説明

建設機械

【課題】 可動式ラダーのステップ本体を拡開状態と格納状態とに駆動する油圧シリンダを収納するシリンダカバーに形成した開口部を、保護カバーによって開閉自在に覆うことができる建設機械を提供する。
【解決手段】
シリンダカバー21の底面に形成した長孔22bに沿って摺動する保護カバー32を、シリンダカバー21内に配設する。ステップ本体を拡開状態と格納状態とに回動させる第1リンク部材11を、油圧シリンダ4の伸縮により軸C1を中心として回動可能に配設する。第1リンク部材11の屈折部11c近傍にシリンダロッド4aの先端部を支軸31で支承し、支軸31の近傍と保護カバー32に設けたブラケット34とに両端部が軸支された連動リンク30を設ける。油圧シリンダ4の伸縮により、長孔22bを保護カバー32で開閉自在に塞ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の移動通路への昇り降りを行う可動式ラダーを備えた建設機械に関するものである。特に、可動式ラダーのステップ本体を拡開状態と格納状態とに駆動する駆動機構を具備している建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転室が高い位置に配されている建設機械では、運転室への連絡路となる移動通路への昇り降りを行うため、ラダーを設けた構成が採用されている。ラダーの構成としては、建設機械に固定された固定式の構成や、格納された格納位置と使用時の拡開位置との間で可動する可動式の構成が採用されている。
【0003】
可動式ラダーの構成としては、ステップを備えたステップ本体の上端部を回動支軸で支承し、使用時の拡開状態と起立した格納状態との間で上下方向に回動可能にした構成などが採用されている。上下方向に回動する可動式ラダーとしては、本願出願人に係わる作業車両(特許文献1参照)などが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された車両アクセスシステムを本願発明における従来例として、図11、図12を用いて説明する。図11に示した車両アクセスシステムでは、昇降ラダー50を拡開状態と格納状態とに駆動する油圧シリンダ53が、ラダー支持フレーム52内に組み込まれている。昇降ラダー50の基端部とラダー支持フレーム52の先端部に設けられたブラケット56とが、支持軸51を介して連結されている。
【0005】
油圧シリンダ53の基端部は、ラダー支持フレーム52の内部に設けられた図示されないブラケットにピン57を介して支承されている。油圧シリンダ53におけるシリンダロッド53aの先端部は、昇降ラダー50の基部に設けたレバー状部材54にピン58を介して連結されている。
【0006】
油圧シリンダ53の伸長動を、レバー状部材54を介して昇降ラダー50の回動に変換し、昇降ラダー50を上部旋回体60側に格納した格納位置に位置させることができる。この格納位置を実線で示している。逆に、油圧シリンダ53の収縮動により、昇降ラダー50を上部旋回体60から地上に向けて張り出した使用位置に位置させることができる。この使用位置を、二点鎖線で示している。
【0007】
図11のXII―XII断面図である図12に示すように、油圧シリンダ53を伸縮させるときに、油圧シリンダ53がピン57を中心とした回動を行うことを許容するため、油圧シリンダ53を収納したラダー支持フレーム52の底面には開口61aが形成され、ラダー支持フレーム52の昇降ラダー50側の面には、開口61bが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−133151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された発明では、ラダー支持フレーム52に開口61a、61bが形成されているため、作業車両の走行時等において泥や石等が跳ね上げられると、跳ね上げられた泥や石等が開口61a、61bからラダー支持フレーム52内に侵入して、シリンダロッド53aに損
傷を与えてしまう虞がある。
【0010】
本願発明は、可動式ラダーのステップ本体を拡開状態と格納状態とに駆動する駆動機構を備えた建設機械において、前記駆動機構の油圧シリンダを収納しているシリンダカバーに形成した開口部を、開閉自在に覆うことができる建設機械の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の課題は、請求項1〜5に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明に係わる建設機械では、車体に回動自在に設けられるステップ本体と、
前記ステップ本体を拡開状態と格納状態とに駆動する駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、基端部が前記車体に回動自在に軸支された油圧シリンダと、前記車体と前記ステップ本体とを連結し、前記車体と前記ステップ本体とにそれぞれ回動自在に軸支されるとともに、前記油圧シリンダのシリンダロッド先端部を軸支し、前記油圧シリンダの伸縮により前記ステップ本体を回動させるリンク機構と、前記油圧シリンダを覆って収納し、前記油圧シリンダの伸縮動に伴う前記基端部を中心とした前記シリンダロッドの回動を許容する開口部が形成されたシリンダカバーと、を有し、
前記開口部は、前記シリンダカバーにおける前記ステップ本体側の面に形成した開口と、前記開口に連通し前記シリンダロッドの長手方向に沿って形成した長孔と、を有し、前記長孔を開閉自在に塞ぐ保護カバーが、前記油圧シリンダの伸縮動に連動して前記長孔に沿って摺動自在に配設されてなることを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記リンク機構において前記車体に軸支されるリンク部材と前記保護カバーとの間に連動リンクが配設され、前記連動リンクの一端側が、前記シリンダロッド先端を軸支した前記リンク部材の部位近傍に軸支され、前記連動リンクの他端側が、前記保護カバーに設けたブラケットに軸支されてなることを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本願発明では、前記保護カバーは、前記油圧シリンダの伸長時に前記長孔を塞ぐと共に前記保護カバーの先端部が、前記シリンダカバーにおける前記ステップ本体側の面よりも更に前方側に突出して配されてなることを主要な特徴としている。
【0014】
更にまた、本願発明では、前記保護カバーが、耐摩耗性の板状体から構成されてなることを主要な特徴としている。
また、本願発明では、前記保護カバーが、硬質ゴムから構成されてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、油圧シリンダの伸縮動に伴って摺動する保護カバーを、シリンダロッドの長手方向に沿って形成されたシリンダカバーの長孔に沿って摺動自在に構成している。この構成によって、保護カバーで前記長孔を開閉自在に塞ぐことができる。
【0016】
この構成によって、建設機械の走行時等において泥や石等が跳ね上げられたとしても、泥や石等が侵入し易い長孔を保護カバーによって塞いでおくことができる。そして、跳ね上げられた泥や石等がシリンダカバー内に侵入するのを防止でき、シリンダロッドが損傷するのを防止できる。また、シリンダカバー内に土砂等が堆積するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】可動式ラダーの拡開状態を示す要部斜視図である。(実施例)
【図2】可動式ラダーを配設した建設機械の要部側面図である。(実施例)
【図3】駆動機構を斜め下方から見た要部斜視図である。(実施例)
【図4】油圧シリンダの縮小時におけるシリンダカバーの内部構造を示す斜視図である。(実施例)
【図5】油圧シリンダの縮小時における駆動機構の作動を示す側断面図である。(実施例)
【図6】油圧シリンダの縮小時における車体底面側からの斜視図である。(実施例)
【図7】可動式ラダーの格納状態を示す要部斜視図である。(実施例)
【図8】油圧シリンダの伸長時におけるシリンダカバーの内部構造を示す斜視図である。(実施例)
【図9】油圧シリンダの伸長時における駆動機構の作動を示す側断面図である。(実施例)
【図10】油圧シリンダの縮小時における車体底面側からの斜視図である。(実施例)
【図11】車両用階段の回動状態を示す断面図である。(従来例)
【図12】図11のXII−XII断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わる可動式ラダーを備えている建設機械の構成として、ホイルローダに適用した構成例を用いて、以下において説明を行う。しかし、以下で説明する形状、配置構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【0019】
また、高い位置に配されている運転室などへのアクセス用に、可動式ラダーを備えた構成であれば、建設機械としてはホイルローダに限定されるものではなく、油圧ショベル等に対しても好適に適用することができる。
【実施例】
【0020】
図1に示すように、可動式ラダー3は、建設機械20の移動通路2と地上との間で作業者が昇降する階段として配設されている。移動通路2には、更に上方に登るための階段が接続しており、この階段を更に登ると図示せぬ運転室に到ることができる。移動通路2としては、その先に更に階段が接続した構成に限定されるものではなく、運転室の玄関口や可動式ラダー3に接続した踊場として構成しておくこともできる。
可動式ラダー3は、ステップ本体18と、ハンドレール7とを備えた構成になっている。ステップ本体18には、ステップ18aと左右一対の手摺り19が固定されている。
【0021】
ステップ本体18は、第1回動軸Aを中心に上下方向に回動自在に構成されている。第1回動軸Aは、ステップ本体18を車体1に対して回動自在に支承している。ステップ本体18は、第1回動軸Aを中心にして、後述するステップ本体18を拡開状態と格納状態とに駆動する駆動機構15の油圧シリンダ4により回動させられる。尚、駆動機構15及び油圧シリンダ4は、後述する図3に示している。図示例では、七段からなるステップ18aを例示しているが、ステップ数は、七段に限定されるものではなく、適宜の段数として構成しておくことができる。
【0022】
一対の手摺り19は、その下端部がステップ本体18から突出しないように構成されており、ステップ本体18に固定されている。一対のハンドレール7は、その下端部が第2回動軸Bを介して、車体1に支承されている。
【0023】
図1に示している状態は、ステップ本体18及びハンドレール7の拡開状態を示しており、後述する図7は、ステップ本体18及びハンドレール7の格納状態を示している。
図2に示すように、ステップ本体18を回動させる駆動機構15の油圧シリンダ4(図3参照)は、車体1の底面1aに設けられており、油圧シリンダ4は、シリンダカバー21内に収納
されている。図4に示すように、油圧シリンダ4におけるシリンダ4bの各油室には、油圧シリンダ4を伸縮させるための圧油の給廃を行う油圧ホース36a、36bが接続されている。
【0024】
図2において、符号35は、建設機械20の後輪であり、符号11は、第1リンク部材を示している。符号12は、第1リンク部材11に回動自在に連結された第2リンク部材であって、第1リンク部材11と共に油圧シリンダ4からの作動力をステップ本体18の回動に変換するステップ本体回動用のリンク機構5(図3参照)を構成している。
【0025】
図3は、駆動機構15を斜め下方から見た斜視図で、シリンダカバー21を外した状態を示している。図3に示すように、ステップ本体18及びハンドレール7を回動させるアクチュエータとして、単一の油圧シリンダ4が用いられている。油圧シリンダ4は、移動通路2の下方側で車体1の底面1aに配されている。油圧シリンダ4のシリンダ基端部4cは、支軸40(図5参照)を介して車体1に軸支されている。
【0026】
そして、シリンダ基端部4cを軸支している支軸40の軸方向とステップ本体18を軸支している第1回動軸Aの軸方向とハンドレール7を軸支している第2回動軸Bの軸方向とは、ともに平行な軸方向となるように配設されている。
【0027】
ステップ本体回動用のリンク機構5は、L字状の第1リンク部材11と他端部側が二股に分かれた第2リンク部材12とを有する構成になっている。本願発明のステップ本体18を回動させる駆動機構15としては、油圧シリンダ4と第1リンク部材11と第2リンク部材12とを有する構成になっている。
【0028】
また、ハンドレール回動用のリンク機構6は、ステップ本体18とハンドレール7とを回動自在に連結する連結部材13を有する構成になっている。連結部材13は、ステップ本体18の回動動作をハンドレール7の回動動作に変換することができる。
【0029】
第1リンク部材11の一端部である第1端部11aは、軸C1を介して車体1に軸支されており、第1リンク部材11の他端部である第2端部11bと第2リンク部材12の一端部である第1端部12aとは、軸C2を介して互いに軸支されている。二股に分かれた第2リンク部材12の他端部である各第2端部12bは、それぞれ軸C3を介してステップ本体18の基端部側の部位に軸支されている。また、第1リンク部材11の屈折部11cには、油圧シリンダ4のシリンダロッド4aの先端が支軸31によって軸支されている。
【0030】
第2リンク部材12の二股に分かれた部分は、リンケージ24を介して構成されている。即ち、第2リンク部材12の第1端部12a側がリンケージ24の中央部から立設されており、第2リンク部材12の第2端部12b側がリンケージ24の両端部からそれぞれ立設された構成になっている。このように、第2リンク部材12は、第1リンク部材11の回動動作をステップ本体18の回動動作に変換することができる。
【0031】
図3、図4に示すように、油圧シリンダ4の周囲は、シリンダカバー21によって覆われている。シリンダカバー21は、上方が開放されて周囲の3面からなる側面と底面21bとを有する形状に構成されている。シリンダカバー21の側面の内で4面目となる側面は、車体1に設けた図示せぬ板状部材によって塞いでおくことができる。
【0032】
図3に示すように、油圧シリンダ4の作動時にシリンダ4b及びシリンダロッド4aが支軸40を中心として揺動するのを許容するため、シリンダカバー21の側面の内でステップ本体18側のシリンダカバー21の前面21aには、開口22aが形成されており、シリンダカバー21の底面21bには、油圧シリンダ4の長手方向に沿って形成した長孔22bが形成されており、開口22aと長孔22bとは連通して形成されている。
【0033】
また、シリンダカバー21は、シリンダカバー21に形成した取付孔39aと車体1側に形成した取付孔39bとを介して、ボルト・ナット等の固定手段によって車体1の底面1aに取り付けることができる。
尚、図3では、次に説明する長孔22bを開閉自在に塞ぐ保護カバー32(図4、8参照)及び保護カバー32を摺動させる連動リンク30(図4、8参照)の図示は省略している。
【0034】
図4に示すように、シリンダカバー21内には左右一対のガイド部38によって、長孔22bの長手方向に沿って案内され、長孔22bに沿って摺動する保護カバー32が設けられている。保護カバー32は、長孔22bの横幅よりも広い幅形状を有するように構成されており、シリンダカバー21の前面21aに向かって摺動することによって、長孔22bを塞ぐことができる。
【0035】
また、保護カバー32を、シリンダカバー21の前面21aから離間する方向に向かって摺動させることによって、シリンダカバー21の前面21aに形成した開口22aに連通した長孔22bの一部を開放状態にすることができる。
【0036】
保護カバー32は、耐摩耗性の板状体から構成されており、好ましい材質としては、硬質ゴムで構成しておくことができる。保護カバー32を硬質ゴムで構成しておくことにより、建設機械の走行中に跳ね上げられた飛び石が保護カバー32に衝突しても、保護カバー32が飛び石の衝突によって塑性変形してしまうのを防止できる。そして、保護カバー32にコジレが発生することなく、保護カバー32の良好な摺動が維持される。また、飛び石が衝突するときの騒音も抑制できる。尚、保護カバー32の材質としては、硬質ゴムに限定されず、硬質ビニール、板金、樹脂等の材質で構成しておくことができる。
【0037】
保護カバー32の先端部32aにおける両角部には、L字状の切欠部32bが形成されている。保護カバー32がシリンダカバー21の前面21aに向かって摺動したときには、切欠部32bを介して保護カバー32の先端部32aをシリンダカバー21の前面21aに形成した開口22aを通過させて、シリンダカバー21の前面21aよりも更に前方側に突出させることができる。
【0038】
そして、開口22aを通過できなかった切欠部32bの部位は、シリンダカバー21の前面21aの内面に当接することになる。この当接によって、シリンダカバー21の前面21aと保護カバー32との間を密閉させることができる。
【0039】
シリンダカバー21の前面21aよりも更に前方側に突出させることのできる保護カバー32の先端部32aの位置としては、油圧シリンダ4の作動によって、第1リンク部材11が軸C1を中心として回動するときに、第1リンク部材11と保護カバー32の先端部32aとが干渉しない限界の位置まで突出させておくことができる。
保護カバー32の先端部32aをシリンダカバー21の前面21aよりも更に前方側に突出させておくことにより、土砂等が、シリンダロッド4aに付着するのを防止できる。
【0040】
保護カバー32の先端部32a側には、保護カバー32を表裏両面から把持する一対の取付部材33a、33b(図5参照)が取り付けられている。図4、図5に示すように、取付部材33aには、ブラケット34が構成されており、ブラケット34と第1リンク部材11における支軸31の近傍部位との間には連動リンク30が配設されている。連動リンク30の一端側は、支軸30aを介して第1リンク部材11における支軸31の近傍に支承され、連動リンク30の他端側は、支軸30bを介してブラケット34に支承されている。
【0041】
連動リンク30の一端側を第1リンク部材11における支軸31の近傍に支承することによって、第1リンク部材11が軸C1を中心として回動したときに、連動リンク30が移動するスト
ローク量を大きく構成することができる。そして、連動リンク30のストローク量を大きく構成することによって、保護カバー32の摺動ストロークを長く構成することができ、保護カバー32によって長孔22bの全体を塞ぐことができる。
【0042】
図4に示すように、シリンダロッド4aの先端側は、一対の第1リンク部材11間に挿入された配置構成になっており、シリンダロッド4aの先端は、一対の第1リンク部材11間において支軸31で軸支されている。また、一対の第1リンク部材11間の間隔は、シリンダロッド4aの軸径よりも多少広い間隔に形成されている。
【0043】
そして、図4、図5、図8、図9に星印を示したように、油圧シリンダ4が伸長したときには、一対の第1リンク部材11に星印を付した領域でシリンダロッド4aを左右両側から囲む形で覆うことができる。
尚、一対の第1リンク部材11に付した星印の領域とは、星印が付されている位置だけを示すものではなく、図9において支軸31に先端部が軸支されているシリンダロッド4aが一対の第1リンク部材11によって覆われている領域全体を示しているものである。
【0044】
油圧シリンダ4が伸長したときには、一対の第1リンク部材11でシリンダロッド4aを左右両側から囲んでおくことができるので、軸C1側における第1リンク部材11の形状としては、少なくとも連動リンク30の一端側を支軸30aで軸支できる領域と星印を付した領域とを有する形状に構成しておくことができる。
一対の第1リンク部材11において、第2リンク部材12に連結する側での部位間には、一対の蓋部材41が設けられている。
【0045】
このようにシリンダロッド4aが、一対の第1リンク部材11間で覆われている配置構成に加えて、油圧シリンダ4が縮小したときには、図5、図6に示すように、保護カバー32の先端部32aを一対の第1リンク部材11に近接させた位置に配しておくことができる。また、油圧シリンダ4が伸長したときには、図9、図10に示すように、保護カバー32の先端部32aをシリンダカバー21の前面21aよりも更に前方側に大きく突出させておくことができる。そして、保護カバー32で保護できるシリンダロッド4aの領域を長く構成することができる。
【0046】
特に、油圧シリンダ4が伸長したときには、ステップ本体18は格納状態となり、建設機械は走行可能状態になるので、建設機械の走行時に跳ね上げられた土砂等が、シリンダロッド4aに付着するのを、シリンダカバー21と、一対の第1リンク部材11と、先端部32aをシリンダカバー21の前面21aよりも更に前方側に大きく突出させた保護カバー32と、によって防止できる。特に、一対の第1リンク部材11により、後輪35から斜め後方に跳ね上げられた飛び石を効率的に防護することができる。
【0047】
図5、図6に示すように、油圧シリンダ4が縮小状態のときには、油圧シリンダ4は下向きに傾いた状態に配されている。また、油圧シリンダ4を伸長させると、第1リンク部材11は、軸C1を中心として図の反時計周り方向に回動して、ステップ本体18を開拡状態にすることができる。即ち、図1に示すように、ステップ本体18は拡開状態にすることができ、ステップ本体18の階段を通って作業者は昇降することができる。
【0048】
油圧シリンダ4を縮小状態にすると、第1リンク部材11と保護カバー32とを回動自在に連結している連動リンク30によって、保護カバー32はシリンダカバー21の後端面側、即ち、シリンダカバー21の前面21aから離れる方向に移動することになる。そして、シリンダカバー21の前面21aに形成した開口22aに連通した長孔22bの一部を開放状態にすることができ、開放された長孔22bを通して第1リンク部材11の屈折部11c側をシリンダカバー21内に挿入させることができる。
【0049】
図3、図7を用いて、ステップ本体18を拡開状態と格納状態とに回動させる回動機構について説明する。
図3に示しているように、ステップ本体18が拡開状態のときには、第2リンク部材12の第2端部12bを軸支している軸C3の位置と第2リンク部材12の第1端部12a及び第1リンク部材11の第2端部11bを互いに軸支している軸C2の位置とは、上下方向における略一直線上の配置関係となるように配されている。
【0050】
このように配しておくことにより、図3に示す状態から油圧シリンダ4を伸長させて、第1リンク部材11が図の時計回り方向に回動したときには、第1リンク部材11の第2端部11b側及び第2リンク部材12は、共に上下方向に対して略直線状に移動することになる。そして、第1リンク部材11による上方への押し上げ力を、第2リンク部材12の第2端部12bに対して効率的に作用させることができる。
このように、油圧シリンダ4の駆動力を効率的にステップ本体18の回動に利用することができる。
【0051】
ステップ本体18を拡開状態から格納状態に回動させるとき、図8に示すように、油圧ホース36aから圧油がシリンダ4bに供給され、油圧ホース36bを介してシリンダ4bからの圧油が排出されることになる。そして、図8〜図10に示すように、油圧シリンダ4は伸長して、第1リンク部材11は軸C1を中心として図の反時計回り方向に回動することになる。同時に、第1リンク部材11の回動に伴って、連動リンク30は第1リンク部材11の回動方向に引かれて移動し、連動リンク30に軸支された保護カバー32は、長孔22bを塞ぐ方向に摺動する。
【0052】
このとき、図9、図10に示すように、保護カバー32の先端部32aをシリンダカバー21の前面21aよりも更に前方側に大きく突出させておくことができる。そして、図7に示すように油圧シリンダ4を伸長させて、ステップ本体18を格納状態にしたとき、即ち、建設機械が走行可能状態になったとき、一対の第1リンク部材11間に軸支されているシリンダロッド4aは、シリンダカバー21と一対の第1リンク部材11と保護カバー32とによっても保護することができる。
【0053】
このように、建設機械が走行可能状態になったときにシリンダロッド4aを保護できるので、建設機械の走行時に跳ね上げられた土砂等が、シリンダロッド4aに付着するのを大いに防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明は、車体の底部に油圧シリンダを配設する建設機械に、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・車体、3・・・可動式ラダー、4・・・油圧シリンダ、4a・・・シリンダロッド、5・・・ステップ本体回動用のリンク機構、6・・・ハンドレール回動用のリンク機構、11・・・第1リンク部材、12・・・第2リンク部材、13・・・連結部材、15・・・駆動機構、18・・・ステップ本体、20・・・建設機械、21・・・シリンダカバー、21a・・・前面、21b・・・底面、22a・・・開口、22b・・・長孔、30・・・連動リンク、32・・・保護カバー、34・・・ブラケット、50・・・昇降ラダー、52・・・ラダー支持フレーム、53・・・油圧シリンダ、53a・・・シリンダロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に回動自在に設けられるステップ本体と、
前記ステップ本体を拡開状態と格納状態とに駆動する駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、基端部が前記車体に回動自在に軸支された油圧シリンダと、
前記車体と前記ステップ本体とを連結し、前記車体と前記ステップ本体とにそれぞれ回動自在に軸支されるとともに、前記油圧シリンダのシリンダロッド先端部を軸支し、前記油圧シリンダの伸縮により前記ステップ本体を回動させるリンク機構と、
前記油圧シリンダを覆って収納し、前記油圧シリンダの伸縮動に伴う前記基端部を中心とした前記シリンダロッドの回動を許容する開口部が形成されたシリンダカバーと、を有し、
前記開口部は、前記シリンダカバーにおける前記ステップ本体側の面に形成した開口と、前記開口に連通し前記シリンダロッドの長手方向に沿って形成した長孔と、を有し、
前記長孔を開閉自在に塞ぐ保護カバーが、前記油圧シリンダの伸縮動に連動して前記長孔に沿って摺動自在に配設されてなることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記リンク機構において前記車体に軸支されるリンク部材と前記保護カバーとの間に連動リンクが配設され、
前記連動リンクの一端側が、前記シリンダロッド先端を軸支した前記リンク部材の部位近傍に軸支され、前記連動リンクの他端側が、前記保護カバーに設けたブラケットに軸支されてなることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記保護カバーは、前記油圧シリンダの伸長時に前記長孔を塞ぐと共に前記保護カバーの先端部が、前記シリンダカバーにおける前記ステップ本体側の面よりも更に前方側に突出して配されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記保護カバーが、耐摩耗性の板状体から構成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の建設機械。
【請求項5】
前記保護カバーが、硬質ゴムから構成されてなることを特徴とする請求項4に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−87480(P2012−87480A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232944(P2010−232944)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】