説明

建設機械

【課題】支持構造に潤滑油を確実に供給でき、異物が支持構造内部に入り込むことを防止できる建設機械を提供すること。
【解決手段】建設機械であるダンプトラックでは、フロントフレーム11に搭載されたキャブ30と、フレーム11とキャブ30との間に設けられてキャブ30を回動可能に支持するリア側支持構造100Bとを備え、キャブ30には、支持構造100Bを上方から覆うカバー部材300が設けられ、支持構造100Bの回動部位には、潤滑油を供給するための給脂ニップル200が設けられ、カバー部材300は、キャブ30に取り付けられる支持ブラケット310と、支持ブラケット310に対して開閉自在に設けられた開閉部材320とを備え、給脂ニップル200は、キャブ300が下側に回動したとき、および上側に回動したときの双方において、開閉部材320を開けることで外部に露出する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、例えばダンプトラック等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フレームに搭載されたキャブと、キャブを車体フレームに支持する支持構造とを備えたダンプトラックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなダンプトラックでの支持構造は、キャブをマウントし、かつキャブの振動を吸収・減衰するためのマウント装置と、マウント装置上に設けられたマウント側ブラケットと、マウント側ブラケットに挿通される連結ピンと、連結ピンを覆うブッシュと、ブッシュに対して回動自在に貫挿されたキャブ側ブラケットとを備えた構造である。
【0003】
また、支持構造は、箱状のキャブの下側の四隅を支持しており、前方側の一対の支持構造では、連結ピンを抜き取ることで、キャブ側ブラケットとマウント側ブラケットとの連結を解除できる。そして、このような状態で、後方側の一対の支持構造においては、ブッシュを介してキャブ側ブラケットを連結ピン回りに回動させることができ、キャブ全体を車体フレームに対してチルトアップ、チルトダウン可能である。この際、後方側の支持構造でのキャブ側ブラケットは、キャブの背面に取り付けられていることから、後方側の支持構造全体がキャブの後方に突出しており、支持構造回りの作業スペースを確保し易いというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−61807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のキャブの後方側の支持構造は、キャブの後方に突出した状態で露出しているため、積込作業時に飛散した土砂や砂利等の異物が支持構造に降りかかる可能性があり、マウント装置を構成する部材間に噛んでしまうなどして損傷するおそれがある。
そこで、支持構造部分をカバー等で覆い、異物が降りかかるのを防止することも考えられるが、ブッシュとキャブ側ブラケットとの互いの摺動面はグリース等の潤滑油で潤滑する必要があるため、給脂作業を行う毎にそのようなカバーを外す必要があり、給脂作業が繁雑になるという問題がある。
また、カバーを装着したままキャブをチルトアップさせると、カバーが車体フレームやブラケットと干渉するため、チルトアップ時にもカバーを外す必要があり、チルトアップさせて行うメンテナンス作業が煩雑になる。
【0006】
本発明の目的は、支持構造を異物から確実に保護でき、かつ給脂作業やその他のメンテナンス作業を容易にできる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る建設機械は、車体フレームと、車体フレームに搭載されたキャブと、前記車体フレームと前記キャブとの間に設けられ、前記キャブをチルトアップ状態とチルトダウン状態との間で回動可能に支持する支持構造とを備えた建設機械であって、前記キャブには、前記支持構造を上方から覆うカバー部材が設けられ、前記支持構造の回動部位には、潤滑油を供給するための給脂ニップルが設けられ、前記カバー部材は、前記キャブに取り付けられる金属製の支持ブラケットと、前記支持ブラケットに対して開閉自在に設けられた開閉部材とを備え、前記給脂ニップルは、前記キャブがチルトアップ状態およびチルトダウン状態の双方の状態において、前記開閉部材を開けることで外部に露出する位置に設けられていることを特徴とする。
ここで、「外部に露出する位置」とは、外部から給脂ニップルに対して給脂可能な位置をいう。
【0008】
第2発明に係る建設機械では、前記支持ブラケットは、前記キャブ側から前記支持構造の上方に張り出した庇部を備え、前記庇部の先端は、前記キャブがチルトダウン状態で、前記キャブから前記給脂ニップルの上方まで張り出しており、前記支持ブラケットおよび前記給脂ニップルは、互いの相対的な位置関係を維持しながら前記キャブと同様に回動することを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る建設機械では、前記庇部は、先端に向かうに従って水平面に対して所定角度下方に向けて傾斜していることを特徴とする。
第4発明に係る建設機械では、前記開閉部材は、可撓性を有するゴムで形成されていることを特徴とし、また、第5発明に係る建設機械では、前記開閉部材は、金属板で形成されて前記支持ブラケットにヒンジを介して取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
第6発明に係る建設機械では、前記開閉部材のばたつきを防止する防止手段を備えていることを特徴とする。
第7発明に係る建設機械では、開けられた状態の前記開閉部材を保持する保持手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、支持構造を覆うカバー部材が設けられているため、上方からの砂利や雨水などの異物が、支持構造内に入り込んで、特にキャブの振動を吸収・減衰するマウント装置に悪影響を及ぼすことを防止でき、支持構造を異物から確実に保護できる。また、キャブが下側に回動したとき、および上側に回動したときの双方において、開閉部材を開けることで給脂ニップルが露出するので、給脂ニップルから回動部位に対して確実に給脂できる。
【0012】
第2発明によれば、キャブが下側に回動した状態にあるときに、給脂ニップルに対して給脂可能である状態がそのまま、キャブを上側に回動させた場合でも、給脂ニップルと庇部との互いの相対的な位置関係を変化させることなく維持でき、よって上側での回動位置でも同様に給脂可能となるため、回動状態に応じて給脂作業が庇部で阻害される心配がなく、給脂作業をより確実に行える。
【0013】
第3発明によれば、庇部が傾斜しているため、異物が飛散してきた場合でも、その異物を容易に下方に落とすことができる。
【0014】
第4発明によれば、開閉部材が可撓性を有したゴム製であるから、めくるようにして容易に開閉できるうえ、多少ばたついても振動を吸収でき、ばたつき音等の異音も生じない。さらに、開閉部材がゴム製であると、キャブの回動に応じて追従性よく変形するため、キャブの回動時に支持構造を構成する他の部品との干渉が避けられない事態になっても、開閉部材自身および他部品の損傷を防止でき、扱い易い。
【0015】
第5発明によれば、開閉部材が金属製であるから、支持ブラケットにヒンジを介して取り付けることで、ヒンジ部分を境にして容易に開閉できるうえ、カバー部材全体を金属製にでき、耐久性や耐候性を向上させることができる。
【0016】
第6発明によれば、開閉部材のばたつきを防止する防止手段が設けられているので、大きくばたつくことで不意に開いてしまうのを未然に防止できる。特に不整地を走行するダンプトラックでは、走行時の振動や揺れが大きく、開閉部材が大きくばたつくことが予想されるため、このような防止手段を設けることで、ばたつくのを防ぎ、不意に開くのを防止できることは、異物の侵入や耐久性の点で重要である。
【0017】
第7発明によれば、開いた開閉部材を保持する保持手段が設けられるので、開いた状態で行う給脂作業中に開閉部材が誤って閉まるようなことがなく、給脂作業を手際よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るダンプトラックを示す側面図。
【図2】キャブのチルトアップ状態を示す図。
【図3】キャブの支持構造およびカバー部材を示す斜視図。
【図4】隙間を示す平面図で、部分的に拡大した図。
【図5】キャブがチルトアップしているときのカバー部材の状態を示す拡大図。
【図6】キャブがチルトダウンしているとき、およびチルトアップしているときの給脂ニップルと庇部との位置関係を示す図。
【図7】本発明の第2実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す建設機械としてのダンプトラック1は、前方(図1中左方向)に位置する前部車体10と、後方(図1中右方向)に位置する後部車体20とを備えている。
前部車体10は車体フレームとしてのフロントフレーム11によって支持されており、フロントフレーム11の最も前方にはエンジンフード12が開閉可能に取り付けられている。
後部車体20はリアフレーム21によって支持されている。リアフレーム21はフロントフレーム11に対して屈折および揺動自在に連結されている。
【0020】
フロントフレーム11とリアフレーム21との間には、左右一対のステアリングシリンダ13,13が架け渡されている。各ステアリングシリンダ13,13をそれぞれ伸縮させることにより、フロントフレーム11に対してリアフレーム21を屈折させることができ、ステアリング操作が可能となる。
リアフレーム21の上方には、例えば、土砂等の積載物を積載するベッセル22が設けられている。ベッセル22の前部の左右両側(図1中紙面手前側と奥側)とリアフレーム21との間には、一対のホイストシリンダ23,23が設けられている。ベッセル22はその後部下側を回動中心として、リアフレーム21に対して回動可能に取り付けられている。ベッセル22はホイストシリンダ23,23が伸縮することにより回動する。
【0021】
フロントフレーム11にはキャブ30が搭載されている。キャブ30は、ダンプトラック1が転倒時にオペレータの安全を確保すべく、安全な構造を備えたROPS(Roll Over Protective System)キャブである。キャブ30は、キャブ30を回動可能に支持する支持構造としての後述する1対のリア側支持構造100B,100Bを介してフロントフレーム11に支持された状態で、図2に示す矢印TU(チルトアップ)方向および矢印TD(チルトダウン)方向への回動、すなわち上側への回動および下側への回動が可能となっている。
フロントフレーム11の下部側方には左右一対の前輪41が、リアフレーム21の下部側方には左右一対の中輪42および後輪43が、それぞれ取り付けられている。
【0022】
図2に示すように、エンジンフード12およびキャブ30の下側に位置する空間には、例えば、エンジン、トルクコンバータ、トランスミッション、油圧ポンプ等の各種装置14が配置されている。キャブ30とフロントフレーム11の間には、フロント側支持構造100Aとリア側支持構造100Bとが設けられている。
【0023】
フロント側支持構造100Aは、詳細な図示を省略するが、後述するリア側支持構造100Bのうち、連結ピンが挿抜自在な構造である。そして、このような連結ピンを抜き取ることで、キャブ30の前方側でのマウント装置による支持状態を解除することが可能である。
オペレータは、エンジンフード12を開け、さらに、フロント側支持構造100Aから連結ピンを外して支持状態を解除し、例えば油圧シリンダやクレーン等の操作用動力を用いることにより、キャブ30を矢印TU方向に回動させてチルトアップ状態とし、各種装置14の点検や整備を行う。
【0024】
次に、リア側支持構造100Bについて説明する。なお、リア側支持構造100Bの詳細な構造の符号については、図3において、片方のリア側支持構造100Bについてのみ符号を付する。
図3に示すように、リア側支持構造100Bは、マウント装置110と、マウント側ブラケット120と、キャブ側ブラケット130と、ストッパ140と、連結ピン150と、支持レバー160とを備えている。
【0025】
マウント装置110は、キャブ30を支持する装置であり、フロントフレーム11にボルト51を用いて取り付けられている。マウント装置110は、内部に粘性流体であるシリコンオイルが封入された液体封入式のマウント装置であり、キャブ30に振動が発生した場合、マウント装置110に設けられた可動軸の変位によりシリコンオイルが攪拌され、この際のシリコンオイルの粘性抵抗により、振動が減衰される。
【0026】
マウント側ブラケット120は、底部121および側部122により略J字状に形成され、マウント装置110の図示しない可動軸の上端に取り付けられている。
側部122は、底部121の左右(図3中左右方向)両端からそれぞれ上方に突出して一体形成されており、一方の側部122Aは、他方の側部よりも長く突出して形成されている。側部122の互いに対向する位置には、連結ピン150が取り付けられる取付孔123が設けられている。なお、図3では、一方の側部122Aと、側部122Aに設けられた取付孔123だけが現れている。
【0027】
キャブ側ブラケット130は、キャブ30の後側のフレームに溶接等の固着手段を用いて基端が固定された上下2枚のベース部131(図6をも参照)と、ベース部131の先端に取り付けられた円筒状の取付部132とで構成されている。取付部132は図示しない取付孔を備えており、この取付孔に略円筒状のブッシュを介して連結ピン150が挿入されている。ブッシュ回りでキャブ側ブラケット130を回動させるようにして、キャブ30をチルトアップ、チルトダウンさせることが可能である。
取付部132の所定位置には、回動部位である取付部132とブッシュとの間にグリース等の潤滑油を供給するための給脂ニップル200が設けられている。
【0028】
ストッパ140は、フロントフレーム11の平坦な載置部111にボルト52により固定されるベース部141と、ベース部141の両側に間隔を空けて立設された一対の側部142とで構成され、これらの側部142の間において、ベース部141の中央に設けられた開口部を利用してマウント装置110が配置されている。各側部142の互いの対向位置には挿通孔143が設けられている。挿通孔143は、その中心が取付孔123と同軸線上にあり、各挿通孔143内には、連結ピン150の両端側が位置している。挿通孔143の内径寸法は、連結ピン150の外径寸法よりも所定値だけ大きく設定されている。
【0029】
一対の側部142のそれぞれの後方側の所定位置には、L字形状に形成されたガイド部144が設けられている。ガイド部144の基部144Aが側部142に取り付けられ、基部144Aから略直角方向にガイド片144Bが形成されている。ガイド片144Bと側部142との間には所定の隙間が形成されている。
【0030】
連結ピン150は円柱形状に形成されており、連結ピン150の左右両端は、挿通孔143を介してそれぞれストッパ140の側部142の外側に突出している。連結ピン150の外周面と挿通孔143の内周面との間には環状の隙間145が形成されている。この隙間145が存在することにより、連結ピン150は、図3中の例えば上下方向に変位可能であるとともに、その変位量が規制されている。
【0031】
一方、連結ピン150の一端には、連結ピン150の軸線方向に対して直交する方向に延出した支持レバー160が溶接等によって片持ち状に一体に固定されている。
他方、マウント側ブラケット120の側部122Aにおいて、支持レバー160の先端側と対向する面には、支持レバー160側に向けて水平に突出したボス部161が設けられている。支持レバー160の先端がボス部161にボルト等により固定されることで、支持レバー160の基端に固定された連結ピン150の回転が防止される。すなわち、支持レバー160は、連結ピン150の回り止めおよび抜け止めとして機能している。
【0032】
以上のようなリア側支持構造100Bは、ベッセル22(図1)の直前に位置しており、ベッセル22から飛散した土砂等をかぶりやすい。そこで、マウント装置110の上方には、リア側支持構造100B全体を上方から覆うカバー部材300が設けられている。カバー部材300は、支持ブラケット310と開閉部材320とを備える。
【0033】
図5および図6に示すように、支持ブラケット310は、金属製の板材で形成されており、取付部311、庇部312、側部313を備える。
取付部311には、鉛直部311Aおよび水平部311Bが設けられ、鉛直部311Aには、図示しない一対の取付孔が設けられている。
庇部312は鉛直部311Aに連続して設けられており、庇部312の先端部312Aは鉛直下方に折り曲げられた形状になっている。また、庇部312は、先端に向かうに従って水平面に対して所定角度下方に向けて傾斜している。
側部313は、庇部312の車体外側に連続して設けられ、下方に向かって延設されていることで、ストッパ140の一方の側部142を側方から覆っている。
【0034】
ここで、車体外側とは、図3中左側のリア側支持構造100Bにおいては、その左側のことをいい、図3中右側のリア側支持構造100Bにおいては、その右側のことをいう。
鉛直部311Aが、キャブ30の補強プレート30Aに設けられた取付部31(図6参照)に対してボルト53によって取り付けられることにより、支持ブラケット310がキャブ30の背面下部側に固定される。
また、図6においては、部材説明の便宜上、図3中右側のリア側支持構造100Bの縦断面を、車体中央側から車体右側に向けて見た図として図示してある。
【0035】
支持ブラケット310がキャブ30に固定されると、図4に示すように、キャブ30の背面と水平部311Bとの間に、フロントフレーム11の前後方向(図3中左右方向)において所定の寸法tを有する保持手段としての隙間Sが形成される。
【0036】
開閉部材320は、可撓性を有した合成ゴムまたは天然ゴムでシート状に形成され、基端部が複数のリベット54によって庇部312に固定されている。開閉部材320の先端部は、ガイド片144Bと側部142との間に挿通され、不意にめくり上がるのを防いで、走行中にばたつくのを防止できるようになっている。つまり、本実施形態において、ガイド辺144Bは、開閉部材320のばたつきを防止する本発明の防止手段である。
【0037】
開閉部材320の先端は、チルトダウン状態にてベース部141の直上に位置しており(図3)、チルトアップ状態では、ベース部141および載置部111の下方に位置することになって、ベース部141とは干渉しない。ただし、状況によっては、チルトアップの途中で、開閉部材320の先端がベース部141の上面と干渉し、当接する可能性がある。しかしながら、開閉部材320が弾性変形することで互いの損傷を避けることができ、結果的には開閉部材320の弾発力にて先端が弾かれ、ベース部141および載置部111の下方に位置することになる。なお、開閉部材320の先端を、チルトダウン状態で予めベース部材141や載置部111の下方に位置するように設けておいてもよい。
【0038】
次に、キャブ30がチルトダウンしている状態から、チルトアップ方向に回動させるときの動作について、給脂作業とともに説明する。
図1に示すように、キャブ30が下側に回動しているチルトダウン状態では、カバー部材300は図3に示す位置にあり、支持ブラケット310の庇部312は、図6の(ア)に示す位置し、給脂ニップル200は、図6の(i)で示す所定位置に配置される。このとき、支持ブラケット310の庇部312の先端部312Aは、キャブ30から給脂ニップル200の上方まで張り出している。よって、開閉部材320をガイド片144Bから外して上方へめくり上げれば、給脂ニップル200が露出し、給脂ニップル200から確実に給脂できる。
開閉部材320を上方へめくり上げたときには、開閉部材320の先端部を隙間S内に挿入して保持させておき、給脂作業中に開閉部材320が弾性力によって戻るのを防止し、給脂作業の邪魔になるのを防ぐ。
【0039】
キャブ30をチルトアップ方向に回動させると、図5に示すように、キャブ30の回動とともに支持ブラケット310も図6の(ア)に示す位置から移動する。そして、開閉部材320は、キャブ30の回動および支持ブラケット310の移動に応じて、ガイド片144Bに案内されて下方へ移動し、その先端がベース部141の下方に至る。
【0040】
キャブ30が最もチルトアップ方向に回動すると、支持ブラケット310は図6の(イ)に示す位置に配置され、給脂ニップル200は図6の(i)で示す位置から図6の(ii)で示す所定位置に至る。
キャブ30がチルトアップしても、庇部312の先端部312Aと給脂ニップル200とは同様に回動し、互いの相対的な位置関係が変化しないことから、給脂ニップル200が図6の(ii)で示す位置に配置された場合でも、庇部312の先端部312Aは、給脂ニップル200に対して給脂作業を阻害しない位置となる。従って、開閉部材320をガイド片143Bから外して上方へめくり上げれば、チルトアップした姿勢からでも確実に給脂できる。
【0041】
〔第2実施形態〕
図7には、本発明の第2実施形態に係るカバー部材300が示されている。図7では、前記第1実施形態と同じ構成部材には波同一符合を付して、その説明を省略することとし、以下には異なる分部について説明する。
本実施形態のカバー部材300は、第1実施形態での合成ゴム製の開閉部材320(図6)を金属板状の開閉部材330に変更し、この開閉部材330を支持ブラケット310に対してヒンジ301を介して回動自在に取り付けた構造であり、回動させることで上下に開閉可能である。
【0042】
また、開閉部材330の下端縁は、図示を省略するが、キャブ30がチルトダウン状態にあるときでも、載置部111の下方に位置している。この状態では、開閉部材330の裏面に取り付けられたマグネット331により開閉部材330は、金属製の載置部111(あるいはベース部141)の対向面に磁着しており、不意に開くのを防ぐことができ、走行中の振動によるばたつきなどを防止可能である。つまり、本実施形態でのマグネット331は、ばたつきを防止するための本発明の防止手段になっている。
【0043】
これに対して、図7に示すように、キャブ30をチルトアップさせると、キャブ30の回動に伴い開閉部材330は、その自重により側部142と接触しながら下方側へ移動する。そして、この移動により開閉部材330は、載置部111側との磁着が解除され、支持ブラケット310との角度変化をヒンジ301にて許容しながら、所定位置まで下がる。
再びキャブ30をチルトダウン状態に戻すと、開閉部材330が上方へ移動することになり、最終的にマグネット331が載置部111に自動的に磁着される。
【0044】
本実施形態でも、開閉部材330は、チルトダウンおよびチルトアップのいずれの状態でも開閉可能であり、開放しておくことで給脂作業を第1実施形態と同様に実施できる。
また、本実施形態において、特にチルトアップした状態では、上方に開いた開閉部材330を例えば別のマグネット等により支持ブラケット310側に磁着させるなど、何らかの保持手段を用いて開いた状態に保持させることが望ましい。
【0045】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、建設機械として、フロントフレーム11とリアフレーム21とで車体フレームが構成されるアーティキュレート型のダンプトラック1について説明したが、単一の車体フレームを備えたリジット型のダンプトラックや、油圧ショベル、ブルドーザ等の他の建設機械であってもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、マウント装置110として液体封入式のマウント装置について説明したが、ゴムやバネ等を用いた他の形式のマウント装置であってもよい。
さらに、液体封入式のマウント装置であっても、可動軸の下端に円板状のダンピングプレートを設け、ダンピングプレートとカップの底面との間に前記可動軸を上方に付勢するコイルバネを設けた構造のマウント装置を採用してもよい。このマウント装置では、ダンピングプレートの外周にフランジ部が形成されており、振動発生時にはフランジ部とこれに対向するカップの内壁との隙間空間を粘性流体が移動するのであるが、この時の流体の抵抗により振動を効率的に減衰できる。また、該マウント装置では、クッションラバーについても、可動軸回りにゴム筒体および金属筒体を径方向に交互に積層させた構造が採用されており、可動軸が傾く方向への振動を確実に吸収・減衰可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ダンプトラックの他、チルト可能なキャブを有する他の建設機械に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…建設機械であるダンプトラック、11…車体フレームであるフロントフレーム、30…キャブ、100B…支持構造であるリア側支持構造、144B…防止手段であるガイド片、200…給脂ニップル、300…カバー部材、312…庇部、320…開閉部材、330…開閉部材、331…防止手段であるマグネット、S…保持手段である隙間、t…寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
車体フレームに搭載されたキャブと、
前記車体フレームと前記キャブとの間に設けられ、前記キャブをチルトアップ状態とチルトダウン状態との間で回動可能に支持する支持構造とを備えた建設機械であって、
前記キャブには、前記支持構造を上方から覆うカバー部材が設けられ、
前記支持構造の回動部位には、潤滑油を供給するための給脂ニップルが設けられ、
前記カバー部材は、前記キャブに取り付けられる金属製の支持ブラケットと、前記支持ブラケットに対して開閉自在に設けられた開閉部材とを備え、
前記給脂ニップルは、前記キャブがチルトアップ状態およびチルトダウン状態の双方の状態において、前記開閉部材を開けることで外部に露出する位置に設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記支持ブラケットは、前記キャブ側から前記支持構造の上方に張り出した庇部を備え、
前記庇部の先端は、前記キャブがチルトダウン状態で、前記キャブから前記給脂ニップルの上方まで張り出しており、
前記支持ブラケットおよび前記給脂ニップルは、互いの相対的な位置関係を維持しながら前記キャブと同様に回動する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建設機械において、
前記庇部は、先端に向かうに従って水平面に対して所定角度下方に向けて傾斜している
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の建設機械において、
前記開閉部材は、可撓性を有するゴムで形成されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の建設機械において、
前記開閉部材は、金属板で形成されて前記支持ブラケットにヒンジを介して取り付けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の建設機械において、
前記開閉部材のばたつきを防止する防止手段を備えている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の建設機械において、
開けられた状態の前記開閉部材を保持する保持手段が設けられている
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−144210(P2012−144210A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5825(P2011−5825)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)