説明

建設機械の開閉カバー装置

【課題】 開放姿勢のカバー体のロック、ロック解除を容易に行えるようにする。
【解決手段】 カバー体7側のヒンジ11に、係止溝11dが形成された円弧状のガイド面部11cを設ける一方、躯体側には、ガイド面部側に向けて押圧付勢されるローラ15を設け、カバー体が開放姿勢に変姿することに伴いローラが係止溝に自動的に係止してカバー体の閉鎖姿勢側への変姿を規制するよう構成すると共に、ローラと係止溝との係止を解除するためのケーブル18および把手部20を設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種建設作業、土木作業に用いられる油圧ショベル等の建設機械の開閉カバー装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種建設機械には、点検、整備等の必要時に開放できるよう開閉自在なカバー体が各種設けられているが、これが例えば、上部旋回体に配設されるエンジンルーム等の開閉を行うためのカバー体である場合、該カバー体を、開口部の上面部および一側面部との両者を開閉すべく略逆L字形状のものとし、その上面奥方の基端縁部を上部旋回体上面側に上下揺動自在に軸支して、エンジンルームの一側面部と上面部とを大きく開放できるようにした、所謂ウイング式のものがある。ところでこの様なカバー体を開放して点検、整備等を行う場合、カバー体が不用意に閉じることがないよう、カバー体を開放姿勢にロックすることが要求される。そこで従来、図7に示す如く、開放姿勢のカバー体7の下部と開口部の下縁部との間にステー25を支架させ、これによりカバー体を開放姿勢にロックするようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが前記従来のものは、カバー体の開閉の度に作業者がステーの取付け、取外しを行わなければならず、面倒かつ煩雑であるという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題があった。さらに、前記従来のものは、作業者がカバー体を手に持って開閉操作をし、かつステーの着脱作業をするものであるため、カバー体は、最大限、作業者の手が届くまでの範囲しか開放することができず、そうするとこの範囲は、背の低い人を基準とする必要があって、カバー体の開口高さが制限されたものにならざるを得ず作業しづらいという解決すべき課題もあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、カバー体を、躯体側に開設の開口部を開閉すべく開放姿勢と閉鎖姿勢に揺動変姿自在に軸支してなる開閉カバー装置において、前記カバー体に一体的に設けられ、カバー体の揺動支軸を略中心とする円弧状面が形成されるガイド部と、該ガイド部に凹設される係止溝と、ガイド部に当接する当接姿勢とガイド部から離間する離間姿勢とに揺動変姿自在に躯体側に支持される係止部材と、該係止部材を当接姿勢側に向けて常時押圧する弾機と、該弾機の押圧力に抗して係止部材を離間姿勢側に変姿せしめるための操作手段とを設けると共に、前記係止部材は、カバー体の閉鎖姿勢および変姿途中においては前記円弧状面にガイドされる状態でガイド部に対して相対移動できるが、カバー体の開放姿勢では係止溝に係止してカバー体の閉鎖姿勢側への変姿を規制するよう設定されているものである。この様にすることにより、カバー体を閉鎖姿勢から開放姿勢に変姿させることに伴い、係止部材が自動的に係止溝に係止してカバー体の閉鎖姿勢側への変姿を規制することになり、そしてこの規制は、操作手段を用いて係止部材を離間姿勢とすることで解除できるから、従来のように作業者がいちいちステーを着脱する必要がなくなって、作業性が向上する。このものは、開口部が、上面部と一側面部とが連続して開口しているもので、カバー体が、該開口部の上面部および一側面部との両者を開閉すべく略逆L字形状のもので、その上面奥方の基端縁部が躯体側に上下揺動自在に軸支されている開閉カバー装置に実施できる。さらにこのものにおいて、カバー体を常時開放姿勢側に向けて付勢する付勢弾機と、該付勢弾機の付勢力に抗して開放姿勢のカバー体を閉鎖姿勢側に変姿させるための操作手段とを設けることにより、カバー体の開閉操作を容易に行えると共に、開放姿勢のカバー体7の開口高さを充分に高く設定できる。また、ガイド部を、カバー体を躯体側に揺動自在に軸支するためのヒンジ部材に一体的に設けることにより、部材の兼用化が計れて都合がよい。
【0005】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図において、1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に設けられるキャブ4、上部旋回体3の前部に取付けられるフロントアタッチメント(図示せず)等の各部から構成されていること等の基本的構成は従来通りである。
【0006】5は前記上部旋回体3に搭載されるエンジン、トランスミッション、ラジエータ(何れも図示せず)等の機器類の点検、整備を行うために開設される開口部であって、該開口部5は、上部旋回体3の上面左側部と左側面部、および上面右側部と右側面部がそれぞれ連続する状態で開口している。
【0007】さらに、6は前記開口部5を開閉するためのウイング式の開閉カバー装置であって、該開閉カバー装置6を構成するカバー体7は、前記開口部5の上面部および側面部の両者を開閉すべく略逆L字形状に形成されており、そしてその上面奥方の基端縁部が、後述するヒンジ部材8を介して開口部5を開放する開放姿勢と閉鎖する閉鎖姿勢とに開閉揺動自在に軸支されている。
【0008】上記ヒンジ部材8は、上部旋回体3の上面部開口縁部に一体的に取り付けられた支持ブラケット9に固定されるヒンジピン10と、該ヒンジピン10に基端部のボス筒部11aが回動自在に外嵌支持され、先端部の取付け面部11bが前記カバー体7の基端縁部内側面に一体的に取付けられるヒンジ11とを用いて構成されるが、該ヒンジ11の中間部には、前記ヒンジピン10を略中心とする円弧状のガイド面部11cが形成されており、さらに該ガイド面部11cのボス筒部11a側端部には、後述する係止溝11dが凹設されている。
【0009】一方、12は前記支持ブラケット9から延設されるフレーム13にボルト固定される取付けブラケットであって、該取付けブラケット12には、ローラ支持アーム14の基端部が、該ローラ支持アーム14の先端部に自由回動自在に取り付けられたローラ15が前記ヒンジ11のガイド面部11cに当接する当接姿勢とガイド面部11cから離間する離間姿勢とに揺動変姿できるよう、ピン軸16を介して揺動自在に軸支されている。さらに、17は一端部が上記取付けブラケット12に、他端部がローラ支持アーム14にそれぞれ固定される状態でピン軸16に巻装される捻りバネであって、該捻りバネ17によってローラ支持アーム14は前記当接姿勢側に向けて常時付勢されている。
【0010】そして、前記ローラ15は、カバー体7が閉鎖姿勢となっている状態では、ガイド面部11cの取付け面部11b側端部に当接しているが、この状態から開口部5を開放すべくカバー体7を上動させることに伴い、前記捻りバネ17の付勢力を受けてガイド面部11cに当接押圧される状態で円弧状のガイド面部11c上をボス筒部11a側に向けて相対移動し、そしてカバー体7が開放姿勢となった状態では、ローラ15が前記ガイド面部11cのボス筒部11a側端部に凹設された係止溝11dに係止し、これによってローラ15の取付け面部11b側への相対移動、つまりカバー体7の閉鎖姿勢側への下動が規制されるように構成されている。ここでカバー体7は、前記ローラ15が係止溝11dに係止している開放姿勢では、上面部が垂直方向近くまで上動した状態となって開口部5を大きく開放するように設定されている。
【0011】さらに、18は一端部が前記ローラ支持アーム14の先端部に止着されるケーブルであって、該ケーブル18は、中間部が前記フレーム13および開口縁部に取り付けられた支持部材19に移動自在に挿通支持される状態で、他端部が作業者が操作しやすい手元位置まで垂下され、該他端部に把手部20が止着されている。そして、作業者が把手部20を把持してケーブル18を引っ張ることにより、前記ローラ支持アーム14は捻りバネ17の付勢力に抗してローラ15がガイド面部11cから離間する離間姿勢に変姿し、これによって前記係止溝11dに係止しているローラ15が係止溝11dから抜け出てカバー体7の閉鎖姿勢側への下動が許容されるように構成されている。
【0012】一方、21は一端部が前記取付けブラケット12に、他端部がカバー体7の上面部の内側面にそれぞれ支持されるガスシリンダであって、該ガスシリンダ21によりカバー体7は常時開放姿勢側に向けて付勢されており、そして作業者が後述するロック装置22の解除状態で閉鎖姿勢のカバー体7を軽く上動させることにより、カバー体7は自動的に開放姿勢に変姿するようになっている。
【0013】さらに、23は一端側がカバー体7の下部内側面に止着され、他端側が開口部5の下側縁部に取り付けられた巻取り装置24に巻装される引下げベルトであって、該引下げベルト23は、前記カバー体7の閉鎖姿勢から開放姿勢への変姿に伴って巻取り装置24から引出されるが、前述したようにケーブル18によりローラ15と係止溝11dとの係止を解除した状態で、上記引出された引下げベルト23の適宜位置を作業者が把持して下方に引くことにより、カバー体7を前記ガスシリンダ21の付勢力に抗して開放姿勢から閉鎖姿勢に変姿させることができるようになっている。尚、引下げられた引下げベルト23は、前記巻取り装置24に内装された弾機(図示せず)の付勢力によって巻取り装置24に自動的に巻装されるように構成されている。
【0014】また、前記ロック装置22は、カバー体7の下端部内側面に取付けられる係止片22aと、開口部5の下側縁部に取付けられる係止受け具22bとを用いて構成されるものであって、該ロック装置22は、カバー体7を開放姿勢から閉鎖姿勢に変姿させることに伴って係止片22aが係止受け具22bに自動的に抜け止め状に係止し、これによってカバー体7を閉鎖姿勢にロックできるようになっている。そして、上記ロック状態のカバー体7を開放する場合には、作業者がカバー体7の外側からキー(図示せず)を操作して、あるいは運転席部に設けられたレバー(図示せず)を操作する等して前記係止片22aと係止受け具22bとの係止を解除することにより、カバー体7の開放姿勢側への変姿が許容される構成となっている。
【0015】叙述の如く構成されたものにおいて、閉鎖姿勢のカバー体7を開放する場合には、前述したようにロック装置22を解除した状態でカバー体7を軽く上動させると、カバー体7はガスシリンダ21の付勢力により自動的に開放姿勢に変姿することになるが、該カバー体7の変姿途中において、開口部5側に取り付けられたローラ15がカバー体7側に形成された円弧状のガイド面部11c上を相対移動し、そしてカバー体7が開放姿勢となったときに、ローラ15がガイド面部11cに凹設された係止溝11dに係止し、これによってカバー体7は閉鎖姿勢側へ変姿が規制され、開放姿勢にロックされることになる。
【0016】一方、開放姿勢のカバー体7を閉鎖する場合には、把手部20を把持してケーブル18を引っ張ると、ローラ15がガイド面部11cから離間する離間姿勢となって前記係止溝11dとの係止が解除され、この解除状態で引下げベルト23を下方に引くことによりカバー体7は下動して開口部5を閉鎖することになる。
【0017】この結果、カバー体7を開放させることに伴い、自動的にローラ15が係止溝11dに係止してカバー体7を開放姿勢にロックし、またカバー体7を閉鎖する場合には、作業者がケーブル18を引っ張ることにより前記ロックが解除されることになって、従来のカバー体7と開口部下縁部とのあいだにステーを支架させるもののように作業者がいちいちステーを着脱する必要がなく、作業性が向上する。
【0018】しかも、前記ケーブル18の操作は、作業者が手元の把手部20を把持して行うことができ、さらに開放姿勢のカバー体7を閉鎖するときには引下げベルト23を下方に引けば良いから、カバー体7が作業者の手の届かない高さまで開放するものであっても何ら支障はなく、もってカバー体7の開口高さを、作業者が点検、整備等の作業がし易いよう充分に高く設定できることになって、更なる作業性の向上に貢献できる。
【0019】そのうえ、前記ローラ15がガイド面部11c上を相対移動する場合、ガイド面部11cがヒンジピン10を略中心とする円弧状に形成されるため、ローラ15の位置は殆ど変化することは無く単に軸回り方向に回動しているだけの状態となって、前記相対移動が円滑に行われるという利点がある。
【0020】しかも、前記ガイド面部11cおよび係止溝11dは、カバー体7を揺動自在に軸支するために必要なヒンジ11を利用して設けられているから、部材の兼用化が計れて好都合である。
【図面の簡単な説明】
【図1】油圧ショベルの斜視図である。
【図2】図2(A)は閉鎖姿勢の開閉カバー装置を示す図であり、図2(B)は図2(A)のB矢視図である。
【図3】図2(A)の要部拡大図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図5(A)は開放姿勢の開閉カバー装置を示す図であり、図5(B)は図5(A)のB矢視図、図5(C)は図5(A)のC矢視図である。
【図6】図5(A)の要部拡大図である。
【図7】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
5 開口部
6 開閉カバー装置
7 カバー体
8 ヒンジ部材
10 ヒンジピン
11 ヒンジ
11c ガイド面部
11d 係止溝
15 ローラ
17 捻りバネ
18 ケーブル
21 ガスシリンダ
23 引下げベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カバー体を、躯体側に開設の開口部を開閉すべく開放姿勢と閉鎖姿勢に揺動変姿自在に軸支してなる開閉カバー装置において、前記カバー体に一体的に設けられ、カバー体の揺動支軸を略中心とする円弧状面が形成されるガイド部と、該ガイド部に凹設される係止溝と、ガイド部に当接する当接姿勢とガイド部から離間する離間姿勢とに揺動変姿自在に躯体側に支持される係止部材と、該係止部材を当接姿勢側に向けて常時押圧する弾機と、該弾機の押圧力に抗して係止部材を離間姿勢側に変姿せしめるための操作手段とを設けると共に、前記係止部材は、カバー体の閉鎖姿勢および変姿途中においては前記円弧状面にガイドされる状態でガイド部に対して相対移動できるが、カバー体の開放姿勢では係止溝に係止してカバー体の閉鎖姿勢側への変姿を規制するよう設定されている建設機械の開閉カバー装置。
【請求項2】 請求項1において、開口部は、上面部と一側面部とが連続して開口しているものとし、カバー体は、該開口部の上面部および一側面部との両者を開閉すべく略逆L字形状のもので、その上面奥方の基端縁部が躯体側に上下揺動自在に軸支されている建設機械の開閉カバー装置。
【請求項3】 請求項1、2において、カバー体を常時開放姿勢側に向けて付勢する付勢弾機と、該付勢弾機の付勢力に抗して開放姿勢のカバー体を閉鎖姿勢側に変姿させるための操作手段とが設けられている建設機械の開閉カバー装置。
【請求項4】 請求項1、2、3において、ガイド部は、カバー体を躯体側に揺動自在に軸支するためのヒンジ部材に一体的に設けられている建設機械の開閉カバー装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】特開平9−221788
【公開日】平成9年(1997)8月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−52269
【出願日】平成8年(1996)2月15日
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)