説明

建設機械

【課題】多連ポンプを構成する各ポンプの効率を高くでき、かつ作動油タンクとポンプのレイアウトの変更に柔軟かつ低コストに対応可能な建設機械を提供する。
【解決手段】多連ポンプ1として、ケーシング11内に第1乃至第3のポンプ12,13,14が一体に組み込まれ、ケーシング11に第1及び第2の給油口が設けられたものを用いる。第1の給油口は、ケーシング11内に形成された第1作動油流路を介して第1及び第2のポンプ12,13と連通しており、第2の給油口は、ケーシング11内に形成された第2作動油流路を介して第3ポンプ14と連通している。ポンプサンクション配管3の先端部に取り付けられた複数ポンプ用の第1マニホールド4を第1給油口に接続し、第1マニホールド4から分岐した1ポンプ用の第2マニホールド5を第2給油口に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、特に、1つのケーシング内に3台以上のポンプが一体に組み込まれた多連ポンプを搭載した建設機械における作動油タンクと多連ポンプとの間の配管のレイアウトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つのケーシング内に2台のポンプが一体に組み込まれ、各ポンプに対応して2つの給油口が設けられたダブルポンプをメインポンプとして搭載した建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の建設機械においては、作動油タンクとメインポンプとを接続するポンプサンクション配管をメインポンプ側で2つに分岐し、分岐された各ポンプサンクション配管をメインポンプに設けられた2つの給油口のそれぞれに接続する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2913044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、建設機械のより一層の高性能化及び多機能化の要請に対処すると共に、ポンプ設置スペースの縮小や配線及び配管の設置コストを低減するため、1つのケーシング内に3台以上のポンプが一体に組み込まれた多連ポンプを建設機械に搭載することが検討されている。
【0005】
しかしながら、多連ポンプを建設機械に搭載した場合においては、各ポンプに対する配管長の差が、ダブルポンプを搭載した場合よりも大きくなるので、特許文献1に記載の技術と同様に、各ポンプ毎にポンプサンクション配管を接続するという構成にすると、配管長が長いポンプサンクション配管ほど圧力損失が増大し、ポンプ効率が低下する。また、多連ポンプには、ケーシング内に一体に組み込まれたポンプの台数よりも、ケーシングに形成される給油口の数が少なく、ケーシングの内部に複数のポンプと連通する作動油流路を形成したものがある。この種の多連ポンプにおいては、この複数のポンプと連通する作動油流路に作動油を供給するための配管長を長くすると、配管内の作動油の流量が特に大きいため、配管内の圧力損失が増大し、ポンプ効率が低下する。さらに、特許文献1に記載の技術と同様に、各ポンプ毎にポンプサンクション配管を接続するという構成にすると、作動油タンクとポンプのレイアウトを変更する毎に新たなポンプサンクション配管が必要になるので、レイアウトの変更に安価に対応できないという問題もある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、多連ポンプを構成する各ポンプの効率を高くでき、かつ作動油タンクとポンプのレイアウトの変更に柔軟かつ低コストに対応可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、第1に、作動油タンクと、1つのケーシング内に3台以上のポンプが一体に組み込まれ、前記作動油タンク内に貯えられた作動油を油圧式のアクチュエータに供給する多連ポンプと、前記作動油タンクと前記多連ポンプとを接続するポンプサンクション配管とを備えた建設機械において、前記多連ポンプは、前記ケーシングに設けられた給油口が、前記ケーシング内に一体に組み込まれたポンプの台数よりも少数で、前記ケーシングの内部に、1つの給油口から複数台のポンプに作動油を供給する第1作動油流路と、他の1つの給油口から1台のポンプに作動油を供給する第2作動油流路とが形成されたものであり、前記ポンプサンクション配管の先端部に取り付けられた複数ポンプ用の第1マニホールドを前記第1作動油流路と連通する給油口に接続し、前記第1マニホールドから分岐した1ポンプ用の第2マニホールドを前記第2作動油流路と連通する他の給油口に接続するという構成にした。
【0008】
ケーシングに設けられた給油口が、ケーシング内に一体に組み込まれたポンプの台数よりも少数で、ケーシングの内部に、1つの給油口から複数台のポンプに作動油を供給する第1作動油流路と、他の1つの給油口から1台のポンプに作動油を供給する第2作動油流路とが形成された多連ポンプにおいては、第2作動油流路に作動油を供給する配管内よりも第1作動油流路に作動油を供給する配管内の方が流量が多いため、圧力損失が大きくなる。また、ケーシングに複数の給油口が設けられた多連ポンプにおいては、ポンプサンクション配管の下流側に配置されたポンプに作動油を供給する配管ほど管路長が長くなるため、損失が大きくなる。したがって、ポンプサンクション配管の先端部に取り付けられた複数ポンプ用の第1マニホールドを第1作動油流路と連通する給油口に接続し、第1マニホールドから分岐した1ポンプ用の第2マニホールドを第2作動油流路と連通する他の給油口に接続すると、第1マニホールドを作動油の供給経路の上流側に配置することができるので、第1作動油流路に作動油を供給する配管の配管長を短くでき、当該配管内の圧力損失を低減することができる。また、第2作動油流路に作動油を供給する配管については、それを流れる作動油の流量を減らすことができるので、やはり圧力損失の低減を図ることができる。加えて、一端が作動油タンクに接続されたポンプサンクション配管の先端部に複数ポンプ用の第1マニホールドを連結し、この第1マニホールドから1ポンプ用の第2マニホールドを分岐するという構成にすると、作動油タンクに対する多連ポンプのレイアウトが変更された場合にも、ポンプサンクション配管のみを変更すれば良く、第1及び第2マニホールドについては何ら変更を要しないので、レイアウトの変更に容易かつ低コストに対応することができる。
【0009】
本発明は第2に、前記第1建設機械において、前記第1マニホールドの内径を、前記第2マニホールドの内径よりも大きくするという構成にした。
【0010】
かかる構成によると、複数台のポンプに作動油を供給する第1マニホールドに多量の作動油を流すことができるので、この第1マニホールドを介して作動油が供給される複数台のポンプへの作動油の供給が円滑となり、この配管内の圧力損失をより一層低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の建設機械は、ポンプサンクション配管の先端部に取り付けられた複数ポンプ用の第1マニホールドを、複数台のポンプに作動油を供給する第1作動油流路と連通する給油口に接続し、この第1マニホールドから分岐した1ポンプ用の第2マニホールドを、1台のポンプに作動油を供給する第2作動油流路と連通する他の給油口に接続するので、各ポンプ毎にポンプサンクション配管を接続する構成に比べて、第1及び第2マニホールド内の圧力損失を低減することができる。また、作動油タンクに対する多連ポンプのレイアウトが変更された場合にも、ポンプサンクション配管のみを変更すれば良く、第1及び第2マニホールドについては何ら変更を要しないので、レイアウトの変更に容易かつ低コストに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例に係るポンプサンクション配管構造を示す正面図である。
【図2】第1実施例に係るポンプサンクション配管構造を示す側面図である。
【図3】第2実施例に係るポンプサンクション配管構造を示す正面図である。
【図4】第2実施例に係るポンプサンクション配管構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る建設機械に搭載されるポンプサンクション配管構造の第1実施例を、図1及び図2により説明する。本例の建設機械は、多連ポンプを構成する各ポンプが水平方向に並列されるように、多連ポンプを建設機械のポンプ設定部に設置したことを特徴とする。
【0014】
図1及び図2において、1は多連ポンプ、2は作動油タンク、3はポンプサンクション配管、4は第1マニホールド、5は第2マニホールドを示している。本例の多連ポンプ1は、1つのケーシング内11に3台のポンプ12,13,14を一体に組み込んでなり、ケーシング11には、第1マニホールド4を接続するための第1給油口(図示省略)と、第2マニホールド5を接続するための第2給油口(図示省略)とが開口されている。また、第1給油口は、ケーシング11に形成された第1作動油流路(図示省略)を介して第1ポンプ12及び第2ポンプ13に連通されており、第2給油口は、ケーシング11に形成された第2作動油流路(図示省略)を介して第3ポンプ14と連通されている。
【0015】
本例の建設機械においては、図1に示すように、第1ポンプ12が作動油タンク2の設定位置から最も近い位置に配置され、第3ポンプ14が最も遠い位置に配置され、第2ポンプ13がその中間位置に配置されている。したがって、本例の建設機械においては、第1ポンプ12と第2ポンプ13とに連通する第1作動油流路が、第3ポンプと連通する第2作動油流路よりも、作動油タンク2の設定位置から見て近い位置に配置される。
【0016】
ポンプサンクション配管3としては、可撓性ホースが用いられ、その一端は、口金31を介して作動油タンク2の底面に設けられた給油口(図示省略)に接続される。
【0017】
第1マニホールド4は、ポンプサンクション配管3を通って作動油タンク2から供給される作動油を、第1給油口及び第1作動油流路を介して第1ポンプ12と第2ポンプ13とに分配するものであり、ポンプサンクション配管3の先端部に接続される。これに対して、第2マニホールド5は、ポンプサンクション配管3及び第1マニホールド4を通って作動油タンク2から供給される作動油を、第2給油口及び第2作動油流路を通って第3ポンプ14に分配するものであり、第1マニホールド4から分岐される。なお、第1マニホールド4の内径は、第2マニホールド5の内径よりも大きくする。これにより、第1ポンプ12及び第2ポンプ13と連通する第1作動油流路内の作動油流量を、第3ポンプ14と連通する第2作動油流路内の作動油流量よりも多くすることができる。
【0018】
以下、作動油タンク2から各ポンプ12,13,14への作動油の流れについて説明すると、作動油タンク2から流出した作動油Oは、図1に白抜きの矢印で示すように、ポンプサンクション配管3を通って第1マニホールド4に流入し、第1マニホールド4側と第2マニホールド5側に分岐される。第1マニホールド4側に流入した作動油Oは、第1給油口に入った後、ケーシング11に形成された第1作動油流路内でさらに2つの流路に分岐され、第1ポンプ12及び第2ポンプ13に供給される。一方、第2マニホールド5側に流入した作動油Oは、第2給油口及び第2作動油流路を通って、第3ポンプ14に供給される。
【0019】
本例の建設機械は、第1及び第2のポンプ12,13に作動油を供給する第1マニホールド4を、第3ポンプ14に作動油を供給する第2マニホールド5よりも、作動油の流れ方向の上流側に配置したので、第1及び第2のマニホールド4,5内における圧力損失を小さくすることができ、多連ポンプ1のポンプ効率の改善を図ることができる。また、一端が作動油タンク2に接続されたポンプサンクション配管3の先端部に複数ポンプ用の第1マニホールド4を取り付け、この第1マニホールド4から1ポンプ用の第2マニホールド5を分岐するので、作動油タンク2に対する多連ポンプ1のレイアウトが変更された場合にも、ポンプサンクション配管3のみを必要に応じて変更すれば良く、第1及び第2のマニホールド4,5については何ら変更する必要がないので、レイアウトの変更に容易かつ低コストに対応することができる。さらに、本例の建設機械は、第1マニホールド4の内径を、第2マニホールド5の内径よりも大きくするので、第1マニホールド4に多量の作動油を流すことができ、第1及び第2のポンプ12,13への作動油の供給を円滑にすることができて、第1マニホールド4内の圧力損失をより一層低減することができる。
【0020】
次に、本発明に係る建設機械に搭載されるポンプサンクション配管構造の第2実施例を、図3及び図4により説明する。本例の建設機械は、多連ポンプを構成する各ポンプが垂直方向に並列されるように、多連ポンプを建設機械のポンプ設定部に設置したことを特徴とする。本例においては、第1ポンプ12が最も下方に配置され、この第1ポンプ12の上方に第2ポンプ13が配置され、さらにこの第2ポンプ13の上方に第3ポンプ14が配置されている。
【0021】
本例の建設機械においては、ポンプサンクション配管3の先端部に接続された第1マニホールド4を、ケーシング11の下方に形成された第1給油口に接続すると共に、この第1マニホールド4から分岐された第2マニホールド5を、ケーシング11の上方に形成された第2給油口に接続する。その他については、前記第1例に係る建設機械と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0022】
本例の建設機械も、第1及び第2のポンプ12,13に作動油を供給する第1マニホールド4を、第3ポンプ14に作動油を供給する第2マニホールド5よりも、作動油の流れ方向の上流側に配置したので、第1実施例に係る建設機械と同様の効果を発揮することができる。
【0023】
なお、前記各実施例においては、1つのケーシング11内に3台のポンプ12,13,14が一体に組み込まれた3連ポンプを例にとって説明したが、1つのケーシング11内に4台以上のポンプが一体に組み込まれた多連ポンプを搭載する場合にも、前記各実施例と同様に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、ホイールショベルなどの建設機械の油圧回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 多連ポンプ
2 作動油タンク
3 ポンプサンクション配管
4 第1マニホールド
5 第2マニホールド
11 ケーシング内
12 第1ポンプ
13 第2ポンプ
14 第3ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油タンクと、1つのケーシング内に3台以上のポンプが一体に組み込まれ、前記作動油タンク内に貯えられた作動油を油圧式のアクチュエータに供給する多連ポンプと、前記作動油タンクと前記多連ポンプとを接続するポンプサンクション配管とを備えた建設機械において、
前記多連ポンプは、前記ケーシングに設けられた給油口が、前記ケーシング内に一体に組み込まれたポンプの台数よりも少数で、前記ケーシングの内部に、1つの給油口から複数台のポンプに作動油を供給する第1作動油流路と、他の1つの給油口から1台のポンプに作動油を供給する第2作動油流路とが形成されたものであり、
前記ポンプサンクション配管の先端部に取り付けられた複数ポンプ用の第1マニホールドを前記第1作動油流路と連通する給油口に接続し、前記第1マニホールドから分岐した1ポンプ用の第2マニホールドを前記第2作動油流路と連通する他の給油口に接続することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記第1マニホールドの内径を、前記第2マニホールドの内径よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236288(P2010−236288A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86274(P2009−86274)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】