説明

引戸装置

【課題】引戸扉の戸車が走行用レールから脱線することを確実に防止するとともに、製作が容易であり、かつ、引戸扉を引戸枠に設置した後に取り付けることができて引戸の取り付けが容易な引戸装置を提供すること。
【解決手段】床面に敷設した走行用レール3上を車輪走行するようにした引戸扉4に、走行用レール3を跨ぐように外止機構1を配設した引戸装置Hにおいて、外止機構1が、走行用レール2を挟んで走行用レール3の長手方向に沿うようにした平板部11a、11aを備えるようにするとともに、外止機構1を、扉枠40の戸先側の両鍔付戸車5よりも前方及び戸尻側の両鍔付戸車5よりも後方において扉枠40に固定するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に敷設した走行用レール上に引戸扉下面に配設した両鍔付戸車を載置して居室等の出入口を開閉する引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、一般に、引戸扉4の下面に配設した両鍔付戸車5を床面に敷設した走行用レール3に載置して、引戸枠2内を走行させる引戸装置は、下面に複数の両鍔付戸車5を回動自在に配設した引戸扉4と、竪枠2a、2a及び両竪枠2a、2aを繋ぐ上枠2bからなる引戸枠2と、走行用レール3を一体に形成した下枠2cとから構成される。
そして、この引戸装置に用いる引戸扉4は、図7に示すように、走行用レール3上に載置され、引戸扉4の上端部が断面略コ字状の上枠2bの溝に案内されて走行するようにし、かつ、このとき、上枠2bの溝の内天面と、引戸扉4の上端面との間に隙間Sが生じるようにする。
そして、引戸扉4の取り付けに際しては、引戸扉4を斜めに傾けた状態で持ち上げながら、上枠2bの溝内に引戸扉4の上端部を挿入した後、引戸扉4を鉛直状態に戻し、両鍔付戸車5を走行用レール3上に載置するようにしている。
これによって、引戸扉4はその上端部が上枠2bの溝に案内され、下端部が両鍔付戸車5がレール上を走行することにより開閉されるようにしている。
【0003】
しかしながら、上枠2bの溝に対する引戸扉4の上端部の挿入代が少ない場合、引戸扉4が側面からの衝撃を受けた際に反り上がり、両鍔付戸車5が走行用レール3から脱線すること等によって、引戸扉4が引戸枠2から外れることがある。
また、例えば、引戸扉4の高さが2400mmを越えるような寸法になると、引戸扉4が側面からの衝撃等によりたわみを受けやすく、両鍔付戸車5が走行用レール3上に乗り上げ、引戸扉4が引戸枠2から外れる危険性が増大するという問題があった。
【0004】
この問題に対処するため、図7に示すように、引戸扉4の下面に配設する両鍔付戸車5の近傍でかつ戸先側戸車・戸尻側戸車間に走行用レール3に対して、若干の間隙をもって跨り、かつ両鍔付戸車5の溝形状よりも若干大となり、その正面視形状が、両鍔付戸車5の正面視形状とほぼ相似形の外止金具20を取り付けた引戸装置が提案されている。
【0005】
この外止金具20は、図6〜図8に示すように、引戸扉4の下面にネジ等の締結部材で取り付けるもので、取付部20aの中央より下方に垂下した垂直材20bの中央部分で前記両鍔付戸車5の溝形状よりも若干大となり、ほぼ相似形となるように、爪部20c、20dを形成するとともに、該爪部20c、20dの下端部を両鍔付戸車5の鍔外周よりも下方に突出するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、この外止金具20は、戸先側の両鍔付戸車5と戸尻側の両鍔付戸車5との間に配設するもので、引戸扉4を走行用レール3上に載置する前に引戸扉4に取り付ける必要がある。
そのため、該爪部20c、20dの下端部を両鍔付戸車5の鍔外周よりも下方に突出するように構成されているものの、その突出量の最大設定値は、引戸扉4を上枠2bの溝の内天面に当接させるまで進入させた状態で、爪部20c、20dの下端部がレールを跨ぐことのできる量となり、これ以上に突出量を大きくすることはできず、両鍔付戸車5が走行用レール3に乗り上げる程度では脱線することはないものの、側面からの衝撃によって引戸扉4にたわみが生じて、反り上がり、両鍔付戸車5がレールに乗り上げ脱線し引戸扉4が引戸枠2から外れる場合があるという問題があった。
また、外止金具20の形状は、平板状の取付部20aと、走行用レール3を跨ぐように爪部20c、20dを形成した垂直材20bとを側面視T字状に配置させた形状であり、取付部20aと垂直材20bとを溶接等によって固着するか、金型によって一体成形する必要があり、溶接によるときは製作に手数を要し、金型によるときは製作コストが嵩むという問題があった。
【特許文献1】実開昭56−14162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の引戸装置の有する問題点に鑑み、引戸扉の戸車が走行用レールから脱線することを確実に防止するとともに、製作が容易であり、かつ、引戸扉を引戸枠に設置した後に取り付けることができて引戸の取り付けが容易な引戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の引戸装置は、床面に敷設した走行用レール上を車輪走行するようにした引戸扉に、走行用レールを跨ぐように外止機構を配設した引戸装置において、前記外止機構が、走行用レールを挟んで走行用レールの長手方向に沿うようにした平板部を備えるようにするとともに、該外止機構を、扉枠の戸先側の両鍔付戸車よりも前方及び戸尻側の両鍔付戸車よりも後方において扉枠に固定するようにしたことを特徴とする。
【0009】
この場合において、外止機構を、断面コ字状の固定部材と、該固定部材の内側に嵌入させて取り付ける、前記平板部を構成する断面コ字状の外止部材とから構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の引戸装置によれば、外止機構が、走行用レールを挟んで走行用レールの長手方向に沿うようにした平板部を備えるようにするとともに、該外止機構を、扉枠の戸先側の両鍔付戸車よりも前方及び戸尻側の両鍔付戸車よりも後方において扉枠に固定するようにしたことから、引戸扉を引戸枠に設置した後に外止機構を扉枠に容易に取り付けることができる。
そして、外止機構が、走行用レールを挟んで走行用レールの長手方向に沿うようにした平板部を備えるとともに、外止機構のレール上面から下方への突出量も、引戸扉上端と上枠の溝内天面との隙間量に制約されることなく自由に設定できることから、安定した外止効果を奏することができ、引戸扉に衝撃が加わった場合でも、引戸扉が引戸枠より外れることを確実に防止することができる。
【0011】
また、外止機構を、断面コ字状の固定部材と、該固定部材の内側に嵌入させて取り付ける、前記平板部を構成する断面コ字状の外止部材とから構成することにより、製作が容易な引戸扉の外止機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の引戸装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図4に、本発明の引戸装置の一実施例を示す。
この引戸装置Hは、引戸扉4と、竪枠2a、2a及び両竪枠2a、2aを繋ぐ断面略コ字状の上枠2bと下枠2cとからなる引戸枠2と、下枠2cに配設する走行用レール3とから構成されており、外止機構1は引戸扉4の扉枠である戸先側の竪骨4aの下端部と戸尻側の竪骨4aの下端部に配設するようにしている。
【0014】
引戸扉4は、下骨4c、上骨4b及び両竪骨4a、4aからなる扉枠40を枠組みし、表面に化粧板4dを配設して構成する。
そして、外止機構1は、平面視コ字状の固定部材10と、該固定部材10の内側に嵌入するとともに、走行用レール3の長手方向から見て下方に開くコ字状の外止部材11とからなり、前記外止部材11の対となる平板部11a、11aが、走行用レール3を跨いで引戸扉4の下面に配設する両鍔付戸車5の外周下端よりも下方に突出するとともに、走行用レール3の長手方向に沿うように、前記固定部材10を戸先側の竪骨4aの下端部と戸尻側の竪骨4aの下端部に取り付けるようにしている。
【0015】
この引戸扉4の外止機構1を構成する固定部材10と外止部材11とは、図4に示すように金属製の板材をコ字状に曲げ加工又は適宜寸法のC型鋼を切断して製作するようにしている。
【0016】
固定部材10は、対となる平板部10b、10bと、平板部10b、10b同士を繋ぐ連結板10aとからなり、平板部10b、10bには、該平板部10b、10b間に嵌入する外止部材11を固定するためのネジ12が挿通する穴10cを穿孔する。
穴10cの穿孔個所とその個数は特に限定されず、固定部材10と外止部材11とが固定される個数であればよく、平板部10b、10b間に嵌入する外止部材11の揺動を防止する観点から図例の如く複数個(図例では2個所)穿孔することが好ましい。
また、固定部材10の連結板10aには引戸扉4の竪骨4aの下部に、外止機構1をネジ13によって固定するための穴10dを穿孔する。
この穴10dは、外止機構1の上下方向への微調整ができるように、大径に、又は上下方向に長穴としても構わない。
【0017】
外止部材11は、対となる平板部11a、11aと、平板部11a、11a同士を繋ぐ連結板11bとからなり、平板部11a、11aの外面同士の距離L2が、固定部材10の平板部10b、10bの内面同士の距離L1よりも若干小となるように連結板11bの長さを決定する。
平板部11a、11aには、外止部材11を固定部材10の平板部10b、10b間に嵌入したときに、平板部10bに穿孔した穴10cに対応する位置にネジ穴11cを形成するようにしている。
【0018】
そして、固定部材10の平板部10b間に外止部材11を嵌入し、穴10cとネジ穴11cの位置を合わせ、ネジ12を穴10cに挿通させ、ネジ穴11cに螺合する。
【0019】
上記構成において、引戸扉4を引戸枠2に取り付けるときは、引戸扉4を斜めに傾けた状態で持ち上げながら、上枠2bの溝内に引戸扉4の上端部を挿入した後、引戸扉4を鉛直状態に戻し、両鍔付戸車5を走行用レール3上に載置する。
そして、両鍔付戸車5を走行用レール3上に載置した状態で、引戸扉4の戸先側の竪骨4aの下端部と戸尻側の竪骨4aの下端部に、固定部材10の連結板10aに穿孔した穴10dを合わせ、ネジ13によって固定することによって、外止機構1を引戸扉4に取り付ける。
【0020】
このとき、走行用レール3の上面から、外止部材11の対となる平板部11aの下端部までの距離Lが、上枠2bの溝の内天面と引戸扉4の上端面との間に生じる隙間Sより大となるように取り付ける。
これによって、両鍔付戸車5が、走行用レール3上の異物に乗り上げ、引戸扉4の上端面が上枠2bの溝の内天面に当接しても、引戸扉4が引戸枠2から外れることを防止できる。
【0021】
ところで、上記実施例においては、外止機構1を竪骨4a、4aに取り付ける例を示したが、図5に示すように、例えば、断面L字状の取付部材14を下骨4cに取り付け、この取付部材14を介して、固定部材10及び外止部材11からなる外止機構1を取り付けるようにすることもできる。
この場合、取付部材14は、引戸扉4を構成する扉枠40の下骨4cにあらかじめボルト等の締結手段で取り付けるほか、溶接などの固着手段を用いて取り付けるようにしても構わない。
【0022】
また、外止機構1は、必ずしも固定部材10を必要とせず、外止部材を単独で用い、これを取付部材14に直接固定するようにしてもよい。
より具体的には、図5(c)に示すように、外止部材15を、平板部15a、15aと連結板15bとに分割して構成し、溶接固定するほか、図5(d)に示すように、板材を曲げ加工することによって形成し、取付部材14と連結する連結部分となる連結板15bの下方を切り欠くことによって構成するようにしても構わない。
また、図5(e)に示すように、あらかじめ切り欠いた板材を曲げ加工することによって形成してもよい。
さらに、コストダウンの観点から、平板部15a、15aの板厚を薄くする場合には、図5(f)に示すように、連結板15bの反対面に補強板15cを取り付け、平板部15a、15aを補強するようにするほか、図5(g)に示すように、平板部15a、15aの上部の間隔を、外止機構1を取り付ける竪骨4a又は下骨4cの内側面間の幅と略同一の寸法となるように形成することによって、平板部15a、15aの上部を竪骨4a又は下骨4cの内側面に当接させ、外止部材15の強度を確保するようにすることができる。
【0023】
以上、本発明の引戸扉の外止機構について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の引戸装置は、引戸扉を引戸枠に設置後に外止機構を取り付けることができるので引戸の取り付けが容易であり、引戸扉が走行用レールから脱落することを確実に防止することができるという特性を有していることから、一般の引戸扉に用いることができるほか、扉高さの高い引戸扉に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の引戸装置の一部切り欠きの全体正面図である。
【図2】外止機構の要部を拡大した一部切り欠きの正面図である。
【図3】図2における一部切り欠きのX−X断面図である。
【図4】外止機構の組み立て要領を示す斜視図である。
【図5】外止機構を下骨に取り付けた例を示し、(a)は要部を拡大した一部切り欠きの正面図を、(b)は(a)における一部切り欠きのX1−X1断面図を、(c)〜(g)は外止機構を構成する外止部材の別の実施例の斜視図を示す。
【図6】従来の引戸装置の一部切り欠きの全体正面図である。
【図7】図6における一部切り欠きのY−Y断面図である。
【図8】従来の引戸装置に使用する引戸扉の外止機構を示し、(a)は図7のZ−Z断面図、(b)は斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 外止機構
10 固定部材
11 外止部材
11a 平板部
11b 連結板
14 取付部材
15 外止部材
15a 平板部
15b 連結板
2b 上枠
3 走行用レール
4 引戸扉
40 扉枠
4a 竪骨
4b 上骨
4c 下骨
5 両鍔付戸車
H 引戸装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に敷設した走行用レール上を車輪走行するようにした引戸扉に、走行用レールを跨ぐように外止機構を配設した引戸装置において、前記外止機構が、走行用レールを挟んで走行用レールの長手方向に沿うようにした平板部を備えるようにするとともに、該外止機構を、扉枠の戸先側の両鍔付戸車よりも前方及び戸尻側の両鍔付戸車よりも後方において扉枠に固定するようにしたことを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
外止機構が、断面コ字状の固定部材と、該固定部材の内側に嵌入させて取り付ける、前記平板部を構成する断面コ字状の外止部材とからなることを特徴とする請求項1記載の引戸装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−196195(P2008−196195A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32152(P2007−32152)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)