説明

建設機械

【課題】可動ブラケットのがたつきを抑えることができ、騒音や振動を低減することができる建設機械を提供する。
【解決手段】固定ブラケット20及び可動ブラケット19の左側部分に支持軸21を設け、右側部分にロック機構22を設ける。ロック機構22は、固定ブラケット20の上板35及び下板36に形成された上側係合孔35b及び下側係合孔36bと、可動ブラケット19の右支持筒体34R内に収納された上側プランジャ43U及び下側プランジャ43Dと、上側プランジャ43Uを上方向に移動させつつ下側プランジャ43Dを下方向に移動させるカムシャフト44と、上側プランジャ43Uの上方向移動に伴い右支持筒体34Rの上側に部分的に突出して上側係合孔35bに着座する上側係合ボール48Uと、下側プランジャ43Dの下方向移動に伴い右支持筒体34Rの下側に部分的に突出して下側係合孔36bに着座する下側係合ボール48Dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に係わり、特に、固定ブラケット及び可動ブラケットの左右方向一方側部分に支持機構を設け、左右方向他方側部分にロック機構を設けた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば運転質量1トン以下である小型の油圧ショベルにおいて、下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、この上部旋回体の前側に左右方向に回動可能に設けられたスイングポストと、このスイングポストに上下方向に回動可能(俯仰可能)に設けられ、ブーム、アーム、及びバケットからなる多関節型の作業装置と、上部旋回体の後部に設けられたカウンタウェイトと、上部旋回体に搭載されカウンタウェイトの前側に配置されたエンジンと、伏椀状のエンジンカバーと、このエンジンカバーの上側に設けられた運転席とを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
エンジンカバーは、ヒンジ機構を介しカウンタウェイトの前側から後側へ回動可能に設けられている。そして、通常(言い換えれば、油圧ショベルの運転時)は、エンジンカバーがカウンタウェイトの前側に位置してエンジン等の機器を覆っており、エンジンカバー上の運転席にオペレータが着座可能としている。一方、エンジンカバーをカウンタウェイトの後側に回動すれば、エンジン等の機器を露出させて、メンテナンス作業などが行えるようになっている。
【0004】
また、上述した小型の油圧ショベルは、運転席に着座したオペレータの背後を保護する保護バー(保護部材)と、この保護バーを支持する可動ブラケットと、カウンタウェイトの後側に固定された固定ブラケットと、固定ブラケット及び可動ブラケットの左側部分に設けられ、固定ブラケットに対し可動ブラケットを回動可能に連結する支持軸(支持機構)と、固定ブラケット及び可動ブラケットの右側部分に抜差し可能なロックピン(ロック機構)とを備えている。そして、通常は、固定ブラケット及び可動ブラケットの右側部分にロックピンを差込むことにより、固定ブラケットに対し可動ブラケットを回動不能に掛止する。このとき、ロックピンは、固定ブラケットに設けられたキャッチと抜止めピンにより、抜止め状態で保持されるようになっている。一方、エンジンカバーをカウンタウェイトの後側に回動させる場合は、事前に、固定ブラケット及び可動ブラケットの右側部分からロックピンを抜出し、支持軸を回動支点として固定ブラケットに対し可動ブラケットを後方左側に回動させる。これにより、エンジンカバーをカウンタウェイトの後側に回動させても、可動ブラケット上の保護バーと干渉しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−214887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下のような改善の余地があった。
【0007】
上記支持軸は、固定ブラケットの左側部分に廻止め板及びボルトを介し固定されているものの、可動ブラケットの左側部分(詳細には、上板の軸挿通孔、支持筒体、及び下板の軸挿通孔)に対し遊挿されている(言い換えれば、支持軸周りの隙間に余裕をもたせて、支持軸が挿入されている)。
【0008】
また、上記ロックピンは、固定ブラケットの右側部分に設けられたキャッチで保持されるものの、このキャッチに対し遊嵌されている。また、ロックピンは、固定ブラケットの右側部分(詳細には、上板のピン挿通孔及び下板のピン挿通孔)及び可動ブラケットの右側部分(詳細には、上板のピン挿通孔、支持筒体、及び下板のピン挿通孔)に対し遊挿されている(言い換えれば、ロックピン周りの隙間に余裕をもたせて、ロックピンが挿入されている)。
【0009】
そして、支持軸やロックピンに製缶後の機械加工を施さない場合は、製缶誤差を回避するために、支持軸周りの隙間やロックピン周りの隙間(言い換えれば、水平方向の隙間)を製缶公差より大きくしなければならない。その結果、油圧ショベルの運転時に、固定ブラケットに対して可動ブラケットががたつき、それによって騒音や振動が発生する可能性がある。
【0010】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動ブラケットのがたつきを抑えることができ、騒音や振動を低減することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体の前側に俯仰可能に設けられた作業装置と、前記上部旋回体の後部に設けられたカウンタウェイトと、前記上部旋回体に搭載され前記カウンタウェイトの前側に配置されたエンジンと、前記カウンタウェイトの前側から後側へ回動可能に設けられ、前記カウンタウェイトの前側に位置する場合に前記エンジンを覆うエンジンカバーと、前記エンジンカバーの上側に設けられ、前記エンジンカバーが前記カウンタウェイトの前側に位置する場合にオペレータが着座可能な運転席と、前記運転席に着座するオペレータの背後を保護する保護部材と、上下方向に離間して配置された上板及び下板、並びにこれら上板及び下板の間を連結する連結部材で構成され、前記保護部材を支持する可動ブラケットと、上下方向に離間して配置された上板及び下板、並びにこれら上板及び下板の間を連結する連結部材で構成され、前記カウンタウェイトの後側に固定された固定ブラケットと、前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットの左右方向一方側部分に設けられ、前記固定ブラケットに対し前記可動ブラケットを回動可能に連結する支持機構と、前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットの左右方向他方側部分に設けられ、前記固定ブラケットに対し前記可動ブラケットを掛止可能なロック機構とを備えた建設機械において、前記ロック機構は、前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットのうちの一方のブラケットにおける前記上板及び前記下板の左右方向他方側部分にそれぞれ形成されたロック用上側係合孔及びロック用下側係合孔と、前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットのうちの他方のブラケットにおける前記連結部材としての左右方向他方側の円筒状の支持筒体の内部に収納されたロック用上側プランジャ及びロック用下側プランジャと、前記ロック用上側プランジャと前記ロック用下側プランジャの間に回転可能に設けられ、その回転位置に応じて前記ロック用上側プランジャを上方向に移動させつつ前記ロック用下側プランジャを下方向に移動させることが可能なロック用カムシャフトと、前記ロック用上側プランジャの上側に配置され、前記ロック用上側プランジャの上方向の移動に伴い前記支持筒体から部分的に突出して、その突出部分が前記ロック用上側係合孔に着座するロック用上側係合ボールと、前記ロック用下側プランジャの下側に配置され、前記ロック用下側プランジャの下方向の移動に伴い前記支持筒体から部分的に突出して、その突出部分が前記ロック用下側係合孔に着座するロック用下側係合ボールとを有する。
【0012】
上述のように構成されたロック機構は、ロック用カムシャフトの回転位置に応じて、ロック用上側プランジャ及びロック用下側プランジャが上下方向に移動する。そして、例えば固定ブラケットに対し可動ブラケットを回動不能に掛止することを意図して、ロック用カムシャフトを第1の回転位置に回転させた場合は、ロック用上側プランジャと共にロック用上側係合ボールが上方向に移動して、ロック用上側係合ボールが支持筒体の上側に部分的に突出し、その突出部分がロック用上側係合孔に着座する。同時に、ロック用下側プランジャと共にロック用下側係合ボールが下方向に移動して、ロック用下側係合ボールが支持筒体の下側に部分的に突出し、その突出部分がロック用下側係合孔に着座する。これにより、固定ブラケットに対し可動ブラケットを回動不能に掛止することができる。このとき、支持筒体の内径寸法は係合ボールの直径寸法に対し製缶公差を考慮して大きくとっているものの、ロック用上側係合ボールがロック用上側係合孔に圧接し、ロック用下側係合ボールがロック用下側係合孔に圧接して、上下方向の突っ張り力が発生するので、可動ブラケットのがたつきを抑えることができる。したがって、例えば特許文献1に記載の従来技術と比べ、可動ブラケットのかたつきを抑えることができ、騒音や振動を低減することができる。
【0013】
一方、例えば可動ブラケットを回動可能にすることを意図して、ロック用カムシャフトを第2の回転位置に回転させた場合は、ロック用上側プランジャと共にロック用上側係合ボールが下方向に移動して、ロック用上側係合ボールの全体が支持筒体内に収まる。すなわち、ロック用上側係合ボールがロック用上側係合孔から離脱する。同時に、ロック用下側プランジャと共にロック用下側係合ボールが上方向に移動可能となり、ロック用下側係合ボールの全体を支持筒体内に押込むことが可能となる。すなわち、ロック用下側係合ボールをロック用下側係合孔から離脱させることが可能となる。これにより、固定ブラケットに対し可動ブラケットを回動することができる。このとき、ロック用下側係合ボールが一方のブラケットの下板の上面に乗上げても、ロック用下側係合ボールが回転するので、可動ブラケットの回動動作を容易に行うことができる。
【0014】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記ロック用上側プランジャを上方向に移動させつつ前記ロック用下側プランジャを下方向に移動させたときの前記ロック用カムシャフトの回転位置を保持する保持手段を設ける。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記左右方向他方側の支持筒体の下端部は、前記ロック用下側係合ボール及び前記ロック用下側プランジャの脱落防止のために、下端面に近づくにつれて内径寸法が徐々に小さくなるように形成される。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記ロック機構は、直径寸法が前記ロック用下側係合ボールの半径寸法より小さく且つ互いに同じである少なくとも3つの調芯用ボールを有し、前記少なくとも3つの調芯用ボールは、前記ロック用下側係合ボールと前記ロック用下側プランジャとの間に環状に配置される。
【0017】
これにより、支持筒体の中心軸とロック用下側係合ボールの中心との同芯性を高めることができ、支持筒体に対するロック用下側係合ボールの水平位置を位置決めすることができる。また、ロック用上側係合ボール及びロック用下側係合ボールのうちの一方を位置決めすることにより、例えば両方とも位置決めしない場合と比べ、可動ブラケットのがたつきを抑えることができる。また、例えばロック用下側係合ボールがロック用下側プランジャに直接接触してロック用下側係合ボールの接触点が1つになる場合とは異なり、少なくとも3つの調芯用ボールが介在することでロック用下側係合ボールの接触点が少なくとも3つになり、ロック用下側プランジャの自重を分散することができ、ロック用下側係合ボールの回転抵抗を低減することができる。
【0018】
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記ロック機構は、前記ロック用上側プランジャに付設された与圧用の皿バネを有する。
【0019】
これにより、上下方向の突っ張り力を高めることができ、可動ブラケットのがたつきをさらに抑えることができる。また、ロック機構における上下方向の製缶誤差を許容することができる。
【0020】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記支持機構は、前記一方のブラケットにおける前記上板及び前記下板の左右方向一方側部分にそれぞれ形成された支持用上側係合孔及び支持用下側係合孔と、前記他方のブラケットにおける前記連結部材としての左右方向一方側の円筒状の支持筒体の内部に収納された支持用上側プランジャ及び支持用下側プランジャと、前記支持用上側プランジャと前記支持用下側プランジャの間に回転可能に設けられ、その回転位置に応じて前記支持用上側プランジャを上方向に移動させつつ前記支持用下側プランジャを下方向に移動させることが可能な支持用カムシャフトと、前記支持用上側プランジャの上側に配置され、前記支持用上側プランジャの上方向の移動に伴い前記支持筒体の上側に部分的に突出して、その突出部分が前記支持用上側係合孔に着座する支持用上側係合ボールと、前記支持用下側プランジャの下側に配置され、前記支持用下側プランジャの下方向の移動に伴い前記支持筒体の下側に部分的に突出して、その突出部分が前記支持用下側係合孔に着座する支持用下側係合ボールとを有する。
【0021】
上述のように構成された支持機構は、支持用カムシャフトの回転位置に応じて、支持用上側プランジャ及び支持用下側プランジャが上下方向に移動する。そして、通常は、支持用カムシャフトを第1の回転位置に回転させており、この場合は、支持用上側プランジャと共に支持用上側係合ボールが上方向に移動して、支持用上側係合ボールが支持筒体の上側に部分的に突出し、その突出部分が支持用上側係合孔に着座する。同時に、支持用下側プランジャと共に支持用下側係合ボールが下方向に移動して、支持用下側係合ボールが支持筒体の下側に部分的に突出し、その突出部分が支持用下側係合孔に着座する。これにより、固定ブラケットに対し可動ブラケットを回動可能に連結することができる。このとき、支持筒体の内径寸法は係合ボールの直径寸法に対し製缶公差を考慮して大きくとっているものの、支持用上側係合ボールが支持用上側係合孔に圧接し、支持用下側係合ボールが支持用下側係合孔に圧接して、上下方向の突っ張り力が発生するので、可動ブラケットのがたつきを抑えることができる。したがって、例えば遊挿された支持軸で支持機構を構成する場合と比べ、可動ブラケットのがたつきをさらに抑えることができ、騒音や振動をさらに低減することができる。
【0022】
一方、例えば支持用カムシャフトを第2の回転位置に回転させた場合は、支持用上側プランジャと共に支持用上側係合ボールが下方向に移動して、支持用上側係合ボールの全体が支持筒体内に収まる。すなわち、支持用上側係合ボールが支持用上側係合孔から離脱する。同時に、支持用下側プランジャと共に支持用下側係合ボールが上方向に移動可能となり、支持用下側係合ボールの全体を支持筒体内に押込むことが可能となる。すなわち、支持用下側係合ボールを支持用下側係合孔から離脱させることが可能となる。このとき、例えばロック機構によって可動ブラケットの左右方向他方側部分が固定ブラケットの左右方向他方側部分に掛止されていない場合は、固定ブラケットから可動ブラケットを取外すことができる。一方、例えばロック機構によって可動ブラケットの左右方向他方側部分が固定ブラケットの左右方向他方側部分に掛止されている場合は、ロック機構が支持機構としての役割を果たすようになる。すなわち、可動ブラケットの回動支点の位置を左右方向一方側から他方側に切換えて、可動ブラケットの開き方向を左右方向一方側から他方側に切換えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、固定ブラケットに対する可動ブラケットのがたつきを抑えることができ、騒音や振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態における小型の油圧ショベルの全体構造を表す左側側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における小型の油圧ショベルの全体構造を表す、後方右側から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態における小型の油圧ショベルの全体構造を表す小型の油圧ショベルの上面図である。
【図4】本発明の一実施形態における小型の油圧ショベルの全体構造を表す上面図であり、固定ブラケットに対し可動ブラケットが後方左側に回動され、且つエンジンカバーがカウンタウェイトの後側に回動された状態を示す。
【図5】本発明の一実施形態における保護バー、可動ブラケット、及び固定ブラケットの構造を表す分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態における支持機構の構造を表す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるロック機構の構造を表す断面図であり、カムシャフトが第1の回転位置及び第2の回転位置にある状態をそれぞれ示す。
【図8】本発明の一実施形態におけるロック機構の動作を説明するための斜視図及び斜視断面図であり、カムシャフトが第1の回転位置にあってハンドルの先端部がハンドル挿入孔に挿入された状態を示す。
【図9】本発明の一実施形態におけるロック機構の動作を説明するための斜視断面図であり、カムシャフトが第1の回転位置にあってハンドルの先端部がハンドル挿入孔から抜出された状態を示す。
【図10】本発明の一実施形態におけるロック機構の動作を説明するための斜視断面図であり、カムシャフトが第2の回転位置にある状態を示す。
【図11】本発明の一実施形態におけるロック機構の動作を説明するための斜視断面図であり、可動ブラケットの回動状態を示す。
【図12】本発明の他の実施形態におけるロック機構の構造を表す断面図、並びに上側プランジャ及び皿バネの構造を表す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1は、本実施形態における小型の油圧ショベルの全体構造を表す左側側面図であり、図2は、後方右側から見た斜視図(但し、便宜上、作業装置等を図示せず)、図3及び図4は、上面図(但し、便宜上、作業装置等を図示せず)である。図1〜図3は、通常時(言い換えれば、油圧ショベルの運転時)であって、固定ブラケットに対し可動ブラケットが回動不能に掛止され、且つエンジンカバーがカウンタウェイトの前側に位置する状態を示す。一方、図4は、固定ブラケットに対し可動ブラケットが後方左側に回動され、且つエンジンカバーがカウンタウェイトの後側に回動された状態を示す。なお、以降、油圧ショベルが図1に示す状態にて、オペレータが運転席に着座した場合における運転者の前側(図1中左側)、後側(図1中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側)、右側(図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0027】
例えば運転質量1トン以下である小型の油圧ショベルは、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と、この上部旋回体2の前側に左右方向に回動可能に設けられたスイングポスト3と、このスイングポスト3に上下方向に回動可能(俯仰可能)に設けられ、ブーム、アーム、及びバケットからなる多関節型の作業装置4とを備えている。
【0028】
上部旋回体3は、その下部基礎構造をなす旋回フレーム5を備えている。旋回フレーム5の前部には、スイングポスト3を左右方向に回動可能に支持する支持ブラケット6が設けられ、旋回フレーム5の後部には、作業装置5との重量バランスを図るためのカウンタウェイト7が一体に設けられている。
【0029】
旋回フレーム5上には、エンジン8、油圧ポンプ9、熱交換器10、及び燃料タンク11等の機器が搭載されている(図4参照)。エンジン8は、カウンタウェイト7の前側に位置し、左右方向に延在するように横置き状態で配置されている。エンジン8の右側には、油圧アクチュエータに方向切換弁を介し圧油を供給する油圧ポンプ9が接続されている。エンジン8の左側には、冷却ファン(図示せず)が接続され、この冷却ファンの左側には、熱交換器10(詳細には、例えばエンジン冷却水を冷却するラジエータや、作動油を冷却するオイルクーラ等)が配置されている。また、エンジン8の前側には、エンジン8の燃料を貯留する燃料タンク11が配置されている。そして、エンジン8、油圧ポンプ9、熱交換器10、及び燃料タンク11の給油口11aは、通常、伏椀状のエンジンカバー12で覆われており、このエンジンカバー12の上側に運転席13が設けられている。
【0030】
また、旋回フレーム5上の前部(言い換えれば、エンジンカバー12の前側)にはオペレータの足場となる床板14が設けられており、この床板14上にレバースタンド15が立設されている。レバースタンド15には、前後方向の操作により左の走行用油圧モータを操作する左の走行操作レバー16Lと、前後方向の操作により右の走行用油圧モータを操作する右の走行操作レバー16Rとが設けられている。また、レバースタンド15には、例えば前後方向の操作によりアーム用油圧シリンダを操作するとともに、左右方向の操作により旋回用油圧モータを操作する左の作業操作レバー17Lと、例えば前後方向の操作によりブーム用油圧シリンダを操作するとともに、左右方向の操作によりバケット用油圧シリンダを操作する右の作業操作レバー17Rとが設けられている。
【0031】
エンジンカバー12の後方下側部分とカウンタウェイト7との間にはヒンジ機構(図示せず)が設けられており、このヒンジ機構を介しエンジンカバー12をカウンタウェイト7の前側から後側へ回動可能としている。そして、通常(言い換えれば、油圧ショベルの運転時)は、図1〜図3に示すように、エンジンカバー12がカウンタウェイト7の前側に位置してエンジン8等を覆っており、エンジンカバー12上の運転席13にオペレータが着座可能としている。一方、図4に示すように、エンジンカバー12をカウンタウェイト7の後側に回動すれば、エンジン8等の機器を露出させて、エンジン8等のメンテナンス作業や燃料タンク11への給油作業が行えるようになっている。
【0032】
上述した小型の油圧ショベルは、さらに、運転席13に着座するオペレータの背後を保護する保護バー18(保護部材)と、この保護バー18を支持する可動ブラケット19と、カウンタウェイト7の後側に固定された固定ブラケット20と、固定ブラケット20及び可動ブラケット19の左側部分に設けられ、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動可能に連結する支持機構(詳細には、後述する支持軸21)と、固定ブラケット20及び可動ブラケット19の右側部分に設けられ、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を掛止可能なロック機構22(詳細は後述)とを備えている。
【0033】
図5は、保護バー18、可動ブラケット19、及び固定ブラケット20の構造を表す、前方右側から見た分解斜視図である。
【0034】
この図5、及び前述の図1〜図4において、保護バー18は、中空パイプ材等で構成され、上下方向に延在する左右の下側バー23L,23Rと、中空パイプ材等で構成され、逆U字状に延在するとともに両端部の間に補強梁が連結された上側バー24と、左の下側バー23Lの上端部と上側バー24の左端部との間及び右の下側バー23Rの上端部と上側バー24の右端部との間にそれぞれ設けられた左右の連結装置25L,25Rとを備えている。下側バー23L,23Rにはベルト取付板26がそれぞれ付設され、これらベルト取付板26にシートベルト27L,27Rが回動可能に取付けられている。
【0035】
連結装置25Lは、下側バー23Lに設けられ、一対の板体からなる下側ステー28と、上側バー24に設けられ、下側ステー28を構成する一対の板体の間に挿入された上側ステー29と、下側ステー28のピン挿通長孔28a及び上側ステー29のピン挿通孔29aに挿通された連結ピン30とを有している。同様に、連結装置25Rは、下側バー23Rに設けられ、一対の板体からなる下側ステー28と、上側バー24に設けられ、下側ステー28を構成する一対の板体の間に挿入された上側ステー29と、下側ステー28のピン挿通長孔28a及び上側ステー29のピン挿通孔29aに挿通された連結ピン30とを有している。これにより、下側バー23L,23Rに対し上側バー24を上下方向に移動して脱着可能としている。また、下側バー23L,23Rから離脱した上側バー24を後側に回動可能としている。
【0036】
そして、例えば下側バー23L,23Rの上端部に上側バー24の左右両端部を嵌合させた直立状態としつつ、下側ステー28のボルト挿通孔28b及び上側ステー29のボルト挿通孔29bにボルト31を挿通した場合に、上側バー24を直立状態に保持するようになっている。一方、図示しないが、例えば下側バー23L,23Rから離脱した上側バー24を後側に回動させた折畳状態としつつ、下側ステー28のボルト挿通孔28c及び上側ステー29のボルト挿通孔29bにボルト31を挿通した場合に、上側バー24を折畳状態に保持するようになっている。
【0037】
可動ブラケット19は、左右方向に延在する平板状の上板32と、この上板32の下側に離間して配置され、左右方向に延在する平板状の下板33とを有している。上板32の後端は、左右方向に直線状に延在し、上板32の前端は、左右両外側が前方に突出するように略円弧状に延在している。下板33の後端及び前端は、上方から見て上板32の後端及び前端と重なるように配置されている。
【0038】
そして、上述した左の下側バー23Lの下部は、上板32の後方左側隅部を貫通して下板33の後方左側隅部まで延在し、右の下側バー23Rの下部は、上板32の後方右側隅部を貫通して下板33の後方右側隅部まで延在している。すなわち、上板32の後方左側隅部と下板33の後方左側隅部との間には、左の下側バー23Lの下部が連結され、上板32の後方右側隅部と下板33の後方右側隅部との間には、右の下側バー23Rの下部が連結されている。
【0039】
また、上板32の前方左側隅部と下板33の前方左側隅部との間には、上下方向に延在する円筒状の左支持筒体34L(連結部材)が連結され、上板32の前方右側隅部と下板33の前方右側隅部との間には、上下方向に延在する円筒状の右支持筒体34R(連結部材)が連結されている。なお、上板32の前方左側隅部及び下板33の前方左側隅部には、左支持筒体34Lの上側端部及び下側端部にそれぞれ対応して開孔が穿設され、上板32の前方右側隅部及び下板33の前方右側隅部には、右支持筒体34Rの上側端部及び下側端部にそれぞれ対応して開孔が穿設されている。
【0040】
固定ブラケット20は、左右方向に延在する平板状の上板35と、この上板35の下側に離間して配置され、左右方向に延在する平板状の下板36と、上板35と下板36との間に連結された断面コの字状の連結板37(連結部材)とを有している。なお、固定ブラケット20の上板35と下板36との間隔は、可動ブラケット19の上板32及び下板33が挿入可能な程度となっている。上板35の前端は、カウンタウェイト7の後面に沿うように左右方向に円弧状に延在し、上板35の後端は、上板35の前端に対して略平行となるように延在している。下板36の後端は、上方から見て上板35の後端と重なるように配置され、下板36の前端は、上方から見て上板35の前端より前方に位置するように直線状に延在している。
【0041】
固定ブラケット20の下板36の前部には2つのボルト挿通孔36cが穿設され、これらボルト挿通孔36cに挿通したボルト38がカウンタウェイト7の下面のネジ孔(図示せず)に螺着されている。また、固定ブラケット20の連結板37には前後方向に延在する左右の円筒体39が設けられ、これら円筒体39に挿通したボルト40がカウンタウェイト7の後面のネジ孔(図示せず)に螺着されている。これにより、固定ブラケット20がカウンタウェイト7に固定されている。
【0042】
次に、本実施形態の支持機構の構造について説明する。図6は、本実施形態における支持機構の構造を表す断面図である。
【0043】
この図6及び前述の図5において、固定ブラケット20の上板35の後方左側隅部及び下板36の後方左側隅部には、軸挿通孔35a,36aが穿設されている。そして、支持軸21が、固定ブラケット20の軸挿通孔35a,36a及び可動ブラケット19の左支持筒体34Lに挿通されている。支持軸21の上端側には廻止め板41が固着されており、この廻止め板41が固定ブラケット20の上板35にボルト42で固定されている。このような支持機構の構造により、支持軸21を回動支点として可動ブラケット19を回動可能としている。
【0044】
次に、本実施形態の要部であるロック機構22について説明する。図7(a)及び図7(b)は、本実施形態におけるロック機構22の構造を表す断面図であり、図7(a)はカムシャフトが第1の回転位置にある状態、図7(b)はカムシャフトが第2の回転位置にある状態を示す。
【0045】
これら図7(a)、図7(b)、及び前述の図5において、固定ブラケット20の上板35の後方右側隅部及び下板36の後方右側隅部には、上側係合孔35b及び下側係合孔36bが穿設されている。
【0046】
可動ブラケット19の右支持筒体34Rの内部には、円柱状の上側プランジャ43U及び下側プランジャ43Dが上下に配置されて収納されている。上側プランジャ43Uと下側プランジャ43Dの間にはカムシャフト44が配置されている。このカムシャフト44は、右支持筒体34Rの中央部を前後方向に貫通するとともに回転可能に設けられている。
【0047】
カムシャフト44の端部にはハンドル取付孔44aが形成されており、このハンドル取付孔44aにハンドル45がスライド可能に取付けられている。そして、例えば操作者がハンドル45を回転操作することにより、カムシャフト44が回転するようになっておいる。なお、カムシャフト44には抜止用のワッシャ46及びEリング47Aが取付けられ、ハンドル45には抜止用のEリング47Bが取付けられている。また、可動ブラケット19の下板33には、ハンドル45の先端を挿入可能なハンドル挿入孔33a(保持手段)が形成されている。
【0048】
上側プランジャ43Uの上側には上側係合ボール48Uが配置されており、下側プランジャ43Uの下側には下側係合ボール48Dが配置されている。また、下側プランジャ43Dと下側係合ボール48Dとの間には複数(少なくとも3つあればよく、本実施形態では、6つ)の調芯用ボール49が配置されている。右支持筒体34Rの下端部は、下側係合ボール48D、調芯用ボール49、及び下側プランジャ43Dの脱落防止のために、下端面に近づくにつれて内径寸法が徐々に小さくなるように形成されている。但し、右支持筒体34Rの下端面における開口の直径寸法は、下側係合孔36bの直径寸法より若干大きくなっている。
【0049】
複数の調芯用ボール49は、それらの直径寸法が下側係合ボール48Dの半径寸法より小さく且つ互いに同じであり、下側係合ボール48Dと下側プランジャ43Uとの間に環状に配置されている。これにより、右支持筒体34Rの中心軸と下側係合ボール48Dの中心との同芯性を高め、右支持筒体43Rに対する下側係合ボール48Dの水平位置を位置決めするようになっている。
【0050】
上側係合ボール48Uは、上側係合孔35bより直径寸法が大きくなっており、後述するように右支持筒体34Rの上側から部分的に突出した場合に、その突出部分が上側係合孔35bに着座する。このとき、上側係合孔35bの中心(水平方向位置)と上側係合ボール48Uの中心(水平方向位置)との同芯性が得られるようになっている。同様に、下側係合ボール48Dは、下側係合孔36bより直径寸法が大きく、後述するように右支持筒体34Rの下側から部分的に突出した場合に、その突出部分が下側係合孔36bに着座する。このとき、下側係合孔36bの中心(水平位置)と下側係合ボール48Dの中心(水平位置)との同芯性が得られるようになっている。なお、製缶誤差を回避するため、右支持筒体34Rの大部分(下端部以外の部分)における内径寸法は、係合ボール48U(及び48D)の直径寸法に対し製缶公差を考慮して大きくとっている。
【0051】
カムシャフト44は、図7(a)で示すようにハンドル45の先端が真下に向けられたときの第1の回転位置(θ=0°)にて上側プランジャ43Uの下端面及び下側プランジャ43Dの上端面にそれぞれ当接するカム面44b,44cと、図7(b)で示すようにハンドル45の先端が真横に向けられたときの第2の回転位置(θ=90°)にて上側プランジャ43Uの下端面及び下側プランジャ43Dの上端面にそれぞれ当接する(若しくは対向する)カム面44d,44eを有している。例えばカムシャフト44が第1の回転位置にある場合は、カムシャフト44の中心からカム面44b,44cまでの高さ寸法がd1となる。このとき、可動ブラケット19の右支持筒体34R内の上側プランジャ43Uが上方向に移動し、これに伴い、上側係合ボール48Uが上方向に移動して右支持筒体34Rの上側から部分的に突出して、その突出部分が固定ブラケット20の上板35の上側係合孔35bに着座(当接)する。同時に、可動ブラケット19の右支持筒体34R内の下側プランジャ43Dが調芯用ボール49と共に下方向に移動し、これに伴い、下側係合ボール48Dが下方向に移動して右支持筒体34Rの下側に部分的に突出して、その突出部分が固定ブラケット20の下板36の下側係合孔36bに着座(当接)する。これにより、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動不能に掛止するようになっている。
【0052】
一方、例えばカムシャフト44が第2の回転位置にある場合は、カムシャフト44の中心からカム面44d,44eまでの高さ寸法がd2(但し、d2<d1)となる。このとき、上側プランジャ43Uが下方向に移動し、これに伴い、上側係合ボール48Uが下方向に移動して、上側係合ボール48Uの全体が右支持筒体34R内に収まる。すなわち、上側係合ボール48Uが上側係合孔35bから離脱する。同時に、カムシャフト44のカム面44cと下側プランジャ48Dの上端面との間に隙間が生じて、下側プランジャ48Dが上方向に移動可能となり、これに伴い、下側係合ボール48Dの全体を右支持筒体34R内に押込むことが可能となる。すなわち、下側係合ボール48Dが下側係合孔36bから離脱可能となる。これにより、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動可能としている。
【0053】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を、図8〜図11を用いて説明する。
【0054】
例えば図8(a)及び図8(b)で示すように、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動不能に掛止することを意図して、操作者がハンドル45を操作してカムシャフト44を第1の回転位置に回転させた後、ハンドル45の先端をハンドル挿入孔33aに挿入してカムシャフト44の第1の回転位置を保持させた場合は、上側係合ボール48Uが右支持筒体34Rの上側に突出して上側係合孔35bに着座するとともに、下側係合ボール48Dが右支持筒体34Rの下側に突出して下側係合孔36bに着座する。これにより、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動不能に掛止することができる。このとき、右支持筒体34Rの内径寸法は係合ボール48U(及び48D)の直径寸法に対し製缶公差を考慮して大きくとっているものの、上側係合ボール48Uが上側係合孔35bに圧接し、下側係合ボール48Dが下側係合孔36bに圧接して、上下方向の突っ張り力が発生するので、可動ブラケット19のがたつきを抑えることができる。したがって、例えば特許文献1に記載の従来技術と比べ、可動ブラケット19のかたつきを抑えることができ、騒音や振動を低減することができる。
【0055】
一方、例えば固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動可能にすることを意図して、図9で示すように、操作者がハンドル45の先端をハンドル挿入孔33aから抜出した後、図10で示すように、ハンドル45を操作してカムシャフト44を第2の回転位置に回転させた場合は、上側プランジャ43Uと共に上側係合ボール48Uが下方向に移動して、上側係合ボール48Uの全体が右支持筒体34R内に収まる。すなわち、上側係合ボール48Uが上側係合孔35bから離脱する。同時に、カムシャフト44のカム面44cと下側プランジャ48Dの上端面との間に隙間が生じて、下側プランジャ48Dが上方向に移動可能となる。その後、図11で示すように、固定ブラケット20に対する可動ブラケットの回動を開始すると、下側係合ボール48Dが固定ブラケット20の下板36の上面に乗上げられ、下側係合ボール48Dの全体を右支持筒体34R内に押込まれる。すなわち、下側係合ボール48Dが下側係合孔36bから離脱する。これにより、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動することができる。なお、固定ブラケット20の下板36の上面に乗上げられた下側係合ボール48Dは回転するので、可動ブラケット19の回動動作を容易に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態においては、複数の調芯用ボール49を設けることにより、右支持筒体34Rの中心軸と下側係合ボール48Dの中心との同芯性を高めることができ、右支持筒体34Rに対する下側係合ボール48Dの水平位置を位置決めすることができる。また、上側係合ボール48U及び下側係合ボール48Dのうちの一方を位置決めすることにより、例えば両方とも位置決めしない場合と比べ、可動ブラケット19のがたつきを抑えることができる。また、例えば下側係合ボール48Dが下側プランジャ43Dに直接接触して下側係合ボール48Dの接触点が1つになる場合とは異なり、少なくとも3つの調芯用ボール49が介在することで下側係合ボール48Dの接触点が少なくとも3つになるので、下側プランジャ43Dの自重を分散することができ、下側係合ボール48Dの回転抵抗を低減することができる。
【0057】
次に、他の実施形態を図12により説明する。本実施形態は、上側プランジャに皿バネを付設した実施形態である。なお、上記一実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
図12(a)は、本実施形態におけるロック機構の構造を表す断面図であり、図12(b)は、上側プランジャ及び皿バネの構造を表す分解図である。
【0059】
本実施形態では、ロック機構22の上側プランジャ43U’は、本体50と、この本体50に対し上下方向にスライド可能に接続されたバネガイド51とで構成されている。バネガイド51は、本体50と同じ径寸法である大径部51aと、先端が本体50の穴50aに挿入された小径部51bとを有している。そして、バネガイド51の小径部51bには、複数(本実施形態では、4つ)の皿バネ52が挿通されている。
【0060】
以上のように構成された本実施形態においても、上記一実施形態と同様、可動ブラケット19のがたつきを抑えることができ、騒音や振動を低減することができる。また、本実施形態においては、複数の皿バネ52の与圧によって上下方向の突っ張り力を高めることができ、可動ブラケット19のがたつきをさらに抑えることができる。また、ロック機構22Aにおける上下方向の製缶誤差を許容することができる。
【0061】
なお、上記実施形態においては、複数の調芯用ボール49を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば調芯用ボール49を設けなくともよい。また、複数の調芯用ボール49の代わりに、例えばOリングやCリングを設けてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、可動ブラケット19に左支持筒体34L及び右支持筒体34Rを設け、固定ブラケット20の上板35と下板36との間に可動ブラケット19の上板32及び下板33が挿入可能な構造(言い換えれば、可動ブラケット19の上板32が固定ブラケット20の上板35より下側に位置し、可動ブラケット19の下板32が固定ブラケット20の下板36より上側に位置する場合)に適用し、固定ブラケット20側に係合孔35b,36bを形成した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、固定ブラケット20に左支持筒体及び右支持筒体を設け、可動ブラケット19の上板32と下板33との間に固定ブラケット20の上板35及び下板36が挿入可能な構造(言い換えれば、可動ブラケット19の上板32が固定ブラケット20の上板35より上側に位置し、可動ブラケット19の下板32が固定ブラケット20の下板36より下側に位置する場合)に適用してもよく、その場合には可動ブラケット19側に係合孔を形成すればよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、固定ブラケット20及び可動ブラケット19の左側部分に支持軸21が設けられ、固定ブラケット20及び可動ブラケット19の右側部分にロック機構22又は22Aが設けられた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、固定ブラケット20及び可動ブラケット19の右側部分に支持軸21が設けられ、固定ブラケット20及び可動ブラケット19の左側部分にロック機構22又は22Aが設けられてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、遊挿された支持軸21で支持機構を構成した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、支持機構は、上記一実施形態のロック機構22又は上記他の実施形態のロック機構22Aと同様の構成としてもよい。このような変形例において、例えば固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動可能に連結することを意図して、操作者が支持機構のハンドルを操作してカムシャフトを第1の回転位置に回転させた後、ハンドルの先端をハンドル挿入孔に挿入してカムシャフトの第1の回転位置を保持させた場合は、上側係合ボールが左支持筒体34Lの上側に突出して上側係合孔(軸挿通孔)35aに着座するとともに、下側係合ボールが左支持筒体34Lの下側に突出して下側係合孔(軸挿通孔)36aに着座する。これにより、固定ブラケット20に対し可動ブラケット19を回動可能に連結することができる。このとき左支持筒体34Lの内径寸法は係合ボールの直径寸法に対し製缶公差を考慮して大きくとっているものの、上側係合ボールが上側係合孔35aに圧接し、下側係合ボールが下側係合孔36aに圧接して、上下方向の突っ張り力が発生するので、可動ブラケット19のがたつきを抑えることができる。したがって、例えば上記実施形態のように遊挿された支持軸21で構成する場合と比べ、可動ブラケット19のかたつきをさらに抑えることができ、騒音や振動をさらに低減することができる。
【0065】
また、例えば操作者が支持機構のハンドルを操作してカムシャフトを第2の回転位置に回転させた場合は、上側プランジャと共に上側係合ボールが下方向に移動して、上側係合ボールの全体が左支持筒体34L内に収まる。すなわち、上側係合ボールが上側係合孔35aから離脱する。同時に、下側プランジャと共に下側係合ボールが上方向に移動可能となり、下側係合ボールの全体を左支持筒体34L内に押込むことが可能となる。すなわち、下側係合ボールを下側係合孔36aから離脱させることが可能となる。このとき、例えばロック機構22によって可動ブラケット19の右側部分が固定ブラケット20の左側部分に掛止されていない場合は、固定ブラケット20から可動ブラケット19を取外すことができる。一方、例えばロック機構22によって可動ブラケット19の右側部分が固定ブラケット20の右側部分に掛止されている場合は、ロック機構22が支持機構としての役割を果たすようになる。すなわち、可動ブラケット19の回動支点の位置を左側から右側に切換えて、可動ブラケット19の開き方向を後方左側から後方右側に切換えることができる。
【0066】
また、上記実施形態においては、適用対象として、運転質量1トン以下である小型の油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、固定ブラケット及び可動ブラケットの左右方向一方側部分に設けられ、固定ブラケットに対し可動ブラケットを回動可能に連結する支持機構と、固定ブラケット及び可動ブラケットの左右方向他方側部分に設けられ、固定ブラケットに対し可動ブラケットを掛止可能なロック機構とを備えた建設機械であればよく、例えばホイール式の油圧ショベルやホイールローダ等、他の建設機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 下部走行体
2 上部旋回体
4 作業装置
7 カウンタウェイト
8 エンジン
12 エンジンカバー
13 運転席
18 保護バー(保護部材)
19 可動ブラケット
20 固定ブラケット
21 支持軸(支持機構)
22 ロック機構
32 上板
33 下板
33a ハンドル挿入孔(保持手段)
34L 左支持筒体(連結部材)
34R 右支持筒体(連結部材)
35 上板
35b 上側係合孔
36 下板
36b 下側係合孔
37 連結板(連結部材)
43U 上側プランジャ
43D 下側プランジャ
44 カムシャフト
45 ハンドル(保持手段)
48U 上側係合ボール
48D 下側係合ボール
49 調芯用ボール
52 皿バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体の前側に俯仰可能に設けられた作業装置と、
前記上部旋回体の後部に設けられたカウンタウェイトと、
前記上部旋回体に搭載され前記カウンタウェイトの前側に配置されたエンジンと、
前記カウンタウェイトの前側から後側へ回動可能に設けられ、前記カウンタウェイトの前側に位置する場合に前記エンジンを覆うエンジンカバーと、
前記エンジンカバーの上側に設けられ、前記エンジンカバーが前記カウンタウェイトの前側に位置する場合にオペレータが着座可能な運転席と、
前記運転席に着座するオペレータの背後を保護する保護部材と、
上下方向に離間して配置された上板及び下板、並びにこれら上板及び下板の間を連結する連結部材で構成され、前記保護部材を支持する可動ブラケットと、
上下方向に離間して配置された上板及び下板、並びにこれら上板及び下板の間を連結する連結部材で構成され、前記カウンタウェイトの後側に固定された固定ブラケットと、
前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットの左右方向一方側部分に設けられ、前記固定ブラケットに対し前記可動ブラケットを回動可能に連結する支持機構と、
前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットの左右方向他方側部分に設けられ、前記固定ブラケットに対し前記可動ブラケットを掛止可能なロック機構とを備えた建設機械において、
前記ロック機構は、
前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットのうちの一方のブラケットにおける前記上板及び前記下板の左右方向他方側部分にそれぞれ形成されたロック用上側係合孔及びロック用下側係合孔と、
前記固定ブラケット及び前記可動ブラケットのうちの他方のブラケットにおける前記連結部材としての左右方向他方側の円筒状の支持筒体の内部に収納されたロック用上側プランジャ及びロック用下側プランジャと、
前記ロック用上側プランジャと前記ロック用下側プランジャの間に回転可能に設けられ、その回転位置に応じて前記ロック用上側プランジャを上方向に移動させつつ前記ロック用下側プランジャを下方向に移動させることが可能なロック用カムシャフトと、
前記ロック用上側プランジャの上側に配置され、前記ロック用上側プランジャの上方向の移動に伴い前記支持筒体の上側に部分的に突出して、その突出部分が前記ロック用上側係合孔に着座するロック用上側係合ボールと、
前記ロック用下側プランジャの下側に配置され、前記ロック用下側プランジャの下方向の移動に伴い前記支持筒体の下側に部分的に突出して、その突出部分が前記ロック用下側係合孔に着座するロック用下側係合ボールとを有することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記ロック用上側プランジャを上方向に移動させつつ前記ロック用下側プランジャを下方向に移動させたときの前記ロック用カムシャフトの回転位置を保持する保持手段を設けたことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記左右方向他方側の支持筒体の下端部は、前記ロック用下側係合ボール及び前記ロック用下側プランジャの脱落防止のために、下端面に近づくにつれて内径寸法が徐々に小さくなるように形成されたことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の建設機械において、
前記ロック機構は、
直径寸法が前記ロック用下側係合ボールの半径寸法より小さく且つ互いに同じである少なくとも3つの調芯用ボールを有し、
前記少なくとも3つの調芯用ボールは、前記ロック用下側係合ボールと前記ロック用下側プランジャとの間に環状に配置されたことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の建設機械において、
前記ロック機構は、
前記ロック用上側プランジャに付設された与圧用の皿バネを有することを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の建設機械において、
前記支持機構は、
前記一方のブラケットにおける前記上板及び前記下板の左右方向一方側部分にそれぞれ形成された支持用上側係合孔及び支持用下側係合孔と、
前記他方のブラケットにおける前記連結部材としての左右方向一方側の円筒状の支持筒体の内部に収納された支持用上側プランジャ及び支持用下側プランジャと、
前記支持用上側プランジャと前記支持用下側プランジャの間に回転可能に設けられ、その回転位置に応じて前記支持用上側プランジャを上方向に移動させつつ前記支持用下側プランジャを下方向に移動させることが可能な支持用カムシャフトと、
前記支持用上側プランジャの上側に配置され、前記支持用上側プランジャの上方向の移動に伴い前記支持筒体の上側に部分的に突出して、その突出部分が前記支持用上側係合孔に着座する支持用上側係合ボールと、
前記支持用下側プランジャの下側に配置され、前記支持用下側プランジャの下方向の移動に伴い前記支持筒体の下側に部分的に突出して、その突出部分が前記支持用下側係合孔に着座する支持用下側係合ボールとを有することを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−53481(P2013−53481A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193378(P2011−193378)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】