説明

建設中の建物の排水方法

【課題】効率良く排水できるとともに、コストの低減が可能な建設中の建物の排水方法を提供することを目的とする。
【解決手段】予め建設中の建物1の所定階1aに、他の床2よりも一段低い低床部3を形成するとともに、この低床部3に排水孔3aを設けておき、前記建物1の所定階1aに雨水等の水が流入した際に、この水を低床部3に集水するとともに排水孔3aから排水し、排水不要後、前記排水孔3aを埋めることを特徴とする建設中の建物1の排水方法。このような建設中の建物1の排水方法によって、従来とは異なり、手作業での汲み出しや、排水ポンプ等を用いた排水作業を行う必要がないので、効率良く排水できるとともに、コストの低減が可能となる。さらに、排水不要後は、前記排水孔3aを埋めるので、前記所定階1aの下部階1bへの水漏れを確実に防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設中の建物内に流入した雨水等の水を排出する建設中の建物の排水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設中のマンション等の建物には、ユニットバスを設置するためのスペースが各階に設けられている。このようなユニットバスの設置スペースの床は、他の居住スペース等の床よりも一段低く形成されている。
【0003】
ところで、建設中の建物においては、上部階や屋根、壁を構築する前に雨水等の水が流入する場合があり、この水が、他の床よりも一段低く形成されたユニットバスの設置スペース等に溜まってしまう場合があった。従来、このような水を排水する際は、手作業での汲み出しや、排水ポンプ等を用いた排水作業が行われていた。
【0004】
しかし、このように手作業で汲み出す場合、作業員の負担が大きい割に排水量を稼ぐことができず、効率が悪かった。また、排水ポンプを用いた排水作業の場合、排水ポンプの稼動に係るコストが高くなってしまうという問題があった。
そこで、例えば特許文献1に記載のようなコンクリートスラブ内に埋設されたボイド管等を利用して雨水等の水を外部に排水し、上記のような問題を解決したいという要望があった。
【特許文献1】特許第3676497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載のボイド管は中空スラブ形成用であり、上述したような雨水の排水が目的ではない。そのため、必ずしもユニットバスの設置スペース等にボイド管が敷設されてはいないので、新たに管を敷設しなければならない。また、排水が不要となった後は下部階への水漏れを防止する必要があるため、ボイド管によって中空に形成されたコンクリートスラブの中空部を埋めなければならない等、種々の不具合が生じてしまう場合があった。
そこで、このような不具合を生じさせずに雨水等を排水できるような技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の課題は、効率良く排水できるとともに、コストの低減が可能な建設中の建物の排水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、予め建設中の建物1の所定階1aに、他の床2よりも一段低い低床部3を形成するとともに、この低床部3に排水孔3aを設けておき、前記建物1の所定階1aに雨水等の水が流入した際に、この水を低床部3に集水するとともに排水孔3aから排水し、排水不要後、前記排水孔3aを埋めることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、予め建設中の建物の所定階に、他の床よりも一段低い低床部を形成するとともに、この低床部に排水孔を設けておくので、建物の所定階に流入した雨水等の水を前記低床部に集水することができ、集水した水を前記排水孔から排水することができる。すなわち、前記低床部は、他の床よりも一段低く形成されているので、建物の所定階に流入した水を自然に低床部へと集水することができる。また、この低床部に前記排水孔を設けるので、集水された水を自然排水することができる。これによって、従来とは異なり、手作業での汲み出しや、排水ポンプ等を用いた排水作業を行う必要がないので、効率良く排水できるとともに、コストの低減が可能となる。
さらに、排水不要後は、前記排水孔を埋めるので、前記所定階の下部階への水漏れを確実に防ぐことが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項1に記載の建設中の建物1の排水方法において、前記排水孔3aの下方に、前記低床部3と外部とを連通する排水管4を設けることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記排水孔の下方に、前記低床部と外部とを連通する排水管を設けるので、前記低床部に集水された雨水等の水を外部へと確実に自然排水することができる。これによって、従来とは異なり、手作業によって汲み出す必要がないので、より効率良く排水できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建物の所定階に流入した雨水等の水を、他の床よりも一段低い低床部へと自然に集水することができ、この低床部に設けられた排水孔によって、集水された水を自然排水することができる。これによって、従来とは異なり、手作業での汲み出しや、排水ポンプ等を用いた排水作業を行う必要がないので、効率良く排水できるとともに、コストの低減が可能となる。
さらに、排水不要後は、前記排水孔を埋めるので、前記所定階の下部階への水漏れを確実に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1、図2は本発明が適用される建設中の建物1の施工概要図である。この建設中の建物1は、鉄筋コンクリート造のマンションであり、図1は所定階1aの床スラブ10を斜め上方から見た斜視図であり、図2は図1に示す所定階1aの下部階1bで前記床スラブ10、すなわち天井スラブ10を下方から見上げた斜視図である。
【0014】
この建設中の建物1には、各階に複数の住戸が設けられており、これら複数の住戸には、それぞれユニットバスを設置するためのスペース3が設けられている。
そして、図1に示すように、このユニットバスを設置するためのスペース3は、浴室から水が溢れ出ないようにするために、他の居住スペースの床2よりも一段低い低床部3となっている。
したがって、例えば建設中の建物1の所定階1aに雨水等の水が流入した際は、前記他の居住スペースの床2には水が溜まりにくく、低床部3には水が溜まりやすい構造となる。これによって、この低床部3に雨水等の水を自然に集水することができるようになっている。
そして、このような低床部3に排水孔3aを設けることで、集水された水を自然に排水できるようになっている。
【0015】
なお、図示はしないが、前記低床部3を他の居住スペースの床2よりも一段低くするだけでなく、この低床部3内に、さらに床面高さの低い部分を形成することが好ましい。この時、例えば排水孔3aを最低部とし、この最低部に向かって傾斜するようにして、所定の範囲内で低床部3の床面の一部を低く形成する。
すなわち、このように低い部分に前記排水孔3aを形成することによって、図1中の矢印のように、集水された水が排水孔3aに向かうようになるので、より自然排水しやすい構造となる。
【0016】
また、前記排水孔3aを設ける際は、コンクリートを打設して床スラブ10を形成するのと同時に、この床スラブ10を貫通するようにして設け、この排水孔3aによって前記低床部3と下部階1bとを連通した状態とする。
一方、前記低床部3内の床面高さの低い部分を形成する際も、前記排水孔3aを設けるのと同時に形成作業を行うようにする。
【0017】
さらに、この排水孔3aの下方に、図2に示すように、前記低床部3と外部とを連通する排水管4を設ける。また、この排水管4を設ける際は、前記排水孔3aと同じく、床スラブ10を形成するのと同時に排水孔3aに固定して設けるようにする。
そして、このように排水管4を設けることで、前記低床部3に集水された雨水等の水を外部へと確実に自然排水することができる。これによって、従来とは異なり、手作業によって汲み出す必要がないので、より効率良く排水できるようになっている。
なお、本実施の形態においては、この排水管4として例えば電気配線用配管等のホース状のものが用いられる。
【0018】
また、前記所定階1aには複数の住戸が設けられているので、これら住戸の各低床部3に排水管4をそれぞれ設けるとともに、これら排水管4を同方向に延出して設け、排水ルートを確保する。
この時、排水管4は天井スラブから突出する複数の吊部材5によって吊設支持する。つまり、例えば先端がフック状に形成された吊部材5を用いての吊設支持や、排水管4と吊部材5とをワイヤ等で緊結して支持するような吊設が行われる。
さらに、図示はしないが、外部に貯水タンクを設置して、この貯水タンクに前記排水管4の先端が向かうようにしておくことが好ましい。
【0019】
次に、排水不要後の前記排水孔3aおよび排水管4の後処理について説明する。すなわち、排水不要後においては下部階1bへの水漏れを防止するために、前記排水孔3aを埋める。この時、排水孔3aの下方に設けられた前記排水管4を切除してから排水孔3aを埋めるようにする。また、排水不要後の前記排水管4は、天井スラブ10から下部階1bに向かって突出しないように切除する。
【0020】
なお、上述したように、この排水孔3aは前記低床部3の中でもさらに低い部分に設けられるので、この排水孔3aの周囲も排水孔3aと同時に埋め立てて、前記低床部3の床面を平坦なものとする。
また、排水孔3aおよびその周囲を埋める補修剤として、本実施の形態ではモルタルが用いられる。このようにモルタルが用いられる場合は、その補修箇所に、浸透性の防水剤を散布して漏水を確実に防止する。
一方、本実施の形態の補修剤としては、モルタルだけに限られず、例えば漏水防止のコーキング材等でも良い。また、下部階1bへの水漏れを確実に防ぐことができれば、これら本実施の形態で挙げた補修剤に限られるものではない。
【0021】
本実施の形態によれば、建物1の所定階1aに流入した雨水等の水を、他の床2よりも一段低い低床部3へと自然に集水することができ、この低床部3に設けられた排水孔3aによって、集水された水を自然排水することができる。これによって、従来とは異なり、手作業での汲み出しや、排水ポンプ等を用いた排水作業を行う必要がないので、効率良く排水できるとともに、コストの低減が可能となる。
さらに、排水不要後は、前記排水孔3aを埋めるので、前記所定階1aの下部階1bへの水漏れを確実に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用される建設中の建物の低床部を示す斜視図である。
【図2】低床部と外部とを連通する排水管の設置状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 建設中の建物
1a 所定階
2 他の床
3 低床部
3a 排水孔
4 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め建設中の建物の所定階に、他の床よりも一段低い低床部を形成するとともに、この低床部に排水孔を設けておき、前記建物の所定階に雨水等の水が流入した際に、この水を低床部に集水するとともに排水孔から排水し、排水不要後、前記排水孔を埋めることを特徴とする建設中の建物の排水方法。
【請求項2】
前記排水孔の下方に、前記低床部と外部とを連通する排水管を設けることを特徴とする請求項1に記載の建設中の建物の排水方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−255146(P2007−255146A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83838(P2006−83838)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)