説明

建設機械のアッパーフレーム

【課題】底板28と底板28に立設されて前後方向に延びる左右の縦板24,25とを有するセンターセクション20と、該センターセクション20の左右両側にそれぞれ設けられ、前後方向に延びるサイドフレーム26,27と該サイドフレーム26,27をセンターセクション20に連結する連結部材30,40とを有する左右のデッキ部21,22と、を備えた建設機械100のアッパーフレーム10に対して、その構成に工夫を凝らすことで、キャブ12の幅を十分に確保しながら、油圧ホース151等の配管類の配索性を向上させる。
【解決手段】各縦板24,25の前端部をサイドフレーム26,27の前端部よりも前側に突出させてこの突出縦板部24a,25aに作業機装着部を設けるとともに、各縦板24,25の縦板本体部24b,25bの高さを左右のサイドフレーム26,27の高さよりも低く設定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建設機械のアッパーフレームに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業機が取付けられるセンターセクションと、該センターセクションの左右両側に設けられるデッキ部とを備えたいわゆるデッキ構造のアッパーフレームが知られている(例えば、特許文献1参照)。この左右のデッキ部はそれぞれ、前後方向に延びるサイドフレームと、該サイドフレームをセンターセクションに連結する連結部材とを含んでいる。左右のデッキ部のうち一方のデッキ部には、通常、作動油タンクやコントロールバルブ等の機器類が配設され、他方のデッキ部には運転室を形成するキャブが配設される。
【0003】
上記センターセクションは、底板と、該底板に立設されて前後方向に延びる左右一対の縦板とを有している。この縦板は、側面視において前端部が上方に隆起する三角形状に形成されていて、その底辺が底板に溶接等により固定されている。この縦板の隆起部分には、作業機のブームの基端部がピン結合により回動支持されている。このように、縦板における作業機の支持部を上方に隆起させることで、縦板の断面積を上下方向に大きくとって、作業機の支持剛性を向上させるようにしている。
【0004】
上記縦板には、例えば特許文献2(特に図4)に見られるように貫通孔が形成されており、上記デッキ部に配設された機器類の電気配線や油圧配管(ホース配管)は、この貫通孔を通って一旦左右の縦板の間の空間に導かれた後、センターセクションに搭載された作業機やエンジンへと導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−99283号公報
【特許文献2】特許第4740088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に示す従来のアッパーフレームでは、縦板が側面視で上方に大きく隆起しているため、デッキ部に搭載されたキャブの幅を大きくとろうとすると、この隆起した縦板がキャブと干渉してしまう。この結果、キャブの幅が縦板により制限されて、キャブ内の運転スペースを十分に確保することができないという問題がある。
【0007】
また、上記アッパーフレームでは、建設機械の組立てに際して、デッキ部に搭載された機器類の電気配線や配管等を、センターセクションの縦板に形成された貫通孔に通す作業が必要になり、作業効率が悪いという問題がある。したがって、建設機械の組立て性(量産性)を向上させる観点からも改良の余地がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャブの幅を十分に確保することができ(自由に設定することができ)、且つ、建設機械の組立てに際して電気配線や配管等の配索作業を容易に行うことができるアッパーフレームを提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、縦板の前端部をサイドフレームの前端部よりも前側に突出させてこの突出部に作業機装着部を設けるとともに、縦板における左右のサイドフレームの間に位置する部分である縦板本体部の高さを、左右のサイドフレームの高さと同等か又はそれよりも低く設定するようにした。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、底板と底板に立設されて前後方向に延びる左右の縦板とを有するセンターセクションと、該センターセクションの左右両側にそれぞれ設けられ、前後方向に延びるサイドフレームと該サイドフレームをセンターセクションに連結する連結部材とを有する左右のデッキ部と、を備え、上記左右の縦板の前端部に、作業機を装着するための作業機装着部が形成されてなる、建設機械のアッパーフレームを対象とする。
【0011】
そして、上記各縦板は、上記左右のサイドフレームの間に位置する縦板本体部と、該縦板本体部の前端部から前側に延びて上記各デッキ部のサイドフレームの前端部よりも前側に突出するとともに、上記作業機装着部が設けられる突出部と、を有し、上記各縦板本体部の上記底板を基準とした高さは、少なくともキャブの搭載領域内において上記左右のサイドフレームの上記底板を基準とした高さと同等か又はそれよりも低いものとする。
【0012】
この構成によれば、縦板の前端部を左右のサイドフレームよりも前側に突出させて、該突出部に作業機装着部を設けるようにしたことで、上下方向に比較的大きな寸法を必要とする縦板の作業機装着部を、左右のデッキ部よりも前側に位置させることができる。しかも、左右のサイドフレームの間に位置する縦板本体部の高さは、少なくともキャブの搭載領域内において左右のサイドフレームの高さと同等か又はそれよりも低く設定されているため、アッパーフレームのキャブ搭載領域の上面部から主要骨格部材である縦板が上方に突出することもない。よって、キャブの幅を縦板による制約を受けずに自由に設定することができる。
【0013】
また、キャブは通常、アッパーフレームに対して左右のサイドフレームの上面と同じ高さ位置か又はそれよりもやや高い位置で支持されるが、上述の如く、縦板本体部の高さを、少なくともキャブの搭載領域内においてサイドフレームの高さと同等かそれよりも低く設定したことで、縦板本体部の上端縁とキャブの下面との間に、電気配線や油圧配管を挿通するための挿通空間を確保することができる。よって、縦板に配線用の貫通孔を形成するようにした従来のアッパーフレームに比べて、配線類の配索作業を容易化することができる。また、縦板に貫通孔を形成する必要がないため、縦板の強度や剛性が低下する虞もない。
【0014】
尚、本明細書において、「高さ」というときは、特に断らない限り、底板を基準とした高さを意味するものとする。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記左右の縦板の少なくとも一方には、上記キャブを支持するためのキャブ支持部が設けられ、上記キャブ支持部は、上記キャブの床面を当接支持する台座部が設けられ、上記各縦板本体部の上記底板を基準とした高さは、少なくともキャブの搭載領域内において上記台座部の座面の上記底板を基準とした高さよりも低いものとする。
【0016】
この構成によれば、縦板本体部の高さが、少なくともキャブの搭載領域内において上記キャブ支持部の台座部の座面高さよりも低く設定されているため、該座面に支持されたキャブと縦板とが干渉することもない。よって、キャブの幅を縦板との干渉を気にすることなく自由に設定することができる。また、キャブを上記キャブ支持部の座面に載置した状態で、キャブの下面と縦板本体部の上端縁との間に隙間空間が形成されるため、縦板に貫通孔を設けたりしなくても、デッキ部に搭載された機器類からの電気配線や配管を、この隙間空間から左右の縦板の間に導いて、センターセクションに搭載された作業機等に向けて配索することができる。
【0017】
請求項3の発明では、請求項1又は請求項2の発明において、上記左右のデッキ部の少なくとも一方には、建設機械の作動に必要な機器が搭載され、上記各縦板本体部の上端縁と上記台座部の座面の延長面との間には、上記機器から上記センターセクション内へと延びる電気配線又は油圧配管を通過可能な隙間空間が形成されているものとする。
【0018】
この構成によれば、請求項2の発明と同様の作用効果を確実に得ることができる。
【0019】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、上記左右の縦板の縦板本体部と突出部との境界部には、該左右の縦板に跨って連結される背板が設けられているものとする。
【0020】
この構成によれば、作業機の上下動等に起因して発生するアッパーフレームの上下方向の揺動を低減することができるとともに、掘削作業時の反力に対しても十分な強度を確保することができる。
【0021】
すなわち、本発明に係るアッパーフレームでは、左右の縦板の前端部に設けられる作業機装着部が、左右のサイドフレーム(左右のデッキ部)よりも前側に突出している分、作業機装着部の付け根部分の強度、つまり、縦板の非突出部と突出部との境界部の強度が従来よりも低くなってしまう。これに対して、本請求項4の発明では、左右の縦板の縦板本体部と突出部との境界部に背板を設けて該左右の縦板を連結するようにしたことで、この境界部を支点としたアッパーフレームの上下方向の曲げ剛性(強度)を向上させることができる。よって、作業機の上下動や掘削作業に伴うアッパーフレームの曲げ変形を確実に抑制することができる。
【0022】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、上記背板には、上記センターセクション内に配索された電気配線又は配管を挿通可能な孔部が形成されているものとする。
【0023】
この構成によれば、背板に電気配線又は配管を挿通可能な孔部を形成するようにしたことで、作業機へと向かう配線や配管類の配索性を悪化させることなく、左右の縦板の縦板本体部と突出部との境界部付近を支点としたアッパーフレームの上下方向の曲げ剛性を向上させることができる。
【0024】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、上記アッパーフレームは、上記建設機械の下部走行体に対してベアリングを介して旋回可能に支持されており、上記センターセクションの底板の下面には、上記旋回ベアリングが固定されるベアリング固定部が設けられ、上記底板の上面における、上記ベアリング固定部の前端部の略真上に位置する部分には、左右方向に延びるビーム板が立設されているものとする。
【0025】
この構成によれば、底板のベアリング固定部の前端部付近を支点とした上下方向の曲げ剛性を向上させることができる。よって、請求項4の発明と同様の作用効果をより一層確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の建設機械のアッパーフレームによると、縦板の前端部をサイドフレームの前端部よりも前側に突出させてこの突出部に作業機装着部を設けるとともに、縦板における左右のサイドフレームの間に位置する部分である縦板本体部の高さを、左右のサイドフレームの高さと同等かそれよりも低く設定するようにしたことで、キャブの幅を縦板による制約を受けずに自由に設定することができるとともに、建設機械の組立てに際して配線、配管類の配索作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るアッパーフレームを有する建設機械としての油圧ショベルを示す概略側面図である。
【図2】アッパーフレームを示す、左側の後方且つ上方から見た斜視図である。
【図3】アッパーフレームにコントロールバルブを取付けた状態を示す、上側から見た平面図である。
【図4】アッパーフレームを示す、左側の下方から見た斜視図である。
【図5】アッパーフレームを示す、左側から見た側面図である。
【図6】アッパーフレームを示す、右側から見た側面図である。
【図7】アッパーフレームを示す、前側の上方から見た斜視図である。
【図8】図3のVIII-VIII線断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
<全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係るアッパーフレーム10を有する建設機械100を示し、この建設機械100は、本実施形態では油圧ショベル200とされている。尚、以下の説明では、特に断らない限り、「前側」、「後側」、「左側」、及び「右側」はそれぞれ、油圧ショベル200の運転席から見て、前側、後側、左側、及び右側を意味する。
【0030】
油圧ショベル200は、クローラ式の下部走行体1と下部走行体1上に旋回可能に支持された上部旋回体2とを有している。上部旋回体2の前端部には、掘削作業等を行う作業機3が起伏可能に設けられている。この作業機3は、基端部がアッパーフレーム10に回動可能に取り付けられたブーム4と、ブーム4の先端側に回動可能に取り付けられたアーム5と、アーム5の先端側に回動可能に取り付けられたバケット6とを有している、ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧シリンダである、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9により駆動される。
【0031】
上部旋回体2は、その骨格ベースとなるアッパーフレーム10と、アッパーフレーム10の中央部の前端部に取り付けられる上記作業機3と、アッパーフレーム10の後端側に取り付けられ、作業機との重量バランスをとるカウンタウェイト11と、アッパーフレーム10におけるカウンタウェイト11の前側に設けられたエンジン及び油圧ポンプ(図示省略)と、アッパーフレーム10の前部左側に配設されたキャブ12とを有している。
【0032】
上記アッパーフレーム10は、図2〜図4に示すように、ショベル200の幅方向(左右方向)の中央部に位置するセンターセクション20と、このセンターセクション20の左右両側に連結された左右のデッキ部21,22とからなるデッキ構造を有している。センターセクション20は、底板28と底板28に立設されて略前後方向に延びる左右の縦板24,25とを有している。作業機3は、後述するように、センターセクション20の前端部に取り付けられる。
【0033】
<左右のデッキ部の詳細構成>
上記左右のデッキ部21,22の前端は前後方向の同じ位置にある一方、センターセクション20の前端は、左右のデッキ部21,22の前端よりも前側に位置している。左デッキ部21、右デッキ部22はそれぞれ、前後方向に延びる断面D字状を有する左サイドフレーム26、右サイドフレーム27と、各サイドフレーム26,27をセンターセクション20に連結する左連結部材30、右連結部材40とを有している。
【0034】
右連結部材40は、右縦板25の前部から右側(センターセクション20の左右方向の外側)に向かって延びて右サイドフレーム27の前端部に連結される断面D字状を有する右前枠41と、右縦板25の後端部から右側に向かって延びて右サイドフレーム27の後端部に連結される平板状の右後枠44と、右縦板25の前後方向の中間部から右側に向かって延びる第1及び第2右張り出しビーム42,43とを含んでいる。
【0035】
この2つの右張り出しビーム42,43は、前後方向に間隔を空けて配設されており、上記ショベル200の機器類を配置するための台座部として利用される。
【0036】
詳しくは、第1右張出しビーム42は、水平方向且つ上下方向に延びる水平板部42aと、該水平板部42aの後端縁に沿って下方に延びる垂直板部42bとを有していて、断面略L字状に形成されている。但し、第1右張出しビーム42の右サイドフレーム27との連結部における断面は、下側に開放するコ字状に形成されている。この水平板部42aには、燃料タンクの前端部及びコントロールバルブ50(図3参照)が支持される。同様に、第2右張出しビーム43は、燃料タンクの後端部を支持する水平板部43aと、水平板部43aの前端縁に沿って下方に延びる垂直板部43bとを有していて、左右方向から見て断面略L字状に形成されている。
【0037】
左連結部材30は、左縦板24の前部から左側(センターセクション20の左右方向の外側)に向かって延びて左サイドフレーム26の前端部に連結される断面D字状を有する左前枠31と、左縦板24の後端部から左側に向かって延びて左サイドフレーム26の後端部に連結される平板状の左後枠35と、左縦板24の前後方向の中間部から左側に向かって延びる第1〜第3左張り出しビーム32〜34とを含んでいる。3つ左張出しビーム32〜34は、前後方向に互いに間隔を空けて配設されている。第1〜第3左張出しビーム32〜34は、いずれも底板28に対して垂直で且つ左右方向に延びる板状ビームである。前から2番目の第2左張出しビーム32と3番目の第3左張出しビーム34の左側端部には、後述するキャブ支持部95が設けられている。
【0038】
<センターセクションの詳細構成>
上記センターセクション20は、上述の如く、底板28と左右の縦板24,25とを有している。底板28は厚肉の鋼板で形成されており、左右の縦板24,25は底板28に対して溶接等により接合されている。
【0039】
底板28は、図4に示すように、前後方向に長い略矩形板状の底板本体51と、底板本体51の前端部の右側寄りの部分から前方に延出する延出部52とを有している。延出部52は、略矩形板状に形成されていて、その根元部分は後側(底板本体51側)に向かうにしたがって左右方向に拡幅している。これにより、底板本体51と延出部52との境界部における曲げ剛性の向上を図っている。
【0040】
底板本体51の前端部の下面には、旋回ベアリングを固定するための環状のベアリング固定部61が形成されている。ベアリング固定部61には、旋回ベアリングの外輪を固定するための複数の螺子孔62が形成されている。底板本体51の前端部におけるベアリング固定部61に内接する位置には、旋回用モータを取り付けるためのモータ取付孔63が形成されている。旋回用モータにはピニオンギヤが回転一体に取付けられ、このピニオンギヤがベアリングの内輪に設けられた内周ギヤに噛合しながら回転することで、アッパーフレーム10が下部走行体1に対して旋回動作する。尚、図4中の符合64は、スイベルジョイントを取付けるための取付孔である。
【0041】
底板本体51における上記ベアリング固定部61の前端部の真上近傍には、左右方向に延びるビーム板65が立設されている。ビーム板65の上端部は、後述する背板70の下面に溶接接合され、ビーム板65の下端部は、底板28の上面に溶接接合されている。また、ビーム板65の左右両端縁はそれぞれ、左右の縦板24,25に溶接接合されている。
【0042】
左右の縦板24,25は、左右のサイドフレーム26,27の間に位置する縦板本体部24b,25bと、各縦板本体部24b,25bの前端部からそれぞれ前側に延びて、左右のサイドフレーム26,27の前端部(左右のデッキ部21,22)よりも前側に突出する突出縦板部24a,25aとを有している。本実施形態では、左右の縦板24,25はそれぞれ一枚板で形成されているが、例えば、縦板本体部24b,25bと突出縦板部24a,25aとを溶接接合して形成するようにしてもよい。
【0043】
図5及び図6に示すように、左右の縦板24,25の突出縦板部24a,25aは、側面視において、上方に向かって略台形状に隆起している。この左右の突出縦板部24a,25aの上端縁はそれぞれ、側面視において、縦板本体部24b,25bの上端縁に連続的に繋がっている。左右の突出縦板部24a,25aの上端縁は、縦板本体部24b,25bの前端部から前方斜め上側に延びた後、前側に向かって水平に延び、その後、前方斜め下側に延びて突出縦板部24a,25aの前端縁に至る。
【0044】
左右の突出縦板部24a,25aの間には、作業機3のブーム4及びブームシリンダ7を取り付けるための作業機装着板71が設けられている。作業機3は、この作業機装着板81を介して左右の突出縦板部24a,25aに固定される。そうして、この左右の突出縦板部24a,25aが、作業機3を装着するための作業機装着部を構成している。
【0045】
作業機装着板71の左右両端縁はそれぞれ、この左右の突出縦板部24a,25aに溶接して固定されている。作業機装着板71は、左右の突出縦板部24a,25aの前端縁に沿って底板28に対して垂直に延びる垂直板部72と、該垂直板部72の上端部から後方斜め上側に延びる傾斜板部73とを有している。
【0046】
垂直板部72には、左右方向に並ぶ一対のシリンダブラケット板74が立設されている。各シリンダブラケット板74には、左右方向に貫通する貫通孔75が形成されている。上記ブームシリンダ7の基端部は、この貫通孔75に嵌合支持されたシリンダ支持ピン(図示省略)により回動可能に支持される。傾斜板部73には、左右方向に並ぶ三角板状の一対のブームブラケット板78が立設されている。各ブームブラケット板78は、左右の縦板24,25の突出縦板部24a,25aに対して厚さ方向(左右方向)に重合して接合されている。突出縦板部24a,25a及びブームブラケット板78には、左右方向に貫通する貫通孔79が形成されている。上記ブーム4の基端部は、この貫通孔79に嵌合支持されたブーム支持ピン(図示省略)により回動可能に支持される。
【0047】
図3に戻って、左右の突出縦板部24a,25aは底板28の延出部52に立設されている。両突出縦板部24a,25aは、前後方向に延びるとともに、左右方向に互いに間隔を空けて平行に配置されている。
【0048】
左右の縦板24,25の縦板本体部24b,25bは底板本体51に立設されている。左縦板24の縦板本体部24bは、平面視において、底板本体51の後端から前側に向かって直線状に延びる直線部24fと、該直線部24fの前端部から前方斜め右側に延びて、左縦板24の突出縦板部24aの後端に接続される傾斜部24gとを有している。同様に、右縦板25の縦板本体部25bは、平面視において、底板本体51の後端から前側に向かって直線状に延びる直線部25fと、該直線部25fの前端部から前方斜め左側に緩やかに傾斜して、右縦板25の突出縦板部25aの後端に接続される傾斜部25gとを有している。左右の縦板24,25は、上述のように傾斜部24g,25gを有しているが、全体として見ると前後方向に延びている。
【0049】
上記左右の縦板本体部24b,25bの後端部同士は、底板28の上面に立設されて左右方向に延びる平板状の中央後枠93によって連結されている。また、左右の縦板本体部24b,25bの前後方向の中間部同士は、底板28の上面に立設された第1及び第2連結板91,92によって互いに連結されている。連結板91,92は、前後方向に互い所定間隔を空けて配設されている。第1及び第2連結板91,92の右側端部にはぞれぞれ、作動油タンク150を支持するための作動油タンク支持部94が設けられている。また、第2連結板92における作動油タンク支持部94の左側には、後述するキャブ支持部95が設けられている。
【0050】
図5及び図6に示すように、左右の縦板本体部24b,25bの高さは、その後側寄りの部分の方が前側寄りの部分に比べて全体的に低くなっている。そして、各縦板本体部24b,25bの高さは、前後方向の全体に亘ってサイドフレーム26,27の高さよりも低くなっている。換言すると、左右の縦板本体部24b,25bの上端縁は、側面視において、前後方向のどの位置においてもサイドフレーム26,27の上端面よりも下側に位置している。尚、本明細書において、「高さ」というときは、特に断らない限り、底板28の上面を基準とした高さを意味している。
【0051】
上記左右の縦板24,25の突出縦板部24a,25aと縦板本体部24b,25bとの境界部には、その上側を覆うように背板70が設けられている。背板70は、左右の縦板24,25同士に跨って配設されるとともに、各縦板24,25に対して溶接接合されている(図2及び図3参照)。背板70は、平面視において後方側に向かって左右に拡幅する末広がり状に形成されている。背板70は、平面視において、後方側が左右に広がる略Y字状に形成されているとも言える。詳しくは、背板70は、左右の突出縦板部24a,25aの後端同士に跨って配設され、後側に向かって下側に傾斜する本体傾斜部82と、該本体傾斜部82の下端部から分岐して左側の縦板本体部24bに沿って延びる左分岐部83と、右側の縦板本体部25bに沿って延びる右分岐部84とを有している。上記本体傾斜部82には、デッキ部21,22に搭載されたコントロールバルブ50に接続された油圧ホース151を作業機3の各シリンダ7〜9へと導くための貫通孔82fが形成されている。また、背板70の左右の分岐部83,84は、左右の縦板24,25の上側を覆うようにして各縦板24,25に対して断面I字状に溶接されている。
【0052】
<キャブ支持部の構成>
図7に示すように、上記キャブ12は、床板12a(図8参照)を有する縦長の箱状体として形成されている。キャブ12内には、図示しないが、オペレータが着座する運転席や操作レバー等が配設されている。上記アッパーフレーム10には、キャブ12の床板12aを支持するためのキャブ支持部95が左デッキ部21に3カ所、センターセクション20に2カ所、合計5カ所設けられている。
【0053】
詳しくは、左デッキ部21に設けられる3つのキャブ支持部95a〜95cは、左サイドフレーム26の左右方向の内側(センターセクション側)の側面に固定されている(図2参照)。この3つのキャブ支持部95a〜95cはそれぞれ、前後方向に互いに所定間隔を空けて配置されている。前から1番目の支持部95aと最後尾の支持部95cとは、上記キャブ12の床板12aに当接するブロック板状の台座部101a、101cと、左サイドフレーム26の内側側面から上方に延びて各台座部101a、101cを支持する脚部102a、102cとを有している。真ん中の支持部95bは、キャブ12の床板12aから突出するボス座(図示省略)に当接する台座部101bを有しており、この台座部101bは第3左張出しビーム33の左端部に固定されている。
【0054】
右デッキ部22に設けられる2つのキャブ支持部95d,95eは前後方向に互いに所定間隔を空けて配置されている。このうち前側のキャブ支持部95dは、上記背板70の上面に固定されている。該キャブ支持部95dは、左右方向から見てコ字型に形成された脚部102dと、該脚部102dの上面に固定された台座部101dとを有している。また、後側のキャブ支持部95eは、上記左右の縦板本体部24b,25bの間に設けられた第2連結板92に固定されている。該キャブ支持部95eは、正方形状の台座部101eと、第2連結板92の前側面から前方斜め上側に延びて該台座部101eの下面に連結される脚板102eとを有している。2つのキャブ支持部95d,95eの台座部101d,101eは、キャブ12の床板12aに当接する。
【0055】
上記キャブ12は、上記5つのキャブ支持部95a〜95eの台座部101a〜101eにボルトで固定される。5つの台座部101a〜101eのうちキャブ12の床板12aに当接する4つの台座部101a、101c、101d及び101eの座面は、左右のサイドフレーム26,27の上面よりもやや上側に位置している。この座面の延長面P1と左右の縦板24,25の上端縁との間には、右デッキ部22に搭載された機器(例えばコントロールバルブ50等)からセンターセクション20内へと延びる油圧ホースや電気配線を挿通可能な隙間空間S1が形成されている。
【0056】
以上の如く上記実施形態では、左右の縦板24,25は、上記左右のサイドフレーム26,27の前端部よりも前側に突出し且つ作業機3が装着される突出縦板部24a,25aと、突出縦板部24a,25aの後端部に接続された縦板本体部24b,25bとを有している。そして、各縦板24,25の縦板本体部24b,25bの底板28を基準とした高さは、左右のサイドフレーム26,27の上記底板28を基準とした高さよりも低く設定されている。
【0057】
これにより、上下方向に比較的大きな寸法を必要とする縦板24,25の作業機装着部を突出縦板部24a,25aとして、左右のデッキ部21,22よりも前側に位置させることができる。しかも、縦板24,25の縦板本体部24b,25bの高さは、左右のサイドフレーム26,27の高さよりも低く設定されているため、アッパーフレーム10の上面部から主要骨格部材である縦板24,25が上方に突出することもない。よって、左右のデッキ部21,22とその間に位置する部分とに跨る領域R1全体を、キャブ12や作動油タンク等の機器類の搭載領域として利用することができる。
【0058】
したがって、キャブ12が縦板24,25と干渉することもないので、キャブ12の幅を縦板24,25による制約を受けずに自由に設定することができる。すなわち、従来のアッパーフレーム10では、キャブ12と縦板24,25との干渉を避けるために、キャブ12の幅Wcを左デッキ部21の幅Wdよりも小さくする必要があったが、上記実施形態では、図7に示すように、キャブ12の幅Wcを左デッキ部21の幅Wdよりも大きくとることができる。
【0059】
また、各縦板24,25の縦板本体部24b,25bの高さが左右のサイドフレーム26,27の高さよりも低いため、左右のサイドフレーム26,27よりもやや高い位置に支持されたキャブ12と縦板本体部24b,25bとの間に、デッキ部21,22に搭載された機器類の電気配線や油圧ホース配管を挿通するための隙間空間S1を確保することができる(図8参照)。よって、縦板24,25に配線用の貫通孔を形成するようにした従来のアッパーフレーム10に比べて、油圧ショベル200の組み立てに際して、配線類、配管類の配索作業を容易に行うことができる。特に、右デッキ部22に搭載されたコントロールバルブ50から延びる多数の油圧ホース151を、右縦板25とキャブ12との間の隙間空間S1を通じて、センターセクション20の後端部に搭載された油圧ポンプや前端部に装着された作業機3に向けて容易に配索することができる。また、縦板24,25に配線用の貫通孔を形成する必要もないので、縦板24,25の強度低下や剛性低下を防止することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、左右の縦板24,25の縦板本体部24b,25bと突出縦板部24a,25aとの境界部B1に、該左右の縦板24,25に跨って連結される背板70が設けられている。したがって、作業機3の上下動等に起因して発生するアッパーフレーム10の揺動を低減することができるとともに、掘削作業時の反力に対しても十分な強度を確保することができる。
【0061】
すなわち、上記実施形態に係るアッパーフレーム10では、左右の縦板24,25の前端部に設けられる作業機装着部が、左右のサイドフレーム26,27よりも前側に突出している分、作業機装着部の付け根部分の強度、つまり、縦板本体部24b,25bと突出縦板部24a,25aとの境界部B1の強度が従来よりも低くなってしまう。
【0062】
これに対して上記実施形態では、左右の縦板24,25の縦板本体部24b,25bと突出縦板部24a,25aとの境界部に背板70を設けて、該左右の縦板24,25を背板により連結するようにしたことで、この境界部B1を支点としたアッパーフレーム10の上下方向の曲げ剛性(強度)を向上させることができる。よって、作業機3の上下動や掘削作業に伴うアッパーフレーム10の曲げ変形を確実に抑制することができる。
【0063】
また、上記背板70の左右の分岐部83,84は、左右の縦板24,25の上側を覆うようにして各縦板24,25に対して断面I字状に溶接されているため、背板70と中立面との距離を大きくとって、上下方向の曲げに対して強い構造を得ることができる。
【0064】
また、背板70には、油圧ホース151を挿通可能な貫通孔82fが形成されているため、背板70を設けた場合でも右デッキ部22から作業機3へと向かう油圧ホース151の配索性が悪化することはない。
【0065】
さらにまた、上記実施形態では、上記底板本体51の上面における、ベアリング固定部61の前端部の略真上に位置する部分に、左右方向に延びるビーム板65が立設されている。したがって、底板本体51のベアリング固定部61の前端部付近を支点とした上下方向の曲げ剛性を向上させて、作業機3の上下動や掘削作業に伴うアッパーフレーム10の曲げ変形をより一層確実に抑制することができる。
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。
【0066】
すなわち、上記実施形態では、各キャブ支持部95の座面は、左右のサイドフレーム26,27の上面よりもやや上側に位置しているが、これに限ったものではなく、左右のサイドフレーム26,27の上面と同じ高さに位置していてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、キャブ12をアッパーフレーム10の前部左側に配設するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、アッパーフレーム10の後部左側や前部右側に配設するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、主な機器類である燃料タンク及びコントロールバルブ50を右デッキ部22に搭載するようにしているが、この機器類の配置構成は一例であり、例えば、これらの機器類を左デッキ部21に搭載するようにしてもよいし、燃料タンクのみを左デッキ部21に搭載する等してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、建設機械100は油圧ショベルとされているが、これに限ったものではなく、例えば、電気モータと油圧モータとを併用するハイブリッドショベル等であってもよいことはいうまでもない。
【0070】
また、上記実施形態では、縦板本体部24b,25bの高さは、サイドフレーム26,27の高さよりも低くなっているが、これに限ったものではなく、サイドフレーム26,27と同等の高さであってもよい。また、上記実施形態では、縦板本体部24b,25bの高さは、前後方向の全体に亘って、サイドフレーム26,27の高さよりも低くなっているが、これに限ったものではなく、例えば、キャブ12の搭載領域においてのみ、縦板本体部24b,25bの高さをサイドフレーム26,27の高さよりも低く設定するようにしてもよい。すなわち、縦板本体部24b,25bの高さは、少なくともキャブ12の搭載領域においてサイドフレーム26,27の高さと同等又はそれよりも低ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、建設機械のアッパーフレームに有用であり、特に、センターセクションの両側にデッキ部を配設してなるデッキ構造のアッパーフレームに有用である。
【符号の説明】
【0072】
P1 座面の延長面
S1 隙間空間
3 作業機
9 キャブ支持部
10 アッパーフレーム
12 キャブ
20 センターセクション
21 左デッキ部
22 右デッキ部
24 左縦板
24a 突出縦板部
24b 縦板本体部
25 右縦板
25a 突出縦板部
25b 縦板本体部
26 左サイドフレーム
27 右サイドフレーム
28 底板
30 左連結部材
40 右連結部材
50 コントロールバルブ(機器)
51 底板本体
52 延出部
61 ベアリング固定部
70 背板
71 作業機装着板
82f 貫通孔
95 キャブ支持部
100 建設機械
101a 台座部
101c 台座部
101d 台座部
101e 台座部
151 油圧ホース
200 油圧ショベル(建設機械)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と底板に立設されて前後方向に延びる左右の縦板とを有するセンターセクションと、該センターセクションの左右両側にそれぞれ設けられ、前後方向に延びるサイドフレームと該サイドフレームをセンターセクションに連結する連結部材とを有する左右のデッキ部と、を備え、上記左右の縦板の前端部に、作業機を装着するための作業機装着部が形成されてなる、建設機械のアッパーフレームであって、
上記各縦板は、上記左右のサイドフレームの間に位置する縦板本体部と、該縦板本体部の前端部から前側に延びて上記各デッキ部のサイドフレームの前端部よりも前側に突出するとともに、上記作業機装着部が設けられる突出部と、を有し、
上記各縦板本体部の上記底板を基準とした高さは、少なくともキャブの搭載領域内において上記左右のサイドフレームの上記底板を基準とした高さと同等か又はそれよりも低いことを特徴とする、建設機械のアッパーフレーム。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械のアッパーフレームにおいて、
上記左右の縦板の少なくとも一方には、上記キャブを支持するためのキャブ支持部が設けられ、
上記キャブ支持部は、上記キャブの床面を当接支持する台座部が設けられ、
上記各縦板本体部の上記底板を基準とした高さは、少なくともキャブの搭載領域内において上記台座部の座面の上記底板を基準とした高さよりも低いことを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械のアッパーフレームにおいて、
上記左右のデッキ部の少なくとも一方には、建設機械の作動に必要な機器が搭載され、
上記各縦板本体部の上端縁と上記台座部の座面の延長面との間には、上記機器から上記センターセクション内へと延びる電気配線又は油圧配管を通過可能な隙間空間が形成されていることを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建設機械のアッパーフレームにおいて、
上記左右の縦板の縦板本体部と突出部との境界部には、該左右の縦板に跨って連結される背板が設けられていることを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。
【請求項5】
請求項4記載の建設機械のアッパーフレームにおいて、
上記背板には、上記センターセクション内に配索された電気配線又は配管を挿通可能な孔部が形成されていることを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。
【請求項6】
請求項5記載の建設機械のアッパーフレームにおいて、
上記アッパーフレームは、上記建設機械の下部走行体に対してベアリングを介して旋回可能に支持されており、
上記センターセクションの底板の下面には、上記旋回ベアリングが固定されるベアリング固定部が設けられ、
上記底板の上面における、上記ベアリング固定部の前端部の略真上に位置する部分には、左右方向に延びるビーム板が立設されていることを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83092(P2013−83092A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223721(P2011−223721)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)