説明

引下線コネクタ

【課題】引下線を引下線コネクタの把持部に固定することで把持部を下方から把持することを容易とし、確実に引下線を高圧線に取り付け可能とすると共に、作業時間を短縮できる引下線コネクタを提供する。
【解決手段】高圧線3を挟持可能に,一対の挟持片4a,4aと締付ボルト5によって形成される高圧線挟持部4と、この高圧線挟持部4に,高圧線3に対して平行に形成され,引下線12の芯線12aが挿入される挿入孔6と、一対の挟持片4a,4aの少なくとも一方の下方に延設される平板状の把持部7と、を備え、この把持部7の,高圧線3に対して垂直に形成される,少なくとも一方の側端面7aには、挿入孔6から導出される引下線12の芯線12aを屈曲させて収容する溝部9が形成され、この溝部9に収容された引下線12の芯線12aを覆うように、把持部7に取り付けられる固定具10を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧線に引下線を接続する際に用いられる挟持部及び把持部を備えた引下線コネクタに係り、特に、引下線を把持部に固定することで把持部を下方から把持し易い引下線コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引下線コネクタを用いた引下線の高圧線への接続は、予め引下線を引下線コネクタに取り付けた後、絶縁ヤットコ等で引下線を下方から押し上げながら高圧線と束ねて把持し、次いで把持部を掴んで引下線コネクタ全体を高圧線に接近させ、把持部と対称に設置される挟持部で高圧線を挟み込むという方法により行っていた。しかし、引下線が引下線コネクタに固定されていないことから、引下線を中心として引下線コネクタが回転し易く、しかも把持部よりも挟持部の方が重量が重いことから、挟持部が下方に向かい易い。このため、絶縁ヤットコ等により把持部を掴むことが困難であるという課題があった。また、作業者の熟練度によって作業時間にかなりの差が発生したり、何度もやり直すことで引下線が屈曲したりするという課題があった。そこで、このような課題を解決する目的で、近年、把持部を容易に把持するための技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「引下線用コネクタ」という名称で、フック状の高圧線保持部と、コネクタ本体部の外側面に設けられた引下線保持部と、を備えた引下線用コネクタに関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、引下線保持部が、引下線を外方から装填可能な溝部と、螺入部材によって溝部内に引下線を保持する引下線押さえ手段であるボルトと、を備えたことを特徴とする。
このような特徴を備えた引下線用コネクタにおいては、溝部に引下線を装填してボルトを締め付けることにより、引下線が保持・固定されるという作用を有する。よって、引下線を引下線用コネクタに簡単かつ容易に保持・固定することができる。
【0004】
次に、特許文献2には「間接活線作業用連結具」という名称で、連結具本体と、この本体から延出した延出部と、一対のバネ部材と、を備えた間接活線作業用連結具に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、絶縁ヤットコ等の先端部を挿入可能に形成された挿入孔が、一対のバネ部材の間に位置するように延出部に備えられたことを特徴とする。
このような特徴を有する間接活線作業用連結具においては、絶縁ヤットコ等が確実に延出部を把持することができる。
【0005】
そして、特許文献3には、「コネクタ接続補助具」という名称で、高圧線接続部と,引下線接続部を有するコネクタ本体部と,被把持部と,を備えた引下線コネクタを高圧線に接続する際に使用されるコネクタ接続補助具に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、コネクタ接続補助具が、板状に構成され,拡幅部を有する補助具本体部と、補助具本体部の厚さ方向に溝幅を有するようにこの本体部の一端に溝状に設けられ,被把持部が着脱自在に挿入される凹溝部と、を備えたことを特徴とする。
このような特徴を有するコネクタ接続補助具においては、装着により引下線用コネクタの重心が被把持部側に移動するという作用を有する。従って、被把持部が下方に向き易くなるため、作業性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−118264号公報
【特許文献2】特開2010−129340号公報
【特許文献3】特開2011−114935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明においては、引下線を装填する溝部は上方が開放されている。また、引下線を溝部に装填してボルトによってこれを固定する作業は引下線用コネクタを高圧線に取り付けた後に行われる。従って、装填作業は頭上において行われることから、引下線が溝部の底面近くに十分押し込まれたことを視認することが困難である場合が考えられる。よって、ボルトの先端が引下線に十分当接しないまま締め込まれたとき、溝部の開放された上方から引下線が脱落することが考えられる。このため、引下線を引下線用コネクタに簡単かつ容易に保持・固定できるとは言えない可能性がある。
【0008】
次に、特許文献2に開示された発明においては、延出部に挿入孔が備えられることから、間接活線作業用連結具の重心は挿入孔が備えられていない場合よりもさらに連結具本体の挟込部材側に移動する。そのため連結具本体が下方で、延出部が上方となってしまい、絶縁ヤットコ等の先端部と挿入孔を掛合した状態になり難いおそれがある。従って、絶縁ヤットコ等により確実に延出部を把持することが困難となり、作業時間が短縮されない可能性がある。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された発明においては、補助具本体部を下方に引っ張ることによりこの本体部が被把持部から容易に分離されることから、作業時においても補助具本体部が不意に外れるおそれがある。従って、引下線用コネクタの重心は本体部に移動して本体部が下方に回転し、その結果被把持部が上方になってしまい、この部分の把持が困難となって作業性が向上されるとは言えない可能性がある。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、引下線を引下線コネクタの把持部に固定することで把持部を下方から把持することを容易とし、ひいては確実に引下線を高圧線に取り付けることを可能にするとともに、すべての作業者において作業時間の短縮が可能な引下線コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る引下線コネクタは、高圧線を挟持可能に,一対の挟持片と締付部材によって形成される挟持部と、この挟持部に,高圧線に対して平行に形成され,引下線の芯線が挿入される挿入孔と、一対の挟持片の少なくとも一方の下方に延設される平板状の把持部と、を備え、この把持部の,高圧線に対して垂直に形成される,少なくとも一方の側端部には、挿入孔から導出される引下線の芯線を屈曲させて収容する溝部が形成され、この溝部に収容された引下線の芯線を覆うように、把持部に取り付けられる固定具を備えたことを特徴とする。
上記構成の引下線コネクタにおいては、芯線が溝部に収容されることから、溝部に当接している芯線の動きが抑制されるという作用を有する。同時に、屈曲された位置から上流の引下線が挿入孔に挿入されているため、その長軸を中心とする引下線の回転運動が抑制される。また、固定具が引下線の芯線を覆うことから同様に芯線の動きが抑制されるとともに、挿入孔における引下線の長手方向に沿ったスライド運動が抑制される。すなわち、引下線と引下線コネクタの位置関係が変化しないことから、これらは一体的に形成されていることとなり、上記とは逆に引下線のみを把持することによって引下線コネクタが、引下線を中心とする回動を抑制するという作用を有する。また、引下線の長軸を中心とする回転方向を調整することで、引下線コネクタの把持部が下方に向けられるという作用を有する。
なお、引下線コネクタの把持部は挟持片に「延設」されるが、この「延設」は把持部が挟持片と一体に構成される場合に限定するものではなく、把持部が挟持片に結合している場合や接続される場合が含まれる概念である。また、引下線の芯線は、引下線コネクタ全体が荷重されても屈曲しない程度の剛性を備えている。
【0012】
次に、請求項2記載の発明に係る引下線コネクタは、請求項1記載の引下線コネクタにおいて、固定具は、把持部に対する位置が移動することで芯線を固定又は固定解除することを特徴とする。
上記構成の引下線コネクタにおいては、請求項1記載の発明の作用に加えて、固定具の移動により、引下線と引下線コネクタが一体的となったり、又は分離されたりするという作用を有する。また、「固定具は、把持部に対する位置が移動する」とは、固定具が把持部に可動的に取り付けられていることを意味し、例えば固定具が、一点を取り付け位置としてこの点を支軸とする回動運動や、把持部に沿ったスライド運動を行うものである。
【0013】
さらに、請求項3記載の発明に係る引下線コネクタは、溝部に代えて,引下線の芯線を固定する引下線挟持具を備え、この引下線挟持具は把持部に着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
上記構成の引下線コネクタにおいては、引下線挟持具は例えば引下線コネクタの把持部の側端面を被覆するように取り付けられ、引下線の芯線は把持部と引下線挟持具との間に挿入されて固定される。従って、引下線挟持具は、把持部における溝部及び固定具と同様の作用、すなわち引下線と引下線コネクタを一体化するという作用を有する。また、引下線挟持具は把持部に取り付けられるものであるため、把持部に直接溝部及び固定具を設けなくても請求項1記載の発明の作用を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の引下線コネクタによれば、引下線の回転方向を調整することで、引下線コネクタの把持部を確実に下方に向けることができる。従って、絶縁ヤットコ等により把持部を掴むことが容易となり、作業者の熟練度に関わらず作業時間が短縮できる。このため、度重なるやり直しがないことから引下線の屈曲を防止可能であり、高圧線に対する引下線の形状を理想の直線状に維持できる。
【0015】
本発明の請求項2記載の引下線コネクタによれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、固定具の把持部に対する位置を移動させることで、引下線を引下線コネクタから容易に着脱できる。従って、作業手順が簡易となる。
【0016】
本発明の請求項3記載の引下線コネクタによれば、引下線挟持具は、請求項1記載の発明の効果に加えて、把持部に直接溝部を設けなくてもよいことから、把持部を加工する手間が省略できる。また、引下線挟持具は把持部に着脱可能に取り付けられるため、間接活線工事の開始、終了に応じた速やかな準備、撤収が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)乃至(c)は、それぞれ実施例1に係る引下線コネクタの正面図、図1(a)におけるA方向からの側面図、及び図1(a)におけるB−B線矢視断面図である。なお、図1(c)では一部図面の表示を省略している。
【図2】(a)及び(b)は、それぞれ実施例1に係る引下線コネクタを図1(b)及び図1(c)と同一の方向から見た図である。
【図3】は、引下線の取付作業の外観図である。
【図4】(a)及び(b)は、それぞれ実施例2に係る引下線コネクタの正面図、及び図4(a)におけるD方向からの側面図である。
【図5】(a)及び(b)は、それぞれ図4(a)におけるE−E線矢視断面図、図4(b)におけるG−G線矢視断面図である。なお、図5(a)、(b)共に一部図面の表示を省略している。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
本発明の実施の形態に係る実施例1の引下線コネクタについて、図1乃至図3を用いて詳細に説明する(主に、請求項1及び請求項2に対応)。
図1(a)乃至図1(c)は、いずれも固定具が溝部に対して垂直の場合であり、それぞれ実施例1に係る引下線コネクタの正面図、図1(a)におけるA方向からの側面図、及び図1(a)におけるB−B線矢視断面の把持部側端に係る部分拡大図である。また、図2(a)及び図2(b)は、いずれも固定具が溝部に対して平行の場合であり、それぞれ図1(b)及び図1(c)と同一の方向から見た図である。さらに、図3は、高圧線に対する引下線の取付作業の外観図である。なお、図1で示した構成要素については図2及び図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施例の引下線コネクタ1は、コネクタ本体2に溝部9,9及び固定具10が備えられている。コネクタ本体2は、対向して高圧線3の芯線3aを挟持する一対の挟持片4a,4aからなる高圧線挟持部4と、挟持片4a,4aが対向する方向に沿って高圧線挟持部4に貫入する締付ボルト5と、高圧線3に対して平行に形成され,引下線12の芯線12aが挿入される挿入孔6と、この挿入孔6を挟んで高圧線挟持部4と対称の位置に設置される平板状の把持部7と、一対の挟持片4a,4aを開閉可能とするバネ部材8,8と、から構成される。把持部7は一対の挟持片4a,4aのうち、いずれか一方に延設されるが、把持部7と挟持片4aの関係は、一体に形成されるのみならず、別体のものを結合あるいは剛に接続するように形成してもよい。
次に、溝部9,9は把持部7の側端面7a,7bの上端から下端まで設けられている。一方の側端面7aには、平板状の固定具10がネジ11により取り付けられており、ネジ11の先端は側端面7aに設けられたネジ孔(図示せず)に螺合している。そして、溝部9と固定具10は空間を形成し、この空間に略直角に屈曲された芯線12aの先端部が収容される。なお、コネクタ本体2は鉄等の導電性材料からなり、固定具10は芯線12aを加工して製作されたものである。
【0020】
図1(b)に示すように、高圧線挟持部4は把持部7と比較して数倍以上の厚さを有している。高圧線挟持部4の下部に設けられた挿入孔6を通過した芯線12aは、先端部がネジ11の方向に向かって屈曲された後、溝部9に当接するよう配置される。固定具10はネジ11を支軸として、C方向に回動可能に側端面7aに取り付けられる。図1(b)において、固定具10の長手方向と側端面7aとがなす角度は略直角であり、このとき芯線12aは固定具10により被覆されていない状態である。なお、バネ部材8,8の表示は省略した。
また、図1(c)に示すように、溝部9は把持部7の側端面7aに沿って横断面を円弧状に加工したものである。溝部9の底部までの深さは芯線12aの直径と略同等であるので、溝部9に芯線12aがはみ出さずに収容される構造となっている。
【0021】
図2(a)は、図1(b)における固定具10を、その長手方向と側端面7aとが平行となる位置に回動させている。このとき芯線12aは先端部側から固定具10によって被覆される。
また、図2(b)に示すように、側端面7aの両最外端と芯線12aのいずれもが固定具10に接触している。この状態のままネジ11を締め付けることにより、芯線12aは溝部9と固定具10との間に挟持される構造となっている。
【0022】
上記構造の引下線コネクタ1を使用する際の手順について説明する。予め高圧線3に引下線コネクタ1を接続する前に、引下線12の芯線12aを挿入孔6に挿入、通過させた後、先端部付近を屈曲させて溝部9に沿わせこれに収容する。このとき、固定具10は芯線12aを被覆しないような位置(図1(b)参照)としておく。その後、固定具10をネジ11を支軸として回動させ、芯線12aを被覆する位置(図2(a)参照)とする。これにより、芯線12aは溝部9と固定具10との間に挟まれた状態となる。その後、ネジ11を締着し芯線12aを強く挟持する。
そして、図3に示すように、引下線12を先端部から一定長さの位置で高圧線3に巻き付け、その巻き付けた部分をトング13にて高圧線3とともに保持する。なお、後に引下線コネクタ1の高圧線挟持部4を高圧線3に向かって近づけるため、把持部7の方向を絶縁ヤットコ(図示せず)の先端で把持可能なものとしなければならない。従って、把持部7を掴み易い方向になるよう引下線12の軸を中心とする回転方向を調整してトング13で保持することが必要である。次に、挟持片4a,4aの間に芯線3aを押し込んで締付ボルト5を締め付け、引下線12の接続を完了する。引下線コネクタ1を高圧線3から取り外す際は、上記と逆の手順で行う。
【0023】
本実施例の引下線コネクタ1によれば、高圧線挟持部4が把持部7よりもかなり分厚く、さらにこれらは同一の材質から構成されている。このため、重心が高圧線挟持部4側に存在しており、挿入孔6を通過した芯線12aを屈曲させたのみでは、引下線コネクタ1は引下線12を中心として回転し高圧線挟持部4が下方に向いてしまう。
しかし、引下線コネクタ1では、屈曲に加え芯線12aの先端部が溝部9に当接するよう配置されるとともに、固定具10及びネジ11により押さえられて保持されることから、引下線12は引下線コネクタ1に固定される。従って、引下線12及び引下線コネクタ1は一体化されることとなるため、引下線12のみを保持することで、引下線コネクタ1がその重心位置に起因する回転運動を行うことが阻止されるという作用を有する。従って、引下線12の軸を中心とする回転方向を調整することで、引下線コネクタ1の把持部7が下方に向けられるという作用を有する。
さらに、固定具10が往復して回動することで、芯線12aの先端部が引下線コネクタ1に固定又は固定解除されるという作用を有する。
【0024】
以上説明したように、本実施例の引下線コネクタ1によれば、溝部9が把持部7の側端面7a,7bに設けられているため、両側端面のいずれの方向からも引下線12を接続することができ、引下線12の走行方向が制約されないという効果を有する。また、芯線12aの先端部が固定具10及びネジ11によって固定されることから、容易かつ確実に引下線12を引下線コネクタ1に接続することが可能である。
この結果、引下線12の軸を中心とする回転方向を調整することで、引下線コネクタ1の把持部7を容易に下方に向けることができる。従って、速やかに絶縁ヤットコ等により把持部7を把持することが可能となる。このため、作業時間が短縮でき、特に未習熟の作業者においてこの短縮効果が顕著となる。よって、複数の作業予定を計画し易くなり、しかも時間的に正確な計画が可能となる。この他、固定具10は芯線12aより製作されたものであるため、新たな部材を購入する必要がなく経済的負担がほとんどない。
【0025】
また、速やかに把持部7を把持可能であることから、引下線12を高圧線3に巻き付ける手順のやり直しがなく1度で済むため、巻き付け位置より下流の引下線12の形状を理想の直線状に維持できる。従って、巻き付け位置から引下線コネクタ1に接続された引下線12の長さは、歪みによる予測長さとの誤差が発生せず、通り巻き付け位置から芯線3aまでの高圧線3の長さと一致させることができる。よって、引下線コネクタ1の高圧線挟持部4は、引下線12の巻き付け位置の再調整をすることなく、狙った芯線3aを速やかに挟持することが可能である。
さらに、固定具10を回動させるとともにネジ11を締緩することで、引下線12を引下線コネクタ1から容易に着脱できるため、作業手順が簡易となる。
【0026】
なお、本発明の引下線コネクタ1の構造は本実施例に示すものに限定されない。例えば、固定具10及びネジ11が両側端面7a,7bに設けられても良く、高圧線挟持部4又はこれ以外の把持部7に設けられても良い。また、固定具10は、ネジ11を支軸として回動するのではなく、側端面7a,7bに沿ったスライド運動をしても良い。さらに、溝部9は横断面が円弧状でなく、箱状等であっても良く、溝部9に収容される芯線12aは先端部のみならず先端部周辺までであっても良い。この他、把持部7は、高圧線挟持部4と同等の幅でなくても良く、挿入孔6と側端面7a,7bとのなす角が90度より大きいものでも良い。
【実施例2】
【0027】
本発明の実施の形態に係る実施例2の引下線コネクタについて、図4及び図5を用いて詳細に説明する(主に、請求項3に対応)。
図4(a)及び図4(b)は、それぞれ実施例2に係る引下線コネクタ1aの正面図、及び図4(a)におけるD方向からの側面図である。また、図5(a)及び図5(b)は、それぞれ図4(a)におけるE−E線矢視断面図、図4(b)におけるG−G線矢視断面図である。なお、図1で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
図4(a)に示すように、本実施例の引下線コネクタ1aは、実施例1に係る引下線コネクタ1において溝部9,9が把持部7に備えられていないものである。引下線コネクタ1aは、側端面7c,7dのいずれにも着脱可能に取り付けられる引下線挟持具14を備える。引下線挟持具14は、横断面が円弧状をなす溝部9a(図5(a)参照)と、この円弧状部分の両端が折り返され把持部7の両平面を側端面7c,7d付近において挟持する挟持板14a,14aと、互いに対向して挟持板14a,14aに突設され,この挟持板14a,14aを開閉可能とする一対のレバー14b,14bと、溝部9aに取り付けられる固定具10aと、溝部9a及び固定具10aを貫通するネジ11aと、から構成される。芯線12aは、溝部9aとネジ11aの間に挿入されている(図5(a)及び図5(b)参照)。なお、溝部9aは、金属や合成樹脂といった弾性を有する材質であることが必要であり、常に平面形状を保とうとする復元力が働いている。
図4(b)に示すように、固定具10aは溝部9a及び芯線12aを被覆する一方、ネジ11aによって固定される。固定具10aは、内部に略長方形のガイド孔15を有する平板であり、このガイド孔15をネジ11aの螺合部分が貫通している。従って、固定具10aはネジ11aを支点として図中Fの方向にスライドする構造となっている。
【0029】
図5(a)に示すように、溝部9aの底面までの深さは芯線12aの直径と略同等である。従って、溝部9aにおける円弧状部分の両端と芯線12aのいずれもが同時に固定具10aと接触している。また、レバー14b,14bの突出側同士を近付けることで、弾性を有する溝部9aがさらに湾曲する。その結果、レバー14b,14bの基部が取り付けられている挟持板14a,14aが互いに離れ、把持部7を解放する構造である。さらに、図5(b)に示すように、ネジ11aは、螺合部分の先端が側端面7cに当接するまで締め付けることが可能である。
【0030】
このような構造の引下線コネクタ1aにおいては、レバー14b,14bの突設した側同士を所望の間隔に接近させることによって、引下線挟持具14の挟持板14a,14aが把持部7を挟持又は解放するという作用を有する。また、ネジ11aを締め付けることで、固定具10aを移動不能に押さえるとともに芯線12aを溝部9aに押し付け、逆にネジ11aを緩めることで固定具10aのスライド運動を可能とし、芯線12aを溝部9a内から解放するという作用を有する。
【0031】
本実施例の引下線コネクタ1aによれば、ネジ11aを締緩することで固定具10aを移動可能又は不能とし、芯線12aを固定又は固定解除とすることができるので、作業が簡易である。また、引下線挟持具14が把持部7から着脱可能であることから、作業に必要な場合のみ引下線コネクタ1aに取り付け、作業終了時には速やかな取り外しが可能となり、便利である。また、レバー14b,14b同士を所望の間隔に調整することができるため、その範囲内において適合する厚さの把持部7に取り付け可能であり、汎用性を有している。また、把持部7に溝部9を形成する加工をする必要がなく、実施例1に係る引下線コネクタ1と比較して製作の手間とコストを削減することが可能である。この他、引下線コネクタ1と同様の効果を有する。
【0032】
なお、本発明の引下線コネクタ1aは本実施例に示す構造に限定されるものではない。例えば、固定具10aはネジ11aによって固定される替わりに、ヒンジを備えて固定される構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
請求項1乃至請求項3に記載された発明は、高圧線に引下線を接続する際に使用される引下線コネクタとして利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1,1a…引下線コネクタ 2…コネクタ本体 3…高圧線 3a…芯線 4…高圧線挟持部 4a…挟持片 5…締付ボルト 6…挿入孔 7…把持部 7a〜7d…側端面 8…バネ部材 9,9a…溝部 10,10a…固定具 11,11a…ネジ 12…引下線 12a…芯線 13…トング 14…引下線挟持具 14a…挟持板 14b…レバー 15…ガイド孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧線を挟持可能に,一対の挟持片と締付部材によって形成される挟持部と、
この挟持部に,前記高圧線に対して平行に形成され,引下線の芯線が挿入される挿入孔と、
前記一対の挟持片の少なくとも一方の下方に延設される平板状の把持部と、を備え、
この把持部の,前記高圧線に対して垂直に形成される,少なくとも一方の側端部には、
前記挿入孔から導出される前記引下線の芯線を屈曲させて収容する溝部が形成され、
この溝部に収容された前記引下線の芯線を覆うように、前記把持部に取り付けられる固定具を備えたことを特徴とする引下線コネクタ。
【請求項2】
前記固定具は、前記把持部に対する位置が移動することで前記芯線を固定又は固定解除することを特徴とする請求項1記載の引下線コネクタ。
【請求項3】
前記溝部に代えて,前記引下線の芯線を固定する引下線挟持具を備え、
この引下線挟持具は前記把持部に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の引下線コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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