説明

建造物の基礎補強工法

【課題】隣接する敷地内に作業用機器や作業員が入り込むことなく、且つ、アンカーの定着長さ部分が隣接する敷地に侵入することなく、水平方向の外力に対して、建造物の基礎を補強することが出来る建造物の基礎補強工法の提供。
【解決手段】建造物の基礎(1)の増し打ち部分(3)からアンカー(4)を打設し、当該アンカー(4)の打設角度は鉛直方向(V)に対して水平方向(H)に傾斜しており、補強するべき基礎(1、3)直下の地中の領域を通過する様に打設し、アンカー(4)の張力支持部材として連続繊維補強材(41)を使用し、連続繊維補強材或いは線状部材で構成された引張部材(10)を補強するべき基礎に巻き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の基礎(例えば、橋脚等も含む)を補強する(例えば、耐震補強を行なう)技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の基礎(例えば、橋脚等も含む)を補強(例えば耐震補強)する必要性が生じた場合、補強工事の施工は、当該建造物の敷地内で行なわなければならない場合が多いが、特に都市部においては、隣接する敷地内に作業用機器や作業員が侵入して施工することが、難しい場合がある。
そして、例えば、アンカーを打設して建造物の基礎(例えば、橋脚等も含む)を補強する場合、アンカーの頭部や頭部背面が補強するべき建造物の敷地内に位置していたとしても、地中におけるアンカーが隣接する敷地内に侵入してしまうことは、回避しなくてはならない。
【0003】
従来技術では、フーチングを貫通するグラウンドアンカーを打設して、当該グラウンドアンカーを支持層に定着した後、フーチング上で緊張力を与えて締め付ける技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)ではグラウンドアンカーは垂直方向に打設されているため、水平方向に作用する外力に対して抵抗する作用が不十分であるという問題点を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−82057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、アンカーが隣接する敷地に侵入することなく、地震その他の外力に対して、建造物の基礎(例えば、橋脚等も含む)を補強することが出来る建造物の基礎補強工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建造物の基礎補強工法は、建造物の基礎(1)の増し打ち部分(3)からアンカー(4)を打設し、当該アンカー(4)(或いは、アンカー用のボーリング孔)は基礎の杭(2)と接触せず、アンカー(4)の打設角度は鉛直方向(V)に対して水平方向(H)に傾斜しており、補強するべき基礎(1、3)直下の地中の領域を通過する様に打設されており、アンカー(4)の張力支持部材(41)として連続繊維補強材を使用し、連続繊維補強材(41)或いは線状部材(例えば、鋼より線)で構成された引張部材(10)を補強するべき基礎(1)に巻き付けることを特徴としている。
【0007】
ここで、「補強するべき基礎(1、3)直下の地中の領域」とは、補強するべき基礎(1、3)が地表面(Gf)と接触する部分を地中側へ延長した領域を意味している。
或いは、アンカー(4)は「補強するべき基礎(1、3)直下の地中の領域を通過している」という文言は、アンカー(4)の水平面に対する投影位置が、基礎(1、3)を水平面に投影した領域を通過する様に、アンカー(4)が打設されていることを意味している。
【発明の効果】
【0008】
上述する構成を具備する本発明によれば、アンカー(4)の打設角度は鉛直方向(V)に対して水平方向(H)に傾斜しているので、アンカー(4)は、地震その他のどの様な外力(例えば、図1の矢印V方向、矢印H方向の外力、図5の矢印T方向、矢印Y方向の外力)に対しても対応或いは抵抗することが出来て、建造物の基礎(1)の安全性(健全性)を向上させることができる。
【0009】
また、アンカー(4)は補強するべき基礎(1、3)直下の地中の領域を通過する様に打設されているので、基礎(1、3)が地表面(Gf)と接触する部分(或いは、基礎1の水平面投影位置)よりも外側の領域に存在するアンカーの部分が短くなる。そのため、アンカー(4)が基礎(1)を補強するべき建造物の敷地(S1)を越えて、隣接する建造物の敷地(S2)に侵入してしまう恐れが少なくなる。
さらに、当該アンカー(4)は建造物の補強するべき基礎(1)の増し打ち部分(3)から打設されているので、アンカー(3)を打設する際に、基礎(1)の主筋(8)を破損してしまう恐れがない。
【0010】
さらに本発明によれば、アンカーの張力支持部材として連続繊維補強材(41)を使用し、連続繊維補強材(41)或いはその地上側端部(41e)と接続した線状部材(例えば、連続繊維補強材或いは鋼より線で構成された引張部材10)を補強するべき基礎(1)に巻き付けているので、アンカー(4)の耐力をさらに向上し、且つ、基礎(1)の耐震補強を行なうことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態における最初の工程を示す縦断面図である。
【図3】図2で示す工程に続く工程を示す縦断面図である。
【図4】図3で示す工程に続く工程を示す縦断面図である。
【図5】第1実施形態を説明するため、水平面に投影して示す説明図である。
【図6】図示の実施形態で適用されるアンカーの説明図である。
【図7】第1実施形態の作用効果を説明する縦断面図である。
【図8】建造物の基礎の増し打ち部分の必要性を説明する縦断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図10】図9の符号δで示す箇所の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1では、第1実施形態に係る基礎補強工法によって補強された構造物(敷地S1内に建造された建造物)の基礎の断面が示されている。そして図1では、隣地S2との境界Lbに最も近い基礎1が示されている。
【0013】
基礎1は、柱状部11と、板状部12と、柱状部11と板状部12とを接続する傾斜部13が、一体に形成されている。そして、板状部12が地表Gfに接触した状態で配置されている。
板状部12の下端面12bから、3本の杭2・・・が、垂直方向下方に向かってが延在している。3本の杭2・・・は、基礎1と一体に形成されている。
図1において、垂直方向が矢印Vで示されており、水平方向が矢印Hで示されている。
【0014】
図1において、板状部12の左右方向端部には、増し打ち部分3が形成されており、増し打ち部分3は板状部12と一体になるように施工されている。
図1における右側の増し打ち部分3からは、アンカー4が、左斜め下方に延在している。図1では、アンカー4は紙面と平行に延在する様に表現されているが、実際には、紙面と垂直な方向についても延在しており、いわゆる「3次元方向に」延在している。
また、図1における左側の増し打ち部分3からも、アンカー4が右斜め下方に延在している。左側の増し打ち部分3から延在するアンカー4も、実際には紙面と平行に延在している訳ではなく、紙面と垂直な方向について、いわゆる「3次元方向に」延在している。
板状部12の左右の増し打ち部分3、3から、図1の紙面と垂直な方向についてアンカー4、4が延在する方向は、図5に示されている。
【0015】
図5で後述する様に、上記2本のアンカー4、4は、複数の杭2・・・や、他方のアンカー4と接触しないように延在している。
図6を参照して後述するが、図示の実施形態で用いられるアンカー4は、テンドン40と、充填されたグラウト材42を有している。テンドン40は、連続繊維補強材(例えば、炭素繊維)41と、シース材43と、セントライザー44と、拘束具41tで組み立てられている。
【0016】
図1において、増し打ち部分3の上面(傾斜面)には、連続繊維補強材41は、図示しないジャッキ等によって引張力が付加された状態で、その地上側端部が、支圧板5を貫通して、連続繊維補強材41の地上側端部にセットされた雄ネジ部を、ナット6の雌ネジで螺合している。
それにより、連続繊維補強材41は、引張力が作用した状態で、基礎1の増し打ち部分3に接続されている。
【0017】
すなわち、ナット6に螺合する以前の段階で、連続繊維補強材41の地上側端部は支圧板5を貫通しており、その状態で、図1では図示しない張力付加装置(例えば、ジャッキ)により、連続繊維補強材41に対して引張力を付加する。そして、連続繊維補強材41の地上側端部にセットされた雄ネジ部(図1では図示せず)を、ナット6の雌ネジで螺合することにより、連続繊維補強材41は、引張力が付加された状態で固定される。
連続繊維補強材41をナット6に固定した後、図示しない張力付加装置(例えば、ジャッキ)は撤去する。図1では、張力付加装置が撤去された後の状態が示されている。
【0018】
図1で示す様な態様で、既存の建造物の基礎1を補強する施工については、図2〜図4で示す手順で行なわれる。
図2で示す工程では、打設するべきアンカー4に対応するボーリング孔Hbを、板状部12の左右の増し打ち部分3、3から地盤中に削孔する。ここで、ボーリング孔Hbは、図5で示す様に、基礎の杭2と接触しない様に削孔される。杭2と接触して杭2を破損してしまうと、基礎1全体の支持力が低下してしまうからである。
また、図5で示す様に、ボーリング孔Hb同士が接触(重複)しない様に掘削されている。アンカー4による支持力が低下することを防止するためである。
【0019】
次に、図3で示す工程で、ボーリング孔Hbにグラウト材42を充填する。以って、ボーリング孔Hbから泥水を除去して、テンドン40を構成する部材の発錆を防止している。
そして、図4の工程において、グラウト材42が充填されたボーリング孔Hb内にテンドン40を挿入する。
【0020】
テンドン40を挿入するに際しては、予め地上側で、連続繊維補強材41、シース材43、センタライザー44、拘束具41tを組み立て、図6で示す様な状態で挿入している。なお、図4では、ボーリング孔Hb内には、テンドン40の内の連続繊維補強材41のみを示している。
また、テンドン40のアンカー定着長さに相当する箇所(図5におけるハッチングを施した箇所)には、図6で示す様に、拘束具41tが形成されている。拘束具41tは、固化したグラウト材42からテンドン40が抜け出てしまうことを防止するために、アンカー体の部分(定着長さに相当する部分)に形成されている。
グラウト材42が固化した後、図1を参照して説明した様に、テンドン40に対して引張力が付加される。
【0021】
図1で示す様な態様で既存の建造物の基礎1を補強した状態において、アンカー4と、建造物基礎1と、その杭(図示の実施形態では3本)2との水平面における相対位置が、図5で示されている。
図5において、符号1、3で示す長方形の図形が、図示の実施形態により補強するべき基礎である。そして、「補強するべき基礎(1、3)直下の地中の領域」は、基礎1、増し打ち部分3、3の、図5において紙面に垂直な方向で且つ看者から離隔する方向の領域である。
図5において、「補強するべき基礎(1、3)直下の地中の領域」とは、補強するべき基礎1及び増し打ち部分3、3が地表面Gf(図1〜図4参照)と接触する部分を、地中側へ延長した領域である。
【0022】
建造物基礎1における杭2・・・は、常に図5で示す様な配置となっている訳ではなく、基礎1毎にその配置が異なっている。そして、上述した様に、図示の実施形態では、アンカー4(4A、4B、4C、4D)は杭2・・・と接触しない様に配置されている。
図2で示す工程において、どの様な工法を用いてボーリング孔Hbを掘削したとしても、杭2と接触した場合には、地上側でその旨を検知することが出来る。仮に、ボーリング孔Hbを掘削している最中に、杭2・・・の何れかと接触した旨を地上側で検知したならば、図示しない削工機器を地上側(羽口側)に若干距離だけ戻し、ボーリング孔Hbの削孔経路を変更して、杭2・・・と接触しない様に再度削孔すれば良い。
【0023】
図5で示す様に、アンカー4A〜4D(「アンカー4」は、アンカー4A〜4Dの包括表記である)は、基礎1及び増し打ち部分3、3の内側に向って打設される。すなわち、アンカー4A〜4Dは、基礎1及び増し打ち部分3、3の直下の領域(図5において、紙面に垂直な方向で且つ看者から離隔する方向の領域)を通過している。
【0024】
図5において、アンカー4A〜4Dの打設方向は、基礎1及び増し打ち部分3、3の水平面投影図形(長方形)の対角線方向に限定される訳ではない。基礎1及び増し打ち部分3、3の直下の領域(図5において、紙面に垂直な方向で且つ看者から離隔する方向の領域)を通過するのであれば、例えば、アンカー4B−V(図5では、点線で示す)で示すように打設しても良い。
図7及び図5を参照して後述する様に、基礎1及び増し打ち部分3、3の直下の領域を通過する様にアンカー4を打設すれば、アンカー4AP(図5では、点線で示す)の様に、アンカー4のアンカー定着長さに相当する箇所(図5におけるハッチングを施した箇所)が敷地境界線Lbを越えてしまうことはない。
【0025】
これに加えて、上述した様に、アンカー4が杭2と接触しない様に(或いは、ボーリング孔Hbが杭2と接触しない様に)設定されている。
上述した様に、杭2・・・の各々の位置は、基礎1毎に異なっており、基礎1の仕様も相違している。そのため、杭2・・・の各々の位置や、補強するべき基礎1の仕様により、図5において、アンカー4A〜4Dの向う方向や、アンカー4A〜4Dの各々における地上側端部(アンカー用のボーリング孔の羽口)4As、4Bs、4Cs、4Dsの位置は、ケース・バイ・ケースで異なる。
【0026】
アンカー4A〜4Dが図5で示す様に打設されているので、アンカー4A〜4Dは、補強するべき基礎1に対して、水平面の縦方向(矢印T方向)と横方向(矢印Y方向)の双方に張り出している。
そのため、図5における上下方向(矢印T方向)、左右方向(矢印Y)の何れの外力に対しても、アンカー4A〜4Dの耐力が作用して、基礎1を支持することになり、基礎1の健全性が向上する。
【0027】
図6では、図示の実施形態で用いられるアンカー4の構造を示している。
図6において、アンカー4は、上述した様に、テンドン40と、充填されたグラウト材42を有している。テンドン40は、連続繊維補強材(例えば、炭素繊維)41と、シース材43と、セントライザー44と、拘束具41tで組み立てられている。
図6において、符号7で示すのはテンドン挿入用機器であり、グラウト材が充填されたボーリング孔Hbへテンドン40を挿入する工程(図3の工程)で用いられる機器である。
【0028】
図6において、センタライザー44は、アンカー4の長手方向中心軸近傍に連続繊維補強材41を位置せしめるために、設けられている。
拘束具41tは、上述した様に、テンドン40のアンカー定着長さに相当する領域(図5でハッチングを付した領域)に形成されている。拘束具41tは、アンカーに引張力が作用した際に、固化したグラウト材42に係止され、当該引張力に対する抵抗力を発揮し、以って、テンドン40が固化したグラウト材42から抜け出てしまうことを防止している。
【0029】
図7は、第1実施形態の作用効果を示している。
第1実施形態を施工した場合には、図5を参照して説明したように、アンカー4は、補強するべき基礎1及び増し打ち部分3、3の直下の領域を通過する様に打設されているため、アンカー4は、図7において実線で示す様に、敷地境界線Lbを越えてしまうこと無く打設される。
これに対して、基礎1及び増し打ち部分3、3の直下の領域を通過する様に打設されていないアンカー4Nは、図7で示すように、必要な自由長さや定着長さを確保しようとすれば、定着長さの部分は敷地境界線Lbを越えてしまうことになる。同様に、図5において、補強するべき基礎1及び増し打ち部分3、3の直下の領域を通過する様に打設されたアンカー4A〜4D、4B−Vは、何れも、敷地境界線Lbを越えていない。それに対して、基礎1及び増し打ち部分3、3の直下の領域を通過していないアンカー4APは、定着長さの部分が地境界線Lbを越えてしまう。特に都市部等では、地中であっても、他人の敷地内にアンカーが侵入してしまうことは、非常に不都合である。
図7においてアンカー4とアンカー4Nを比較すれば明らかな様に、或いは、図5においてアンカー4A、4Bとアンカー4APを比較すれば明らかな様に、第1実施形態によれば、必要な自由長さや定着長さを確保した状態でも、アンカーが敷地境界線Lbを越えて、他人の敷地内に浸入してしまう可能性が非常に小さくなる。
【0030】
図8は、増し打ち部分3の作用効果を説明しており、増し打ち部分3を設けずに、アンカー4を打設した場合を示している。
図8で示すように、増し打ち部分3を設けずにアンカー4A、4Bを打設すると、部分Kにおいて、建造物基礎1内に配置された主筋8が損傷してしまう。主筋8が損傷すると、基礎1の強度、建造物そのものの耐久性に重大な悪影響を及ぼしてしまう。
それに対して、図1〜図4で示すように、増し打ち部分3を設けてアンカー4、4を打設すれば、当該アンカーは板状部材12を通過しないので、建造物基礎1内に配置された主筋8を損傷してしまうことも無い。
【0031】
次に、図9、図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図9において、明確には図示されていないが、アンカー4のテンドン40の地上側端部(雄ネジがセットされている端部)は、支圧板5(図10参照:図9では図示せず)を貫通しており、ナット6(図10参照:図9では図示せず)に締結されている。以って、テンドン40に張力(引張力)が作用した状態を維持している。
2本の連続繊維補強材41は、符号δで示す箇所で、引張部材(例えば、連続繊維補強材、鋼より線)10と接続されている。
【0032】
図9において、引張部材10は、円盤状のガイド部材(例えば、プーリー)20により湾曲され、その延在する方向を変えられて、基礎1の柱状部11に巻き付けられている。図9では、引張部材10は基礎1の柱状部11に一巻きしている状態が示されているが、基礎1の柱状部11に引張部材10を複数回巻き付けても良い。
2個のガイド部材20の中心部20oは、ロッド部材50の両端に回転自在に取り付けられている。
ガイド部材20の半径寸法は、引張部材10の弾性限界となる曲率半径よりも大きく設定されている。
【0033】
図示はされていないが、連続繊維補強材41を、引張部材10と接続すること無く、且つ、ガイド部材20で折り曲げること無く、建造物の基礎1の柱状部11に巻き付けたとしても、建造物の基礎における柱状部11の周囲部分は、連続繊維補強材41の弾性限界となる曲率半径よりも大きいので、差し障りはない。
【0034】
図10では、連続繊維補強材41と引張部材10との接続箇所δが拡大して示されている。図10において、連続繊維補強材41の上端部41eには雄ネジ41nが形成されており、ナット6の図示しない雌ネジは当該雄ネジ41nと螺合している。
支圧板5は、増し打ち部分3の表面に当接しており、その上方にナット6が(連続繊維補強材41の上端部41eにおける雄ネジ41nと螺合して)締結されている。
なお、図10において、ガイド部材20(図9参照)の図示は省略されている。
【0035】
図4を参照して上述した様に、図示しないジャッキにより連続繊維補強材41を引っ張り(張力を付加して)、支圧板5を貫通させて、その状態でナット6の図示しない雌ネジと連続繊維補強材41の雄ネジ41nに螺合させて、支圧板5に当接するまで締め込む。
そして、図示しないジャッキを撤去すれば、連続繊維補強材41に引張力(張力)が作用した状態が維持される。
【0036】
図10において、連続繊維補強材41の地上側の端部41eと、引張部材10の端部とは接続部材9によって接続されている。
接続部材9は図示では明確ではないが、例えば、断面の外殻部が六角形の筒状体であり、一方の端部側(図10では連続繊維補強材41側)には右ネジの雌ネジ91が形成され、他方の端部側(図10では引張部材10側)には左ネジの雌ネジ92が形成されている。
連続繊維補強材41の地上側の端部41eに形成された雄ネジ(右ネジ)41nと、接続部材9における連続繊維補強材41側の雌ネジ(右ネジ)91が螺合している。そして、引張部材10の端部に形成された雄ネジ(左ネジ)101と、接続部材9における引張部材10側(連続繊維補強材41と離隔する側)に形成された雌ネジ(左ネジ)92が螺合している。
なお、図10において、符号31は、増し打ち部分3に形成されたアンカー挿通用の貫通孔を示している。
【0037】
図10において、矢印Y方向に視て、接続部材9を回せば、接続部材9の雌ネジ91が連続繊維補強材41の雄ネジ41nに螺合し、同時に、引張部材10の雄ネジ(左ネジ)101が、接続部材9の雌ネジ(左ネジ)92に螺合して、連続繊維補強材41と引張部材10が接続される。
換言すれば、連続繊維補強材41の地上側端部41eと引張部材10の端部を近接させて保持し、連続繊維補強材41の地上側端部41eと引張部材10の端部を接続部材9に挿入して、接続部材9を所定方向に回転すれば、連続繊維補強材41と引張部材10と接続部材9の3つの部材は、雄ネジと雌ネジの螺合によって接続される。そして、接続部材9を逆方向に回転すれば、連続繊維補強材41と引張部材10と接続部材9は分離される。
【0038】
図9、図10の第2実施形態によれば、連続繊維補強材41に接続された引張部材10を基礎1の柱状体11に巻き付けているので、アンカー4の耐力が引張部材10を介して基礎1に作用する。そのため、建造物の基礎の強度、例えば耐震強度を向上させることが出来る。
図9、図10の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0039】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0040】
1・・・基礎
2・・・杭
3・・・増し打ち部分
4、4A、4B、4C、4D、4N・・・アンカー
5・・・支圧板
6・・・ナット
7・・・テンドン挿入用機器
8・・・主筋
9・・・接続部材
10・・・引張部材
11・・・柱状部
20・・・ガイド部材
40・・・テンドン
41・・・連続繊維補強材
41t・・・拘束具
42・・・グラウト材
43・・・シース材
44・・・センタライザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の基礎の増し打ち部分からアンカーを打設し、当該アンカーは基礎の杭と接触せず、アンカーの打設角度は鉛直方向に対して水平方向に傾斜しており、補強するべき基礎直下の地中の領域を通過する様に打設されており、アンカーの張力支持部材として連続繊維補強材を使用し、連続繊維補強材或いは線状部材で構成された引張部材を補強するべき基礎に巻き付けることを特徴とする建造物の基礎補強工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−237093(P2012−237093A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104863(P2011−104863)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(596162463)グラウト物産株式会社 (2)
【Fターム(参考)】