辺溝(12)の中心線及び左辺溝(13)の中心線の底辺溝(11)の中心線から横棒溝(14)の中心線の高さまでの長さの値を8センチメートルから2センチメートルまで1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されている。
【0016】
次に、第二型板(2)を図1に示す。
【0017】
第二型板(2)の図案Bは、45°、45°、90°の内角を持つ底辺の長さが8センチメートルの底辺溝(21)、右辺と左辺の長さが同じである右辺溝(22)と左辺溝(23)から成る二等辺三角形の右辺溝(22)の中心線と左辺溝(23)の中心線の交点である二等辺三角形(左辺溝(23)は二等辺三角形の頂点(24)に至る所で溝がつながっていない)の頂点(24)から、底辺溝(21)の中心線の長さ8センチメートルと同じ長さの垂線を立て、それに溝を穿った垂線溝(25)とし、その垂線溝(25)の中心線である垂線を8等分した各点から右下の方向に二等辺三角形の右辺溝(22)の中心線と平行かつ同じ長さの斜め線を8本引き、それに溝を穿った斜め溝(26)、二等辺三角形の左辺溝(23)側にも右辺溝(22)側の場合と同じ要領で左右対称に、垂線溝(25)の中心線である垂線を8等分した各点から左下の方向に二等辺三角形の左辺溝(23)の中心線と平行かつ同じ長さの斜め線を仮想線として8本想定し、この想定したそれぞれの仮想線の中点に、そして底辺溝(21)の中心線の位置から上方に引いた仮想垂線上に並ぶように、穿たれた鉛筆の芯の太さが入る程度の丸穴(27)から成る図案Bであって、第二型板(2)には、この図案Bが底辺溝(21)の中心線の長さの値と二等辺三角形の頂点(24)から立てた垂線溝(25)の中心線の長さの値を8センチメートルから1センチメートルまで1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されている。
【0018】
最後に、第三型板を図1に示す。
【0019】
第三型板(3)の図案Cは、45°、45°、90°の内角を持つ底辺の長さが8センチメートルの底辺溝(31)、右辺と左辺の長さが同じである右辺溝(32)と左辺溝(33)から成る二等辺三角形の右辺溝(32)の中心線と左辺溝(33)の中心線の交点である二等辺三角形(左辺溝(33)は二等辺三角形の頂点(34)に至る所で溝がつながっていない)の頂点(34)から、左辺溝(33)の中心線を右上方へ延ばした延長線上に底辺溝(31)の中心線の右端より立てた仮想垂線との交点(35)を求め、二等辺三角形の頂点(34)と、今、求めた交点(35)を結び、その結んだ線の長さを8等分した各点から右下の方向に二等辺三角形の右辺溝(32)と平行な斜め線を、底辺溝(31)の中心線の右端より立てた仮想垂線に当たる所まで8本引き、それに溝を穿った斜め溝(36)と、先ほど求めた二等辺三角形の頂点(34)と交点(35)を結んだ線に溝を穿った延長線溝(37)から成る図案Cであって、第三型板(3)には、この図案Cが二等辺三角形の底辺溝(31)の中心線の長さの値と底辺溝(31)の中心線の右端より立てた仮想垂線の底辺溝(31)の中心線の位置から上部の先ほど求めた交点(35)までの長さの値を8センチメートルから2センチメートルまで1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されてる。
【0020】
上記、第一型板(1)、第二型板(2)、第三型板(3)にそれぞれ並べて配置された図案A、図案B、図案Cの個数が、7か又は、8であることを特徴とする建築設計製図に於ける屋根伏せ図作成用型板である。
【0021】
次に、この3枚の型板を用いて、屋根伏せ図の作成を行う時のやり方を図2〜図25を用いて説明し、分割図や屋根伏せ図の作成時に作図線を描いた箇所は、黒い太線で示す。図2に示すような複雑な平面形状をなす建築物に寄棟屋根と方形屋根を用いて屋根伏せ図を作成するには、まず初めに、その複雑な平面形状を図3から図16に示すようないくつかの寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形、又は、方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型に分割する。ただし、この分割に関しては、四角形やL字型の大きさのより大きいものから順に分割するものとし、そしてその四角形やL字型の大きさについては、最初に分割する最も大きなもの(これは、必ず寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の長方形か方形屋根の屋根伏せ図作成用の正方形のどちらかになる。そして、このように、最初に分割する最も大きさの大きなものの分割の場合に限り、方形屋根の屋根伏せ図作成用のものでもL字型にはならず、正方形となる。)の大きさは四角形の短辺方向の辺の長さの長いものほど大きさの大きいものと考え、もしその短辺方向の辺の長さの一番長いものを持つ四角形が2つ以上ある場合には、四角形の大きさの判定をそれらの面積の大小で判断するものとする。また、その後に分割する四角形やL字型の大きさについては、既に分割済みの形(もしくはそれらの合体した形)が、それ以外の他の部分の平面形状と接している所の辺の長さの長短で判断するものとし、分割については、それらの辺の内、最も長さの長いものを一辺として考えられるものを最も大きな四角形やL字型と考え、分割する。屋根の分割においては、以上のような原則を元に行い、これらの原則を守らなければ、後の屋根伏せ図の作成ができなくなる。
【0022】
実際の作業では、まず図3のように、この複雑な平面形状の中で考えられる一番大きな四角形(短辺方向の長さが4センチメートル)を全体の平面形状より分割し、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形1とする。
【0023】
そして、図4に示すように、既に分割済みの最も大きな四角形1が、四角形1以外の他の部分の平面形状と接している所の辺の内、最も長さの長いもの(この場合3センチメートル)を1辺として考えられる最も大きさの大きい四角形を分割し、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形2とする。この時、四角形1と四角形2を分ける線のことを分割線という。そして、この場合、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形を分割するには、図1に示す第一型板(1)である四角形(方形屋根の場合はL字型)を分割する型板(型板の底辺溝(11)の中心線の長さが3センチメートルのもの)を用いて、図5のような要領で、まず型板にあるコ字状の形をした部分の底辺AB(型板の底辺溝(11)の点A,Bを結んだ中心線である線分AB、以下同様)を図の四角形1の線分A’B’に重ねて置き、次に型板の線分ABを図のように平面形状の範囲内で矢印の方向へずらす。この時、型板の線分ABのずらし得る範囲を考えると、線分ABの一部分が図の線分CDと重なる所までしかずらすことができず、これを実際にずらしてみると型板の点Aのずらし得る移動範囲は、図の点Cと重なる所までの範囲ということになる。そして、この型板を平面形状の範囲内で最大限ずらすという作業が、この場合の考えられる最も大きい四角形を求めることになっている。次に型板の作図順序である番号1から順に番号4まで黒く塗った部分を一筆書きで鉛筆等でなぞることにより、容易に寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形2が分割できる。
【0024】
但し、この型板をずらして寄棟屋根の屋根伏せ図の四角形を分担する際には、以下のような注意が必要である。それは一般に、先に分割を行った四角形の分割に使用した分割線に対して直角方向にある分割線を用い、次に分割する四角形の分割を行う場合、型板をずらす時に今、分割した四角形の分割線に対して直角方向にある次に分割しようとする四角形の分割線の長さが今、分割した四角形の分割線の長さより長くならない範囲でずらさなければならない。このことは、四角形の後に方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型を分割する際も同様である。又、L字型の分割の次に四角形やL字型の分割を行う場合も同様で、次に分割分割しようとするものが四角形である場合は、その分割線の長さが今、分割したL字型の分割線の長さ+1センチメートル(これは、この方形屋根の1辺の長さである。)より長くならないよう、又、次に分割しようとするものがL字型である場合は、その分割線の長さが今、分割したL字型の分割線の長さより長くならないよう型板のずらしえる範囲を注意する必要がある。これは、大きさの小さい四角形やL字型を分解した後に、大きさの大きい四角形やL字型の分割を行うという間違いを避けるためで、これは、四角形やL字型の分割線には、どのような場合であっても、大きさの大きい四角形やL字型から大きさの小さい四角形やL字型へと順に分割して行かなければならないという原則が存在するためである。
【0025】
以下、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形の分割は、図1に示す第一型板(1)である四角形(方形屋根の場合はL字型)を分割する型板からそれぞれの寸法に合ったものを選び、上記と同じ要領で行う。それを順に下記に記す。
【0026】
図6では、先ほどと同様の考え方で、四角形3の分割を進める。それには、既に分割済みの各四角形1と2を合体した形が、その合体した形以外の他の部分の平面形状と接している所の辺の内、最も長さの長いもの(この場合3センチメートル)を1辺として考えられる最も大きさの大きい四角形を分割し、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形3とする。
【0027】
又、図7では、既に分割済みの各四角形1と2と3を合体した形が、その合体した形以外の他の部分の平面形状と接している所の辺の内、最も長さの長いもの(この場合2センチメートル)を1辺として考えられる最も大きさの大きい四角形は、分割線その1、その2、その3を使って分割することができるもの3箇所が考えられ、これらについてはいずれの分割線から分割してもよい。
【0028】
そこで、図8は、長さ2センチメートルの分割線その1を使用して四角形4を分割した場合であるが、この分割を行った場合、今、分割した四角形4を分割した時の分割線その1と直角方向にある分割線その2’を使って行う次の四角形の分割を考えた時に支障が生じる。それは、この場合、既に分割済みの各四角形1と2と3と4を合体した形が、その合体した形以外の他の部分の平面形状と接している所の辺の内、最も長さの長いものはこの場合、分割線その2’の長さ3センチメートルであり、その辺を1辺として考えられる最も大きさの大きい四角形5を分割すると、これは先の大きさ2センチメートルの小さい四角形4を分割した後に、大きさ3センチメートルの大きい四角形5を分割するということになり、屋根の分割の原則から外れ、後でこの部分の屋根伏せ図が描けなくなる。また、このことは図9に示すように、先に長さ2センチメートルの分割線その2を使用して四角形4’の分割を行った場合でも、四角形4’の分割後、分割線その2と直角方向にある分割線その1を使って行う次の四角形の分割を考えた時に先ほどと同様の支障が生じる。それは、この場合も既に分割済みの各四角形1と2と3と4’を合体した形が、その合体した形以外の他の部分の平面形状と接している所の辺の内、最も長さの長いものはこの場合、分割線その1’の長さ3センチメートルであり、その辺を1辺として考えられる最も大きさの大きい四角形5’を分割すると、これも先ほどと同様、先の大きさ2センチメートルの小さい四角形4’を分割した後に、大きさ3センチメートルの大きい四角形5’を分割するということになり、屋根の分割の原則から外れ、後でこの部分の屋根伏せ図が描けなくなる。
【0029】
そこで、図10のように、分割線その4として、既に分割済みの各四角形1と2と3を合体した形の左下の角B’から上方と右方の2方向へ直角に、同じ長さ(2センチメートル)を伸ばした分割線を考え、それに接している方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型を分割し、L字型4とする。この場合、図10に示すように方形屋根の一辺は、それぞれ3センチメートルとなるので、図1に示す第一型板(1)である四角形(方形屋根の場合はL字型)を分割する型板(型板の底辺溝(11)の中心線の長さが3センチメートルのもの)を用いて、図11のような要領で、まず型板の点A、B、Cを図の点A’、B’、C’の位置に重ねて置き、次に型板の作図順序である番号1から順に番号5まで黒く塗った部分を一筆書きで鉛筆等でなぞることにより、容易に方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字形4が分割できる。
【0030】
さらに、図12のように、既に分割済みの各四角形1と2と3と4を合体した形が、その合体した形以外の他の部分の平面形状と接している所の辺の内、最も長さの長いもの(この場合2センチメートル)を一辺として考えられる最も大きさの大きい四角形は、分割線その3、その5を使って分割することができるもの2箇所が考えられ、これらについてもいずれの分割線から分割してもよいが、分割線その5を使用した四角形5の分割の方は先ほど方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字形4を分割した際、同時に分割がなされたため、図13のように寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形として分割線その5に接する四角形に番号5と表示するだけでよい。
【0031】
そして、その後、図14のように、既に分割済みの各四角形1と2と3と4と5を合体した形が、その合体した形以外の他の部分の平面形状と接している所の辺はこの場合、分割線その3(2センチメートル)のみとなり、その辺を一辺として考えられる最も大きさの大きい四角形を分割し、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形6とする。
【0032】
最後に、図15のように、既に分割済みの各四角形1と2と3と4と5と6を合体した形が、その合体した形以外の他の部分の平面形状と接している所の辺はこの場合、分割線その6(1センチメートル)のみとなり、その辺を一辺として考えられる最も大きさの大きい四角形を分割し、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形7する。この四角形7の分割も先ほど寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形6を分割した際、同時に分割がなされたため、寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形として分割線その6に接する四角形に番号7と表示するだけでよい。
【0033】
以上のように、屋根伏せ図を描こうとする複雑な平面形状を、7つの四角形(一部L字型)に分割したものを図16に示す。
【0034】
今、分割が終了した複雑な平面形状(図16)に、次は分割を行った時と同じ順序で屋根伏せ図を描いていく。
【0035】
まず最初、図17のような要領で分割した四角形1に寄棟屋根の屋根伏せ図を描く。
【0036】
次に、図1に示す第二型板(2)である寄棟屋根の屋根伏せ図を作成する型板(型板の底辺溝(21)の中心線の長さが3センチメートルのもの)の裏面を用いて、図18のような要領で、分割した四角形2に寄棟屋根の屋伏せ図を描く。それには、まず型板にある二等辺三角形の部分の底辺AB(型板の底辺溝(21)の点A、Bを結んだ中心線である線分AB、以下同様)を図の四角形2の線分A’B’に重ねて置き、その型板の底辺ABから最も近い谷隅(これは既に作成した屋根伏せ図の部分となす谷隅、以下同様)の所を型板の作図順序の番号1とし、そこから順に番号6まで黒く塗った部分を一筆書きで鉛筆等でなぞることにより、容易に寄棟屋根の屋根伏せ図の作図線が描ける。そして、図面に第二型板(2)の7番の○印を通る位置に描かれた作図線がある場合は、その作図線を消す。又、描けた屋根付せ図を透してその下に既に描いてある分割線も、その都度消す。以下、同じ要領で各四角形3、5、6、7の寄棟屋根の屋根伏せ図を描く。
【0037】
但し、L字型4だけは、方形屋根の屋根伏せ図作成用のものであるので図1に示す第三型板(3)である方形屋根の屋根伏せ図を作成する型板(型板の底辺溝(31)の中心線の長さが3センチメートルのもの)を用いて、図19、図20のような要領で、既に寄棟屋根の屋根伏せ図が作成した四角形1から3に方形屋根の屋根伏せ図を描く。それにはまず、図19のように表を向けた上記型板にある二等辺三角形の部分の底辺AB(型板の底辺溝(32)の点A、Bを結んだ中心線である線分AB、以下同様)をL字型4の線分A’B’に重ねて置き、その型板の底辺ABから最も近い谷隅の所を型板の作図順序の番号1とし、そこから順に番号6まで黒く塗った部分を一筆書きで鉛筆等でなぞることにより、容易に方形屋根の屋根伏せ図の作図線が描ける。
【0038】
次に、図20のような要領で、上記の型板を裏返しにし、型板にある二等辺三角形の部分の底辺BAをL字型4の線分B”A’に重ねて置き、その型板の底辺BAから最も近い谷隅の所を型板の作図順序の番号1とし、そこから順に番号6まで黒く塗った部分を一筆書きで鉛筆等でなぞることにより、容易に方形屋根の屋根伏せ図の作図線が描ける。
【0039】
これで、L字型4に方形屋根の屋根伏せ図が作成できた。
【0040】
但し、方形屋根は、図21のように作図の時、図の一方の線分A’B’から最も近い谷隅までの距離と他方の線分B’’A’から最も近い谷隅までの距離とが、常に同じであるとは限らず、図22に示すように異なる長さになる場合もある。その場合の方形屋根の屋根伏せ図作成用L字形4’’に屋根伏せ図を描く描き方は、図1に示す第三型板(3)である方形屋根の屋根伏せ図を作成する型板(型板の底辺溝(31)の中心線の長さが3センチメートルのもの)を用い、図23、図24のような要領で行う。それにはまず、図23の表を向けた上記、型板にある二等辺三角形の部分の底辺AB(型板の底辺溝(31)の点A、Bを結んだ中心線である線分AB、以下同様)を、L字形4’’の線分A’B’に重ねて置き、その型板の底辺ABから最も近い谷隅の所を型板の作図順序の番号1とし、そこから順に番号6まで黒く塗った部分を一筆書きで鉛筆等でなぞることにより、容易に方形屋根の屋根伏せ図の作図線が描ける。
【0041】
次に、図24のような要領で上記の型板を裏返しにし、型板にある二等辺三角形の部分の底辺BAをL字形4’’の線分B’’A’に重ねて置き、その型板の底辺BAから最も近い谷隅の所を型板の作図順序の番号1とし、そこから順に番号6まで黒く塗った部分を一筆書きで鉛筆等でなぞることにより、容易に方形屋根の屋根伏せ図の作図線が描ける。そしてこの場合、方形屋根の屋根伏せ図を描く時、双方、図のそれぞれの線分A’B’と線分B’’A’から最も近い谷隅までの距離が異なることから、図24の注1に示すようにそれぞれの谷線の表われる位置にズレが生じ、そのズレの長さに当たる部分の作図線は全て消す。
【0042】
又、双方、図のそれぞれの線分A’B’と線分B’’A’から最も近い谷隅までの距離が2センチメートル以上になる場合には、図24の注2に示すように型板の斜め溝(36)で描いた作図線の間に挟まれた部分に、型板の斜め溝(36)に重なる作図線がある場合は全て消す。
【0043】
上記のやり方によって、得られた屋根伏せ図の完成図を図25に示し、最後に、この3枚の型板を使って作成した、より複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図を図27(20箇所の角を持つ複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図)、図29(100箇所の角を持つ複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図)に示す。但し図26、図28は、それらの分割図を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第一型板(1) 四角形(方形屋根の場合はL字型)を分割する型板の図 第二型板(2) 寄棟屋根の屋根伏せ図を作成する型板の図 第三型板(3) 方形屋根の屋根伏せ図を作成する型板の図
【図2】複雑な平面形状をなす建築物の図
【図3】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形1を分割した図
【図4】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形2を分割した図
【図5】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形2を第一型板(1)で分割する要領の図
【図6】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形3を分割した図
【図7】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形4として分割可能なもの(分割線その1、その2、その3を使用)を示す図
【図8】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形4の分割として分割線その1を使用した場合の図
【図9】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形4’の分割として分割線その2を使用した場合の図
【図10】方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型4の分割として分割線その4を使用した場合の図
【図11】方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型4を第一型板(1)で分割する要領の図
【図12】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形5として分割可能なもの(分割線その3、その5を使用)を示す図
【図13】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形5が、もう既にL字型4を分割した際、同時に分割されていることを示す図
【図14】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形6の分割として分割線その3を使用した場合の図
【図15】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形7が、もう既に四角形6を分割した際、同時に分割されていることを示す図
【図16】複雑な平面形状をなす建築物を7つの四角形(一部L字型)に分割した図
【図17】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形1に寄棟屋根の屋根伏せ図を描いた図
【図18】寄棟屋根の屋根伏せ図作成用の四角形2に第二型板(2)で寄棟屋根の屋根伏せ図を描く要領の図
【図19】方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型4に第三型板(3)で方形屋根の屋根伏せ図を描く要領の図1
【図20】方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型4に第三型板(3)で方形屋根の屋根伏せ図を描く要領の図2
【図21】方形屋根の屋根伏せ図において図の線分A’B’から最も近い谷隅までの距離と線分B’’A’から最も近い谷隅までの距離が同じ場合の図
【図22】方形屋根の屋根伏せ図において図の線分A’B’から最も近い谷隅までの距離と線分B’’A’から最も近い谷隅までの距離が異なる場合の図
【図23】方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型4’’に第三型板(3)で方形屋根の屋根伏せ図を描く要領の図1
【図24】方形屋根の屋根伏せ図作成用のL字型4’’に第三型板(3)で方形屋根の屋根伏せ図を描く要領の図2
【図25】屋根伏せ図の完成図
【図26】20箇所の角を持つ複雑な平面形状をなす建築物の屋根の分割図
【図27】20箇所の角を持つ複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図
【図28】100箇所の角を持つ複雑な平面形状をなす建築物の屋根の分割図
【図29】100箇所の角を持つ複雑な平面形状をなす建築物の屋根伏せ図
【符号の説明】
【0045】
1 第一型板
11 底辺溝
12 右辺溝
13 左辺溝
14 横棒溝
15 右辺溝と左辺溝との間を結ぶ線が右辺溝の中心線上において底辺溝の中心線から上方に1センチメートル刻みの位置に実践と破線で表された目盛
16 横棒溝の中心線の左端から右方へ1センチメートル刻みの位置に、1センチメートルずつ長さを増す下側垂線が破線で表された目盛
イ 開口部
2 第二型板
21 底辺溝
22 右辺溝
23 左辺溝
24 二等辺三角形の頂点
25 垂線溝
26 斜め溝
27 丸穴
3 第三型板
31 底辺溝
32 右辺溝
33 左辺溝
34 二等辺三角形の頂点
35 交点
36 斜め溝
37 延長線溝
A、B、Cは、図案A、図案B、図案Cを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
この型板は、同一寸法の方形の硬質プラスチック製透明板で作られた第一型板(1)、第二型板(2)、第三型板(3)の3枚1組から成る屋根伏せ図作成用型板であって、これら3枚の型板のいずれにも鉛筆の芯の太さが入る程度の溝で構成された複数個の図案が穿たれており、
第一型板(1)の図案Aは、開口部(イ)を上に向けたコ字状であって、その底辺の長さがnセンチメートルの底辺溝(11)、右辺及び左辺の長さが(n+2)センチメートルの右辺溝(12)と左辺溝(13)、この右辺溝(12)の中心線と底辺溝(11)の中心線との交点より、右辺溝(12)の中心線上に寸法がnセンチメートル上方の箇所から底辺溝(11)に平行な横棒状で中心線の長さ(n−1)センチメートルの横棒溝(14)から成る図案であって、この図案Aには、右辺溝(12)と左辺溝(13)との間を結ぶ線が右辺溝(12)の中心線上において底辺溝(11)の中心線から上方に1センチメートル刻みの位置に実線と破線で表された目盛(15)で描かれ、又、横棒溝(14)からもその中心線の左端から右方へ1センチメートル刻みの位置に、1センチメートルずつ長さを増す下側垂線が破線で表された目盛(16)で描かれ、第一型板(1)には、この図案Aがn値を1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されており、
第二型板(2)の図案Bは、45°、45°、90°の内角を持つ底辺の長さがnセンチメートルの底辺溝(21)、右辺と左辺の長さが同じである右辺溝(22)と左辺溝(23)から成る二等辺三角形の右辺溝(22)の中心線と左辺溝(23)の中心線の交点である二等辺三角形(左辺溝(23)は二等辺三角形の頂点(24)に至る所で溝がつながっていない)の頂点(24)から、底辺溝(21)の中心線の長さnセンチメートルと同じ長さの垂線を立て、それに溝を穿った垂線溝(25)とし、その垂線溝(25)の中心線である垂線をn等分した各点から右下の方向に二等辺三角形の右辺溝(22)の中心線と平行かつ同じ長さの斜め線をn本引き、それに溝を穿った斜め溝(26)、二等辺三角形の左辺溝(23)側にも右辺溝(22)側の場合と同じ要領で左右対称に、垂線溝(25)の中心線である垂線をn等分した各点から左下の方向に二等辺三角形の左辺溝(23)の中心線と平行かつ同じ長さの斜め線を仮想線としてn本想定し、この想定したそれぞれの仮想線の中点に、そして底辺溝(21)の中心線の位置から上方に引いた仮想垂線上に並ぶように穿たれた、鉛筆の芯の太さが入る程度の丸穴(27)から成る図案Bであって、第二型板(2)には、この図案Bがn値を1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されており、
第三型板(3)の図案Cは、45°、45°、90°の内角を持つ底辺の長さがnセンチメートルの底辺溝(31)、右辺と左辺の長さが同じである右辺溝(32)と左辺溝(33)から成る二等辺三角形の右辺溝(32)の中心線と左辺溝(33)の中心線の交点である二等辺三角形(左辺溝(33)は二等辺三角形の頂点(34)に至る所で溝がつながっていない)の頂点(34)から、左辺溝(33)の中心線を右上方へ延ばした延長線上に底辺溝(31)の中心線の右端より立てた仮想垂線との交点(35)を求め、二等辺三角形の頂点(34)と、今、求めた交点(35)を結び、その結んだ線の長さをn等分した各点から右下の方向に二等辺三角形の右辺溝(32)と平行な斜め線を、底辺溝(31)の中心線の右端より立てた仮想垂線に当たる所までn本引き、それに溝を穿った斜め溝(36)と、先ほど求めた二等辺三角形の頂点(34)と交点(35)を結んだ線に溝を穿った延長線溝(37)から成る図案Cであって、第三型板(3)には、この図案Cがn値を1センチメートル刻みの整数値にして複数個、並べて配置されており、
上記、第一型板(1)、第二型板(2)、第三型板(3)にそれぞれ並べて配置された図案A、図案B、図案Cの個数が、同じか又は、一つ違いであることを特徴とする建築設計製図に於ける屋根伏せ図作成用型板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2007−98927(P2007−98927A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317398(P2005−317398)
【出願日】平成17年10月2日(2005.10.2)
【特許番号】特許第3826234号(P3826234)
【特許公報発行日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(502004445)