説明

建設機械

【課題】燃料のスロッシング挙動によって燃料タンク等に加わる力を抑制することにより、燃料タンク等の耐久性を高め、また、油圧ポンプによる作動油の吸込特性を高める。
【解決手段】旋回フレーム6に設けられ、建屋カバー9の高さ寸法よりも小さい高さ寸法を有する燃料タンク14上に作動油タンク18を載置する。これにより、燃料タンク14の形状を前後方向に長い横長にし、燃料タンク14の上面板14Aと燃料の液面との間の空間を小さくし、また、燃料タンク14の重心位置を低くする。また、作動油タンク18を燃料タンク14上に載置することにより、作動油タンク18の位置を高くすると共に、サクション配管24を円弧状に形成し、油圧ポンプ8による吸込特性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーンなどの建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーンなどの建設機械は、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置とから構成されている。そして、上部旋回体の旋回フレーム上には、エンジンおよび油圧ポンプ等を収容する機械室を画成する建屋カバー、建設機械を操作するための運転席等を有するキャブ、エンジンの燃料を貯える燃料タンク、油圧ポンプに供給する作動油を貯える作動油タンク、作業装置とのバランスをとるためのカウンタウエイト等が設けられている。
【0003】
そして、建屋カバーによって画成された機械室は旋回フレームの後側に配置されており、カウンタウエイトは、機械室のさらに後側、即ち、旋回フレームの後端部に取り付けられている。一方、キャブおよび作業装置は旋回フレームの前側に配置され、燃料タンクおよび作動油タンクは、旋回フレームの前側から中間部にかけて配置されている。
【0004】
さらに、燃料タンクおよび作動油タンクは、旋回フレーム上に前後方向に並んで配置されている。即ち、旋回フレームの例えば右前側に燃料タンクが配置され、その後方に作動油タンクが燃料タンクと隣接するように配置されている。
【0005】
また、一般的な建設機械において、旋回フレーム上に載置された燃料タンク、作動油タンクおよび建屋カバーの高さ寸法は等しく、さらに、旋回フレームに取り付けられたカウンタウエイトは、その上側面が、燃料タンク、作動油タンクおよび建屋カバーの上側面と高さ方向において一致するように形成されている。これにより、上部旋回体の上側面は広範囲に亘ってほぼ平面である。これに対し、燃料タンクの高さが、作動油タンク、建屋カバーおよびカウンタウエイトの高さの半分程度に設定されている建設機械も知られている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、建設機械には、上部旋回体を旋回させる油圧モータ、作業装置を動作させる油圧シリンダ装置などの多数の油圧アクチュエータが設けられており、これらのアクチュエータを動作させるための油圧回路が形成されている。そして、作動油タンクに貯えられた作動油は、これらアクチュエータを動作させるための圧油として用いられる。即ち、作動油タンク内の作動油は、油圧ポンプにより吸い込まれ、圧油となって各アクチュエータに供給される。そして、各アクチュエータから排出された圧油は、再び作動油タンクに戻される。
【0007】
ここで、作動油タンク内の作動油は、作動油タンクと油圧ポンプとの間を接続するサクション配管を介して油圧ポンプに供給される。サクション配管の一端側は、作動油タンク内の作動油を油圧ポンプにより効率よく吸い込ませるため、作動油タンクの底面に形成された作動油供給口に接続されている。そして、サクション配管の他端側は、作動油タンクの下方で後方に向くように屈曲した後、建屋カバー内に延び、油圧ポンプに達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−58403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来技術による一般的な建設機械では、上部旋回体の旋回フレーム上において燃料タンクと作動油タンクとが前後方向に並んで配置されており、これらの上側面が揃うように、それぞれの高さ寸法が設定されている。このため、燃料タンクの形状が上下方向に長い縦長となる。このような縦長の燃料タンクの場合、建設機械が大きく振動したとき、多量の燃料を貯えた状態でスロッシング挙動が起こりやすい。
【0010】
即ち、建設機械は、荒地の走行、作業装置の急激な動作、掘削作業時に建設機械が大きく傾いた状態から落下する場合など、非常に大きく振動する。このような大きな振動が建設機械に発生すると、燃料タンクおよびその内部の燃料が大きく振動する。ここで、燃料は液体であるため、燃料タンクの上面板と燃料の液面との間に空間がある場合には、振動により燃料の液面が波打つスロッシング挙動が起こる。
【0011】
そして、上下方向に長い縦長の燃料タンクの場合には、同一容積の前後方向に長い横長の燃料タンクと比較し、内部に燃料を多量に貯えた状態でも、燃料タンクの上面板と燃料の液面との間に大きな空間が形成される。このため、縦長の燃料タンクの場合には、多量の燃料を貯えた状態でスロッシング挙動が起こりやすい。
【0012】
多量の燃料を貯えた状態(例えば燃料の残量が70%付近)でスロッシング挙動が起こると、波の大きさと燃料の重量とにより、燃料タンクの側壁に非常に大きな荷重がかかることがある。この結果、燃料タンクの耐久性が低下する。
【0013】
さらに、縦長の燃料タンクに多量の燃料が貯えられた状態では、燃料タンクの重心位置が高い位置にあるため、スロッシング挙動により、燃料タンクの底面板と旋回フレームとを接続している取付部(例えば取付ボルト)に大きな慣性モーメントがかかる。この結果、燃料タンクの取付部の耐久性が低下する。
【0014】
特に、作動油タンクに貯えられる作動油の量は常時ほぼ一定であるのに対し、燃料タンクに貯えられる燃料の量は、燃料の消費により変動する。燃料タンク内の燃料の量が変動すると、燃料のスロッシング挙動によって燃料タンクの側壁に加わる荷重の場所、大きさ、周期などが変化する。このため、荷重がかかる箇所を補強するなど、スロッシング挙動に対する耐久性を高めるための措置を燃料タンク等に講ずることは容易でない。
【0015】
一方、作動油を作動油タンクから油圧ポンプに供給するサクション配管は、上述したように、その一端側が、作動油タンクの底面に形成された作動油供給口に接続され、他端側が、作動油タンクの下方で後方に向くように屈曲した後、建屋カバー内に延び、油圧ポンプに達している。
【0016】
ここで、作動油タンクは、その底面板が旋回フレームに取り付けられているため、サクション配管を配置するために作動油タンクの下方に確保可能な空間は、作動油タンクの底面板と旋回フレームの底部との間の狭い空間、即ち高さ方向の距離が小さい空間のみである。このため、サクション配管を作動油タンクの下方でL字状に屈曲させざるを得ない。サクション配管がL字状に屈曲することにより、油圧ポンプによる作動油の吸込時に圧力損失が発生し易くなり、作動油の吸込特性が低下するという問題がある。
【0017】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、燃料のスロッシング挙動によって燃料タンク等に加わる力を抑制することにより、燃料タンク等の耐久性を高めることができ、また、油圧ポンプによる作動油の吸込時に生じる圧力損失を小さくすることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられたエンジンと、該エンジンによって駆動され圧油を供給する油圧ポンプと、前記エンジンおよび油圧ポンプを含む搭載機器を収容する建屋カバーと、該建屋カバーと異なる位置で前記旋回フレーム上に設けられ、燃料を貯える燃料タンクおよび作動油を貯える作動油タンクとを備えてなる建設機械に適用される。
【0019】
そして、請求項1に係る発明の特徴は、前記燃料タンクは前記建屋カバーの高さ寸法よりも小さい高さ寸法を有して前記旋回フレーム上に載置する構成とし、前記作動油タンクは前記燃料タンク上に重ねて載置する構成としたことにある。
【0020】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明は、前記燃料タンクと作動油タンクとの合計高さ寸法を前記建屋カバーの高さ寸法と等しくしたことにある。
【0021】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明は、前記作動油タンクの底面に形成された作動油の供給口と前記油圧ポンプとの間を接続するサクション配管を円弧状の管体として形成したことにある。
【発明の効果】
【0022】
上述した請求項1に係る発明によれば、燃料タンクの高さ寸法を建屋カバーの高さ寸法よりも小さくし、燃料タンクの上に作動油タンクを重ねて載置する構成としたことにより、燃料タンクの形状を旋回フレームの前後方向に長い横長にすることができる。これにより、燃料タンクの上面板と燃料の液面との間の空間が小さくなるので、多量な燃料が貯えられた状態での燃料のスロッシング挙動が起こりにくくなる。したがって、スロッシング挙動によって燃料タンクの側壁に加わる荷重を小さくすることができる。よって、燃料タンクの耐久性を高めることができる。
【0023】
また、燃料タンクの形状を横長にすると共に、燃料タンクを作動油タンクの下方の低い位置に配置することにより、燃料タンクの重心位置を下げることができる。これにより、燃料のスロッシング挙動が発生したときに、燃料タンクを旋回フレームに取り付ける取付部にかかる慣性モーメントを小さくすることができる。よって、燃料タンクの取付部の耐久性を高めることができる。
【0024】
また、請求項2に係る発明によれば、燃料タンクと作動油タンクとの合計高さ寸法を建屋カバーの高さ寸法と等しくしたことにより、燃料タンクの配置を低くすることができ、燃料のスロッシング挙動を効果的に抑えて燃料タンク等に加わる荷重を小さくすることができる。これにより、燃料タンク等の耐久性を高めることができる。さらに、燃料タンク上に搭載された作動油タンクの上側面と建屋カバーの上側面との高さ方向における位置を一致させることができ、上部旋回体の上側面の広い範囲を平面にすることができる。これにより、作業者が上部旋回体上に載ってメンテナンス作業等をする際に、作業の容易性および安全性を向上させることができ、また、建設機械の美観を高めることができる。
【0025】
また、請求項3に係る発明によれば、作動油タンクの底面に形成された作動油の供給口と油圧ポンプとの間を接続するサクション配管を円弧状の管体として形成したことにより、油圧ポンプによりサクション配管を介して作動油を吸引するときに発生する圧力損失を小さくすることができ、作動油の吸込特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態による油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態による油圧ショベルの下部走行体および上部旋回体等を示す斜視図である。
【図3】作業装置および運転室を取り外した状態の上部旋回体を示す、図2中矢示III-III方向の縦断面図である。
【図4】図3中の矢示IV-IV方向からみた上部旋回体の右側部位の横断面図である。
【図5】図3中の矢示V-V方向からみた上部旋回体の右側部位の側面図である。
【図6】本発明の実施形態による油圧ショベルの燃料タンク内における燃料のスロッシング挙動を示す説明図である。
【図7】比較例の燃料タンク内における燃料のスロッシング挙動を示す説明図である。
【図8】本発明の変形例による油圧ショベルの上部旋回体を示す、図3と同じ位置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明による建設機械の実施の形態としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図8に従って説明する。
【0028】
図1において、1は建設機械としての油圧ショベルであり、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前部に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置5とにより大略構成されている。
【0029】
6は上部旋回体4の支持構造体を形成する旋回フレームで、該旋回フレーム6上には、図2、図3に示すように、後述するエンジン7、油圧ポンプ8、建屋カバー9、カウンタウエイト12、キャブ13、燃料タンク14および作動油タンク18等が搭載されている。
【0030】
7はエンジンを示し、該エンジン7は、旋回フレーム6上の後側に横置き状態で設けられている。8はエンジン7の右側に付設された油圧ポンプで、該油圧ポンプ8は、エンジン7により駆動され、作動油タンク18内の作動油を吸い込み、この作動油を圧油として油圧ショベル1に設けられた制御弁およびアクチュエータ等に供給する。これにより、制御弁およびアクチュエータ等が動作し、下部走行体2の走行、上部旋回体4の旋回、作業装置5の動作等が制御される。
【0031】
9はエンジン7および油圧ポンプ8等を覆うように旋回フレーム6上に設けられた建屋カバーであり、該建屋カバーは、エンジン7、油圧ポンプ8、制御弁、熱交換器(図示せず)等の搭載機器を収容する機械室10を画成している。そして、該建屋カバー9は、図2に示すように、上面カバー9A、右側面カバー9Bおよび左側面カバー9Cからなり、右側面カバー9Bは開閉可能である。また、上面カバー9Aには開口部(図示せず)が形成され、該開口部を覆うようにエンジンカバー11が開閉可能に設けられている。
【0032】
また、図3に示すように、建屋カバー9の高さ寸法H1、即ち、旋回フレーム6に接している右側面カバー9Bまたは左側面カバー9Cの下端面から、上面カバー9Aの上側面までの距離は、上面カバー9Aの上側面が、後述のカウンタウエイト12の上側面等とほぼ一致するように設定されている。これにより、上部旋回体4上は、図2に示すように、その中間部から後側にかけて広い範囲に亘って平面となっている。
【0033】
12は旋回フレーム6の後端部に取付けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト12は、作業装置5との重量バランスをとるものである。一方、13は旋回フレーム6の左前側に設けられたキャブである。
【0034】
14はエンジン7の燃料を貯える燃料タンクで、該燃料タンク14は、旋回フレーム6上の右前側に配置されている。そして、該燃料タンク14は、図3、図4に示すように、上面板14A、底面板14B、前側面板14C、後側面板14D、左側面板14Eおよび右側面板14Fを有する箱体として形成されている。また、燃料タンク14は、取付ボルト15を用いて底面板14Bを旋回フレーム6の張出しビームに取り付けることにより、旋回フレーム6上に固定されている。
【0035】
ここで、燃料タンク14の高さ寸法H2、即ち、底面板14Bの下側面から上面板14Aの上側面までの距離は、建屋カバー9の高さ寸法H1よりも小さく、具体的には寸法H1のおよそ2分の1である。
【0036】
また、燃料タンク14の形状は前後方向に長い横長である。即ち、図3に示すように、燃料タンク14の高さ寸法H2は、燃料タンク14の前後方向の幅寸法W1(前側面板14Cの前側面から後側面板14Dの後側面までの距離)よりも小さい(H2<W1)。さらに、図4に示すように、燃料タンク14の高さ寸法H2は、燃料タンク14の左右方向の幅寸法W2(左側面板14Eの左側面から右側面板14Fの右側面までの距離)よりも小さい(H2<W2)。
【0037】
また、燃料タンク14の上面板14Aの前側には燃料給油口16が設けられている。さらに、底面板14Bには燃料供給口14Gが形成されており、該燃料供給口14Gには、燃料タンク14内の燃料をエンジン7に供給するための燃料供給配管17が接続されている。
【0038】
18は作動油を貯える作動油タンクで、該作動油タンク18は燃料タンク14上に重ねて載置されている。そして、該作動油タンク18は、上面板18A、底面板18B、前側面板18C、後側面板18D、左側面板18Eおよび右側面板18Fを有する箱体として形成されている。また、作動油タンク18は、図4に示すように、取付ボルト19を用いて底面板18Bを燃料タンク14の上面板14Aに取り付けることにより、燃料タンク14上に固定されている。
【0039】
ここで、作動油タンク18の高さ寸法H3、即ち、底面板18Bの下側面から上面板18Aの上側面までの距離は、建屋カバー9の高さ寸法H1よりも小さく、具体的には、建屋カバー9の高さ寸法H1から燃料タンク14の高さ寸法H2を引いた値である。即ち、燃料タンク14の高さ寸法H2と作動油タンク18の高さ寸法H3との合計が建屋カバー9の高さ寸法H1と等しく、これにより、作動油タンク18の上側面は、建屋カバー9の上側面と一致している。
【0040】
また、作動油タンク18は、燃料タンク14上に積載されているものの、燃料タンク14と完全に重なり合っているのではなく、燃料タンク14よりも後方にずれた位置に配置されている。これにより、作動油タンク18後部の下方に位置して燃料タンク14と機械室10との間には、空間20が形成されている。
【0041】
さらに、作動油タンク18の上面板18Aには作動油給油口21が設けられ、該作動油給油口21には、作動油タンク18内に向けて延びる筒状のフィルタ22が設けられている。また、左側面板18Eに形成された挿入孔18Gにはリターン配管23が挿入され、該リターン配管23の端部はフィルタ22内に連通している。一方、作動油タンク18の底面板18Bの後部であって空間20の上方には作動油供給口18Hが形成され、該作動油供給口18Hには、後述するサクション配管24が接続されている。
【0042】
24は作動油タンク18の底面板18Bに形成された作動油供給口18Hと油圧ポンプ8との間を接続するサクション配管で、該サクション配管24は例えば可撓性材料により形成された可撓配管である。作動油タンク18内の作動油は該サクション配管24を介して油圧ポンプ8により吸い込まれ、圧油となって、油圧ショベル1に設けられた制御弁およびアクチュエータ等に供給される。そして、アクチュエータ等から排出された作動油は、リターン配管23を介して作動油タンク18内に戻る。作動油が作動油タンク18内に戻る際、作動油はフィルタ22により濾過される。
【0043】
ここで、サクション配管24は円弧状の管体として形成されている。即ち、サクション配管24は、作動油タンク18の作動油供給口18Hから油圧ポンプ8に到達するまでの間、作動油供給口18Hの下方に位置して燃料タンク14と機械室10との間に形成された空間20を通り、緩やかに曲がりながら円弧状に伸張している。
【0044】
一方、燃料タンク14および作動油タンク18の前方には、これらのタンクの前側面を覆うフロント化粧カバー25が設けられている。さらに、該フロント化粧カバー25には、フロント化粧カバー25の内外を連通させる窓部25Aが燃料給油口16と対応する位置に形成されている。これにより、作業者は、窓部25Aを通じ、燃料給油口16の蓋の開け閉めや、燃料の給油を容易に行うことができる。また、26は作業者が上部旋回体4上に上るときに用いるステップであり、図4中の27は燃料タンク14および作動油タンク18を側方から覆うサイド化粧カバーである。
【0045】
本発明の実施形態による油圧ショベル1は上述したような構成を有するものであり、次に、その作用効果について図6および図7に従って説明する。即ち、図6は、本発明の実施形態による油圧ショベル1に搭載され燃料タンク14を示し、図7は、比較例による一般的な油圧ショベルに搭載された燃料タンクを示す。ここで、図7中の比較例による燃料タンク41は、上面板41A、底面板41B、前側面板41C、後側面板41D、左側面板41Eおよび右側面板(図示せず)から上下方向に長い縦長の箱体として形成されている。また、図6中の燃料タンク14と図7中の燃料タンク41とは相互に同一の容積を有し、両者の内部に同一の量の燃料が貯えられているものとする。
【0046】
図6において、例えば掘削作業により油圧ショベル1が大きく振動し、燃料タンク14が激しく振動すると、燃料タンク14内において燃料のスロッシング挙動が起こり、これにより、燃料タンク14の側壁、例えば前側面板14Cおよび後側面板14Dに荷重が加わる。一方、比較例による油圧ショベルが大きく振動し、燃料タンク41が激しく振動すると、図7に示すように、燃料タンク41内において燃料のスロッシング挙動が起こり、これにより、燃料タンク41の側壁、例えば前側面板41Cおよび後側面板41Dに荷重が加わる。
【0047】
ここで、図6に示す燃料タンク14の形状は前後方向に長い横長であるため、燃料タンク14の上面板14Aと燃料の液面との距離が小さい。このため、燃料タンク14の振動によりスロッシング挙動が起こりにくく、また、図6に示すようにスロッシング挙動が起こってもその程度は小さい。この結果、スロッシング挙動により燃料タンク14の側壁に加わる荷重は小さい。
【0048】
これに対し、図7に示す燃料タンク41の形状は上下方向に長い縦長であるため、燃料タンク41の上面板41Aと燃料の液面との距離が大きい。このため、燃料タンク41の振動によりスロッシング挙動が起こりやすく、また、図7に示すようにスロッシング挙動が起こった場合にはその程度が大きくなる。この結果、スロッシング挙動により燃料タンク41の側壁に加わる荷重は、図6中の燃料タンク14の場合と比較して大きくなる。
【0049】
さらに、図6中の燃料タンク14の形状は横長であり、しかも、該燃料タンク14は、図3に示すように、作動油タンク18の下側の地面に近い位置に配置されている。このため、図6中の燃料タンク14は、図7中の燃料タンク41と比較して重心位置が低い。このため、燃料タンク14は、燃料タンク41と比較して、燃料のスロッシング挙動が起こりにくく、スロッシング挙動が起こったとしても、燃料タンク14の底側、および燃料タンク14と旋回フレーム6とを接続する取付ボルト15等にかかる慣性モーメントは小さい。
【0050】
以上説明した通り、本発明の実施形態による油圧ショベル1は、燃料タンク14の高さ寸法H2を建屋カバー9の高さ寸法H1よりも小さくし、燃料タンク14の上に作動油タンク18を重ねて載置する構成としている。これにより、燃料タンク14の形状を前後方向に長い横長にすることができ、燃料タンク14の上面板14Aと燃料の液面との間の空間を小さくすることができ、さらに、燃料タンク14の重心位置を低くすることができる。
【0051】
したがって、多量な燃料が貯えられた状態での燃料のスロッシング挙動が起こりにくくすることができる。また、多量な燃料が貯えられた状態でスロッシング挙動が起こったとしても、スロッシング挙動によって燃料タンク14の側壁に加わる荷重を小さくすることができると共に、燃料タンク14を旋回フレーム6に取り付ける取付ボルト15等にかかる慣性モーメントを小さくすることができる。よって、燃料タンク14および取付ボルト15等の耐久性を高めることができる。
【0052】
また、上述したように、作動油タンク18に貯えられる作動油の量は常時ほぼ一定であるのに対し、燃料タンク14に貯えられる燃料の量は、燃料の消費により変動するため、燃料のスロッシング挙動によって燃料タンク14の側壁に加わる荷重や、燃料タンク14の取付ボルト15にかかる慣性モーメントを事前に予測することが難しく、燃料タンク14等に補強を施すことが難しい。しかし、本発明の実施形態によれば、作動油タンク18を上段とし、燃料タンク14を下段とすることにより、作動油タンク18における作動油のスロッシング挙動よりも燃料タンク14における燃料のスロッシング挙動を効果的に抑制することができ、燃料タンク14の耐久性を効果的に高めることができる。
【0053】
また、本発明の実施形態による油圧ショベル1によれば、燃料タンク14と作動油タンク18との合計高さ寸法(H2+H3)を建屋カバー9の高さ寸法H1と等しくしたことにより、燃料タンク14の配置を低くすることができ、燃料タンク14等に加わる荷重を小さくし、燃料タンク14等の耐久性を高めることができる。
【0054】
さらに、燃料タンク14上に搭載された作動油タンク18の上側面と建屋カバー9の上側面との高さ方向における位置を一致させることができ、上部旋回体4の上側面の広い範囲を平面にすることができる。これにより、作業者が上部旋回体4上に載ってメンテナンス作業等をする際に、作業の容易性および安全性を向上させることができると共に、油圧ショベル1の美観を高めることができる。
【0055】
また、本発明の実施形態による油圧ショベル1では、作動油タンク18を燃料タンク14上に載置することにより、作動油タンク18の底面板18Bに形成された作動油供給口18Hの位置を高くすると共に、作動油タンク18の作動油供給口18Hの下方に位置して燃料タンク14と機械室10との間に空間20を形成している。
【0056】
ここで、空間20の高さ方向における距離は燃料タンク14の高さ寸法H2に等しいため、上述したように、サクション配管を配設する空間が狭い従来技術による一般的な油圧ショベルの場合と比較して、サクション配管24を空間20を介して大きなゆとりをもって配設することができる。これにより、作動油供給口18Hと油圧ポンプ8とを接続するサクション配管24を、空間20を通すことによって緩やかに湾曲する円弧状とすることができ、サクション配管24からL字状の屈曲部を廃することができる。したがって、油圧ポンプ8によりサクション配管24を介して作動油を吸引するときに発生する圧力損失を小さくすることができ、作動油の吸込特性を高めることができる。
【0057】
さらに、本発明の実施形態による油圧ショベル1では、作動油タンク18を燃料タンク14上に載置することにより、作動油タンク18の底面を高い位置に配置することができる。これにより、作動油タンク18内の作動油を、重力により、作動油供給口18Hから流出させ、サクション配管24を介して油圧ポンプ8に送ることができる。したがって、サクション配管24を介して油圧ポンプ8により作動油タンク18内の作動油を吸い込むときに、油圧ポンプ8の駆動により生成する作動油の吸込力を小さくしても、作動油の吸込を十分に行うことが可能となり、作動油の吸込特性を高めることができる。
【0058】
なお、上述した実施形態による油圧ショベル1では、図3に示すように、燃料タンク14の上面板14Aの前側に燃料給油口16を配置したが、これに代え、図8に示すように、燃料給油口16を燃料タンク14の前側面板14Cの上側に配置してもよい。また、サクション配管24は、可撓性材料から形成された可撓配管に限らず、金属パイプまたは硬質樹脂パイプ等により形成された固形配管としてもよい。
【0059】
さらに、本発明は、クローラ式の油圧ショベルに限らず、例えばタイヤ等からなるホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用することも可能であり、それ以外にも、リフトトラック、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧ショベル(建設機械)
4 上部旋回体
6 旋回フレーム
7 エンジン
8 油圧ポンプ
9 建屋カバー
14 燃料タンク
15 取付ボルト
18 作動油タンク
18H 作動油供給口
24 サクション配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられたエンジンと、該エンジンによって駆動され圧油を供給する油圧ポンプと、前記エンジンおよび油圧ポンプを含む搭載機器を収容する建屋カバーと、該建屋カバーと異なる位置で前記旋回フレーム上に設けられ、燃料を貯える燃料タンクおよび作動油を貯える作動油タンクとを備えてなる建設機械において、
前記燃料タンクは前記建屋カバーの高さ寸法よりも小さい高さ寸法を有して前記旋回フレーム上に載置する構成とし、前記作動油タンクは前記燃料タンク上に重ねて載置する構成としてなる建設機械。
【請求項2】
前記燃料タンクと作動油タンクとの合計高さ寸法は前記建屋カバーの高さ寸法と等しい構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記作動油タンクの底面に形成された作動油の供給口と前記油圧ポンプとの間を接続するサクション配管は円弧状の管体として形成してなる請求項1または2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−229740(P2010−229740A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79670(P2009−79670)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】