説明

引出し構造体

【課題】 引出し本体の幅方向のブレが防止され、スムーズな開閉動作が発揮される、コロレールを使用した引出し構造体を提供する。
【解決手段】 引出し構造体1は、引出し本体60と、収納体70と、引出し本体60を収納体70に対して引出し自在とする一対のコロレール10a、10bとから構成されている。コロレール10aは、引出し本体60に取付けられたインナーレール11aと、収納体70に取付けられたアウターレール21aとを備えている。インナーレール11a及びアウターレール21aは、コロ15a、25aの回動軸の軸方向が水平方向に対して45°傾斜するように配置されている。従って、引出し本体60に対して幅方向の力Fが作用した場合であっても、引出し本体60の幅方向への移動は常にコロレール10a、10bの一方によって阻止される。そのため、引出し本体60の幅方向のブレが防止され、スムーズな開閉動作となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は引出し構造体に関し、特に、コロレールによって引出し本体を収納体に対して引出し自在に収納する引出し構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図15は従来の引出し構造体の引出し状態を示す正面図であり、図16は図15で示したXVI−XVIラインの拡大断面図であり、図17は図16で示したXVII−XVIIラインの拡大端面図であり、図18は図16で示したXVIII−XVIIIラインの拡大端面図である。
【0003】
これらの図を参照して、キッチン用キャビネットとして使用される引出し構造体50は、上下に整列する引出し本体60、65と、引出し本体60、65が収納される収納体70と、引出し本体60と収納体70との間に取付けられ、引出し本体60を収納体70に対して引出し方向(図16の左右方向)に引出し自在とする一対のコロレール80a、80b(図示せず)とを備えている。尚、引出し本体65においても、引出し本体60と同様に収納体70に対して引出し自在に構成されている。
【0004】
引出し本体60は、引出し側(図16の左側)の前面に位置する矩形状の扉61と、引出し方向の断面が凹板形状を有し、その前面がネジ等によって扉61に接続されて収納側(図16の右側)に延びるトレイ62と、トレイ62の幅方向(図15の左右方向)の両端にネジ等によって取付けられた側板63a、63b(図示せず)とから構成されており、その上面が開放された箱状に形成されている。
【0005】
収納体70は、その上面に設置された幅方向にIH調理部分が並んだIH調理器75を有する天板部71と、底板72と、天板部71と底板72とを接続する側板73a、73bと、背板74(図示せず)とから構成されており、その前面が開放された箱状に形成されている。尚、天板部71に幅方向に延びるIH調理器75が設置されているため、図15で示す引出し構造体50の幅方向の長さBは、例えば1050mmの長さが必要となり、通常(600mmや900mm等)より長い寸法となる。
【0006】
コロレール80aは、特に図17及び図18で示すように、引出し本体60の側板63aの外面にネジ等で取付けられたインナーレール81と、収納体70の側板73aの内面にネジ等で取付けられたアウターレール85とから構成されている。
【0007】
インナーレール81は、引出し方向に延びると共に幅方向の断面が略逆L字板形状に形成されたレール部82と、レール部82の収納側の端部に回動軸83を介して回動自在に取付けられたコロ84とから構成されている。尚、逆L字板形状を有するレール部82における上部は後述する回動軸83の軸方向(図18で示す回動軸87上に記載の一点鎖線の方向)と平行に、中央部は回動軸83の軸方向と垂直になるように形成されている。
【0008】
アウターレール85は、インナーレール81に沿って引出し方向に延びると共に幅方向の断面が略逆コの字板形状に形成されたレール部86と、レール部86の引出し側の端部に回動軸87を介して回動自在に取付けられたコロ88とから構成されている。尚、逆コの字板形状に形成されたレール部86における上部及び下部は後述する回動軸87の軸方向(図17で示す回動軸83上に記載の一点鎖線の方向)と平行に、中央部は回動軸83の軸方向と垂直になるように形成されている。
【0009】
このようなインナーレール81及びアウターレール85の各々は、回動軸83、87の各々の軸方向が水平方向となるように設置されている。そして、図17で示すようにアウターレール85のコロ88の上部とインナーレール81のレール部82の上部とが当接すると共に、図18で示すようにインナーレール81のコロ84の上部とアウターレール85のレール部86の上部とが当接している。又、コロ84、88の各々とレール部82、86の各々との間には、コロ84、88の回動をスムーズにするために、幅方向において隙間51、52の各々が設けられている。
【0010】
又、引出し本体60が引出し状態の場合(図で示す状態)には、引出し本体60の重量によるコロ88を支点とするモーメントによって、インナーレール81の収納側の端部が持ち上がる。従って、上述した通りインナーレール81のコロ84の上部とアウターレール85のレール部86の上部とが当接する。一方、引出し本体60が収納状態の場合には、該モーメントが作用しないため、インナーレール81のコロ84の下部とアウターレール85のレール部86の下部とが当接することになる。
【0011】
インナーレール81とアウターレール85とはこのように係合しているため、インナーレール81がコロ84、88を介してアウターレール85に対して、各々の長手方向においてスライド自在となる。即ち、引出し本体60が収納体70に対して引出し自在となる。
【0012】
尚、コロレール80b(図示せず)は、コロレール80aと垂直面に対して対称位置に配置されており、インナーレール及びアウターレールの各々は、引出し本体60の側板63b(図示せず)及び収納体70の側板73bの各々に取付けられている。そして、アウターレール85に対してインナーレール81のコロ84の幅方向への移動を防止する、後述する係止部89(図示せず)が形成されている点を除いては、コロレール80bはコロレール80aと対称構造である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような従来の引出し構造体では、引出し本体を開閉する際に問題が生じる場合がある。以下に図を用いて説明する。
【0014】
図19は図15で示した引出し構造体の幅方向の端面を示す模式図であって、(1)は図17の端面位置に対応するものであり、(2)は図18の端面位置に対応するものである。
【0015】
(1)及び(2)を参照して、引出し構造体50においては、上述した通りコロレール80aのコロ84、88の各々の回動軸の軸方向は水平方向であり、コロ84、88の各々に当接するレール部82、86の各々の上部も水平方向に設置されている。又、コロ84、88の各々とレール部82、86の各々との間には、幅方向において隙間51、52の各々が設けられている。尚、コロレール80bはコロレール80aと垂直面に対して対称位置に配置されていると共に、(2)で示すアウターレール85bの係止部89を除いては対称構造となっている。
【0016】
尚、一方のアウターレール85bにのみ係止部89が形成されているため、アウターレール85bに対するインナーレール81bのセット位置が安定すると共に、該セット位置に対応して他方のアウターレール85aにインナーレール81aを係合させ易くなる。従って、インナーレール81a、81bの各々をアウターレール85a、85bの各々に対して容易に且つ確実に係合させることができる。
【0017】
ここで、引出し本体60を開閉する際に生じる問題について説明する。
【0018】
引出し本体60を開閉する際には、コロレール80a、80bの長手方向(図の貫通方向)に対して完全な平行では無く、引出し本体60を平面視において長手方向に対して若干斜め方向に引き出してしまう場合がある。すると、この引出す力の分力として、引出し本体60に対して図の一点鎖線矢印で示す幅方向の力Fが作用する。そして、引出し本体60に力Fが作用した場合、インナーレール81a、81bが隙間51、52の各々の分だけ図の左方向へと移動してしまう。一方、例えば引出し本体60に対して図の破線矢印で示す幅方向の力Fが作用した場合、インナーレール81a、81bが隙間51、52の各々の分だけ図の右方向へと移動してしまう。
【0019】
このようにインナーレール81a、81bが幅方向に移動することによって、例えばアウターレール85aのコロ88の平坦面とインナーレール81aのレール部82が接触してしまう。すると、この接触による衝撃等によって引出し本体60が幅方向にブレながら開閉してしまう。そのため、引出し本体60がスムーズに開閉し難くなると共に、場合によってはコロ84、88が脱輪してしまう虞があった。
【0020】
尚、従来例のように上部にIH調理器を有する場合等、引出し本体60が幅方向に長くなる程、引出し本体60をコロレール80a、80bの長手方向に対して平行に開閉し難くなる。そのため、引出し本体60が幅方向に長くなる程、開閉時における引出し本体60の幅方向のブレが大きくなり、スムーズな開閉が困難となり易かった。
【0021】
そして、このような開閉時における引出し本体60の幅方向のブレを防止するために、インナーレールの引出し方向以外の移動を防止する、所謂ベアリングレールを使用する方法がある。しかしながら、ベアリングレールは高価であるため、コスト的に好ましいものでは無かった。
【0022】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、引出し本体の幅方向のブレが防止され、スムーズな開閉動作が発揮される、コロレールを使用した引出し構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、引出し構造体であって、引出し本体と、引出し本体が収納される収納体と、引出し本体と収納体との間に取付けられ、引出し本体を収納体に対して引出し自在とすると共に各々が垂直面に対して対称位置に配置される一対のコロレールとを備え、コロレールの各々を構成する一対のコロの回動軸の軸方向が水平方向に対して傾斜するものである。
【0024】
このように構成すると、引出し本体の幅方向への移動は常にコロレールの一方によって阻止される。
【0025】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、回動軸の軸方向は、引出し本体の中央に向かって斜め上の方向に位置するものである。
【0026】
このように構成すると、インナーレールをアウターレールに対して上方からセットできる。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、回動軸の軸方向は、水平方向に対して5〜60°の範囲に位置するものである。
【0028】
このように構成すると、引出し本体の幅方向への移動阻止機能と支持とのバランスが向上する。
【0029】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、引出し本体を引出し方向に付勢する付勢手段を更に備えたものである。
【0030】
このように構成すると、付勢時にも引出し本体は横ブレしない。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、引出し本体の幅方向への移動は常にコロレールの一方によって阻止されるため、引出し本体の幅方向のブレが防止され、スムーズな開閉動作となる。
【0032】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、インナーレールをアウターレールに対して上方からセットできるため、引出し本体の収納体への取り付けが容易となる。
【0033】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、引出し本体の幅方向への移動阻止機能と支持とのバランスが向上するため、安定した引出し動作が実現する。
【0034】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、付勢時にも引出し本体は横ブレしないため、自動引出し動作が安定し、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の第1の実施の形態による引出し構造体の引出し状態を示す断面図である。
【図2】図1で示す引出し構造体の収納状態を示す断面図である。
【図3】図2で示したIII−IIIラインの拡大端面図である。
【図4】図2で示したIV−IVラインの拡大端面図である。
【図5】図1で示したインナーレールを斜め上方から見た側面図である。
【図6】図5で示したVI−VIラインから見た図である。
【図7】図5で示したVII−VIIラインの拡大断面図である。
【図8】図5で示したVIII−VIIIラインの拡大断面図である。
【図9】図1で示したアウターレールを斜め上方から見た側面図である。
【図10】図9で示したX−Xラインから見た図である。
【図11】図9で示したXI−XIラインの拡大断面図である。
【図12】図9で示したXII−XIIラインの拡大断面図である。
【図13】図2で示した引出し構造体の幅方向の端面を示す模式図である。
【図14】この発明の第2の実施の形態による引出し構造体の幅方向の端面を示す模式図である。
【図15】従来の引出し構造体の引出し状態を示す正面図である。
【図16】図15で示したXVI−XVIラインの拡大断面図である。
【図17】図16で示したXVII−XVIIラインの拡大端面図である。
【図18】図16で示したXVIII−XVIIIラインの拡大端面図である。
【図19】図15で示した引出し構造体の幅方向の端面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1はこの発明の第1の実施の形態による引出し構造体の引出し状態を示す断面図であって、従来例の図16に対応するものであり、図2は図1で示す引出し構造体の収納状態を示す断面図であり、図3は図1で示したIII−IIIラインの拡大端面図であり、図4は図1で示したIV−IVラインの拡大端面図である。
【0037】
尚、説明に当たっては、基本的には図15で示した従来の引出し構造体と同一であるため、その相違点を中心に説明する。
【0038】
これらの図を参照して、引出し構造体1にあっては、引出し本体60の側板63a、63b(図示せず)の形状と、コロレール10a、10b(図示せず)の形状及び配置状態が異なっている。即ち、図3で示すように、引出し本体60の側板63aの外方下端部には、その切断面が水平方向に対して45°傾斜する切欠き部67が形成されている。そして、この切欠き部67にインナーレール11がネジ等で取付けられていると共に、収納体70の側板73aの内面にアウターレール21がネジ等で取付けられている。尚、幅方向においてコロレール10aの反対側に位置するコロレール10bは、コロレール10aと垂直面に対して対称位置に配置されていると共に、垂直面に対して対称構造に形成されている。
【0039】
ここで、まずインナーレール11の詳細な形状について説明する。
【0040】
図5は図1で示したインナーレールを斜め上方から見た側面図であり、図6は図5で示したVI−VIラインから見た図であり、図7は図5で示したVII−VIIラインの拡大断面図であり、図8は図5で示したVIII−VIIIラインの拡大断面図である。
【0041】
これらの図を参照して、インナーレール11は、略逆L字板型の断面形状に形成され引出し方向(図5の左右方向)に延びるレール部12と、レール部12の収納側(図5の右側)に回動軸14を介して取付けられたコロ15とから構成されている。尚、逆L字板形状を有するレール部12における上部は回動軸14の軸方向(図8で示す回動軸14上に記載の一点鎖線の方向)と平行に、中央部は回動軸14の軸方向と垂直になるように形成されている。又、レール部12の上部における長手方向の収納側寄りの位置には、側面視において三角形状の突起部17が形成されている。更に、レール部12の収納側の端部には、後述するプッシュラッチを押圧するための押圧部18が形成されている。突起部17及び押圧部18の効果については後述する。
【0042】
次に、アウターレール21の詳細な形状について説明する。
【0043】
図9は図1で示したアウターレールを斜め上方から見た側面図であり、図10は図9で示したX−Xラインから見た図であり、図11は図9で示したXI−XIラインの拡大断面図であり、図12は図9で示したXII−XIIラインの拡大断面図である。
【0044】
これらの図を参照して、アウターレール21は、その一部が外方に突出する逆コの字板型の断面形状に形成され、引出し方向(図9の左右方向)に延びるレール部22と、レール部22の引出し側(図9の左側)に回動軸24を介して取付けられたコロ25とから構成されている。尚、レール部22における上部及び下部は回動軸24の軸方向(図11で示す回動軸24上に記載の一点鎖線の方向)と平行に、中央部は後述する取付部分27を除いて回動軸24の軸方向と垂直になるように形成されている。又、図11で示すように、レール部22における収納体の側板への取付部分27の平坦面を含む仮想平面は、回動軸24の軸方向に対する角度θが45°となるように形成されている。
【0045】
ここで、再度図1〜図4を参照して、上述した通り、インナーレール11は引出し本体60の側板63aの切欠き部67に取付けられている。そして、切欠き部67の切断面は水平方向に対して45°傾斜しているため、インナーレール11のレール部12の上部と回動軸14の軸方向とが45°傾斜した状態となる。具体的には、回動軸14の軸方向は、引出し本体60の中央に向かって斜め上の方向に向かうように、水平方向に対して45°傾斜した状態となっている。
【0046】
アウターレール21は、そのレール部22の取付部分27が収納体70の側板73aの内面に取付けられている。上述した通り、レール部22の取付部分27は回動軸24の軸方向に対して45°傾斜するように形成されている。従って、レール部22の取付部分27を側板73aに取付けることによって、アウターレール21のレール部22の上部及び下部と回動軸24の軸方向とが水平方向に対して45°傾斜した状態となる。具体的には、インナーレール11の回動軸14と同様、回動軸24の軸方向は、引出し本体の中央に向かって斜め上の方向に向かうように、水平方向に対して45°傾斜した状態となっている。
【0047】
そして、引出し本体60が引出し状態の場合には、図3で示すようにアウターレール21のコロ25の上部とインナーレール11のレール部12の上部とが当接する。更に、図4で示すようにインナーレール11のコロ15の上部とアウターレール21のレール部22の上部とが当接する。又、回動軸14、24の軸方向におけるコロ15、25の各々とレール部12、22の各々との間には、コロ15、25の回動をスムーズにするために、隙間19、29の各々が形成されるように設定されている。尚、引出し本体60が収納状態の場合(図2で示す状態)には、引出し本体60の重量によるモーメントが作用しないため、図4における端面位置においては、インナーレール11のコロ15の下部とアウターレール21のレール部22の下部とが当接することになる。
【0048】
このように設置されると共に係合するインナーレール11とアウターレール21とからなるコロレール10a、10bによる効果については後述する。
【0049】
又、この実施の形態による引出し構造体1においては、コロレール10aのインナーレール11の収納側に、付勢手段であるプッシュラッチ55が設置されている。プッシュラッチ55は、図2で示す収納状態においては上述したインナーレール11の押圧部によって押圧されることによって、付勢力を蓄えた状態となっている。そして、引出し本体60を収納状態から更に収納側に移動させると、図示しないストッパ機構が解除されてプッシュラッチ55の付勢力が解放され、インナーレール11を介して引出し本体60が引出し方向に付勢される。従って、引出し本体60は自動的に図2で示す引出し状態に移動する。
【0050】
そして、図1で示すように、引出し状態から更に引出し側へと引出し本体60が移動しようとした場合、上述したインナーレール11の突起部17がアウターレール21のコロ25の上部に当接する。従って、突起部17によって引出し本体60の過度の引出しが防止される。
【0051】
次に、コロレール10a、10bによる効果について説明する。
【0052】
図13は図2で示した引出し構造体の幅方向の端面を示す模式図であって、(1)は図3の端面位置に対応するものであり、(2)は図4の端面位置に対応するものであり、(3)は図4の端面位置に対応すると共に、引出し構造体が収納状態の場合を示すものである。
【0053】
図を参照して、まず、インナーレール11a、11bの各々とアウターレール21a、21bの各々との係合状態について説明する。インナーレール11a、11bの各々とアウターレール21a、21bの各々との当接点においては、(1)〜(3)の端面位置の各々において、左右のコロレール10a、10bに同一の重量W〜Wの各々が作用する。従って、インナーレール11a、11bの各々とアウターレール21a、21bの各々とは傾斜した状態で当接しているものの、コロレール10a、10bに同一の重量が作用しているため、これらが均衡状態となる。そのため、インナーレール11a、11bの各々がアウターレール21a、21bの各々に安定して支持される。
【0054】
次に、上述した形状及び配置状態のコロレール10a、10bを有する引出し構造体1において、引出し本体60の開閉に伴い、引出し本体60に対して図の一点鎖線矢印で示す幅方向の力Fが作用した場合について説明する。
【0055】
引出し本体60に対して力Fが作用すると、(1)の端面位置においては、コロレール10bのインナーレール11bの左側への移動に対して、アウターレール21bのコロ25bがストッパーの役割を果たす。即ち、インナーレール11bのレール部12bの上部とアウターレール21bのコロ25bの上部とが傾斜した状態で当接しているため、インナーレール11bが左側へ移動しようとすると、コロ25bとの当接点において力Fと逆向きの反作用力Fが発生する。従って、インナーレール11bの左側への移動が阻止される。尚、図の左側に位置するインナーレール11aにおいても、引出し本体60を介してインナーレール11bと一体的に接続されているため、その左側への移動が阻止される。
【0056】
一方、(2)の端面位置においては、インナーレール11aのコロ15aが左側へ移動しようとすると、アウターレール21aのレール部22aの上部との当接点において反作用力Fが発生し、インナーレール11aの左側への移動が阻止される。更に、(3)の端面位置においては、インナーレール11bのコロ15bが左側へ移動しようとすると、アウターレール21bのレール部22bの下部との当接点において反作用力Fが発生し、インナーレール11bの左側への移動が阻止される。
【0057】
尚、上述した通り、コロレール10a、10bは垂直面に対して対称位置に配置されているため、引出し本体60に対して力Fと逆向きの幅方向の力が作用した場合であっても、力Fの場合と同様に、引出し本体60の右側への移動が阻止される。
【0058】
このように、この実施の形態による引出し構造体1においては、収納状態又は引出し状態を問わず、引出し本体60の幅方向への移動は、いずれに移動しても常にコロレール10a、10bの一方によって阻止される。従って、開閉時における引出し本体60はセットした状態からの幅方向のブレが完全に防止され、スムーズな開閉動作となる。
【0059】
又、上述した通り、コロ15a、15b、25a、25bの各々の回動軸の軸方向は、引出し本体60の中央に向かって斜め上の方向に向かうように位置している。そのため、インナーレール11a、11bの幅方向の間隔が上方へ行くに従って拡大する。従って、インナーレール11a、11bの各々をアウターレール21a、21bの各々に対して上方からセットすることができる。そのため、引出し本体60の収納体70への取り付けが容易となる。
【0060】
更に、上述した通り、コロ15a、15b、25a、25bの各々の回動軸の軸方向は、水平方向に対して45°傾斜している。従って、上述した引出し本体60の幅方向への移動阻止機能と、アウターレール21a、21bの各々によるインナーレール11a、11bの各々の支持状態とのバランスが向上する。そのため、安定した引出し動作が実現する。
【0061】
更に、上述した通り、引出し構造体1には付勢手段であるプッシュラッチが設置されているため、プッシュラッチによる引出し方向への付勢時にも引出し本体60は横ブレしない。従って、引出し本体60の自動引出し動作が安定し、使い勝手が向上する。
【0062】
図14はこの発明の第2の実施の形態による引出し構造体の幅方向の端面を示す模式図であって、(1)は図13の(1)に対応するものであり、(2)は図13の(2)に対応するものである。
【0063】
尚、説明に当たっては、基本的には図1で示した第1の実施の形態による引出し構造体と同一であるため、その相違点を中心に説明する。
【0064】
これらの図を参照して、この実施の形態による引出し構造体2にあっては、引出し本体60の側板63a、63bの形状と、コロレール30a、30bの形状及び配置状態が異なっている。即ち、引出し本体60の側板63aの外方下端部には、その面が第1の実施の形態による切欠き部とは対称的に水平方向に対して45°傾斜する固定部68が形成されている。そして、この固定部68にインナーレール31がネジ等で取付けられていると共に、収納体70の側板73aの内面にアウターレール41がネジ等で取付けられている。尚、幅方向においてコロレール30aの反対側に位置するコロレール30bは、コロレール30aと垂直面に対して対称位置に配置されていると共に、対称構造となっている。
【0065】
インナーレール31は、第1の実施の形態によるインナーレールと同一のものであり、そのレール部32が引出し本体60の側板63aの固定部68に取付けられている。従って、コロ35の回動軸の軸方向は、引出し本体60の中央に向かって斜め下の方向に向かうように、水平方向に対して45°傾斜した状態となる。
【0066】
アウターレール41は、基本的には第1の実施の形態によるアウターレールと同一であるが、そのレール部42の取付部分47の傾斜状態が異なっている。即ち、取付部分47は、第1の実施の形態によるアウターレールとは対称的に、コロ45の回動軸の軸方向に対して45°傾斜するように形成されている。
【0067】
そして、このような取付部分47を垂直面である収納体70の側板73aに取付けることによって、コロ45の回動軸の軸方向は、引出し本体60の中央に向かって斜め下の方向に向かうように、水平方向に対して45°傾斜した状態となる。
【0068】
このようなコロレール30a、30bを有する引出し構造体2にあっては、引出し本体60に対して幅方向の力Fが作用した場合、コロレール30a、30bの各々の当接点において反作用力Fが発生する。即ち、引出し本体60の幅方向への移動は常にコロレール30a、30bの一方によって阻止される。従って、第1の実施の形態と同様、引出し本体60の幅方向のブレが防止され、スムーズな開閉動作となる。
【0069】
更に、上述した通り、コロ35、45の各々の回動軸の軸方向は、水平方向に対して45°傾斜している。従って、第1の実施の形態と同様、引出し本体60の幅方向への移動阻止機能と支持とのバランスが向上するため、安定した引出し動作が実現する。
【0070】
尚、上記の各実施の形態では、引出し構造体はキッチン用キャビネットとして使用されているが、例えば一般的な家具や複写機の用紙入れ等、他の引出し用途に対しても同様に適用できる。
【0071】
又、上記の各実施の形態では、特定形状の引出し本体及び収納体を備えているが、各々の機能が発揮できるものであれば、これらは他の形状であっても良い。
【0072】
更に、上記の各実施の形態では、一対の特定形状のコロレールを備えているが、引出し本体と収納体との間に取付けられ、引出し本体を収納体に対して引出し自在とすると共に各々が垂直面に対して対称位置に配置され、且つコロレールの一対のコロの回動軸の軸方向が水平方向に対して傾斜していれば、一対のコロレールは他の形状であっても良く、各々は完全な対称構造で無くても良い。又は、従来のコロレールを傾斜させて使用しても良い。その場合、従来のコロレールのインナーレール及びアウターレールの各々を、例えば幅方向の断面が三角形状の接続部材を介して側板の各々に取付けることによって、インナーレール及びアウターレールを傾斜させれば良い。
【0073】
更に、上記の各実施の形態では、一対のコロレールは引出し本体の側板の各々と収納体の側板の各々との間に取付けられているが、一対のコロレールは例えば引出し本体の底部と収納体の底板との間に取付けられていても良い。そして、本明細書において使用する、一対のコロレールが取付けられる場所である「引出し本体と収納体との間」とは、上記のような概念を含むものである。
【0074】
更に、上記の各実施の形態では、回動軸の軸方向が水平方向に対して45°傾斜しているが、引出し本体の幅方向への移動阻止機能と支持とのバランスを向上させるため、回動軸の軸方向の傾斜角度は、引出し本体に向かう方向を問わず、水平方向に対して5〜60°の範囲に位置するのが好ましい。又は、回動軸の軸方向は水平方向に対して傾斜していれば、該範囲を超える角度であっても良い。
【0075】
更に、上記の各実施の形態では、引出し本体への付勢手段としてプッシュラッチを備えているが、引出し本体を引き出し方向に付勢するものであれば、付勢手段は他のものであっても良い。又は、付勢手段は引込み方向に働くものであっても良く、あるいは付勢手段は無くても良い。
【符号の説明】
【0076】
1、2…引出し構造体
10、30…コロレール
14、24…回動軸
15、25、35、45…コロ
55…プッシュラッチ
60…引出し本体
70…収納体
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出し構造体であって、
引出し本体と、
前記引出し本体が収納される収納体と、
前記引出し本体と前記収納体との間に取付けられ、前記引出し本体を前記収納体に対して引出し自在とすると共に各々が垂直面に対して対称位置に配置される一対のコロレールとを備え、
前記コロレールの各々を構成する一対のコロの回動軸の軸方向が水平方向に対して傾斜する、引出し構造体。
【請求項2】
前記回動軸の軸方向は、前記引出し本体の中央に向かって斜め上の方向に位置する、請求項1記載の引出し構造体。
【請求項3】
前記回動軸の軸方向は、水平方向に対して5〜60°の範囲に位置する、請求項1又は請求項2記載の引出し構造体。
【請求項4】
前記引出し本体を引出し方向に付勢する付勢手段を更に備えた、請求項1から請求項3のいずれかに記載の引出し構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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