説明

引き戸の引手構造

【課題】戸パネル26に対して握り引手30を簡単かつ正確に取り付けることのできる、引き戸の引手構造10を提供する。
【解決手段】引き戸の引手構造10は、引き戸16を構成する戸パネル26の幅方向端縁26a近傍における少なくとも一方の主面26A,26Bに形成された嵌入穴40と、嵌入穴40を利用して主面26A,26Bに取り付けられた握り引手30とを備えている。握り引手30は、戸パネル26の主面26A,26Bに固定された基部42と、基部42と一体に形成され、かつ、嵌入穴40に嵌入された嵌入部44と、戸パネル26の主面26A,26Bから離間して上下方向へ延びて配置され、開閉操作の際に操作者によって握られる棒状の握り部46と、握り部46の上下方向両端部46aと基部42とを連結する2つの連結脚部48とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸パネルをその主面に対して平行方向へ移動させることによって、建物の開口部を開閉する引き戸の引手構造に関し、特に、「握り引手」を用いた引き戸の引手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションまたは戸建住宅等の建物においては、玄関、トイレまたは部屋等の出入口すなわち開口部に「開き戸」、「折れ戸」または「引き戸」等が設けられており、これらのうち「引き戸」においては、手指を掛けるための「指掛け引手」や、手で握るための「握り引手」が戸パネルの少なくとも一方の主面に取り付けられている。
【0003】
「指掛け引手」は、手指を掛ける凹部を構成する皿状の嵌入凹部を有しており、「指掛け引手」を戸パネルに取り付ける際には、嵌入凹部を嵌入するための嵌入穴を戸パネルに形成する必要があった。一方、「握り引手」は、操作者が手で握る棒状の握り部を有しており、「握り引手」を戸パネルに取り付ける際には、戸パネルの下端および幅方向端縁からの距離を正確に測定して取付位置を設定し、当該取付位置に「握り引手」を正確に取り付ける必要があった(特許文献1参照)。
【0004】
なお、「握り引手」を戸パネルに取り付ける方法としては、「戸パネルに設けられた貫通孔に固定ねじを挿通し、これを『握り引手』に設けられた雌ねじ部に螺合する方法」(特許文献1参照)や、「『握り引手』に設けられたねじ孔に固定ねじを挿通し、これを戸パネルの主面にねじ込む方法」等が知られている。
【特許文献1】特開平10−121792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の「指掛け引手」を用いた「引き戸」では、戸パネルに嵌入穴が形成されていたが、当該嵌入穴は、専ら「指掛け引手」の取り付けのために形成されていたものであり、嵌入穴が形成された戸パネルを「握り引手」用に転用することは考えられていなかった。そのため、従来では、「指掛け引手」用と「握り引手」用の2種類の戸パネルを準備しておく必要があり、戸パネルの在庫管理が面倒であった。
【0006】
一方、「握り引手」を用いた「引き戸」では、戸パネルの所定の取付位置に「握り引手」を正確に取り付ける必要があったが、取付位置の設定に手間がかかるだけでなく、取付作業において「位置ずれ」などの施工ミスが発生するおそれがあった。
【0007】
それゆえに、本発明の主たる課題は、戸パネルに対して「握り引手」を簡単かつ正確に取り付けることのできる、引き戸の引手構造を提供することである。また、本発明の他の課題は、「指掛け引手」用の戸パネルを「握り引手」用の戸パネルに転用可能にすることによって、戸パネルの在庫管理を容易にすることができる、引き戸の引手構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、「引き戸16を構成する戸パネル26の幅方向端縁26a近傍における少なくとも一方の主面26A,26Bに形成された嵌入穴40と、前記嵌入穴40を利用して前記主面26A,26Bに取り付けられた握り引手30とを備える、引き戸の引手構造10であって、前記握り引手30は、前記主面26A,26Bに固定された基部42と、前記基部42と一体に形成され、かつ、前記嵌入穴40に嵌入された嵌入部44と、前記主面26A,26Bから離間して上下方向へ延びて配置され、開閉操作の際に操作者によって握られる棒状の握り部46と、前記握り部46の上下方向両端部46aと前記基部42とを連結する2つの連結脚部48とを有している、引き戸の引手構造10」である。
【0009】
本発明では、嵌入部44を嵌入穴40に嵌入することによって、戸パネル26に対して握り引手30を簡単かつ正確に位置決めすることができる。また、嵌入穴40は、指掛け引手60を取り付ける場合でもそのまま用いることができるので、握り引手30用の戸パネル26を指掛け引手60用に転用することができ、逆に、指掛け引手60用の戸パネル26を握り引手30用の戸パネル26に転用することができる。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「引き戸の引手構造10」において、「前記連結脚部48は、前記基部42側の端部48aから前記握り部46側の端部48bへ向かうにつれて前記戸パネル26の前記幅方向端縁26aから遠ざかるように傾斜している」ことを特徴とする。
【0011】
一般に、引き戸においては、戸パネルに取り付けられた「指掛け引手」または「握り引手」に手を掛けて戸パネルを開閉操作するため、戸を最大に開いたときでも「指掛け引手」または「握り引手」を開口部の内側に露出させておく必要がある。つまり、これらが壁に隠れてしまわないようにする必要がある。
【0012】
そのため、本発明においても、引き戸16を最大に開いたときの有効開口面積を広く確保するためには、戸パネル26の幅方向端縁26aにできるだけ近接した位置に嵌入穴40を形成しておくことが望ましい。ところが、戸パネル26の幅方向端縁26aに近接した位置に握り引手30を配設する場合には、「手指を挟む事故」を防止するために、開口部12の内側に設けられた開口枠14と握り部46との間に手指を逃がすスペースSを確保する必要がある。
【0013】
請求項2に記載した発明では、握り引手30の連結脚部48を傾斜させているので、戸パネル26の幅方向端縁26aに近接した位置に嵌入穴40を形成した場合でも握り引手30の握り部46を当該幅方向端縁26aから十分に離間させることができ、開口部12の内側に設けられた開口枠14と握り部46との間に手指を逃がすスペースSを確保できる。
【0014】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「引き戸の引手構造10」において、「前記嵌入穴40は、幅方向両端縁40aが上下方向へ延びる直線状に形成され、かつ、上下方向両端縁40bが円弧状に形成された長穴であり、前記嵌入部44は、幅方向両端面44aが上下方向へ延びる平面状に形成され、かつ、上下方向両端面44bが円弧面状に形成された突起であり、前記長穴と前記突起とは同形状である」ことを特徴とする。
【0015】
本発明では、嵌入部44の平面状の幅方向端面44aを嵌入穴40の直線状の幅方向端縁40aに当接させることによって、所定の取付位置に対して握り引手30を正確に位置決めすることができる。また、嵌入部44を嵌入穴40に嵌入する際には、嵌入部44を円弧面状の端面44b側から嵌入穴40にスムーズに嵌入することができる。つまり、円弧面状の端面44bには「角」が存在しないため、当該「角」が嵌入穴40の内周縁に引っ掛かることはなく、嵌入部44を嵌入穴40に容易に嵌入することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜3に記載した発明によれば、握り引手30の嵌入部44を嵌入穴40に嵌入することによって、戸パネル26に対して握り引手30を簡単かつ正確に位置決めすることができる。また、嵌入穴40は、指掛け引手60を取り付ける際にもそのまま用いることができるので、握り引手30用の戸パネル26を指掛け引手60用に転用することができ、逆に、指掛け引手60用の戸パネル26を握り引手30用の戸パネル26に転用することができ、戸パネル26の在庫管理を容易にすることができる。
【0017】
請求項2に記載した発明によれば、握り引手30の連結脚部48を傾斜させているので、戸パネル26の幅方向端縁26aに近接した位置に嵌入穴40を形成した場合でも握り引手30の握り部46を当該幅方向端縁26aから十分に離間させることができ、開口部12の内側に設けられた開口枠14と握り部46との間で手指が挟まれる事故を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明に係る引き戸の引手構造(以下、単に「引手構造」と略す。)10および引き戸16の全体構造を示す正面図であり、図2は、図1におけるII-II線断面図である。
【0019】
マンションまたは戸建住宅等の建物においては、玄関、トイレまたは部屋等の出入口に開口部12が構成されており、当該開口部12に設けられた開口枠14に引き戸16が取り付けられている。本発明に係る引手構造10は、引き戸16の部分的構造に関するものである。そこで、以下には、開口枠14および引き戸16について説明する中で、引手構造10について言及する。
【0020】
開口枠14は、図1および図2に示すように、開口部12の左右両側縁に上下方向へ延びて設けられた2本の縦枠18と、開口部12の下端縁に左右方向へ延びて設けられた下枠20と、開口部12の上端縁に左右方向へ延びて設けられた上枠22とによって構成されている。下枠20および上枠22は、開口部12の横幅の約2倍の長さを有しており、下枠20および上枠22の半分が、開口部12の下端縁および上端縁に沿って配置されており、残りの半分が、開口部12の側方に位置する壁24に沿って配置されている。また、下枠20および上枠22には、引き戸16の戸パネル26を摺動自在に保持するための溝28が形成されている。
【0021】
引き戸16は、開口枠14に摺動自在に取り付けられた建具であり、略四角形の板状の戸パネル26と、戸パネル26の両主面26A,26Bに取り付けられた2つの握り引手30とによって構成されている。
【0022】
戸パネル26(図1、2)は、戸枠32と、戸枠32の表裏両面に接着剤等により接合された板状の表面材34とを備えている。
【0023】
戸枠32は、少なくとも2本の縦枠材36と少なくとも2本の横枠材38とを枠組みすることによって構成された枠体であり、戸枠32が「芯材」となって戸パネル26の全体形状が保持されている。縦枠材36および横枠材38の材質は、特に限定されるものではないが、加工が容易な点において、LVL(平行合板)、合板、集成材または無垢材等の木質材を用いることが望ましい。
【0024】
表面材34は、戸パネル26の表裏両面を構成する板材であり、具体的には、合板、中密度繊維板または高密度繊維板等の木質材や、これらの表面に合成樹脂化粧シート、化粧紙または突板等を貼り付けたものなどが表面材34として用いられる。
【0025】
そして、戸パネル26の幅方向端縁26a近傍における両主面26A,26Bには、図3に示すように、握り引手30の取り付けに用いる嵌入穴40が形成されている。嵌入穴40は、上下方向へ延びる長穴であり、嵌入穴40の幅方向両端縁40aは上下方向へ延びる直線状に形成されており、嵌入穴40の上下方向両端縁40bは円弧状に形成されている。
【0026】
なお、戸パネル26の一方の主面26A,26Bに形成される嵌入穴40と他方の主面26B,26Aに形成される嵌入穴40とは、「有底穴」として独立して形成してもよいが、「加工性」を高める観点からは、これらを戸パネル26の厚み方向において連続する「貫通孔」として形成することが望ましい。また、本実施例における嵌入穴40は、「指掛け引手60(図8〜図10)」の取り付けに用いることも考えられるため、その場合でも開口部12の有効開口面積を広く確保するために、嵌入穴40を戸パネル26の幅方向端縁26aにできるだけ近接した位置に形成することが望ましい。さらに、嵌入穴40を形成したことによる戸パネル26の著しい強度低下を防止するために、戸枠32を構成する縦枠材36に嵌入穴40を形成することが望ましい。
【0027】
握り引手30は、図4〜図6に示すように、戸パネル26の主面26A,26Bに固定される基部42と、基部42と一体に形成され、かつ、嵌入穴40に嵌入される嵌入部44と、当該主面26A,26Bから離間して上下方向へ延びて配置され、開閉操作の際に操作者によって握られる棒状の握り部46と、握り部46の上下方向両端部46aと基部42とを連結する2つの連結脚部48とを有している。
【0028】
そして、握り引手30の構成要素のうち、基部42と嵌入部44とが、金属(アルミニウムまたは亜鉛等)、木質材または合成樹脂等によって一体に形成されており、握り部46と2つの連結脚部48とが、金属(アルミニウムまたは亜鉛等)、木質材または合成樹脂等によって一体に形成されている。
【0029】
基部42は、戸枠32を構成する縦枠材36に沿って配設される板状部材であり、表面側へ膨らんだ細長い板状の基部本体42aと、基部本体42aの背面に形成された複数の補強リブ42bとによって構成されており、基部本体42aの背面中央部に嵌入部44が一体に形成されている。また、基部本体42aの上下方向両端部には、基部42に連結脚部48を接続するための接続ねじ50が挿通される貫通孔52と、基部42を戸パネル26に固定するための固定ねじ54(図3)が挿通される2つの貫通孔56a,56bとが形成されている。
【0030】
貫通孔56a,56bに挿通される固定ねじ54(図3)は、戸パネル26の主面26A,26Bにねじ込まれるため、戸パネル26の両主面26A,26Bに握り引手30を取り付ける際には、両主面26A,26Bにねじ込まれる固定ねじ54どうしが干渉するのを避ける必要がある。そこで、本実施例では、基部本体42aの幅方向一方端縁に近接する2つの貫通孔56aが、幅方向他方端縁に近接する2つの貫通孔56bに対して上下方向へずらして形成されている。
【0031】
嵌入部44は、嵌入穴40に嵌入される突起であり、嵌入部44の形状は、嵌入した際に握り引手30を位置決めできるように、嵌入穴40とほぼ同形状に設定されている。つまり、嵌入部44の幅方向両端面44aは上下方向へ延びる平面状に形成されており、嵌入部44の上下方向両端面44bは円弧面状に形成されている。
【0032】
握り部46は、開閉操作の際に操作者によって握られる棒状部材であり、握り部46の全体形状は、戸パネル26の主面26A,26Bから離間する方向へ滑らかに湾曲したアーチ状に形成されている。また、握り部46の断面形状は、握りやすさ等を考慮して、略円形、楕円形または長円形等のような「角」が無い形状に設定されている。そして、握り部46の上下方向両端部46aに連結脚部48が一体に形成されている。
【0033】
なお、握り部46の表面には、手指が触れたときの「冷たさ」や「ベタツキ」を解消することを目的として、複数の突条または条溝を形成したり、エンボス加工を施したりしてもよい。また、握り部46と各連結脚部48とを別々に形成し、これらを接続ねじ(図示省略)等を用いて互いに接続するようにしてもよい。また、握り部46は、アーチ状の他、単なる棒状に形成されてもよい。
【0034】
連結脚部48は、握り部46と基部42とを連結するとともに、握り部46と戸パネル26の主面26A,26Bとの間に手指が入る程度の隙間を確保する部材であり、基部42側の端部48aから握り部46側の端部48bへ向かうにつれて戸パネル26の幅方向端縁26aから遠ざかるように傾斜して形成されている。そして、連結脚部48の基部42と対向する面には、接続ねじ50が螺合されるねじ穴58(図5,図6)が形成されている。
【0035】
握り引手30を組み立てる際には、基部42の表面に2つの連結脚部48を位置決めし、基部42と連結脚部48とを接続ねじ50(図4)を用いて接続する。
【0036】
握り引手30を戸パネル26に取り付ける際には、握り引手30の嵌入部44を嵌入穴40に嵌入するとともに、握り引手30の基部42に形成された貫通孔56a,56bに固定ねじ54(図3)を挿通し、この固定ねじ54を戸パネル26の表面材34および戸枠32(縦枠材36)にねじ込む。
【0037】
本発明に係る引手構造10は、「戸パネル26に対する嵌入穴40の形成位置」、「握り引手30の構成」および「握り引手30の取付態様」を含む引き戸16の部分的構造に関するものであり、握り引手30を戸パネル26に取り付けた段階で引手構造10が完成する。
【0038】
握り引手30を戸パネル26に取り付けた状態では、連結脚部48の「握り部46側の端部48b」は、連結脚部48の「基部42側の端部48a」よりも戸パネル26の幅方向端縁26aから離れた位置にある。つまり、戸パネル26の幅方向端縁26aから「握り部46側の端部48b」までの距離R2は、戸パネル26の幅方向端縁26aから基部42側の端部48aまでの距離R1よりも長くなっている。したがって、引き戸16を閉じた際には、図2に示すように、握り引手30の握り部46と開口枠14(縦枠18)との間に手指が入る程度の隙間Sを確保でき、「手指を挟む事故」を防止できるとともに、握り部46を握り易くなる。また、この隙間Sによって窮屈感が解消されるため、意匠性を高めることができる。
【0039】
一方、引き戸16を開いた際には、図7に示すように、握り引手30の基部42が開口枠14(縦枠18)の手前まで移動される。このとき、仮に、握り引手30の連結脚部48が傾斜していなければ、握り部46と開口枠14(縦枠18)との間には、間隔L(図7)が生じるが、本発明では、連結脚部48が傾斜しているので間隔Lが生じることはない。したがって、間隔Lの分だけ開口部12の有効開口面積を広く確保できる。また、握り部46を開口枠14(縦枠18)に近接して配置できるので、開口部12を通行する際に開口部12にぶつかる事故を防止できる。
【0040】
なお、上述の実施例では、握り引手30を戸パネル26の両主面26A,26Bに取り付けた場合を示したが、握り引手30は、戸パネル26の少なくとも一方の主面26Aまは26Bに取り付けられていればよい。握り引手30を戸パネル26のいずれか一方の主面26A,26Bだけに取り付ける場合には、他方の主面26B,26Aに嵌入穴40を形成する必要がないので、一方の主面26A,26Bには「有底」の嵌入穴40を形成することになる。
【0041】
また、握り引手30を戸パネル26の両主面26A,26Bに取り付ける場合には、一方の握り引手30における基部42の背面に「雄部材」を設けるとともに、他方の握り引手30における基部42の背面に「雌部材」を設け、「雄部材」と「雌部材」とを係合または嵌合させるようにしてもよい。また、一方の握り引手30に取り付けられた「雌ねじ部材」に他方の握り引手30に取り付けられた(または係止された)「雄ねじ部材」を螺合させるようにしてもよい。
【0042】
嵌入穴40が形成された戸パネル26を「指掛け引手」用に転用する場合には、図8〜図9に示すように、戸パネル26の嵌入穴40に指掛け引手60を装着する。
【0043】
指掛け引手60は、図10に示すように、嵌入穴40に嵌入される嵌入凹部62と、嵌入凹部62における開口部側の外周縁に形成された鍔部64とを有している。嵌入凹部62は、手指を掛ける凹部66を構成する部分であり、嵌入凹部62の形状は、嵌入穴40に嵌入した際に指掛け引手60を位置決めできるように、嵌入穴40とほぼ同形状に設定されている。つまり、嵌入凹部62の幅方向両端面62aは上下方向へ延びる平面状に形成されており、嵌入凹部62の上下方向両端面62bは円弧面状に形成されている。
【0044】
指掛け引手60を戸パネル26に取り付ける際には、指掛け引手60の嵌入凹部62を嵌入穴40に嵌入し、指掛け引手60の鍔部64を戸パネル26の主面26A,26Bに接着剤または固定ねじ等によって接合する。
【0045】
指掛け引手60を戸パネル26に取り付けた状態では、図8および図9に示すように、指掛け引手60の全体が戸パネル26の幅方向端縁26aに近接した位置にある。しかし、指掛け引手60では、握り引手30のように戸パネル26の主面26A,26Bから大きく突出する部分(握り部46)が存在しないので、引き戸16を閉じたときの「手指を挟む事故」は問題とならない。また、引き戸16を開いた際には、図9に示すように、指掛け引手60の全体が開口枠14(縦枠18)に近接した位置まで移動されるが、指掛け引手60の全体が戸パネル26の幅方向端縁26aに近接した位置にあるので、開口部12の有効開口面積を広く確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る引き戸の引手構造および引き戸の全体構造を示す正面図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】引き戸の引手構造を示す分解図
【図4】握り引手を示す正面図、背面図および平面図
【図5】握り引手を示す側面図
【図6】図5におけるVI−VI線断面図
【図7】引き戸を開いた状態を示す正面図
【図8】「握り引手」に代えて「指掛け引手」を用いた引き戸を示す正面図
【図9】図8の要部を示す断面図
【図10】指掛け引手を示す斜視図
【符号の説明】
【0047】
10… 引き戸の引手構造
12… 開口部
14… 開口枠
16… 引き戸
18… 縦枠
26… 戸パネル
30… 握り引手
32… 戸枠
36… 縦枠材
40… 嵌入穴
42… 基部
44… 嵌入部
46… 握り部
48… 連結脚部
60… 指掛け引手
62… 嵌入凹部
64… 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸を構成する戸パネルの幅方向端縁近傍における少なくとも一方の主面に形成された嵌入穴と、前記嵌入穴を利用して前記主面に取り付けられた握り引手とを備える、引き戸の引手構造であって、
前記握り引手は、前記主面に固定された基部と、前記基部と一体に形成され、かつ、前記嵌入穴に嵌入された嵌入部と、前記主面から離間して上下方向へ延びて配置され、開閉操作の際に操作者によって握られる棒状の握り部と、前記握り部の上下方向両端部と前記基部とを連結する2つの連結脚部とを有している、引き戸の引手構造。
【請求項2】
前記連結脚部は、前記基部側の端部から前記握り部側の端部へ向かうにつれて前記戸パネルの前記幅方向端縁から遠ざかるように傾斜している、請求項1に記載の引き戸の引手構造。
【請求項3】
前記嵌入穴は、幅方向両端縁が上下方向へ延びる直線状に形成され、かつ、上下方向両端縁が円弧状に形成された長穴であり、
前記嵌入部は、幅方向両端面が上下方向へ延びる平面状に形成され、かつ、上下方向両端面が円弧面状に形成された突起であり、
前記長穴と前記突起とは同形状である、請求項1または2に記載の引き戸の引手構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−91857(P2009−91857A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265775(P2007−265775)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)