説明

弁構造

【課題】 密閉袋へのヒートシールの際に弁シートが外装シートに融着しない弁構造を提供する。
【解決手段】 本願発明では、3枚の弁構成シート1,1の左右はサイドシールされ、対向する弁構成シート1,1同士が密着して流体の移動が制限される。区画シールによって、袋体の内外が区画され、弁は、袋体の内外に渡って配位され、且つ、区画シールによって袋体に溶着される。弁構成シートの一方の対向面は、サイドシール及び区画シールの溶着によっては溶着しない非溶着フィルムにて構成される。非溶着フィルムは、弁構成シートの上記対向面に積層されたものである。サイドシールは、非溶着フィルムの部分では溶着されない非溶着部分となり、区画シールより流体の移動方向の下流側において、非溶着部分の左右方向の外側に、区画シールと連続して、非溶着部分からの移動通路への流体の流入を阻止する、横入り防止シール部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、弁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体や気体などの流体を収納したり、或いは、布団や衣類等を収納し内部の空気を追い出して使用したり、小さく区画された収納部に封入された気体による緩衝効果を利用する緩衝材として使用される等、種々の目的に使用され得る密閉袋について、目的を実現するため、内容物の排出や導入のための開口部へ逆止弁が取り付けられる(特許文献1及び2)。
逆止弁は、袋の収納部の内外における気体や液体などの流体の流れを一方向のみに制限するものである。
逆止弁には、特に、液体を収容する密閉袋などにおいて、液体の排出時に液体と入れ替わって空気が密閉袋へ流入するのを阻止するのに用いられるものがある(特許文献2)。
具体的には、逆止弁は、夫々合成樹脂でできた、2枚の外装シートと、弁シートとを備え、外装シートは弁シートを挟んで重ねられ、密閉袋に対する内容物の排出或いは収容のための流路の方向を上下として、両外装シートの、左端辺同士及び右端辺同士がヒートシールされ、弁シートの基端辺が一方の外装シートの内面へ固定され、他の一方の外装シートの内面と弁シートの固定面と反対側の面との間が流路を形成する。
そして、この逆止弁を密閉袋へ取り付けるに際して、両外装シートの外面へ密閉袋の開口部付近の両内面を重ねてヒートシールが施される。
逆止弁を密閉袋へ取り付ける上記ヒートシールの際、両外装シート間に挟まれている弁シートが外装シートへヒートシールされないようにする必要がある。
【0003】
このため、本願発明者において、上記弁シートの流路を形成する面に、耐熱インクを印刷して対応することを検討した。
耐熱インクには、人体に対し安全であると考えられるものを使用するのであるが、収容物を食品とした場合に、内容物にインクが接触することにより安全性が担保されていると言えないとし、認可されない問題がある。
また、逆止弁の製造業者において、耐熱インクの印刷については、印刷業者に外注して行う必要があり、ある程度纏まったロット数の注文を行うことが必要であり、少数のロットでは耐熱インクの印刷を外注するのは困難であった。
そこで、更に、本願発明者は、耐熱インクを印刷することに代え、外装シートに対して熱溶着しない素材にて形成されたフィルム(シート)を、弁シートの流路を構成する面へ、ラミネートすることによって弁シートを形成することを検討した。
しかし、熱溶着しないフィルムを設けることによって、弁製造時、互いに流路を構成する外装シートの内側面と当該内側面と対面する上記弁シートとを確実にヒートシールすることができず、当該外装シートと弁シートの左端辺同士の間と右端辺同士の間にシールされない非シール部分ができ、この非シール部分から密閉袋の気密性が損なわれて、内容物を漏したり、外気を密閉袋内へ呼び込んだりする問題があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4445879号公報
【特許文献2】実開平5−6265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、密閉袋へ弁をヒートシールするに際して、上記の耐熱インクを印刷するという方法によらず、弁シートが外装シートへ融着するのを防ぐ。また、その上で、弁が密閉袋の気密性を損なわない手段を提供することにより、上記の各問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に係る発明では、弁とシート製の袋体とによって構成され、上記弁は、互いに重ねられて配位された複数枚の弁構成シートを備え、上記複数枚の弁構成シートのうち対向して重ねられた少なくとも2枚の弁構成シートの対向面間が流体の移動通路とされる。上記流体の上流から下流への移動方向を上下方向として、上記移動通路の左右は、サイドシールによって規定され、上記サイドシールは、上記対向する弁構成シート同士が溶着されることにより形成されたものであり、上記対向する弁構成シートが密着することによって上記移動通路における流体の移動が制限され、上記袋体は、上記移動通路を横切る方向に伸びる区画シールによって、袋体の内外が区画される。上記弁は、上記袋体の内外に渡って配位され、且つ、上記区画シールによって上記袋体に溶着された弁構造について、次の構成を採るものを提供する。
即ち、上記対向する弁構成シートの対向面のうち少なくとも一方の対向面は、上記区画シールと同位置を含む箇所において、上記サイドシール及び区画シールの溶着によっては溶着しない非溶着フィルムにて構成される。上記非溶着フィルムは、弁構成シートの上記対向面に直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものであって、且つ、上記左右のサイドシール間に渡って配位される。上記サイドシールは、上記非溶着フィルムの部分では溶着されない非溶着部分となる。流体の順流における区画シールよりも下流側において、上記非溶着部分の左右方向の外側に、当該区画シールと連続して、上記非溶着部分からの移動通路への流体の流入を阻止する、横入り防止シール部が設けられている。
ここで順流とは、弁が逆止弁か否かに拘わらず、本来弁が許容すべき方向への流体の移動をいう。例えば、密閉袋Wが風船であり、流体が風船を膨らめせるために注入される空気である場合、風船の外部から内部へ向けての空気の移動が順流となる。また、密閉袋Wが衣服収納用の脱気袋であり、流体が脱気するために脱気袋から排出される空気である場合、脱気袋の内部から外部へ向けての空気の移動が順流となる。逆止弁以外の弁としては、後に図5(D)(E)を用いて説明する、2枚の弁構成シートからなり両弁構成シート同士が密着して流体の通路を塞ぐものを例示することができ、このような逆止弁以外の弁についても、本来意図する許容すべき方向への流体の移動を順流とする点変わりない。
本願の請求項2に係る発明では、上記本願の請求項1に係る発明にあって、上記の横入り防止シール部は、上記非溶着部分からの移動通路内への流入を阻止すると共に上記非溶着部分からの移動通路外への流体の流出を阻止するものであることを特徴とする弁構造を提供する。
本願の請求項3に係る発明では、上記本願の請求項1又は2に係る発明にあって、横入り防止シール部は、区画シールと一体に形成され、区画シールから順流における下流側へ向けて、延設されたものであるの弁構造を提供する。
本願の請求項4に係る発明では、上記本願の請求項1又は2に係る発明であって、横入り防止シール部は、区画シールと一体に形成され、区画シールから順流における下流側と上流側の双方に向けて、延設されたものであり、横入り防止シール部の一部がサイドシールにオーバーラップするものである。
本願の請求項5に係る発明では、本願の請求項1乃至4の何れかに記載の弁構造にあって、次の構成を採るものを提供する。
即ち、弁は、少なくとも3枚の弁構成シートにて構成された逆止弁であり、弁構成シートのうち、少なくとも2枚は外装シートであり、且つ、少なくとも他の1枚は弁シートであり、両外装シートは、弁シートを挟んで重ねられ、両外装シートと弁シートとに上記サイドシールが形成されている。弁シートにおいて、流体の順流における上流側が一方の外装シートへ固定された固定端とされ、且つ、下流側が固定されない自由端とされ、上記弁シートと、当該弁シートと対向する他の外装シート又は他の弁シートとの、両対向面間が、流体の上記移動通路をなすものであり、当該両対向面の少なくともいずれか一方に、上記非溶着フィルムが、直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものである。
本願の請求項6に係る発明では、本願の請求項1乃至4の何れかに記載の弁構造にあって、弁は、2枚の弁構成シートからなり、両弁構成シートが上記のサイドシールにより筒状に形成され、当該2枚の弁構成シートの対向面間が、上記流体の移動通路をなすものであり、当該両対向面の少なくともいずれか一方に、上記非溶着フィルムが、直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものである。
本願の請求項7に係る発明では、本願の請求項1乃至6の何れかに記載の弁構造にあって、流体の移動通路には、濾過シートが設けられ、弁構成シート間を移動する流体を、濾過する。
本願の請求項8に係る発明では、弁とシート製の袋体とによって構成され、弁は、2枚の弁構成シートからなり、両弁構成シートが上記のサイドシールにより筒状に形成され、当該2枚の弁構成シートの対向面間が、上記流体の移動通路をなすものであり、上記流体の上流から下流への移動方向を上下方向として、上記移動通路の左右は、サイドシールによって規定され、上記サイドシールは、上記対向する弁構成シート同士が溶着されることにより形成されたものであり、上記対向する弁構成シートが密着することによって上記移動通路における流体の移動が制限され、上記袋体は、上記移動通路を横切る方向に伸びる区画シールによって、袋体の内外が区画され、上記弁は、上記袋体の内外に渡って配位され、且つ、上記区画シールによって上記袋体に溶着された弁構造において、次の構成を採るものを提供する。
即ち、上記対向する弁構成シートの対向面のうち少なくとも一方の対向面は、上記区画シールと同位置を含む箇所において、上記サイドシール及び区画シールの溶着によっては溶着しない非溶着フィルムにて構成されている。上記非溶着フィルムは、弁構成シートの上記対向面に直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものである。上記サイドシールは、上記非溶着フィルムの部分では溶着されない非溶着部分となる。区画シールより密閉袋の、内部側と外部側の少なくとも何れか一方において、上記非溶着部分の左右方向の外側に、当該区画シールと連続して、上記非溶着部分からの移動通路への流体の流入を阻止する、横入り防止シール部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本願の請求項1〜8に係る発明では、区画シールの形成により流体の移動通路がシールされるのを、非溶着フィルムを設けることより防止した。そして、非溶着フィルムにより弁構成シートのサイドシールに設けられた非溶着部分(非溶着区間)について、当該部分を通じて、流体の移動通路の外部から当該移動通路内へ、移動通路を順流する流体以外の流体が侵入するのを、横入り防止シール部にて防ぐことができる。
また、本願の請求項2に係る発明では、上記横入り防止シール部によって、順流となる流体が、非溶着シール部から、流体通路外へ流出するのも防ぐことができる。
上記非溶着フィルムによって区画シールの形成にて通路の移動通路が遮断されるのを防ぐことができ、耐熱インクの印刷が不要となった。耐熱インクが不要となることで、耐熱インクの人体に対する安全性担保の問題を解消し、ヒートシール前に耐熱インクが剥がれてしまうという問題もなく、また、印刷業者に外注する必要がないので、小ロットの生産にも柔軟に対応することができる。
更に、耐熱インクを印刷する必要がないので、その分逆止弁の設計も自由に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A)は密閉袋へ取り付けられた本願発明の一実施の形態に係る弁の斜視図、(B)は(A)のX−X端面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る密閉袋の全体正面図。
【図3】(A)は図1の一部切欠要部拡大略断面図、(B)は(A)のI−I略断面図。
【図4】(A)は図3のII−II略断面図、(B)は図3のIII−III略断面図、(C)は図3のIV−IV略断面図、(D)は図3のV−V略断面図。
【図5】(A)は上記弁の他の実施の形態を示す略端面図、(B)は上記弁の又他の実施の形態を示す略端面図、(C)は上記弁の更に他の実施の形態を示す略端面図、(D)は上記弁の又更に他の実施の形態を示す略端面図、(E)は上記弁の更に又他の実施の形態を示す略端面図。
【図6】(A)は又他の実施の形態を示す端面図、(B)又更に他の実施の形態を示す端面図。
【図7】(A)は密閉袋への取り付け前の本願発明の更に他の実施の形態に係る弁の斜視図、(B)は(A)のY−Y端面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本願発明に係る密閉袋Wへの弁Vの取り付け構造の実施の形態について説明する。
説明の便宜上、各図において、Uは上方、Sは下方を示す。
尚、ここでいう上下左右の各方向は相対的なものであり、絶対的な位置を示すものでない。例えば、ここでいう上下方向を実際には左右方向としても何ら差し支えない。
この実施の形態において、密閉袋Wの下端辺に、弁Vが設けられている。
密閉袋Wへの収容或いは当該密閉袋Wからの排出の対象となる流体の、順流において、上流側を上方U側とし下流側を下方S側とする。
この実施の形態では、密閉袋Wは、液体などの流体を収容するものである。当該密閉袋Wへ取り付けられる弁Vは、収容物の排出時、収容物を逆流させず又空気を内部へ導入しないように設けられる逆止弁である。
尚、図1(A)では、図面の煩雑を避けるため、弁Vが取り付けられる密閉袋Wについて、密閉袋Wを構成する袋用シートW1,W2を省略し、弁Vと密閉袋W間のシールの位置のみを示す。
図1(A)(B)へ示す通り、この弁Vは、夫々矩形の合成樹脂シートである、3枚の弁構成シートを備える。3枚の弁構成シートのうち、2枚は外装シート1,1であり、残り1枚は弁シート2である。
両外装シート1,1と弁シート2の3枚のシートについて、弁V内の流体の移動方向と直交する方向の幅が、互いにほぼ同じ大きさである。即ち両外装シート1,1と弁シート2の3枚のシートの左右方向の幅は、互いにほぼ同じ大きさである。
上下方向U,Sを逆止弁Vを通る流体の流路方向として、2枚の外装シート1,1b同士は、間に弁シート2を挟んで重ねられる。このように重ねられて、当該各シート1,2,1の左端辺同士及び互いの右端辺同士がヒートシールされる。
【0010】
外装シート1,1の一方を第1シート1a、外装シート1,1の他の一方を第2シート1bとして具体的に説明する。
第1シート1aの左端辺と弁シート2の左端辺と第2シート1bの左端辺とが上記ヒートシールにより一体とされる。第1シート1aの右端辺と弁シート2の右端辺と第2シート1bの右端辺とが上記ヒートシールにより一体とされる。
弁Vの上記各弁構成シートの上記ヒートシールが施された部分を、必要に応じてヒートシール部gと呼び、各図において斑点で示す。
図1(B)へ示す通り、第1シート1aと第2シート1bの、上端辺同士、下端辺同士は解放されて、夫々開口部P1,P2を構成する。
弁シート2について、図1(B)へ示す通り、弁V内を移動する流体の順流において上流側が外装シート1の一方へ固定された固定部23である。弁V内を移動する流体の順流において下流側が外装シート1,1へ固定されない自由端である。後述する密閉袋Wの袋用シートW1,W2同士のシールの際に当該シールと同時に溶着されて当該固定部23が形成される。従って、密閉袋Wへ取り付けられる前の弁2において、弁シート2の上記固定部23は存在しない。
当然、後述する袋シール部Hは、弁V製造時には存在しない。
図1(B)へ示すように、密閉袋Wへの弁V取り付けの際のシールにて弁シート2の上記固定部23が形成された後、当該固定部23が、上下方向について第2シート1bと弁シート2との間を遮断して、この弁シート2と第2シート1bとの間にて流体を逆流させない。
【0011】
具体的には、この逆止弁Vにおいて、図1(B)へ示す通り、第1及び第2シート1a,1bの上端開口部P1から第1及び第2シート1a,1b間へ入った流体aは、順流として、第1シート1aの内側面と弁シート2との間を通過して下端開口部P2から第1及び第2シート1a,1b間を抜け出ることができる。第1シート1aの当該内側面が第1シート1aの対向面11となる。また、弁シート2の第2シート1b側と反対側を臨む面が弁シート2の対向面21となる。そして、第1シート1aと弁シート2の両対向面11,21間が流体の移動通路となるのである。この移動通路内の順流移動中、図1(B)へ二点鎖線で示すように、弁シート2の自由端側は、対向する第1シート1aの対向面11から離れる。そして、弁シート2の自由端側は、当該弁シート2を備える第2シート1bの内側面12に沿う。
上記の順流に対し逆流は、第1及び第2シート1a,1bの下端開口部P2から第1及び第2シート1a,1b間へ移動しようとする、順流と逆向きの流体bの移動である。
図1(B)へ実線で示す通り、弁シート2の自由端(先端側。この実施の形態では下端側。)が第1シート1aの上記対向面11へ密着することにより、逆流は、密閉袋Wの取り付け時に形成される弁シート2の固定部23へ阻まれる。その結果逆流は、上端開口部P1から逆止弁の外部へ抜け出ることができない。弁シート2の上記固定部23により、逆流の発生が防止されるのである。
この実施の形態において、図1(B)へ示す通り、第2シート1bに弁シート2が固定される。第2シート1bの順流における上流側端部u2は、第1シート1aの上流側端部u1よりも上流側に位置する。即ち、図1の例では、第2シート1bの上端が、第1シート1aの上端よりも上方に位置する。
流体の移動方向について、第1シート1aと第2シート1bの下流側端部s1,s2は、互いに同じ位置にある。
この実施の形態において、弁シート2の上流側端部u3は、流体の移動方向について、上記第2シート1bの上流側端部u2と同じ位置にある。即ち、弁シート2の上端は、流体の移動方向について、上記第2シート1bの上端と同じ位置にある。
また、弁シート2の下流側端部s3は、第1及び第2シート1a,1bの下流側端部s1,s2よりも、上流側に位置する。即ち、図1の例では、弁シート2の下端が、第1及び第2シート1a,1bの下端よりも、上方に位置する。
但し、図5(A)へ示す通り、第1シート1aと第2シート1bの上流側端部u1,u2即ち第1シート1aと第2シート1bの上端同士を、流体の移動方向について同じ位置として実施してもよい。また、弁シート2の上流側端部u3即ち弁シート2上端の位置についても、第2シート1bの上流側端部u2よりも下流側に位置するものとしても実施できる。
弁シート2の、自由端側の対向面21と反対側の面即ち第2シート1bを臨む面を非対向面22として、図1(B)へ示すように、弁シート2の当該非対向面22には、弁シート2を備える第2シート1bに対して、弁シート2を密着しにくくするための密着防止部5が設けられている。このように密着防止部5が設けられた場合、第2シート1bに対して弁シート2が離反しやすくなる。即ち、第1シート1aに対して弁シート2の自由端側の接近及び離反がスムーズになされ、逆止弁としての逆止作用が確実に働くものとすることができる。この密着防止部5としては、シリコン樹脂等の剥離性に富んだ樹脂の膜が例示できるが、これに限らず、弁シート2に一体に積層された、剥離性に富んだ樹脂フィルムなど、種々の形態で実施し得る。また、弁体シート2の側ではなく、第2シート1bにこの密着防止部5が設けられたものであっても良い。但し、密着防止シート5を設けずに実施することも可能である。
【0012】
弁Vを密閉袋Wへ取り付ける際に後述する区画シールH1が横断する位置即ち後述する第1支部H11及び第2支部H12が横断する位置に対して、当該横断位置をカバーするようにシール制限シートmが設けられる。
シール制限シートmは、第1及び第2シート1a,1bや弁シート2と別体に形成されたシートであり、このシール制限シートmは、互いにラミネートにより重ね合わされた、非溶着フィルム2aと溶着フィルム2bとからなる。
非溶着フィルム2aは、第1シート1aに対して溶着しない素材にて形成されている。溶着フィルム2bは、第2シート1bに対して溶着する素材にて形成されている。
上記ラミネートの方法としては、接着剤を用いるなど、ヒートシール以外の周知のラミネートの方法を採用する。
上記サイドシール部gの形成により、シール制限シートmの溶着フィルム2b側は、弁シート2の対向面へ向けてサイドシールされる。このようにして、非溶着フィルム2aの表面側は、第1シート1aの対向面11に向ける。
そして、後述する密閉袋W形成のための第1袋用シートW1と第2袋用シートW2のシールにより、図1(B)及び図4(B)(C)へ示す通り、当該シールと同時に、シール制限シートmの溶着フィルム2bと弁シート2との間に副固定部25が形成され、溶着フィルム2bと弁シート2とが当該副固定部25にてシールされる。
流体の移動方向について、シール制限シートmの上流側端部m1と下流側端部m2との間の幅が、区画シールH1の流体の移動方向の幅と同じか区画シールH1の当該幅よりも大きい。即ち、流体の移動方向について、シール制限シートmの上下の幅が、区画シールH1の後述する横シールH5上下の幅と同じかこの横シールH5の当該幅よりも大きい。
シール制限シートmの流体移動方向の幅を、区画シールH1の流体移動方向の幅と同じとする場合、シール制限シートmを、流体の移動方向について、区画シールH1と一致するように配設する(図示しない)。具体的には、流体の移動方向について、シール制限シートmの上流側端部m1を、区画シールH1の横シールH5が備える後述の第1支部H11や第2支部H12の上流側端部Haと同じ位置とする。そして、シール制限シートmの下流側端部m2を、区画シールH1の横シールH5が備える第1支部H11及び第2支部H12の下流側端部Hbと同じ位置とする。
シール制限シートmの流体の移動方向即ち上下の幅を、区画シールH1の流体移動方向即ち横シールH5の上下の幅よりも大きいものとする場合、図1(B)へ示す通り、シール制限シートmについて、流体の移動方向に対し、区画シールH1を包括するように配置する。例えば、流体の移動方向について、シール制限シートmの上流側端部m1を、横シールH5即ち第1支部H11及び第2支部H12の上流側端部Haよりも、上流側に配置する。そして、シール制限シートmの下流側端部m2を、当該横シールH5の下流側端部Hbよりも下流側に配置する。但し、シール制限シートmの流体の移動方向における上下の幅を区画シールH1の横シールH5の上下の幅より大きいものとした場合において、シール制限シートmの上流側端部m1を、区画シールH1の上流側端部Haと同じ位置としてもよい。逆に、シール制限シートmの下流側端部m2を、区画シールH1の下流側端部Hbと同じ位置としてもよい。何れの場合も、流体の移動方向について、シール制限シートmから区画シールH1がはみ出ないものであれば、実施可能である。
図1〜図4、図5(A)へ示す密閉袋Wのように、区画シールH1が、弁Vの弁シート2について流体の移動方向を横断するものでは、これらの図に示した通り、弁シート2へシール制限シートmを設けることができる。図1〜図4、図5(A)へ示す例では、シール制限シートmは、弁シート2の対向面21に設けられている。図4(B)(C)及び図5(A)に示す通り、シール制限シートmは、固定部23において溶着フィルム2bの表面を弁シート2の上記対向面21へ溶着されることにより、非溶着フィルム2a表面を第1シート1aの対向面11へ向ける。
第1及び第2シート1a,1b同士は互いに融着する必要があるので何れも同じポリエチレンにて形成すればよい。また、弁シート2も、ポリエチレンにて形成すればよい。この場合シール制限シート2の非溶着フィルム2aをPETにて形成し、溶着フィルム2bをポリエチレンにて形成する。
但し、第1シート1aと非溶着フィルム2aとが溶着せず、なお且つ、弁シート2と溶着フィルム2bとが溶着するものであれば、夫々の素材をポリエチレンとPETに限定するものではなく、他の素材を採用して形成することも可能である。即ち、非溶着フィルム2aは、PETに限らず、ヒートシール性を有しないもの、言い換えるとヒートシールにて溶着しないものであればよい。例えば、ポリエチレン製の溶着フィルム2bに対して、非溶着フィルム2aにはPET以外にナイロンを採用することができる。
図1(B)へ示す通り、流体の移動方向について、シール制限シートmの上流側端部m1は、弁シート2や第2シート1bの上流側端部u3,u2よりも下流側に位置するが、弁シート2や第2シート1bの上流側端部u3,u2と同じ位置としても実施できる。即ち、この実施の形態では、流体の移動方向について、シール制限シートmの上端は、弁シート2や第2シート1bの上端よりも下方に位置するが、弁シート2や第2シート1bの上端と同じ位置としても実施できる。
要は、上記シール制限シートmについて、流体の移動方向の幅は、区画シールH1の流体の移動方向についての幅と一致するか包含する大きさ・配置を採るものであればよい。言い換えると、上記シール制限シートmにおいて、上下の幅は、区画シールH1の横シートH5の上下の幅と一致するか包含する大きさ・配置を採るものであればよい。
図1〜図4に示すように、前述サイドシール部gの形成にて、第2シート1bの内側面の左右端辺と、弁シート2の非対向面22の左右端辺とは、弁シート2の上下の全幅に渡って、適切にシール(サイドシール)される。また、第2シート1bの内側面の左右端辺において弁シート2より下流側即ち下方は、第1シート1aの内側面の左右端辺と適切にシールされる。更に、サイドシール部gの形成により、弁シート2の対向面の左右両辺と第1シート1aの対向面の左右端辺とは、シール制限シートmが設けられていない区間において適切にシールされる。シール制限シートmの非溶着フィルム2aの表面と第1シート1aの対向面11とは、サイドシール部gの形成によって適切にシールされるものでなく、非溶着部分g0となる。シール制限シートmの溶着フィルム2bの表面と弁シート2の対向面21とは、適切にシールされる。
図1(A)において、斑点が密に付された部分がサイドシール部gにより適切にシールされて気密にされた領域であり、斑点が疎らに付された部分が、上記非溶着部分g0であり、サイドシール部g形成のためのヒートシールによっても、適切にシールされず或いは全くシールされておらず、気密性が不十分な領域である。
図1〜図4へ示す例では、図示の通り、流体の移動方向について、弁シート2の下流側端部s3は、第1シート1a及び第2シート2bの下流側端部s1,s2よりも上流側に位置する。図示しないが、弁シート2の下流側端部s3は、第1シート1a及び第2シート1bの下流側端部s1,s2と同じ位置か、或いは第1シート1a及び第2シート1bの下流側端部s1,s2よりも下流側に位置するものとしても実施できる。即ち、流体の移動方向について、弁シート2の下端は、第1シート1a及び第2シート2bの下端よりも上方に位置するものを図示したが、第1シート1a及び第2シート1bの下流側端部s1,s2と同じ位置か、或いは第1シート1a及び第2シート1bの下流側端部s1,s2よりも下方に位置するものとしても実施できる。
上記の図示した実施の形態では、弁Vは密閉袋Wの収容物である流体を当該密閉袋Wの外部へ排出するものとしたが、弁Vは密閉袋Wの外部から収容物となる流体を当該密閉袋W内へ導入するものとしても実施できる。外部から密閉袋W内へ収容物を導入する場合、密閉袋Wに対する弁Vの向きを、図1へ示すものと逆に配置すればよく、図1(B)に示す場合と上下逆さまに弁Vを密閉袋Wに対して取り付ければよい。このような例を後に図6(B)を用いて説明する。
特に、密閉袋を風船などとして弁Vが密閉袋Wの外部から収容物を袋内へ導入するものである場合、上記の通り、流体の移動方向について第1シート1aと第2シート1bの上流側端部u1,u2の位置を異なるものとすれば、ストローを弁V内へ挿入して空気を吹き込むとき弁Vの口を指先で容易に開くことができ、ストローを差し易いものとすることができる。
【0013】
次に密閉袋Wへ上記にて形成された弁Vの取り付け方法について説明する。
この密閉袋Wへの弁Vの取り付けは、密閉袋Wの製造時に密閉袋Wの製造と共に行われる。以下、密閉袋Wの製造中の弁Vの取り付けを中心に具体的に説明する。
密閉袋Wは、図2、図3(B)及び図4(A)へ示す通り、2枚のポリエチレン製のシートW1,W2を重ねて両シートW1,W2(以下必要に応じて、第1袋用シートW1、第2袋用シートW2と呼ぶ。)の周縁同士をヒートシールすることによって形成される。
各図において、格子状に複数の斜線が交差する領域が、密閉袋Wの両袋用シートの上記ヒートシールにて形成された袋シール部Hを示している。
尚、図2及び図3(A)において、手前側の第1袋用シートW1及び第1シート1aを省いて、手前側の第1袋用シートW1を透視した状態に描いている。
【0014】
密閉袋Wの製造時、上記の、第1袋用シートW1と第2袋用シートW2とをヒートシールする際に、図1に示す弁Vは、当該ヒートシールによって、図2乃至図4へ示す通り、密閉袋Wの形成と同時に当該密閉袋Wへ取り付けられる。
具体的に説明する。
図3(A)は、密閉袋Wの下端辺の弁Vが設けられ付近を示している。袋シール部Hは、図3(A)へ示すように、主シール部H1と、第1延設部H2,H2と、第2延設部H3,H3とを備える。
この主シール部H1が、特許請求の範囲の区画シールであり、上述してきた区画シールH1に相当する。
主シール部H1即ち区画シールH1は、縦シールH4,H4と横シールH5とを備える。縦シールH4,H4は、第1袋用シートW1の左右と、第2袋用シートW2の左右の夫々をシールする。横シールH5は、第1袋用シートW1の下辺と第2袋用シートW2の下辺とをシールする。この実施の形態において、図2へ示す通り、
第1袋用シートW1と第2袋用シートW2の上辺には、ファスナH6が設けられている。但し、第1袋用シートW1と第2袋用シートW2の上辺を、他の辺と同様、シールすることもできる。
横シールH5は、図3(A)及び図4(A)へ示す通り、重ねられた両袋用シートW1,W2の下端辺に沿って左右横方向へ伸びる。主シール部H1は、両袋用シートW1,W2の下端辺へ配置された弁Vを横断する。
【0015】
詳しくは、横シールH5は、図4(A)へ示す通り、弁Vの左右に位置する主幹部H10,H10を備え、更に弁Vを挟んで弁Vの正面側と背面側とに分岐して弁Vを横断する、第1支部H11と第2支部H12とを備える。
主幹部H10,H10は、密閉袋Wの正面側を構成する上記第1袋用シートW1の内面側と、密閉袋Wの背面側を構成する上記第2袋用シートW2の内面側とを直接シールする。そして、主幹部H10,H10の横方向の端部即ち、弁Vの右側に位置する主幹部H10の左端及び弁Vの左側に位置する主幹部H10の右端は、弁Vの左右端辺夫々に接し、当該弁Vと接する箇所をシールする。
第1支部H11は、第1袋用シートW1の内側面へ弁Vの第1シート1aの外側面を溶着する。又、第2支部H12は、第2袋用シートW2の内側面へ弁Vの第2シート1bの外側面を溶着する。図4(B)(C)へ示す通り、主シール部H1を形成することにより、第2支部H12の形成と共に、第2シート1bと弁シート2とを溶着する前述の固定部23が、更に、弁シート2の対向面21とシール制限シートmの溶着フィルム1bとを溶着する前述の副固定部25が形成される。
前記非溶着部分g0を、少なくとも流体の移動方向(上下方向)について、弁Vを横断する横シールH5即ち第1及び第2支部H11,H12と一致するか又はこれらのシールを包含する範囲に渡り設けるものとすればよい。
【0016】
上記第1延設部H2,H2は、請求項3,4の横入り防止シールに対応する。
詳しくは、第1延設部H2,H2は、横シールH5の上記主幹部H10,H10に連続して形成され、弁Vの左右端辺と密着して主幹部H10,H10から、流体の順流において下流側、即ち下方に伸びる。第1延設部H2,H2は、横シールH51の上記主幹部H10,H10の下方において、当該弁Vとの密着箇所をシールする。図3(A)、図4(D)へ示す通り、第1延設部H2,H2の先端である下流側端部kは、シール制限シートmの下流側端部m2よりも流体の移動方向について下流側に位置する。即ち、第1延設部H2,H2の下端は、シール制限シートmの下流側端部m2よりも下方に位置する。
上記第2延設部H3,H3は、請求項4の横入り防止シールに対応するものであり、第2延設部H3,H3は、横シールH5の上記主幹部H10,H10に連続して形成され、弁Vの左右端辺と密着して主幹部H10,H10から、流体の順流において上流側、即ち上方に伸びる。
図3(A)へ示す通り、流体の移動方向即ち上下方向について、第1延設部H2の下流側端部kは、非溶着部分g0即ちシール制限シートmの下流側端部m2よりも下流側に位置するものとする。但し、第1延設部H2の下流側端部kは、流体の移動方向である上下方向について、非溶着部分g0の下流側端部、即ちシール制限シートmの下流側端部m2と一致するものとして実施してもよい。
一方、第2延設部H3の上流側端部Tは、図3(A)へ示す通り、非溶着部分g0即ちシール制限シートmの上流側端部m1よりも下方に位置するものであるが、シール制限シートmの上流側端部m1よりも上流側に位置するものとする或いはシール制限シートmの上流側端部m1と一致するものとして実施することができる。
特に、流体の移動方向について、第1延設部H2の下流側端部kと第2延設部H3の上流側端部Tとの間に、非溶着部分g0即ちシール制限シートmを、配置するのが望ましい。
図3(A)へ示すように、区画シールH1は、第1及び第2の袋用シートW1,W2の外延と一致せず、当該外延よりも内側に位置する。即ち、横シール部H5は、第1及び第2の袋用シートW1,W2の下端と一致せず、当該下端よりも上方に位置する。
例えば、順流における流体の移動方向を、図3(A)へ示すものと袋の内外について逆、即ち上下逆としても実施できる。具体的には、密閉袋Wの外部から密閉袋Wの内部への流体の移動を順流とする場合、主シール部H1即ち横シールH5を第1及び第2の袋用シートW1,W2の外延よりも内側(上方)へ位置するものとし、図3(A)における第1延設部H2,H2と同様、第2延設部H3,H3の先端即ち上流側端部T,Tを当該外延と一致するものとすることができる。但し、密閉袋Wの外部から密閉袋Wの内部への流体の移動を順流とする場合、区画シールH1である主シール部H1の下端を両シートW1,W2の外延と一致するものとしても実施できる。この場合、当然のことであるが、第2延設部H3,H3は備えられない。
上記の第1延設部H2,H2は、流体の移動方向と直交する横方向について即ち主幹部H10,H10の伸びる方向について、弁Vのサイドシール部g側へはみ出して、サイドシール部gへオーバーラップするものとするのが好ましい。同様に第2延設部H3,H3も、弁Vのサイドシール部g側へはみ出して、サイドシール部gへオーバーラップするものとするのが好ましい。このように延設部の夫々が、弁シート2側へオーバーラップすることにより、より確実な密閉袋Wの密閉が行える。
第1延設部H1,H1と第2延設部H2,H2の効果についてより具体的に説明する。図3(A)へ実線の矢印で示す通り、製造後の密閉袋Wの使用時において、収容物である流体を袋外部へ排出する際、流体の主要な流れr1即ち順流は、上方から下方へ向かう。しかし、前述の通り、サイドシール部g形成の際のヒートシールでは、非溶着フィルム2aと第2シート1bとの間のサイドシールにおいてシールされない前記の非溶着部分g0が存在し、流体の移動中、この非溶着部分g0から外部の空気r2,r2が密閉袋W内に侵入したりする。上記の第1延設部H2は、非溶着フィルム2bと第2シート1bとの間のサイドシールに代わり、外部から空気の侵入を遮断するのである。
また、流体通路内へ侵入した空気r3,r3が、非溶着部分g0の区画シールH1即ち主シール部H1よりも流体の順流において上流側で、当該通路の左右から抜け出て密閉袋W内へ侵入しようとするのを、第2延設部H3,H3にて防ぐことができる。
図3(A)に示す例では、第2延設部H3の上流側端部Tは、前述の通り、非溶着部分g0即ちシール制限シートmの上流側端部m1よりも下流側に位置するものであり、流体の移動方向について区画シールH1の上流側において非溶着部分g0を完全にカバーするものではないが、設けておけば、流体の通路から密閉袋W内へ空気が侵入するのを、設けない場合よりも抑制することができる。図示しないが、特に、第2延設部H3の上流側端部Tを、シール制限シートmの上流側端部m1よりも、上流側即ち上方に配置し、或いは、シール制限シートmの上流側端部m1と同じ位置に配置するものとするのが、より確実に空気の侵入を制限できる点で好ましい。勿論、第1延設部H2,H2による空気r2,r2の侵入の防止が確実に行われれば、第2延設部H3,H3により空気r3,r3侵入の防止を図る必要はなく、第2延設部H3,H3を設けずに実施することも可能である。但し、第2延設部H3,H3の形成にて、製造誤差により第1延設部H2,H2が適切に形成されていなくても、確実に空気の侵入を防ぐことができる。
上記の第1延設部H2,H2の形成にて、図3(A)へ、破線の矢印で示す通り、空気r2,r2の流入のみならず、収容物である流体の横漏れr4,r4を防止することができる。
上記の実施の形態において、第1延設部H2を主シール部H1の形成と共に形成するものとした。この他、第1延設部H2の形成は主シール部H1の形成と別に行うものとしてもよい。例えば、ヒートシールにより主シール部H1を形成した後、更にヒートシールを行い第1延設部H1を形成するものとして実施することができる。第2延設部H3の形成についても、第1延設部H2の形成と同様、主シール部H1の形成と共に行うものとしてもよく、別に行うものとしてもよい。
【0017】
上記の各実施の形態において、一つの弁Vが、一つの流体の移動通路を提供するものとした。この他、図示は省略するが、袋用シートのシール時に、サイドシール部g,g間へ、副シール部を設けて、複数の流体通路を形成するものとしても実施できる。この副シール部は、サイドシール部g,g間において、流体の移動方向に沿って上下に伸びるものであり、サイドシール部g,gと間隔を開けて設けることにより、複数の流体通路を形成する。
【0018】
図5(B)及び図5(C)の夫々へ他の実施の形態を示す。
図5(B)へ示す通り、上記のシール制限シートmを、弁シート2へ設けるのに代え、弁シート2が固定されていない第1シート1aへ設けるものとしても実施できる。尚、図5(B)では、第2袋用シートW2へ溶着される第2シート1bへ弁シート2を固定し、第1袋用シートW1へ溶着される第1シート1aへシール制限シートmの溶着フィルム2b側を固定するものを示した。この他、第1シート1aへ弁シート2を固定し、第2シート1bへシール制限シートmを固定するものとしてもよい。
更に、図5(C)へ示す通り、シール制限シートmを2つ用意し、弁シート2と、弁シート2が設けられていない第1シート1aの双方へ、シール制限シートmを設けるものとしても実施できる。即ち、流体の移動方向について、第1シート1aと弁シート2双方の、第1支部H11及び第2支部H12と対応する箇所に、上記シール制限シートmを設けるものとしても実施できる。
【0019】
図1〜図4及び図5(A)(B)(C)に示す弁Vは、逆止弁であるが、既述の通り弁Vは逆止弁に限定するものではない。例えば、図5(D)へ示すように、弁Vは、互いにサイドシールされた第1及び第2シート1a,1bからなり、当該両シート1a,1bの対向面を流体の通路とすると共に第1及び第2シート1a,1b同士の密着により流体の移動を制限するものとしてもよい。この弁シート2を備えない弁Vの第1シート1a又は第2シート1bの、主シール部H1である第1支部H11及び第2支部H12と対応する箇所を包含するように、或いは、主シール部H1と一致するように、上記シール制限シートmを設けるものとしても実施可能である。弁シート2を備えない弁Vについて、図5(E)へ示す通り、第1シート1aと第2シート1bの双方に、上記シール制限シートmを設けるものとしても実施可能である。
【0020】
また、弁シート2を備える弁Vの場合、弁シート2は1枚に限定するものではない。図5(F)へ示す通り、第1及び第2シート1a,1bの内側面の夫々に弁シート2を設けて、2枚の弁シート2,2間が流体の通路の一区間を構成するものとしても実施できる。
図5(F)へ示す例では、2枚の弁シート2,2の双方に、シール制限シートm,mを設けるものとしたが、第1シート1a側に設けられる弁シート2にのみ或いは第2シート1bに設けられる弁シート2にのみシール制限シートmを設けるものとしても実施できる。
図5(B)〜(F)へ示す各実施の形態について、特に言及しなかった事項については、図1〜図4及び図5(A)へ示す実施の形態と同様である。
【0021】
図6(A)へ示すように、第1及び第2シート1a,1bに対し、濾過シート3を設けて、流体の濾過ができるものとしてもよい。
図6(A)へ示す弁Vにおいて、密閉袋W側の弁Vの開口部に上記濾過シート3が設けられており、弁Vを移動する流体は、複数の微細孔31…31を備える当該濾過シート3の微細孔31…31を必ず通過する。濾過シート3としては、例えば不織布を採用することができるが、濾過する機能を備えた他の部材を採用することも可能である。
更に詳しく説明すると、図6(A)へ示す例では、弁シート2が固定される第2シート1bの上流側端部u2の位置を第1シート1aの上流側端部u1より低い位置とし、弁シート2の上流側端部u3と第1シート1aの上流側端部u1との間に濾過シート3を掛け渡すように取り付けている。即ち、図6(A)へ示す例では、弁シート2が固定される第2シート1bの上端を第1シート1aの上端より低い位置とし、弁シート2の上流側端部u3と第1シート1aの上流側端部u1との間に濾過シート3を掛け渡すように取り付けている。
具体的には、濾過シート3の上端は、第1シート1aの上流側端部u1の対向面11側に固定される。
濾過シート3の下端は、弁シート2の対向面21へ、固定部分24の形成にて固定されている。但し、流体が通る位置に濾過シート3を配するものであればよく、図6(A)へ示す濾過シート3の取り付け位置に限定するものではない。例えば、第1シート1aと第2シート1bの構成を逆にしても実施できる。
濾過シート3の上記固定は、接着剤により行うことができる。この弁構成シートへの濾過シート3の固定は、密閉袋Wへの弁V取り付け前、弁V形成時に行う。
また、図6(A)へ示す例においては、上記濾過シート3と同様密閉袋Wへの弁Vの取り付け前に、第2シート1bに対して弁シート2を溶着或いは接着剤にて取り付けておく。
弁Vの密閉袋Wへの取り付け時の袋シール部Hの形成により、弁シート2と第2シート1bとは固定部23にて溶着される。また上記袋シール部Hの形成により、弁シート2の対向面21と濾過シート3との間に副固定部分26が形成されて、弁シート2と濾過シート3とが溶着される。
また袋シール部Hの形成により、シール制限シートmが、第1シート1aの対向面11へ溶着される。図6(A)へ示す実施の形態について、特に言及しなかった事項については、図1〜図5の各実施の形態と同様である。
【0022】
上記の各実施の形態において、弁Vは、密閉袋Wの下端に設けられるものとしたが、密閉袋Wの他の部位、例えば、密閉袋Wの上端や左端又は右端に設けられるものとしてもよく、或いはこのような周縁部に限らず、密閉袋Wの正面や背面に設けるものとしても実施できる。
密閉袋Wは、気体や液体或いは粉体、若しくはこれらの混合物などの、流体を収容するものとした。そして、上記の各実施の形態において、逆止弁である弁Vは、密閉袋の液体などの内容物を排出させるものとした。このような例として、食品の包装容器や、布団や衣類等を収納し内部の空気を追い出して使用する収納袋に、この逆止弁を用いることができる。但し、このような例に限定するものではない。
また、上記において、弁Vを構成するシート、更に、密閉袋Wを構成するシートは、夫々ヒートシールにより、溶着されるものとした。この他、高周波や超音波によって溶着するものとしても実施できる。
【0023】
また、図1〜図5及び図6(A)の各実施の形態とは逆に、外部から密閉袋へ収容物を導入するために、当該逆止弁を採用することもできる。このような例として空気を導入して膨らませる風船を掲げることができる。この他、小さく区画された収納部に封入された気体による緩衝効果を利用する緩衝材において、気体を収容するのに当該逆止弁を用いるものとしてもよい。
即ち、逆止弁として弁Vを形成した場合に、上記の図1〜図5及び図6(A)へ示すものと逆方向への流体の移動を規制するものとしてもよく、このような例を、図6(B)へ示す。
この図6(B)へ示す実施の形態についても、弁シート2の流体の順流において上流側端部u3側へ固定部23が設けられて第2シート1bに固定され、弁シート2の流体の順流において下流側端部s3が自由端とされる点は、上述してきた他の実施の形態と同様であり、また、流体の移動方向について、非溶着部分g0即ちシール制限シートmが、区画シールH1の横シーH5を包括するように配置される点も同様である。そして、流体の移動方向について、第1延設部H2,H2の下流側端部kが、シール制限シートmの下流側端部m2よりも下流側或いは同じ位置に配置される点も、上述してきた他の実施の形態と同様である。
但し、図6(B)へ示す実施の形態では、流体の順流において下流側が密閉袋の内部に通じ、流体の順流において上流側が密閉袋の外部へ通じる。
この図6(B)示す例では、第2延設部H3,H3は、横シールH5から上流側である下方側へ延設され、第1延設部H2,H2は、横シールH5から下流側である上方側へ延設されることになる。このように構成することによって、収容しようとする流体が逆流して外部へ漏れるのを規制することができる。
図6(B)へ示す通り、この例では、流体の順流において、非溶着部分g0の上流側端部となるシール制限シートmの上流側端部m1が、シール制限シートmの下端である。このシール制限シートmの下端よりも、下方即ち上流側に袋シール部Hの第2延設部H3,H3の上流側端部Haが位置している。そして、当該シール制限シートmの下流側端部m2であるシール制限シートmの上端よりも、上方即ち下流側に袋シール部Hの第1延設部H2,H2の下流側端部Hbが位置する。
図6(B)へ示す各実施の形態について、特に言及しなかった事項については、図1〜図5及び図6(A)へ示す実施の形態と同様である。
【0024】
弁Vを逆止弁とする場合、弁シート2と別体のシール制限シートmを用意するのではなく、図7(A)(B)へ示す通り、弁シート2自身を非溶着フィルム2aと溶着フィルム2bとラミネートすることによって形成するものとしても実施できる。
非溶着フィルム2aは第1シート1aの内側面即ち第1シート1aの対向面11を臨み、溶着フィルム2bは第2シート1bを臨むよう配置される。溶着フィルム2bが固定部23にて第2シート1bに固定され、非溶着フィルム2aが弁シート2の前記対向面21を提供する。
シール制限シートmと同様、弁シート2は、PET製の非溶着フィルム2aとポリエチレン製の溶着フィルム2bの2枚のシートをヒートシール以外の周知のラミネートの方法、例えば接着剤を用いるラミネートにより張り合わせて形成することができる。そして、この実施の形態において弁シート2の通路側の面を提供するよう、弁シート2の構成要素である非溶着フィルム2a側が、通路側へ配置される。
図7へ示す実施の形態では、弁シート2の対向面全体が非溶着部分g0である。
図1〜図6(図5(D)(E)を除く。)へ示す各実施の形態において、弁シート2へシール制限シートmを設けるのに代えて、弁シート2自身を、図7へ示すものと同様、非溶着フィルム2aと溶着フィルム2bとをラミネートしたものとしても実施できる。
【0025】
図5(B)〜(F)、図6及び図7に示す実施の形態において、流体の移動方向について、第1シート1aと第2シート1bの幅を同じものとし、夫々上流側端部同士の位置を同じものとしたが、第1シート1aと第2シート1bの幅やその上流側端部同士の位置関係を、図1〜図4及び図5(A)へ示す例と同様に設定して実施することが可能である。
また、シール制限シートmを用いる場合、シール制限シートmを、非溶着フィルム2aと溶着フィルム2bとにて構成するものに限定するものではなく、非溶着フィルム単体にて構成するものとし、接着剤などのヒートシール以外の周知の固定方法にて当該非溶着フィルムを、弁構成シートへ固定するものとしても実施できる。この点について、特許請求の範囲に即して述べると、非溶着フィルムを弁構成シートへ「他のフィルム」即ち溶着フィルムを介して「間接的に」積層するものに限定するものではなく、シール制限シートmを非溶着フィルム2aのみにて形成し、弁構成シートへ接着剤などの周知の固定手段にて「直接」積層するものとしても実施できる。
弁シート2を非溶着フィルム2aと溶着フィルム2bとにて構成する場合、非溶着フィルム2aは、溶着フィルム2bに対して非溶着部分g0をカバーできるものであればよく、図7(B)へ示すように溶着フィルム2bと同じ大きさとする必要はない。
【符号の説明】
【0026】
1 外装シート
2 弁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁とシート製の袋体とによって構成され、
上記弁は、互いに重ねられて配位された複数枚の弁構成シートを備え、
上記複数枚の弁構成シートのうち対向して重ねられた少なくとも2枚の弁構成シートの対向面間が流体の移動通路とされ、
上記流体の上流から下流への移動方向を上下方向として、上記移動通路の左右は、サイドシールによって規定され、
上記サイドシールは、上記対向する弁構成シート同士が溶着されることにより形成されたものであり、
上記対向する弁構成シートが密着することによって上記移動通路における流体の移動が制限されるものであり、
上記袋体は、上記移動通路を横切る方向に伸びる区画シールによって、袋体の内外が区画され、
上記弁は、上記袋体の内外に渡って配位され、且つ、上記区画シールによって上記袋体に溶着された弁構造において、
上記対向する弁構成シートの対向面のうち少なくとも一方の対向面は、上記区画シールと同位置を含む箇所において、上記サイドシール及び区画シールの溶着によっては溶着しない非溶着フィルムにて構成され、
上記非溶着フィルムは、弁構成シートの上記対向面に直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものであって、且つ、上記左右のサイドシール間に渡って配位され、
上記サイドシールは、上記非溶着フィルムの部分では溶着されない非溶着部分となり、
流体の順流における区画シールより下流側において、上記非溶着部分の左右方向の外側に、当該区画シールと連続して、上記非溶着部分からの移動通路への流体の流入を阻止する、横入り防止シール部が設けられたことを特徴とする弁構造。
【請求項2】
上記の横入り防止シール部は、上記非溶着部分からの移動通路内への流入を阻止すると共に上記非溶着部分からの移動通路外への流体の流出を阻止するものであることを特徴とする請求項1記載の弁構造。
【請求項3】
横入り防止シール部は、区画シールと一体に形成され、区画シールから順流における下流側へ向けて、延設されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の弁構造。
【請求項4】
横入り防止シール部は、区画シールと一体に形成され、区画シールから順流における下流側と上流側の双方に向けて、延設されたものであり、横入り防止シール部の一部がサイドシールにオーバーラップするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の弁構造。
【請求項5】
弁は、少なくとも3枚の弁構成シートにて構成された逆止弁であり、
弁構成シートのうち、少なくとも2枚は外装シートであり、且つ、少なくとも他の1枚は弁シートであり、両外装シートは、弁シートを挟んで重ねられ、両外装シートと弁シートとに上記サイドシールが形成され、
弁シートにおいて、流体の順流における上流側が一方の外装シートへ固定された固定端とされ、且つ、下流側が固定されない自由端とされ、
上記弁シートと、当該弁シートと対向する他の外装シート又は他の弁シートとの、両対向面間が、流体の上記移動通路をなすものであり、当該両対向面の少なくともいずれか一方に、上記非溶着フィルムが、直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものであることを特徴する請求項1乃至4の何れかに記載の弁構造。
【請求項6】
弁は、2枚の弁構成シートからなり、両弁構成シートが上記のサイドシールにより筒状に形成され、当該2枚の弁構成シートの対向面間が、上記流体の移動通路をなすものであり、当該両対向面の少なくともいずれか一方に、上記非溶着フィルムが、直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものであることを特徴する請求項1乃至4の何れかに記載の弁構造。
【請求項7】
流体の移動通路には、濾過シートが設けられ、弁構成シート間を移動する流体を、濾過するものであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の弁構造。
【請求項8】
弁とシート製の袋体とによって構成され、
弁は、2枚の弁構成シートからなり、両弁構成シートが上記のサイドシールにより筒状に形成され、当該2枚の弁構成シートの対向面間が、上記流体の移動通路をなすものであり、
上記流体の上流から下流への移動方向を上下方向として、上記移動通路の左右は、サイドシールによって規定され、
上記サイドシールは、上記対向する弁構成シート同士が溶着されることにより形成されたものであり、
上記対向する弁構成シートが密着することによって上記移動通路における流体の移動が制限されるものであり、
上記袋体は、上記移動通路を横切る方向に伸びる区画シールによって、袋体の内外が区画され、
上記弁は、上記袋体の内外に渡って配位され、且つ、上記区画シールによって上記袋体に溶着された弁構造において、
上記対向する弁構成シートの対向面のうち少なくとも一方の対向面は、上記区画シールと同位置を含む箇所において、上記サイドシール及び区画シールの溶着によっては溶着しない非溶着フィルムにて構成され、
上記非溶着フィルムは、弁構成シートの上記対向面に直接又は他のフィルムを介して間接的に積層されたものであり、
上記サイドシールは、上記非溶着フィルムの部分では溶着されない非溶着部分となり、
区画シールより密閉袋の、内部側と外部側の少なくとも何れか一方において、上記非溶着部分の左右方向の外側に、当該区画シールと連続して、上記非溶着部分からの移動通路への流体の流入を阻止する、横入り防止シール部が設けられたことを特徴とする弁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−126404(P2012−126404A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277187(P2010−277187)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【特許番号】特許第4729650号(P4729650)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000153683)株式会社柏原製袋 (12)
【Fターム(参考)】