建設機械の運転室スライド装置
【課題】製造およびメンテナンスに当たり組立および分解を容易に行うことが可能な建設機械の運転室スライド装置を提供する。
【解決手段】上部旋回体の旋回フレームに取付けられる下ベッド6と、下ベッド6に前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッド7とを備える。下ベッド6の左右に設けるガイド部6aを、上部材31と下部材30とからなる分割構造とする。上部材31と下部材30とがボルト20,21により着脱可能に結合されて断面形状がコの字形のガイド部6aを形成する。ガイド部6a内に、上ベッド7の左右に設けた摺動部7aを摺動可能に嵌合する。上部材31が下部材30から取外された状態では、上ベッド7の摺動部7aは下ベッド6の下部材31に上方より挿入可能とする。
【解決手段】上部旋回体の旋回フレームに取付けられる下ベッド6と、下ベッド6に前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッド7とを備える。下ベッド6の左右に設けるガイド部6aを、上部材31と下部材30とからなる分割構造とする。上部材31と下部材30とがボルト20,21により着脱可能に結合されて断面形状がコの字形のガイド部6aを形成する。ガイド部6a内に、上ベッド7の左右に設けた摺動部7aを摺動可能に嵌合する。上部材31が下部材30から取外された状態では、上ベッド7の摺動部7aは下ベッド6の下部材31に上方より挿入可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の運転室を前後にスライドさせる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械には、掘削作業等において視界を確保するために運転室を前後にスライドさせる装置を有するものがある。従来は、運転室をスライドさせる装置として、例えば、特許文献1に記載の構造が採用されている。この従来のスライド装置は、固定側フレームである下ベッドの左右両側に断面形状がコの字状に折り曲げられたガイド部を設け、そのガイド部の内側に、上ベッドの両側に設けられた断面形状がコの字状をなす可動スライドフレームの摺動部を入れ、その摺動部とガイド部との間にスライドプレートを介在させて摺動部がガイド部に対して移動可能とした構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−159132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の運転室のスライド装置において、下ベッドに上ベッドを取付けるためには、上ベッドを下ベッドの前方側から差込んでスライドさせなくてはならないため、広い作業スペースが必要になる上、組立に手間がかかる。また、コの字状のガイド部内部に設けられたスライドプレートの交換のためには、上ベッドを下ベッドから抜去って分解しなければならず、メンテナンス作業に手間がかかる。
【0005】
また、上ベッドを支持するために下ベッドの左右のガイド部の上下にそれぞれ全長にわたって数個(例えば左側、右側のそれぞれの上下に5個ずつ)ずつ、合計例えば20個のスライドプレートを配設すると共に、上ベッドの左右の摺動部の側面にも複数個のスライドプレートを設けており、その上、スライドプレートとガイド部または摺動部との間に介在させるシム等の高さ調整手段も必要となるので、部品点数や組立工数も多く、コスト高となる。
【0006】
また、下ベッドに設けるガイド部は、平板をコの字状に折り曲げて形成しているが、折り曲げ度合の過不足が生じ易く、平面度を出すことが困難である。そして、この平面度を得ようとしても、コの字形をなすガイド部の内部に工具を入れて加工することが困難であり、平面度が出し難い。そこで上ベッドの下ベッドに対する円滑な移動を可能にするためには、シム等による多数のスライドプレートの高さ調整等、複雑で工数の多い調整作業が必要となり、調整作業に労力および手間を要する。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、製造やメンテナンスにおける組立及び分解を狭いスペースにて容易に行うことが可能な建設機械の運転室スライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の建設機械の運転室スライド装置は、上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとを備えた建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に設けるガイド部を、上部材と下部材とからなる分割構造にすると共に、前記上部材と前記下部材とがボルトにより着脱可能に結合されて断面形状がコの字形のガイド部を形成する構造とし、
前記ガイド部内に、前記上ベッドの左右に設けた摺動部を摺動可能に嵌合し、
前記上部材が前記下部材から取外された状態では、前記上ベッドの前記摺動部は前記下ベッドの前記下部材に上方より挿入可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の建設機械の運転室スライド装置は、請求項1に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの前記ガイド部の前部内側に前記上ベッドの移動に伴い前記摺動部を摺動させる固定のスライドプレートを配置し、前記上ベッドの前記摺動部の後部外側に前記上ベッドの移動に伴い前記ガイド部内のガイド面を摺動するスライドプレートを配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の建設機械の運転室スライド装置は、請求項1または請求項2に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下部材をL字形に形成し、前記上部材を平板状に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の建設機械の運転室スライド装置は、請求項3に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記ガイド部の前記上部材を前記下部材に固定する複数の短いボルトと、前記上部材および前記下部材を前記上部旋回体の旋回フレームに固定する複数の長いボルトとを備え、
前記短いボルトは、前記上部材に設けたボルト挿通孔に挿通して前記下部材に設けたねじ孔に螺合し、
前記長いボルトは、前記上部材および前記下部材に設けたボルト挿通孔に挿通し、前記上部旋回体の旋回フレーム側に設けたねじ孔に螺合したことを特徴とする。
【0012】
請求項5の建設機械の運転室スライド装置は、上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとからなる建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に、断面形状がコの字形をなすガイド部を設け、
前記上ベッドの左右の摺動部を前記ガイド部内に摺動可能に嵌合し、
前記摺動部は、前記ガイド部内に嵌まる第1部分と、前記ガイド部外に位置しかつ前記上ベッド側に固定した第2部分とに分割し、
前記第1部分を前記第2部分に固定ボルトにより着脱可能に結合し、
前記第1部分を前記第2部分から取外した状態では、前記上ベッドは前記下ベッドのガイド部に上方より挿入可能となる構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、下ベッドのガイド部を上部材と下部材との分割構造で実現したため、下ベッドに上ベッドを組み付ける場合には、上部材を下部材から分離した状態としておき、上ベッドを上方から下ろして上ベッドの摺動部を下ベッドの下部材上に置き、その後、上部材を下部材にボルトによって結合することで組み付けることができる。このため、製造やメンテナンスに際し、従来のように下ベッドのガイド部に上ベッドの摺動部の位置を合わせて前後方向に抜き差しする場合に比較し、狭いスペースでの作業が可能となる上、組立、分解が容易となる。
【0014】
また、本発明のガイド部は、従来のように平板を折り曲げてコの字形のガイド部を成形する必要がなく、例えば市販のL字形鋼材と平板との組み合わせ、あるいはL字形鋼材どうしの組み合わせでコの字形のガイド部が構成できる。このため、ガイド面の平面度が得易く、平面度を出すための機械加工が不要になる。また、ガイド面の平面度を確保するための機械加工が必要になったとしても、上部材を下部材から外した状態において、それぞれのガイド面の機械加工を行なうことができる。このため、ガイド面の平面度を容易に確保することができる。
【0015】
また、従来は一体成形により断面形状がコの字状をなすガイド部を備えるとともに、そのガイド部と摺動部にそれぞれ多数のスライドプレートを設けてそれぞれシムによる摺動面の位置を調整していたが、この従来技術に比較し、本発明によればガイド面の平面度を出すための作業が不要あるいは簡略化されるため、調整作業の工数を減少させることが可能となり、組立に要する労力、時間が削減され、部品点数が削減され、簡単な構造となり、ベッドのコスト低減に寄与することができる。
【0016】
また、ガイド部が折り曲げ不要な部材で構成できるため、ガイド部に厚みを持たせるなどして必要な強度を容易に持たせることが可能となる。
【0017】
請求項2の発明によれば、ガイド部内の前部と、前記摺動部の後部に滑動用のスライドプレートを配置したので、スライドプレートを全長に亘って設置する必要がなく、しかもスライドプレートをガイド部あるいは摺動部の全長に亘って設けた場合と同等の滑動性能を発揮することができる。そして、ガイド部内あるいは摺動部の全長に亘ってスライドプレートを設ける場合に比較してスライドプレートを大幅に小形化することができ、コストダウンが可能となる。また、スライドプレートが小形、軽量化されるため、スライドプレートの取付け作業や、スライドプレートの摩耗が進行して新品に交換する場合の交換作業が容易となる。
【0018】
請求項3の発明によれば、下ベッドの下部材をL字形の部材とし、下ベッドの上部材を平板としたので、市販の鋼材や平板を用い、必要に応じて加工することにより、容易にガイド部を製造することができる。また、上部材が平板でなるため、軽量となり、下部材に上部材を人手によって組み合わせてボルトにより着脱する作業が容易に行なえる。
【0019】
請求項4の発明によれば、ベッドの固定用ボルトを、上部材と下部材を結合する短いボルトと、上部材と下部材とを同時に上部旋回体の旋回フレームに固定する長いボルトとの2種類としたため、まず短いボルトを使用して、上部材と下部材を固定して下ベッドに上ベッドを組付けかつ配線、配管等を組付けてベッドを組立てた後、長いボルトを用いてこのベッドを旋回フレームに取付けることが可能であり、ベッドのユニット化が可能となり、組立がさらに容易となる。
【0020】
請求項5の発明によれば、摺動部の第1部分を下ベッドのガイド部に予め装着しておき、上ベッドを下ベッド上に降ろして摺動部の第1部分に摺動部の第2部分を対面させ、ボルトによって第1部分と第2部分とを結合することにより、下ベッドに上ベッドを組付けることができ、また、分離時もボルトを外して上ベッドを上方に引き上げることで下ベッドから分離することができる。このため、製造時やメンテナンス時において、下ベッドのガイド部に対し、上ベッドの摺動部を前後方向に抜き差しする従来構造に比較し、組立、分解が容易となる。また、狭いスペースで組立、分解作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用する建設機械の一例を示す側面図である。
【図2】図1の建設機械の旋回フレームを示す平面図である。
【図3】本発明の建設機械の運転室スライド装置の一実施の形態をベッドの収縮状態で示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置をベッドの伸長状態で示す斜視図である。
【図5】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置をベッドの収縮状態で示す側面図である。
【図6】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置におけるベッドの前部の構成を示す側面図である。
【図7】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置におけるベッドの後部の構成を示す側面図である。
【図8】図5のA−A拡大断面図である。
【図9】図6のB−B拡大断面図である。
【図10】図7のC−C拡大断面図である。
【図11】本実施の形態において、下ベッド側の側部スライドプレートの配置を説明するため、嵌合部を下ベッドの内側から見た図である。
【図12】本実施の形態において、下ベッド側下部スライドプレートの配置を説明するため、上部材を外してガイド部を上方から見た図である。
【図13】本実施の形態において、下ベッド側上部スライドプレートの配置を説明するため、上部材を下面側から見た図である。
【図14】本実施の形態において、上ベッド側側部スライドプレートの配置を説明するため、摺動部を側方から見た図である。
【図15】本実施の形態において、上ベッド側下部スライドプレートの配置を説明するため、摺動部を下方から見た図である。
【図16】本実施の形態において、上ベッド側上部スライドプレートの配置を説明するため、摺動部を上方から見た図である。
【図17】本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態を示す図9相当断面図である。
【図18】本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態を示す図8相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明が適用される建設機械の一例を示す側面図である。1は下部走行体であり、この下部走行体1は、旋回装置3を上部に設置した走行体フレームの左右にサイドフレーム1aを有し、このサイドフレーム1aの後部に走行モータ(図示せず)により駆動される駆動輪1bを取付け、サイドフレーム1aの前部に従動輪1cを取付け、これらに履帯1dを掛け回して構成される。上部旋回体4は走行体フレーム上に旋回装置3を介して旋回可能に設置される。
【0023】
上部旋回体4を構成する旋回フレーム4aは、図2の平面図に示すように、片側(図示例が左側)の前部にベッド5を設置する。そして、このベッド5は旋回フレーム4a上に固定される下ベッド6と、この下ベッド6上に前後動可能に装着した上ベッド7とからなり、図1に示すように上ベッド7上に運転室11やユーティリィカバー16を搭載する。ユーティリィカバー16は、各種配管や必要部品を収容する空間を覆うカバーである。また、旋回フレーム4a上の後部に油圧パワーユニット17やカウンタウエイト18等を搭載する。なお、油圧パワーユニット17としては、エンジンを動力源として用いる場合と、電動モータを用いる場合がある。
【0024】
12は旋回フレーム4aに取付けた作業装置であり、ブームシリンダ13によりブーム14を俯仰可能に取付け、このブーム14にアームをアームシリンダにより回動可能に取付けると共に、必要に応じて伸縮アーム等を取付け、これらの先端に例えばバックホウバケット、クラムシェルバケット等の作業具を取付けて構成するが、ブーム14やブームシリンダ13以外の構成部品についてはいずれも図示を省略している。なお、図2において、10は旋回装置3の取付け部である。また、19aはブーム14をピン(図示せず)による取付けるブラケットを示し、19bはブームシリンダ13をピン(図示せず)による取付けるブラケットを示す。
【0025】
図3はベッド5を収縮させた状態を示す斜視図、図4はベッド5を伸長させた状態を示す斜視図である。また、図5はベッド5を収縮させた状態を示す側面図である。図4に示すように、上ベッド7の左右両側には摺動部7aを設け、下ベッド6の両側には摺動部7aを摺動可能に嵌合するコの字形のガイド部6aを設ける。8は弾性ゴム(図示せず)を介して上ベッド7に運転室11を取付けるために上ベッド7に設けた取付け孔である。また、22は上ベッド7の片側に設けたステップ取付け用のブラケットである。
【0026】
図3、図4において、9は上ベッド7を下ベッド6に対して前後動させる油圧シリンダである。この油圧シリンダ9はチューブ9aの中間部に設けたトラニオン28を、下ベッド6に設けた一対の取付け座27に結合してチューブ9aを下ベッド6に取付ける。また、油圧シリンダ9のピストンロッド9bは、その先端のボス9cを、上ベッド7に設けた横ビーム25に溶接した結合部25aにピン9dにより接続して取付ける。そしてこのシリンダ9の収縮状態においては、図3、図5に示すように、上ベッド7が下ベッド6に対して最も後部に位置した通常状態となる。一方、例えば縦穴掘削時に掘削場所をオペレータが目視する必要が生じた場合のように、運転室11を前方に突出させる必要が生じた際には油圧シリンダ9を伸長させる。この油圧シリンダ9の伸長により、図1の仮想線あるいは図4に示すように、上ベッド7が下ベッド6に対して前方に突出し、運転室11を前方に突出させることができる。
【0027】
図6、図7はそれぞれガイド部6aの構造とスライドプレートの取付け構造を示すため、図5の前部、後部を示す側面図である。また、図8は図5のA−A断面図、図9、図10はそれぞれ図6のB−B断面図、図7のC−C断面図である。図5〜図10に示すように、この実施の形態のガイド部6aは、断面形状がL字形をなす下部材30と、平板状をなす上部材31とによりコの字形に構成される。図8〜図10に示すように、このガイド部6aを構成する下部材30は、下ベッド6の底板6bの左右両端部上に溶接により固定する。21は下部材30に上部材31を着脱可能に固定する短いボルト、20は下部材30と上部材31とを旋回フレーム4aに着脱可能に固定する長いボルトである。
【0028】
下ベッド6の旋回フレーム4aへの取付け部は、図8に示すように、旋回フレーム4aの運転室取付け部の上板4d上の左右両側に溶接した厚板4cと、この厚板4c上に溶接した平板4bとからなる。そして、ガイド部6aの旋回フレーム4aへの固定は、長いボルト20を、上部材31に設けたボルト挿通孔31aと、下部材30に設けたボルト挿通孔30aと、下ベッド6の底板6bに設けたボルト挿通孔6cに挿通し、旋回フレーム4a上の平板4bおよび厚板4cに設けたねじ孔4fに螺合することにより、下部材30と上部材31とを旋回フレーム4aに締結すると同時に、下ベッド6を旋回フレーム4aに着脱可能に固定する。
【0029】
短いボルト21は、図9に示すように、上部材31に設けたボルト挿通孔31aに通し、下部材30に設けたねじ孔30bに螺合することにより下部材30に上部材31を着脱可能に固定する。
【0030】
一方、上ベッド7は、図8、図9に示すように、底板7bと天板7cとの間に中間板7dを有し、中間板7dと天板7cとの間の左右両側に、これらの間を結合する縦板7eを溶接し、この縦板7eと天板7cとの間に補強板7g,7hを溶接する。なお、図10において、7fは上ベッド7の後部に設けた補強用の縦板である。ガイド部6a内に嵌合する摺動部7aは、中間板7dと底板7bの左右両側に、これらの間を結合する略矩形断面のロッド状部材を溶接することにより構成される。
【0031】
次にガイド部6aに摺動部7aを円滑に摺動させるためのスライドプレートの取付け構造について説明する。図5、図6において、ガイド部6aの前端部からL1の範囲に亘って、すなわちガイド部6aの前部にのみガイド部6a側のスライドプレート34〜36が取付けられる。一方、図5、図7に示すように、摺動部7aにはその後端部からL2の範囲に亘って、すなわち摺動部7aの後部のみに摺動部7a側のスライドプレート41〜43が取付けられる。
【0032】
図11〜図13は下ベッド6側に取付ける固定側スライドプレート34〜36の取付け構造を説明する図ある。図6、図9、図11において、34はL字形をなす下部材30の側部ガイド面に取付ける側部スライドプレートであり、この側部スライドプレート34は、下部材30のコーナー部に溶接した位置規制部材37aと、下部材30の側部ガイド面30cの上部に溶接した位置規制部材37bとの間で上下位置が規制される。また、この側部スライドプレート34は、下部材30の側部ガイド面30cと、摺動部7aの側面との間で相対摺動可能に挟持される。図11において、37cは下部材30の側部ガイド面30cに溶接された位置規制部材であり、スライドプレート34の後端を当接させてスライドプレート34の後端位置を規制するものである。
【0033】
図11〜図13において、55は下部材30の前端面にボルト56により取付けられる抜け止め具であり、この抜け止め具55は、側部スライドプレート34のみならず、後述の下部スライドプレート35、上部スライドプレート36の前端にも当接してこれらのスライドプレート34〜36が前方へ抜け出ることを防止するものである。この抜け止め具55は、摺動部7aが前後に移動可能となるように、内部に摺動部7aが摺動可能に嵌まるようなコの字形を有している。
【0034】
図9、図12に示すように、下部スライドプレート35は、下部材30の下部ガイド面30d上に取付けるものである。この下部スライドプレート35は、下部材30のコーナー部に設けた位置規制部材37aと、下部材30の内側面に溶接した位置規制部材37dとの間で挟持されて左右方向の位置が規制される。図11、図12において、37eは下部材30の下部ガイド面30d上に溶接した位置規制部材であり、この位置規制部材37eは、下部スライドプレート35の後端部を当接させてこの後端部の位置規制を行なうものである。この下部スライドプレート35は、図9に示すように、下部材30の下部ガイド面30dと摺動部7aの下面との間で相対摺動可能に挟持される。
【0035】
図9、図13に示すように、上部スライドプレート36は、下部材30の上部に溶接した位置規制部材37bと、上部材31の内側面に溶接した位置規制部材37fとの間で挟持されて左右方向の位置が規制される。また、図11、図13において、37gは上部材31のガイド面31b上に溶接した位置規制部材であり、この位置規制部材37gは、上部スライドプレート36の後端部を当接させてこの後端部の位置規制を行なうものである。この上部スライドプレート36は、図9に示すように、上部材31のガイド面31bと摺動部7aの上面との間で相対摺動可能に挟持される。
【0036】
図14〜図16は摺動部7a側に取付ける可動側スライドプレート41〜43の配置を説明する図である。図10、図14において、41は側部スライドプレートであり、この側部スライドプレート41は、摺動部7aの側面にその後端部から所定の長さに亘って設けた溝40に嵌め込んで取付けられる。溝40内には位置規制部材44dを固定し、側部スライドプレート41の前端をその位置規制部材44dに当接させることにより前端位置を規制する。また、後端位置は摺動部7aの後端にボルト58により着脱可能に固定される抜け止め具57に当接させて抜け止めする。この抜け止め具57はガイド部6aの内部を前後に移動可能なサイズを有している。図10に示すように、この側部スライドプレート41は、下部材30の側部ガイド面30cとの間で相対摺動可能である。
【0037】
図10、図15において、42は摺動部7aの下面に取付ける下部スライドプレートであり、この下部スライドプレート42は、摺動部7aの下面に溶接した位置規制部材44a,44b間に挟持されて左右の位置が規制される。また、この下部スライドプレート42の前端は、摺動部7aの下面に溶接した位置規制部材44cに当接して前端位置が規制される。また、この下部スライドプレート42の後端位置は、前記抜け止め具57に当接して抜け止めされる。図10に示すように、この下部スライドプレート42は、摺動部7aの下面と下部材30の下部ガイド面30dとの間で相対摺動可能に挟持される。
【0038】
図10、図16において、43は摺動部7aの上面に取付ける上部スライドプレートであり、この上部スライドプレート43は、摺動部7aの上面に溶接した位置規制部材44e,44f間に挟持されて左右の位置が規制される。また、この上部スライドプレート43の前端は、摺動部7aの上面に溶接した位置規制部材44gに当接して前端位置が規制される。また、この上部スライドプレート43の後端位置は、前記抜け止め具57に当接して抜け止めされる。図10に示すように、この上部スライドプレート43は、摺動部7aの上面と上部材31のガイド面31bとの間で相対摺動可能に挟持される。
【0039】
この建設機械の運転室スライド装置を組み立てるには、下ベッド6の下部材30に上部材31を取付けていない状態において、下ベッド6を置き台(図示せず)に固定する。次に、油圧シリンダ9のトラニオン28を、下ベッド6の取付け座27に結合する。また、可撓性を有する支持部材であるケーブルベアの一端を下ベッド6の取付け部に取付けておく。そして上ベッド7を下ベッド6上に吊り込み、摺動部7aがガイド部6aに接触しない位置で止める。その後、ガイド部6aと摺動部7aとの間に、ガイド側(固定側)スライドプレート34〜36と、摺動部側(可動側)スライドプレート41〜43とを差し込む。
【0040】
次に上部材31を下部材30上に載せ、上部材31に溶接した位置規制部材37fと下部材30に溶接した位置規制部材37bとの間でガイド部6a側の上部スライドプレート36を挟持するとともに、上部材31のボルト挿通孔31aを下部材30のねじ孔30bに位置合わせをし、短いボルト21をボルト挿通孔31aに挿通し、ねじ孔30bに螺合することによって下部材30に上部材31を結合する。また、ガイド部材6aの前端にスライドプレート34〜36の抜け止め具55をボルト56によって取付ける。また、摺動部7aの後端にスライドプレート41〜43の抜け止め具57をボルト58によって取付ける。
【0041】
次にケーブルベアの他端を上ベッド7の接続部に接続し、ケーブルベアに電気配線や油圧パイロットホースを通す。また、油圧パイロットホースにソレノイドバルブを接続すると共に、必要な配管、電気配線の接続を行なう。これによりユニット化されたベッド5が完成する。
【0042】
次にこのベッド5を長いボルト20を用いて旋回フレーム4aに図8、図10に示した構造で取付けることができる。
【0043】
上述のように、この実施の形態においては、下ベッド6のガイド部6aを上部材31と下部材30との分割構造で実現したため、下ベッド6に上ベッド7を組み付ける場合には、上部材31を下部材30から分離した状態としておき、上ベッド7を上方から下ろして上ベッド7の摺動部7aを下ベッド6の下部材30上に載せ、その後、上部材31を下部材30にボルト20,21によって結合することで組み付けることができる。このため、従来のように下ベッド6のガイド部6aに上ベッド7の摺動部7aの位置を合わせて前後方向に抜き差しする場合に比較し、製造やメンテナンス時における組立、分解が容易となる上、狭い作業スペースでの組立、分解作業が可能となる。
【0044】
また、本実施の形態のガイド部6aは、従来のように平板を折り曲げてコの字形のガイド部を成形する必要がなく、例えば市販のL字形鋼材を下部材30に用い、上部材31に平板を用いて組み合わせによって実現できる。このため、上ベッド7の摺動部7aを摺動させるガイド部6aのガイド面30c,30d,31bをフラットな面として容易に得ることができる。また、ガイド面30c,30d,31bの平面度を確保するための機械加工が必要になったとしても、上部材31を下部材30から外した状態において、それぞれのガイド面30c,30d,31bの機械加工を行なうことができる。このため、ガイド面30c,30d,31bの平面度を容易に確保することができる。
【0045】
また、このようなガイド面の平面度を出すための作業が不要あるいは簡略化されるため、従来のようにコの字状のガイド部やガイド部や摺動部の全長にわたって多数のスライドプレートを配設し、多数のスライドプレートのシムによる複雑な調整作業が不要になり、組立に要する労力、時間が削減される上、部品点数が削減され、簡単な構造となり、ベッド5のコスト低減に寄与することができる。
【0046】
また、ガイド部6aが折り曲げ不要な部材で構成できるため、ガイド部6aに厚みを持たせるなどして必要な強度を容易に持たせることも可能となる。
【0047】
また、この実施の形態においては、下ベッド6の下部材30をL字形の部材とし、下ベッド6の上部材31を平板状としたので、市販のL形鋼材や平板を用い、必要に応じて加工することにより、容易にガイド部を製造することができる。また、上部材31が平板でなるため、軽量となり、下部材30に上部材31を人手によって組み合わせてボルト20,21により着脱する作業が容易に行なえる。
【0048】
また、この実施の形態においては、ガイド部6a内の前部に固定側スライドプレート34〜36を配置し、摺動部7aの後部に可動側スライドプレート41〜43を配置したので、スライドプレートを全長に亘って設置する必要がなく、しかもスライドプレート34〜36、41〜43をガイド部あるいは摺動部の全長に亘って設けた場合と同等の滑動性能を発揮することができる。そして、ガイド部6a内あるいは摺動部7aの全長に亘ってスライドプレートを設ける場合に比較してスライドプレート34〜36、41〜43を大幅に小形化することができ、コストダウンが可能となる。またスライドプレート34〜36、41〜43の取付け作業や、スライドプレート34〜36、41〜43の摩耗が進行して新品に交換する場合の交換作業が容易となる。
【0049】
また、この実施の形態においては、上部材30と下部材31を結合する短いボルト21と、上部材30と下部材31とを上部旋回体の旋回フレーム4aを固定する長いボルト20とを備えたので、まず短いボルト21を使用して、上部材31と下部材30を固定してベッド5を組立てた後、運転室11をベッド5と共に旋回フレーム4aに取付けることが可能であり、ベッドのユニット化が可能となり、組立てが容易となる。
【0050】
図17は本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態を示す断面図である。この実施の形態のスライド装置は、ガイド部6aを構成する下部材30Xを平板により構成し、上部材31XをL字形の鋼材により構成したものである。なお、34,35,36はガイド部6a内のガイド面と摺動部7aとの間に設けたスライドプレート、37m、37nは下部材30Xに溶接した位置規制部材、37p、37qは上部材31Xに溶接した位置規制部材である。
【0051】
図17に示す実施の形態の構造であっても、上ベッド6と下ベッド7との組立、分解の容易化の効果と、狭い作業スペースで組立、分解が可能になるという効果をあげることができる。なお、ガイド部6aを構成する下部材と上部材を共にL字形の部材によって構成することも可能である。
【0052】
図18は本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態をさらに示す断面図である。この実施の形態のスライド装置は、下ベッド6の左右に設けるガイド部60を、断面形状がコの字形をなす形状に形成する。一方、上ベッド7の左右の摺動部7aを、ガイド部60内に摺動可能に嵌合する第1部分70と、ガイド部60外に位置しかつ上ベッド7に溶接により固定した第2部分71とに分割した構成とする。そして第1部分70にねじ孔70aを設け、第2部分71にボルト挿通孔71aを設け、固定ボルト72をボルト挿通孔71aから挿通して第1部分70のねじ孔70aに螺合することにより、第1部分70を第2部分71に着脱可能に結合する。そして第1部分70を第2部分71から取外した状態では、上ベッド7は下ベッド6のガイド部60に上方より挿入可能となる構成とする。
【0053】
この図18の実施の形態において、上ベッド7を上から降ろして第1部分70と第2部分71とをボルト72によって結合することにより、下ベッド6に上ベッド7を組付けることができ、また、分離時もボルト72を外して上ベッド7を下ベッド6から外して上方に引き上げることで分離することができる。このため、製造時やメンテナンス時において、下ベッド6のガイド部60に対し、上ベッド7の摺動部7aを前後方向に抜き差しする従来構造に比較し、組付け、分離が容易となる上、狭い作業スペースでの組立、分解作業が可能となる。
【0054】
なお図18の実施の形態において、摺動部7aとの摺動面あるいはガイド部60の摺動部7aとの摺動面に焼結含油合金等の自己潤滑性を有するプレートを固着することにより、移動時の騒音発生防止と、滑動機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:下部走行体、3:旋回装置、4:上部旋回体、4a:旋回フレーム、4b:平板、4c:厚板、4d:上板、4f:ねじ孔、5:ベッド、6:下ベッド、6a:ガイド部、6b:底板、7:上ベッド、7a:摺動部、7b:底板、7c:天板、7d:中間板、7e,7f:縦板、7g,7h:補強板、8:運転室取付け孔、9:油圧シリンダ、11:運転室、12:作業装置、13:ブームシリンダ、14:ブーム、16:ユーティリィカバー、17:油圧パワーユニット、18:カウンタウエイト、20:長いボルト、21:短いボルト、22:ステップ取付け用ブラケット、25:横ビーム、27:取付け座、28:トラニオン、30,30X:下部材、30a:ねじ孔、30b:ボルト挿通孔、30c,30d:ガイド面、31,31X:上部材、31a:ボルト挿通孔、31b:ガイド面、34〜36、41〜43:スライドプレート、37a〜37q,44a〜44g:位置規制部材、55,57:抜け止め具、56,58:ボルト、60:ガイド部、70:第1部分、70a:ねじ孔、71:第2部分、71a:ボルト挿通孔、72:ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の運転室を前後にスライドさせる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械には、掘削作業等において視界を確保するために運転室を前後にスライドさせる装置を有するものがある。従来は、運転室をスライドさせる装置として、例えば、特許文献1に記載の構造が採用されている。この従来のスライド装置は、固定側フレームである下ベッドの左右両側に断面形状がコの字状に折り曲げられたガイド部を設け、そのガイド部の内側に、上ベッドの両側に設けられた断面形状がコの字状をなす可動スライドフレームの摺動部を入れ、その摺動部とガイド部との間にスライドプレートを介在させて摺動部がガイド部に対して移動可能とした構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−159132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の運転室のスライド装置において、下ベッドに上ベッドを取付けるためには、上ベッドを下ベッドの前方側から差込んでスライドさせなくてはならないため、広い作業スペースが必要になる上、組立に手間がかかる。また、コの字状のガイド部内部に設けられたスライドプレートの交換のためには、上ベッドを下ベッドから抜去って分解しなければならず、メンテナンス作業に手間がかかる。
【0005】
また、上ベッドを支持するために下ベッドの左右のガイド部の上下にそれぞれ全長にわたって数個(例えば左側、右側のそれぞれの上下に5個ずつ)ずつ、合計例えば20個のスライドプレートを配設すると共に、上ベッドの左右の摺動部の側面にも複数個のスライドプレートを設けており、その上、スライドプレートとガイド部または摺動部との間に介在させるシム等の高さ調整手段も必要となるので、部品点数や組立工数も多く、コスト高となる。
【0006】
また、下ベッドに設けるガイド部は、平板をコの字状に折り曲げて形成しているが、折り曲げ度合の過不足が生じ易く、平面度を出すことが困難である。そして、この平面度を得ようとしても、コの字形をなすガイド部の内部に工具を入れて加工することが困難であり、平面度が出し難い。そこで上ベッドの下ベッドに対する円滑な移動を可能にするためには、シム等による多数のスライドプレートの高さ調整等、複雑で工数の多い調整作業が必要となり、調整作業に労力および手間を要する。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、製造やメンテナンスにおける組立及び分解を狭いスペースにて容易に行うことが可能な建設機械の運転室スライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の建設機械の運転室スライド装置は、上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとを備えた建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に設けるガイド部を、上部材と下部材とからなる分割構造にすると共に、前記上部材と前記下部材とがボルトにより着脱可能に結合されて断面形状がコの字形のガイド部を形成する構造とし、
前記ガイド部内に、前記上ベッドの左右に設けた摺動部を摺動可能に嵌合し、
前記上部材が前記下部材から取外された状態では、前記上ベッドの前記摺動部は前記下ベッドの前記下部材に上方より挿入可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の建設機械の運転室スライド装置は、請求項1に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの前記ガイド部の前部内側に前記上ベッドの移動に伴い前記摺動部を摺動させる固定のスライドプレートを配置し、前記上ベッドの前記摺動部の後部外側に前記上ベッドの移動に伴い前記ガイド部内のガイド面を摺動するスライドプレートを配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の建設機械の運転室スライド装置は、請求項1または請求項2に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下部材をL字形に形成し、前記上部材を平板状に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の建設機械の運転室スライド装置は、請求項3に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記ガイド部の前記上部材を前記下部材に固定する複数の短いボルトと、前記上部材および前記下部材を前記上部旋回体の旋回フレームに固定する複数の長いボルトとを備え、
前記短いボルトは、前記上部材に設けたボルト挿通孔に挿通して前記下部材に設けたねじ孔に螺合し、
前記長いボルトは、前記上部材および前記下部材に設けたボルト挿通孔に挿通し、前記上部旋回体の旋回フレーム側に設けたねじ孔に螺合したことを特徴とする。
【0012】
請求項5の建設機械の運転室スライド装置は、上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとからなる建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に、断面形状がコの字形をなすガイド部を設け、
前記上ベッドの左右の摺動部を前記ガイド部内に摺動可能に嵌合し、
前記摺動部は、前記ガイド部内に嵌まる第1部分と、前記ガイド部外に位置しかつ前記上ベッド側に固定した第2部分とに分割し、
前記第1部分を前記第2部分に固定ボルトにより着脱可能に結合し、
前記第1部分を前記第2部分から取外した状態では、前記上ベッドは前記下ベッドのガイド部に上方より挿入可能となる構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、下ベッドのガイド部を上部材と下部材との分割構造で実現したため、下ベッドに上ベッドを組み付ける場合には、上部材を下部材から分離した状態としておき、上ベッドを上方から下ろして上ベッドの摺動部を下ベッドの下部材上に置き、その後、上部材を下部材にボルトによって結合することで組み付けることができる。このため、製造やメンテナンスに際し、従来のように下ベッドのガイド部に上ベッドの摺動部の位置を合わせて前後方向に抜き差しする場合に比較し、狭いスペースでの作業が可能となる上、組立、分解が容易となる。
【0014】
また、本発明のガイド部は、従来のように平板を折り曲げてコの字形のガイド部を成形する必要がなく、例えば市販のL字形鋼材と平板との組み合わせ、あるいはL字形鋼材どうしの組み合わせでコの字形のガイド部が構成できる。このため、ガイド面の平面度が得易く、平面度を出すための機械加工が不要になる。また、ガイド面の平面度を確保するための機械加工が必要になったとしても、上部材を下部材から外した状態において、それぞれのガイド面の機械加工を行なうことができる。このため、ガイド面の平面度を容易に確保することができる。
【0015】
また、従来は一体成形により断面形状がコの字状をなすガイド部を備えるとともに、そのガイド部と摺動部にそれぞれ多数のスライドプレートを設けてそれぞれシムによる摺動面の位置を調整していたが、この従来技術に比較し、本発明によればガイド面の平面度を出すための作業が不要あるいは簡略化されるため、調整作業の工数を減少させることが可能となり、組立に要する労力、時間が削減され、部品点数が削減され、簡単な構造となり、ベッドのコスト低減に寄与することができる。
【0016】
また、ガイド部が折り曲げ不要な部材で構成できるため、ガイド部に厚みを持たせるなどして必要な強度を容易に持たせることが可能となる。
【0017】
請求項2の発明によれば、ガイド部内の前部と、前記摺動部の後部に滑動用のスライドプレートを配置したので、スライドプレートを全長に亘って設置する必要がなく、しかもスライドプレートをガイド部あるいは摺動部の全長に亘って設けた場合と同等の滑動性能を発揮することができる。そして、ガイド部内あるいは摺動部の全長に亘ってスライドプレートを設ける場合に比較してスライドプレートを大幅に小形化することができ、コストダウンが可能となる。また、スライドプレートが小形、軽量化されるため、スライドプレートの取付け作業や、スライドプレートの摩耗が進行して新品に交換する場合の交換作業が容易となる。
【0018】
請求項3の発明によれば、下ベッドの下部材をL字形の部材とし、下ベッドの上部材を平板としたので、市販の鋼材や平板を用い、必要に応じて加工することにより、容易にガイド部を製造することができる。また、上部材が平板でなるため、軽量となり、下部材に上部材を人手によって組み合わせてボルトにより着脱する作業が容易に行なえる。
【0019】
請求項4の発明によれば、ベッドの固定用ボルトを、上部材と下部材を結合する短いボルトと、上部材と下部材とを同時に上部旋回体の旋回フレームに固定する長いボルトとの2種類としたため、まず短いボルトを使用して、上部材と下部材を固定して下ベッドに上ベッドを組付けかつ配線、配管等を組付けてベッドを組立てた後、長いボルトを用いてこのベッドを旋回フレームに取付けることが可能であり、ベッドのユニット化が可能となり、組立がさらに容易となる。
【0020】
請求項5の発明によれば、摺動部の第1部分を下ベッドのガイド部に予め装着しておき、上ベッドを下ベッド上に降ろして摺動部の第1部分に摺動部の第2部分を対面させ、ボルトによって第1部分と第2部分とを結合することにより、下ベッドに上ベッドを組付けることができ、また、分離時もボルトを外して上ベッドを上方に引き上げることで下ベッドから分離することができる。このため、製造時やメンテナンス時において、下ベッドのガイド部に対し、上ベッドの摺動部を前後方向に抜き差しする従来構造に比較し、組立、分解が容易となる。また、狭いスペースで組立、分解作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用する建設機械の一例を示す側面図である。
【図2】図1の建設機械の旋回フレームを示す平面図である。
【図3】本発明の建設機械の運転室スライド装置の一実施の形態をベッドの収縮状態で示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置をベッドの伸長状態で示す斜視図である。
【図5】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置をベッドの収縮状態で示す側面図である。
【図6】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置におけるベッドの前部の構成を示す側面図である。
【図7】本実施の形態の建設機械の運転室スライド装置におけるベッドの後部の構成を示す側面図である。
【図8】図5のA−A拡大断面図である。
【図9】図6のB−B拡大断面図である。
【図10】図7のC−C拡大断面図である。
【図11】本実施の形態において、下ベッド側の側部スライドプレートの配置を説明するため、嵌合部を下ベッドの内側から見た図である。
【図12】本実施の形態において、下ベッド側下部スライドプレートの配置を説明するため、上部材を外してガイド部を上方から見た図である。
【図13】本実施の形態において、下ベッド側上部スライドプレートの配置を説明するため、上部材を下面側から見た図である。
【図14】本実施の形態において、上ベッド側側部スライドプレートの配置を説明するため、摺動部を側方から見た図である。
【図15】本実施の形態において、上ベッド側下部スライドプレートの配置を説明するため、摺動部を下方から見た図である。
【図16】本実施の形態において、上ベッド側上部スライドプレートの配置を説明するため、摺動部を上方から見た図である。
【図17】本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態を示す図9相当断面図である。
【図18】本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態を示す図8相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明が適用される建設機械の一例を示す側面図である。1は下部走行体であり、この下部走行体1は、旋回装置3を上部に設置した走行体フレームの左右にサイドフレーム1aを有し、このサイドフレーム1aの後部に走行モータ(図示せず)により駆動される駆動輪1bを取付け、サイドフレーム1aの前部に従動輪1cを取付け、これらに履帯1dを掛け回して構成される。上部旋回体4は走行体フレーム上に旋回装置3を介して旋回可能に設置される。
【0023】
上部旋回体4を構成する旋回フレーム4aは、図2の平面図に示すように、片側(図示例が左側)の前部にベッド5を設置する。そして、このベッド5は旋回フレーム4a上に固定される下ベッド6と、この下ベッド6上に前後動可能に装着した上ベッド7とからなり、図1に示すように上ベッド7上に運転室11やユーティリィカバー16を搭載する。ユーティリィカバー16は、各種配管や必要部品を収容する空間を覆うカバーである。また、旋回フレーム4a上の後部に油圧パワーユニット17やカウンタウエイト18等を搭載する。なお、油圧パワーユニット17としては、エンジンを動力源として用いる場合と、電動モータを用いる場合がある。
【0024】
12は旋回フレーム4aに取付けた作業装置であり、ブームシリンダ13によりブーム14を俯仰可能に取付け、このブーム14にアームをアームシリンダにより回動可能に取付けると共に、必要に応じて伸縮アーム等を取付け、これらの先端に例えばバックホウバケット、クラムシェルバケット等の作業具を取付けて構成するが、ブーム14やブームシリンダ13以外の構成部品についてはいずれも図示を省略している。なお、図2において、10は旋回装置3の取付け部である。また、19aはブーム14をピン(図示せず)による取付けるブラケットを示し、19bはブームシリンダ13をピン(図示せず)による取付けるブラケットを示す。
【0025】
図3はベッド5を収縮させた状態を示す斜視図、図4はベッド5を伸長させた状態を示す斜視図である。また、図5はベッド5を収縮させた状態を示す側面図である。図4に示すように、上ベッド7の左右両側には摺動部7aを設け、下ベッド6の両側には摺動部7aを摺動可能に嵌合するコの字形のガイド部6aを設ける。8は弾性ゴム(図示せず)を介して上ベッド7に運転室11を取付けるために上ベッド7に設けた取付け孔である。また、22は上ベッド7の片側に設けたステップ取付け用のブラケットである。
【0026】
図3、図4において、9は上ベッド7を下ベッド6に対して前後動させる油圧シリンダである。この油圧シリンダ9はチューブ9aの中間部に設けたトラニオン28を、下ベッド6に設けた一対の取付け座27に結合してチューブ9aを下ベッド6に取付ける。また、油圧シリンダ9のピストンロッド9bは、その先端のボス9cを、上ベッド7に設けた横ビーム25に溶接した結合部25aにピン9dにより接続して取付ける。そしてこのシリンダ9の収縮状態においては、図3、図5に示すように、上ベッド7が下ベッド6に対して最も後部に位置した通常状態となる。一方、例えば縦穴掘削時に掘削場所をオペレータが目視する必要が生じた場合のように、運転室11を前方に突出させる必要が生じた際には油圧シリンダ9を伸長させる。この油圧シリンダ9の伸長により、図1の仮想線あるいは図4に示すように、上ベッド7が下ベッド6に対して前方に突出し、運転室11を前方に突出させることができる。
【0027】
図6、図7はそれぞれガイド部6aの構造とスライドプレートの取付け構造を示すため、図5の前部、後部を示す側面図である。また、図8は図5のA−A断面図、図9、図10はそれぞれ図6のB−B断面図、図7のC−C断面図である。図5〜図10に示すように、この実施の形態のガイド部6aは、断面形状がL字形をなす下部材30と、平板状をなす上部材31とによりコの字形に構成される。図8〜図10に示すように、このガイド部6aを構成する下部材30は、下ベッド6の底板6bの左右両端部上に溶接により固定する。21は下部材30に上部材31を着脱可能に固定する短いボルト、20は下部材30と上部材31とを旋回フレーム4aに着脱可能に固定する長いボルトである。
【0028】
下ベッド6の旋回フレーム4aへの取付け部は、図8に示すように、旋回フレーム4aの運転室取付け部の上板4d上の左右両側に溶接した厚板4cと、この厚板4c上に溶接した平板4bとからなる。そして、ガイド部6aの旋回フレーム4aへの固定は、長いボルト20を、上部材31に設けたボルト挿通孔31aと、下部材30に設けたボルト挿通孔30aと、下ベッド6の底板6bに設けたボルト挿通孔6cに挿通し、旋回フレーム4a上の平板4bおよび厚板4cに設けたねじ孔4fに螺合することにより、下部材30と上部材31とを旋回フレーム4aに締結すると同時に、下ベッド6を旋回フレーム4aに着脱可能に固定する。
【0029】
短いボルト21は、図9に示すように、上部材31に設けたボルト挿通孔31aに通し、下部材30に設けたねじ孔30bに螺合することにより下部材30に上部材31を着脱可能に固定する。
【0030】
一方、上ベッド7は、図8、図9に示すように、底板7bと天板7cとの間に中間板7dを有し、中間板7dと天板7cとの間の左右両側に、これらの間を結合する縦板7eを溶接し、この縦板7eと天板7cとの間に補強板7g,7hを溶接する。なお、図10において、7fは上ベッド7の後部に設けた補強用の縦板である。ガイド部6a内に嵌合する摺動部7aは、中間板7dと底板7bの左右両側に、これらの間を結合する略矩形断面のロッド状部材を溶接することにより構成される。
【0031】
次にガイド部6aに摺動部7aを円滑に摺動させるためのスライドプレートの取付け構造について説明する。図5、図6において、ガイド部6aの前端部からL1の範囲に亘って、すなわちガイド部6aの前部にのみガイド部6a側のスライドプレート34〜36が取付けられる。一方、図5、図7に示すように、摺動部7aにはその後端部からL2の範囲に亘って、すなわち摺動部7aの後部のみに摺動部7a側のスライドプレート41〜43が取付けられる。
【0032】
図11〜図13は下ベッド6側に取付ける固定側スライドプレート34〜36の取付け構造を説明する図ある。図6、図9、図11において、34はL字形をなす下部材30の側部ガイド面に取付ける側部スライドプレートであり、この側部スライドプレート34は、下部材30のコーナー部に溶接した位置規制部材37aと、下部材30の側部ガイド面30cの上部に溶接した位置規制部材37bとの間で上下位置が規制される。また、この側部スライドプレート34は、下部材30の側部ガイド面30cと、摺動部7aの側面との間で相対摺動可能に挟持される。図11において、37cは下部材30の側部ガイド面30cに溶接された位置規制部材であり、スライドプレート34の後端を当接させてスライドプレート34の後端位置を規制するものである。
【0033】
図11〜図13において、55は下部材30の前端面にボルト56により取付けられる抜け止め具であり、この抜け止め具55は、側部スライドプレート34のみならず、後述の下部スライドプレート35、上部スライドプレート36の前端にも当接してこれらのスライドプレート34〜36が前方へ抜け出ることを防止するものである。この抜け止め具55は、摺動部7aが前後に移動可能となるように、内部に摺動部7aが摺動可能に嵌まるようなコの字形を有している。
【0034】
図9、図12に示すように、下部スライドプレート35は、下部材30の下部ガイド面30d上に取付けるものである。この下部スライドプレート35は、下部材30のコーナー部に設けた位置規制部材37aと、下部材30の内側面に溶接した位置規制部材37dとの間で挟持されて左右方向の位置が規制される。図11、図12において、37eは下部材30の下部ガイド面30d上に溶接した位置規制部材であり、この位置規制部材37eは、下部スライドプレート35の後端部を当接させてこの後端部の位置規制を行なうものである。この下部スライドプレート35は、図9に示すように、下部材30の下部ガイド面30dと摺動部7aの下面との間で相対摺動可能に挟持される。
【0035】
図9、図13に示すように、上部スライドプレート36は、下部材30の上部に溶接した位置規制部材37bと、上部材31の内側面に溶接した位置規制部材37fとの間で挟持されて左右方向の位置が規制される。また、図11、図13において、37gは上部材31のガイド面31b上に溶接した位置規制部材であり、この位置規制部材37gは、上部スライドプレート36の後端部を当接させてこの後端部の位置規制を行なうものである。この上部スライドプレート36は、図9に示すように、上部材31のガイド面31bと摺動部7aの上面との間で相対摺動可能に挟持される。
【0036】
図14〜図16は摺動部7a側に取付ける可動側スライドプレート41〜43の配置を説明する図である。図10、図14において、41は側部スライドプレートであり、この側部スライドプレート41は、摺動部7aの側面にその後端部から所定の長さに亘って設けた溝40に嵌め込んで取付けられる。溝40内には位置規制部材44dを固定し、側部スライドプレート41の前端をその位置規制部材44dに当接させることにより前端位置を規制する。また、後端位置は摺動部7aの後端にボルト58により着脱可能に固定される抜け止め具57に当接させて抜け止めする。この抜け止め具57はガイド部6aの内部を前後に移動可能なサイズを有している。図10に示すように、この側部スライドプレート41は、下部材30の側部ガイド面30cとの間で相対摺動可能である。
【0037】
図10、図15において、42は摺動部7aの下面に取付ける下部スライドプレートであり、この下部スライドプレート42は、摺動部7aの下面に溶接した位置規制部材44a,44b間に挟持されて左右の位置が規制される。また、この下部スライドプレート42の前端は、摺動部7aの下面に溶接した位置規制部材44cに当接して前端位置が規制される。また、この下部スライドプレート42の後端位置は、前記抜け止め具57に当接して抜け止めされる。図10に示すように、この下部スライドプレート42は、摺動部7aの下面と下部材30の下部ガイド面30dとの間で相対摺動可能に挟持される。
【0038】
図10、図16において、43は摺動部7aの上面に取付ける上部スライドプレートであり、この上部スライドプレート43は、摺動部7aの上面に溶接した位置規制部材44e,44f間に挟持されて左右の位置が規制される。また、この上部スライドプレート43の前端は、摺動部7aの上面に溶接した位置規制部材44gに当接して前端位置が規制される。また、この上部スライドプレート43の後端位置は、前記抜け止め具57に当接して抜け止めされる。図10に示すように、この上部スライドプレート43は、摺動部7aの上面と上部材31のガイド面31bとの間で相対摺動可能に挟持される。
【0039】
この建設機械の運転室スライド装置を組み立てるには、下ベッド6の下部材30に上部材31を取付けていない状態において、下ベッド6を置き台(図示せず)に固定する。次に、油圧シリンダ9のトラニオン28を、下ベッド6の取付け座27に結合する。また、可撓性を有する支持部材であるケーブルベアの一端を下ベッド6の取付け部に取付けておく。そして上ベッド7を下ベッド6上に吊り込み、摺動部7aがガイド部6aに接触しない位置で止める。その後、ガイド部6aと摺動部7aとの間に、ガイド側(固定側)スライドプレート34〜36と、摺動部側(可動側)スライドプレート41〜43とを差し込む。
【0040】
次に上部材31を下部材30上に載せ、上部材31に溶接した位置規制部材37fと下部材30に溶接した位置規制部材37bとの間でガイド部6a側の上部スライドプレート36を挟持するとともに、上部材31のボルト挿通孔31aを下部材30のねじ孔30bに位置合わせをし、短いボルト21をボルト挿通孔31aに挿通し、ねじ孔30bに螺合することによって下部材30に上部材31を結合する。また、ガイド部材6aの前端にスライドプレート34〜36の抜け止め具55をボルト56によって取付ける。また、摺動部7aの後端にスライドプレート41〜43の抜け止め具57をボルト58によって取付ける。
【0041】
次にケーブルベアの他端を上ベッド7の接続部に接続し、ケーブルベアに電気配線や油圧パイロットホースを通す。また、油圧パイロットホースにソレノイドバルブを接続すると共に、必要な配管、電気配線の接続を行なう。これによりユニット化されたベッド5が完成する。
【0042】
次にこのベッド5を長いボルト20を用いて旋回フレーム4aに図8、図10に示した構造で取付けることができる。
【0043】
上述のように、この実施の形態においては、下ベッド6のガイド部6aを上部材31と下部材30との分割構造で実現したため、下ベッド6に上ベッド7を組み付ける場合には、上部材31を下部材30から分離した状態としておき、上ベッド7を上方から下ろして上ベッド7の摺動部7aを下ベッド6の下部材30上に載せ、その後、上部材31を下部材30にボルト20,21によって結合することで組み付けることができる。このため、従来のように下ベッド6のガイド部6aに上ベッド7の摺動部7aの位置を合わせて前後方向に抜き差しする場合に比較し、製造やメンテナンス時における組立、分解が容易となる上、狭い作業スペースでの組立、分解作業が可能となる。
【0044】
また、本実施の形態のガイド部6aは、従来のように平板を折り曲げてコの字形のガイド部を成形する必要がなく、例えば市販のL字形鋼材を下部材30に用い、上部材31に平板を用いて組み合わせによって実現できる。このため、上ベッド7の摺動部7aを摺動させるガイド部6aのガイド面30c,30d,31bをフラットな面として容易に得ることができる。また、ガイド面30c,30d,31bの平面度を確保するための機械加工が必要になったとしても、上部材31を下部材30から外した状態において、それぞれのガイド面30c,30d,31bの機械加工を行なうことができる。このため、ガイド面30c,30d,31bの平面度を容易に確保することができる。
【0045】
また、このようなガイド面の平面度を出すための作業が不要あるいは簡略化されるため、従来のようにコの字状のガイド部やガイド部や摺動部の全長にわたって多数のスライドプレートを配設し、多数のスライドプレートのシムによる複雑な調整作業が不要になり、組立に要する労力、時間が削減される上、部品点数が削減され、簡単な構造となり、ベッド5のコスト低減に寄与することができる。
【0046】
また、ガイド部6aが折り曲げ不要な部材で構成できるため、ガイド部6aに厚みを持たせるなどして必要な強度を容易に持たせることも可能となる。
【0047】
また、この実施の形態においては、下ベッド6の下部材30をL字形の部材とし、下ベッド6の上部材31を平板状としたので、市販のL形鋼材や平板を用い、必要に応じて加工することにより、容易にガイド部を製造することができる。また、上部材31が平板でなるため、軽量となり、下部材30に上部材31を人手によって組み合わせてボルト20,21により着脱する作業が容易に行なえる。
【0048】
また、この実施の形態においては、ガイド部6a内の前部に固定側スライドプレート34〜36を配置し、摺動部7aの後部に可動側スライドプレート41〜43を配置したので、スライドプレートを全長に亘って設置する必要がなく、しかもスライドプレート34〜36、41〜43をガイド部あるいは摺動部の全長に亘って設けた場合と同等の滑動性能を発揮することができる。そして、ガイド部6a内あるいは摺動部7aの全長に亘ってスライドプレートを設ける場合に比較してスライドプレート34〜36、41〜43を大幅に小形化することができ、コストダウンが可能となる。またスライドプレート34〜36、41〜43の取付け作業や、スライドプレート34〜36、41〜43の摩耗が進行して新品に交換する場合の交換作業が容易となる。
【0049】
また、この実施の形態においては、上部材30と下部材31を結合する短いボルト21と、上部材30と下部材31とを上部旋回体の旋回フレーム4aを固定する長いボルト20とを備えたので、まず短いボルト21を使用して、上部材31と下部材30を固定してベッド5を組立てた後、運転室11をベッド5と共に旋回フレーム4aに取付けることが可能であり、ベッドのユニット化が可能となり、組立てが容易となる。
【0050】
図17は本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態を示す断面図である。この実施の形態のスライド装置は、ガイド部6aを構成する下部材30Xを平板により構成し、上部材31XをL字形の鋼材により構成したものである。なお、34,35,36はガイド部6a内のガイド面と摺動部7aとの間に設けたスライドプレート、37m、37nは下部材30Xに溶接した位置規制部材、37p、37qは上部材31Xに溶接した位置規制部材である。
【0051】
図17に示す実施の形態の構造であっても、上ベッド6と下ベッド7との組立、分解の容易化の効果と、狭い作業スペースで組立、分解が可能になるという効果をあげることができる。なお、ガイド部6aを構成する下部材と上部材を共にL字形の部材によって構成することも可能である。
【0052】
図18は本発明の運転室スライド装置の他の実施の形態をさらに示す断面図である。この実施の形態のスライド装置は、下ベッド6の左右に設けるガイド部60を、断面形状がコの字形をなす形状に形成する。一方、上ベッド7の左右の摺動部7aを、ガイド部60内に摺動可能に嵌合する第1部分70と、ガイド部60外に位置しかつ上ベッド7に溶接により固定した第2部分71とに分割した構成とする。そして第1部分70にねじ孔70aを設け、第2部分71にボルト挿通孔71aを設け、固定ボルト72をボルト挿通孔71aから挿通して第1部分70のねじ孔70aに螺合することにより、第1部分70を第2部分71に着脱可能に結合する。そして第1部分70を第2部分71から取外した状態では、上ベッド7は下ベッド6のガイド部60に上方より挿入可能となる構成とする。
【0053】
この図18の実施の形態において、上ベッド7を上から降ろして第1部分70と第2部分71とをボルト72によって結合することにより、下ベッド6に上ベッド7を組付けることができ、また、分離時もボルト72を外して上ベッド7を下ベッド6から外して上方に引き上げることで分離することができる。このため、製造時やメンテナンス時において、下ベッド6のガイド部60に対し、上ベッド7の摺動部7aを前後方向に抜き差しする従来構造に比較し、組付け、分離が容易となる上、狭い作業スペースでの組立、分解作業が可能となる。
【0054】
なお図18の実施の形態において、摺動部7aとの摺動面あるいはガイド部60の摺動部7aとの摺動面に焼結含油合金等の自己潤滑性を有するプレートを固着することにより、移動時の騒音発生防止と、滑動機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:下部走行体、3:旋回装置、4:上部旋回体、4a:旋回フレーム、4b:平板、4c:厚板、4d:上板、4f:ねじ孔、5:ベッド、6:下ベッド、6a:ガイド部、6b:底板、7:上ベッド、7a:摺動部、7b:底板、7c:天板、7d:中間板、7e,7f:縦板、7g,7h:補強板、8:運転室取付け孔、9:油圧シリンダ、11:運転室、12:作業装置、13:ブームシリンダ、14:ブーム、16:ユーティリィカバー、17:油圧パワーユニット、18:カウンタウエイト、20:長いボルト、21:短いボルト、22:ステップ取付け用ブラケット、25:横ビーム、27:取付け座、28:トラニオン、30,30X:下部材、30a:ねじ孔、30b:ボルト挿通孔、30c,30d:ガイド面、31,31X:上部材、31a:ボルト挿通孔、31b:ガイド面、34〜36、41〜43:スライドプレート、37a〜37q,44a〜44g:位置規制部材、55,57:抜け止め具、56,58:ボルト、60:ガイド部、70:第1部分、70a:ねじ孔、71:第2部分、71a:ボルト挿通孔、72:ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとを備えた建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に設けるガイド部を、上部材と下部材とからなる分割構造にすると共に、前記上部材と前記下部材とがボルトにより着脱可能に結合されて断面形状がコの字形のガイド部を形成する構造とし、
前記ガイド部内に、前記上ベッドの左右に設けた摺動部を摺動可能に嵌合し、
前記上部材が前記下部材から取外された状態では、前記上ベッドの前記摺動部は前記下ベッドの前記下部材に上方より挿入可能としたことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの前記ガイド部の前部内側に前記上ベッドの移動に伴い前記摺動部を摺動させる固定のスライドプレートを配置し、前記上ベッドの前記摺動部の後部外側に前記上ベッドの移動に伴い前記ガイド部内のガイド面を摺動するスライドプレートを配置したことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下部材をL字形に形成し、前記上部材を平板状に形成したことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記ガイド部の前記上部材を前記下部材に固定する複数の短いボルトと、前記上部材および前記下部材を前記上部旋回体の旋回フレームに固定する複数の長いボルトとを備え、
前記短いボルトは、前記上部材に設けたボルト挿通孔に挿通して前記下部材に設けたねじ孔に螺合し、
前記長いボルトは、前記上部材および前記下部材に設けたボルト挿通孔に挿通し、前記上部旋回体の旋回フレーム側に設けたねじ孔に螺合したことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項5】
上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとからなる建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に、断面形状がコの字形をなすガイド部を設け、
前記上ベッドの左右の摺動部を前記ガイド部内に摺動可能に嵌合し、
前記摺動部は、前記ガイド部内に嵌まる第1部分と、前記ガイド部外に位置しかつ前記上ベッド側に固定した第2部分とに分割し、
前記第1部分を前記第2部分に固定ボルトにより着脱可能に結合し、
前記第1部分を前記第2部分から取外した状態では、前記上ベッドは前記下ベッドのガイド部に上方より挿入可能となる構成にしたことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項1】
上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとを備えた建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に設けるガイド部を、上部材と下部材とからなる分割構造にすると共に、前記上部材と前記下部材とがボルトにより着脱可能に結合されて断面形状がコの字形のガイド部を形成する構造とし、
前記ガイド部内に、前記上ベッドの左右に設けた摺動部を摺動可能に嵌合し、
前記上部材が前記下部材から取外された状態では、前記上ベッドの前記摺動部は前記下ベッドの前記下部材に上方より挿入可能としたことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの前記ガイド部の前部内側に前記上ベッドの移動に伴い前記摺動部を摺動させる固定のスライドプレートを配置し、前記上ベッドの前記摺動部の後部外側に前記上ベッドの移動に伴い前記ガイド部内のガイド面を摺動するスライドプレートを配置したことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記下部材をL字形に形成し、前記上部材を平板状に形成したことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械の運転室スライド装置において、
前記ガイド部の前記上部材を前記下部材に固定する複数の短いボルトと、前記上部材および前記下部材を前記上部旋回体の旋回フレームに固定する複数の長いボルトとを備え、
前記短いボルトは、前記上部材に設けたボルト挿通孔に挿通して前記下部材に設けたねじ孔に螺合し、
前記長いボルトは、前記上部材および前記下部材に設けたボルト挿通孔に挿通し、前記上部旋回体の旋回フレーム側に設けたねじ孔に螺合したことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【請求項5】
上部旋回体に取付けられた下ベッドと、前記下ベッドに前後方向に移動可能に装着され、かつ運転室を搭載する上ベッドとからなる建設機械の運転室スライド装置において、
前記下ベッドの左右に、断面形状がコの字形をなすガイド部を設け、
前記上ベッドの左右の摺動部を前記ガイド部内に摺動可能に嵌合し、
前記摺動部は、前記ガイド部内に嵌まる第1部分と、前記ガイド部外に位置しかつ前記上ベッド側に固定した第2部分とに分割し、
前記第1部分を前記第2部分に固定ボルトにより着脱可能に結合し、
前記第1部分を前記第2部分から取外した状態では、前記上ベッドは前記下ベッドのガイド部に上方より挿入可能となる構成にしたことを特徴とする建設機械の運転室スライド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−69101(P2011−69101A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220694(P2009−220694)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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