説明

引出装置及び媒体取引装置

【課題】引出の露出時における作業性を高め得るようにする。
【解決手段】現金自動預払機1の紙幣処理部11は、紙幣貯蔵部15に左右方向の全長L1を伸縮させ得る位置決め部23を設け、紙幣処理部筐体21に斜面31Aを有する案内部24を設けた。紙幣処理部11は、紙幣処理部筐体21の外部に紙幣貯蔵部15を露出させた露出状態において位置決め部23の全長L1を伸長させ、当該紙幣貯蔵部15に対し後方向へ十分な力が加えられず当該位置決め部23が間隔D1まで短縮されなければ、露出状態に止めるよう抑制する。一方紙幣処理部11は、紙幣貯蔵部15に十分な力が加えられ位置決め部23が間隔D1にまで短縮されると、当該紙幣貯蔵部15を後方向へ移動させ、紙幣処理部筐体21内へ収納させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出装置及び媒体取引装置に関し、例えば紙幣等の媒体を投入して所望の取引を行う現金自動預払機(ATM)等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するようになされている。
【0003】
現金自動預払機としては、例えば顧客との間で紙幣の授受を行う紙幣入出金口と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、投入された紙幣を一時的に保留する一時保留部と、金種ごとに紙幣を格納する金種カセットとを有するものが提案されている。
【0004】
この現金自動預払機は、入金取引において、顧客が紙幣入出金口に紙幣を投入すると、投入された紙幣を鑑別部で鑑別し、正常紙幣と鑑別された紙幣を一時保留部で保留する一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣を紙幣入出金口へ戻して顧客に返却する。続いて現金自動預払機は、顧客により入金金額が確定されると、一時保留部に保留した紙幣を鑑別部により金種を再鑑別し、鑑別された金種に応じてカセットへ収納する。
【0005】
ところで現金自動預払機は、上述した各部が強固な筐体内に取り付けられており、内部に収納している紙幣等を保護するようになされている。その一方で現金自動預払機は、カセットに出金用の紙幣を補充する作業や各部の保守作業等が行われる際には、金融機関の職員や保守作業者等に内部へアクセスさせる必要がある。このとき現金自動預払機では、できるだけ各部を筐体の外へ露出させることにより、作業性を高めることが望ましい。
【0006】
そこで現金自動預払機のなかには、筐体の前面や背面を開閉可能な扉により構成すると共に、当該扉を開いた状態で上述した各部やカセット等を所定のスライド機構等により外部へ引き出し得るように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平6−31571号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで上述した現金自動預払機では、一般に、上述したように外部へ引き出し得る各部やカセット等(以下これを引出と呼ぶ)を筐体の外部へ露出させる作業や内部へ収納する作業を省力化するべく、スライド機構にローラ等を組み込むことにより、筐体に対し引出を円滑に移動させ得るようになされている。
【0009】
しかしながら現金自動預払機では、例えば引出が外部に露出された状態で作業が行われている際、不用意に触れられたことにより当該引出を作業者の意に反して収納方向へ移動させてしまう可能性がある。
【0010】
このとき現金自動預払機では、作業対象としての引出が意図せず移動することにより作業性が悪化する恐れや、例えば一時的に引出からはみ出すように開いていた部品等を筐体に衝突させて破損してしまう恐れがあり、作業性や保守性等の点において問題があった。
【0011】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、引出の露出時における作業性を高め得る引出装置及び媒体取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため本発明の引出装置においては、所定の空間を内部に具える筐体と、筐体の側面に設けられ空間と外部とを連通させる連通孔と、筐体の空間に収納されたときに所定の処理を実行し、筐体の外部に所定の露出部分を露出させたときに処理のための所定の作業がなされる引出と、筐体の連通孔を介して引出を当該筐体の内部と外部との間で移動させると共に、引出の少なくとも露出部分を筐体の外部に露出させた状態に止めるよう抑制する移動抑制部とを設けるようにした。
【0013】
これにより、引出を筐体の内外へ移動させ得ると共に、引出の少なくとも露出部分を筐体の外部に露出させた状態に止めて作業させることができる。
【0014】
また本発明の媒体取引装置においては、所定の空間を内部に具える筐体と、筐体に設けられ、紙葉状の媒体に関する取引を受け付ける受付部と、筐体に設けられ、受付部により受け付けた媒体を搬送する搬送部と、筐体の側面に設けられ空間と外部とを連通させる連通孔と、筐体の空間に収納されたときに所定の処理を実行し、筐体の外部に所定の露出部分を露出させたときに処理のための所定の作業がなされる引出と、筐体の連通孔を介して引出を当該筐体の内部と外部との間で移動させると共に、引出の少なくとも露出部分を筐体の外部に露出させた状態に止めるよう抑制する移動抑制部とを設けるようにした。
【0015】
これにより、引出を筐体の内外へ移動させ得ると共に、引出の少なくとも露出部分を筐体の外部に露出させた状態に止めて作業させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、引出を筐体の内外へ移動させ得ると共に、引出の少なくとも露出部分を筐体の外部に露出させた状態に止めて作業させることができる。かくして本発明は、引出の露出時における作業性を高め得る引出装置及び媒体取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】現金自動預払機の外観構成を示す略線的斜視図である。
【図2】現金自動預払機の内部構成を示す略線図である。
【図3】紙幣処理部の収納状態及び露出状態を示す略線図である。
【図4】第1の実施の形態による紙幣貯蔵部の露出状態を示す略線図である。
【図5】位置決め部及び案内部の構成を示す略線図である。
【図6】位置決め部の構成を示す略線図である。
【図7】第2の実施の形態による紙幣処理部の構成を示す略線図である。
【図8】第2の実施の形態による紙幣貯蔵部の構成を示す略線図である。
【図9】第3の実施の形態による紙幣処理部の構成を示す略線図である。
【図10】抑制部の構成を示す略線図である。
【図11】第4の実施の形態による紙幣処理部の構成を示す略線図である。
【図12】他の実施の形態による案内部の構成(1)を示す略線図である。
【図13】他の実施の形態による案内部の構成(2)を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0019】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、顧客との間で現金に関する取引を行うようになされている。
【0020】
筐体2は、その前面側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面の上部から上面に渡る箇所に、接客部3が設けられている。
【0021】
接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、硬貨入出金口4、紙幣入出金口5、通帳挿入口6、カード挿入口7及び表示操作部8が設けられている。
【0022】
硬貨入出金口4及び紙幣入出金口5は、顧客が入金する硬貨及び紙幣がそれぞれ投入されると共に、顧客へ出金する硬貨及び紙幣がそれぞれ排出される部分である。また硬貨入出金口4及び紙幣入出金口5は、それぞれに設けられたシャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙で構成されている。
【0023】
通帳挿入口6は、取引で使用される通帳が挿入され、取引が終了すると通帳が排出される部分である。この通帳挿入口6の奥部には、取引内容等を通帳に記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。
【0024】
カード挿入口7は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード挿入口7の奥部には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0025】
表示操作部8は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。
【0026】
因みに筐体2は、前面を覆う前扉2A及び後面を覆う後扉(図示せず)がそれぞれ開閉可能に構成されている。一方筐体2は、当該前扉2Aに対峙した顧客から見て左及び右となる左側及び右側、並びに上側及び下側といった各側面がそれぞれ強固な隔壁により開閉不可能に構成されている。
【0027】
すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、前扉2A等を閉塞することにより、内部に保有している紙幣や硬貨等を保護する。一方筐体2は、作業者等が保守作業を行う保守作業時には、必要に応じて前扉2A等を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得る。
【0028】
図2は、図1の現金自動預払機1を矢印A方向から見た側面図であり、当該現金自動預払機1の内部構成のうち主に紙幣の処理に関する部分を示している。同図に示したように、現金自動預払機1の内部には、紙幣に関する種々の処理を行う機構が紙幣処理部11内にまとめて設けられている。
【0029】
この紙幣処理部11内には、上側に接客部3の一部である紙幣入出金口5、紙幣の金種や真偽を判定する鑑別部13及び入金された紙幣を一時的に保留する一時保留部14等が設けられており、下側に紙幣を貯蔵する紙幣貯蔵部15等が設けられている。
【0030】
紙幣貯蔵部15には、紙幣を金種別に収納する紙幣収納庫16及び損傷等により流通させるべきでない紙幣を収納するリジェクト庫17がそれぞれ着脱自在に設けられている。
【0031】
また現金自動預払機1の内部には、図中太線で示す搬送路に沿って各部の間で紙幣を搬送する搬送部12が設けられている。搬送部12は、紙幣の短辺方向を進行方向として搬送するようになされている。
【0032】
この現金自動預払機1は、制御部10により全体を統括制御するようになされている。制御部10は、例えば顧客が紙幣を入金する入金取引を行う場合、表示操作部8(図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、紙幣入出金口5のシャッタを開いて紙幣を投入させる。
【0033】
続いて制御部10は、投入された紙幣を搬送部12を介して鑑別部13へ搬送して鑑別させ、正常紙幣と鑑別された紙幣を一時保留部14へ搬送して一時的に保留する一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣を紙幣入出金口5へ搬送して顧客に返却する。
【0034】
その後制御部10は、表示操作部8を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部14に保留している紙幣を再び鑑別部13へ搬送して金種を再鑑別させた後、さらに紙幣貯蔵部15へ搬送する。
【0035】
紙幣貯蔵部15は、鑑別部13により損傷していないと鑑別された紙幣を、その金種に対応した各紙幣収納庫16へ搬送し、厚さ方向に重ねて集積するように収納させる。また紙幣貯蔵部15は、鑑別部13により損傷していると鑑別されたた紙幣をリジェクト庫17へ搬送し、厚さ方向に重ねて集積するように収納させる。
【0036】
[1−2.紙幣処理部の構成]
ところで筐体2は、内部に大きな空間を形成しており、当該空間内に紙幣処理部11を収納している。紙幣処理部11は、図3(A)及び(B)に示すように、スライドレール18を介して筐体2に取り付けられている。
【0037】
スライドレール18は、前後方向に延長されたレール状の部品や複数のローラ等(図示せず)の組み合わせにより構成されており、筐体2に対し紙幣処理部11を前方向又は後方向へ直線的に且つ円滑に移動させるようになされている。
【0038】
またスライドレール18は、筐体2に対する紙幣処理部11の移動範囲を規定しており、図3(A)及び(B)に示した位置の間で当該紙幣処理部11を移動させるようになされている。
【0039】
現金自動預払機1は、顧客との間で取引処理を行う場合、図3(A)に示したように紙幣処理部11を筐体2の内部に収納し、さらに前扉2A(図2)を閉塞することにより、当該紙幣処理部11内の各部や紙幣等を保護する。以下これを紙幣処理部11の収納状態と呼ぶ。
【0040】
一方現金自動預払機1は、保守作業者等により保守作業が行われる場合、前扉2A(図2)を開放し、さらに図3(B)に示したように紙幣処理部11を前方向へ移動させて、当該紙幣処理部11のほぼ全体を筐体2の外部に露出させた状態とする。以下これを紙幣処理部11の露出状態と呼ぶ。
【0041】
紙幣処理部11は、図3(B)に示したように、直方体状に形成された紙幣処理部筐体21の内部に、紙幣の処理に関する種々の機構が組み込まれている。当該紙幣処理部筐体21の上側部分には、上述した紙幣入出金口5、搬送部12、鑑別部13及び一時保留部14(図2)等が組み込まれている。
【0042】
紙幣処理部11は、前方向に移動されて露出状態(図3(B))となることにより、保守作業員に対し、紙幣処理部筐体21の上側部分に組み込まれた各部の保守作業を効率良く行わせることができる。
【0043】
また紙幣処理部筐体21の下側部分には、空間21Aが形成されると共にその前側に当該空間21Aと外部とを連通させる連通孔21Bが形成されており、当該空間21A内においてスライドレール22を介して紙幣貯蔵部15が取り付けられている。
【0044】
スライドレール22は、スライドレール18と同様、前後方向に延長されたレール状の部品や複数のローラ等(図示せず)の組み合わせにより構成されており、紙幣処理部11に対し紙幣貯蔵部15を前方向又は後方向へ直線的に且つ円滑に移動させるようになされている。
【0045】
因みにスライドレール22は、紙幣処理部11に対する紙幣貯蔵部15の上下方向や左右方向への動きを規制しており、いわゆる「がたつき」を殆ど生じないようになされている。
【0046】
紙幣処理部11は、現金自動預払機1において顧客との間で取引処理が行われる場合や紙幣貯蔵部15の保守作業が行われない場合、図3(B)に示したように当該紙幣貯蔵部15を内部に収納する。以下これを紙幣貯蔵部15の収納状態と呼ぶ。
【0047】
一方紙幣処理部11は、保守作業者や金融機関の係員等により紙幣貯蔵部15の保守作業や紙幣の充填作業等が行われる場合、図4(A)及び(B)に示すように、当該紙幣貯蔵部15を前方向へ移動させ、当該紙幣貯蔵部15のほぼ全体を紙幣処理部筐体21の連通孔21Bから外部に露出させた状態とする。以下これを紙幣貯蔵部15の露出状態と呼ぶ。
【0048】
紙幣貯蔵部15には、互いにほぼ同等の大きさでなる3個の紙幣収納庫16が前後方向に並ぶように設けられている。この紙幣収納庫16は、紙幣貯蔵部15が露出状態である場合、それぞれ独立して当該紙幣貯蔵部15から上方向へ引き上げられることにより取り外すことができ、またそれぞれ上側から当該紙幣貯蔵部15内へ降ろされることにより装着できるようになされている。
【0049】
ところで紙幣貯蔵部15における左右側面の後側上部には、位置決め部23A及び23B(以下両者をまとめて位置決め部23と呼ぶ)がそれぞれ取り付けられている。また紙幣処理部筐体21における左右の内側面のうち当該位置決め部23A及び23Bと対向する箇所には、それぞれ案内部24A及び24B(以下両者をまとめて案内部24と呼ぶ)が形成されている。
【0050】
図4(A)の一部を拡大した図5(A)に示すように、当接部としての位置決め部23Aは、紙幣貯蔵部15の左側面に伸縮支柱25の一端(すなわち右端)を介して取り付けられている。伸縮支柱25は、左右方向に細長い円柱状に構成されており、図示しない伸縮機構により左右方向の全長を所定範囲内で伸縮させ得るようになされている。
【0051】
伸縮支柱25における紙幣貯蔵部15と反対側の他端(すなわち左端)には、ローラ支持部26が取り付けられている。ローラ支持部26は、図6に示すように、伸縮支柱25と接続する平板状の基部26Aにおける上下に、ほぼ水平な半円板状のローラ支持板26B及び26Cがそれぞれ左方向へ向けて延設されている。
【0052】
ローラ支持板25B及び25Cの間には、細い円柱状の軸27がその中心軸を上下に向けるように挟み込まれている。軸27は、厚い円板状のディテントローラ28を上下に貫通しており、当該ディテントローラ28を自在に回転させ得るようになされている。
【0053】
また位置決め部23Aにおける紙幣貯蔵部15の側面とローラ支持部26の基部26Aとの間には、伸縮支柱25の周囲を取り巻くように、コイル状のディテントスプリング29が挟まれている。このディテントスプリング29は、自然長から縮められた状態で位置決め部23Aに組み込まれている。
【0054】
かかる構成により位置決め部23Aは、何ら外力が加えられない場合、ディテントスプリング29の復元力が作用することにより、伸縮支柱25が最も伸長した状態とする。これに伴いディテントローラ28は、最も左方向へ移動した状態となる。
【0055】
一方位置決め部23Aは、ディテントローラ28に対し右方向へ押し付ける外力が加えられると、軸27及びローラ支持部26を介して、当該外力が伸縮支柱25及びディテントスプリング29へ伝えられる。
【0056】
この外力がディテントスプリング29の復元力を上回ると、位置決め部23Aは、伸縮支柱25及びディテントスプリング29をそれぞれ収縮させ、結果的にローラ支持部26及び軸27と共にディテントローラ28を右方向へ移動させる。
【0057】
このとき位置決め部23Aは、ディテントスプリング29の復元力が作用することにより、ローラ支持部26及び軸27と共にディテントローラ28を左方向へ押し付ける力を作用させる。
【0058】
このように位置決め部23Aは、ディテントローラ28に加えられる右方向への外力に応じて、全長L1を所定の最小長と最大長との間で変化させるようになされている。
【0059】
一方、案内部24A(図4)は、全体として前後方向に長い直方体状に構成されており、紙幣貯蔵部15の左側面と対向する対向面31が全般的に平坦に構成されている。
【0060】
対向面31は、紙幣処理部筐体21内に紙幣貯蔵部15が収納されたときに、当該紙幣貯蔵部15からの左右方向の間隔D1が位置決め部23Aの最大長よりも短くなるような位置に設けられている。
【0061】
また対向面31における前側の端部には、前側へ進むにつれて徐々に左側へ寄るような、すなわち紙幣貯蔵部15から徐々に離隔していくような斜面31Aが形成されている。
【0062】
このため位置決め部23Aは、紙幣処理部筐体21内に紙幣貯蔵部15が収納されたときに、伸縮支柱25及びディテントスプリング29を自然状態からある程度収縮させて全長L1を間隔D1まで短縮し、ディテントローラ28を案内部24Aの対向面31に当接させた状態となる。
【0063】
一方位置決め部23Aは、紙幣貯蔵部15のほぼ全部が紙幣処理部筐体21の外部に露出された露出状態(図5(A))において、対向面31よりも遠方に位置する斜面31Aに対向するため、伸縮支柱25及びディテントスプリング29を伸長させて全長L1を最大長とする。
【0064】
このとき位置決め部23Aは、ディテントローラ28の最も左側に位置する先端部分が案内部24Aの対向面31よりも左側へ突出した状態となっている。また位置決め部23Aは、伸縮支柱25及びディテントスプリング29を収縮させるような外力が加わらない限り、全長L1を短縮させることはない。
【0065】
このため位置決め部23Aは、紙幣貯蔵部15を紙幣処理部筐体21の外部に露出させた露出状態(図5(A))に維持することになる。
【0066】
一方位置決め部23Aは、紙幣貯蔵部15に対し後方向へ向けた外力が加えられると、当該紙幣貯蔵部15と共に後方向へ移動しようとし、案内部24Aの対向面31に形成された斜面31Aにディテントローラ28を当接させる。
【0067】
斜面31Aは、後方へ進むにつれて紙幣貯蔵部15に近接していくよう傾斜している。このため位置決め部23Aは、当該斜面31Aに当接するディテントローラ28を介して右方向へ向かう力、すなわち全長L1を短縮させようとする外力が加えられることになる。
【0068】
このとき紙幣貯蔵部15を後方向へ押し込む外力が比較的弱く、位置決め部23Aの全長L1を間隔D1(図6)にまで短縮させることができない場合、当該位置決め部23Aは、ディテントローラ28を斜面31Aに当接させたままとし、当該紙幣貯蔵部15を紙幣処理部筐体21の内部へ収納させずに露出状態を維持するよう抑制する。
【0069】
一方、紙幣貯蔵部15を後方向へ押し込む外力が比較的強く、位置決め部23Aの全長L1を間隔D1(図6)にまで短縮させることができた場合、当該位置決め部23Aは、ディテントローラ28の当接箇所を斜面31Aから対向面31の平坦な部分へ移動させ、当該紙幣貯蔵部15を紙幣処理部筐体21の内部へ収納させていく(図5(B))。
【0070】
このように位置決め部23Aは、紙幣貯蔵部15に比較的強い外力が加えられ、斜面31Aを利用して全長L1が間隔D1にまで短縮されると、当該紙幣貯蔵部15を後方向へ移動させること、すなわち紙幣処理部筐体21内への収納を可能とする。
【0071】
ところで案内部24Aの対向面31には、前後方向にほぼ3等分するような2箇所に、周囲よりも僅かに左方向へ窪んだ凹部31B及び31Cがそれぞれ形成されている。
【0072】
このため位置決め部23Aは、紙幣貯蔵部15が紙幣処理部筐体21の内部へ収納されていく途中で当該凹部31Bにおいて僅かに伸長し、当該凹部31Bに当接した位置に当該紙幣貯蔵部15を止めようとする。このとき紙幣貯蔵部15は、3個の紙幣収納庫16のうち、前側の2個を紙幣処理部筐体21の外部に露出させて着脱させ得る状態となる。
【0073】
しかしながら凹部31Bは、対向面31からの深さがごく僅かに抑えられている。このため位置決め部23Aは、紙幣貯蔵部15に後方向又は前方向へ向かう比較的弱い外力が加えられただけで僅かに短縮され、当該紙幣貯蔵部15を後方向又は前方向へ移動させる。
【0074】
また位置決め部23Aは、凹部31Cにおいても、凹部31Bの場合と同様に、当該凹部31Cと当接し最も前側の紙幣収納庫16のみを露出させた状態で紙幣貯蔵部15を止めようとし、当該紙幣貯蔵部15に後方向又は前方向へ向かう比較的弱い外力が加えられただけで移動させる。
【0075】
さらに案内部24の対向面31における後端部分には、右方向へ盛り上げられた凸部31Dが形成されている。
【0076】
紙幣処理部11は、紙幣貯蔵部15が最も後側に収納されると、図5(C)に示したように、凸部31Dにより位置決め部23の全長L1を短縮させ、ほぼ最短とする。すなわち位置決め部23は、紙幣処理部筐体21に対し紙幣貯蔵部15を左右方向に殆ど動かないよう固定することができる。
【0077】
因みに位置決め部23B及び案内部24Bについては、それぞれ位置決め部23A及び案内部24Aと左右対称に構成されているため、その説明を省略する。
【0078】
このように紙幣処理部11は、移動抑制部としてのスライドレール22、位置決め部23及び案内部24により、紙幣貯蔵部15を前後方向へ円滑に移動させ得ると共に、露出状態において後方向への移動を抑制することにより当該露出状態をできるだけ維持し、容易に収納させないようになされている。
【0079】
[1−3.動作及び効果]
以上の構成において、現金自動預払機1の紙幣処理部11は、紙幣貯蔵部15における左右側面の後側上部に、左右方向の全長L1が伸縮自在でなると共にディテントスプリング29により伸長させるよう付勢された位置決め部23を設けた。
【0080】
また紙幣処理部11の紙幣処理部筐体21における当該位置決め部23と対向する箇所には、対向面31に斜面31Aを有する案内部24を設けた。
【0081】
位置決め部23は、紙幣貯蔵部15が最も前方に引き出されその殆どを紙幣処理部筐体21の外部に露出させた露出状態において、案内部24の対向面31における平坦部分と当接しなくなり、全長L1を伸長させる。
【0082】
また位置決め部23は、紙幣貯蔵部15が露出状態において後方向へ向かう外力を加えられると、当該外力に応じた力が斜面31Aを介してディテントローラ28に加えられ、全長L1が短縮されようとする。
【0083】
このとき位置決め部23は、その全長L1が間隔D1にまで短縮されない限り、すなわち紙幣貯蔵部15に対し後方向へ何ら力が加えられない場合、又は比較的弱い力が加えられた場合には、当該紙幣貯蔵部15を露出状態に止めるよう抑制する。
【0084】
一方位置決め部23は、紙幣貯蔵部15に対し後方向へ向かう比較的強い力が加えられて全長L1が間隔D1にまで短縮されると、当該紙幣貯蔵部15を後方向へ移動させ、紙幣処理部筐体21内へ収納させていく。
【0085】
このように紙幣処理部11は、位置決め部23及び案内部24により、後方向への比較的強い力が加えられない限り紙幣貯蔵部15を露出状態に維持することができる。
【0086】
これにより紙幣処理部11は、例えば保守作業者が不用意に紙幣貯蔵部15に接触し後方向へ弱い力を加えてしまったとしても、位置決め部23の全長L1が間隔D1にまで短縮されない限り、当該紙幣貯蔵部15を露出状態に止めるよう抑制することができる。
【0087】
因みに紙幣処理部11では、紙幣貯蔵部15を露出状態から収納させるために必要な後方向への力の大きさを、位置決め部23におけるディテントスプリング29の弾性力や斜面31の角度等により適切に定めることができる。
【0088】
また紙幣処理部11は、例えば現金自動預払機1の設置箇所が水平ではなく、前側が高く後側が低くなるよう傾斜しており紙幣貯蔵部15に対し重力の一部が後方向へ作用する場合や、紙幣処理部筐体21と紙幣貯蔵部15とを接続するケーブルの張力が当該紙幣貯蔵部15に対し後方向へ作用する場合であっても、位置決め部23の全長L1が間隔D1にまで短縮されない限り、当該紙幣貯蔵部15を露出状態に維持することができる。
【0089】
さらに紙幣処理部11は、紙幣貯蔵部15を収納する際の移動方向である後方向へ比較的強い力が加えられるだけで、位置決め部23による露出状態の維持を解除することができる。このため紙幣処理部11は、保守作業者に対し、露出状態にある紙幣貯蔵部15に後方向へ向かう比較的強い力を加えさせた後、そのまま同一の後方向へ継続的に力を加えさせるだけで、当該当該紙幣貯蔵部15を紙幣処理部筐体21内へ収納させていくことができる。
【0090】
また紙幣処理部11は、案内部24の対向面31に設けた凹部31B及び31Cにより、位置決め部23を当該凹部31B及び31Cに当接させる位置において、紙幣貯蔵部15を積極的に停止させることができる。
【0091】
これにより紙幣処理部11は、例えば作業場所の制約等により紙幣貯蔵部15の全部を露出させることができない場合であっても、紙幣収納庫16のうち前側の1個又は2個のみを着脱し得るよう露出させる位置に合わせて、当該紙幣貯蔵部15を停止させることができる。
【0092】
特に凹部31B及び31Cは、対向面31における平坦な部分からの窪み量が僅かに抑えられている。このため位置決め部23は、紙幣貯蔵部15を途中で止めることなく完全に収納又は露出させたい場合に、当該紙幣貯蔵部15に比較的強い力が加えられることにより、凹部31B及び31Cを容易に通過して円滑に移動することができる。
【0093】
さらに紙幣処理部11は、案内部24の後端部分に凸部31Dを設けたことにより、収納状態にある紙幣貯蔵部15を位置決め部23の寸法関係により左右方向に固定することができる。これにより紙幣処理部11は、紙幣処理部筐体21内の搬送部12(図2)と紙幣貯蔵部15との間において紙幣を精度良く確実に受け渡すことができる。
【0094】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の紙幣処理部11は、紙幣貯蔵部15に左右方向の全長L1を伸縮させ得る位置決め部23を設け、紙幣処理部筐体21に斜面31Aを有する案内部24を設けた。紙幣処理部11は、紙幣処理部筐体21の外部に紙幣貯蔵部15を露出させた露出状態において位置決め部23の全長L1を伸長させ、当該紙幣貯蔵部15に対し後方向へ十分な力が加えられず当該位置決め部23が間隔D1まで短縮されなければ、露出状態に止めるよう抑制する。一方紙幣処理部11は、紙幣貯蔵部15に十分な力が加えられ位置決め部23が間隔D1にまで短縮されると、当該紙幣貯蔵部15を後方向へ移動させ、紙幣処理部筐体21内へ収納させることができる。
【0095】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101は、第1の実施の形態における現金自動預払機1と比較して、紙幣処理部11に代わる紙幣処理部111を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0096】
[2−1.紙幣処理部の構成]
紙幣処理部111は、図3(B)及び図4(B)と対応する図7に示すように、第1の実施の形態における紙幣処理部11と比較して、紙幣貯蔵部15及び紙幣処理部筐体21に代わる紙幣貯蔵部115及び紙幣処理部筐体121を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0097】
因みに図7においては、説明の都合上、紙幣処理部筐体121により隠れる部分も実線で表している。
【0098】
紙幣処理部筐体121は、紙幣処理部筐体21と比較して、案内部24に代わるロックポスト124を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0099】
ロックポスト124は、小さく短い円柱状に構成されており、紙幣処理部筐体121の空間121Aにおける左内側面の前寄りの位置に、右方向へ向けて突設されている。
【0100】
紙幣貯蔵部115は、紙幣貯蔵部15と比較して、位置決め部23に代わる係合部123を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0101】
係合部123は、図8に示すように、大きく分けて前側に設けられたロック体131、後側に設けられたロック体134、並びに両者を連結するロックリンク137により構成されている。
【0102】
紙幣貯蔵部115の左側面には、紙幣処理部筐体121のロックポスト124と対応する高さにおいて、前側及び後側にそれぞれ回動軸132及び135が設けられている。
【0103】
ロック体131は、板状部材を逆L字状に切り抜いたような形状に構成されており、回動軸132に対し、当該逆L字における屈曲部分の近傍を回動中心として回動可能に取り付けられている。因みにロック体131は、図示しないストッパにより回動範囲が規制されている。
【0104】
ロック体131のうち回動軸132から後方へ延びる部分における下側には、その一部が矩形状に切り欠かれることにより係合爪131Aが形成されている。また係合爪131Aの後側は、下部が斜めに切り落とされている。
【0105】
この係合爪131Aは、図7(A)に示したように、紙幣貯蔵部115が紙幣処理部筐体121内に収納された収納状態となっているときに、ロックポスト124に係合することにより、当該紙幣貯蔵部115の収納状態を維持するようになされている。
【0106】
ロック体131(図8)のうち回動軸132から上方へ延びる部分の中ほどには、短い円柱状のリンク軸133が左方向へ向けて突設されている。
【0107】
またロック体131の回動軸132から上方へ延びる部分における上側部分の前側には、前方向から見てある程度の面積を有するロックレバー131Bが取り付けられている。このロックレバー131Bは、保守作業者が手で掴んだ状態で前方向又は後方向へ力を加えやすいよう、その大きさや形状が定められている。
【0108】
一方、ロック体134は、板状部材をL字状に切り抜いたような形状に構成されており、ロック体131からロックレバー131を省略すると共に屈曲部分から上方向へ延びる部分を短縮した上で前後方向に反転させたような形状となっている。
【0109】
すなわちロック体134は、回動軸135に対し、L字における屈曲部分の近傍を回動中心として回動可能となっており、当該回動軸135から前方へ延びる部分における下側に、係合爪131Aを前後に反転させたような形状でなる係合爪134Aが形成されている。
【0110】
この係合爪134Aは、図7(B)に示したように、紙幣貯蔵部115が紙幣処理部筐体121内から引き出されて露出状態となっているときに、ロックポスト124に係合することにより、当該紙幣貯蔵部115の露出状態を維持するようになされている。
【0111】
またロック体134のうち回動軸135から上方へ延びる部分には、リンク軸133とほぼ同等の高さに、当該リンク軸133と同様の形状でなるリンク軸136が左方向へ向けて突設されている。
【0112】
ロックリンク137は、細長い直方体状の板状部材でなり、その前端近傍及び後端近傍において、それぞれリンク軸133及び136に対し回動可能に取り付けられている。
【0113】
このためロックリンク137は、ロック体131が回動されるとリンク機構として作用し、ロック体134を連動させて回動させる。
【0114】
このように紙幣処理部111は、移動抑制部としてのスライドレール22、係合部123及びロックポスト124により、紙幣貯蔵部115を前後方向へ円滑に移動させ得ると共に、係合爪131A及び134Aとロックポスト124との係合により当該紙幣貯蔵部115を収納状態又は露出状態に維持するようになされている。
【0115】
[2−2.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態における現金自動預払機101の紙幣処理部111は、紙幣処理部筐体121内に紙幣貯蔵部115が収納された収納状態(図7(A))において、係合部123の係合爪131Aをロックポスト124に係合させる。
【0116】
紙幣貯蔵部115は、保守作業者等の操作によりロックレバー131Bが前方向へ動かされると、ロック体131を左側から見て時計回りに回動させ、係合爪131Aを持ち上げることにより、当該係合爪131Aとロックポスト124との係合状態を解除する。
【0117】
さらに紙幣貯蔵部115は、この状態でロックレバー131Bに前方向へ向かう力が加えられると、ロック体131が図示しないストッパに当接することによりその力が伝達され、前方向へ移動する。
【0118】
その後紙幣貯蔵部115は、最も前方へ移動した状態、すなわち露出状態となり(図7(B))、ロック体134の係合爪134Aをロックポスト124に係合させて、この露出状態を維持する。
【0119】
紙幣貯蔵部115は、保守作業者等の操作によりロックレバー131Bが後方向へ動かされると、ロック体131を左側から見て反時計回りに回動させ、ロックリンク137を介してロック体134も反時計回りに回動させて、係合爪134Aを持ち上げることにより、当該係合爪134Aとロックポスト124との係合状態を解除する。
【0120】
さらに紙幣貯蔵部115は、この状態でロックレバー131Bに後方向へ向かう力が加えられると、ロック体131が図示しないストッパに当接することによりその力が伝達され、後方向へ移動する。
【0121】
その後紙幣貯蔵部115は、最も後方へ移動した状態、すなわち収納状態に戻り(図7(A))、ロック体131の係合爪131Aをロックポスト124に係合させて、この収納状態を維持する。
【0122】
従って紙幣処理部111は、露出状態において係合部123の係合爪134Aをロックポスト124に係合させることができるので、紙幣貯蔵部115に対し後方向へ向かう外力が意図せず加えられたとしても、当該紙幣貯蔵部115の露出状態を維持することができる。
【0123】
また紙幣処理部111では、係合部123の係合爪134Aとロックポスト124との係合状態を解除するためにロックレバー131Bに力を加える方向を、解除後に紙幣貯蔵部115を収納するために力を加える方向である後方向と一致させるようにした。これにより紙幣処理部111では、保守作業者等に対しロックレバー131Bに後方向への力を加えさせるだけで、係合状態の解除及び紙幣貯蔵部115の後方向への移動を連続的に行わせることができる。
【0124】
さらに紙幣処理部111は、収納状態において係合部123の係合爪131Aをロックポスト124に係合させ、その係合状態の解除時にロックレバー131Bを用いるようにした。これにより、露出状態における係合解除と収納状態における係合解除とを、いずれもロックレバー131Bに対する操作として共通化することができ、保守作業者等に直感的に理解させることができる。
【0125】
そのうえ紙幣処理部111は、保守作業者等によりロックレバー131Bに前方向への力を加えさせて収納状態における係合を解除した後、当該ロックレバー131Bに前方向への力を加えさせ続けることにより、紙幣貯蔵部115を前方向へ移動させることができる。
【0126】
すなわち紙幣処理部111は、紙幣貯蔵部115を収納状態から露出状態へ移動させるとき、及び露出状態から収納状態へ移動させるときのいずれにおいても、ロックレバー131Bに対し当該紙幣貯蔵部115の移動方向へ力を加えさせるだけで、係合解除及び移動を連続的に行わせることができる。
【0127】
以上の構成によれば、現金自動預払機101の紙幣貯蔵部115は、露出状態においてロック体134の係合爪134Aをロックポスト124に係合させることにより、この露出状態を維持することができる。また紙幣貯蔵部115は、ロックレバー131Bが後方向へ動かされると、ロックリンク137を介してロック体134を回動させ係合爪134Aとロックポスト124との係合状態を解除することができる。さらに紙幣貯蔵部115は、引き続きロックレバー131Bに後方向へ向かう力が加えられると、その力が伝達されることにより後方向へ移動することができる。
【0128】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201は、第1の実施の形態における現金自動預払機1と比較して、紙幣処理部11に代わる紙幣処理部211を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0129】
[3−1.紙幣処理部の構成]
紙幣処理部211は、図4(B)と対応する図9に示すように、第1の実施の形態における紙幣処理部11と比較して、紙幣貯蔵部15及び紙幣処理部筐体21に代わる紙幣貯蔵部215及び紙幣処理部筐体221を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0130】
紙幣処理部筐体221は、紙幣処理部筐体21と比較して、案内部24に代わる軸224を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0131】
軸224は、小さく短い円柱状に構成されており、紙幣処理部筐体221の空間221Aにおける左内側面における下寄りの位置に、右方向へ向けて突設されている。因みに図9では、説明の都合上、紙幣処理部筐体221により隠れる部分についても実線で示している。
【0132】
紙幣貯蔵部215は、紙幣貯蔵部15と比較して、位置決め部23に代わる軸225を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0133】
軸225は、軸224と同様、小さく短い円柱状に構成されており、紙幣貯蔵部215の左側面における後寄りの位置に、左方向へ向けて突設されている。すなわち軸225は、軸224よりも高い位置に設けられており、また紙幣貯蔵部215が前後に移動されると、当該紙幣貯蔵部215と一体に移動することになる。
【0134】
さらに軸224と軸225との間には、紙幣処理部筐体221の内側面と紙幣貯蔵部215の側面との隙間に、抑制部223が設けられている。
【0135】
図10(A)及び(B)に示すように、抑制部223は、プラチェーン231を中心に構成されている。プラチェーン231は、その長手方向に沿って、保護部品232が互いに連結されることにより構成されている。
【0136】
保護部品232は、比較的硬い樹脂材料でなり、その内部が貫通孔により所定方向に貫通されている。また各保護部品232は、隣接する保護部品232に対し回動可能に、且つ互いの貫通孔同士を連通させるように連結されている。
【0137】
因みに、隣接する保護部品232同士は、左右方向に沿った回動軸を中心に回動するようになされている。また隣接する保護部品232同士の回動範囲は、例えば約60度となっている。
【0138】
プラチェーン231は、隣接する保護部品232同士を回動させることにより、図10(A)及び(B)に示したように、全体形状を湾曲させることができる。
【0139】
またプラチェーン231は、その一端から他端まで、各保護部品232の貫通孔同士を連通させてなる長い内部空間を形成しており、当該プラチェーン231が湾曲するときには当該内部空間も湾曲させることになる。
【0140】
プラチェーン231における後端及び前端の保護部品232には、それぞれ左右方向に貫通する回動孔231A及び231Bが穿設されている。この回動孔231A及び231Bは、それぞれ紙幣処理部筐体221の軸224及び紙幣貯蔵部215の軸225に対し回動可能に取り付けられるようになされている。
【0141】
以下では、抑制部223のうち回動孔231A側、すなわち軸224を介して紙幣処理部筐体221に取り付けられる端部を筐体側端部223Aと呼び、また回動孔231B側、すなわち軸225を介して紙幣貯蔵部215に取り付けられる端部を貯蔵側端部223Bと呼ぶ。
【0142】
紙幣処理部筐体221に対し紙幣貯蔵部215がスライドレール22に沿って前方向又は後方向へ移動すると、図10(A)及び(B)に示したように、軸224は移動しないものの、軸225は紙幣貯蔵部215と一体に移動する。
【0143】
このとき抑制部223は、回動孔231Aと231Bとの相対位置が変化するため、結果的に全体形状を変形させる。
【0144】
ところでプラチェーン231は、各保護部品232の貫通孔を連接してなる内部空間に、紙幣処理部筐体221と紙幣貯蔵部215とを電気的に接続するケーブルが挿通される。これによりプラチェーン231は、紙幣貯蔵部215の移動に伴い抑制部223の全体形状が変形した際にも、各保護部品232を外殻として機能させることにより、ケーブルを保護し続けるようになされている。
【0145】
さらにプラチェーン231の内部空間には、上述したケーブルに加えて、板ばね233が挿通されている。
【0146】
板ばね233は、細長い板状の金属部材でなり、自然状態においては直線状に延びた形状となっている。また板ばね233の後端部分は、固定部品234により、プラチェーン231の後端に位置する保護部品232を介して紙幣処理部筐体221に固定されている。このため板ばね233は、プラチェーン231の内部空間から抜け出ることなく、また少なくとも筐体側端部223Aの近傍においてはその延長方向が前方向に固定されている。
【0147】
このため紙幣貯蔵部215の前後方向への移動に伴ってプラチェーン231が湾曲されると、板ばね233は、当該プラチェーン231の形状に合わせて湾曲されることにより、自然状態に戻ろうとする復元力を生じる。
【0148】
この復元力は、紙幣処理部筐体221の軸224と、紙幣貯蔵部215の軸225との間で作用することになり、当該軸225の近傍における板ばね233の法線方向に近い方向に作用する。
【0149】
例えば図10(A)に示したように、軸225が軸224よりも前方に位置する場合、抑制部223は、貯蔵側端部223Bの近傍が円の1/4を描くように湾曲され、その先端が上方向を向くように持ち上げられる。板ばね233は、矢印F1のように前方向に向けた復元力を作用させる。
【0150】
また図10(B)に示したように、前側部分が半円を描くよう大きく湾曲され先端部分が後方向を向いている場合、板ばね233は、矢印F2のように上方向に向けた復元力を作用させる。
【0151】
かくして抑制部223は、紙幣処理部筐体221に対する紙幣貯蔵部215の位置により定まる軸225の位置、すなわち回動孔231Bの位置に応じて全体形状を変化させ、これに伴い変形する板ばね233により、復元力を作用させるようになされている。
【0152】
このように紙幣処理部211は、移動抑制部としてのスライドレール22、抑制部223、軸224及び225により、紙幣貯蔵部215を前後方向へ円滑に移動させ得ると共に、露出状態において後方向への移動を抑制することにより当該露出状態をできるだけ維持し、容易に収納させないようになされている。
【0153】
[3−2.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣処理部211は、紙幣貯蔵部215が紙幣処理部筐体221から引き出された露出状態又はその近傍にあるとき、軸225を軸224よりも大きく前方に位置させる(図10(A))。
【0154】
このとき抑制部223は、板ばね233の復元力を前方向へ作用させるため、貯蔵側端部223Bにより軸225を介して紙幣貯蔵部215を前方向へ付勢する。
【0155】
このため紙幣貯蔵部215は、抑制部223による付勢力を上回る力を後方向へ加えない限り、後方向へ移動しない。すなわち紙幣処理部211では、抑制部223により紙幣貯蔵部215の露出状態を維持するよう抑制することができる。
【0156】
一方、紙幣処理部211は、紙幣貯蔵部215を露出状態から後方向へ移動させ紙幣処理部筐体221内へ収納する過程において、軸225を露出状態よりも後方に位置させる(図10(B))。
【0157】
このとき抑制部223は、板ばね233の復元力を上方向へ作用させるため、貯蔵側端部223Bにより軸225を介して紙幣貯蔵部215を上方向に付勢する。このため紙幣貯蔵部215は、抑制部223による付勢力が前後方向へは加わらない。
【0158】
すなわち紙幣処理部211では、紙幣貯蔵部215が露出状態又はその近傍にあるとき以外は、抑制部223による付勢力の影響を殆ど受けることなく、当該紙幣貯蔵部215を前後に移動させることができる。
【0159】
これにより紙幣処理部211では、例えばプラチェーン231の内部空間に挿通されたケーブルの弾性により抑制部223が湾曲しやすく、露出状態にある紙幣貯蔵部215を後方向に付勢する恐れがあったとしても、板ばね233の復元力によりケーブルの弾性による力を打ち消して当該露出状態を維持させることができる。
【0160】
また紙幣処理部211では、第1の実施の形態と同様、例えば保守作業者が不用意に紙幣貯蔵部215に接触し後方向へ弱い力を加えてしまったとしても、この力が抑制部223による付勢力を上回らない限り、当該紙幣貯蔵部215を露出状態に維持することができる。
【0161】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣処理部211は、紙幣貯蔵部215及び軸225を露出状態よりも後側に位置させているとき、抑制部223の貯蔵側端部223Bにより軸225を介して紙幣貯蔵部215を上方向に付勢し、紙幣貯蔵部215の前後方向への移動を妨げない。一方、紙幣処理部211は、紙幣貯蔵部215が露出状態又はその近傍にあり軸225を軸224よりも大きく前方に位置させているとき、抑制部223の貯蔵側端部223Bにより軸225を介して紙幣貯蔵部215を前方向へ付勢し、当該紙幣貯蔵部215の露出状態を維持することができる。
【0162】
[4.第4の実施の形態]
第4の実施の形態による現金自動預払機301は、第1の実施の形態における現金自動預払機1と比較して、紙幣処理部11に代わる紙幣処理部311を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0163】
紙幣処理部311は、第1の実施の形態における紙幣処理部11と比較して、図4(B)と対応する図11に示すように、スライドレール22に代わるスライドレール322を有する点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0164】
移動抑制部としてのスライドレール322は、第1の実施の形態におけるスライドレール22と同様に構成されているものの、紙幣処理部筐体21及び紙幣貯蔵部15に対し、前側を下方に向けるよう傾けて取り付けられている。
【0165】
このため紙幣処理部311は、紙幣貯蔵部15に加わる重力の一部が前方向へ作用することになり、当該紙幣貯蔵部15を常に前方へ付勢することになる。
【0166】
具体的に紙幣処理部311では、例えば紙幣貯蔵部15の質量をm[kg]、重力加速度をg[m/s]、スライドレール322の水平方向からの傾斜角をθ[度]とすると、当該スライドレール322の移動方向に沿った力F3=mgsinθ[N]が作用することになる。
【0167】
これにより紙幣処理部311は、第1及び第3の実施の形態と同様、紙幣貯蔵部15が露出状態にある場合、当該紙幣貯蔵部15を当該露出状態に抑制することができる。
【0168】
紙幣処理部311は、第1の実施の形態と同様、例えば保守作業者が不用意に紙幣貯蔵部15に接触し後方向へ弱い力を加えてしまったとしても、この力がスライドレール322の移動方向に沿った力F3を上回らない限り、当該紙幣貯蔵部215を露出状態に維持することができる。
【0169】
以上の構成によれば、第4の実施の形態による現金自動預払機301の紙幣処理部311は、スライドレール322の前側を下方へ傾けるように紙幣処理部筐体21及び紙幣貯蔵部15に対し傾斜して取り付けたことにより、重力の作用により紙幣貯蔵部15を前方向へ付勢し、当該紙幣貯蔵部15の露出状態を維持することができる。
【0170】
[5.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、案内部24の対向面31を局所的に左側へ窪ませることにより前端部分の斜面31A、凹部31B及び31C、並びに後端部分の凸部31Dを形成するようにした場合について述べた。
【0171】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図5(A)〜(C)と対応する図12に示すように、紙幣処理部411において、案内部424の対向面431に、斜面31Aに代えて微小な突起により端部が区切られた領域431Aを形成し、また凸部31Dに代えて当該凸部31Dと同様の凸部が微小な突起により区切られた領域431Dを形成し、さらに凹部31B及び31Cに代えて2箇所の微小な突起により挟まれた領域431B及び431Cを形成するようにしても良い。
【0172】
この場合、各領域431A〜431Dに位置決め部23Aが当接した状態で紙幣貯蔵部15を前方向又は後方向へ移動させるには、紙幣貯蔵部15に前方向又は後方向へある程度の力を加えることにより、位置決め部23Aのディテントローラ28が微小な突起を乗り越えさせる必要がある。
【0173】
これにより紙幣処理部411は、例えば露出状態において保守作業者が不用意に紙幣貯蔵部15に接触し後方向へ弱い力を加えてしまったとしても、位置決め部23が微小な突起を乗り越える程度にまで短縮されない限り、当該紙幣貯蔵部15を露出状態に維持するよう抑制することができる。また紙幣処理部411は、領域431B、431C及び431Dにそれぞれ位置決め部23が当接した状態においても、同様に紙幣貯蔵部15をその位置に維持することができる。
【0174】
また上述した第1の実施の形態においては、斜面31Aを平面状に構成する場合について述べた。
【0175】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば当該斜面31Aを湾曲面として形成するようにしても良い。要は、比較的強い力により紙幣貯蔵部15が後方向へ移動する際に、ディテントローラ28を回転させながら位置決め部23Aを徐々に圧縮させることができれば良い。
【0176】
さらに上述した第1の実施の形態においては、案内部24の対向面31における後端部分に凸部31Dを設け、紙幣貯蔵部15が最も後側まで移動し紙幣処理部筐体21内に収納されると、位置決め部23の全長L1を伸長させて収納状態を維持するようにした場合について述べた。
【0177】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣処理部511において、位置決め部23及び案内部24に加えて、図5(A)〜(C)と対応する図13に示すように、紙幣貯蔵部15の側面における後方下側に位置決め部23と同様の構成でなる位置決め部523Aを設け、当該位置決め部523Aと対向する箇所に案内部524Aを設けるようにしても良い。
【0178】
案内部524Aは、後端部分に、前端部分の斜面31Aと前後対称な斜面531Dが形成されている。紙幣処理部511では、紙幣貯蔵部15が最も後側まで移動し紙幣処理部筐体21内に収納されると、位置決め部23A(図5)の全長L1を凸部31Dにより短縮させて紙幣貯蔵部15の左右方向の位置を固定すると共に、位置決め部523Aの全長L1を斜面531Dにより伸長させて当該紙幣貯蔵部15を収納された位置に止めようとする。
【0179】
すなわち紙幣処理部511は、紙幣貯蔵部15に前方向へ向かう外力が加えられたとしても、当該外力が位置決め部523Aの全長L1を間隔D1にまで短縮させる程度の強さ以上でなければ、当該位置決め部523Aにより収納状態を維持することができる。
【0180】
これにより紙幣処理部511は、例えば現金自動預払機1の設置箇所が水平ではなく、前側が低く後側が高くなるよう傾斜しており紙幣貯蔵部15に対し重力の一部が前方向へ作用する場合に、筐体2の前扉2Aを開放した途端に当該紙幣貯蔵部15が前方向へ飛び出すことを防止することができる。
【0181】
さらには、例えば第1の実施の形態において案内部24における斜面31Aの後側に隣接して微小な突起を設けるなど、斜面、凹部や凸部、或いは微小な突起等を適宜組み合わせるようにしても良い。要は、紙幣貯蔵部15から案内部24の対向面31までの間隔D1を前後方向に沿って変化させることにより、弱い力が加えられただけでは紙幣貯蔵部15が所定の位置から前後方向へ移動しないよう、位置決め部23の付勢力によりその位置を維持できれば良い。
【0182】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣貯蔵部15の左右の側面における後端に位置決め部23を設け、紙幣処理部筐体21の内側面に案内部24を設けるようにした場合について述べた。
【0183】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣処理部筐体21の内側面における前端に位置決め部23を設け、紙幣貯蔵部15の左右の側面に案内部24を設けるようにしても良い。
【0184】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣貯蔵部15の左右の側面における後端に位置決め部23を設け、紙幣処理部筐体21における左右の内側面において、位置決め部23と対向する箇所に案内部24を設けるようにした場合について述べた。
【0185】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣貯蔵部15の左側面のみに位置決め部23を設け、紙幣処理部筐体21における左内側面のみに案内部24を設けるようにしても良く、或いは紙幣貯蔵部15の上面や下面における後端に位置決め部23を設け、紙幣処理部筐体21における上下の内側面において、位置決め部23と対向する箇所に案内部24を設けるようにしても良い。
【0186】
さらに上述した第1の実施の形態においては、案内部24の対向面31における前後方向にほぼ3等分するような2箇所に凹部31B及び31Cを形成し、また後端部分に凸部31Dを形成するようにした場合について述べた。
【0187】
しかしながら本発明はこれに限らず、対向面31における任意の位置に任意数の凹部を形成するようにしても良く、或いは凹部を省略しても良い。また後端部分の凸部31Dについても、省略しても良い。
【0188】
さらに上述した第1の実施の形態においては、位置決め部23Aを伸縮支柱25及びディテントスプリング29により伸縮可能に構成すると共に左方向(すなわち紙幣貯蔵部15から離れる方向)へ付勢力を作用させるようにした場合について述べた。
【0189】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば周知の回動機構とトーションばねや板ばね等の組み合わせにより、ディテントローラ28を左方向(すなわち紙幣貯蔵部15から離れる方向)へ付勢するようにしても良い。
【0190】
さらに上述した第1の実施の形態においては、位置決め部23Aに回転自在に取り付けられたディテントローラ28を案内部24の対向面31に当接させるようにした場合について述べた。
【0191】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えばローラ支持部26、軸27及びディテントローラ28に代えて、位置決め部23Aの左端部に回転しない突起を設け、当該突起を案内部24の対向面31に当接させるようにしても良い。この場合、突起の表面を滑らかにすることにより、案内部24との間の摩擦抵抗を低減することが望ましい。
【0192】
さらに上述した第2の実施の形態においては、紙幣処理部筐体21の内側面にロックポスト124を設け、紙幣貯蔵庫15に係合部123を設けるようにした場合について述べた。
【0193】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣処理部筐体21に係合部123を設け、紙幣貯蔵庫15の側面にロックポスト124を設けるようにしても良い。さらにこの場合、例えば係合爪131A及び134Aを固定し、ロックポスト124と所定のレバーとを一体に回動するようにして、このレバーに前後方向への力を加えることにより係合解除するようにしても良い。
【0194】
さらに上述した第3の実施の形態においては、抑制部223の板ばね233を筐体側端部223Aの近傍において固定部品234により紙幣処理部筐体221に固定するようにした場合について述べた。
【0195】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば抑制部223の板ばね233を貯蔵側端部223Bにおいて固定部品234により紙幣貯蔵部215に固定するようにしても良い。この場合、抑制部223は、板ばね233の復元力が後方向へ向けて軸224を介して紙幣処理部筐体221に加えられることにより、紙幣貯蔵部215を前方向へ付勢することができる。
【0196】
さらに上述した第3の実施の形態においては、抑制部223のプラチェーン231内に板ばね233を取り付けることにより、露出状態にある紙幣貯蔵部215を前方向へ付勢するようにした場合について述べた。
【0197】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば棒状に巻回されたコイルスプリングやゴム製の棒など、種々の弾性体を用いることにより、露出状態にある紙幣貯蔵部215を前方向へ付勢するようにしても良い。またこの弾性体は、プラチェーン231の内部に限らず、例えばその側面に取り付けられていても良い。この弾性体としては、抑制部223の一部又は全部が湾曲された際に、プラチェーン231と共に湾曲され、自然状態に戻ろうとする復元力を発生させるものであれば良い。
【0198】
さらに上述した第3の実施の形態においては、紙幣処理部筐体21の左内側面と紙幣貯蔵部215の左側面との隙間に抑制部223を設けるようにした場合について述べた。
【0199】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣処理部筐体21の下内側面と紙幣貯蔵部215の下面との隙間や紙幣処理部筐体21の上内側面と紙幣貯蔵部215の上面との隙間等、他の隙間に設けるようにしても良い。
【0200】
さらに上述した第3の実施の形態においては、紙幣処理部筐体21側の軸224よりも紙幣貯蔵部215側の軸225を高い位置に設けるようにした場合について述べた。
【0201】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば軸225を軸224よりも下方に設けるようにしても良い。要は、紙幣貯蔵部215が露出状態であるときに、軸225及び軸224が上下方向にある程度離れた箇所に位置することにより、板ばね233の復元力を前後方向に作用させることができれば良い。因みに板ばね233は、常に湾曲されている必要はなく、例えば収納状態においてプラチェーン231が直線状に延びた形状となり、これに伴って当該板ばね233も自然状態となるようにしても良い。
【0202】
さらに上述した実施の形態においては、第1の実施の形態における位置決め部23及び案内部24、第2の実施の形態における係合部123及びロックポスト124、第3の実施の形態における抑制部223及び第4の実施の形態におけるスライドレール322をそれぞれ単独で用いるようにした場合について述べた。
【0203】
しかしながら本発明はこれに限らず、これらを適宜組み合わせるようにしても良い。これにより、紙幣貯蔵部15等をより確実に放出状態に維持することができる。
【0204】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣貯蔵部15を紙幣処理部11の前側へ移動させることにより、その殆どを紙幣処理部筐体21の外部へ露出させた露出状態とするようにした場合について述べた。
【0205】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣貯蔵部15を紙幣処理部11の左側や右側へ移動させることにより露出状態とするようにしても良い。また、例えば現金自動預払機1の筐体2における後側の扉(図示せず)を開放して紙幣処理部11を後方へ移動させるようにし、さらに当該紙幣処理部11から紙幣貯蔵部15を後方へ移動させるようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
【0206】
さらに上述した実施の形態においては、紙幣貯蔵部15が紙幣処理部筐体21の内部に収納され又はその外部へ露出される紙幣処理部11に本発明を適用するようにした場合について述べた。
【0207】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣処理部11や硬貨処理部(図示せず)等の各部が筐体2の内部に収納され又はその外部へ露出される現金自動預払機1に本発明を適用するようにしても良い。
【0208】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣等の現金を取引する現金自動預払機1の紙幣処理部11において、媒体としての紙幣について搬送処理及び収納処理等の各処理を行うようにした場合について述べた。
【0209】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば商品券や金券、入場券等のような薄い紙状の媒体を搬送処理及び収納処理等の各処理を行う種々の装置に適用するようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
【0210】
さらに上述した第1の実施の形態においては、筐体としての紙幣処理部筐体21と、連通孔としての連通孔21Bと、引出としての紙幣貯蔵部15と、移動抑制部としてのスライドレール22、位置決め部23及び案内部24とによって引出装置としての紙幣処理部11を構成する場合について述べた。
【0211】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、連通孔と、引出と、移動抑制部とによって引出装置を構成するようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
【0212】
さらに上述した第1の実施の形態においては、筐体としての筐体2及び紙幣処理部筐体21と、受付部としての接客部3と、搬送部としての搬送部12と、連通孔としての連通孔21Bと、引出としての紙幣貯蔵部15と、移動抑制部としてのスライドレール22、位置決め部23及び案内部24とによって媒体取引装置としての現金自動預払機1を構成する場合について述べた。
【0213】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、受付部と、搬送部と、連通孔と、引出と、移動抑制部とによって媒体取引装置を構成するようにしても良い。第2〜第4の実施の形態についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明は、筐体に収納された状態で所定の処理を実行する一方、保守等の作業時に筐体から引き出されてその一部又は全部を露出させるような引出機構を有する種々の機器でも利用できる。
【符号の説明】
【0215】
1、101、201、301……現金自動預払機、2……筐体、2A……前扉、3……接客部、11、111、211、311……紙幣処理部、12……搬送部、15、115、215、315……紙幣貯蔵部、16……紙幣収納庫、18、22、322……スライドレール、21、121、221……紙幣処理部筐体、21A、121A、221A……空間、21B、121B、221B……連通孔、23、23A、23B……位置決め部、24、24A、24B……案内部、25……伸縮支柱、28……ディテントローラ、29……ディテントスプリング、31……対向面、31A……斜面、31B、31C……凹部、31D……凸部、123……係合部、124……ロックポスト、131、134……ロック体、131A、134A……係合爪、131B……ロックレバー、137……ロックリンク、223……抑制部、224、225……軸、231……プラチェーン、232……保護部品、233……板ばね、234……固定部品。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間を内部に具える筐体と、
上記筐体の側面に設けられ上記空間と外部とを連通させる連通孔と、
上記筐体の上記空間に収納されたときに所定の処理を実行し、上記筐体の外部に所定の露出部分を露出させたときに上記処理のための所定の作業がなされる引出と、
上記筐体の上記連通孔を介して上記引出を当該筐体の内部と外部との間で移動させると共に、上記引出の少なくとも上記露出部分を上記筐体の外部に露出させた状態に止めるよう抑制する移動抑制部と
を具えることを特徴とする引出装置。
【請求項2】
上記移動抑制部は、
上記引出の少なくとも上記露出部分を上記筐体の外部に露出させた状態から当該筐体の内部へ収納する方向へ移動させる際に、抵抗力を発生させることにより当該移動を抑制する
ことを特徴とする請求項1に記載の引出装置。
【請求項3】
上記移動抑制部は、
上記筐体又は上記引出の一方に設けられ、上記引出の直線移動における移動方向に沿って延長された案内部と、
上記筐体又は上記引出の他方における、上記引出の直線移動時に当該案内部と対向する箇所に設けられ、当該案内部に離接する方向に移動し得ると共に所定の付勢手段により付勢されて当該案内部に当接する当接部と
を具え、
上記案内部は、
上記引出の少なくとも上記露出部分が上記筐体の外部に露出されたときに上記当接部が当接する箇所に、その周囲よりも上記付勢手段による付勢方向へ落ち込んだ凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の引出装置。
【請求項4】
上記案内部は、
上記引出のうち上記筐体の外部に露出する部分の割合が異なるときに上記当接部がそれぞれ当接する箇所に、上記凹部がそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の引出装置。
【請求項5】
上記付勢手段は、
当該案内部に離接する方向への移動範囲が規定され、
上記案内部は、
上記引出が上記筐体内に収納されたときに上記当接部が当接する箇所に、その周囲よりも上記付勢手段による付勢方向と反対の方向へ持ち上げられた凸部が形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の引出装置。
【請求項6】
上記移動抑制部は、
長手方向に沿った内部空間を形成すると共に当該長手方向に屈曲可能に構成され、上記筐体と上記引出との間を接続する配線材を保護する保護体と、
上記保護体の上記内部空間に上記長手方向に沿って取り付けられ、自然状態から変形されると当該自然状態に復元する方向へ付勢する弾性体と、
上記保護体の一端を上記筐体の内側面に取り付けると共に、他端を上記引出における上記内側面と対向する外側面に取り付ける保護体取付部と
を具え、
上記保護体取付部は、
上記引出の少なくとも上記露出部分が上記筐体の外部に露出されたときに上記保護体及び上記弾性体を屈曲させ当該引出を当該筐体の外部へ放出する方向へ付勢させるよう、上記保護体の一端及び他端の取付位置が定められている
ことを特徴とする請求項2に記載の引出装置。
【請求項7】
上記保護体取付部は、
上記引出が上記筐体の内部に収納されたときに、上記保護体及び上記弾性体を屈曲させ当該引出を当該筐体の外部へ放出する方向と異なる方向へ付勢させ、若しくは上記弾性体を自然状態に戻すよう、上記保護体の一端及び他端の取付位置が定められている
ことを特徴とする請求項6に記載の引出装置。
【請求項8】
上記移動抑制部は、
上記引出を上記筐体の内部と外部との間で直線状に移動させると共に、上記筐体に対し上記連通孔に近接した一端が他端よりも低くなるよう水平方向から傾斜されて取り付けられたスライドレールでなる
ことを特徴とする請求項2に記載の引出装置。
【請求項9】
上記移動抑制部は、
上記引出の少なくとも上記露出部分が上記筐体の外部に露出された状態で固定し、当該固定が解除されると上記移動部により上記引出を移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の引出装置。
【請求項10】
上記移動抑制部は、
上記筐体に設けられた被係合体と、
上記引出に設けられ当該引出を上記筐体内へ収納する収納方向又はその反対である露出方向へ移動するレバーと、
上記引出の少なくとも上記露出部分が上記筐体の外部に露出されたときに上記被係合体と係合する一方、上記レバーが上記収納方向へ移動されたときに上記被係合体との係合を解除する係合体と
を具えることを特徴とする請求項9に記載の引出装置。
【請求項11】
上記移動抑制部は、
上記引出が上記筐体の内部に収納されたときに上記被係合体と係合する一方、上記レバーが上記露出方向へ移動されたときに上記被係合体との係合を解除する第2係合体
をさらに具えることを特徴とする請求項10に記載の引出装置。
【請求項12】
所定の空間を内部に具える筐体と、
上記筐体に設けられ、紙葉状の媒体に関する取引を受け付ける受付部と、
上記筐体に設けられ、上記受付部により受け付けた上記媒体を搬送する搬送部と、
上記筐体の側面に設けられ上記空間と外部とを連通させる連通孔と、
上記筐体の上記空間に収納されたときに所定の処理を実行し、上記筐体の外部に所定の露出部分を露出させたときに上記処理のための所定の作業がなされる引出と、
上記筐体の上記連通孔を介して上記引出を当該筐体の内部と外部との間で移動させると共に、上記引出の少なくとも上記露出部分を上記筐体の外部に露出させた状態に止めるよう抑制する移動抑制部と
を具えることを特徴とする媒体取引装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−61865(P2013−61865A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200776(P2011−200776)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】