説明

建設機械のアッパーフレーム

【課題】比較的簡単な構成で、支持ブラケットの強度や剛性を高めて、支持脚板が板厚方向に振動したり変形してしまうのを抑える。
【解決手段】キャブ用ブラケット50は、支持脚板51と、台座板52と、補強板53とを備える。支持脚板51は、梁板23に沿って上方に延びている。支持脚板51の側縁部は、梁板23の板面に溶接される。台座板52は、支持脚板51の上端部に溶接されて水平方向に張り出し、梁板23よりも上方に位置している。補強板53の基端部は、梁板23の板面に溶接される。補強板53の先端部は、台座板52の下面に接合される。補強板53は、基端部から水平方向に張り出した後で屈曲して先端部まで延びている。補強板53の側縁部は、支持脚板51の板面に溶接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のアッパーフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下部走行体と、下部走行体上に搭載された上部旋回体とを備えた建設機械が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。上部旋回体は、車体フレームとしてのアッパーフレームを備えている。アッパーフレームは、底板と、底板に立設されて車両前後方向に延びる一対の縦板と、縦板同士を連結する梁板とを備えている。アッパーフレームの縦板や梁板等には、エンジン、タンク、及びキャブ等の各種機器を搭載するための支持ブラケットが溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−305882号公報
【特許文献2】特開平10−292431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、支持ブラケットは、部品点数や溶接量を低減することによるコストダウンや軽量化を考慮すると、1枚の支持脚板の上端部に、水平方向に張り出させた台座板を溶接させることで、断面T字型のブラケット構造とするのが好ましい。
【0005】
しかしながら、断面T字型の支持ブラケットでは、建設機械の運転作業や走行に伴う負荷変動によって支持脚板の板厚方向に負荷が加わることで、支持脚板が振動したり変形してしまうという問題がある。そのため、このような負荷に十分に耐えうる強度や剛性を有する支持ブラケットの開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、支持ブラケットの強度や剛性を高めて、支持脚板が板厚方向に振動したり変形してしまうのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、底板と、該底板に立設されて車両前後方向に延びる一対の縦板と、該縦板同士を連結する梁板と、機器を搭載するための支持ブラケットとを備えた建設機械のアッパーフレームを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記支持ブラケットは、
前記梁板に沿って該梁板の上端よりも上方に延びるとともに、その側縁部が該梁板の板面に接合された支持脚板と、
前記支持脚板の上端部に接合されて水平方向に張り出した台座板と、
基端部が前記梁板の板面に接合される一方、先端部が前記台座板の下面に接合され、該基端部から水平方向に張り出した後で屈曲して該先端部まで延びるとともに、その側縁部が前記支持脚板の板面に接合された補強板とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明では、支持ブラケットは、支持脚板と、台座板と、補強板とを備える。支持脚板は、梁板に沿って上方に延びている。支持脚板の側縁部は、梁板の板面に接合される。台座板は、支持脚板の上端部に接合されて水平方向に張り出し、梁板よりも上方に位置している。補強板の基端部は、梁板の板面に接合される。先端部は、台座板の下面に接合される。補強板は、基端部から水平方向に張り出した後で屈曲して先端部まで延びている。補強板の側縁部は、支持脚板の板面に接合される。
【0010】
このような構成とすれば、比較的簡単な構成で、支持ブラケットの強度や剛性を高めて、支持脚板が板厚方向に振動したり変形してしまうのを抑えることができる。具体的に、支持脚板の上端部に水平方向に張り出させた台座板を接合させて断面T字型とした支持ブラケットでは、建設機械の運転作業や走行に伴う負荷変動によって支持脚板の板厚方向に負荷が加わることで、支持脚板が振動したり変形してしまうという問題がある。
【0011】
これに対し、本発明では、支持脚板の板面に補強板の側縁部を接合させるとともに、補強板の基端部を梁板の板面に接合させているから、支持脚板の板厚方向に加わった負荷を、補強板を介して梁板で受け止めることができる。これにより、支持脚板が板厚方向に振動したり変形してしまうことを抑えることができる。
【0012】
また、補強板を、水平方向に張り出した後で台座板の下面に向かって屈曲させた形状としているから、補強板の基端部と梁板の板面とを溶接する際に、溶接トーチが補強板に干渉することがなく、溶接作業を行い易くなる。
【0013】
具体的に、梁板の板面から台座板の下面にかけて平坦面となった補強板を梁板に溶接する場合には、補強板と梁板とがなす角度が鋭角となってしまう。そのため、補強板の基端部と梁板の板面とを溶接しようとしても、その溶接部分に対して溶接トーチを差し込むためのスペースを十分に確保することができないという問題がある。
【0014】
これに対し、本発明では、補強板の基端部と梁板の板面とが直交するように当接しているため、溶接作業を行う際に、溶接トーチを差し込むためのスペースを十分に確保することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記補強板の基端部は、前記梁板の上端寄りの位置に接合されていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、補強板の基端部が梁板の上端寄りの位置に接合される。このような構成とすれば、補強板と梁板との溶接部分から台座板までの距離を近づけることで曲げ応力を低減でき、支持ブラケットの剛性を高める上で有利となる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記補強板は、側面視で前記支持脚板の板幅の略中央位置に沿って延びるように配設されていることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明では、側面視で支持脚板の板幅の略中央位置に沿って延びるように、補強板が配設される。このような構成とすれば、支持脚板の延びる方向に沿って補強板を配設することができ、支持脚板の板厚方向の振動や変形をさらに効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支持脚板の板面に補強板の側縁部を接合させるとともに、補強板の基端部を梁板の板面に接合させているから、支持脚板の板厚方向に加わった負荷を、補強板を介して梁板で受け止めることができる。これにより、支持脚板が板厚方向に振動したり変形してしまうことを抑えることができる。
【0020】
また、補強板を、水平方向に張り出した後で台座板の下面に向かって屈曲させた形状としているから、補強板の基端部と梁板の板面とを溶接する際に、溶接トーチが補強板に干渉することがなく、溶接作業を行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る建設機械の全体構成を示す側面図である。
【図2】アッパーフレームの構成を示す平面図である。
【図3】キャブ用ブラケット周辺の構成を示す斜視図である。
【図4】キャブ用ブラケット周辺の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る建設機械の全体構成を示す側面図、図2はアッパーフレームの構成を示す平面図である。図1及び図2に示すように、この建設機械10は、クローラ式の下部走行体1の上に、旋回可能な上部旋回体2が搭載された油圧ショベルである。
【0024】
上部旋回体2は、車体フレームとしてのアッパーフレーム20と、アッパーフレーム20の前端側に設けられて土砂等の掘削作業を行うアタッチメント4と、キャブ5と、機械室6と、アッパーフレーム20の後端側に設けられてアタッチメント4との重量バランスを取るためのカウンターウエイト7とを備えている。
【0025】
なお、本実施形態では、図1において、図面左側のアタッチメント4が配置された側を車両前側、紙面手前側のキャブ5が配置された側を車両左側とし、以下の説明では前後左右等の方向は特に言及しない限り、これに従うものとする。
【0026】
アタッチメント4は、上部旋回体2の左右幅方向の中間であって、アッパーフレーム20の前方に位置している。アタッチメント4は、基端側がアッパーフレーム20に設けられた一対の縦板22に回動可能に取り付けられたブーム11と、ブーム11の先端側に回動可能に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端側に回動可能に取り付けられたバケット13とを備えている。これらブーム11等は、油圧制御された油圧シリンダ14の伸縮動作に連動して変位する。
【0027】
キャブ5は、アッパーフレーム20の左前部に位置している。キャブ5は、周囲が矩形箱形のカバーで覆われた運転室である。キャブ5の内部には、オペレータが着座するシートが設置されていて、その周囲に、操作装置や表示装置等の運転操作に関連した電気機器類が設置されている。
【0028】
機械室6は、上部旋回体2の右前部から後部にわたって位置している。機械室6の内部には、燃料タンク15、作動油タンク16、エンジン17等が密集した状態で設置されている。
【0029】
カウンターウエイト7は、アタッチメント4との間で前後のバランスを保つように、アッパーフレーム20の後部に設置されている。この機種の場合、カウンターウエイト7は、機械室6の後部カバーを兼ねている。
【0030】
アッパーフレーム20は、構造的に強度や剛性が強化された支持部材であり、平面視で略矩形形状の外観を有している。アッパーフレーム20は、底板21と、左右一対の縦板22と、縦板22同士を連結する梁板23と、一対の縦板22よりも左右方向の両外方にそれぞれ立設して前後方向に延びる一対の側枠24と、底板21の前端部に立設して左右方向に延びる前枠25と、縦板22と側枠24とを連結する側枠連結板26とを備えている。
【0031】
底板21は、アッパーフレーム20の底面を構成し、その板面が略水平方向に拡がるように配設された肉厚な金属板で構成されている。
【0032】
縦板22は、肉厚な金属板で構成され、底板21から立設させた状態で底板21の上面に溶接されている。左右一対の縦板22は、左右方向に離間し且つ前後方向に延びるように配置されている。縦板22の前端部分は、前枠25よりも前方に突出し、アタッチメント4を支持する支持部22aを構成している。
【0033】
梁板23は、一対の縦板22の間に配設された肉厚な金属板で構成されている。梁板23は、底板21から立設させた状態で底板21の上面に溶接されている。梁板23の左右両端部は、縦板22の板面に溶接されている。これにより、一対の縦板22同士が梁板23によって連結されている。梁板23は、車両前後方向に間隔をあけて4枚配設されている。
【0034】
側枠24は、その前端部が前枠25に接合されている。右側の縦板22と側枠24との間には、金属板を折り曲げて形成された燃料タンク用ブラケット30が配設されている。燃料タンク用ブラケット30の左右両端部は、縦板22の板面と側枠24の板面とにそれぞれ溶接されている。これにより、右側の縦板22と側枠24とが燃料タンク用ブラケット30によって連結されている。燃料タンク用ブラケット30は、車両前後方向に並ぶように配設されている。燃料タンク用ブラケット30には、燃料タンク15が搭載されている。
【0035】
左側の縦板22と側枠24との間には、肉厚の金属板で構成された側枠連結板26が配設されている。側枠連結板26の左右両端部は、縦板22の板面と側枠24の板面とにそれぞれ溶接されている。これにより、左側の縦板22と側枠24とが側枠連結板26によって連結されている。側枠連結板26は、車両前後方向に並ぶように配設されている。また、アッパーフレーム20の右側後部にも側枠連結板26が配設され、右側の縦板22と側枠24とが側枠連結板26によって連結されている。
【0036】
アッパーフレーム20には、機器を搭載するための支持ブラケットが配設されている。具体的には、作動油タンク16を搭載するための作動油タンク用ブラケット35と、エンジン17を搭載するためのエンジン用ブラケット40と、キャブ5を搭載するためのキャブ用ブラケット50とが配設されている。
【0037】
作動油タンク用ブラケット35は、車両前後方向に並ぶ4枚の梁板23のうち前側から数えて2枚目及び3枚目の梁板23にそれぞれ溶接されている。エンジン用ブラケット40は、3枚目及び4枚目の梁板23と、左側の縦板22とにそれぞれ溶接されている。キャブ用ブラケット50は、前枠25と、3枚目の梁板23と、左側の側枠24とにそれぞれ溶接されている。
【0038】
図3は、キャブ用ブラケット周辺の構成を示す斜視図、図4は側面図である。図3及び図4に示すように、3枚目の梁板23に溶接されたキャブ用ブラケット50は、支持脚板51と、台座板52と、補強板53とを備えている。
【0039】
支持脚板51は、底板21から立設させた状態で底板21の上面に溶接されている。支持脚板51は、梁板23に沿って梁板23の上端よりも上方に延びている。支持脚板51の後側の側縁部は、梁板23の板面に溶接されている。支持脚板51の上部は、車両前側に向かって斜め上方に傾斜しながら延びている。
【0040】
台座板52は、支持脚板51の上端部に溶接されて水平方向に張り出し、梁板23よりも上方に位置している。これにより、梁板23に溶接されたキャブ用ブラケット50は、断面T字型となっている。
【0041】
なお、断面T字型としたキャブ用ブラケット50では、建設機械10の運転作業や走行に伴う負荷変動によって支持脚板51の板厚方向に負荷が加わることで、支持脚板51が振動したり変形してしまうという問題がある。そこで、本実施形態では、支持脚板51の板厚方向の振動や変形を抑えるための補強リブとして補強板53を取り付けている。
【0042】
補強板53の基端部は、梁板23の板面の上端寄りの位置に溶接されている。補強板53の先端部は、台座板52の下面に溶接されている。補強板53は、基端部から水平方向に張り出した後で屈曲して先端部まで延びている。具体的に、補強板53は、側面視で支持脚板51の板幅の略中央位置に沿って延びている。つまり、補強板53の上部も支持脚板51の上部と同様に、車両前側に向かって斜め上方に傾斜しながら延びている。補強板53の右側の側縁部は、支持脚板51の板面に溶接されている。
【0043】
このように、支持脚板51の板面に補強板53の側縁部を溶接させるとともに、補強板53の基端部を梁板23の板面に溶接させているから、支持脚板51の板厚方向に加わった負荷を、補強板53を介して梁板23で受け止めることができる。これにより、支持脚板51が板厚方向に振動したり変形してしまうことを抑えることができる。また、補強板53と梁板23との溶接部分から台座板52までの距離を近づけることで曲げ応力を低減でき、キャブ用ブラケット50の剛性を高める上で有利となる。
【0044】
また、補強板53を、水平方向に張り出した後で台座板52の下面に向かって屈曲させた形状としているから、補強板53の基端部と梁板23の板面とを溶接する際に、溶接トーチが補強板53に干渉することがなく、溶接作業を行い易くなる。
【0045】
具体的に、梁板23の板面から台座板52の下面にかけて平坦面となった補強板53を梁板23に溶接する場合には、補強板53と梁板23とがなす角度が鋭角となってしまう。そのため、補強板53の基端部と梁板23の板面とを溶接しようとしても、その溶接部分に対して溶接トーチを差し込むためのスペースを十分に確保することができないという問題がある。
【0046】
これに対し、本実施形態では、補強板53の基端部と梁板23の板面とが直交するように当接しているため、溶接作業を行う際に、溶接トーチを差し込むためのスペースを十分に確保することができる。
【0047】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0048】
前記実施形態では、キャブ用ブラケット50を断面T字型として、支持脚板51の板面に補強板53を溶接した形態について説明したが、作動油タンク用ブラケット35やエンジン用ブラケット40に対しても同様の構成を適用可能である。
【0049】
また、本実施形態では、支持脚板51の上部を、車両前側に向かって斜め上方に傾斜させながら延ばした形態としたが、支持脚板51を梁板23に沿って垂直方向に延ばした形態としてもよい。この場合には、補強板53も同様に、梁板23から水平方向に張り出した後で、側面視で支持脚板51の板幅の略中央位置に沿って垂直方向に延ばした構成とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、支持ブラケットの強度や剛性を高めて、支持脚板が板厚方向に振動したり変形してしまうのを抑えることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0051】
5 キャブ(機器)
10 建設機械
20 アッパーフレーム
21 底板
22 縦板
23 梁板
50 キャブ用ブラケット(支持ブラケット)
51 支持脚板
52 台座板
53 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、該底板に立設されて車両前後方向に延びる一対の縦板と、該縦板同士を連結する梁板と、機器を搭載するための支持ブラケットとを備えた建設機械のアッパーフレームであって、
前記支持ブラケットは、
前記梁板に沿って該梁板の上端よりも上方に延びるとともに、その側縁部が該梁板の板面に接合された支持脚板と、
前記支持脚板の上端部に接合されて水平方向に張り出した台座板と、
基端部が前記梁板の板面に接合される一方、先端部が前記台座板の下面に接合され、該基端部から水平方向に張り出した後で屈曲して該先端部まで延びるとともに、その側縁部が前記支持脚板の板面に接合された補強板とを備えたことを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。
【請求項2】
請求項1において、
前記補強板の基端部は、前記梁板の上端寄りの位置に接合されていることを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記補強板は、側面視で前記支持脚板の板幅の略中央位置に沿って延びるように配設されていることを特徴とする建設機械のアッパーフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87463(P2013−87463A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227631(P2011−227631)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)