説明

引き手

【課題】 引き手の構造を複雑にすることなく、プロテクタを引き手のへこみに引っ込ませたり突出させたりすることができるようにする。
【解決手段】 プロテクタ30は、通常では、引き手本体20のへこみ20R1内でプロテクタ本体30Bが垂直状態となっており、引き戸50を開く前に、プロテクタ本体30Bを枢軸42Pで手で回動して引き手本体20のへこみ20R1内から先端部分が突出するようにする。この突出する先端部分が引き戸50を開く際に隣の引き戸や戸袋に指が挟まれないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、引き戸に取り付けられてこの引き戸を開閉するのに用いられる引き手に関し、特にこの引き手に設けられて引き戸を手で開く際に手指が隣り合う引き戸の間又は引き戸と戸袋との間に挟み込まれることがないようにするプロテクタを改良した引き手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引き戸に取り付けられてこの引き戸を開閉するのに用いられる引き手は、この引き手に手を入れて引き戸を開く際に手指が引き戸と引き戸の間や引き戸と戸袋との間に挟み込まれることがないようにするプロテクタを備えている。
【0003】
1つの従来技術の引き手においては、このプロテクタは、引き手のフランジにねじ止めによって取り付けられて隣の引き戸や戸袋の開口付近より内側に引き手指が挟み込まれないようにするストッパから成っている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このプロテクタは、ストッパが常に戸面から突出しているので、引き戸を開けたときに、この引き戸の開放による有効開口面積がストッパによって制限され、このため、例えば、車椅子や幅広の家具を通過させるのに支障となる欠点があった。
【0005】
他の従来技術による引き手では、プロテクタは、引き手のへこみ内で揺動自在に支持されているストッパと、このストッパを通常では引き手本体のへこみ内に収納されるようにばね付勢しているが戸を閉じる方向に引き手を引くと指で押されるハンドルによってストッパの一部が戸面から突出するようにこのストッパが揺動されるように構成した連動手段とから成っている(特許文献2参照)。
【0006】
このプロテクタは、ストッパが隣の引き戸又は戸袋の開口面に衝合した後ハンドルを解放すると、ストッパが引き手のへこみ内に戻されて引き手を含む引き戸全体を隣の引き戸に重ね合わせるか戸袋に引き込むことができるので、引き戸の有効開口面積が増大する。
【0007】
しかし、この構造の引き手は、引き手のハンドルとプロテクタのストッパとを連動する連動手段を必要とするので、構造が複雑となる上に、ハンドルを押す力がストッパのばね付勢に打ち勝たなければならないので、引き戸が軽量であったり軽い力で引き戸を開閉したりすることができる場合には、ハンドルを押す力がストッパのばね付勢に打ち勝つことができないでストッパの突出を確実に行うことができない欠点があった。
【0008】
【特許文献1】特許第3418306号公報
【特許文献2】特開2003−193711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする1つの課題は、引き手の構造を複雑にすることなく、プロテクタを引き手のへこみに引っ込ませたり突出させたりすることができる引き手を提供することにある。
【0010】
本発明が解決しようとする他の課題は、プロテクタの突出を確実に行うことができるようにした引き手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基本的な課題解決手段は、引き手本体に設けられ戸面と同一面か戸面よりも引っ込んだ第1の位置と戸面から突出する第2の位置との間を移動するプロテクタ本体を有するプロテクタを備えた引き手において、このプロテクタは、プロテクタ本体を引き手本体のへこみ内に格納された第1の位置と引き手本体のへこみから突出する第2の位置との間を手動で変位する手動変位手段を備えていることを特徴とする引き手を提供することにある。この手動変位手段は、第1の位置と第2の位置にプロテクタ本体を位置保持するプロテクタ位置保持手段を備えているのが好ましい。
【0012】
本発明の基本的な課題解決手段において、第1の形態による手動変位手段は、プロテクタ本体が第1の位置ではへこみ内で垂直状態となり、第2の位置ではへこみ内から一部が突出する水平状態となるようにプロテクタ本体を引き手本体のへこみ内に枢動自在に支持するプロテクタ枢支部から成っている。
【0013】
この第1の形態において、プロテクタ枢支部は、プロテクタ本体の垂直状態での下半部寄りに設けられているのが好ましく、またプロテクタ位置保持部は、プロテクタ本体を垂直状態に保持するようにプロテクタ本体と引き手本体のへこみの壁との間に設けられて相互に弾性的に係止する部分から成っており、更に、プロテクタ位置保持部を有する場合には、このプロテクタ位置保持手段は、プロテクタ本体を水平状態に維持するようにプロテクタ本体の一部分に係合するストッパから成っているのが好ましい。
【0014】
本発明の基本的な課題解決手段において、第2の形態による手動変位手段は、プロテクタ本体を引き手本体のへこみ内に引っ込んだ第1の位置とプロテクタ本体を引き手本体のへこみから一部が突出する第2の位置とを水平状態のまま変位するように案内するプロテクタ水平案内部から成っている。
【0015】
この第2の形態において、プロテクタ水平案内部は、プロテクタ本体の長孔を貫通してプロテクタを案内する案内杆とプロテクタ本体の少なくとも一方の面に係合してプロテクタ本体を水平に保持する水平壁とから成っているのが好ましい。また、この長孔は、その両端に設けられプロテクタ本体の第1の位置と第2の位置とで案内杆が弾性的に係入してプロテクタ本体を安定して保持する弾性係止孔部分を有するのが好ましい。
【0016】
本発明の基本的な課題解決手段において、第3の形態による手動変位手段では、プロテクタ本体は、略扇形部材から成っており、この第3の形態による手動変位手段は、第1の位置と第2の位置との間を略扇形部材の周面が引き手本体のへこみの水平壁に常に小さな間隙を保って対向するように略扇形部材の隅部分を枢動自在に支持するプロテクタ枢支部とプロテクタ本体の第1の位置と第2の位置とを維持するプロテクタ位置保持部とから成っている。
【0017】
第3の形態において、プロテクタ位置保持部は、引き手本体に設けられ第1の位置で略扇形部材の一側面を下支えする第1位置支持片と第2の位置で略扇形部材の隅部から延びる延長片を上支えする第2位置支持片とから成っているのが好ましく、この場合、第1位置支持片と第2位置支持片とが同一支持片であるのが一層好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、プロテクタは、プロテクタ本体を引き手本体のへこみ内に格納された第1の位置と引き手本体のへこみから突出する第2の位置との間を手動で揺動又は水平移動等によって変位するようにしたので、プロテクタ本体をばね付勢に抗して変位する従来技術の連動手段を有する引き手に比べて構造が簡単であり、また引き手を開く力が弱すぎてもプロテクタ本体(ストッパ)を突出し損なうことがなく、プロテクタ本体を確実に突出位置(第2の位置)に変位することができる。
【0019】
また、プロテクタ本体は、手動で変位させるが、第1の位置(格納位置)及び第2の位置(突出位置)にそれぞれ確実に保持されるので、引き手による引き戸の開閉に支障を来たすことがない。
【0020】
特に、プロテクタ本体が略扇形部材から成っており、第1の位置と第2の位置との間を略扇形部材の周面が引き手本体のへこみの水平壁に常に小さな間隙を保って対向するように略扇形部材の隅部分を枢動自在に支持すると、第1の位置でも第2の位置でもプロテクタ本体が枢支されているへこみ部分の開口が閉じられるので見栄えが良好となる上にプロテクタ本体とへこみとの間に塵埃が入り込むことがなく、また略扇形部材がプロテクタ位置保持部と協働してその自重で第1と第2の位置とにそれぞれ位置保持されるので、引き手本体の壁とプロテクタ本体との間での弾性的な係止作用を必要としないから構造が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に述べると、図1乃至図5は、本発明の第1の形態による引き手10を示し、図6乃至図10は、本発明の第2の形態による引き手10を示し、また図11及び図12は、本発明の第3の形態による引き手10を示している。これらの形態の引き手10は、引き手本体20に設けられ引き手本体20の表面と略同一面かこの表面よりも引っ込んだ第1の位置P1(図4、図9及び図11参照)と引き手本体20の表面から突出する第2の位置P2(図5、図10及び図12参照)との間を移動するプロテクタ本体30Bを有するプロテクタ30を備えている。このプロテクタ30は、プロテクタ本体30Bを引き手本体20のへこみ20R内に配置された第1の位置P1と引き手本体20のへこみ20Rから突出する第2の位置P2との間を手動で変位する手動変位手段40を備えている。引き手本体20は、金属又はプラスティックから作られるが、プロテクタ本体30Bは、他の引き戸又は戸袋の端面に緩衝的に衝合するようにプラスティックから作られるのが好ましい。なお、第2の位置でプロテクタ本体30Bが引き手本体20の「表面と略同一面」とは、プロテクタ本体30Bの表面に完全に一致している状態の他に、引き戸50が隣の引き戸に重合するか戸袋に引き込まれるのに支障がない程度にプロテクタ本体30Bの表面から若干出っ張っている状態も含むことを意味する。
【0022】
図示の形態では、引き手本体20は、フランジ20F1、フランジ20F2とへこみ20R1、20R2とをそれぞれ有する略矩形状引き手半部材20M1、20M2から成り、これらの引き手半部材20M1、20M2は、そのフランジ20F1、20F2を引き戸50の矩形状の取付け孔50Hの縁に係合し、一方の半部材20M2のねじ貫通孔20H2を貫通する止めねじ22を他方の半部材20M1のねじ孔20H1にねじ込んで相互に引き付けることによって引き戸50に固定して引き手本体20を形成している。
【0023】
先ず、図1乃至図5の第1の形態による手動変位手段40を説明すると、この手動変位手段40は、第1の位置P1では引き手本体20のへこみ20R1内でプロテクタ本体30Bが垂直状態(図1及び図4参照)となり、第2の位置P2ではへこみ20R1内から一部が突出してプロテクタ本体30Bが水平状態(図5参照)となるようにプロテクタ本体30Bを引き手本体20のへこみ20R1内に枢動自在に支持するプロテクタ枢支部42と、プロテクタ本体30Bの垂直状態と水平状態とを維持するプロテクタ位置保持部44とから成っている。
【0024】
プロテクタ枢支部42は、引き手本体20の半部材20M1のへこみ20R1内でこの半部材20M1を幅方向に横切ってその側壁に固定されてプロテクタ本体30Bを枢動自在に支持する枢軸42Pから成り、この枢軸42Pは、図1及び図4に示すように、プロテクタ本体30Bの垂直状態での下半部寄り、即ちプロテクタ本体30Bの中央よりも下半部側でこのプロテクタ本体30Bを支持しているのが好ましい。
【0025】
プロテクタ位置保持部44は、図4に拡大して示すように、プロテクタ本体30Bを垂直状態に保持するようにプロテクタ本体30Bと引き手本体20のへこみ20R1の壁との間に設けられて相互に弾性的に係止する部分44RPから成っている。図示の形態では、引き手本体20のへこみ20R1の上壁に設けられた丸い小突起44Pとプロテクタ本体30Bの垂直状態の上端面に設けられた相応する丸い小凹部44Rとから成り、プロテクタ本体30Bを水平状態(図5の状態)から垂直状態(図1及び図4の状態)にしたときに、小突起44Pが小凹部44Rにプロテクタ本体30Bの弾性作用で食い込んでプロテクタ本体30Bが垂直状態に保持される。この状態から、プロテクタ本体30Bを枢軸42Pを中心に揺動して水平状態に向けて倒そうとするときには、小凹部44Rが小突起44Pから弾性的に解放される。なお、プロテクタ本体30Bの小凹部44Rを設けることなく、小突起44Pがプロテクタ本体30Bの垂直状態でその上面に弾性的に係合して位置保持するようにしてもよい。
【0026】
プロテクタ位置保持部44は、更に、プロテクタ本体30Bを水平状態に維持するようにプロテクタ本体30Bの一部分に係合するストッパ44Sも有している。このストッパ44Sは、図5に拡大して示すように、へこみ20R1の壁の一部を段状に盛り上げて形成されている。
【0027】
図示の例では、プロテクタ本体30Bは、垂直状態で、その正面の下方に丸い凹状の指当て30f1を有し、この指当て30fは、プロテクタア本体30Bを垂直状態(第1の位置)から水平状態(第2の位置)に揺動するためにプロテクタ本体30Bに指を当ててプロテクタ本体30Bの下方部分を押し込むのに用いられるが、この指当て30f1は、特に設けなくてもよい。
【0028】
次に、この図1乃至図5の形態による引き手10の使用状態を述べると、通常では、図1及び図4に示すように、プロテクタ本体30Bは、引き手本体20のへこみ20R1内に垂直状態に格納されている(第1の位置にある)。
【0029】
引き戸50を開く際には、その開き動作の前に、プロテクタ30のプロテクタ本体30Bを指当て30f1に指を当てながら図1及び図4の状態から押し込んでプロテクタ本体30Bを反時計方向に揺動し、図5に示す水平状態(第2の位置)にする。この位置では、プロテクタ本体30Bの先端部分は、引き手本体20から突出し、この状態で引き手本体20のへこみ20R1に指を入れてプロテクタ本体30Bを有する側に向けて引き手本体20を引いて引き戸50を開く。引き戸50が完全に開く位置に近い位置に達すると、引き手本体20(即ち引き戸50)から突出しているプロテクタ本体20の先端部分が隣の引き戸又は戸袋の端面に衝合して誤って引き手内の指が隣の引き戸との間の隙間や戸袋の開口の隙間に引き込まれることがなく、引き戸50を安全に開くことができる。
【0030】
引き戸50を隣の引き戸に完全に重合させるか戸袋内に完全に引き込ませたい場合には、引き戸50を僅かに引き戻してプロテクタ本体30Bを隣の引き戸又は戸袋から引き離し、水平状態(第2の位置)にあるプロテクタ本体30Bの下面を図5の位置から押し上げて図1及び図4に示す垂直状態に戻す。このようにすると、プロテクタ本体30Bは、引き手本体20内に格納されるので、引き戸50は、プロテクタ本体30Bに干渉されることなく、隣の引き戸に安全に重合したり戸袋に完全に引き込んだりすることができる。従って、引き戸50を完全に開いて有開口面積を大きくして車椅子の通過や大きな家具の出し入れを容易に行うことができる。
【0031】
引き戸50を閉じた状態では、プロテクタ本体30Bが突出している第2の位置のままでもよいが、図1及び図4に示すように、引き手本体20内に格納するのが好ましい。
【0032】
次に、図6乃至図10の形態の手動変位手段40を説明すると、この手動変位手段40は、プロテクタ本体30Bを引き手本体20のへこみ20R1内に引っ込んだ第1の位置P1とプロテクタ本体30Bを引き手本体20のへこみ20R1から一部が突出する第2の位置P2との間を水平状態のまま変位するように案内するプロテクタ水平案内部46から成っている。
【0033】
このプロテクタ水平案内部46は、プロテクタ本体30Bの長孔30Hを貫通してプロテクタ本体30Bを案内する案内杆46Rと、プロテクタ本体30Bの少なくとも一方の面に係合してプロテクタ本体30Bを水平に保持する水平壁20Wとから成っている。図示の形態では、水平壁20Wは、引き手本体20のへこみ20R1の上壁であるのが示されているが、プロテクタ本体30Bが摺動自在に収納されるようなくぼみの壁であってもよい。
【0034】
図9及び図10に拡大して示すように、長孔30Hは、その両端に設けられプロテクタ本体30Bの第1の位置P1(図9)と第2の位置P2(図10)とで案内杆46Rが弾性的に係入してプロテクタ本体30Bを安定して保持する弾性係止孔部分30HEを有する。この弾性係止孔部分30HEは、案内杆46Rが長孔30Hの両端に入り込む際に案内杆46Rに若干の抵抗を示すように形成された小さな突起30HRによって形成され、案内杆46Rは、この小突起30HRを弾性的に潜り抜けてこの小突起30HRを超えると長孔30Hの中央に向けて戻ることができないようになっている。
【0035】
図示の例では、プロテクタ本体30Bは、その下面の前縁に指掛け30f2を有し、この指掛け30f2は、プロテクタ本体30Bを第1と第2の位置との間を前後に進退する際に指を掛けてプロテクタ本体30Bの出し入れを容易にする機能を有する。
【0036】
この第2の形態による手動変位手段40を有する引き手10の使用状態を述べると、通常では、図6及び図9に示すように、プロテクタ本体30Bは、引き手本体20のへこみ20R1内に水平状態で格納されている(第1の位置にある)。
【0037】
引き戸50を開く際には、その開き動作の前に、プロテクタ30のプロテクタ本体30Bを指掛け30f2に指を掛けて図6及び図9の状態から手前に引いて図10に示す前進位置(第2の位置)にする。この位置では、プロテクタ本体30Bは、引き手本体20から突出するので、この状態で引き手本体20のへこみ20R1に指を入れてプロテクタ本体30Bを有する側に向けて引き手本体20を引いて引き戸50を開く。引き戸50が完全に開く位置に近い位置に達すると、引き手本体20(即ち引き戸50)から突出しているプロテクタ本体30の突出部分が隣の引き戸又は戸袋の端面に衝合するので、引き手内の指が誤って隣の引き戸との間の隙間や戸袋の開口の隙間に挟まれることがなく、引き戸50を安全に開くことができる。
【0038】
引き戸50を閉じたときには、プロテクタ本体30Bを押し込んで図1及び図4に示す後退格納位置(第1の位置)に戻すことができる。
【0039】
図1乃至図5の第1の形態と同様に、引き戸50を隣の引き戸に完全に重合させるか戸袋内に完全に引き込ませたい場合には、第1の形態の場合と同様に、引き戸50を僅かに引き戻してプロテクタ本体30Bを隣の引き戸又は戸袋から引き離し、前進位置(第2の位置)にあるプロテクタ本体30Bを引き手本体20のへこみ20R1内に押し込めばよい。
【0040】
更に、図11及び図12の第3の形態の手動変位手段40を説明すると、この手動変位手段40では、プロテクタ本体30Bは、略扇形部材30BSから成っており、手動変位手段40は、第1の位置P1と第2の位置P2との間を略扇形部材30BSの周面30BSPが引き手本体20のへこみ20R1の水平壁20Wに常に小さな間隙を保って対向するように略扇形部材30BSの根元部分30Cを枢動自在に支持するプロテクタ枢支部42とプロテクタ本体30Bの第1の位置と第2の位置とを維持するプロテクタ位置保持部44とから成っている。
【0041】
プロテクタ枢支部42は、引き手本体20のへこみ20R1の開口付近に支持された枢軸42Pから成り、第1の位置では、図11に示すように、略扇形部材30BSは、枢軸42Pを中心に時計方向に倒れて引き手本体20のへこみ20R1内に格納され、第2の位置では、図12に示すように、枢軸42Pを中心に反時計方向に倒れてへこみ20R1から部分的に突出するが、後に述べるように、略扇形部材30BSの右側上縁がへこみ20R1の水平壁から外れることがないようにプロテクタ位置保持部44によって保持される。なお、図11及び図12において符号20Nは、略扇形部材30BSが第1の位置でその一部がへこみ20R1の底壁に干渉することがないように底壁に設けられた切欠き孔である。
【0042】
第3の形態におけるプロテクタ位置保持部44は、引き手本体20に設けられ第1の位置P1で略扇形部材30BSの一側面を下支えする第1位置支持片44S1と第2の位置P2で略扇形部材30BSの根元部分30Cから延びる延長片30Eを上支えする第2位置支持片44S2とから成っている。図示の形態では、第1位置支持片44S1と第2位置支持片44S2とは、同一支持片44Sから成っている。
【0043】
このように、プロテクタ本体30Bが略扇形部材30BSから成っており、第1の位置P1と第2の位置P2との間を略扇形部材30BSの周面30BSPが引き手本体20のへこみ20R1の水平壁に常に小さな間隙を保って対向するように略扇形部材30BSの根元部分30Cを枢動自在に支持すると、第1の位置P1でも第2の位置P2でもプロテクタ本体30Bが支持されているへこみ20R1の部分の開口が閉じられるので、引き手10の見栄えが良好となり、またプロテクタ本体30Bとへこみ20R1との間に塵埃が入り込むことがない。
【0044】
また、略扇形部材30BSがプロテクタ位置保持部44の支持片44Sと協働してその自重で第1と第2の位置P1、P2とにそれぞれ位置保持されるので、プロテクト本体30Bを引き手本体20に直接的又は間接的に弾性的に係止する必要がない。
【0045】
この第3の形態による引き手10の使用状態は、図1乃至図5の第1の形態による引き手10とほぼ同様であるが、図11の第1の格納位置P1からプロテクタ本体30Bの指当て30f1に指を当ててこのプロテクタ本体30Bを反時計方向に倒すと、その自重が手伝って図12に示す第2の突出位置P2となり、またこの第2の位置P2から略扇形部材30BSを指で押し上げて第1の位置に戻すことができる。
【0046】
なお、上記実施の形態では、プロテクタ本体30Bは、垂直揺動運動又は水平直線運動によって第1の位置と第2の位置との間を変位するが、例えば、水平揺動運動その他の適宜の運動形態で手動によって変位させることができる。また、第1及び第2の形態で、手動変位手段40は、プロテクタ位置保持部を有するが、プロテクタ本体30Bが摩擦的に垂直揺動運動又は水平直線運動する場合に特にプロテクタ位置保持手段を必要としないことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
引き手のプロテクタは、プロテクタ本体を引き手本体のへこみ内に格納された第1の位置と引き手本体のへこみから突出する第2の位置との間を揺動(回動)又は水平移動等によって手動で変位するようにしたので、プロテクタの構造が簡単であり、またプロテクタ本体を確実に第2の位置に変位することができ、また、プロテクタ本体は、第1の位置(格納位置)と第2の位置(突出位置)にそれぞれ確実に保持されるので、引き手による引き戸の開閉に支障を来たすことがなく、産業上の利用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の形態による引き手の垂直断面図である。
【図2】図1の引き手の正面図である。
【図3】図1の引き手の引き手半部材の背面図である。
【図4】図1の引き手において第1の位置にあるプロテクタの部分拡大断面図である。
【図5】図1の引き手において第2の位置にあるプロテクタの部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の形態による引き手の垂直断面図である。
【図7】図6の引き手の正面図である。
【図8】図6の引き手の引き手半部材の背面図である。
【図9】図6の引き手において第1の位置にあるプロテクタの部分拡大断面図である。
【図10】図6の引き手において第2の位置にあるプロテクタの部分拡大断面図である。
【図11】本発明の第3の形態による引き手の第1の位置にあるプロテクタの部分拡大断面図である。
【図12】図11の引き手において第2の位置にあるプロテクタの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 引き手
20 引き手本体
20F1、20F2 フランジ
20R、20R1、20R2 へこみ
20M1、20M2 引き手の半部材
20H1 ねじ孔
20H2 ねじ貫通孔
20W 水平壁
20N 切欠き孔
22 止めねじ
30 プロテクタ
30B プロテクタ本体
30BS 略扇形部材
30C 根元部分
30E 延長片
30f1 指当て
30f2 指掛け
30H 長孔
30HE 弾性係止孔部分
30HR 小突起
40 手動変位手段
42 プロテクタ枢支部
42P 枢軸
44 プロテクタ位置保持部
44RP 弾性的に係止する部分
44P 小突起
44R 丸い凹部
44S ストッパ
44S1 第1位置支持片
44S2 第2位置支持片
44SP 支持片
46 プロテクタ水平案内部
46R 案内杆
50 引き戸
50H 取付け孔
P1 第1の位置
P2 第2の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き手本体に設けられ前記引き手本体の表面と同一面か前記表面よりも引っ込んだ第1の位置と前記引き手本体の表面から突出する第2の位置との間を移動するプロテクタ本体を有するプロテクタを備えた引き手において、前記プロテクタは、前記プロテクタ本体を前記引き手本体のへこみ内に格納された第1の位置と前記引き手本体のへこみから突出する第2の位置との間を手動で直接変位する手動変位手段を備えていることを特徴とする引き手。
【請求項2】
請求項1に記載の引き手であって、前記手動変位手段は、前記第1及び第2の位置に前記プロテクタ本体を維持するプロテクタ位置保持部を有していることを特徴とする引き手。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の引き手であって、前記手動変位手段は、前記プロテクタ本体が前記第1の位置では前記へこみ内で垂直状態となり、前記第2の位置では前記へこみ内から一部が突出する水平状態となるように前記プロテクタ本体を前記引き手本体のへこみ内で枢動自在に支持するプロテクタ枢支部から成っていることを特徴とする引き手。
【請求項4】
請求項3に記載の引き手であって、前記手動変位手段は、前記第1及び第2の位置に前記プロテクタ本体を位置保持するプロテクタ位置保持手段を更に含むことを特徴とする引き手。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の引き手であって、前記プロテクタ枢支部は、前記プロテクタ本体の垂直状態での下半部寄りに設けられていることを特徴とする引き手。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の引き手であって、前記プロテクタ位置保持部は、前記プロテクタ本体を垂直状態に保持するように前記プロテクタ本体と前記引き手本体のへこみの壁との間に設けられて相互に弾性的に係止する部分から成っていることを特徴とする引き手。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の引き手であって、前記プロテクタ位置保持部は、前記プロテクタ本体を水平状態に維持するように前記プロテクタ本体の一部分に係合するストッパから成っていることを特徴とする引き手。
【請求項8】
請求項1に記載の引き手であって、前記手動変位手段は、前記プロテクタ本体を前記引き手本体のへこみ内に引っ込んだ第1の位置と前記プロテクタ本体を前記引き手本体のへこみから一部が突出する第2の位置とを水平状態のままに変位するように案内するプロテクタ水平案内部から成っていることを特徴とする引き手。
【請求項9】
請求項8に記載の引き手であって、前記プロテクタ水平案内部は、前記プロテクタ本体の長孔を貫通して前記プロテクタ本体を案内する案内杆と前記プロテクタ本体の少なくとも一方の面に係合して前記プロテクタ本体を水平に保持する水平壁とから成っていることを特徴する引き手。
【請求項10】
請求項9に記載の引き手であって、前記長孔は、その両端に設けられ前記プロテクタ本体の第1の位置と第2の位置とで前記案内杆が弾性的に係入して前記プロテクタ本体を安定して保持する弾性係止孔部分を有することを特徴とする引き手。
【請求項11】
請求項1に記載の引き手であって、前記プロテクタ本体は略扇形部材から成っており、前記手動変位手段は、前記第1の位置と前記第2の位置との間を前記略扇形部材の周面が前記引き手本体の前記へこみの水平壁に常に小さな間隙を保って対向するように前記扇形部材の隅部分を枢動自在に支持するプロテクタ枢支部と前記プロテクタ本体の第1の位置と第2の位置とを維持するプロテクタ位置保持部とから成っていることを特徴とする引き手。
【請求項12】
請求項11に記載の引き手であって、前記プロテクタ位置保持部は、前記引き手本体に設けられ前記第1の位置で前記略扇形部材の一側面を下支えする第1位置支持片と前記第2の位置で前記略扇形部材の隅部から延びる延長片を上支えする第2位置支持片とから成っていることを特徴とする引き手。
【請求項13】
請求項12に記載の引き手であって、前記第1位置支持片と第2位置支持片とが同一支持片であることを特徴とする引き手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−125052(P2006−125052A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314845(P2004−314845)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)