説明

引き違い窓の安全装置

【課題】引き違い式窓のクレセント錠が開錠又は施錠状態を検知するための検知部材を、クレセント錠の内部に収納し、検知精度及び耐久性を長期にわたって維持することができる引き違い窓の安全装置を提供する。
【解決手段】建物開口部を開閉する引き違い式障子体の施錠と開錠を行うクレセント錠4における錠本体5の内部に検知部材であるスイッチ13を組み込み、前記錠本体5の内部で操作レバー6の回動時に一体に回動する部分に、操作レバー6の開錠と施錠の位置で前記スイッチ13をON、OFFさせ、前記スイッチ13のON、OFFにより、ワイヤレス送信機構15がクレセント錠4の開錠又は施錠の信号を端末の機器に発信するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引き違い窓の安全装置、更に詳しくは、クレセント錠によって施錠又は開錠する引き違い式窓において、施錠したクレセント錠が開錠されるとこれを検知して信号を発して知らせ、外部からの不正侵入を防ぐことで、セキュリティーの向上を図ることができるようにした安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレセント錠によって施錠又は開錠する建物開口部の引き違い窓において、窓ガラスを切り抜いたり割ってクレセント錠を開錠することにより、窓を開いて外部から不正侵入しようとする犯罪を防ぐため、クレセント錠が開錠されるとこれを検知手段によって検知し、この検知手段と接続したセンサーが、検知手段の開錠状態検知によってクレセント錠の開錠信号を発信し、携帯電話やパソコン等の端末機器に知らせるようにしたり、現場において警報を発するようにした安全装置は既に提案されている。
【0003】
従来の安全装置は、引き違い式窓における窓外枠にリードスイッチと障子体に磁石を、障子体の閉じた状態で互いに接近するような配置に固定し、前記リードスイッチに発信センサーを電気的に接続した構造を有し、前記障子体が閉位置にあるとき接近する磁石の磁力でリードスイッチがONとなり、また、障子体が開位置に移動して磁石がリードスイッチから離反すると、リードスイッチはOFFとなり、前記発信センサーが、窓の障子体が開いた開信号を端末機器に発信するようになっている (例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記のような安全装置は、窓外枠にリードスイッチと障子体に磁石を固定した構造では、引き違い式窓において二枚の障子体ごとに磁石とリードスイッチを配置しなければならず、その分設備コストが高くつくと共に、引き違い式窓を施錠又は開錠するクレセント錠との関連性がないため、障子体を閉じた状態での施錠忘れを防ぐことができず、外部からの不正侵入を防ぐ安全装置としては十分なものであるとは言えない。
【0005】
このような問題を解決するため、クレセント錠における開閉レバーに磁石を固定し、障子体には、開閉レバーが施錠位置にあるとき前記磁石と対応する位置にリードスイッチを配置し、開閉レバーを開錠位置にして磁石がリードスイッチから離反すると、リードスイッチはOFFとなり、このリードスイッチと電気的に接続した発信センサーがクレセント錠の開錠信号を端末機器に発信するようにし、施錠忘れを防ぐことができると共に、室外からの開錠の発生を知らせることができるようにした引き違い窓の安全装置が提案されている。 (例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−157656号公報
【特許文献2】特開平6−309572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したクレセント錠を用いた安全装置は、磁石をクレセント錠の開閉レバーに固定し、リードスイッチを障子体に固定する構造になっていると、これらが引き違い式窓の室内側から見えるため、見た目の外観を低下させるだけでなく、施錠及び開錠を直接操作する開閉レバーに固定された磁石が、操作の時に指が触れることで邪魔になるという問題がある。
【0008】
また、永久磁石は経時的に磁力が弱くなるため、長い時間の経過と共に、リードスイッチを正確に作動させることができない事態が生じることになり、検知精度及び耐久性の面で信頼性に欠けるという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、クレセント錠の内部に開錠の検知部材を収納することで、違い式窓の室内側からの見た目の外観を低下させることがないと共に、安全装置としての検知精度及び耐久性を長期にわたって維持することができる引き違い窓の安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、この発明は、建物開口部を開閉する引き違い式障子体の施錠と開錠をクレセント錠によって行い、このクレセント錠が、一方障子体に取付けた錠本体と他方障子体に取付けた係合金具とからなり、前記錠本体は操作レバーの回動により係合金具に対して係脱するように形成されている引き違い窓の安全装置であって、前記クレセント錠における錠本体の内部にスイッチを組み込み、前記錠本体の内部で操作レバーの回動時に一体に回動する部分に、操作レバーを開錠位置にするとスイッチを押し込むスイッチ操作部材を設け、前記スイッチにワイヤレス送信機構が電気的に接続され、スイッチのON、OFFに応じてワイヤレス送信機構でクレセント錠の開錠や施錠の信号を発信するようにしたものである。
【0011】
ここで、クレセント錠における錠本体は、内部が中空で背面が開放した薄い箱形に形成され、この錠本体の前面側に配置した操作レバーを、錠本体で回転可能に保持したセンター軸に固定することで錠本体に取付け、錠本体の内部でセンター軸の偏心位置に突設した回動ばね受けと、錠本体の内部でセンター軸の下方位置に突設した固定ばね受けの間にコイルばねが張設されている。
【0012】
上記操作レバーは、上方に回動させると開錠位置で下方に回動させると施錠位置となり、このような開錠位置と施錠位置の変化によって180°回転するセンター軸の回動ばね受けは、操作レバーが開錠位置又は施錠位置にあるとき回転軸心に対して水平の位置関係になるよう設けられ、従って、操作レバーの回動操作時に、センター軸の回転軸心に対してコイルばねの軸心が何れかの側に通過することで、操作レバーに開錠位置又は施錠位置へ向けての回動弾性が付勢されるようになっている。
【0013】
上記スイッチは、錠本体の内部において、操作レバーを開錠位置にしたときに停止している回動ばね受けの下方に位置するように配置され、前記回動ばね受けに設けたスイッチ操作部材がスイッチの作動子を押し込むことでOFFとなり、また、操作レバーを開錠位置に回動させると、回動ばね受けと共にスイッチ操作部材がスイッチから離反し、スイッチはONになる。
【0014】
上記ワイヤレス送信機構は、クレセント錠の近接位置で、このクレセント錠の錠本体を取付けた一方障子体に固定され、上記スイッチと短いリード線で電気的に接続され、クレセント錠の開錠や施錠の信号を端末機器に対して無線で発信するようになっている。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、クレセント錠における錠本体の内部にスイッチを組み込み、前記錠本体の内部で操作レバーの回動時に一体に回動する部分に、スイッチを押してON又はOFFにするスイッチ操作部材を設けたので、クレセント錠の開錠、施錠を検出するための検知部材をクレセント錠内に納めることができ、これらが外部から見えないことで、引き違い窓の見た目の外観を低下させることがないだけでなく、クレセント錠における操作レバーの開錠、施錠の操作に何らの違和感や支障を与えることもない。
【0016】
また、クレセント錠の開錠、施錠の検知を、スイッチ操作部材によりスイッチの機械的なON、OFFによって行うようにしたので、磁石を用いたものに比べて安全装置としての経時的な機能の低下の発生がなく、長期的な信頼性の向上が図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る引き違い窓の安全装置を示す使用状態の斜視図
【図2】この発明に係る引き違い窓の安全装置に用いるクレセント錠の一例を示す背面側から見た斜視図
【図3】この発明に係る引き違い窓の安全装置に用いるクレセント錠の一例を示す縦断側面図
【図4】(a)はこの発明に係る引き違い窓の安全装置に用いるクレセント錠の開錠時の状態を示す背面図、(b)は同じくクレセント錠の閉錠時の状態を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1のように、引き違い窓1は、建物に固定された窓外枠内に二枚の障子体2と3を組み込んで開閉自在となり、クレセント錠4を用い、二枚の障子体2と3を閉じた状態で固定化できるようになっている。
【0020】
上記クレセント錠4は、室内側に位置する一方障子体2を形成する枠体の端部外面に固定した錠本体5と、前記錠本体5に上下方向の回動が可能となるよう枢止した操作レバー6と、この操作レバー6に一体に回動するよう設けられた円弧状の引き寄せ壁7とで形成され、室外側となる他方障子体3を形成する枠体の端部内面に固定され、前記操作レバー6に設けた引き寄せ壁7を係脱するフック状の係合金具8が組み合わせ使用されるようになっている。
【0021】
クレセント錠4における前記錠本体5は、内部が中空で背面が開放した薄い長方形の箱形に形成され、図2と図3のように、その内部には、前面側に設けた操作レバー6を回転可能に保持するセンター軸9の偏心位置に突設した回動ばね受け10と、錠本体5の内部でセンター軸9の下方位置に突設した固定ばね受け11と、前記回動ばね受け10と固定ばね受け11の間に張設したコイルばね12が設けられ、操作レバー6を下向きにした開錠姿勢と、操作レバー6を上向きにした施錠姿勢を弾力的に保持するような構造になっている。
【0022】
上記錠本体5は、長さ方向を上下方向にして、一方障子体2を形成する枠体の端部外面に背面を重ねた状態で両端をビス止めすることにより一方障子体2に固定し、上記操作レバー6は、図4(a)のように、センター軸を中心に下方に回動させると開錠位置となり、また、図4(b)のように、上方に回動させると施錠位置となる。
【0023】
上記した錠本体5に対して係合金具8は、両障子体2と3を閉じた状態で、開錠位置にある操作レバー6を施錠位置に回動させたとき、その引き寄せ壁7が回動しながら係合していく位置となるよう、他方障子体3を形成する枠体の端部内面に固定され、操作レバー6を施錠位置にすると、引き寄せ壁7と係合金具8は、両障子体2と3を互いに引き寄せるようにして固定化することになる。
【0024】
上記操作レバー6の開錠位置と施錠位置の変化によって180°回転するセンター軸9の回動ばね受け10は、操作レバー6が開錠位置又は施錠位置にあるとき回転軸心に対して水平の位置関係になるよう設けられ、従って、操作レバー6の回動操作時に、センター軸9の死点である回転軸心に対してコイルばね12の軸心が左右の何れかの側に通過することで、操作レバー6に開錠位置又は施錠位置へ向けての回動弾性が付勢されるようになっている。
【0025】
この発明の安全装置は、上記クレセント錠4の開錠と施錠を検知するための検知部材であり、前記クレセント錠4における錠本体5の内部に組み込んだスイッチ13と、前記スイッチ13とリード線14で電気的に接続された状態で、錠本体5を取付けた一方障子体2に固定するワイヤレス送信機構15とで形成されている。
【0026】
上記スイッチ13は、その作動子13aが押し込まれることで接点が閉じてONになるタイプのものを用い、図2と図4(b)のように、錠本体5内で、操作レバー6を施錠位置にしたときに、この施錠位置に停止している回動ばね受け10の下方に位置するように作動子13aを上向きにした配置で設けられ、前記施錠位置に停止している回動ばね受け10がスイッチ操作部材を兼ね、この回動ばね受け10で作動子13aが押し込まれるようになっている。
【0027】
また、上記スイッチ13を押し込むためのスイッチ操作部材は、図示の場合、施錠位置に停止している回動ばね受け10で直接押下げる例を示したが、前記回動ばね受け10に対して、板ばねや金属板を用いたりピン等を用いて形成された操作部材を突出状に取付け、回動ばね受け10が施錠位置に停止したとき、この操作部材でスイッチ13の作動子13aを押し込むようにしてもよい。
【0028】
上記ワイヤレス送信機構15は、一方障子体2に対して、クレセント錠4の近接位置に固定され、クレセント錠4の内部に位置するスイッチ13とリード線14とコネクターを用いて電気的に接続され、このワイヤレス送信機構15は、ケース内に発信器や電源等を収納し、スイッチ13がON又はOFFになって発信器に通電又は遮断となると、クレセント錠4の施錠又は開錠信号を端末機器に発信するようになっている。
【0029】
なお、この発明に用いるクレセント錠4は、図示例のような構造に限定されるものではなく、錠本体5の内部にスイッチ13を組み込んで収納することができ、操作レバー6の施錠位置と開錠位置の変化で前記スイッチ13をON、OFFすることができる構造であればよい。
【0030】
この発明の安全装置は、上記のような構成であり、図1は、引き違い窓の二枚の障子体2と3を閉じてクレセント錠4を開錠した状態を示し、図4(a)のように、操作レバーを開錠位置に回動させると、センター軸9の回転により回動ばね受け10が開錠位置にあってスイッチ13の作動子13aから離反し、作動子13aの押圧が解かれたスイッチはOFFになる。
【0031】
このとき、上記ワイヤレス送信機構15は、スイッチがOFFになって通電切れとなると.クレセント錠4の開錠信号を端末機器に発信するようになっている。
【0032】
次に、図4(b)はクレセント錠4を施錠した状態を示し、操作レバーが上方に回動すると、引き寄せ壁7と係合金具8が両障子体2と3を互いに引き寄せるようにして固定化し、クレセント錠4の内部において、センター軸9に突設した回動ばね受け10は施錠位置へ180°回動し、この回動ばね受け10がスイッチ13の作動子13aを押下げ、スイッチ13の接点がONとなることで、ワイヤレス送信機構15は、発信器に通電となるってクレセント錠4の施錠信号を端末機器に発信することになり、従って、引き違い窓の施錠状態を端末機器で確認することができる。
【0033】
上記のように、クレセント錠4の開錠又は施錠によってスイッチ13はON又は0FFとなり、ワイヤレス送信機構15は、このスイッチ13はON又は0FFにより、開錠又は施錠の信号を携帯電話やパソコン等の端末機器に対して無線で発信するか、現場の周辺に配置した警報器を作動させ、家人や周辺の住民に対してクレセント錠が開錠されたことを知らせ、これにより、外部からの不正侵入による被害の発生を防止できることになる。
【符号の説明】
【0034】
1 引き違い窓
2、3 障子体
4 クレセント錠
5 錠本体
6 操作レバー
7 引き寄せ壁
8 係合金具
9 センター軸
10 回動ばね受け
11 固定ばね受け
12 コイルばね
13 スイッチ
14 リード線
15 ワイヤレス送信機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部を開閉する引き違い式障子体の施錠と開錠をクレセント錠によって行い、このクレセント錠が、一方障子体に取付けた錠本体と他方障子体に取付けた係合金具とからなり、前記錠本体は操作レバーの回動により係合金具に対して係脱するように形成されている引き違い窓の安全装置であって、
前記クレセント錠における錠本体の内部にスイッチを組み込み、前記錠本体の内部で操作レバーの回動時に一体に回動する部分に、操作レバーを開錠位置にするとスイッチを押し込むスイッチ操作部材を設け、前記スイッチにワイヤレス送信機構が電気的に接続され、スイッチのON、OFFに応じてワイヤレス送信機構でクレセント錠の開錠や施錠の信号を発信するようにした引き違い障子の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49977(P2013−49977A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188234(P2011−188234)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(505036515)